説明

面で囲まれる容器

【課題】ボイラ火炉等の面で囲まれる容器の内部の検査に用いための基準点を決定することが容易な面で囲まれる容器を提供する。
【解決手段】面で囲まれる容器であって、前記容器の内側面の位置座標既知の単数又は複数個所に、内壁面からの突起物であるマーカーが設けられている。また、前記マーカーは、該マーカーが設けられている位置の位置情報を有するバーコード又は刻印が刻設されているか、該マーカーが設けられている位置の位置情報を有するICタグを取り付け可能な取付部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ火炉等の大型の面で囲まれる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所で用いられるボイラ火炉は、製作時及び運転開始後定期的に開放し、内部に作業者が入り保守検査を行う必要がある。保守検査時には、検査箇所を明確にする必要があるが、ボイラ火炉は容量が大きく目視で検査箇所を正確に把握することは困難である。
そこで従来、検査箇所の高さ位置及び左右位置を巻尺等を用いて測定マーキングすることで作業者の居場所あるいは保守検査位置を把握していたが、この方法では位置の把握に多大な時間と人手を要する。
【0003】
そこで、三次元測位システムといわれる方法を用いてボイラ火炉内の検査位置を特定することが考えられる。これは、3点以上の位置座標既知の位置から位置を特定しようとする点への距離を、音波を用いてその伝播速度と伝播時間から算出し、その距離を用いて位置を特定するものであり、このような三次元測位システムは例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。また近年では、音波に代えてレーザ光を用いて位置を特定する三次元測位システムが知られており、例えば特許文献3に開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されるような三次元測位システムを用いてボイラ火炉内の位置を検出する場合、3点の基準位置R1、R2、R3が空間内にある場合、該基準位置に発信器又は受波器を設置することが困難である。
【0005】
また、特許文献4には、面で囲まれる空間内部で作業を行う位置を特定する方法であって、前記空間内部の作業を行う位置が側壁であり、該側壁に略平行な同一面上であり且つ同一直線上にない位置座標が既知である3点以上に音波信号を受信可能な受波器を設置し、前記空間の側壁の作業を行う位置に配置された音波を発信可能な送波器より信号を発信し、前記同一直線上にない3点以上の受波器それぞれに到達する前記信号の到達時間を計測し、前記到達時間と、前記3点以上の受波器の位置座標を用いて、前記送波器の位置座標を特定する技術が開示されている。
【0006】
特許文献4に開示された技術では、位置座標既知である同一直線上にない3点以上に受波器を設置することで、前記3点以上の受波器への音波の到達時間と位置座標から、送波器の位置の候補2点(実際に送波器のある位置と、該位置と前記3点以上の受波器によって形成される平面に対して鏡像の位置)が求められるが、側壁に略平行な同一面上に配置した既知位置にある受波器を用いて測位点を算出するため、前記鏡像位置を含めた2点の測定値が算出されても、測位データとして必要な高さや左右からの距離は同一であるため問題とならない。従って、受波器を床面に配置することが困難な場合であっても、保守検査等の作業を行う位置を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−266376号公報
【特許文献2】特開2004−108978号公報
【特許文献3】特開平3−251706号公報
【特許文献4】特開2010−85280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4に開示された技術においては、側壁に略平行な同一面上であり且つ同一直線上にない位置座標が既知である3点以上に音波信号を受信可能な受波器を設置する必要がある。作業を行う位置が存在する側壁(位置特定側面と称する)に略平行な面は、位置特定側面と、位置特定側壁と対向する別の側面が略平行でない限りは空間中に存在することになり、該面上に位置座標既知の点を3箇所以上設定すること自体が困難であり、また位置座標既知の点を3箇所以上設定してもその位置に受波器を設置することが困難である。また、位置特定側面と、位置特定側壁と対向する別の側面が略平行である場合は該別の側面上に位置座標既知の3点を設定し、該位置に受波器を設置することは可能であるが、音波の伝播する距離には限界があり、前記位置特定側面と前記別の面との距離が音波の伝播可能な距離よりも大きな大型のボイラ火炉等には適用が困難になる。
【0009】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、ボイラ火炉等の面で囲まれる容器の内部の検査に用いための基準点を決定することが容易な面で囲まれる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明においては、面で囲まれる容器であって、前記容器の内側面の位置座標既知の単数又は複数個所に、内壁面からの突起物であるマーカーが設けられていることを特徴とする。
これにより、前記マーカーを、容器内壁面上の位置座標既知な箇所を基準位置とすることができるため、基準位置の決定が容易である。また、通常は容器の開放時には容器内壁に沿って足場を組むので該足場を利用すれば基準位置への移動も簡単である。
【0011】
また、前記面で囲まれる容器はボイラ火炉であって、前記マーカーはボイラ火炉運転時のボイラ火炉内部温度に対して耐熱性のある材料で形成されているとよい。
ボイラ火炉は定期的に開放して点検する必要があり、該点検の際に内壁を構成する蒸発管の肉厚検査を行い該検査を行った位置を特定する必要がある。位置特定のための基準点として前記マーカーを利用することで、ボイラ火炉の内壁面を形成する蒸発管の経年劣化の検査のため、該蒸発管の肉厚検査及び検査の位置の特定が容易となる。
【0012】
また、前記マーカーは、該マーカーが設けられている位置の位置情報を有するバーコード又は刻印が刻設されているとよい。
前記基準位置としてマーカーを用いる場合、基準位置に配置する受波器や送波器等に配置した位置を読み込ませる必要がある。そのため、マーカーに位置情報を有するバーコード又は刻印が刻設することで、該バーコード又は刻印から位置情報を簡単に読み取ることができる。
【0013】
また、前記マーカーは、該マーカーが設けられている位置の位置情報を有するICタグを取り付け可能な取付部が設けられているとよい。
例えば前記容器がボイラ火炉の場合、通常運転時はマーカーは高温に晒される。そこで、マーカーに位置情報を有する部材を常設しておくのではなく、位置情報を有するICタグを取り付け可能にしておけば、ボイラ火炉運転中は位置情報を有するICタグをマーカーから取り外しておき、ボイラ火炉停止中にマーカーにICタグを取り付けることで、位置情報を有するICタグが高温に晒されて劣化・損傷することを防止できる。
【0014】
また、前記マーカーは、前記内側面の複数個所に設けられ、前記複数個所に設けられたマーカーは、1のマーカーと隣接するマーカーとの距離が、音波の届く限界の距離よりも長い間隔である位置がないように設けられていることを特徴とする。
これにより、音波を用いて位置特定を行う場合、基準位置に配置した受波器又は送波器との間で音波の送受信が不可能な点が内壁面上に存在しなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボイラ火炉等の面で囲まれる容器の内部の検査に用いための基準点を決定することが容易な面で囲まれる容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】平面上の位置を特定する原理の説明図である。
【図2】ボイラ火炉を表す斜視図である。
【図3】ボイラ火炉の内壁面を模式的に表した図である。
【図4】作業員による肉厚検査と肉厚検査位置特定の処理に関する説明図である。
【図5】端子一体物の斜視図である。
【図6】ボイラ火炉内側壁の肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理の手順を示すフローチャートである。
【図7】ボイラ火炉内側壁の肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理の説明図である。
【図8】検査結果の管理の説明図である。
【図9】マーカー14の概略図である。
【図10】マーカー14の別の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例】
【0018】
まず図1を用いて、実施例における容器内壁面上における位置の特定方法の原理ついて説明する。
図1は平面上の位置を特定する原理の説明図である。
【0019】
図1において、100は模式的に示した容器内壁面である。
壁面100上の点Aの位置を特定する場合、まず内壁100上の位置座標が既知である2点の基準位置に超音波を発信可能な送波器101、102を配置するとともに、点Aに超音波を受信可能な受波器を配置する。
その後、送波器101、102から超音波を発信し、前記点Aに配置された受波器で超音波の前記発信から到達までの時間を算出し、送波器101、102から超音波が発信されてから点Aに配置した受波器へ超音波が到達するまでの時間から点Aの位置を以下のようにして算出する。
【0020】
前記送波器から電波と超音波が発信されてから前記受波器に超音波が到達するまでの時間の算出方法について説明する。
まず、外部より送波器101及び102に送波命令を出すとともに、点Aに配置された受波器に受波命令を出す。
【0021】
送波器101、102は、前記送波命令が出されると、該送波命令と略同時に超音波を発信する。送波器101、102から超音波が発信されると、点Aに配置された受波器にはそれぞれ前記送波命令から時間t101、t102後に超音波が到達する。時間t101、t102は、前記送波命令を出した時刻、受波命令を出した時刻及び受波に超音波が到達した時刻から計算することができる。
【0022】
ここで、測位環境下での音速をcとすると、送波器101、102から点Aに配置された受波器までの距離L101、L102は以下の(1)(2)式で算出することができる。
101=t101×c ・・・(1)
102=t102×c ・・・(2)
【0023】
次に、点Aに配置した受波器からそれぞれの送波器101、102までの距離L101、L102から、点Aの位置を特定する。
図1において、受波器の位置(点A)を(x、y)で表し、それぞれの送波器101、102の位置をそれぞれ(x、y)、(x、y)で表す。
このとき、以下の(3)(4)の連立方程式が成立する。
101=(x−x+(y−y ・・・(3)
102=(x−x+(y−y ・・・(4)
(4)(5)はそれぞれ送波器101、102を中心とする半径L101、L102の円を意味しており、2つの円の交点が(3)(4)式から成る連立方程式の解となり、解は2つ存在する。しかし、送波器101、102の位置は既知であり、点Aのx座標又はy座標が送波器101、102より大きいか小さいかは受波器を配置した点から明らかであるため、受波器の位置を特定することができる。
【0024】
以上のように図1を用いて説明した原理で作業者の検査位置を特定するとともに検査結果を得る具体的な事例について、ボイラ火炉内に超音波を受信する受波器を持った作業者が入って、ボイラ火炉側壁に設けられた蒸発管等の検査作業を行う場合について、ボイラ火炉側壁に設けられた蒸発管の肉厚測定を行う場合を例示して説明する。
【0025】
図2はボイラ火炉を表す斜視図である。ボイラ火炉111は、図2に示すように外壁近傍に多くの配管112が取り付けられており、また内部に燃料を燃焼するための燃焼室113を有し、内壁面に沿って蒸発管が設置されている。
このようなボイラ火炉101の運転を停止し、内部に作業者が入りボイラ火炉の内壁を構成する蒸発管の肉厚測定を行う際には、検査箇所を特定する必要がある。また、特定した位置は検査結果とともに管理する必要がある。
【0026】
図3は、ボイラ火炉101の内壁面を模式的に表した図である。
図3において、10はボイラ火炉の内壁面である。また、前述のようにボイラ火炉111の運転を停止し、内部で作業者が検査を行う場合には、作業者の移動及び検査のために内壁面に沿って作業員用の足場12が約2mごとに複数段設けられる。
【0027】
また、本実施例に特徴的な構成として、複数のマーカー14が設けられている。マーカー14は内壁面上の位置座標既知の位置に設けられた突起物である。マーカー14にはボイラ火炉101の運転停止後にプレートが取り付けられる。
図9はマーカー14に取り付けられるプレートの概略図である。図9に示したように、プレートには取り付けられるマーカー14の位置座標の情報が組み込まれたバーコード14aなどが刻設されている。バーコードに変えてその位置座標の情報が組み込まれた刻印が刻設されていてもよい。
図10はマーカー14に取り付けられるプレートの別の例の概略図である。プレートには、取り付けられるマーカー14の位置座標の情報が組み込まれたカード状のICタグを取り付けることが可能なカードホルダー14bが設けられている。
また、前記プレートを取り付けず、マーカー14にその位置の位置座標の情報が組み込まれたバーコードや刻印などを刻設したり、マーカー14に位置情報を保持したICタグを直接取り付けるためのカードホルダーを設けてもよい。マーカー14にバーコードや刻印を刻設する場合には、バーコードや刻印が消失しないように、マーカー14、特にバーコードや刻印の周囲はボイラ火炉101の運転中に温度に対して耐熱性を有する材料で作ることが必要となる。また、マーカー14にカードホルダーを設ける場合には、ボイラ火炉101の運転停止後にカードホルダーにICタグを取り付ける。
即ち、マーカー14は、刻印、バーコード、又はICタグによって位置情報を保持している。
【0028】
マーカー14は、後述する超音波を用いた作業位置特定のために、各マーカー間の距離を超音波が届く範囲とする。具体的には各マーカー間の距離を10m以内程度とする必要があり、後述する作業位置特定を確実に行うためには各マーカー間の距離を5m以内程度とすることがより好ましい。また、垂直方向に関しては、後述する超音波を用いた作業位置特定の際に、足場が超音波の障害とならないように足場12で構成される段毎にマーカーを設けることが好ましい。
【0029】
図4は、作業員による肉厚検査と肉厚検査位置特定の処理に関する説明図である。
まず、処理に先立って、図4に示したように、マーカー14の位置に2箇所以上から超音波を発信可能な発信器16を設置し、マーカー14の位置座標を前記刻印、バーコード、ICタグ等から読み込む。読み込まれた位置情報は、後述するモバイルパソコン(モバイルPC)28に入力される。なお、発信器は、基準位置61をマーカー14と合わせた位置に置き、基準位置61との位置関係が分かっている発信部62、63から超音波を発信する。これにより、マーカー14の位置座標と前記位置関係から各発信部62、63の位置座標が分かる。
なお、発信器16の設置は、ボイラ火炉101の運転を停止して、足場12を組み上げた後であって、後述の肉厚検査及び位置検出の前であればいつ設置してもよい。
【0030】
そして、作業員は、端子一体物24、肉厚計26及び制御装置を兼ねるとともに肉圧計26とデータ送受信可能なケーブル27によって接続されたモバイルPC28を有する受信ユニット20を携帯して、肉厚検査を実施する必要がある検査位置18の位置近傍まで移動する。そして、モバイルPC28と発信器16をデータ送受信可能なケーブル29で接続する。
【0031】
受信ユニット20を構成する端子一体物24について図5を用いて説明する。図5は、端子一体物24の斜視図である。
図5に示したように、端子一体物24は、受波器41、距離演算装置42及び肉圧計探触子43が一体化して構成されている。44は距離演算装置42と肉圧計探触子43を一体化する接続具である。また、距離演算装置42は、データ送受信可能なケーブル45でモバイルPC28と接続されており、肉圧計探触子43はデータ送受信可能なケーブル46で肉圧計26と接続されている。
そして、前記作業員は、このように構成された端子一体物24の肉圧計探触子43を、肉厚検査を実施する必要がある検査位置18に接触させる。
【0032】
以上の準備をした後、肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理を行う。
肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理について図2〜図5を参照しながら、図6及び図7を用いて説明する。
図6は、ボイラ火炉内側壁の肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理の手順を示すフローチャートであり、図7は、ボイラ火炉内側壁の肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理の説明図である。なお、図7において丸付きで示した数字は、図6において示したS(ステップ)に対応する。
【0033】
前記作業者が、肉厚計探触子43を検査位置18に接触させて、モバイルPC28により処理開始操作を行うことにより、処理が開始される。
処理が開始されると、ステップS1ではモバイルPC28から肉厚計26に肉厚情報取込命令が出される。
【0034】
ステップS2では、前記肉厚情報取込命令を受けた肉厚計26は、電流・電圧等を検査位置に発し肉厚に関する情報を得て、該情報は肉厚計26に送られる。そして、肉厚計26では前記情報を元に検査位置での肉厚を求める。該肉厚は、肉厚情報の数値データとしてモバイルPC28に取り込まれる。なお、肉厚の計測そのものについては公知の技術であるのでその説明を省略する。
【0035】
前記肉厚情報が取り込まれると、ステップS3でモバイルPCより発信器16に超音波発信命令が出される。同時に又はその後ステップS4でモバイルPCより受波器41に超音波受波命令が出される。
【0036】
ステップS3で発信器16が超音波発信命令を受けると、発信器16は発信部62及び63から超音波を発信する。
【0037】
ステップS6で超音波が発信されると、ステップS7では、受波器41で前記超音波を受波する。そして、受波器41が発信部62からの超音波を受波した時刻t62、及び受波器41が発信部63からの超音波を受波した時刻t63が受波器62から距離演算装置42に送られ、ステップS3にて超音波発信命令が出された時刻tが距離演算装置42に送られる。
距離演算装置では、発信部62から受波器41まで超音波が到達するのに要した時間t=(t62−t)を演算するとともに、発信部63から受波器41まで超音波が到達するのに要した時間t=(t63−t)を算出する。
そして、発信部62から受波器41までの距離Lと、発信部63から受波器41までの距離Lとを、前述の(1)(2)式を適用して、以下の(5)(6)式にて求める。
=t×c ・・・(5)
=t×c ・・・(6)
【0038】
ステップS7で距離L及び距離Lが求まると、ステップS8で距離L及び距離LのデータがモバイルPC28に取り込まれる。
【0039】
次いでステップS9で、モバイルPC28にて受波器41の位置を演算する。
既知であるマーカー14の位置座標を(X、Y)とする。また、発信部62はマーカー14の位置に置かれた基準位置61から鉛直上側方向にY’だけ離れた位置に存在し、発信部63はマーカー14の置かれた基準位置61から水平方向にX’だけ離れた位置に存在するとすると、発信部62の位置座標は(X、Y+Y’)、発信部63の位置座標は(X+X’、Y)である。
そして、受波器41の位置座標を(x、y)とすると、(3)(4)式を適用して、以下の(7)(8)式の連立方程式がなりたつ。そして、該連立方程式を解くことで受波器41の位置座標(x、y)を求めることができる。
=(x−X)+{y−(Y+Y’)} ・・・(7)
={x−(X+X’)}+(y−Y) ・・・(8)
【0040】
次いで、ステップS10で、モバイルPC28に、ステップS2にて取り込まれた肉厚検査の結果と、ステップS29で求めた肉厚検査を行った箇所の位置情報が結果表示される。
【0041】
そして、ステップS11で無線LAN等を介して前記肉厚検査の結果と位置情報が現地事務所等に置かれたパソコン50に送られて、ステップS12で該パソコン50に結果が表示される。そして、ステップS13で必要に応じて前記パソコン50に送られた肉厚検査の結果と位置情報はインターネット等を介して事業所等に置かれたパソコン52に送られ、ステップS14でデータ加工等がなされる。
【0042】
また、パソコン50には、多数の箇所での検査結果及び位置情報が送られる。これらの情報をパソコン50又は52で集中菅理する。検査結果の集中菅理の一例について図8を用いて説明する。
図8は検査結果の管理の説明図である。
例えばボイラ火炉111内のA、B、C、Dの位置で検査を行った場合、それぞれの位置情報と肉厚検査結果の情報がパソコン50又は52などに集約される。そして、該パソコン50又は52では前記集約された結果をまとめて表示する。表示された結果は、A、B、C、Dの位置にいる作業者に送信するようにしてもよい。
結果の表示方法は、位置と検査結果が分かるような表示方法であればよく、たとえば図8に示したようにボイラ火炉の壁面の検査結果が不良である位置を領域a、bのように斜線で表示したり、色を変えて表示するなど視覚的に分かるように表示することができる。なお、図8におけるA1〜A10、B1〜B8、C1〜C6、D1〜D8はデスラッガを取り付けるための穴を表しており、デスラッガを取り付ける穴はその位置が既知であるため、デスラッガを取り付ける穴を検査結果と同時に表示させることで、検査結果が視覚的に分かり易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
ボイラ火炉等の面で囲まれる容器の内部の検査に用いための基準点を決定することが容易な面で囲まれる容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 内壁
12 足場
14 マーカー
16 発信器
18 検査位置
20 受信ユニット
24 一体物
26 肉厚計
28 モバイルPC
41 受波器
42 距離演算装置
43 肉圧計探触子
62、63 発信部
111 ボイラ火炉


【特許請求の範囲】
【請求項1】
面で囲まれる容器であって、
前記容器の内側面の位置座標既知の単数又は複数個所に、内壁面からの突起物であるマーカーが設けられていることを特徴とする面で囲まれる容器。
【請求項2】
前記面で囲まれる容器はボイラ火炉であって、
前記マーカーはボイラ火炉運転時のボイラ火炉内部温度に対して耐熱性のある材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の面で囲まれる容器。
【請求項3】
前記マーカーは、該マーカーが設けられている位置の位置情報を有するバーコード又は刻印が刻設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の面で囲まれる容器。
【請求項4】
前記マーカーは、該マーカーが設けられている位置の位置情報を有するICタグを取り付け可能な取付部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の面で囲まれる容器。
【請求項5】
前記マーカーは、前記内壁面の複数個所に設けられ、
前記複数個所に設けられたマーカーは、1のマーカーと隣接するマーカーとの距離が、音波の届く限界の距離よりも長い間隔である位置がないように設けられていることを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の面で囲まれる容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−132845(P2012−132845A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286632(P2010−286632)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】