説明

面の構成要素を辺で連結した多面体

【課題】数種類の部品だけで、接着剤等のリサイクルに適しない素材を一切使用することなく組立てることができる多面体(サッカーボール形置物)を提供すること。
【解決手段】正五角形状部21の各辺から先細状に延びる折曲片22を有する12個の正五角形部品20と、正六角形状部31の各辺から先細状に延びる折曲片32を有する20個の正六角形部品30と、隣り合う両部品を跨ぐように連結する90個の連結片40とで32面体のサッカーボール形置物10を組立てる。正多角形部品は正多角形状部から折曲片にわたるスリット23,33を具え、連結片40は中央長手方向に切れ目43を有する、コの字状をなし、隣り合う両部品の折曲片22,32が互いに接するように内側に折曲げられた状態で隣り合う両正多角形状部のスリット23,33に挿入されて互いに接する折曲片22,32と噛合わされる。部品は、全て、挿入・噛合わせで連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面の構成要素を辺で連結した多面体に関する。その代表的例は、サッカーボール形置物である。
【背景技術】
【0002】
多面体は、一般的には、数学の教材として使用されるが、その他に、各種の記念品、室内外用装飾品、地球儀、宣伝・広告用等に使用されるもので、地球儀の場合の具体例として、特許文献1のものがある。
【特許文献1】特開2003−82796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来技術を含めて、従来のものは、いずれも、切り抜かれた展開図を基本として、辺に沿って折り曲げて行き、辺と辺の連結は、糊付け、又は差込みの手法によるものである。そして、特許文献1によれば、12個の正五角形と20個の正六角形を組合わせたサッカーボール形の32面体は、連結のための糊代や、差込片を設けることが難しいことを理由として、その替わりに、正三角形と正五角形を組合わせた32面体からなるものを提案している。その結果、外観が実際のサッカーボールとは異なるものになってしまうという問題がある。
【0004】
上記の点に鑑み、本発明は、どのような多面体であっても、面の構成要素を辺で連結するだけで組立てられるようにすることを目的とする。また、その際、接着剤等のリサイクルに適しない素材を一切使用することなく組立てることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、正多角形状部の各辺から先細状に延びる折曲片を有する正多角形部品と、
隣り合う前記正多角形部品を各辺において連結する連結片とからなる多面体であって、
前記正多角形部品は前記正多角形状部から折曲片にわたるスリットを具え、
前記連結片は中央長手方向に切れ目を有する、コの字状をなし、隣り合う前記正多角形部品の折曲片が互いに接するように内側に折曲げられた状態で隣り合う前記正多角形状部のスリットに挿入されて前記互いに接する折曲片と噛合わされることを特徴とする多面体により、前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、数種類の部品を組合せるだけで多面体を簡易に作製することができる。隣り合う正多角形部品の連結は、切込部同士の噛合わせによることができるので、組立作業は簡便である。
【0007】
また、各部品は、全て、挿入・噛合わせで連結され、金具、接着剤、或いは、両面テープ等の紙以外の連結・接合材は一切使用しなくて済まされるため、リサイクルや焼却処分の際に、環境問題を生じさせることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態のサッカーボール形多面体の斜視図、図2(a)は本発明の実施形態の正五角形部品の平面図、(b)は本発明の実施形態の正六角形部品の平面図、(c)は本発明の実施形態の連結片の平面図、図3は、本発明の実施形態の正五角形部品と正六角形部品と連結片を組合わせたときの縦断面図、図4は、正五角形部品と正六角形部品の組合わせ方の一例を示した展開図である。
【0009】
正五角形部品20は、正五角形状部21とその各辺から先細状に延びる折曲片22を有し、正五角形状部21から折曲片22にわたるスリット(切れ目)23が設けられている。
正六角形部品30は、正六角形状部31とその各辺から先細状に延びる折曲片32を有し、正六角形状部31から折曲片32にわたるスリット(切れ目)33が設けられている。
連結片40は、中央長手方向に切れ目43を有する、コの字状をなしており、切れ目43の根元部分に折曲片22,32の抜止用突起44,44を有している。また、連結片40の先端には、折曲片22,32への差込みを容易にするための一対の外向きに開くテーパ部45,45が設けられている(図2(a)〜(c)参照)。
連結片40の頂部のなす角は、多面体の隣り合う面が最終的になす角度に一致させられ、この実施形態では、140度である。そして、連結片40の頂部は、連結した正多角形の表面から飛び出すことなく、表面と面一、又はそれ以下となるようにされる。
【0010】
これら3種類の部品を連結するには、正五角形部品と正六角形部品を辺の部分で山折にし、折曲片22と32を互いに接し合わせる。なお、この山折作業を楽に行なえるように、各辺に沿って、2条の圧痕を形成するのは、周知技術である。
次に、重なり合ったスリット23及び33と連結片40の切れ目43が噛合うように、正多角形側の面から折曲片側へ、連結片40を挿入する(図3参照)。一つの辺につき一つのスリットが設けられているため、例えば、図4のように、正五角形部品と正六角形部品を組合わせて、隣り合う正多角形部品を跨ぐように連結片40を計90回挿入すれば、図1のような本実施形態のサッカーボール形多面体10が完成する。
なお、正多角形の一辺の長さを約5mmにすると、実際のサッカーボールの大きさとほぼ同じになる。
この場合、表面を印刷に適した材質とすることにより、例えば、サッカーチームのロゴマークを印刷して、サポーターを拡大するための道具として活用することができる。
勿論、企業のロゴマークを印刷して、広告・宣伝の道具として活用することも効果的である。
【0011】
このように、サッカーボール形多面体10を、3種類の部材のみで組立てることができることから、環境に優しく、使用後の処分も容易になる。
なお、本発明において使用するのに好適な材料は、これに限定するものではないが、厚紙、又は段ボール紙(但し、通常の包装箱用のものではなく、少なくとも表面が印刷に適した、或る程度の美観を具えたものが好ましい)のような紙材料である。この場合、間伐材を原料とするものであることが、森林保護の見地から好ましい。
各部材の厚みを2〜3mm程度にすることで、必要な強度を持たせることも可能であるから、室内等で、子供がおもちゃとして使用することもできる。しかも、接着剤や金属・プラスチック等を使用しないで実施することにより、万一、子供が口に入れてしまったとしても危険がないようにすることができる。
【0012】
以上のように、本発明の原理は簡明であるから、その応用範囲は広く、図5に示すような5種類の正多面体は言うに及ばず、図6に示す正三角形と正五角形からなる32面体にも適用することができる。この32面体は、地球の赤道に相当する直線部を有するから、地球儀の素材として用いるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態のサッカーボール形多面体の斜視図。
【図2】(a)は本発明の実施形態の正五角形部品の平面図、(b)は本発明の実施形態の正六角形部品の平面図、(c)は本発明の実施形態の連結片の平面図。
【図3】本発明の実施形態の正五角形部品と正六角形部品と連結片を組合わせたときの縦断面図。
【図4】本発明の実施形態の正五角形部品と正六角形部品の組合わせ方の一例を示した展開図。
【図5】A〜Eは、本発明が適用可能な正多面体の説明図。
【図6】本発明が適用可能な他の32面体の斜視図。
【符号の説明】
【0014】
10: サッカーボール形多面体(多面体)
20: 正五角形部品(正多角形部品)
21: 正五角形状部(正多角形状部)
22: 折曲片
23: スリット
30: 正六角形部品(正多角形部品)
31: 正六角形状部(正多角形状部)
32: 折曲片
33: スリット
40: 連結片
43: 切れ目
44: 抜止用突起
45: テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正多角形状部の各辺から先細状に延びる折曲片を有する正多角形部品と、
隣り合う前記正多角形部品を各辺において連結する連結片とからなる多面体であって、
前記正多角形部品は前記正多角形状部から折曲片にわたるスリットを具え、
前記連結片は中央長手方向に切れ目を有する、コの字状をなし、隣り合う前記正多角形部品の折曲片が互いに接するように内側に折曲げられた状態で隣り合う前記正多角形状部のスリットに挿入されて前記互いに接する折曲片と噛合わされることを特徴とする、
多面体。
【請求項2】
前記連結片が前記折曲片の抜止用突起を有する、請求項1の多面体。
【請求項3】
前記連結片が先端に外向きに開くテーパ部を有する、請求項1又は2の多面体。
【請求項4】
紙製である、請求項1から3のいずれかの多面体。
【請求項5】
12個の正五角形部品と、20個の正六角形部品と、90個の連結片とからなる請求項1から3のいずれかの多面体であって、32面体のサッカーボール形をなす多面体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−136817(P2010−136817A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314470(P2008−314470)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(504229642)有限会社ツールボックス (7)
【Fターム(参考)】