説明

面光源装置

【課題】光取り出し効率が高く、正面方向の輝度が高く、且つ色ムラが低減された面光源装置を提供する。
【解決手段】発光層を含む有機EL素子を備え、前記有機EL素子からの光を出光する装置出光面を有する面光源装置であって、前記面光源装置はさらに、前記有機EL素子より前記装置出光面側に位置する出光効率向上部を備え、前記出光効率向上部は、第1の構造層、及び前記第1の構造層に接して前記第1の構造層より前記装置出光面側に位置する第2の構造層を備え、前記第1の構造層は、その装置出光面側の面に、傾斜角θ1が60〜80°の傾斜面を有する第1の凹凸構造を有する、屈折率n1の材料からなる層であり、前記第2の構造層は、その装置出光面側の面に、傾斜角θ2が40〜50°の傾斜面を有する第2の凹凸構造を有する、屈折率n2の材料からなる層であり、n1及びn2が、n2−n1≦−0.12の関係を満たす、面光源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は面光源装置に関する。具体的には、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」という。)を備える面光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子を備える面光源発光装置は、その形状を免状とすることが可能であり、且つ、その光の色を白色又はそれに近い色とすることが可能である。このため、有機EL素子を備える面光源装置は、住環境等の空間を照明する照明器具の光源として、または、表示装置のバックライトとしての用途に用いることが考えられる。
【0003】
照明器具の用途に用いる有機EL素子の一例として、白色の有機EL素子が作製されている。かかる白色素子は、積層型又はタンデム型と呼ばれる、補色関係にある発光色を発生する発光層を積層させたものが多い。これらの発光層の積層体は、主に黄/青、又は緑/青/赤の積層体である。
【0004】
しかしながら、現在知られている有機EL素子は、上記用途に用いるには効率が低い。そこで、有機EL素子を面光源として利用する場合、その光取り出し効率を高めることが求められる。例えば、有機EL素子の発光層自体は発光効率が高いものの、それが素子を構成する積層構造を透過して出光するまでの間に、層中における干渉等により光量が低減してしまうので、そのような光の損失を可能な限り低減することが求められる。
【0005】
有機EL素子の光取り出し効率を向上させる方法として、光取出基板に種々の構造を設けることが知られている。例えば、光取り出し基板の両表面に、マイクロレンズアレイを設けること(特許文献1)、光源装置の出光面に、光透過性のある基材シートの表面に光透過拡散層を積層し、さらに光透過拡散層の表面にレンズ配列層を備えたレンズシートを設けること(特許文献2)などが提案されている。これらの構造で良好な集光を達成することができ、効率は向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2005/112514号
【特許文献2】特開平8−335044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、有機EL素子を面光源装置として用いる場合には、光取り出し効率の向上に加えて、他の特性の向上も求められる。例えば、正面方向(出光面の法線方向)の輝度の向上、及び観察角度による色味の変化(以下、単に「色ムラ」ということがある。)の低減も求められる。観察方向による色味の変化即ち色ムラとは、面光源装置の出光面を正面方向から観察した場合と、この正面方向と非平行な方向である斜め方向から観察する場合とで、観察される光スペクトルが相違することであり、色ムラの低減とは、かかる光スペクトルの相違を低減させることである。このような色ムラがある面光源装置は、多くの用途において光源としては好適ではない。
【0008】
特許文献1及び2に記載の構造では、光取り出し効率の向上を達成することはできるが、正面方向の輝度向上や色ムラ低減は得られず、特に正面方向の輝度向上と色ムラ低減とを同時に満足することはできない。
【0009】
本発明の課題は、光取り出し効率が高く、正面方向の輝度が高く、且つ色ムラが低減された面光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決すべく、鋭意検討した結果、光源装置の出光面に、形状及び屈折率の異なる凹凸構造を2層設けることで、本発明の目的を達成することを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
〔1〕 発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を備え、前記有機エレクトロルミネッセンス素子からの光を出光する装置出光面を有する面光源装置であって、
前記面光源装置はさらに、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より前記装置出光面側に位置する出光効率向上部を備え、
前記出光効率向上部は、第1の構造層、及び前記第1の構造層に接して前記第1の構造層より前記装置出光面側に位置する第2の構造層を備え、
前記第1の構造層は、その装置出光面側の面に、傾斜角θ1が60〜80°の傾斜面を有する第1の凹凸構造を有する、屈折率n1の材料からなる層であり、
前記第2の構造層は、その装置出光面側の面に、傾斜角θ2が40〜50°の傾斜面を有する第2の凹凸構造を有する、屈折率n2の材料からなる層であり、
n1及びn2が、下記式(1):
n2−n1≦−0.12 ・・・(1)
の関係を満たす、面光源装置。
〔2〕 前記第1の凹凸構造及び前記第2の凹凸構造は、
前記装置出光面に平行な2以上の方向に繰り返して配列された凹凸構造単位により構成される凹凸構造であるか、又は
前記装置出光面に平行な1の方向に延在する凹凸構造単位が、前記1の方向に垂直で且つ前記装置出光面に平行な方向に繰り返して配列されて構成される凹凸構造である、
〔1〕に記載の面光源装置。
〔3〕 前記凹凸構造単位が、角錐状の形状、角錐台の形状、前記装置出光面に平行な方向に延在する角柱の形状、又はこれらの組み合わせを有する、〔2〕に記載の面光源装置。
〔4〕 前記出光効率向上部は、前記第1の構造層より前記装置出光面から遠い位置に、基材フィルム層をさらに有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の面光源装置。
〔5〕 前記出光効率向上部は、前記第1の構造層より前記装置出光面から遠い位置に、接着層をさらに有する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の面光源装置。
〔6〕 前記出光効率向上部は、前記第1の構造層より前記装置出光面から遠い位置に、基板をさらに有する、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の面光源装置。
〔7〕 前記出光効率向上部は、
前記基材フィルム層より前記装置出光面から遠い位置に、接着層をさらに有し、
前記接着層より前記装置出光面から遠い位置に、基板をさらに有する、〔4〕に記載の面光源装置。
〔8〕 前記出光効率向上部を構成する層の1以上が、光拡散性を有する層である、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の面光源装置。
〔9〕 前記光拡散性を有する層は、光拡散性を付与する粒子を含む材料からなる、〔8〕に記載の面光源装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の面光源装置は、光取り出し効率が高く、正面方向の輝度が高く、且つ色ムラが低減された面光源装置としうるので、照明器具及びバックライト装置等の光源装置として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の面光源装置の一例を概略的に示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した面光源装置を線1aを通る面で切断した断面を示す断面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示す出光効率向上部100中の第1の構造層111を概略的に示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の面光源装置の別の一例を概略的に示す斜視図である。
【図5】図5は、図4に示した面光源装置を線2aを通る面で切断した断面を示す断面図である。
【図6】図6は、図4及び図5に示す出光効率向上部200中の第1の構造層211を概略的に示す斜視図である。
【図7】図7は、本願比較例における従来技術の面光源装置の一例を概略的に示す斜視図である。
【図8】図8は、本願実施例1及び比較例3の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、本願実施例1及び比較例3の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、本願実施例2及び比較例4の結果を示すグラフである。
【図11】図11は、本願実施例2及び比較例4の結果を示すグラフである。
【図12】図12は、本願実施例及び比較例で用いた発光層の配向分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔概要〕
本発明の面光源装置は、発光層を含む有機EL素子を備え、有機EL素子からの光を出光する装置出光面を有する面光源装置である。
本発明の面光源装置はさらに、有機EL素子より装置出光面側に位置する出光効率向上部を備える。そして、出光効率向上部は、第1の構造層、及び第1の構造層に接して第1の構造層より装置出光面側に位置する第2の構造層を備える。
【0014】
本発明において、装置出光面とは、面光源装置としての出光面、即ち、面光源装置から装置外部に光が出光する際の出光面である。
装置出光面は、前記有機EL素子の前記発光層と平行な面であり、面光源装置の主面と平行である。但し、微小な凹凸構造を有する面により装置出光面が規定される場合、実際の出光面の面積は凹凸構造に比べて十分大きいので、凹凸構造を無視して巨視的に見ると、装置出光面は平坦な面として認識しうる。本願においては、別に断らない限り、かかる微視的な凹凸構造を無視して見た装置出光面と平行(又は垂直)であることを、単に「装置出光面と平行(又は垂直)」であるという。また、本願では、別に断らない限り、面光源装置は、かかる装置出光面が水平方向と平行で且つ上向きになるよう載置した状態で説明する。したがって、以下の説明において、面光源装置を構成するある層の「上側」の面は、かかる層の、装置出光面に近い側の面であり、「下側」の面は、かかる層の、装置出光面から遠い側の面である。
本発明において、各構成要素が「平行」又は「垂直」であるとは、本発明の効果を損ねない範囲の誤差を含んでいてもよく、例えば、平行又は垂直な角度から±5°の誤差を含んでいてもよい。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の面光源装置の一例を概略的に示す斜視図であり、図2は、図1に示した面光源装置を線1aを通る面で切断した断面を示す断面図である。
図1及び図2に示す面光源装置10は、矩形の平板状の構造を有する装置であり、有機EL素子を支持する基板である有機EL素子用基板131と、有機EL素子用基板131の下側の面13Lに接して設けられた透明電極層141と、透明電極層141に接して設けられた発光層142と、発光層142に接して設けられた反射電極層143とを備える。透明電極層141、発光層142及び反射電極層143は、有機EL素子140を構成する。面光源装置10はさらに、有機EL素子140の下側の面14L側に封止基板151を有する。
【0016】
面光源装置10はさらに、有機EL素子用基板131の上側の面13Uに接して設けられた第1の構造層111と、第1の構造層111の上側の面11Uに接して設けられた第2の構造層121とを備える。有機EL素子用基板131、第1の構造層111及び第2の構造層121は、出光効率向上部100を構成する。
【0017】
発光層142からの光は、透明電極層141を透過するか、又は反射電極層143で反射され、発光層142及び透明電極層141を透過して、装置出光面側に向かう。有機EL素子140から出光した光の多くは、有機EL素子用基板131、第1の構造層111及び第2の構造層121を、この順に透過して、第2の構造層121の上側の面から出光する。したがって、この例では、第2の構造層121の上側の面が、装置出光面となる。
【0018】
〔凹凸構造〕
本発明において、第1の構造層は、その装置出光面側の面に、所定の傾斜角θ1の傾斜面を有する第1の凹凸構造を有する。一方、第2の構造層は、その装置出光面側の面に、所定の傾斜角θ2の傾斜面を有する第2の凹凸構造を有する。第1の構造層及び第2の構造層上の凹凸構造は、例えば、装置出光面に平行な2方向に繰り返して配列された凹凸構造単位により構成しうる。
【0019】
これを図1及び図2の例を参照して説明すると、出光効率向上部100において、第1の構造層111の上側(即ち装置出光面側)の面は、凹凸構造を有する。図3は、図1及び図2に示す出光効率向上部100中の第1の構造層111を概略的に示す斜視図である。図3に示される通り、第1の構造層111の上側の面には、正四角錐状の形状(即ち、底辺が正方形であり、4つの斜面の形状が同一である四角錐の形状)の窪みを有する凹凸構造単位112が、装置の長辺及び短辺方向の2方向に繰り返して多数配列され、これらにより第1の凹凸構造が規定されている。
【0020】
一方、図1及び図2に示される通り、第2の構造層121の上側の面にも、正四角錐状の形状の窪みを有する凹凸構造単位122が、装置の長辺及び短辺方向の2方向に繰り返して多数配列され、これらにより第2の凹凸構造が規定されている。
【0021】
本発明において、第1の凹凸構造の傾斜面の傾斜角θ1は60〜80°であり、好ましくは65〜75である。一方第2の凹凸構造の傾斜面の傾斜角θ2は40〜50°であり、好ましくは42〜48である。ここで傾斜面の傾斜角とは、傾斜面と、装置出光面とがなす角である。
【0022】
第1の凹凸構造及び第2の凹凸構造が、均一な傾斜角を有する多数の傾斜面からなる場合、かかる傾斜面と装置出光面とがなす角が、それぞれ傾斜角θ1及びθ2となる。
例えば図1〜図3に示す例のように、凹凸構造が、多数の正四角錐の凹凸構造単位の繰り返しにより形成されている場合、かかる正四角錐の斜面と装置出光面とがなす角が凹凸構造の傾斜角に相当する。即ち、図1及び図2の例において、線1cは、装置出光面に平行な線であり、且つ正四角錐の凹凸構造単位122の一列の頂点12Pに接した線である。従って、図2の例においては、傾斜面12Sと線1aとがなす角が、傾斜面12Sと装置出光面とがなす角に等しく、従って第2の凹凸構造の傾斜面の傾斜角θ2に相当する。同様に、装置出光面に平行で凹凸構造単位112の頂点11Pを通る線1bと、傾斜面11Sとがなす角が、傾斜面11Sと装置出光面とがなす角に等しく、従って第1の凹凸構造の傾斜面の傾斜角θ1となる。
【0023】
凹凸構造における凹凸の高さは、特に限定されないが、凹凸構造が形成された表面を様々な方向(装置出光面と平行な面内の様々な方向)に沿って測定した中心線平均粗さの最大値(Ra(max))として、1〜50μmの範囲内とすることができる。凹凸構造を構造層上に形成する場合は、構造層の厚みに対して相対的に、好ましい凹凸の高さを定めることができる。例えば、構造層の材料として、凹凸構造の耐久性の維持に有利な硬質の材料を用いた場合、構造層の厚みを薄くしたほうが、複層体の可撓性が高まり、面光源装置の製造工程における複層体の取り扱いが容易となる。具体的には凹凸の高さに対する構造層の厚みは、100%〜300%であることが好ましい。
【0024】
〔構造層の屈折率〕
本発明において、第1の構造層は、屈折率n1の材料からなる層であり、第2の構造層は、屈折率n2の材料からなる層であり、n1及びn2は、下記式(1):
n2−n1≦−0.12 ・・・(1)
を満たす。n2−n1の値の上限は、より好ましくは−0.14以下とすることができる。n2−n1の値の下限は、特に限定しないが、高屈折率材料の選定の理由により、好ましくは−0.4以上とすることができる。
【0025】
本発明の面光源装置は、第1の構造層及び第2の構造層を組み合わせて有し、さらにこれらが上に述べた所定の傾斜角及び屈折率を有することにより、高い正面輝度と、低減された色ムラとを両立することができる。
従来技術において、光取り出し効率を向上させるために1層の構造層を有する出光効率向上部を設けることは知られており、さらにその出光面の凹凸構造の傾斜角を調節することにより、輝度を向上させたり、色ムラを低減させたりすることができることも知られていた。しかしながら、このような態様においては、輝度を向上させると色ムラが増え、逆に色ムラを低減させようとすると輝度が低下する(本願比較例1及び2を参照)。ここで、本願発明者が見出したところによれば、本発明に規定する通り、2層の構造層を組み合わせて有し、さらにこれらが上に述べた所定の傾斜角及び屈折率を有する場合は、高い正面輝度と、低減された色ムラとを両立することができる。
【0026】
本発明の面光源装置は、上記の構成とすることにより、装置出光面における半球状全方位での色度座標のx座標およびy座標の少なくともいずれかの変位を上記の構成をとらない場合に比べて小さくでき、例えば半減させることができる。このため、面光源装置において、観察角度による色味の変化を抑えることができる。かかる半球状全方位での色度の変位を測定する方法として、例えば装置出光面の法線(正面)上に分光放射輝度計を設置し、法線方向を0°とした時その装置出光面を−90〜90°まで回転させられる機構を付与することで、各方向で測定した発光スペクトルから色度座標を算出できるため、その変位を算出できる。
【0027】
〔出光効率向上部 任意の層〕
本発明の面光源装置において、出光効率向上部は、第1の構造層及び第2の構造層に加えて、任意の層を有していてもよい。例えば、図1〜図3で示した例のように、第1の構造層より装置出光面から遠い位置に、有機EL素子を支持する基板を有していてもよい。このほか、第1の構造層より装置出光面から遠い位置に、1層以上の基材フィルム層、接着層、又はこれらの組み合わせを有することができる。基板、接着層及び基材フィルム層を組み合わせて有する場合は、接着層が、基材フィルム層より装置出光面から遠い位置にあり、基板が、接着層より前記装置出光面から遠い位置にあることが好ましい。即ち、(基板)−(接着層)−(基材フィルム層)−(第1の構造層)−(第2の構造層)という層構成を有することが好ましい。かかる層構成を有することにより、(接着層)−(基材フィルム層)−(第1の構造層)−(第2の構造層)という層構成を有する複層物を基板に貼付するという操作により面光源装置の製造を行うことができ、良好な光学性能を有する面光源装置を容易に製造することができる。
【0028】
〔構造層及び基材フィルム層の材料等〕
出光効率向上部を構成する各層の材料としては、光学部材に用いうる材料を適宜選択して用いることができる。特に、第1の構造層、第2の構造層及び基材フィルム層の材料は、透明樹脂と、必要に応じてその他の任意成分とを含む樹脂組成物であることが、成形の容易さ及び所望の光学性能の得やすさの点から好ましい。
【0029】
透明樹脂が「透明」であるとは、光学部材に用いるのに適した程度の光線透過率を有する意味である。本発明においては、第1の構造層、第2の構造層及び基材フィルム層が、光学部材に用いるのに適した光線透過率を有するものとすることができ、各層が80%以上の全光線透過率を有するものとすることができる。
【0030】
樹脂組成物に含まれる透明樹脂の材質は、特に限定されず、透明な層を形成することができる各種の樹脂を用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂を挙げることができる。なかでも熱可塑性樹脂は熱による変形が容易であるため、また紫外線硬化性樹脂は硬化性が高く効率が良いため、凹凸構造層の効率的な形成が可能となり、それぞれ好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系、ポリアクリレート系、シクロオレフィンポリマー系の樹脂を挙げることができる。また紫外線硬化性樹脂としては、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エン/チオール系、イソシアネート系の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂としては、複数個の重合性官能基を有するものを好ましく用いることができる。
【0031】
第1及び第2の構造層の材料としては、凹凸構造を形成しやすく且つ凹凸構造の耐擦傷性を得やすいという観点から、硬化時の硬度が高い材料が好ましい。具体的には、7μmの膜厚の樹脂層を基材上に凹凸構造が無い状態で形成した際に、鉛筆硬度でHB以上になるような材料が好ましく、H以上になる材料がさらに好ましく、2H以上になる材料がより好ましい。一方、基材フィルム層の材料としては、第1及び第2構造層の形成に際しての、及び/又は構造層を成形した後の複層体(基材フィルム層、第1の構造層及び第2の構造層を有するもの)の取り扱いを容易とするために、ある程度の柔軟性があるものが好ましい。このような材料を組み合わせることにより、取り扱いが容易で且つ耐久性に優れる複層体を得ることができ、その結果高性能の面光源装置を容易に製造することができる。このような材料の組み合わせは、それぞれの材料を構成する樹脂として、上に例示した透明樹脂を適宜選択することにより得ることができる。具体的には、第1及び第2の構造層の材料を構成する透明樹脂として、アクリレート等の紫外線硬化性樹脂を用い、一方基材フィルム層の材料を構成する透明樹脂として、脂環式オレフィンポリマー製のフィルムや、ポリエステルフィルムを用いることができ、これにより、好ましい材料の組み合わせを得ることができる。
【0032】
出光効率向上部が基材フィルム層を有する場合、第1の構造層と基材フィルム層との屈折率はできるだけ近くする態様とすることができ、この場合、好ましくは屈折率の差が0.20以内、さらに好ましくは0.17以内である。
【0033】
第1及び第2の構造層、基材フィルム層等の出光効率向上部の構成要素となる層の材料となる樹脂組成物は、当該層を光拡散性を有する層とする場合は、後述する粒子などの光拡散性を付与する要素を含むことができる。さらに、樹脂組成物は、必要に応じて任意の成分を含むことができる。当該任意の成分としては、フェノール系、アミン系などの劣化防止剤;界面活性剤系、シロキサン系などの帯電防止剤;トリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系などの耐光剤;等の添加剤を挙げることができる。
【0034】
本発明において、第1及び第2の構造層の厚みは、特に限定されないが1〜70μmであることが好ましい。ここで、第1の構造層の厚みとは、凹凸構造が形成されていない有機EL素子側の面と、凹凸構造の最も出向面側に突出した部分(図1〜図3の例では頂点11P)との距離のことである。また、第2の構造層の厚みとは、第1の構造層側に最も突出した部分と、出光面側に最も突出した部分との距離のことである。また基材フィルム層の厚みは、20〜300μmであることが好ましい。
【0035】
〔基板の材料、物性及び形状〕
出光効率向上部が有機EL素子を支持する基板を有する場合、かかる基板の材料としては、ガラス等の材料を採用することができ、それにより、面光源装置にたわみを抑制する剛性を与えることができる。また、基板として、有機EL素子を封止する性能に優れて、且つ、製造工程において有機EL素子を構成する層をその上に順次形成することを容易に行い得る基板を備えることにより、面光源装置の耐久性を向上させ、且つ製造を容易にすることができる。
【0036】
基板を構成する材料の例としては、ガラスに加えて樹脂を挙げることができる。基板の屈折率は、特に制限されないが、1.4〜2とすることができる。本発明において、基板の厚みは、特に限定されないが、0.1〜5mmであることが好ましい。
【0037】
〔接着層〕
出光効率向上部が接着層を有する場合、その材料である接着剤は、狭義の接着剤(23℃における剪断貯蔵弾性率が1〜500MPaであり、常温で粘着性を示さない、いわゆるホットメルト型の接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。本願では、別に断らない限り、接着剤及び接着層は、かかる広義の接着剤及びそれにより形成された接着層である。接着層の材料としては、具体的には、基板あるいは透明樹脂層に近い屈折率を有し、且つ透明であるものを適宜用いることができる。より具体的には、アクリル系接着剤あるいは粘着剤が挙げられる。接着層の厚みは、5〜100μmであることが好ましい。
【0038】
〔光拡散層〕
本発明の面光源装置においては、出光効率向上部を構成する層の1以上を、光拡散性を有する層(以下、単に「光拡散層」という場合がある。)とすることができる。より具体的には、出光効率向上部を構成する必須又は任意の層である基板、接着層、基材フィルム層、第1の構造層、第2の構造層、及びその他の任意に設けられる層の一部又は全部の層を、光拡散層とすることができる。
かかる光拡散層を有することにより、色ムラの低減、及び光取り出し効率の向上等の効果をより良好に得ることができる。また、装置を駆動させていないときに反射電極の鏡面が装置出光面から観察されることが意匠的に好まれない用途においては、当該光拡散層を有することにより、鏡面を隠蔽し、非駆動時の装置出光面の外観を、白色の外観又はその他の非鏡面の外観とすることが可能となる。
【0039】
光拡散層の材料としては、例えば、光拡散性を付与する粒子を含んだ材料、及び2種類以上の樹脂を混ぜ合わせて光を拡散させるアロイ樹脂とした材料を挙げることができる。光拡散性を容易に調節できるという観点から、光拡散性を付与する粒子を含んだ材料、特に光拡散性を付与する粒子を含んだ樹脂組成物が特に好ましい。
【0040】
光拡散性を付与する粒子は、透明であっても、不透明であってもよい。かかる粒子の材料としては、金属及び金属化合物、並びに樹脂等を用いることができる。金属化合物としては、金属の酸化物及び窒化物を挙げることができる。金属及び金属化合物としては、具体的には例えば銀、アルミのような反射率が高い金属、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、窒化珪素、錫添加酸化インジウム、酸化チタンなどの金属化合物を挙げることができる。一方樹脂としては、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。
【0041】
光拡散性を付与する粒子の形状は、球状、円柱状、立方体状、直方体状、角錐状、円錐状、星型状等の形状とすることができる。
光拡散層において、粒子の含有割合は、層を構成する材料全量中体積割合で1〜80%であることが好ましく、5〜50%であることがより好ましい。粒子の含有割合をかかる下限以上とすることにより、色ムラの低減等の所望の効果を得ることができる。また、かかる上限以下とすることにより、層中での粒子の凝集を防止し、良好に粒子が分散した層を容易に得ることができる。
粒子の粒径は好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。ここで粒径とは、体積基準の粒子量を、粒子径を横軸にして積算した積算分布における50%粒子径のことである。粒径が大きいほど、所望の効果を得るために必要な粒子の含有割合は多くなり、粒径が小さいほど、含有量は少なくてすむ。従って、粒径が小さいほど、色ムラの低減、及び光取り出し効率の向上等の所望の効果を、少ない粒子で得ることができる。なお、粒径は、粒子の形状が球状以外である場合には、その同等体積の球の直径を粒径とする。
【0042】
粒子が透明な粒子であり、且つ粒子が透明樹脂中に含まれる場合において、粒子の屈折率と、透明樹脂の屈折率との差が0.05〜0.5であることが好ましく、0.07〜0.5であることがより好ましい。ここで、粒子及び透明樹脂の屈折率は、どちらがより大きくても良い。粒子と透明樹脂の屈折率が近すぎると拡散効果が得られず色ムラは抑制されず、逆に差が大きすぎると拡散が大きくなり色ムラは抑制されるが光取出効果が低減することになる。
【0043】
出光効率向上部の一部若しくは全部を構成する層を光拡散層とする場合、出光効率向上部を構成する各層のうちどれを光拡散層とするかについては、特に限定されず、種々の観点から選択することができる。例えば、容易に拡散の度合いを調節しうるという観点からは、透明樹脂を含む層を光拡散層とすることが好ましい。
【0044】
さらに、層中の粒子の含有割合を過大にせずに十分な光拡散性を確保する観点からは、5μm以上といった、ある程度以上厚みがある層を光拡散層とすることが好ましい。
ここで、第1及び第2の構造層は、前述の通り硬度が高い材料が好ましいが、そのような硬度の高い材料の膜厚が厚いと、面光源装置において使用する際、経時的に、装置出光面に、不所望な反りをもたらす可能性がある。したがって、この観点からは、第1及び第2の構造層以外の層であって塑性変形しやすい性質を賦与しうる層、例えば基材フィルム層又は接着層を光拡散層とすることが好ましい。
【0045】
一方、製造工程において透明樹脂等の材料の加熱の工程を伴わない層を光拡散層とすることにより、製造工程の管理を容易にすることができる。例えば、樹脂搬送経路において粒子による詰まりが発生した場合の対処を容易にすることができる。この観点からは、接着層を光拡散層とすることが好ましい。または接着層と接着層以外の層を光拡散層とすることも好ましい。例えば、接着層と基材フィルム層とを光拡散層とし、基材フィルム層に添加する粒子の割合を少なくすることにより、基材フィルム層の製造工程における管理を容易にする(例えば、詰まりが発生する頻度を低減する)ことができる。
【0046】
さらには、出光効率向上部内に、上記第1及び第2の構造層、基材フィルム層、接着層及び基板以外の層を追加的に設け、かかる追加の層を光拡散層とすることもできる。例えば、第1の構造層と基材フィルム層の間、接着層と基板の間、基板の発光層側の表面など(例えば、発光層を構成する電極層とガラス基板との間)にかかる追加の層を形成することができる。または、かかる追加の層と上記第1及び第2の構造層、基材フィルム層、接着層及びガラス基板のうちの1以上の層との両方を光拡散層とすることもできる。
【0047】
光拡散層が出光効率向上部内の一部又は全部を構成する層として設けられる場合において拡散の度合いは特に限定しないが、一例として光拡散層が第2の構造層から接着層の間の一部または全部である場合に、前記第1及び第2の構造層の表面凹凸がない状態での、第2の構造層から接着層までの部分の全光線透過率は70〜95%であることが好ましく、75〜90%であることがさらに好ましい。また、光拡散層の屈折率は特に限定しないが、1.45〜2が好ましく、1.6〜2がより好ましく、1.7〜2がさらに好ましい。このような光拡散層の屈折率として大きいものを選択することで、光拡散層より出光側の層の屈折率は、より小さい屈折率の材料を用いることができるため、材料の選択性が広がる。
【0048】
〔有機EL素子〕
本発明の面光源装置は、発光層を含む有機EL素子を備える。有機EL素子は、2層以上の電極層と、これらの電極層間に設けられ、電極から電圧を印加されることにより発光する1層以上の発光層とを備える素子とすることができる。
【0049】
有機EL素子は、素子を構成する電極及び発光層等の層を基板上に形成し、さらにそれらの層を覆う封止部材を設け、基板と封止部材で封止された構成とするのが一般的である。通常、ここでいう基板側から出光する素子はボトムエミッション型、封止部材側から出光する素子はトップエミッション型と呼ばれる。本発明の面光源装置は、これらのいずれであってもよい。ボトムエミッション型の場合、有機EL素子用の基板、又はかかる基板と任意の層(基板と有機EL素子との間に存在する層)との組み合わせが、出光効率向上部の一部を構成する。一方トップエミッション型の場合、封止部材等の装置出光面側の構造体が出光効率向上部の一部を構成する。
【0050】
本発明において、有機EL素子を構成する発光層としては、特に限定されず既知のものを適宜選択することができる。発光層中の発光材料は1種類に限られず、また発光層も1層に限られず、光源としての用途に適合すべく、一種の層単独又は複数種類の層の組み合わせとすることができる。これにより、白色(具体的には例えば色温度3000〜6500Kの範囲)又はそれに近い色の光を発光するものとしうる。
本発明においては特に、観察角度による色味の変化を低減することを目的としているので、2以上の発光ピークを有するか又は広い波長範囲で発光する発光層であることが好ましい。従って、発光層は、2種以上の発光材料を含む1層以上の層であることが好ましい。より具体的には、発光層は白色の光を発光するものであることが好ましい。
【0051】
有機EL素子はさらに、電極間に、発光層に加えてホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層及びガスバリア層等の他の層をさらに有することもできる。本発明の面光源装置は、有機EL素子に加えて、素子の電極に通電するための配線、発光層の封止のための周辺構造等の任意の構成要素を備えることもできる。
【0052】
有機EL素子の電極は、特に限定されず既知のものを適宜選択することができる。第1実施形態にかかる有機EL素子140のように、出光面構造層側の電極を透明電極とし、反対側の電極を反射電極とすることにより、出光面構造層側に出光する有機EL素子とすることができる。また、両方の電極を透明電極とし、さらに装置出光面とは反対側に反射部材または散乱部材(例えば、空気層を介して配置される白色散乱部材等)を有することにより、装置出光面側への出光を達成することもできる。
【0053】
電極及びその間に設ける層を構成する材料としては、特に限定されないが、具体例として下記のものを挙げることができる。
透明電極の材料としてはITO等を挙げることができる。
正孔注入層の材料としてはスターバースト系芳香族ジアミン化合物等を挙げることができる。
正孔輸送層の材料としてはトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができる。
黄色発光層のホスト材料としては同じくトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができ、黄色発光層のドーパント材料としてはテトラセン誘導体等を挙げることができる。
緑色発光層の材料としては、ピラゾリン誘導体などがあげられる。
青色発光層のホスト材料としてはアントラセン誘導体等を挙げることができ、青色発光層のドーパント材料としてはペリレン誘導体等を挙げることができる。
赤色発光層の材料としては、ユーロピウム錯体などを挙げることができる。
電子輸送層の材料にはアルミニウムキノリン錯体(Alq)等を挙げることができる。
陰極材料にはフッ化リチウムおよびアルミニウムをそれぞれ用い、これらを順次真空成膜により積層させたものなどを挙げることができる。
【0054】
上記のもの又はその他の発光層を適宜組み合わせて積層型又はタンデム型と呼ばれる、補色関係にある発光色を発生する発光層を得ることができる。これにより、白色又はそれに近い色の光を発光する発光層とすることができる。補色関係の組み合わせは、黄/青、又は緑/青/赤等とすることができる。
【0055】
〔製造方法〕
本発明の面光源装置の製造方法は、特に限定されないが、例えば、第1及び第2の構造層、基材フィルム、接着層並びに基板を有する出光効率向上部を備える面光源装置を製造する場合、基板の一方の面に有機EL素子を構成する各層を積層し、その後又はその前に、基板の他方の面に、第1及び第2の構造層並びに基材フィルムを有する複層体を、接着層を介して貼付することにより製造することができる。
【0056】
第1及び第2の構造層を有する複層体の製造は、所望の形状を有する金型等の型を調製し、これを第1の構造層を形成する材料及び第2の構造層を形成する材料の層に転写することにより行うことができる。
【0057】
第1の構造層を形成するためのより具体的な方法としては、
(方法1)基材フィルムを構成する樹脂組成物Aの層及び第1の構造層を構成する樹脂組成物Bの層(凹凸構造はまだ形成されていない)を有する未加工複層体を例えば共押出等により調製し、かかる未加工複層体の樹脂組成物B側の面上に、凹凸構造を形成する方法;及び
(方法2)基材フィルムの上に、液体状態の樹脂組成物Bを塗布し、塗布された樹脂組成物Bの層に型を当て、その状態で樹脂組成物Bを硬化させ、凹凸構造を有する第1の構造層を形成する方法
を挙げることができる。
【0058】
方法1において、未加工複層体は、例えば樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを共押出する押出成形により得ることができる。未加工複層体の樹脂組成物B側の面上に、所望の表面形状を有する型を押し当てることにより、凹凸構造を形成することができる。
より具体的には、長尺の未加工複層体を押出成形により連続的に形成し、所望の表面形状を有する転写ロールとニップロールとで未加工複層体を加圧し、それにより、連続的な製造を効率的に行うことができる。転写ロールとニップロールとによる挟み圧力は、好ましくは数MPa〜数十MPaである。また転写時の温度は、樹脂組成物Bのガラス転移温度をTgとすると、好ましくはTg以上(Tg+100℃)以下である。未加工複層体と転写ロールとの接触時間はフィルムの送り速度、すなわちロール回転速度によって調整でき、好ましくは5秒以上600秒以下である。
【0059】
方法2において、第1の構造層を形成するための樹脂組成物Bとしては、紫外線等のエネルギー線により硬化しうる組成物を用いることが好ましい。かかる樹脂組成物Bを、基材フィルム上に塗布し、型を当てた状態で、塗布面の裏側(基材フィルムの、樹脂組成物Bを塗布した面とは反対側)に位置する光源から、紫外線等のエネルギー線を照射し、樹脂組成物Bを硬化させ、その後型を剥離することにより、樹脂組成物Bの塗膜を凹凸構造層とし、複層体を得ることができる。
【0060】
第2の構造層を形成するためのより具体的な方法としては、
(方法3)第1の構造層の上に、液体状態の樹脂組成物Cを塗布し、上に述べた方法2と同様に、塗布された樹脂組成物Cの層に型を当て、その状態で樹脂組成物Cを硬化させ、凹凸構造を有する第2の構造層を形成する方法
を挙げることができる。
【0061】
第1の構造層及び第2の構造層を形成するための他の方法としては、基板の上に直接、上記方法2及び方法3と同様の方法で第1の構造層及び第2の構造層を形成する方法を挙げることができる。これにより、基板上に直接第1の構造層が形成された態様の面光源装置を得ることができる。また更に他の方法として、平らな面上に上記方法2及び方法3と同様の方法で第1の構造層及び第2の構造層を形成し、第1の構造層及び第2の構造層を剥離し、これを直接又は接着層を介して基板に貼付する方法を挙げることができる。
【0062】
〔第2実施形態〕
上で例示した第1実施形態では、第1及び第2の凹凸構造は、装置出光面に平行な2方向に繰り返して配列された凹凸構造単位により構成されたものであり、より具体的には整列した四角錐からなるが、第1及び第2の凹凸構造の形状はこれに限られない。他の実施形態として例えば、凹凸構造は、装置出光面に平行な1の方向に延在する凹凸構造単位が、前記1の方向に垂直で且つ装置出光面に平行な方向に繰り返して配列されて構成されるものであってもよい。
【0063】
この場合、凹凸構造単位は、装置出光面に平行な方向に延在する角柱の形状とすることができる。かかる角柱の形状が多数配列されることにより、凹凸構造を条列状の構造とすることができる。このような実施形態においても、第1及び第2の凹凸構造の傾斜角θ1及びθ2、並びに第1及び第2の構造層の屈折率n1及びn2を上記所定の範囲内とすることにより、本発明の効果を得ることができる。
【0064】
図4は、本発明の面光源装置の別の一例を概略的に示す斜視図であり、図5は、図4に示した面光源装置を線2aを通る面で切断した断面を示す断面図である。図6は、図4及び図5に示す出光効率向上部200中の第1の構造層211を概略的に示す斜視図である。図4及び図5に示す面光源装置20は、第1及び第2の構造層として、上で述べた条列状の凹凸構造を有する第1の構造層211及び第2の構造層221を有する点において第1実施形態と異なっており、その他の構成要素は共通している。
【0065】
図6に示される通り、第1の構造層211の上側の面には、三角柱状の形状を有し装置の短辺方向に延在する凹凸構造単位212が、装置の長辺方向に繰り返して多数配列され、これらにより第1の凹凸構造が規定されている。一方、図4及び図5に示される通り、第2の構造層221の上側の面にも、三角柱状の形状を有し装置の短辺方向に延在する凹凸構造単位222が、装置の長辺方向に繰り返して多数配列され、これらにより第2の凹凸構造が規定されている。
【0066】
この例において、凹凸構造単位212は、その稜線21Pを通る垂直な面を対称面とする、対称な形状である。従って、一つの凹凸構造単位212が有する2つの斜面21Sと装置出光面とがなす角は等しい。従って、この例において、第1の凹凸構造は均一な傾斜角を有する多数の傾斜面からなるため、斜面21Sと装置出光面とがなす角が、第1の凹凸構造の傾斜面の傾斜角θ1に相当する。同様に、この例において、第2の凹凸構造の凹凸構造単位222も、その稜線22Pを通る垂直な面を対称面とする対称な形状である。従って、斜面22Sと装置出光面とがなす角が、第2の凹凸構造の傾斜面の傾斜角θ2に相当する。
【0067】
〔その他の実施形態〕
本発明は、前記具体例には限定されず、本願の特許請求の範囲及びその均等の範囲内で、任意の変更を施すことができる。
例えば、上で例示した第1実施形態では、第1及び第2の凹凸構造は、正四角錐状の形状からなる凹凸構造単位により構成されるが、凹凸構造単位はこれに限定されず、正四角錐状の形状に代えて、その他任意の角錐(例えば、三角錐、正四角錐以外の四角錐、六角錐等)状の形状、円錐状の形状、角錐又は円錐の先端が丸みを帯びた形状、角錐又は円錐の先端が平に面取りされた(角錐台又は円錐台)形状、球面の一部の形状、又はこれらが組み合わされた形状とすることができる。また、上で例示した第1実施形態では、第1及び第2の凹凸構造を構成する凹凸構造単位は、装置出光面側に凸な構造であるが、凹凸構造単位はこれに限定されず、上記各種の形状が反転した凹形の形状であってもよく、凸形の構造及び凹形の構造の組み合わせであってもよい。さらに、凹凸構造単位は、上記第2実施形態の三角柱状の形状に代えて、他の多角柱状の形状、円柱の一部の形状、及びこれらの組み合わせとすることもできる。さらに、第1の凹凸構造及び第2の凹凸構造の一方において角錐状の凹凸構造単位を設け、他方において角柱状の凹凸構造単位を設けるというように、第1の凹凸構造と第2の凹凸構造とで、異なるタイプの凹凸構造単位を採用することもできる。
【0068】
上で例示した第1実施形態及び第2実施形態では、凹凸構造単位を繰り返して配列する方向を、第1の凹凸構造と第2の凹凸構造とで同一の方向としたが、これを異なる方向とすることもできる。例えば、第1実施形態において、第2の凹凸構造を繰り返して配列する方向を変更し、装置の短辺及び長辺と非垂直非平行な方向とし、第1の凹凸構造と異なる繰り返し配列方向とすることができる。
また、上記実施形態の例示においては、第1の構造層及び第2の構造層の表面の全面に分布する凹凸構造単位として、同一の形状からなるもののみが分布しているものを示したが、凹凸構造において、異なる形状の凹凸構造単位が混在していてもよい。例えば、大きさの異なる角錐形状が混在していたり、角錐形状と円錐形状が混在していたり、複数の角錐が組み合わされた形状のものと単純な角錐形状とが混在していてもよい。
【0069】
第1の凹凸構造及び第2の凹凸構造に複数存在する傾斜面の角度が均一でない場合、例えば複数種類の傾斜面、平面、曲面、又はこれらの組み合わせを有するときは、面全体の平均傾斜角を、傾斜角θ1、θ2とする。平均傾斜角は、以下の通り規定する。即ち、凹凸構造面を、凹凸構造単位より十分に小さいn個の微小面積に分割し、それぞれの微小面積をΔSiとした場合に、前述のΔSiが装置出光面となす角度の値をθiとして、平均傾斜角は、下記式(2):
【0070】
【数1】

【0071】
で規定する。ここでΣΔSiは反射層の全表面積を表す。
【0072】
上で例示した第1実施形態及び第2実施形態では、第2の構造層が装置出光面となっているが、本発明の面光源装置はこれに限られず、第2の構造層のさらに上側に、任意の層を有していてもよい。例えば、第2の構造層の上側に第3の構造層を有していてもよく、第3の構造層は、上に述べた第1及び第2の凹凸構造の例として例示したもののいずれかと同様の凹凸構造を、装置出光面側に有していてもよい。さらに、出光効率向上部の上に、さらに任意の層を有していてもよい。かかる任意の層は、例えば出光効率向上部層の上面の凹凸構造の上にさらに設けられたコーティング層であってもよく、かかるコーティング層の上側の面が、本発明の面光源装置の装置出光面を規定するものであってもよい。
【0073】
上で例示した第1実施形態及び第2実施形態は、有機EL素子を形成し支持するための基板の上側に、第1及び第2の構造層を備えるが、本発明の面光源装置はこれに限られず、第1の構造層が基板を兼ねたものであってもよい。この場合、第1の構造層は、ガラス等の平板の表面を所定の形状に加工することにより得ることができる。
【0074】
上で例示した第1実施形態及び第2実施形態は、透明電極141を、基板131に直接接した状態で設けたが、基板と電極との間に、密着強度の向上や封止性能の向上などのために、無機材料の層等の任意の層を設けることができる。
【0075】
本発明の面光源装置はさらに、任意の構成要素として、有機EL素子と封止基板との間に、充填材や接着剤等の任意の物質の層を有していてもよく空隙を有していてもよい。空隙には、発光層の耐久性を大きく損なう等の不都合がない限りは空気やその他の気体が存在してもよいし、空隙内を真空としてもよい。
【0076】
〔面光源装置の用途〕
本発明の面光源装置は、照明器具及びバックライト装置等の光源装置としての用途に用いうる。
前記照明器具は、本発明の面光源装置を光源として有し、さらに、光源を保持する部材、電力を供給する回路等の任意の構成要素を含むことができる。前記バックライト装置は、本発明の面光源装置を光源として有し、さらに、筐体、電力を供給する回路、出光する光をさらに均一にするための拡散板、拡散シート、プリズムシート等の任意の構成要素を含むことができる。前記バックライト装置の用途は、液晶表示装置等、画素を制御して画像を表示させる表示装置、並びに看板等の固定された画像を表示させる表示装置のバックライトとして用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下において、実施例及び比較例を参照して本願発明をより具体的に説明するが、本願発明はこれらに限定されない。
【0078】
<比較例1:正面輝度重視型>
図7に示す層構成を有する従来技術の面光源装置30について、光学性能をシミュレーションした。図7に示す通り、面光源装置30は、正四角錐状の窪みで構成された凹凸構造単位312を有する出光面構造層312、基板131、透明電極141、発光層142、反射電極143、及び封止基板151をこの順に有する装置である。ただし、発光層142は、黄色発光層又は青色発光層とした。
シミュレーションの条件は、下記の通りとした。シミュレーションにおいては、発光層142として青色発光層を用いた場合、及び黄色発光層を用いた場合のそれぞれについて、別々に計算を行い、色ムラを求めた。基板131、透明電極141、黄色発光層及び青色発光層の厚さは、それぞれ0.7mm、100nm、20nm、及び15nmとした。基板131、透明電極141、黄色発光層及び青色発光層の屈折率は、それぞれ1.53、1.90、1.74、及び1.85とした。基板131、透明電極141、黄色発光層及び青色発光層のヘイズは、いずれも0%とした。反射電極142の性質は、反射率100%の鏡面反射としたとした。発光層142の配向分布は、ランバーシアンであり、図12に示す特性を有するものとした。
【0079】
出光面構造層311の厚さを300μmに、屈折率を1.54に設定した。出光面構造層の凹凸構造単位312の頂角を90°(即ちθ1=45°)に、ピッチ(四角錐の底辺の一辺の長さ)を200μmに設定した。
【0080】
これらの条件下で、正面輝度(黄色光のもの、以下同じ)、並びに青色光(波長480nm)及び黄色光(波長575nm)の光度分布を求めた。観察角度を傾斜させる方位は、凹凸構造312の四角錐の底辺の一つと平行な方向とした。さらに、各観察極角における青色光光度/黄色光光度の光度比を求め、極角0〜90°における光度比の最大値及び最小値を求め、色ムラ比を求めた。
本比較例で得られた色ムラ比を1として、以下の他の実施例及び比較例における色ムラ比を相対値として示す。また、正面輝度(後述する通り比較例2の値(単位:lm)を基準とした相対値)は、2.178であった。
【0081】
<比較例2:色ムラ重視型>
出光面構造層の凹凸構造単位312の頂角を60°(即ちθ1=60°)に変更し、ピッチは55nmとした(凹凸構造単位の高さが変更した分だけ厚みも変更した)他は、比較例1と同様の条件で、正面輝度及び色ムラ比を求めた。
本比較例での、黄色光正面光度の値(単位:lm)を1として、他の実施例及び比較例における正面輝度を相対値として示す。また、本比較例での色ムラ比は0.407であった。
【0082】
なお、比較例1及び2の他にも、凹凸構造単位312の頂角を様々に変化させて正面輝度及び色ムラ比を求めたところ、その中では正面輝度については比較例1が最も優れており、色ムラ比については比較例2が最も優れていることが分かった。
【0083】
<実施例1及び比較例3:屈折率のバリエーション>
図1〜図3に示す層構成を有する面光源装置10について、Δn値の変化による光学性能の変化をシミュレーションした。図1〜図3及び上記第1実施形態についての説明の通り、面光源装置10は、正四角錐状の凹凸構造単位122を有する第2の構造層112、正四角錐状の凹凸構造単位112を有する第1の構造層111、基板131、透明電極141、発光層142、反射電極143、及び封止基板151をこの順に有する装置である。
【0084】
基板131、透明電極141、発光層142及び反射電極142に関する条件は、比較例1と同様とした。
【0085】
第1の構造層111の厚さを300μmに設定し、第1の凹凸構造単位112の頂角を40°(即ちθ1=70°)、ピッチを55μmに設定した。第2の構造層121の厚さを300μmに設定し、第2の凹凸構造単位122の頂角を90°(即ちθ1=45°)、ピッチを200μmに設定した。
【0086】
これらの条件下で、第1の構造層111の屈折率n1を1.5〜1.7の範囲で様々に変化させ、さらに第2の構造層121の屈折率n2も様々に変化させてΔn(=n2−n1)の値を−0.20〜+0.20の範囲で様々に変化させ、色ムラ比及び正面輝度を求めた。結果を図8及び図9に示す。
【0087】
図8及び図9の結果から、以下のことが分かる。
図8の結果から、本願実施例(Δnが−0.20〜−0.16:白抜き四角又は白抜き三角で示される)では、色ムラ比が、比較例1の数値の半分以下であり、色ムラが低減されていることが分かる。さらに、図9の結果から、本願実施例では、正面輝度が、比較例2の数値の1.2倍以上であり、良好な正面輝度をも兼ね備えることが分かる。
【0088】
<実施例2及び比較例4:傾斜角のバリエーション>
図1〜図3に示す層構成を有する面光源装置10について、θ1及びθ2の値の変化による光学性能の変化をシミュレーションした。
【0089】
基板131、透明電極141、発光層142及び反射電極142に関する条件は、比較例1と同様とした。
【0090】
第1の構造層111の厚さ及び屈折率をそれぞれ300μm及び1.66に設定し、第1の凹凸構造単位112のピッチを55μmに設定した。
第2の構造層121の厚さ及び屈折率をそれぞれ300μm及び1.50に設定し、第2の凹凸構造単位122のピッチを200μmに設定した。
【0091】
これらの条件下で、第1の構造層111の頂角を20〜70°(即ちθ1=80〜55°)の範囲で様々に変化させ、さらに、第2の構造層121の頂角も80〜110°(即ちθ2=50〜35°)の範囲で様々に変化させて、色ムラ比及び正面輝度を求めた。結果を図10及び図11に示す。
【0092】
図10及び図11においては、第2の構造層頂角が80°〜100°(即ちθ2=50〜40°:白抜き三角又は白抜き菱形で示される)であって且つ第1の構造層頂角が20〜60°(即ちθ1=80〜60°)の範囲内であるものが、本願実施例に相当する。
【0093】
図10の結果から、本願実施例では、色ムラ比が、比較例1の数値の半分以下であり、色ムラが低減されていることが分かる。さらに、図11の結果から、本願実施例では、正面輝度が、比較例2の数値の1.2倍以上であり、良好な正面輝度をも兼ね備えることが分かる。
【符号の説明】
【0094】
10、20、30:面光源装置
100:出光効率向上部
111:第1の構造層
112:凹凸構造単位
121:第2の構造層
122:凹凸構造単位
131:基板
140:有機EL素子
141:透明電極
142:発光層
143:反射電極
151:封止基板
200:出光効率向上部
211:第1の構造層
212:凹凸構造単位
221:第2の構造層
222:凹凸構造単位
311:出光面構造層
312:凹凸構造単位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を備え、前記有機エレクトロルミネッセンス素子からの光を出光する装置出光面を有する面光源装置であって、
前記面光源装置はさらに、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より前記装置出光面側に位置する出光効率向上部を備え、
前記出光効率向上部は、第1の構造層、及び前記第1の構造層に接して前記第1の構造層より前記装置出光面側に位置する第2の構造層を備え、
前記第1の構造層は、その装置出光面側の面に、傾斜角θ1が60〜80°の傾斜面を有する第1の凹凸構造を有する、屈折率n1の材料からなる層であり、
前記第2の構造層は、その装置出光面側の面に、傾斜角θ2が40〜50°の傾斜面を有する第2の凹凸構造を有する、屈折率n2の材料からなる層であり、
n1及びn2が、下記式(1):
n2−n1≦−0.12 ・・・(1)
の関係を満たす、面光源装置。
【請求項2】
前記第1の凹凸構造及び前記第2の凹凸構造は、
前記装置出光面に平行な2以上の方向に繰り返して配列された凹凸構造単位により構成される凹凸構造であるか、又は
前記装置出光面に平行な1の方向に延在する凹凸構造単位が、前記1の方向に垂直で且つ前記装置出光面に平行な方向に繰り返して配列されて構成される凹凸構造である、
請求項1に記載の面光源装置。
【請求項3】
前記凹凸構造単位が、角錐状の形状、角錐台の形状、前記装置出光面に平行な方向に延在する角柱の形状、又はこれらの組み合わせを有する、請求項2に記載の面光源装置。
【請求項4】
前記出光効率向上部は、前記第1の構造層より前記装置出光面から遠い位置に、基材フィルム層をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の面光源装置。
【請求項5】
前記出光効率向上部は、前記第1の構造層より前記装置出光面から遠い位置に、接着層をさらに有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の面光源装置。
【請求項6】
前記出光効率向上部は、前記第1の構造層より前記装置出光面から遠い位置に、基板をさらに有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の面光源装置。
【請求項7】
前記出光効率向上部は、
前記基材フィルム層より前記装置出光面から遠い位置に、接着層をさらに有し、
前記接着層より前記装置出光面から遠い位置に、基板をさらに有する、請求項4に記載の面光源装置。
【請求項8】
前記出光効率向上部を構成する層の1以上が、光拡散性を有する層である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の面光源装置。
【請求項9】
前記光拡散性を有する層は、光拡散性を付与する粒子を含む材料からなる、請求項8に記載の面光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−142142(P2012−142142A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292964(P2010−292964)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】