説明

面取り部を機械加工するシステム

【課題】製造速度を向上させ、廃棄率を低減させる、面取り部の機械加工システムを提案する。
【解決手段】本発明は、円盤状部品(31)に面取り部(32,34)を機械加工するシステム(1)に関し、このシステムは、研磨手段(4)を有する研削装置(3)と、部品(31)を固定する装置(5)とを備え、この固定装置は、部品が取り付けられる支持部(13)を有し、この支持部に回転軸(16)が組み込まれている。本発明によれば、固定装置(5)は、さらに、面取り部(32,34)の角度を規定するように回転(B)の軸(16)を方向付ける手段(15)と、部品(31)に応力をかけて機械加工を行うため支持部(13)を研磨手段(4)に近づけるように動かす手段(17)と、を有する。本発明は、時計の風防の分野に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コランダムなどの硬質材料で構成された部品用の宝石細工システムに関し、より具体的には、面取り部を形成するためのこの種のシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計の風防の面取り部は、一般的には、部品の切り口に対して砥石車を面取り角度で接線接触させて動かすことによって形成される。この手法は広く用いられているが、実行速度が遅く、また、通常はバリ(材料のトゲ)が生じて、後にブラシ研磨が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、製造速度を向上させ、廃棄率を低減させる、面取り部の機械加工システムを提案することにより、前述の欠点の一部またはすべてを解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は、円盤状部品に面取り部を機械加工するシステムに関し、該システムは、研磨手段を有する研削装置と、部品を固定する装置とを備え、この固定装置は、部品が取り付けられる支持部を有し、この支持部に回転軸が組み込まれている。このシステムは、その固定装置が、さらに、面取り部の角度を規定するように回転軸を方向付ける手段と、部品に応力をかけて機械加工を行うため支持部を研磨手段に近づけるように動かす手段と、を有することを特徴としている。
【0005】
このように、効果的に、研磨手段に対する部品の傾きによって、部品の面取り角度が直接与えられ、また、支持部を動かす手段により引き起こされる応力によって、面取り加工をより迅速に実行することが可能であり、材料が過度の応力を受けることは回避され、同時に、面取り部をブラシ研磨する後続ステップが不要となる。
【0006】
本発明の他の効果的な特徴によれば、
‐ 研磨手段は、機械加工性を向上させるように可動である。
‐ 研磨手段は、回転可能に取り付けられた研磨ストリップにより形成されている。
‐ 研削装置は、研磨ストリップと部品との接触領域の下に、研磨ストリップと部品との接触を維持するための弾性手段を有する。
‐ 弾性手段は、エラストマ・ブロックにより形成されている。
‐ 支持部を近づけるように動かす上記手段は、支持部を研磨手段に対して垂直方向に動かすための垂直スライド部を含んでいる。
‐ 方向付ける上記手段は、支持部を近づけるように動かす上記手段に対する支持部の回転軸の傾きを変えるためのウォーム歯車アセンブリを含んでいる。
‐ 固定装置は、支持部を研磨手段に対して横断方向に動かすための水平スライド部を含んでいる。
‐ 水平スライド部は、コネクティングロッド‐クランク・アセンブリにより動かされて、これにより、支持部を研磨手段に対して往復運動させるように動かす。
‐ 円盤状部品は、球面風防である。
【0007】
その他の特徴および効果は、添付の図面を参照して、限定するものではない例として以下で行う説明から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明に係るシステムの立面斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係るシステムの側面斜視図である。
【図3】図3は、図1の一部分の拡大図である。
【図4】図4は、本発明に係るシステムにより得られる部品の斜視図である。
【図5】図5は、図4に示す部品の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、本発明は、コランダムなどの硬質材料で構成された円盤状部品31に面取り部32、34を機械加工するシステム1に関するものである。本発明によれば、部品31は、時計の球面風防を形成するためのものとすることができる。
【0010】
機械加工システム1は、研削装置3と、部品を固定するための装置5と、システム1のアクチュエータを制御する制御装置7とを備える。これらの装置はすべて、フレーム2に取り付けられている。
【0011】
本発明によれば、研削装置3は研磨手段4を有し、これは、機械加工性を向上させるように可動であることが好ましい。図2に示すように、研磨手段4は、2つのローラ8、10に回転可能に取り付けられ、アクチュエータ12により駆動されて動きAが生じる研磨ストリップ6によって形成されている。図1〜3に示すように、研削装置3は制限された領域14を有し、この領域で研磨手段4にアクセス可能であり、この領域は、材料の吹き飛びを制限するため、また、動作を安全防護するため、垂直壁によって保護されている。
【0012】
本発明によれば、効果的に、研削装置3は、研磨ストリップ6と機械加工する部品31との接触領域14の下に、研磨ストリップ6と部品との接触を維持するための弾性手段9をさらに有する。この場合、弾性手段9は、厚さが数センチメートルで、研磨手段4の下で制限領域14の一部または全体に及ぶ、ゴムなどのエラストマ製ブロック11で形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、部品31の固定装置5は、機械加工する部品31が取り付けられる支持部13を有し、この支持部には、アクチュエータ18により駆動されて動きBが生じる回転軸16が組み込まれている。本発明によれば、固定装置5は、効果的に、面取り部32、34の角度β、γを規定するように回転軸16を方向付ける手段15と、部品31に応力をかけて機械加工を行うため支持部13を研磨手段4に近づけるように動かす手段17とをさらに有する。
【0014】
本発明によれば、支持部を近づけるように動かす手段17は、好ましくは、研磨手段4に対して垂直方向Cに支持部13を動かすための垂直スライド部19を含んでいる。実際に、手段17により生じる応力と弾性手段9により実現される復原との組み合わせにより研磨ストリップ6と機械加工する部品31との接触を維持することで、材料に過度の応力をかけることなく面取り部32、34を形成することができ、その結果、低廃棄率となり、また、面取り部32、34をブラシ研磨する追加ステップが省略されることがわかった。
【0015】
本発明によれば、方向付ける手段15は、好ましくは、支持部13を近づけるように動かす手段17に対する支持部13の回転軸16の傾きαを変えるためのウォーム歯車アセンブリ20を有している。こうして、効果的に、部品31の面取り角度β、γは、研磨手段4に対する部品31の傾きαによって直接与えられる。
【0016】
最後に、固定装置5は、好ましくは、研磨手段4に対して横断方向Dに支持部13を動かすための水平スライド部21を含んでいる。図1〜3に示すように、水平スライド部21は、フレーム2上で固定装置5の基部として用いられている。この場合、水平スライド部21は、三角定規形部材22を介して垂直スライド部19を運び、これによって、方向付け手段15および支持部13‐回転軸16‐アクチュエータ18・アセンブリが運ばれる。
【0017】
本発明によれば、水平スライド部21は、効果的に、コネクティングロッド‐クランク・アセンブリ23によって動かされ、これにより、支持部13は、研磨手段4に対して横断方向Dに往復運動するように動かされる。図1〜3に示すように、コネクティングロッド‐クランク・アセンブリ23は、三角定規形部材22上の水平スライド部21に接続されている。
【0018】
機械加工システム1により加工された部品31の例を図4および5に示している。部品31は、略円盤状の本体33を有し、その縁部に所定の角度β、γの面取り部32、34を備えている。図5に示すように、この部品31は球面風防であって、その外径35と内径36との寸法差により一定の厚さeを形成している。
【0019】
当然のことながら、本発明は図示の例に限定されるものではなく、当業者には明らかである種々の変更および変形が可能である。具体的には、部品31は、異なる形状のものであってもよく、および/またはコランダムと異なる材料で構成されたものであってもよく、および/または時計以外に適用されるものであってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の風防(31)に面取り部(32、34)を機械加工するシステム(1)であって、
研磨手段(4)を有する研削装置(3)と、
部品(31)を固定する装置(5)と、を備え、この固定装置は、前記部品が取り付けられる支持部(13)を有し、この支持部に回転軸(16)が組み込まれており、
前記固定装置(5)は、
前記面取り部(32、34)の角度を規定するように、前記回転(B)の軸(16)を方向付ける手段(15)と、
前記部品(31)に応力をかけて機械加工を行うため、前記支持部(13)を前記研磨手段(4)に近づけるように動かす手段(17)と、をさらに有し、
前記研削装置(3)は、前記研磨ストリップ(6)と前記部品(31)との接触領域の下に、前記研磨ストリップ(6)と前記部品(31)との接触を維持するための弾性手段(9)を有することを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記研磨手段(4)は、機械加工性を向上させるように可動であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記研磨手段(4)は、回転(A)可能に取り付けられた研磨ストリップ(6)により形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記弾性手段(9)は、エラストマ・ブロック(11)により形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記支持部を近づけるように動かす手段(17)は、前記支持部(13)を前記研磨手段(4)に対して垂直方向(C)に動かすための垂直スライド部(19)を含むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記方向付ける手段(15)は、前記支持部を近づけるように動かす手段(17)に対する前記支持部(13)の前記回転(B)の軸(16)の傾き(α)を変えるためのウォーム歯車アセンブリ(20)を含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記固定装置(5)は、前記支持部(13)を前記研磨手段(4)に対して横断方向(D)に動かすための水平スライド部(21)を含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記水平スライド部(21)は、コネクティングロッド‐クランク・アセンブリ(23)により動かされて、これにより、前記支持部(13)を前記研磨手段(4)に対して往復運動(D)させるように動かすことを特徴とする、請求項7に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記風防(31)は、球面風防であることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載のシステム(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−6268(P2013−6268A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140418(P2012−140418)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(599044744)
【Fターム(参考)】