説明

面状発熱体

【課題】リード線の断線、絶縁被覆破れによる感電、デッドショートの危険性がなく、安心して施工できる電気床暖房パネルが作れる面状発熱体を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の電極3a〜eと、電極3a〜eにより給電される抵抗体2と、電極3a〜e及び抵抗体2を上下から覆うPETフィルム4からなる電気絶縁性基材と、電極3a〜eと接続部7aにて電気的に接続してなる給電用引き回しリード線6a、6bを備え、接続部7aを抵抗体2に対して片側に集約するとともに、給電用引き回しリード線6a、6bを交差することなく接続部7aに対して極性別に両側に配置してなる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気床暖房パネル、電気カーペット等に使われる面状発熱体に関するものであり、特に面状発熱体の給電部構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の面状発熱体11は、図4に示すように、所定間隔毎に電極用銅線群13を配列した織布14にカーボン系導電性塗料12を含浸、乾燥させて面状発熱部15を形成し、各電極用銅線群13の端部に電極端子17を固着した後、この面状発熱部15を電気絶縁性樹脂で被覆している。また、電極端子のうち1つ置きに位置する2つの電極端子17をそれぞれリード線16a、16bで相互に接続し、リード線16a、16bの一方の端子から導出したリード線18a、18bをコンセント19に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−97160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の面状発熱体11において、図4に示すように、リード線16a、16bはA部において交差しているため、例えば電気カーペットに使用した場合には、リード線16a、16bの交差部分が足で踏まれたり着座されたりすると、リード線16a、16bには折り曲げストレスが加わり断線したり、また、圧力も加わるのでリード線16a、16bの絶縁被覆が破れデッドショートとなる危険性もある。
【0005】
また、電気床暖房パネルに使用した場合には、図5に示すように、電気床暖房パネル20の厚みは面状発熱部15の厚みよりも電極端子17あるいはリード線の太さで決定されるが、リード線16a、16bの交差部分はリード線1本分の太さだけ余分になるので、電気床暖房パネル20に面状発熱体11を組み込んだ場合、電気床暖房パネル20の外殻を構成しているボード21によってリード線16a、16bの交差部分に圧力が加わって絶縁被覆が破れデッドショートする危険性が発生する。
【0006】
あるいは、リード線16a、16bの交差部分の高さ、すなわちリード線二本分の距離を電気床暖房パネル20の厚みにするとリード線1本分だけ厚くなり、施工した時に電気床暖房パネル20の上に配設するフローリング材が框より上がってしまうという不具合が発生する可能性もある。
【0007】
なお、以上では、電気カーペットや電気床暖房パネルの場合を例に採り上げ説明したが、デッドショート及び厚さの問題は他の用途でも同様に起こりえる。
【0008】
本発明は、前記従来の面状発熱体に発生する課題を解決するもので、リード線の断線、絶縁被覆破れによるデッドショートの可能性を低減可能で、厚みを抑えることも可能な面状発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の面状発熱体は、複数の電極と、電極により給電される抵抗体と、電極及び抵抗体を上下から覆う電気絶縁性基材と、電極と接続部にて電気的に接続してなる給電用引き回しリード線を備え、接続部を抵抗体に対して片側に集約す
るとともに、給電用引き回しリード線を交差することなく接続部に対して極性別に両側に配置してなる構成としている。
【発明の効果】
【0010】
この構成によれば、給電用引き回しリード線同士が交差していないので、給電用引き回しリード線に加わる折り曲げストレスは小さくて断線せず、踏付け圧力によって給電用引き回しリード線同士の絶縁被覆が潰れたり破れたりすることに起因するデッドショートを低減させることが可能となる。また、給電用引き回しリード線を接続部に対して極性別に両側に区分して配置しているので、万が一、給電用引き回しリード線の絶縁被覆にクラック等が発生したとしても異極同士が接触してデッドショートが起こる可能性を低減することが可能となる。また、電気床暖房パネルに応用した場合、その厚みは給電用引き回しリード線1本分の厚さで済む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における面状発熱体の構成を示す平面図
【図2】本発明の実施の形態2における面状発熱体の構成を示す平面図
【図3】本発明の実施の形態3における面状発熱体の構成を示す平面図
【図4】従来の面状発熱体の平面図
【図5】従来の面状発熱体の電気床暖房パネルへの組込み部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、複数の電極と、電極により給電される抵抗体と、電極及び抵抗体を上下から覆う電気絶縁性基材と、電極と接続部にて電気的に接続してなる給電用引き回しリード線を備え、接続部を抵抗体に対して片側に集約するとともに、給電用引き回しリード線を交差することなく接続部に対して極性別に両側に配置したものである。
【0013】
本発明によれば、給電用引き回しリード線同士が交差していないので、給電用引き回しリード線に加わる折り曲げストレスは小さくて断線せず、踏付け圧力によって給電用引き回しリード線同士の絶縁被覆が潰れたり破れたりすることによるデッドショートの可能性を低減することが可能となる。また、給電用引き回しリード線を接続部に対して極性別に両側に区分して配置しているので、万が一、給電用引き回しリード線の絶縁被覆にクラック等が発生したとしても異極同士が接触してデッドショートを起こすことはなくさらに安全である。また、面状発熱体の厚みは給電用引き回しリード線1本分の薄さで済む。
【0014】
好ましくは、接続部を千鳥の配置となるように互い違いに交互に配設したものである。
【0015】
これにより、前述した第1の発明の作用、効果に加えて、給電用引き回しリード線は直線的に配置できるので、給電用引き回しリード線の長さを短くすることができ材料費の削減を図ることができる。また、給電用引き回しリード線の長さが確実に決まるので給電用引き回しリード線の位置決めが容易となり接続部での電極と給電用引き回しリード線の接続加工時間を短くすることもできる。さらに、給電用引き回しリード線のたるみを少なくすることができるので、電気床暖房パネル等に組み込む時に給電用引き回しリード線が移動して接続部と接触して給電用引き回しリード線の絶縁被覆を損傷してデッドショートするなどという不具合の発生する可能性がなくなる。
【0016】
本発明の他の態様は、複数の電極と、電極により給電される抵抗体と、電極及び抵抗体を上下から覆う電気絶縁性基材と、電極と接続部にて電気的に接続してなる給電用引き回しリード線を備え、接続部を極性別に抵抗体に対して両側に配設し、同極の接続部同士を給電用引き回しリード線にて電気的に接続したものである。
【0017】
これにより、前述の作用・効果に加えて、抵抗体に対して一方の側に配設された接続部は全て同極であるので、給電用引き回しリード線を誤って異極の接続部に接続することはない。また、接続部の配置が極性別に別れているので、一方の極性の接続部の接続加工と他方の極性の接続部の接続加工を分離することができ、接続加工のスピードアップを図ることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における面状発熱体1aの平面図である。この面状発熱体1aにおいて、樹脂と導電性カーボンを混練してフィルム状にした抵抗体2の上に銅撚り線からなる電極線3a、3b、3c、3d、3eは等間隔に配設され、ホットメルト樹脂をラミネートしたPETフィルム4で抵抗体2と電極線3a〜3eとが両側から挟み込まれている。熱プレスあるいは熱ラミネートにより、PETフィルム4、抵抗体2、電極線3a〜3eは熱圧着され、こうして抵抗体シート5aが形成される。この抵抗体シート5aの一辺近傍には抵抗体2が存在せず、電極線3a〜3eとPETフィルム4のみの部分が設けられる。この電極線3a〜3e端部近傍のPETフィルム4は切り欠かれ、電極線3a〜3eの端部が露出させ、給電用引き回しリード線6a、6bと半田付け、スポット溶接あるいはスリーブ端子によるカシメ等により電気的、物理的に接続され、こうして接続部7aが構成される。また、電極線3a〜3eの中で隣り合う電極線が異極となるように、本実施の形態では、電極線3a、3c、3eが一方の極に、電極線3b、3dが他方の極に割り当てられ、電極線3a、3c、3eが給電用引き回しリード線6aにより繋がれており、電極線3b、3dが給電用引き回しリード線6bによって繋がれている。また、給電用引き回しリード線6aと給電用引き回しリード線6bは交差しないよう給電用引き回しリード線6aは接続部7aに対して抵抗体2側に、給電用引き回しリード線6bは接続部7aに対して抵抗体シート5aの端面側に引き回している。なお、図中、参照符号8は電源電線である。
【0020】
なお、抵抗体2は単なるフィルムだけでなく、補強のために不織布などの補強材を貼付したり抵抗体2のフィルムの中に不織布などの補強材を埋設した形態、あるいは不織布などの補強材に樹脂と導電性カーボンを混練した材料を含浸させた形態でもよい。
【0021】
また、電極線3a〜3eは銅撚り線でなく、抵抗体2との密着性をより強固にするために、抵抗体2と同一材料または近似した組成材料を被覆した被覆線でもよく、面状発熱体1aが可撓性をそれほど必要としない箇所に使用されるならば、銅単線や銅平線でもよい。電極線の素材としても、銅だけでなく他の金属線を用いてもよい。
【0022】
また、本実施の形態においては、同一のPETフィルム4を使用しているが、必要に応じて互いに厚みの異なるPETフィルムを用いてもよく、フィルムの材質も機能が維持できるならば違っていてもよい。
【0023】
接続部7aを設けるためのPETフィルム4の切り欠きも上下のPETフィルム4を切り欠いてもよいし、上下いずれか一方のPETフィルム4だけを切り欠いて電極線3a〜3eの端部を露出させてよい。
【0024】
以上のように構成された面状発熱体について、以下その動作、作用を説明する。
【0025】
給電用引き回しリード線6aと6bは交差していないので、例えば電気カーペットに使用されて足で踏まれた場合でも、給電用引き回しリード線6a、6bに加わる折り曲げス
トレスは小さくて断線せず、踏付け圧力によって給電用引き回しリード線6a、6b同士の絶縁被覆が潰れて破れ、デッドショートとなることを防止することができる。また、例えば電気床暖房パネルに組み込んだ場合でも、給電用引き回しリード線6a、6bの太さで決定される電気床暖房パネルの厚さの中に納まり、給電用引き回しリード線6a、6bに圧力が加わって給電用引き回しリード線6a、6bの絶縁被覆が潰れ破れてデッドショートすることを防止することができ、給電用引き回しリード線6a、6bを接続部7に対して極性別に両側に区分して配置しているので、万が一、給電用引き回しリード線6a、6bの絶縁被覆にクラック等が発生したとしても給電用引き回しリード線6aと6bが接触してデッドショートを起こすことはなくさらに安全性を高めることができる。また、例えば電気床暖房パネルの厚みは給電用引き回しリード線1本分の薄さで済むので、施工時に電気床暖房パネルの厚みでその上に配設するフローリング材が框より上がってしまうこともなく安心して施工できる。
【0026】
(実施の形態2)
図2は、本発明の第2の実施の形態における面状発熱体の平面図である。
【0027】
図2において、面状発熱体1bは、電極線、抵抗体、PETフィルムからなる抵抗体シートおよび接続部などの基本的構成は実施の形態1と同一であるが、本実施の形態では、電極線3a、3c、3eの端部に構成された接続部7bは、電極線3b、3dの端部に構成された接続部7cに対して千鳥の配置となるように電極線3b、3dの端部に構成された接続部7cに比べて抵抗体シートの内側、すなわち抵抗体2に近くなるように配設している。そして、給電用引き回しリード線6cにて電極線3aと3c、および3cと3eの間を直線的に繋いでおり、一方、給電用引き回しリード線6dにて電極線3bと3dの間を直線的に繋いでいる。
【0028】
以上のような構成とすることによって、前述した実施の形態1と同一の作用、効果を有すると共に、給電用引き回しリード線6c、6dは直線的なので、第1の実施の形態における給電用引き回しリード線6a、6bに比べて長さを短くすることができ材料費の削減となる。また、給電用引き回しリード線6c、6dが直線的であることを利用して、例えば、給電用引き回しリード線6cの一方の端部を電極線3aの端部に構成された接続部7bの位置にセットすれば、給電用引き回しリード線6cの他方の端部は電極線3cの端部に構成された接続部7bの位置に来るので、両方の接続部7bで同時に電極線と給電用引き回しリード線の端部を接続することができ接続加工の加工時間を短縮することができる。さらに、給電用引き回しリード線6c、6dはたるみがないので、例えば、電気床暖房パネル等に組み込む時にも電気床暖房パネルの内側と擦れて給電用引き回しリード線6bが移動して異極の接続部7cと接触し、給電用引き回しリード線6bの絶縁被覆が何らかの原因で損傷してデッドショートするなどという不具合が発生することもない。
【0029】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における面状発熱体1cの平面図である。図3において、面状発熱体1cは、電極線、抵抗体、PETフィルムからなる抵抗体シートおよび接続部などの基本的構成は実施の形態1と同一であるが、本実施の形態では、抵抗体シート5bの対向する二辺近傍に、抵抗体2が存在せずかつ電極線3a〜3eとPETフィルム4のみの接続部形成領域9a、9bが設けられており、接続部形成領域9aにて電極線3a、3c、3eの端部近傍のPETフィルム4を切り欠き、露出した電極線3a、3c、3eの端部と給電用引き回しリード線6eを接続して接続部7dを構成している。また、接続部形成領域9bでは電極線3b、3dの端部近傍のPETフィルム4を切り欠き、露出した電極線3b、3dの端部と給電用引き回しリード線6fを接続して接続部7eを構成している。
【0030】
なお、電源電線8は、電極線3dの端部に構成している接続部7eと電極線3eの接続部形成領域9b側の端部に構成している接続部7fから取り出している。
【0031】
以上のような構成とすることによって、前述した実施の形態1と同一の作用、効果を有すると共に、接続部形成領域9aに構成された接続部7d同士は同極となり、接続部形成領域9bに構成された接続部7e同士も同極となる。したがって、接続部7dに異極となる給電用引き回しリード線6fを接続するという誤配線することはできないので、部分的に発熱しないとかデッドショートなどという不具合が生じることはない。また、接続部7eと7fが接続部形成領域9aと9bに分かれているので、先に接続部7eの接続加工を必要台数分行い、後で接続部7fの接続加工を行うことができ、加工作業のスピードアップを図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明にかかる面状発熱体は、リード線に加わる折り曲げストレスは小さくて断線せず、踏付け圧力によってリード線同士の絶縁被覆が潰れて破れデッドショートとなることを低減することが可能となり、さらに厚さを抑えることが可能となる。この面状発熱体は、電気床暖房パネル、電気カーペット等の暖房商品に限らず、抵抗体を面的に形成し給電用電極線を複数本配置した発熱体すべてに適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1a、1b、1c 面状発熱体
2 抵抗体
3a〜3e 電極線
4 PETフィルム
5a、5b 抵抗体シート
6a〜6f 給電用引き回しリード線
7a〜7f 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極と、前記電極により給電される抵抗体と、前記電極及び前記抵抗体を上下から覆う電気絶縁性基材と、前記電極と接続部にて電気的に接続してなる給電用引き回しリード線を備え、前記接続部を前記抵抗体に対して片側に集約するとともに、前記給電用引き回しリード線を交差することなく前記接続部に対して極性別に両側に配置してなる面状発熱体。
【請求項2】
隣り合う前記接続部が千鳥の配置となるように互い違いに交互に配設されてなることを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
複数の電極と、前記電極により給電される抵抗体と、前記電極及び前記抵抗体を上下から覆う電気絶縁性基材と、前記電極と接続部にて電気的に接続してなる給電用引き回しリード線を備え、前記接続部を極性別に前記抵抗体に対して両側に配設し、同極の前記接続部同士を給電用引き回しリード線にて電気的に接続してなる面状発熱体。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−133951(P2012−133951A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283989(P2010−283989)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】