説明

面発光照明器具および面発光照明器具製造方法

【課題】任意の形状の照明面であっても、少ない個数の光源を用いて、該照明面を均一に照明することが可能な面発光照明器具を提供する。
【解決手段】複数のLED21それぞれからの放射光を背面に受け、平行光に変換して前面から照明光として出力するフレネルレンズ形成樹脂板10は、複数のフレネルレンズ11を備え、複数のLED21それぞれは、複数のフレネルレンズ11のいずれか1つに対応付けて配置され、かつ、フレネルレンズ11それぞれには、対応付けられたLED21からの放射光が最も多く入射される位置に配置される。ここで、複数のフレネルレンズ11の配置位置として、あらかじめ定めた任意の形状の照明面を均一に照明する位置に配置する。また、複数のフレネルレンズ11には、鋸状の断面を形成する溝が平行直線形状であるリニアフレネルレンズを少なくとも1つ以上含んでいても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光照明器具および面発光照明器具製造方法に関し、特に、発光ダイオード(LED:Light Emission Diode)または半導体レーザ素子を光源とする面発光照明器具であって、パチンコ、スロットマシンその他の遊技機や交通機関用の信号機のごとく、奥行き寸法が短い装置に好適に配備することができる面発光照明器具および該面発光照明器具を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ、スロットマシンその他の遊技機では、照明光によって形成されるアニメーション面のキャラクタ等の形や絵を表象するLED装飾ユニットが、各遊技機の前面(遊技者に対向する面)の遊技盤上の複数個所に設けられている。該LED装飾ユニットは、LED(LED:Light Emission Diode、発光ダイオード)を光源とする面発光照明器具である。該LED装飾ユニットに求められる奥行き寸法は、5〜15mm程度であり、蛍光灯などを光源とする一般的な面発光照明器具に比べて非常に短い。また、該LED装飾ユニットの照明面は、アニメーション面のキャラクタ、動物、花、自然物のうちの1つまたは複数の形や絵を表象することが多い。したがって、これらの形や絵からなる像を表象するLED装飾ユニットの照明面の形状は、一般に、円形、楕円形、矩形、正六角形といった整った形状ではなく、非対称形状いわゆる異形状(不整形状)である。
【0003】
従来の面発光照明器具のLED装飾ユニットにおいては、表象する像に対応して多数のLEDを配列した構成としている。表象する像に対応して多数のLEDを配列する方式の面発光照明器具は、任意の形の像を表象することが容易である。すなわち、照明器具の形を任意に設計することができるという利点を有している。
【0004】
しかし、表象する像に対応して多数のLEDを配列する方式の面発光照明器具の場合、所要LEDの個数が非常に多く、製造費が高価になるという欠点があった。
【0005】
このような多数のLEDを用いる方式の面発光照明器具の欠点を解決するために、特許文献1の特表2003−532960号公報「交通信号用の信号機」に記載のような照明方式が提案されている。該特許文献1に記載の照明方式では、点光源であるLEDから放射される光を1つのフレネルレンズによって平行光に変換して面発光させることにより、所要LEDの個数を低減することを可能とし、より安価な面発光照明器具を実現しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003−532960号公報(第3−5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1記載の照明方式では、1つの光源(LED)からの光を平行光に変換するフレネルレンズが1つであることから、面発光領域は円形状であり、交通信号機のような円形の照明面を有する面発光照明器具という用途に対しては適用することができる。しかしながら、パチンコやスロットマシン等の遊技機におけるLED装飾ユニットのごとく、あるいは、さらに高度な信号を表示しようとする交通信号機のごとく、照明面が非対称形状や異形状(不整形状)になった場合には、前記特許文献1記載の照明方式のような方式では、光源のLEDに近い領域では明るいものの、光源のLEDから遠い領域では暗くなってしまうので、照明面における明るさの分布が不均一となってしまう。かくのごとく、前記特許文献1記載の照明方式の場合、任意の形状の照明面つまり異形(不整形)の照明面を照明しようとしても、該照明面における明るさが不均一となるという解決すべき課題があった。
【0008】
(本発明の目的)
そこで、本発明の目的は、前述の課題を解決し、任意の形状の照明面であってもつまり照明面が異形であっても、少ない個数の光源を用いて、該照明面の明るさを均一にすることが可能で、かつ、安価な面発光照明器具および面発光照明器具製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明による面発光照明器具および面発光照明器具製造方法は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)複数の光源と、複数の該光源それぞれの出力光である放射光を背面に受け、該放射光を略平行な平行光にそれぞれ変換し、変換した該平行光を前面から照明光として出力するフレネルレンズ形成樹脂板とを少なくとも含む面発光照明器具において、前記フレネルレンズ形成樹脂板が、複数のフレネルレンズを有し、複数の前記光源それぞれは、複数の前記フレネルレンズのうちのいずれかにそれぞれ対応付けて配置され、かつ、該フレネルレンズそれぞれは対応付けられた前記光源から出力される放射光が最も多く入射される位置に配置されている面発光照明器具。
【発明の効果】
【0011】
本発明の面発光照明器具および面発光照明器具製造方法によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0012】
あらかじめ定めた位置それぞれに複数のフレネルレンズを配置したフレネルレンズ形成樹脂板と、各フレネルレンズそれぞれに放射光を最も多く入射することができる位置にそれぞれ対応付けて配置した複数の光源とを備える構成としているので、複数のフレネルレンズそれぞれを配置する位置を所望する任意の形状の照明面を均一に照明することができる位置に配置することにより、より少ない個数の光源を用いて、対称形状のみならず非対称形状や異形状も含め、所望の形状の照明面を均一の明るさで照明することができる。
【0013】
また、フレネルレンズ形成樹脂板として、1枚の光学用アクリル板をレンズカットが入ったプレス用の金型を用いてプレス成形することにより、複数のフレネルレンズを1回のプレス加工工程で一気に形成することができるので、光源として多数のLEDを要する従来の面発光照明器具よりも、製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る面発光照明器具の構成の一例を示す構成図である。
【図2】図1のフレネルレンズ形成樹脂板上のフレネルレンズの溝の形成状態の一例を示す説明図である。
【図3】図1のフレネルレンズ形成樹脂板上のフレネルレンズの少なくとも1つ以上を形成するリニアフレネルレンズの構成を示す斜視図である。
【図4】1つのフレネルレンズ11に対して、複数のLEDを対応付けて配置するようにした面発光照明器具の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による面発光照明器具および面発光照明器具製造方法の好適な実施例について添付図を参照して説明する。
【0016】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、複数の光源例えばLED(Light Emission Diode:発光ダイオード)と、複数のLEDそれぞれの出力光である放射光を背面に受け、該放射光を略平行な平行光にそれぞれ変換し、変換した該平行光を前面から照明光として出力するフレネルレンズ形成樹脂板とを少なくとも含む面発光照明器具に関するものであり、前記フレネルレンズ形成樹脂板が、複数のフレネルレンズを有し、複数のLEDそれぞれは、複数のフレネルレンズのうちのいずれかにそれぞれ対応付けて配置され、かつ、対応付けられた該フレネルレンズそれぞれにLEDから出力される放射光が最も多く入射される位置に配置されていることを主要な特徴としている。なお、光源は、LEDに限るものではなく、半導体レーザ素子等も含め、任意の光源であっても構わない。
【0017】
ここで、前記フレネルレンズ形成樹脂板に備えられる複数のフレネルレンズの形成位置は、対称形状のみならず、非対称形状や異形状も含め、あらかじめ定めた任意の形状の照明面を均一に照明することができる位置に配置することとする。
【0018】
また、前記フレネルレンズ形成樹脂板が有している複数のフレネルレンズとして、鋸状の断面を形成する溝が平行直線形状のリニアフレネルレンズを少なくとも1つ以上含んでいるように構成しても良い。
【0019】
さらに、前記フレネルレンズ形成樹脂板が有している複数のフレネルレンズのうち、互いに隣接するフレネルレンズ同士が重なり合う重畳領域が存在する場合、互いに重なり合う該重畳領域において、片方の該フレネルレンズは、完全同心円形状ではなく、該重畳領域だけレンズ機能が欠けた不完全同心円形状を成して形成されることが望ましい。
【0020】
なお、本発明における照明面の形状は、前述のごとく、円形、楕円形、矩形、正六角形のごとく整った形状に限るものではなく、任意の形状つまり異形も含むことを特徴としている。
【0021】
例えば、照明面の形状として、照明光によって表象されるアニメーション画のキャラクタ、動物、花、自然物のオブジェクトのうち、1ないし複数のオブジェクトを表象するような形状であっても良い。
【0022】
また、本発明に係る面発光照明器具を、パチンコ、スロットマシンその他の遊技機や交通機関用の信号機等に好適に適用することができ、例えば、遊技機の前面の遊技盤上に配置し、遊戯の状況に応じて、LEDを点滅させるようにしても良いし、交差点等の交通機関用の信号機として、LEDを点滅させるようにしても良い。
【0023】
(本発明の構成例)
次に、本発明に係る面発光照明器具の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る面発光照明器具の構成の一例を示す構成図であり、図1(A)は、面発光照明器具を上から見下ろした場合の断面図を示し、図1(B)は、面発光照明器具を側面から眺めた場合の断面図を示している。図1に示す面発光照明器具は、複数のフレネルレンズ11を形成するためのフレネルレンズ形成樹脂板10、光源となる複数のLED(Light Emission Diode)21を形成するためのプリント基板20を少なくとも含んで構成されている。
【0024】
ここで、フレネルレンズ形成樹脂板10上に形成されるフレネルレンズ11の配置位置は、図1(A)に示すように、面発光源として、所望の任意の形状からなる照明面30を均一な明るさで照明することができる位置としてあらかじめ定めた位置とされており、円形等の対称な形状の照明面のみならず、非対称形状の照明面であっても、当該照明面を均一に照明することができるように、複数のフレネルレンズ11の配置位置を適切に決定している。
【0025】
また、図1(B)に示すように、プリント基板20は、フレネルレンズ形成樹脂板10からフレネルレンズ11の焦点距離Fだけ離間した位置に配置され、かつ、プリント基板20上に形成されるLED21は、それぞれに対応するフレネルレンズ11に最も多くの光量の放射光が入射されるように、各LED21と対応するフレネルレンズ11との互いの中心位置が一致するような位置に配置される。これにより、各LED21から放射された光の殆どは、対応するフレネルレンズ11それぞれに背面から入射され、フレネルレンズ11それぞれの前面から平行光として出射されることによって、面発光源として、任意の形状の照明面30を均一に照明することになる。
【0026】
つまり、1枚の透明な光学用のアクリル板からなるフレネルレンズ形成樹脂板10上に、あらかじめ定めた任意の位置に複数のフレネルレンズ11を形成することにより、対応する光源のLED21からの光を、面発光させて、所望の形状の照明面30を均一に照明することができる。
【0027】
ここで、フレネルレンズ形成樹脂板10上に隣接して形成する2つのフレネルレンズ11,11の鋸状の断面を形成する溝11a,11b同士が互いに重畳するような位置関係になる場合、図2に示すように、いずれか一方のフレネルレンズ11は、同心円形状に溝11aを形成するが、他方のフレネルレンズ11については、前記一方のフレネルレンズ11の溝11aと重畳する重畳領域12におけるレンズ機能を欠いた不完全同心円形状に溝11bを形成することとする。図2は、図1のフレネルレンズ形成樹脂板10上のフレネルレンズ11の溝の形成状態の一例を示す説明図であり、隣接するフレネルレンズ11の溝11a,11bが重畳する位置関係にある場合、他方のフレネルレンズ11については重畳領域12ではレンズ機能を欠いた不完全同心円形状の溝11bとして形成する例を説明している。
【0028】
なお、フレネルレンズ形成樹脂板10上に形成する複数のフレネルレンズ11のうち、少なくとも1つ以上が、図3に示すような略平面形状のシリンドリカルレンズ機能を有するリニアフレネルレンズを含んで構成するようにしても良い。図3は、図1のフレネルレンズ形成樹脂板10上のフレネルレンズ11の少なくとも1つ以上を形成するリニアフレネルレンズの構成を示す斜視図であり、リニアフレネルレンズ11cの形状として、鋸状の断面を形成する溝が平行直線形状を成している状態を説明している。光源のLED21からの放射光をリニアフレネルレンズ11cに入射すると、シリンドリカルレンズ機能により、リニアフレネルレンズ11cからは縦方向または横方向のいずれか一方にのみ拡散した平行光として出射することができる。これにより、フレネルレンズ形成樹脂板10の各フレネルレンズ11から出射される照明光の形状にアクセントをつけることができ、任意の形状の照明面を均一に照明する面光源を得ることが、より容易に可能になる。
【0029】
以上のように、図1ないし図3に示すような面発光照明器具によれば、限られた筐体内に実装する場合であっても、光源となるLED21の使用数を低減することが可能であり、かつ、LED21の光特性である点光源を、フレネルレンズ11および/またはリニアフレネルレンズ11cによって面光源および/または線光源に変換して、任意の形状の照明面を均一の明るさで照明することができ、目立たせようとするターゲットを、広範囲に亘って輝度を落とすことなく照明することができる。
【0030】
(本発明の面発光照明器具の適用例)
以上のような構成からなる面発光照明器具においては、より少ない個数の光源を用いて、任意の形状の照明面を均一の明るさで照明することができるので、パチンコやスロットマシンその他の遊技機の前面の遊技盤上に配置して、遊技の状況に応じて、光源である例えばLED21の1ないし複数を適宜点滅させることにより、装飾ユニットとして、任意の形状のアニメーション画を表象することができ、臨場感に富む視覚効果を与えることができる。
【0031】
ここで、パチンコやスロットマシン等の場合、ターゲットとなるLED装飾ユニットの奥行きは10〜30mmであり、光源からターゲットの表面樹脂板までの距離は5〜15mmの間の場合が多い。一方、本実施形態の面発光照明器具におけるフレネルレンズ11、リニアフレネルレンズ11cの焦点距離Fは、2〜100mmの間で自在に設計することができるので、例えば、焦点距離2〜7mm程度の短焦点距離のフレネルレンズ11、リニアフレネルレンズ11cを用いることにすれば、前述のごとき狭い限られたスペースであっても、LED21の点光源を面光源や線光源に変換して、1つのフレネルレンズ11、リニアフレネルレンズ11cによってより広範囲に亘ってムラなく照明することができる。この結果、全体のLED21の個数を低減することができ、狭いスペースであっても、効果的なLED装飾ユニットを実現することができる。
【0032】
ここで、遊技機の照明面に表象されるアニメーション画として、キャラクタ、動物、花、自然物等のオブジェクトのうち、いずれか1ないし複数のオブジェクトを単独または組み合わせて用いるようにしても良い。
【0033】
さらには、前述のような面発光照明器具においては、交通状況および/または時間経過に応じて、光源である例えばLED21の1ないし複数を適宜点滅させて、各種の照明面の形状や点滅状態を表象するようにすることも可能であり、陸上や水上の交通機関用の信号機の表示部として用いることも、あるいは、交通機関そのものの信号装置や警報装置として搭載することも可能である。
【0034】
(本発明の面発光照明器具の製造方法)
次に、図1に示すような面発光照明器具のフレネルレンズ形成樹脂板10を製造する製造方法について説明する。本製造方法においては、厚さ0.5〜4.0mm程度の1枚の透明な光学用アクリル板をレンズカットが入ったプレス用の金型を用いてプレス成形することにより、光学ムラを生じないようにして、複数のフレネルレンズを一気に形成して、フレネルレンズ形成樹脂板10を製造する。
【0035】
つまり、あらかじめ加温した状態にあるプレス用の金型により、光学用アクリル板が軟化点(100〜200℃)に加温されるまで、2〜4分かけて、徐々に加熱しながら均一の圧力で押圧することにより、光学用アクリル板を熱によって変形させ、フレネルレンズ形成樹脂板10として、フレネルレンズ状のレンズカットまたはリニアフレネルレンズ状のレンズカットが付いたアクリル板に仕上げる。
【0036】
かくのごとき製法により、光学用アクリル板にクラックが入ることもなく、かつ、光学ムラを生じることもなく、多数のフレネルレンズ11および/またはリニアフレネルレンズ11cを有するフレネルレンズ形成樹脂板10を1回のプレス加工工程で一気に製造することができる。
【0037】
なお、図1〜図3に前述した面発光照明器具においては、1つのフレネルレンズ11に1つのLED21を対応付けている場合を例示したが、本発明は、かかる場合に限るものではない。例えば、1つのフレネルレンズ11に対して、複数のLED21を対応付けて配置するようにしても良い。かくのごとく、複数のLED21を配置する場合には、焦点距離Fのフレネルレンズ11を形成したフレネルレンズ形成樹脂板10から距離Fだけ離れて配置したプリント基板20上において、フレネルレンズ11の中心からの延長上の位置および該位置から任意の距離だけ上下および/または左右等の方向にずれた位置にLED21をそれぞれ配置し、各LED21を例えば1秒〜3秒の間隔で点滅させる点灯ランニングを行わせることによって、平面にて擬似的な回転灯(所謂パトライト)を実現するようにしても良いし、さらには、点灯するLED21の順番を適宜変更することにより、各種の点灯回転パターンを演出するようにすることも可能である。
【0038】
図4は、1つのフレネルレンズ11に対して、複数のLEDを対応付けて配置するようにした面発光照明器具の実施形態を示す模式図である。図4(A)はその面発光照明器具の正面図、図4(B)はその面発光照明器具の平面図、図4(C)はその面発光照明器具におけるフレネルレンズの平面図である。図4(A)は図4(B)のA−A矢視断面図である。図4において、11はフレネルレンズ、20はプリント基板、a,b1,b2,b3及びcは、LEDである。LEDa,b2,b3及びcは、プリント基板20上にLEDb1から等距離の位置に配設してある。LEDb1は、フレネルレンズ11の光軸上に配設してある。フレネルレンズ11の中心とLEDb1の発光点との距離は、フレネルレンズ11の焦点距離Fである。
【0039】
LEDa,b1,b2,b3及びcを、3つの点灯グループに分け、第1の点灯グループをLEDaで構成し、第2の点灯グループをLEDb1,b2及びb3で構成し、第3の点灯グループをLEDcで構成する。そして、第1の点灯グループ、第2の点灯グループ及び第3の点灯グループを1秒〜3秒の周期で順に点灯させる。例えば、1周期を1秒とすると、最初の1/3秒間はLEDaだけを点灯し、その間残りのLEDb1,b2,b3及びcは消灯しておき、次の1/3秒間はLEDb1,b2及びb3を点灯し、その間残りのLEDa及びcは消灯しておき、次の1/3秒間はLEDcだけを点灯し、その間残りのLEDa,b1,b2及びb3は消灯しておき、以降最初のLEDaだけを点灯し、その間残りのLEDb1,b2,b3及びcは消灯しておくというように、第1から第3の点灯グループの点滅を連続的に周回する。
【0040】
いま、フレネルレンズ11の中心とLEDa,b2,b3及びcの発光点との各距離をそれぞれFa,Fb2,Fb3及びFcとすると、Fa=Fb2=Fb3=Fcである。フレネルレンズ11の中心とLEDb1の発光点との距離は、フレネルレンズ11の焦点距離Fであるので、距離Fa,Fb2,Fb3及びFcは、何れもフレネルレンズ11の焦点距離Fより僅かに大きい。このように、LEDa,b2,b3及びcの位置がフレネルレンズ11の焦点距離Fより僅かに大きいと、LEDa,b2,b3及びcの発光は、フレネルレンズ11の光軸(LEDb1の発光点とフレネルレンズ11の中心とを結ぶ線)となす角度を小さくする方向に、フレネルレンズ11のレンズ作用により曲げられる。すなわち、フレネルレンズ11は、LEDa,b2,b3及びcの発光をフレネルレンズ11の光軸に収束する。
【0041】
上述のように、フレネルレンズ11の光軸上であって、フレネルレンズ11の焦点にLEDb1を配設するとともに、プリント基板20の片側の平面上にLEDb1から等距離の位置にLEDa,b2,b3及びcを配設し、かつ、LEDa,b1,b2,b3及びcを、第1から第3の3つの点灯グループに分け、各点灯グループを順に点灯することにより、所謂パトライトを擬似的に構成することができる。本発明の一実施形態である図4の面発光照明器具は、パトロールカーの屋根上等に設置されて、回転ミラーで光ビームを回転させることにより実現しているパトライトとほぼ同等な光源を、可動部(前記の例では、回転ミラー)を要しない静的な手段で実現している。
【0042】
図4を参照して行った前記擬似パトライトの説明では、第2の点灯グループをLEDb1,b2及びb3で構成し、LEDb1,b2及びb3を同期して点滅する例を挙げた。しかしながら、第2の点灯グループは、LEDb1,b2及びb3に代えて、LEDb2だけで構成しても、擬似パトライトは実現できる。尤も、第2の点灯グループを構成するLEDは、LEDb1,b2及びb3という3つとした方が、LEDb1だけのものより、一層パトライトに近似した印象を与えることができる。
【0043】
なお、図4の面発光照明器具において、LEDa,b2,c及びb3の順に点滅させ、この点滅を同じ順に循環させるとにより、回転する放射状光を得ることができる。ここで、LEDa,b2,c及びb3の順に点滅させるとは、LEDaを点灯させている時はLEDb2,c及びb3は消灯しておき、LEDb2を点灯させている時はLEDa,c及びb3は消灯しておき、LEDcを点灯させている時はLEDa,b2,及びb3は消灯しておき、LEDb3を点灯させている時はLEDa,b2,及びcは消灯してように、LEDの点滅を制御することである。
【0044】
また、図1〜図3に前述した面発光照明器具においては、透明なフレネルレンズ形成樹脂板10にフレネルレンズ11および/またはリニアフレネルレンズ11cを形成して、フレネルレンズ形成樹脂板10を透過して背面から入射した放射光を前面から平行光に変換して出力する場合について説明したが、場合によっては、フレネルレンズ形成樹脂板10には、フレネルレンズ11および/またはリニアフレネルレンズ11cにミラーを蒸着して、入射光を平行光に変換して反射して出射するミラーフレネルレンズとして形成することによって、バックライトあるいはリフレクタとして利用するようにしても良い。
【0045】
以上には、本発明の面発光照明器具を遊技機に適用する例を主に挙げて説明したが、本発明の面発光照明器具は遊技機だけではなく、交通信号機、道路標識、看板、サインボード等における照明具として適用できることは特に説明するまでもない。特に、図4を参照して説明した擬似パトライトや放射状光を回転させる形態の面発光照明器具は、小型で軽量であり、低消費電力であり、また可動部のないことによる低故障率が得られるだけでなく、更にパトライト同様に人の注意を強く惹きつけるので、交通信号機、道路標識、看板、サインボード等における照明具として有用である。
【0046】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて、次のような構成として表現できる。
(2)前記フレネルレンズ形成樹脂板に備えられる複数の前記フレネルレンズは、あらかじめ定めた任意の形状の照明面を均一に照明することができる位置に形成してある上記(1)の面発光照明器具。
(3)前記照明面の形状は、対称形状のみならず、非対称系形状も含む上記(2)の面発光照明器具。
(4)前記照明面に前記照明光によって表象されるアニメーション画として、キャラクタ、動物、花、自然物のうちの1つまたは複数を用いる上記(1)ないし(3)のいずれかの面発光照明器具。
(5)前記フレネルレンズ形成樹脂板に備えられる複数の前記フレネルレンズとして、鋸状の断面を形成する溝が平行直線形状であるリニアフレネルレンズを少なくとも1つ含んでいる上記(1)ないし(4)のいずれかの面発光照明器具。
(6)前記フレネルレンズ形成樹脂板に備えられる複数の前記フレネルレンズのうち、互いに隣接する前記フレネルレンズ同士が重なり合う重畳領域が存在する場合、互いが重なり合う前記重畳領域において、片方の該フレネルレンズは、該重畳領域だけレンズ機能が欠けた不完全同心円形状を成して形成される上記(1)ないし(5)のいずれかの面発光照明器具。
(7)前記光源は、LED(Light Emission Diode:発光ダイオード)または半導体レーザ素子である上記(1)ないし(6)のいずれかの面発光照明器具。
(8)パチンコ、スロットマシンに代表される遊技機の前面の遊技盤上に設けられ、遊戯の状況に応じて、前記光源を点滅させる上記(1)ないし(7)のいずれかの面発光照明器具。
(9)1つのフレネルレンズに対して、複数のLEDを対応付けて配置してなる上記(1)ないし(8)のいずれかの面発光照明器具。
(10)前記LEDは平面上に配設された3つ又は3つ以上の複数個でなり、それら複数個のLEDを第1乃至第3の点灯グループに区分し、第1及び第3の点灯グループを第2の点灯グループを中心にほぼ対称に配設し、第2の点灯グループのLEDの内の1つを全LEDの中心に配置し、その中心に配設した該1つのLEDを中心LEDと称するとき、該中心LEDから等距離に他のLEDを配置し、第1及び第3の点灯グループを該中心LEDに関しほぼ対称に配設し、該中心LEDの位置を前記フレネルレンズの焦点位置とし、第1乃至第3の点灯グループを循環的に順次に点滅させる上記(9)の面発光照明器具。
(11)交通信号機、道路標識、看板、サインボード等における照明具として適用される上記(1)ないし(10)のいずれかの面発光照明器具。
(12)交通機関用の信号機の表示部に設けられ、交通状況および/または時間経過に応じて、前記光源を点滅させる上記(1)ないし(10)のいずれかの面発光照明器具。
(13)上記(1)ないし(12)のいずれかの面発光照明器具を製造する面発光照明器具製造方法であって、前記フレネルレンズ形成樹脂板を製造する工程として、1枚の光学用アクリル板をレンズカットが入ったプレス用の金型を用いてプレス成形することにより、複数の前記フレネルレンズを前記光学用アクリル板上に1回のプレス加工工程で一気に形成する面発光照明器具製造方法。
【符号の説明】
【0047】
10 フレネルレンズ形成樹脂板
11 フレネルレンズ
11a 溝
11b 溝
11c リニアフレネルレンズ
12 重畳領域
20 プリント基板
21,a,b1,b2,b3,c LED
30 照明面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、複数の該光源それぞれの出力光である放射光を背面に受け、該放射光を略平行な平行光にそれぞれ変換し、変換した該平行光を前面から照明光として出力するフレネルレンズ形成樹脂板とを少なくとも含む面発光照明器具において、前記フレネルレンズ形成樹脂板が、複数のフレネルレンズを有し、複数の前記光源それぞれは、複数の前記フレネルレンズのうちのいずれかにそれぞれ対応付けて配置され、かつ、該フレネルレンズそれぞれは対応付けられた前記光源から出力される放射光が最も多く入射される位置に配置されていることを特徴とする面発光照明器具。
【請求項2】
前記フレネルレンズ形成樹脂板に備えられる複数の前記フレネルレンズは、あらかじめ定めた任意の形状の照明面を均一に照明することができる位置に形成してあることを特徴とする請求項1に記載の面発光照明器具。
【請求項3】
前記照明面の形状は、対称形状のみならず、非対称系形状も含むことを特徴とする請求項2に記載の面発光照明器具。
【請求項4】
前記照明面に前記照明光によって表象されるアニメーション画として、キャラクタ、動物、花、自然物のうちの1つまたは複数を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の面発光照明器具。
【請求項5】
前記フレネルレンズ形成樹脂板に備えられる複数の前記フレネルレンズとして、鋸状の断面を形成する溝が平行直線形状であるリニアフレネルレンズを少なくとも1つ含んでいることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の面発光照明器具。
【請求項6】
前記フレネルレンズ形成樹脂板に備えられる複数の前記フレネルレンズのうち、互いに隣接する前記フレネルレンズ同士が重なり合う重畳領域が存在する場合、互いが重なり合う前記重畳領域において、片方の該フレネルレンズは、該重畳領域だけレンズ機能が欠けた不完全同心円形状を成して形成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の面発光照明器具。
【請求項7】
前記光源は、LED(Light Emission Diode:発光ダイオード)または半導体レーザ素子であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の面発光照明器具。
【請求項8】
パチンコ、スロットマシンに代表される遊技機の前面の遊技盤上に設けられ、遊戯の状況に応じて、前記光源を点滅させることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の面発光照明器具。
【請求項9】
1つのフレネルレンズに対して、複数のLEDを対応付けて配置してなる請求項1ないし8のいずれかに記載の面発光照明器具。
【請求項10】
前記LEDは平面上に配設された3つ又は3つ以上の複数個でなり、それら複数個のLEDを第1乃至第3の点灯グループに区分し、第1及び第3の点灯グループを第2の点灯グループを中心にほぼ対称に配設し、第2の点灯グループのLEDの内の1つを全LEDの中心に配置し、その中心に配設した該1つのLEDを中心LEDと称するとき、該中心LEDから等距離に他のLEDを配置し、第1及び第3の点灯グループを該中心LEDに関しほぼ対称に配設し、該中心LEDの位置を前記フレネルレンズの焦点位置とし、第1乃至第3の点灯グループを循環的に順次に点滅させる請求項1ないし9のいずれかに記載の面発光照明器具。
【請求項11】
交通信号機、道路標識、看板、サインボード等における照明具として適用される請求項1ないし10のいずれかに記載の面発光照明器具。
【請求項12】
交通機関用の信号機の表示部に設けられ、交通状況および/または時間経過に応じて、前記光源を点滅させることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の面発光照明器具。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の面発光照明器具を製造する面発光照明器具製造方法であって、前記フレネルレンズ形成樹脂板を製造する工程として、1枚の光学用アクリル板をレンズカットが入ったプレス用の金型を用いてプレス成形することにより、複数の前記フレネルレンズを前記光学用アクリル板上に1回のプレス加工工程で一気に形成することを特徴とする面発光照明器具製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−60575(P2011−60575A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208995(P2009−208995)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(508213687)株式会社エフ・アイ・ティ (3)
【Fターム(参考)】