説明

面発光素子、面発光素子アレイ、書き込みヘッドおよびプリンタ

【課題】光量の減少を防止しつつ金属配線の断線を防止することができる面発光素子および面発光素子アレイを提供する。
【解決手段】発光素子アレイは、p型の半導体基板と、第1のp型の半導体層14と、第2のn型の半導体層16と、第3のp型の半導体層18と、第4のn型の半導体層20とを有する、サイリスタ構造の面発光素子である。第4の半導体層20は、ゲート電極24のためにメサ状にエッチングされ、第3の半導体層18との間に段差部Sを生じさせる端部(エッチング面)EDを有する。端部EDには、順方向のメサとなる第1の側部と、第1の側部に対向し順方向のメサとなる第2の側部と、逆方向のメサとなる第3の側部とからなる迫出し部40が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光素子、面発光素子アレイ書き込みヘッドおよびプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
密着型イメージセンサやプリンタなどの書込みヘッドに、面発光素子アレイが利用されている。典型的な面発光素子アレイは、1つの基板上に線形に配列された複数の面発光素子を集積して構成されている。面発光素子の代表的なものとして、発光ダイオード、発光サイリスタ、レーザダイオードが知られている。この中で、発光サイリスタは、化合物半導体層(GaAs、AlGaAsなど)の積層によりPNPN構造を形成し、ゲート電極にゲート電圧および/またはゲート電流が印加されたとき、アノード電極およびカソード電極から注入された電子−正孔が結合され、発光が生じる。
【0003】
このような発光素子アレイに自己走査機能を持たせ、各発光サイリスタを順次点灯させる自己走査型の発光素子アレイが特許文献1ないし3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−238962号公報
【特許文献2】特開2007−250853号公報
【特許文献3】特開2007−250961公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光量の減少を防止しつつ配線層の断線を防止することができる面発光素子および面発光素子アレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、表面から光を放出する、第1導電型の第1の化合物半導体層と、前記第1の化合物半導体層上に形成され、かつ第1の化合物半導体層との間に段差部を生じさせる端部を有する第2導電型の第2の化合物半導体層と、前記第2の化合物半導体層上に形成された電極と、前記段差部を含むように前記第1および第2の化合物半導体層上に形成され、かつ前記電極に通じる貫通孔が形成された絶縁層と、前記貫通孔を介して前記電極に電気的に接続され、前記絶縁膜を介して前記段差部上を延在する配線層とを有し、前記端部には、前記端部から突出した少なくとも1つの迫出し部が形成され、前記迫出し部は、前記端部に接続されかつ順方向に傾斜する面を有する第1の側部と、前記端部に接続されかつ順方向に傾斜する面を有する第2の側部と、第1の側部と第2の側部に接続されかつ前記順方向とは逆方向に傾斜する面を有する第3の側部とを有する、面発光素子。
請求項2に記載の発明は、前記配線層の幅は、前記迫出し部の前記第3の側部の幅よりも大きく、前記配線層の下方に前記第1および第2の側部が位置する、請求項1に記載の面発光素子。
請求項3に記載の発明は、前記配線層は、前記電極に接続されかつ第1の幅を有する第1の幅部分と、第1の幅よりも広い第2の幅を有する第2の幅部分と、第1の幅部分と第2の幅部分との間に形成され第1の幅から第2の幅に向けて幅が広がる幅拡張部分とを有し、前記幅拡張部分の両側の縁が前記第1および第2の側部上を交差し、前記第1の幅は、前記第3の側部の幅よりも狭く、前記第2の幅は、前記第3の側部の幅よりも広い、請求項1または2に記載の面発光素子。
請求項4に記載の発明は、前記第1および第2の側部は、前記第3の側部に向けて先端が狭くなるように傾斜し、前記配線層の両側の縁が前記第1および第2の側部上を交差し、前記配線層の幅は、前記第3の側部の幅よりも大きい、請求項1に記載の面発光素子。
請求項5に記載の発明は、前記端部には、離間した2つの迫出し部が形成され、前記配線層の幅は、前記2つの迫出し部の間隔よりも大きい、請求項1ないし4いずれか1つに記載の面発光素子。
請求項6に記載の発明は、面発光素子はさらに、基板と、基板上に形成された第1の導電型の第3の化合物半導体層と、第2の導電型の第4の化合物半導体層とを含み、前記第1の化合物半導体層は第4の化合物半導体層上に形成され、前記第1の化合物半導体層上には、サイリスタのゲート電極が形成される、請求項1ないし5いずれか1つに記載の面発光素子。
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6いずれか1つに記載の面発光素子が直線状に配列された複数の面発光素子と、
前記複数の面発光素子の配列方向に平行と平行に延在する主配線層とを有し、
前記複数の面発光素子の各電極に接続された配線層は、前記主配線層と直交し前記主配線層に接続される、面発光素子アレイ。
請求項8に記載の発明は、面発光素子アレイは、自己走査型発光素子アレイである、請求項7に記載の面発光素子アレイ。
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の面発光素子アレイを用いた光書込みヘッド。
請求項10に記載の発明は、請求項9記載の光書込みヘッドを備えたプリンタ。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、迫出し部を持たない構成の面発光素子と比較して、配線層の断線を防止することができる。
請求項2の発明によれば、配線層の幅方向のくびれを抑制することができる。
請求項3の発明によれば、発光光量の低下を防止することができる。
請求項4の発明によれば、配線層の断線を防止することができる。
請求項5の発明によれば、配線層の幅方向のくびれを抑制することができる。
請求項6の発明によれば、サイリスタ構造の面発光素子の配線層の断線を防止することができる。
請求項7の発明によれば、面発光素子アレイ上の複数の配線層の断線を防止することができる。
請求項8の発明によれば、自己走査型発光素子アレイの配線層の断線を防止することができる。
請求項9の発明によれば、光書込みヘッドに用いられる面発光素子の配線層の断線を防止することができる。
請求項10の発明によれば、プリンタヘッドに用いられる面発光素子の配線層の断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施例に係る発光サイリスタの平面図とそのX−X線断面図である。
【図2】図1の発光サイリスタの迫出し部を拡大した平面図、X1−X1線断面図、Y−Y線断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る発光サイリスタの平面図と迫出し部を拡大した平面図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る発光サイリスタの迫出し部を拡大した平面図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係る発光サイリスタの迫出し部を拡大した平面図である。
【図6】本実施例の発光素子アレイの概略平面図である。
【図7】本実施例の自己走査型発光素子アレイを適用した光書込みヘッドの構造を示す例である。
【図8】本実施例の自己走査型発光素子アレイを用いた光書込みヘッドを光プリンタに適用した例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の態様では、面発光素子として自己走査型の発光サイリスタアレイを例示する。なお、図面のスケールは、発明の特徴を分かり易くするために強調しており、必ずしも実際のデバイスのスケールと同一ではないことに留意すべきである。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施例に係る発光サイリスタの平面図と、そのX−X線断面図である。本実施例の発光サイリスタ10は、p型の半導体基板12上に、第1のp型の半導体層14、第2のn型の半導体層16、第3のp型の半導体層18、第4のn型の半導体層20を順にエピタキシャル成長で積層して形成される。半導体基板12および第1乃至第4の半導体層は、III−V族の化合物半導体から構成され、例えばGaAs系の半導体から構成される。
【0011】
最上層の第4の半導体層20上にカソード電極22を形成した後、第4の半導体層20をメサ状にエッチングして下層の第3の半導体層18の表面を露出させる。このエッチングを、ゲート出しエッチングと呼ぶことにする。ゲート出しエッチングにより、第4の半導体層20と第3の半導体層20との間に段差部Sが形成される。また、ゲート出しエッチングにより露出された第3の半導体層18の表面には、ゲート電極24が形成され、基板12の裏面には、アノード電極26が形成される。こうして、3端子構造の発光サイリスタが形成される。
【0012】
また、カソード電極22、ゲート電極24を覆うように、第3および第4の半導体層18、20上にSiO2などの絶縁膜30を成膜され、カソード電極22上の絶縁膜30をエッチングすることで絶縁膜30にコンタクトホール32が形成される。さらに絶縁膜30上に、配線層34となる金属材料をスパッタリングなどで成膜することによって、金属材料がコンタクトホール32を介してカソード電極22に電気的に接触される。次に、公知のフォトリソグラフィによって金属材料をエッチングして、配線層34のパターンを得る。以上のプロセスでは、金属材料をエッチングして形成される配線層34は、ゲート出しエッチングによって生成された第4の半導体層20と第3の半導体層18との間に段差部S上を通過する。さらに配線層34は、これと直交する方向に延びる主配線層36に接続される。主配線層36は、複数の発光サイリスタが配列される方向に沿うように延在する。ゲート電極24には、ここには図示しないシフト部からゲート信号が印加される。
【0013】
本実施例の発光サイリスタでは、段差部Sを生じさせる第4の半導体層20の端部ED、すなわちエッチング面には、1つの矩形状の突起である迫出し部40が形成されている。図2は、迫出し部40を拡大した平面図と、迫出し部40のX1−X1断面、Y−Y断面を示している。迫出し部40は、端部EDから垂直方向に延びるように端部EDに接続された第1の側部40Aと、第1の側部40Aと対向しかつ端部EDから垂直方向に延びるように端部EDに接続された第2の側部40Bと、第1および第2の側部40A、40Bに接続されそれらの間を連結する第3の側部40Cを有する。
【0014】
迫出し部40は、第4の半導体層20のゲート出しエッチングするときのマスクの形状を変更することにより容易に形成することができる。つまり、マスクをパターンニングするとき、マスクには、迫出し部に対応する矩形状の突出部が形成される。
【0015】
GaAs等のIII−V族化合物半導体層は、結晶異方性を有しており、化合物半導体層を、硫酸過酸化水素水等のエッチャントを用いてウェットエッチングすると、その結晶異方性によってエッチング面が順方向のテーパ、またはオーバーハング状に傾斜した逆方向のテーパが形成されることが知られている。以下、順方向のテーパが形成された面を順メサまたは順メサ面と称し、逆方向のテーパが形成された面を逆メサまたは逆メサ面と称する。通常、ある結晶方位でエッチングされた面が順メサになるとき、これと直交する方位のエッチング面は逆メサとなる。
【0016】
本実施例では、第4の半導体層20の端部(エッチング面)EDは、逆メサとなる結晶方位にある。これは、図1の縦方向に配線を長く通さなければならない発光素子アレイにおいては、ゲート出しエッチングで生じる段差部Sを逆メサとする方が、逆メサ上を通す配線本数を減らすことができるためである。従って、迫出し部40の第1の側部40Aと第2の側部40Bは、端部EDと直交する方位にあるので、第1および第2の側部40のエッチング面は、順メサとなる(図2のX1−X1線断面図を参照)。図からも明らかなように、第4の半導体層20のエッチング面は、第3の半導体層18の表面に対し90未満の角度で傾斜する順メサ面となっている。第3の側部40Cは、端部EDと平行であるため、そのエッチング面は、逆メサとなる(Y−Y線断面図を参照)。図からも明らかなように、第4の半導体層20のエッチング面は、第3の半導体層18の表面に対し90度以上で傾斜する面が形成されている。オーバーハングの逆テーパ面は、エッチング面の一部に形成されたり、あるいは膜厚や傾斜角度によってエッチング面の全体に形成される。
【0017】
ゲート出しエッチングにより形成された段差部Sの上に絶縁膜30を成膜しても、絶縁膜30は、段差に追従して膜付けされるため、配線材料もこの段差上を通らなければならない。逆メサの場合、その上にスパッタリングにより配線材料を積層したとき、段差部Sに空隙(ボイド)が生じるおそれがある。ボイドが生じると、配線層の断面積が小さくなり、配線抵抗が高くなることだけでなく、配線材料のパターニングの際にエッチャントがボイドの中に入り込み、ボイドの内壁がエッチングされることで、段差部Sの配線幅がくびれることがある。さらに、配線層の両側のエッジラインからのくびれが繋がって、配線層が断裂することがある。
【0018】
本実施例では、第4の半導体層20の端部EDに迫出し部40を形成することで、段差部Sに、順メサとなる第1および第2の側部40A、40Bが形成される。そして、配線層34の幅2Wは、迫出し部40の幅2Dよりも大きく、配線層34の両縁部は、順メサの第1および第2の側部40A、40Bを覆うように形成される。このため、配線層34の両縁部には、ボイドが生じ難くなり、レジストを塗布したときに配線材料とレジストの間の細孔が生じることが抑制される。同時に、配線層34の両側のエッジラインからのくびれも効果的に防止される。
【0019】
好ましい例として、迫出し部40の幅を2D、端部EDからの長さをLからなる長方形とした。配線層34の幅2Wと迫出し部40の幅2Dの関係は、必ず、W>Dであり、順メサである第1および第2の側部40A、40Bは、配線層34の両側のエッジラインの内側に位置する。このような構造にすれば、配線層34をエッチングする際に、くびれが生じたとしても、片側のエッジからW−Dの長さしかくびれが起こらない。W−Dを0に近づければ、配線層34のエッジラインの外側に位置する逆メサの端部EDの面積が小さくなり、くびれが起こっても、それは僅かな長さであり、配線層34の断裂は起こりえない。本実施例では、配線層34の厚さが約600nm、段差部Sの高低差が約700nmであるとき、2W=5.0μmに対して、2D=4.0μmとした。すなわち、配線層34は、片側W−D=0.5μmずつ、逆メサ面を乗り越えている。また、迫出し部40の長さL=0.5μmとした。
【0020】
また、第3の側部40Cは、逆メサ面であり、スパッタリングされた配線材料と下地の絶縁膜30との間、およびレジストと配線材料との間に空隙が生じる可能性が高くなる。しかし、第3の側部40Cは、配線材料をエッチングする部分ではないから、くびれや段切れが生じることはない。
【0021】
このように、段差部Sに迫出し部40を設け、さらにW−D(>0)を、プロセスで許される限界値まで小さくすることによって、カソード層(第4の半導体層)20からゲート電極層(第3の半導体層)18まで段差部Sを介して延在する配線層34のくびれを抑え、断裂を抑制することができる。
【0022】
次に、本発明の第2の実施例ついて説明する。図3は、第2の実施例に係る発光サイリスタの平面図と、段差部に形成された迫出し部を拡大した平面図である。第1の実施例では、第4の半導体層20の表面から出射される光量を増加させるために配線層34の幅2Wを小さくしていくと、それにともなって、迫出し部40の幅2Dを小さくしなければならない。このため、迫出し部40の設計が困難になる。第2の実施例は、配線層34の幅2Wを小さくし、発光光量の低下を防止しつつ、段差部Sにおける配線層の断線を防止することを可能にする。
【0023】
図3に示すように、第4の半導体層20のエッチング面EDには、矩形状の迫出し部40が形成されている。迫出し部40は、第1の実施例と同様に、順メサの第1および第2の側部40A、40Bと逆メサの第3の側部40Cを備えている。第2の実施例の配線層は、カソード電極20に接続されかつX方向に延びる幅狭の第1の配線部34Aと、第1の配線部34Aに接続され、幅が徐々に拡張する幅拡張部34Bと、幅拡張部34Bに接続され、かつX方向に延びる幅広の第2の配線部34Cとを有する。第1の配線部34Aの幅は、W1<Wであり、かつW1<Dの関係にあり、拡張部34Bの両側のエッジライン(縁)が迫出し部40の順メサの第1および第2の側部40A、40Bと交差するようにレイアウトされる。好ましくは、2W1=2.0μm、2D=7.0μm、L=0.5μmである。
【0024】
このように、第2の実施例では、第4の半導体層20上の第1の配線部34Aの幅を狭くすることができ、第1の配線部34Aによる発光光量の吸収または遮蔽を抑制することができる。また、幅拡張部34Bは、順メサの上を通り、逆メサ(第3の側部40C)を通らないため、段差部Sにおける配線層のくびれを抑制することができる。
【0025】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図4は、本発明の第3の実施例に係る発光サイリスタの迫出し部を拡大した平面図である。第3の実施例では、第4の半導体層20のエッチング面EDに、離間された2つの矩形状の迫出し部50、52が形成される。各々の迫出し部50、52は、第1の実施例のときと同様に、順メサの第1および第2の側部50A、50B、52A、52Bと逆メサの第3の側部50C、52Cを有している。2つの迫出し部50、52の幅2Dは、配線層34の幅2Wよりも小さいが、W−Dを0に近づけることが望ましい。これにより、配線層34の両側のエッジは、順メサの第1の側部50A、第2の側部52Bの近傍になるため、配線層34の段差部Sにおけるくびれを防止することができる。また、迫出し部50、52の第3の側部50C、52Cの幅は、長さLとの関係で適宜選択される。好ましい例では、2W=5.0μm、2D=4.0μm、L=0.5μmであり、このとき、W−D=0.5μmである。なお、上記例では、2つの迫出し部を設けたが、それ以上の数であってもよい。さらに、2つの迫出し部は、同じサイズであることが望ましいが、異なるサイズであってもよい。
【0026】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図5は、第4の実施例に係る発光サイリスタの迫出し部を拡大した平面図である。第4の実施例では、第4の半導体層20のエッチング面EDに、台形状の迫出し部60が形成される。図示する迫出し部60は、小さい方の底を迫出し部の先端とした等脚台形であり、エッチング面EDから内側に傾斜した第1の側部60Aと、第1の側部60Aと対向し内側に傾斜した第2の側部60Bと、第1および第2の側部60A、60Bに接続された第3の側部60Cとを有する。第1および第2の側部60A、60Bは、エッチング面EDに対して垂直の方位ではなく、逆メサと順メサの中間的な傾斜をもった面となるが、第1および第2の側部60A、60Bが45度以上の垂直に近い角度で傾斜すれば、順メサに近くなる。
【0027】
迫出し部60の先端の第3の側部60Cの幅を2Dとしたとき、配線層34の幅2Wは、W>dの関係にあり、配線層34の両側のエッジラインが、迫出し部60の第1および第2の側部60A、60Bと交差するようにレイアウトされる。
【0028】
第4の実施例においても、段差部Sにおける配線層34のくびれ抑止効果を確認することができた。等脚台形の上底を2d、下底を2D、配線層34の幅を2W、台形の高さをLとすると、D>W>dの関係にある。本例では、2W=5.0μm、2D=7.0μm、2d=4.0μm、L=3.0μmとした。Lが大きいほうが、第1および第2の側部60A、60Bが順メサ面に近くなるので好ましい。なお、迫出し部は、必ずしも等脚台形に限らず、非対称であってもよい。
【0029】
本実施例によれば、各発光素子の電極への給電のための配線を通すとき、発光部への逆メサ形状の段差を乗り越えなければならないが、発光部のメサに迫出し部を設けることで、配線層の段切れを防止することができる。また、本実施例によれば、エッチング用のマスクの形状を変更するだけで、新しい工程の追加によるコストアップなしに、発光部の光量を下げることなく歩留まりを上げ、高信頼度の面発光素子を得ることができる。
【0030】
上記実施例では、発光サイリスタを例示するが、これ以外の発光ダイオードや面発光型半導体レーザのような面発光素子であってもよい。さらに本発明は、第1ないし第4の実施例をそれぞれ単独で用いることのみならず、これらの実施例を組合わせたものであってもよい。例えば、第3の実施例と第4の実施例を組合せた迫出し部、すなわち複数の台形状の迫出し部を形成するものであってもよい。
【0031】
図6は、本実施例の発光サイリスタを有する自己走査型発光素子アレイの概略平面図である。同図に示すように、単一の半導体基板上には、複数の発光サイリスタ10−1、10−2・・・10−nと、各発光サイリスタを走査するシフト部64が形成されている。複数の発光サイリスタ10−1〜10−nは、線形に配列され、各発光サイリスタのカソード電極に接続された配線層34は、これと直交する方向に延在する主配線層36に接続される。主配線層36は、発光サイリスタの配列方向に平行に延在する。各発光サイリスタのゲート電極24−1、24−2・・・24−nは、シフト部64からの駆動信号64−1、64−2、・・・64−nにそれぞれ接続される。駆動信号をゲート電極に印加することで、発光サイリスタが順次走査される。
【0032】
以上のような自己走査型発光素子アレイは、例えば、光プリンタの光書込みヘッドに用いられる。図7に、自己走査型発光素子アレイを用いた光書込みヘッドの一例を示す。チップ実装基板70上に、発光サイリスタを列状に配置した複数個の発光素子アレイチップ71が、主走査方向に実装され、発光素子アレイチップ71の発光素子が発光する光の光路上には、主走査方向に長尺な正立等倍のロッドレンズアレイ72が、樹脂ハウジング73により固定されている。ロッドレンズアレイ72の光軸上には、感光ドラム74が設けられる。また、チップ実装基板70の下地には発光素子アレイチップ71の熱を放出するためのヒートシンク75が設けられ、ハウジング73とヒートシンク75は、チップ実装基板70を間に挟んで止め金具76により固定されている。
【0033】
図7に示す光書込みヘッドを用いた光プリンタを図8に示す。光プリンタには、光書込みヘッド100が設置される。円筒形の感光ドラム102の表面に、アモルファスSi等の光導電性を持つ材料(感光体)が作られている。このドラムはプリントの速度で回転している。回転しているドラムの感光体表面を、帯電器104で一様に帯電させる。そして、光書込みヘッド100で、印字するドットイメージの光を感光体上に照射し、光の当たったところの帯電を中和し、潜像を形成する。続いて、現像器106で感光体上の帯電状態にしたがって、トナーを感光体上につける。そして、転写器108でカセット110中から送られてきた用紙112上に、トナーを転写する。用紙は、定着器114にて熱等を加えられ定着され、スタッカ116に送られる。一方、転写の終了したドラムは、消去ランプ118で帯電が全面にわたって中和され、清掃器120で残ったトナーが除去される。このような光書込みヘッドは、プリンタのみならずファクシミリ,複写機にも利用することができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
10:発光サイリスタ
12:基板
14:第1の半導体層
16:第2の半導体層
18:第3の半導体層
20:第4の半導体層
22:カソード電極
24:ゲート電極
26:アノード電極
30:層間絶縁膜
32:コンタクトホール
34:配線層
40、50.52、60:迫出し部
40A、50A、52A、60A:第1の側部
40B、50B、52B、60B:第2の側部
40C、50C、52C、60C:第3の側部
S:段差部
ED:エッチング面(端部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から光を放出する、第1導電型の第1の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層上に形成され、かつ第1の化合物半導体層との間に段差部を生じさせる端部を有する第2導電型の第2の化合物半導体層と、
前記第2の化合物半導体層上に形成された電極と、
前記段差部を含むように前記第1および第2の化合物半導体層上に形成され、かつ前記電極に通じる貫通孔が形成された絶縁層と、
前記貫通孔を介して前記電極に電気的に接続され、前記絶縁膜を介して前記段差部上を延在する配線層とを有し、
前記端部には、前記端部から突出した少なくとも1つの迫出し部が形成され、前記迫出し部は、前記端部に接続されかつ順方向に傾斜する面を有する第1の側部と、前記端部に接続されかつ順方向に傾斜する面を有する第2の側部と、第1の側部と第2の側部に接続されかつ前記順方向とは逆方向に傾斜する面を有する第3の側部とを有する、面発光素子。
【請求項2】
前記配線層の幅は、前記迫出し部の前記第3の側部の幅よりも大きく、前記配線層の下方に前記第1および第2の側部が位置する、請求項1に記載の面発光素子。
【請求項3】
前記配線層は、前記電極に接続されかつ第1の幅を有する第1の幅部分と、第1の幅よりも広い第2の幅を有する第2の幅部分と、第1の幅部分と第2の幅部分との間に形成され第1の幅から第2の幅に向けて幅が広がる幅拡張部分とを有し、前記幅拡張部分の両側の縁が前記第1および第2の側部上を交差し、前記第1の幅は、前記第3の側部の幅よりも狭く、前記第2の幅は、前記第3の側部の幅よりも広い、請求項1または2に記載の面発光素子。
【請求項4】
前記第1および第2の側部は、前記第3の側部に向けて先端が狭くなるように傾斜し、前記配線層の両側の縁が前記第1および第2の側部上を交差し、前記配線層の幅は、前記第3の側部の幅よりも大きい、請求項1に記載の面発光素子。
【請求項5】
前記端部には、離間した2つの迫出し部が形成され、前記配線層の幅は、前記2つの迫出し部の間隔よりも大きい、請求項1ないし4いずれか1つに記載の面発光素子。
【請求項6】
面発光素子はさらに、基板と、基板上に形成された第1の導電型の第3の化合物半導体層と、第2の導電型の第4の化合物半導体層とを含み、前記第1の化合物半導体層は第4の化合物半導体層上に形成され、前記第1の化合物半導体層上には、サイリスタのゲート電極が形成される、請求項1ないし5いずれか1つに記載の面発光素子。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1つに記載の面発光素子が直線状に配列された複数の面発光素子と、
前記複数の面発光素子の配列方向に平行と平行に延在する主配線層とを有し、
前記複数の面発光素子の各電極に接続された配線層は、前記主配線層と直交し前記主配線層に接続される、面発光素子アレイ。
【請求項8】
面発光素子アレイは、自己走査型発光素子アレイである、請求項7に記載の面発光素子アレイ。
【請求項9】
請求項7または8に記載の面発光素子アレイを用いた光書込みヘッド。
【請求項10】
請求項9記載の光書込みヘッドを備えたプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−204771(P2011−204771A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68455(P2010−68455)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】