説明

鞍乗型車両のキャニスタ配置構造

【課題】複数のフレームに囲まれた領域にエアクリーナが配置され、このエアクリーナの周辺にキャニスタ及び逆止弁が配置される場合において、キャニスタ及び逆止弁の配置によるエアクリーナの形状や容量等の制約を抑制し、エアクリーナの設計自由度を向上させることができる鞍乗型車両のキャニスタ配置構造を提供する。
【解決手段】キャニスタ55が燃料タンク10の下方に配置され、キャニスタ55の下方に、シリンダヘッド27とエアクリーナ45を連通させる吸気通路Kが配置され、パージ管64が逆止弁66を通して前記吸気通路Kに接続され、逆止弁66がキャニスタ55の下方で、且つ前記吸気通路Kの上方で、且つエアクリーナ45の前方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のキャニスタ配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術として、車両側面視で自動二輪車における複数のフレームに囲まれた領域にエアクリーナが配置され、このエアクリーナの下方にキャニスタが配置されるとともに、このキャニスタに接続されたパージ管が、逆止弁を通してキャブレタにされる構造が知られている(特許文献1参照)。この構造において逆止弁は、エアクリーナの前方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−76662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の構造のように、複数のフレームに囲まれた領域に配置されるエアクリーナの近傍にキャニスタ及び逆止弁を配置する場合、エアクリーナとキャニスタ、エアクリーナと逆止弁の干渉を回避するため、エアクリーナの形状と容量が制約される場合がある。
【0005】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、複数のフレームに囲まれた領域にエアクリーナが配置される場合において、キャニスタ及び逆止弁の配置によるエアクリーナの形状や容量等の制約を抑制し、エアクリーナの設計自由度を向上させることができる鞍乗型車両のキャニスタ配置構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明は以下の手段を提供する。
請求項1に記載の発明は、ヘッドパイプ(3)と、該ヘッドパイプ(3)から後方へ延出するメインフレーム(4)と、前記メインフレーム(4)の後部から後斜め下方へ延出する左右一対のセンタフレーム(7L,7R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム(5L,5R)と、前記センタフレーム(7L,7R)と前記シートフレーム(5L,5R)とを連結するサブフレーム(8L,8R)と、を備える車体フレーム(2)と、クランク軸を収容するクランクケース(25)と、該クランクケース(25)の前部に設けられるシリンダ部(26)と、該シリンダ部(26)に設けられるシリンダヘッド(27)と、を備え、前記車体フレーム(2)の前記メインフレーム(4)の下方に配置されるエンジン(12)と、前記エンジン(12)の上方に配置される燃料タンク(10)と、前記燃料タンク(10)の内部で生じた蒸発燃料を、チャージ管(65)を通して吸着するキャニスタ(55)を有し、該キャニスタ(55)で吸着した燃料を、該キャニスタ(55)からパージ管(64)を通して前記エンジン(12)の吸気系に供給する蒸発燃料処理装置と、側面視で、前記センタフレーム(7L,7R)と前記シートフレーム(5L,5R)と前記サブフレーム(8L,8R)とで囲まれる領域に配置されるエアクリーナ(45)と、を備える鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記キャニスタ(55)は、前記燃料タンク(10)の下方に配置され、前記キャニスタ(55)の下方に、前記シリンダヘッド(27)と前記エアクリーナ(45)を連通させる吸気通路(K)が配置され、前記パージ管(64)は、逆止弁(66)を通して前記吸気通路(K)に接続され、前記逆止弁(66)は、前記キャニスタ(55)の下方で、且つ前記吸気通路(K)の上方で、且つ前記エアクリーナ(45)の前方に配置される、ことを特徴とする鞍乗型車両のキャニスタ配置構造を提供する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記逆止弁(66)は、前記センタフレーム(7L,7R)の前方に配置される、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記逆止弁(66)は、前記センタフレーム(7L,7R)に固定される、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャニスタの配置構造において、前記吸気通路(K)には、キャブレタ(43)が含まれ、前記逆止弁(66)は、前記キャブレタ(43)の上方に配置される、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、側面視で、前記逆止弁(66)及びキャブレタ(43)の真上に、前記キャニスタ(55)が配置される、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記エンジン(12)は、前記シリンダ部(26)のシリンダ軸線(C2)が略水平となるように配置され、前記パージ管(64)は、前記センタフレーム(7L,7R)のうちの一方の車幅方向外側を通されて、前記一方に対応する前記吸気通路(K)の車幅方向外側に位置する部位に接続され、前記逆止弁(66)は、前記パージ管(64)との接続部を上下方向に沿わせるようにして配置される、ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記パージ管(64)は、前記メインフレーム(4)の下方において、前記メインフレーム(4)を挟んで車幅方向の一方から他方に通されて、前記他方に対応する前記吸気通路(K)の車幅方向外側に位置する部位に接続され、前記逆止弁(66)は、前記パージ管(64)との接続部を車幅方向に沿わせるようにして配置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、燃料タンクと吸気通路との間にキャニスタ及び逆止弁が配置されることになり、キャニスタ、逆止弁、及びこれらの間の各種配管を、空間を効率よく使いコンパクトに集約して配置することができる。また、キャニスタを燃料タンク下方に配置し、逆止弁を吸気通路の上方且つエアクリーナの前方のスペースに配置することで、エアクリーナから離れた位置でキャニスタ及び逆止弁を効率良く配置することができ、センタフレームとシートフレームとサブフレームとで囲まれる領域に配置されるエアクリーナの形状や容量等が制約されにくくなり、エアクリーナの設計自由度も向上できる。
請求項2に記載の発明によれば、センタフレームとシートフレームとサブフレームとで囲まれる領域に配置されるエアクリーナと逆止弁とが十分に離間するので、エアクリーナの設計自由度が一層向上する。
請求項3に記載の発明によれば、車体フレームの一部であるセンタフレームに逆止弁を固定することで、吸気通路に近い位置で、逆止弁を安定した状態で固定できる。
請求項4に記載の発明によれば、逆止弁からキャブレタまでの配管長を短くすることができる上、配管の屈曲を少なく抑えることができる。
請求項5に記載の発明によれば、キャニスタから逆止弁及び逆止弁からキャブレタまでの配管長さを短くすることができる。
請求項6に記載の発明によれば、逆止弁のパージ管との接続部を上下方向に沿わせることで逆止弁が車両前後方向に広範に配置されるのを防ぐことができる。さらに、パージ管がセンタフレームのうちの一方の車幅方向外側を通されて、この一方に対応する吸気通路の車幅方向外側に位置する部位に接続される場合において、逆止弁のパージ管との接続部を上下方向に沿わせることで、逆止弁にパージ管を接続する際のパージ管の屈曲を極力抑えることができ、配索をコンパクトにできる。特に、水平エンジンの前後方向への振動に対して、直交する方向に逆止弁のパージ管との接続部を沿わせることで、逆止弁に対するエンジンの振動の影響を抑えることができる。
請求項7に記載の発明によれば、逆止弁のパージ管との接続部を車幅方向に沿わせることで逆止弁が車両前後方向に広範に配置されるのを防ぐことができる。また、パージ管がメインフレームの下方において、メインフレームを挟んで車幅方向の一方から他方に通されて、この他方に対応する吸気通路の車幅方向外側に位置する部位に接続される場合において、逆止弁のパージ管との接続部を車幅方向に沿わせることで、逆止弁にパージ管を接続する際のパージ管の屈曲を極力抑えることができ、配索をコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る構造を備える自動二輪車の左側面図である。
【図2】第1の実施形態に係る自動二輪車の右側面図である
【図3】第1の実施形態に係る自動二輪車の要部左側面図である。
【図4】第1の実施形態に係る自動二輪車の要部右側面図である。
【図5】第1の実施形態に係る自動二輪車の要部上面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る構造を備える自動二輪車の要部左側面図である。
【図7】第2の実施形態に係る自動二輪車の要部右側面図である。
【図8】第2の実施形態に係る自動二輪車の要部上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明に用いる図面において、矢印FRは車両前方を、矢印UPは車両上方を、矢印LHは車両左方をそれぞれ示している。
【0016】
<第1の実施形態>
図1及び図2に示す自動二輪車1の車体フレーム2は、前端を構成するヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後斜め下方へ延出するメインフレーム4と、メインフレーム4の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム5L,5Rと、メインフレーム4の前部から下方へ延出した後、後方へ延出する左右一対のダウンフレーム6L,6Rと、メインフレーム4の後部から後斜め下方へ延出した後、下方へ延出することでダウンフレーム6L,6Rの後部にそれぞれ連結する左右一対のセンタフレーム7L,7Rと、前方から後斜め上方に延出し、センタフレーム7L,7R及びシートフレーム5L,5Rを連結する左右一対のサブフレーム8L,8Rと、を備えている。
【0017】
シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R、及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる領域は、側面視で三角形状を呈している。また、ダウンフレーム6L,6Rの上部の間には、これらダウンフレーム6L,6Rを連結するとともに、メインフレーム4の下部と連結するクロスパイプ6Cが設けられている。
【0018】
ヘッドパイプ3には、下部に前輪WFを支持するフロントフォーク9が回転自在に取付けられ、メインフレーム4の上部には、燃料タンク10が取付けられている。燃料タンク10は側面視で、メインフレーム4とシートフレーム5L,5Rの前部とに跨るようにして設けられ、これらメインフレーム4とシートフレーム5L,5Rの側方を覆っている。
【0019】
メインフレームセンタフレーム7L,7Rの下部には、左右一対のピボットプレート11L,11Rが取付けられ、このピボットプレート11L,11Rには、エンジン12及び変速機13からなるパワーユニット14が支持されている。また、ピボットプレート11L,11Rには、スイングアーム15が上下スイング自在に支持(揺動自在に枢支)され、すなわち、スイングアーム15は、ピボットプレート11L,11Rを介してセンタフレーム7L,7Rに支持されている。また、シートフレーム5L,5Rには、シート16及び後部左側方に設けた後部側方ガード部材17が支持されている。
【0020】
フロントフォーク9は、左右一対のフォーク単体18L,18Rをトップブリッジ19及びこのトップブリッジ19の下方に配置したボトムブリッジ20で連結したものであり、トップブリッジ19には、バーハンドル21が取付けられている。トップブリッジ19及びボトムブリッジ20の前方には、フロントカウル24が支持されている。また、ダウンフレーム6L,6Rには、エンジン12を前方から保護する矩形の枠体であるエンジンガード部材22が固定されている。
【0021】
エンジン12は、クランク軸を収容するクランクケース25と、クランクケース25の前部に設けられるシリンダ部26と、シリンダ部26に設けられるシリンダヘッド27と、を備え、メインフレーム4の下方に位置している。シリンダ部26の内部には、ピストンが摺動可能に収容されている。シリンダ部26は、そのシリンダ軸線C1の延長線が少なくとも前輪WFと交差する、すなわち前輪WFを指向して略水平となるようにクランクケース25に取付けられている。
【0022】
燃料タンク10の下方には、収納ボックス33が配置され、収納ボックス33は、メインフレーム4と、エンジン12のシリンダ部26と、の間に位置している。燃料タンク10の後方に位置するシート16は、シートフレーム5L,5Rに沿って前後方向に延在し、シート16の後部両端部の下方には、左右一対のリヤカバー28L,28Rが配置されている。また、シートフレーム5L,5Rの後部には、リヤカバー28L,28Rの間から後斜め下方に延びる後部リヤフェンダ29Rが取付けられている。
【0023】
シート16の後部には同乗者が着座可能であり、シート16の下方には、同乗者が足を載せるための左右一対の後部ステップ30L,30Rが配置されている。後部ステップ30L,30Rは、サブフレーム8L,8Rから後斜め下方に延出した左右一対のステップフレーム31L,31Rの下端部に取付けられている。また、ステップフレーム31L,31Rの下端部は、ピボットプレート11L,11Rから後方に延びる左右一対のサポートフレーム32L,32Rの後端部に接続され補強されている。
【0024】
スイングアーム15は、左右一対のアーム部材34L,34Rで構成され、後端部に後輪WRを回転可能に支持している。また、アーム部材34L,34Rの後端部には、左右一対のリヤクッション36L,36Rのそれぞれの下端が取付けられている。リヤクッション36L,36Rの上端は、シートフレーム5L,5Rとサブフレーム8L,8Rとに跨るように、これらシートフレーム5L,5Rとサブフレーム8L,8Rに固着された左右一対のガセットプレート35L,35Rに取付けられている。ガセットプレート35L,35Rは、シートフレーム5L,5Rとサブフレーム8L,8Rの接続部の下方から後方に延出した形状を有している。
【0025】
エンジン12のシリンダヘッド27には、吸気装置40及び排気装置41が接続されており、吸気系である吸気装置40は、シリンダヘッド27の上面に吸気管42を介して接続した燃料供給装置であるキャブレタ43と、このキャブレタ43にコネクティングチューブ44を介して接続したエアクリーナ45と、から構成されている。吸気管42は側面視で、シリンダヘッド27の上面に接続されて後方へ向けて延びている。なお、キャブレタ43は、燃料噴射装置用のスロットルボディであっても良いことは言うまでもない。また、ここで、吸気管42、キャブレタ43及びコネクティングチューブ44で構成される部位を吸気通路Kと称する。
【0026】
また、排気装置41は、シリンダヘッド27の下面に接続された排気管46と、この排気管46の後端に取付けたマフラ47と、から構成されている。
【0027】
上記エアクリーナ45は、樹脂材料から形成された筐体であるエアクリーナケース48内にエレメント(不図示)を収容してなるものであって、シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる側面視で三角形状の領域に配置されている。エアクリーナ45は、メインフレーム4の後部、シートフレーム5L,5Rの前部等に、図示しないブラケットを介して取付けられている。また、このエアクリーナ45は、左右両側を左右一対のセンタカバー38L,38Rで覆われている。これらセンタカバー38L,38Rは、側面視で台形状に形成されており、シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる領域に沿うようにして、これら各フレームを覆っている。
【0028】
上記キャブレタ43は、キャニスタ55と連通しており、図3、図4に示すように、本実施形態においてキャニスタ55は、燃料タンク10の下方に配置されている。詳しくは、本実施形態で燃料タンク10は、縦断面でU字あるいはV字状を呈しており、U字あるいはV字状の開放部分の内側にメインフレーム4を通すように配置されている。そして、燃料タンク10の底板部分の下方に、キャニスタ55が配置されている。なお、燃料タンク10の底板におけるキャニスタ55に対応する部分には、キャニスタ55の上方と右側方、及びキャニスタ55の前後を囲むようにへこんだ凹部100が形成されている。そして、キャニスタ55は凹部100に収容されるようにして燃料タンク10の下方に配置され、上記吸気管42、キャブレタ43及びコネクティングチューブ44で構成される吸気通路Kの上方に位置している。
【0029】
キャニスタ55は円筒状を呈し、その長手方向、すなわち、その軸線C2をメインフレーム4に沿わせており、換言すれば、軸線C2を車両前後方向に沿わせている。図5に良く示すように、キャニスタ55は、吸着材を収容した筒状部56と、筒状部56の前端部を覆う前端ガード部57と、筒状部56の後端部を覆う後端ガード部58と、を備えている。
【0030】
ここで、メインフレーム4の右側面には、キャニスタ55を支持するための支持ステー61が固着され、支持ステー61はV字あるいはU字状を呈し、その両端部を右方に向けて延出させ、これら両端部でキャニスタ55を支持する。キャニスタ55の筒状部56には、弾性部材(ラバー部材)からなる筒状のケース62が嵌め入れられ、このケース62には、キャニスタ55の径方向の外側に突出する係合片63,63(図3、図4参照)が径方向に対向して一対形成されている。そしてキャニスタ55は、係合片63,63に支持ステー61の両端部が挿入されることで、メインフレーム4に支持され、メインフレーム4の右側方に位置している。
【0031】
以下、キャニスタ55の配管について説明すると、キャニスタ55の前端ガード部57には、パージ管64と、チャージ管65と、が接続され、キャニスタ55は、パージ管64によりキャブレタ43に接続され、チャージ管65により燃料タンク10に接続されている。
【0032】
パージ管64は、キャニスタ55の前端ガード部57から後下方に引き出され、メインフレーム4の下方を右側から左側に通され、さらに湾曲されて図3に示すように、キャブレタ43の左側面に接続されている。パージ管64は、経路途中に配された逆止弁66を通してキャブレタ43に接続されており、この逆止弁66は、キャニスタ55の下方で、且つ吸気通路Kの上方で、且つエアクリーナ45の前方に配置されている。逆止弁66は、パージ管64の管内の圧力に応じてキャブレタ43側へ向かう蒸発燃料の流れを許容すべく開放する一方弁である。
【0033】
逆止弁66は側面視で、センタフレーム7L,7Rの前方に位置しており、左のセンタフレーム7Lに固着されたステー80に固定されている。逆止弁66は、キャブレタ43の上方に位置しており、逆止弁66及びキャブレタ43の真上に、キャニスタ55が位置している。より詳細には、側面視でキャブレタ43の後上方に逆止弁66が、キャブレタ43と逆止弁66の真上にキャニスタ55が配置されている。そして、図5に示すように、平面視でメインフレーム4に重なる位置にキャブレタ43が配置され、メインフレーム4と一部重なる位置で且つキャブレタ43の左後方に逆止弁66が配置される。またメインフレーム4の右側方で、且つ逆止弁55及びキャブレタ43の右側方に、キャニスタ55が配置される。さらに、図5に示すように、逆止弁66は、パージ管64が接続される上流側接続部66A及び下流側接続部66Bを車幅方向に向けるように配置されている。
【0034】
また、チャージ管65は、キャニスタ55から前方に引き出された後、後上方に湾曲されて、燃料タンク10の内部に挿入されている。チャージ管65は、燃料タンク10の内部において上方に配された気液分離部67に接続され、気液分離部67は、例えばシール部材を備えて液体の燃料がチャージ管65に供給されないように構成されている。
【0035】
一方で、キャニスタ55の後端ガード部58には、キャニスタ55を大気に連通させる筒状の新気導入部68が設けられるとともに、キャニスタ55内の不要物を排出するためのドレイン管69が接続されている。新気導入部68は、燃料タンク10の内側、すなわち凹部100内で開放している。また、ドレイン管69は、左右のセンタフレーム7L,7Rの間で、これらセンタフレーム7L,7Rに沿って後下方に引き出され、センタフレーム7Lよりも下方でその下端を開放している。
【0036】
以上に説明したように、この自動二輪車1は、キャニスタ55が燃料タンク10の下方に配置され、キャニスタ55の下方に、シリンダヘッド27とエアクリーナ45を連通させる吸気管42、キャブレタ43及びコネクティングチューブ44で構成される吸気通路Kが配置され、パージ管64が逆止弁66を通して上記吸気通路Kのキャブレタ43に接続され、逆止弁66がキャニスタ55の下方で、且つ上記吸気通路Kの上方で、且つエアクリーナ45の前方に配置される構造を有している。
【0037】
このような構造では、燃料タンク10と吸気通路Kとの間にキャニスタ55及び逆止弁66が配置されることになり、キャニスタ55、逆止弁66、及びこれらの間の各種配管を、空間を効率良く使いコンパクトに集約して配置することができる。また、キャニスタ55を燃料タンク10下方に配置し、逆止弁66を吸気通路Kの上方且つエアクリーナ45の前方のスペースに配置することで、エアクリーナ45から離れた位置でキャニスタ55及び逆止弁66を効率良く配置することができ、センタフレーム7L,7Rとシートフレーム5L,5Rとサブフレーム8L,8Rとで囲まれる領域に配置されるエアクリーナ45の形状や容量等が制約されにくくなり、エアクリーナ45の設計自由度も向上できる。
【0038】
また、この自動二輪車1は、逆止弁66がセンタフレーム7L,7Rの前方に配置される構造を有するが、この構造では、エアクリーナ45と逆止弁66とが十分に離間するので、エアクリーナ45の設計自由度が一層向上する。また、逆止弁66がセンタフレーム7Lに固定されるが、この構造では、車体フレームの一部であるセンタフレーム7Lに逆止弁66を固定することで、吸気通路Kに近い位置で、逆止弁を安定した状態で固定できる。
【0039】
また、この自動二輪車1は、上記吸気通路Kにキャブレタ43が含まれ、逆止弁66がキャブレタ43の上方に配置される構造を有するが、この構造では、逆止弁66からキャブレタ43までの配管長を短くすることができる上、配管の屈曲を少なく抑えることができる。また、逆止弁66及びキャブレタ43の真上に、キャニスタ55が配置されるが、この構造では、キャニスタ55から逆止弁66までの配管長さを短くすることができる。
【0040】
さらに、この自動二輪車1では、燃料タンク10がメインフレーム4の上部に支持され、パージ管64がメインフレーム4の下方において、右側から左側に通されて、キャブレタ43の左側面に接続され、逆止弁66がパージ管64との接続部(66A,66B)を車幅方向に沿わせるようにして配置される構造を有する。この構造では、逆止弁66のパージ管64との接続部(66A,66B)を車幅方向に沿わせることで逆止弁66が車両前後方向に広範に配置されるのを防ぐことができる。また、パージ管64がメインフレーム4の下方において、メインフレーム4を挟んで車幅方向の一方から他方に通されて、この他方に対応する吸気通路Kの車幅方向外側に位置する部位(キャブレタ43の左側面)に接続される場合において、逆止弁66のパージ管64との接続部(66A,66B)を車幅方向に沿わせてパージ管64を配索することで、逆止弁66にパージ管64を接続する際のパージ管64の屈曲を極力抑えることができ、配索をコンパクトにできる。
【0041】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態について図6〜図8を参照し説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一符合で示し説明を省略する。
【0042】
本実施形態においてもキャニスタ55は、燃料タンク10の下方に配置されている。詳しくは、本実施形態においても燃料タンク10は、縦断面でU字あるいはV字状を呈しており、U字あるいはV字状の開放部分の内側にメインフレーム4及びシートフレーム5L,5Rの前部を通すように配置されている。そして、本実施形態では燃料タンク10の底板部分後部の下方に、キャニスタ55が配置されている。なお、燃料タンク10の底板におけるキャニスタ55に対応する部分には、キャニスタ55の上方、右側方、左側方、及びキャニスタ55の前後を囲むようにへこんだ凹部100’が形成されている。そして、キャニスタ55は凹部100’に収容されるようにして燃料タンク10の下方に配置され、上記吸気管42、キャブレタ43及びコネクティングチューブ44で構成される吸気通路Kの上方に位置している。
【0043】
キャニスタ55は円筒状を呈し、その長手方向、すなわち、その軸線C2をシートフレーム5L,5Rに沿わせており、換言すれば、軸線C2を車両前後方向に沿わせている。また、図8に示すように、キャニスタ55は、シートフレーム5L、5Rの前部の間に配置されている。そして、図8に良く示すように、キャニスタ55は、吸着材を収容した筒状部56と、筒状部56の前端部を覆う前端ガード部57と、筒状部56の後端部を覆う後端ガード部58と、を備えている。
【0044】
本実施形態では、シートフレーム5L,5Rの前部の間に、キャニスタ55を支持するための支持ステー61が固着され、支持ステー61は前面視でV字あるいはU字状を呈し、その両端部を上方に向けて延出させ、これら両端部でキャニスタ55を支持する。この支持ステー61は、例えば、シートフレーム5L,5Rの前部の間を連結するクロスメンバに固着される。キャニスタ55の筒状部56には、弾性部材(ラバー部材)からなる筒状のケース62が嵌め入れられ、このケース62には、キャニスタ55の径方向の外側に突出する係合片63,63が径方向に対向して一対形成されている。そしてキャニスタ55は、係合片63,63に支持ステー61の両端部が挿入されることで、シートフレーム5L,5Rに支持されている。
【0045】
以下、キャニスタ55の配管について説明すると、キャニスタ55の後端ガード部58には、パージ管64と、チャージ管65と、が接続され、キャニスタ55は、パージ管64によりキャブレタ43に接続され、チャージ管65により燃料タンク10に接続されている。
【0046】
パージ管64は、キャニスタ55の後端ガード部58から前方に引き出され、左のセンタフレーム7Lの車幅方向外側を通され、その後、下方に湾曲されてキャブレタ43の左側面に接続されている。パージ管64は、経路途中に配された逆止弁66を通してキャブレタ43に接続されており、この逆止弁66は、キャニスタ55の下方および前方で、且つ吸気通路Kの上方で、且つエアクリーナ45の前方に配置されている。
【0047】
逆止弁66は側面視で、センタフレーム7L,7Rの前方に位置しており、左のセンタフレーム7Lに固着されたステー81に固定されている。逆止弁66は、キャブレタ43の上方に位置しており、逆止弁66は、パージ管64が接続される上流側接続部66A及び下流側接続部66Bを車両上下方向に向けるように配置されている。より詳細には、側面視でキャブレタ43の後上方に逆止弁66が、逆止弁66の後方にキャニスタ55が配置されている。また、図5に示すように平面視で、メインフレーム4に重なる位置にキャブレタ43が配置され、キャブレタ43の左後方に逆止弁66が配置されている。さらには、キャブレタ43の略真直ぐ後方にキャニスタ55が配置されている。
【0048】
また、チャージ管65は、キャニスタ55から前上方に引き出され、燃料タンク10の内部に挿入され、気液分離部67に接続されている。
【0049】
一方で、キャニスタ55の前端ガード部57には、キャニスタ55を大気に連通させる筒状の新気導入部68が設けられるとともに、キャニスタ55内の不要物を排出するためのドレイン管69が接続されている。新気導入部68は、燃料タンク10の内側で開放している。また、ドレイン管69は、左右のセンタフレーム7L,7Rの間で、これらセンタフレーム7L,7Rに沿って後下方に引き出され、センタフレーム7Lよりも下方でその下端を開放している。
【0050】
以上に記載した第2の実施形態の構造では、逆止弁55のパージ管64との接続部(66A,66B)を上下方向に沿わせることで逆止弁55が車両前後方向に広範に配置されるのを防ぐことができる。また、パージ管64がセンタフレーム7Lの車幅方向外側を通されて、この一方に対応する吸気通路Kの車幅方向外側に位置する部位(キャブレタ43の左側面)に接続される場合において、逆止弁55のパージ管64との接続部を上下方向に沿わせることで、逆止弁55にパージ管64を接続する際のパージ管64の屈曲を極力抑えることができ、配索をコンパクトにできる。さらに、エンジン12の前後方向への振動に対して、直交する方向に逆止弁55のパージ管64との接続部を沿わせることで、逆止弁55に対するエンジン12の振動の影響を抑えることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
2 車体フレーム
4 メインフレーム
5L,5R シートフレーム
6L,6R ダウンフレーム
7L,7R センタフレーム
8L,8R サブフレーム
10 燃料タンク
12 エンジン
25 クランクケース
26 シリンダ部
27 シリンダヘッド
43 キャブレタ
45 エアクリーナ
55 キャニスタ
64 パージ管
65 チャージ管
66 逆止弁
66A 上流側接続部(接続部)
66B 下流側接続部(接続部)
68 新気導入部
69 ドレイン管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(3)と、該ヘッドパイプ(3)から後方へ延出するメインフレーム(4)と、前記メインフレーム(4)の後部から後斜め下方へ延出する左右一対のセンタフレーム(7L,7R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム(5L,5R)と、前記センタフレーム(7L,7R)と前記シートフレーム(5L,5R)とを連結するサブフレーム(8L,8R)と、を備える車体フレーム(2)と、
クランク軸を収容するクランクケース(25)と、該クランクケース(25)の前部に設けられるシリンダ部(26)と、該シリンダ部(26)に設けられるシリンダヘッド(27)と、を備え、前記車体フレーム(2)の前記メインフレーム(4)の下方に配置されるエンジン(12)と、
前記エンジン(12)の上方に配置される燃料タンク(10)と、
前記燃料タンク(10)の内部で生じた蒸発燃料を、チャージ管(65)を通して吸着するキャニスタ(55)を有し、該キャニスタ(55)で吸着した燃料を、該キャニスタ(55)からパージ管(64)を通して前記エンジン(12)の吸気系に供給する蒸発燃料処理装置と、
側面視で、前記センタフレーム(7L,7R)と前記シートフレーム(5L,5R)と前記サブフレーム(8L,8R)とで囲まれる領域に配置されるエアクリーナ(45)と、を備える鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、
前記キャニスタ(55)は、前記燃料タンク(10)の下方に配置され、
前記キャニスタ(55)の下方に、前記シリンダヘッド(27)と前記エアクリーナ(45)を連通させる吸気通路(K)が配置され、
前記パージ管(64)は、逆止弁(66)を通して前記吸気通路(K)に接続され、
前記逆止弁(66)は、前記キャニスタ(55)の下方で、且つ前記吸気通路(K)の上方で、且つ前記エアクリーナ(45)の前方に配置される、
ことを特徴とする鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項2】
前記逆止弁(66)は、前記センタフレーム(7L,7R)の前方に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項3】
前記逆止弁(66)は、前記センタフレーム(7L,7R)に固定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項4】
前記吸気通路(K)には、キャブレタ(43)が含まれ、
前記逆止弁(66)は、前記キャブレタ(43)の上方に配置される、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項5】
側面視で、前記逆止弁(66)及びキャブレタ(43)の真上に、前記キャニスタ(55)が配置される、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項6】
前記エンジン(12)は、前記シリンダ部(26)のシリンダ軸線(C2)が略水平となるように配置され、
前記パージ管(64)は、前記センタフレーム(7L,7R)のうちの一方の車幅方向外側を通されて、前記一方に対応する前記吸気通路(K)の当該車幅方向外側に位置する部位に接続され、
前記逆止弁(66)は、前記パージ管(64)との接続部を上下方向に沿わせるようにして配置される、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項7】
前記パージ管(64)は、前記メインフレーム(4)の下方において、前記メインフレーム(4)を挟んで車幅方向の一方から他方に通されて、前記他方に対応する前記吸気通路(K)の車幅方向外側に位置する部位に接続され、
前記逆止弁(66)は、前記パージ管(64)との接続部を車幅方向に沿わせるようにして配置される、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−67275(P2013−67275A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207520(P2011−207520)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】