説明

音叉型水晶片の製造方法

【課題】 振動腕部に設けられる溝部の断面形状の対称性を改善し、また、容易に製造を容易とする。
【解決手段】 基部と基部から延設する振動腕部とからなる構造で振動腕部が長さ方向に溝部を有する音叉型水晶振動素子の製造方法であって、水晶ウェハに耐食膜を成膜する耐食膜成膜工程と、感光性レジストを形成し音叉形状に感光性レジストを残しつつ溝部となる部分の感光性レジストを除去し露出する耐食膜を除去するパターニング工程と、水晶ウェハの露出する水晶部分を除去するウェットエッチング工程とを含み、パターニング工程で、溝部となる部分内の感光性レジストが溝部となる部分の長さ方向の縁部分から直交する方向へ溝部となる部分内に突起させた状態で除去され、ウェットエッチング工程で、溝部となる部分に残された感光性レジストにより、水晶片の除去が徐々になされて溝部の断面形状を略V字形状に形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる音叉型水晶片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ,携帯電話又は小型情報機器等の電子機器には、電子部品の一つとして圧電振動子又は圧電発振器が搭載されている。この圧電振動子又は圧電発振器は、基準信号源やクロック信号源として用いられる。又、圧電振動子や圧電発振器は、その内部に水晶からなる圧電振動素子が搭載されている。
以下、圧電材料に水晶を用いた圧電振動素子について説明する。
図8に示すように、圧電振動素子の一つである音叉型屈曲水晶振動素子400は、水晶振動片410と、その水晶振動片410の表面に設けられた励振用電極と接続用電極と周波数調整用金属膜と導配線パターンとにより概略構成される。
【0003】
水晶振動片410は、音叉形状となっており、基部411と基部411から延設する2本一対の振動腕部412と、により概略構成される。この振動腕部412には、対向する平面同士に同極となる励振用電極421が設けられている。
また、基部411は、平面視略四角形の平板となっている。振動腕部412は、第一の振動腕部412a及び第二の振動腕部412bとから成る。第一の振動腕部412a及び第二の振動腕部412bは、基部411の一辺から同一方向に延設されており、第一の振動腕部412a及び第二の振動腕部412bの長さ方向にはそれぞれ溝部GLが設けられている。溝部GLは、第一の振動腕部412a及び第二の振動腕部412bの両主面に、基部411との境界部分から振動腕部412の先端に向って、振動腕部412の長さ方向と平行に所定の長さで2本設けられている。このような水晶振動片410は、基部411と振動腕部412とが一体となって音叉形状を成しており、フォトリソグラフィ技術と化学エッチング技術、成膜技術により製造される。
【0004】
第一の振動腕部412aに設けられる電極は、励振用電極421と周波数調整用金属膜423とから成る。励振用電極421は、第一の振動腕部412aの溝部GL内表面を含む一方の主面と、第一の振動腕部412aの溝部GL内表面を含む他方の主面に設けられている。また、励振用電極421は、第二の振動腕部412bに対向する第一の振動腕部412aの内側側面と、この側面に対向する第一の振動腕部412aの外側側面とに異極となるように設けられている。周波数調整用金属膜423は、第一の振動腕部412aの先端部の両主面に設けられている。
【0005】
第二の振動腕部412bに設けられる電極は、励振用電極421と周波数調整用金属膜423とから成る。この励振用電極421は、第二の振動腕部412bの溝部GL内表面を含む一方の主面と、第二の振動腕部412bの溝部GL内表面を含む他方の主面に設けられている。また、励振用電極421は、第一の振動腕部412aに対向する第二の振動腕部412bの内側側面と、この側面に対向する第二の振動腕部412bの外側側面とに異極となるように設けられている。周波数調整用金属膜423は、第二の振動腕部412aの先端部の両主面に設けられている。
【0006】
基部411は、2つ一対の接続用電極422が設けられる。一方の接続用電極422は、基部411の振動腕部412が形成されている辺とは反対側にあたる辺の一方の角端部及び基部411の一方の主面から他方の主面にわたって設けられている。また、他方の接続用電極422は、基部411の振動腕部412が形成されている辺とは反対側にあたる辺の他方の角端部及び基部411の一方の主面から他方の主面にわたって設けられている。
また、基部411及び振動腕部412には、所定の電極間を電気的に接続させるための導配線パターン424が設けられている。
【0007】
一方の接続用電極422は、基部411の一方の主面に設けられた導配線パターン424により、第一の振動腕部412aの一方の主面に設けられた励振用電極421と電気的に接続し、かつ、第二の振動腕部412bの外側側面に設けられた励振用電極421と電気的に接続している。また、第二の振動腕部412bの外側側面に設けられた励振用電極421は、第二の振動腕部412bの内側側面に設けられた励振用電極421と電気的に接続している。更に、第一の振動腕部412の一方の主面に設けられた励振用電極421は、第一の振動腕部412の内側側面に設けられた導配線パターン424により、第一の振動腕部412aの他方の主面に設けられた励振用電極421と電気的に接続されている。
【0008】
他方の接続用電極422は、基部411の他方の主面に設けられた導配線パターンにより、第二の振動腕部412bの他方の主面に設けられた励振用電極421と電気的に接続し、かつ、第一の振動腕部412aの外側側面に設けられた励振用電極421と電気的に接続している。また、第一の振動腕部412aの外側側面に設けられた励振用電極421は、第一の振動腕部412aの内側側面に設けられた励振用電極421と電気的に接続している。更に、第二の振動腕部412aの他方の主面に設けられた励振用電極421は、第二の振動腕部412bの内側側面に設けられた導配線パターン424により、第一の振動腕部412aの一方の主面に設けられた励振用電極421と電気的に接続されている。
【0009】
これら励振用電極421、接続用電極422、周波数調整用金属膜423及び導配線パターン424は、スパッタ技術、蒸着技術、フォトリソグラフィ技術により形成され、Cr層の上にAu層が設けられた積層構造となっている。
【0010】
この水晶振動片410を振動させる場合、接続用電極422に交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的にとらえると、第一の振動腕部412aの両主面に設けられた励振用電極421はプラス電位となり、両側面に設けられた励振用電極421はマイナス電位となり、プラスからマイナスに電界が生じる。このときの第二の振動腕部412bの両主面の励振用電極421はマイナス電位となり、両側面に設けられた励振用電極421はプラス電位という第一の振動腕部412の励振用電極421に生じた極性とは反対の極性となり、プラスからマイナスに電界が生じる。この交番電圧により生じた電界によって、第一の振動腕部412a及び第二の振動腕部412bに伸縮現象が生じ、振動腕部412に設定した共振周波数の屈曲振動モードとなる。尚、この共振周波数は、水晶振動片410に設けられた周波数調整用金属膜423を構成する金属の量を増減させて調整することができる(例えば、特許文献1又は2参照)。
【0011】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子400の製造方法は、まず、音叉型に水晶振動片410を形成した後に電極の形成が行われる。
例えば、水晶ウェハ(図示せず)の表裏に例えば、Cr、Cr+Auなどの耐食膜(図示せず)をスパッタリングにて成膜する。
【0012】
次に耐食膜上に感光性レジスト(ポジ型)を両面に形成し、乾燥後表裏の両面に音叉形状の耐食膜が残るように露光、現像、乾燥(以下パターン化)と音叉形状以外の耐食膜のエッチングを行う。
【0013】
次に前記表裏の耐食膜上に電極の形状を決定するために感光性レジスト(ポジ型)をパターン化する。ここで、この感光性レジストの一部は、振動腕部と基部との接続部分を覆うように設けられている。
【0014】
次に露出する水晶部分をエッチングする。このとき、溝部の形状と水晶振動片410の形状とが同時に形成される。
次に裏面に露出した耐食膜をエッチングし水晶表面を得る。次に全面に電極膜を蒸着技術により形成する。
次に表裏に形成した感光性レジストとその上に形成された電極膜を剥離する。これは感光性レジストを溶解する液に浸すことで容易に除去できる。しかし、その下部に有する耐食膜は残る。次に前記の残りである耐食膜をエッチングする。
このようにして、水晶振動片410に電極が形成される(特許文献1参照)。
【0015】
このようにして製造される音叉型屈曲水晶振動素子400は、振動腕部に形成される溝部の断面形状が複雑な形状となることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
例えば、振動腕部に設けられる溝部は、長さ方向の縁部分から厚み方向に深さを有しており、4種類の勾配を有する斜面により略U字型となっている。
なお、溝部の断面形状を略V字に設けた音叉型屈曲水晶振動素子が提案されている(例えば、特許文献4参照)。このような音叉型屈曲水晶振動素子を外形の形成とは別に溝部の形成を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−329879号公報
【特許文献2】特開2004−248237号公報
【特許文献3】特開2006−148856号公報
【特許文献4】特開2007−329879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、断面形状が略U字型となる溝部を有する音叉型屈曲水晶振動素子400は、溝部の断面形状において、溝部の長さ方向に対する両端に位置する2つ短辺の中心を通り、溝部の長さ方向に沿って延びる中心線に対して非対称となる断面形状となっているため、振動バランスを悪くさせる形状となっている。
また、断面形状が略U字型となる溝部を有する音叉型屈曲水晶振動素子400は、溝部内に設けられる励振用電極と振動腕部の側面に設けられる励振電極とに交番電圧を印加すると、溝部をなす異なる勾配の斜面により振動腕部に発生する電界が不均一となって振動バランスが崩れ、CI(クリスタル・インピーダンス)値が大きくなることがある。

このように、従来の音叉型屈曲水晶振動素子400は、溝部の断面形状が前記中心線に対して非対称となる形状となる場合、落下衝撃を受けたときに周波数が変動し、音叉型屈曲水晶振動素子が持つ周波数温度特性を悪化させる場合がある。
【0018】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、振動腕部に設けられる溝部の断面形状の対称性を改善し、また、容易に製造できる音叉型屈曲水晶振動素子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するため、本発明は、基部とこの基部から延設する振動腕部とからなる構造であり、前記振動腕部が長さ方向に溝部を有する音叉型水晶片の製造方法であって、水晶ウェハの表裏に耐食膜を成膜する耐食膜成膜工程と、前記耐食膜上に感光性レジストを形成する感光性レジスト形成工程と、前記感光性レジストが乾燥した後に音叉形状で前記感光性レジストを残しつつ溝部となる部分の前記感光性レジストが除去されるように露光、現像、乾燥をする露光現像工程と、前記溝部となる部分に残る耐食膜と音叉形状以外の耐食膜とを除去するパターニング工程と、前記感光性レジストを除去する感光性レジスト除去工程と、前記水晶ウェハの露出する水晶部分をウェットエッチングするウェットエッチング工程と、を含み、露光現像工程で、前記溝部となる部分内の感光性レジストが、前記溝部となる部分の長さ方向の一方の縁部分から直交する方向へ前記溝部となる部分内に突起させた部分を残した状態で除去され、前記パターニング工程で、前記溝部となる部分内の前記耐食膜が、前記溝部となる部分の長さ方向の縁部分から直交する方向へ前記溝部となる部分内に突起させた部分を残した状態で除去され、前記ウェットエッチング工程で、突起して残された耐食膜を含めた形状で前記溝部となる部分の露出する水晶が除去されて形成されることを特徴とする音叉型水晶片の製造方法。
【0020】
また、本発明は、音叉型水晶片の前記振動腕部の延設される方向をY´軸方向、前記Y´軸と直交し前記振動腕部の並ぶ方向をX軸方向とし、かつ、水晶の結晶軸であるY軸に対して直角となる一方の方向を+X軸、他方の方向を−X軸としたとき、前記溝部となる部分に残された前記感光性レジストが、前記溝部となる部分の長さ方向の+X軸側を向く縁部分から前記溝部となる部分内にX軸方向と平行に突起させて残されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このような本発明の音叉型水晶片の製造方法によれば、露光現像工程で、溝部となる部分内の感光性レジストが、溝部となる部分の長さ方向の縁部分から直交する方向へ溝部となる部分内に突起させた部分を残した状態で除去され、パターニング工程で、溝部となる部分内の耐食膜が、溝部となる部分の長さ方向の縁部分から直交する方向へ溝部となる部分内に突起させた部分を残した状態で除去され、ウェットエッチング工程で、突起して残された耐食膜を含めた形状で溝部となる部分の露出する水晶が除去されることとなる。
これにより、溝部を形成する斜面の数が減少し、対称性が改善された断面形状に溝部を形成することができる。
【0022】
また、パターニング工程で、音叉型水晶片の前記振動腕部の延設される方向をY´軸方向、前記Y´軸と直交し前記振動腕部の並ぶ方向をX´軸方向とし、かつ、水晶の結晶軸である前記Y軸に対して直角となる一方の方向を+X軸、他方の方向を−X軸としたとき、前記溝部となる部分に残された前記耐食膜が、前記溝部となる部分の長さ方向の+X軸側の縁部分から前記溝部となる部分内にX軸に平行な方向に突起させて残しているので、溝部内のウェットエッチングの進行を抑制して、勾配の異なる斜面の増加を防ぐことができる。これにより、溝部を形成する斜面の数が減少し、対称性が改善された断面形状に溝部を形成することができる。
また、溝部の形状は、溝部の+X軸方向が深く、−X軸方向が浅く形成されるため、溝の深く形成される+X軸側の縁部分から前記溝部となる部分内に突起を備えることで、対称性が改善された断面形状に溝部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は音叉型水晶片の一例を示す斜視図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は軸方向を示す概念図である。
【図2】(a)は水晶ウェハを示す概念図であり、(b)は耐食膜を形成した状態を示す概念図である。
【図3】(a)は感光性レジストを形成した状態を示す概念図であり、(b)は露光現像した状態の一例を示す概念図である。
【図4】図3(b)の一部を拡大した部分拡大図である。
【図5】(a)は露出する耐食膜を除去した状態を示す概念図であり、(b)は感光性レジストを除去した状態を示す概念図である。
【図6】(a)はウェットエッチングが完了した後の水晶ウェハの状態を示す概念図である。
【図7】振動腕部に設けられた溝部の断面形状を示す図である。
【図8】従来の音叉型屈曲水晶振動素子の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各構成要素について、状態をわかりやすくするために、誇張して図示している。
【0025】
(音叉型水晶片)
図1に示すように、音叉型水晶片110は、音叉形状となっており、基部111と基部111から延設する2本一対の振動腕部112とにより概略構成される。
【0026】
なお、ここで、+X軸方向、−X軸方向、Y´方向は、図1(c)に示すように、水晶が3回対称の結晶であるため、3方向存在する。また、水晶の結晶軸をX軸、Y軸、Z軸としたとき、X軸を回転軸としてZ軸−Y軸を含む平面内で±5°の範囲で回転させたときの新たな軸をY´軸とする。また、音叉型水晶片110の振動腕部112の延設される方向をY´軸方向、このY´軸と直交し振動腕部112の並ぶ方向をX軸方向、Y´軸と直交する一方の方向を+X軸、他方の方向を−X軸とする。
【0027】
基部111は、平面視略四角形の平板となっている。
振動腕部112は、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bとから成る。
第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bは、基部111の一辺から同一方向に延設されており、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bの長さ方向にはそれぞれ溝部GLが設けられている。
【0028】
溝部GLは、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bの両主面に、基部111との境界部分から振動腕部112の先端に向って、振動腕部112の長さ方向と平行に所定の長さで例えば2本設けられている。
このような音叉型水晶片110は、基部111と振動腕部112とが一体となって音叉形状を成しており、フォトリソグラフィ技術と化学エッチング技術、成膜技術により製造される。
【0029】
(音叉型水晶片の製造方法)
次に本発明の実施形態に係る音叉型水晶片の製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係る音叉型水晶片の製造方法は、耐食膜成膜工程、感光性レジスト形成工程、露光現像工程、パターニング工程、感光性レジスト除去工程、ウェットエッチング工程、を含んで構成されている。
【0030】
(耐食膜成膜工程)
耐食膜成膜工程は、図2(a)及び(b)に示すように、水晶ウェハ10の表裏に耐食膜20を成膜する工程である。
例えば、水晶ウェハ10の表裏に例えば、Cr、Cr+Auなどの耐食膜20を例えばスパッタリングにて成膜する。
なお、図2(b)の斜線部分は、水晶ウェハ10に耐食膜20が設けられた状態を示す。
【0031】
(感光性レジスト形成工程)
感光性レジスト形成工程は、図3(a)に示すように、耐食膜20上に感光性レジスト30を形成する工程である。
感光性レジスト30は、例えばポジ型が用いられ、耐食膜20が設けられた水晶ウェハ10の両主面に形成される。
【0032】
(露光現像工程)
露光現像工程は、図3(b)に示すように、感光性レジスト30が乾燥した後に音叉形状で感光性レジストを残しつつ溝部GL(図1(a)参照)となる部分Pの感光性レジストが除去されるように露光、現像、乾燥をする工程である。この露光現像工程では、溝部GLとなる部分P内の感光性レジスト30が、溝部GLとなる部分Pの長さ方向の縁部分から直交する方向へ溝部GLとなる部分P内に突起させた部分を残した状態で除去することとなる。
【0033】
また、溝部GLとなる部分に残された感光性レジスト30は、溝部となる部分Pの長さ方向の+X軸側に位置する縁部分からこの縁部分と直交する方向に溝部となる部分P内に突起させて残されている(以下、「突起」という場合がある)。
【0034】
また、この感光性レジストの突起31は、溝部GLの長さ方向に所定の間隔をあけて複数並べて設けられている。
【0035】
さらに、この感光性レジストの突起31は、溝部GLの長さ方向に沿う2つの縁部分Fの中間を通る中心線CLを超えて設けられている。
【0036】
言い換えると、基部111から延設される振動腕部112は、図4に示すように、その延設方向がY´軸方向に沿っている。この場合、突起31は、溝部GL内であってX軸方向に平行に設けられる。そのため、溝部GLとなる部分Pに設けられる突起して残される感光性レジスト30の突起する方向は、+X軸方向を向く溝部GLの長さ方向の縁部分F側からX軸方向と平行に突起した状態となる。
【0037】
(パターニング工程)
パターニング工程は、図5(a)に示すように、溝部GLとなる部分Pに残る耐食膜20と音叉形状以外の耐食膜20とを除去する工程である。
このパターニング工程で、溝部GLとなる部分P内の耐食膜20が、溝部GLとなる部分Pの長さ方向の縁部分Fから直交する方向に溝部GLとなる部分P内に突起させた部分を残した状態で除去される。
【0038】
(感光性レジスト除去工程)
感光性レジスト除去工程は、図5(b)に示すように、感光性レジスト30(図5(a)参照)を除去する工程である。
この感光性レジスト除去工程より、耐食膜20を露出させた状態とする。
【0039】
(ウェットエッチング工程)
ウェットエッチング工程は、水晶ウェハ10の露出する水晶部分をウェットエッチングする工程である。
ウェットエッチング工程で、外形形状が音叉型に形成されるとともに、突起して残された耐食膜を含めた形状で前記溝部となる部分Pの露出する水晶が除去され溝部GLが形成される。
【0040】
ここで、本発明の実施形態に係る音叉型水晶片の製造方法で製造された音叉型水晶片110は、溝部GLの断面形状を略V字型に形成された状態となっている。
断面は、図1(b)に示すように、振動腕部112の長さ方向の2つの側面の間で切断した状態とする。この切断状態における振動腕部112の切断形状において、1条の溝部GLは、2つの斜面により形成されており、一方の斜面が他方の斜面より勾配が緩やかに形成されている。したがって、溝部GLの断面形状が簡素化された略V字型に形成されることで、前記中心線CL(図3(b)参照)に対して対称性が改善された断面形状(図7参照)となり、振動バランスを向上させることができる。
【0041】
このように音叉型水晶片の製造方法を構成したことにより、露光現像工程で、溝部GLとなる部分内の感光性レジスト30が、溝部GLとなる部分Pの長さ方向の縁部分Fから直交する方向へ溝部GLとなる部分P内に突起させた部分を残した状態で除去され、パターニング工程で、溝部GLとなる部分P内の耐食膜20が、溝部GLとなる部分Pの長さ方向の縁部分Fから直交する方向へ溝部GLとなる部分P内に突起させた部分を残した状態で除去され、ウェットエッチング工程で、突起して残された耐食膜20を含めた形状で溝部GLとなる部分Pの露出する水晶が除去されることとなる。
これにより、溝部GLを形成する斜面の数が減少し、対称性が改善された断面形状に溝部GLを形成することができる。
【0042】
また、このように音叉型水晶片の製造方法を構成したことにより、パターニング工程で、音叉型水晶片の前記振動腕部112の延設される方向をY´軸方向、前記Y´軸と直交し振動腕部112の並ぶ方向をX軸方向とし、かつ、水晶の結晶軸であるY軸に対して直角となる一方の方向を+X軸、他方の方向を−X軸としたとき、溝部GLとなる部分Pに残された感光性レジスト30が、溝部GLとなる部分Pの長さ方向の+X軸側の縁部分Fから溝部GLとなる部分P内にX軸方向と平行に突起させて残しているので、溝部GL内のウェットエッチングの進行を抑制して、勾配の異なる斜面の増加を防ぐことができる。これにより、溝部GLを形成する斜面の数が減少し、対称性が改善された断面形状に溝部GLを形成することができる。
【0043】
なお、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、適宜、変更可能である。
例えば、感光性レジスト除去工程をせずに感光性レジストを残したままウェットエッチング工程を行っても良い。このように構成しても本発明の実施形態と同様の効果を奏する。
また、本発明の実施形態に係る音叉型水晶片の製造方法により製造された音叉型水晶片に励振電極を設けることで、音叉型屈曲水晶振動素子を構成しても良い。
【符号の説明】
【0044】
10 水晶ウェハ
20 耐食膜
30 感光性レジスト
31 突起
110 音叉型水晶片
111 基部
112 振動腕部
112a 第一の振動腕部
112b 第二の振動腕部
GL 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部とこの基部から延設する振動腕部とからなる構造であり、前記振動腕部が長さ方向に溝部を有する音叉型水晶片の製造方法であって、
水晶ウェハの表裏に耐食膜を成膜する耐食膜成膜工程と、
前記耐食膜上に感光性レジストを形成する感光性レジスト形成工程と、
前記感光性レジストが乾燥した後に音叉形状で前記感光性レジストを残しつつ溝部となる部分の前記感光性レジストが除去されるように露光、現像、乾燥をする露光現像工程と、
前記溝部となる部分に残る耐食膜と音叉形状以外の耐食膜とを除去するパターニング工程と、
前記感光性レジストを除去する感光性レジスト除去工程と、
前記水晶ウェハの露出する水晶部分をウェットエッチングするウェットエッチング工程と、
を含み、
露光現像工程で、前記溝部となる部分内の感光性レジストが、前記溝部となる部分の長さ方向の一方の縁部分から直交する方向へ前記溝部となる部分内に突起させた部分を残した状態で除去され、
前記パターニング工程で、前記溝部となる部分内の前記耐食膜が、前記溝部となる部分の長さ方向の縁部分から直交する方向へ前記溝部となる部分内に突起させた部分を残した状態で除去され、
前記ウェットエッチング工程で、突起して残された耐食膜を含めた形状で前記溝部となる部分の露出する水晶が除去されて形成されることを特徴とする音叉型水晶片の製造方法。
【請求項2】
音叉型水晶片の前記振動腕部の延設される方向をY´軸方向、前記Y´軸と直交し前記振動腕部の並ぶ方向をX軸方向とし、かつ、水晶の結晶軸であるY軸に対して直角となる一方の方向を+X軸、他方の方向を−X軸としたとき、
前記溝部となる部分に残された前記耐食膜が、前記溝部となる部分の長さ方向の+X軸側を向く縁部分から前記溝部となる部分内にX軸方向と平行に突起させて残されていることを特徴とする請求項1に記載の音叉型水晶片の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−217041(P2011−217041A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81958(P2010−81958)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】