説明

音声ダイナミックレンジコントロール装置

【課題】本発明は、音声信号に含まれるノイズレベルの程度に関わらず最適な音声ダイナミックレンジコントロールの効果を得ることが可能な音声ダイナミックレンジコントロール装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による音声ダイナミックレンジコントロール装置は、音声のダイナミックレンジを調整する音声ダイナミックレンジコントロール装置であって、外部から入力された音声入力信号に含まれるノイズレベルを検出する音声ノイズレベル検出回路5と、音声入力信号を受け、当該音声入力信号の入力レベル対出力レベル特性で規定されるダイナミックレンジ調整特性を変更可能なダイナミックレンジコントロール回路2と、ノイズレベルに基づいて、ダイナミックレンジコントロール回路2のダイナミックレンジ調整特性を制御するコントローラ4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン受信機等のスピーカーからの音声出力の音量変化を抑えて、大きな音は小さめに、小さな音は大きめに音量調整することによって聞き取りやすくするために音声のダイナミックレンジを調整する音声ダイナミックレンジコントロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の音声ダイナミックレンジコントロール(Dynamic Range Control:DRC)装置では、入力信号の入力レベルに応じて出力信号の出力レベルを調整する機能(ダイナミックレンジコントロール機能)を有しており、既に広く使用されている。音声ダイナミックレンジコントロール装置では、大きな音は小さめに、小さな音は大きめに音量調整して聞き取りやすくするために、音声のダイナミックレンジを圧縮(ダイナミックレンジコンプレッション(Dynamic Range Compression)ともいう)して調整している。
【0003】
DVD(Digital Versatile Disc)において採用されているドルビーデジタル(Dolby−Digital)では、音声ダイナミックレンジが大きい映画ソフトを一般家庭でも適切な音量で楽しめるように、ダイアログノーマライゼーション(Dialog Normalization)などのダイナミックレンジコントロールのパラメータが予め設定されており、設定したパラメータに応じてデコード機器側で最適にデコードする音声ダイナミックレンジコントロール装置がある。
【0004】
一方、アナログテレビ放送の音声や、他のアナログ音声信号を扱う機器では、音源に関係なく予め設定された固定のパラメータでダイナミックレンジコントロール機能を利用しているため、音源によっては音声ダイナミックレンジコントロールの効果が最適にならない場合がある。
【0005】
音声ダイナミックレンジの圧縮によって出力された音声信号の音質が劣化することに対する改善策としては、ドルビーボリューム(Dolby Volume)のような、周波数帯域をいくつかに分割し、聴感補正曲線に応じて出力信号の出力レベルを補正しているものもある。
【0006】
また、ラジオ受信機、テーププレーヤ、ディスクプレーヤの3つの入力音源機器を備え、各入力音源機器からの出力音声のノイズが不必要に大きくならないように、入力音源機器に応じてダイナミックレンジコントロールの効果を得る音響再生装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−52444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アナログテレビ放送の音声や、他のアナログ音声信号を扱う機器では、音源に関係なく予め設定された固定のパラメータでダイナミックレンジコントロール機能を利用したり、ダイナミックレンジコントロールの効果を得るためにユーザーが手動で切り替えたりしているため、音声ダイナミックレンジコントロールの効果が最適にならない場合がある。
【0009】
また、デジタル放送では音声信号が高音質であってS/N(signal to noise ratio)も良いため、小さい音をダイナミックレンジコントロール機能で大きくすることによって明瞭に聞き取ることができるようになるが、アナログテレビ放送では受信状態が悪くなって音声ノイズレベルが悪くなる場合が多く、このような場合に小さい音をダイナミックレンジコントロール機能で大きくすると音声のみならず音声ノイズも大きくなりすぎて耳障りになるという問題がある。
【0010】
このように、従来のダイナミックレンジコントロール装置では、入力レベルに応じて予め設定されたパラメータで出力レベルを調整していたため、音源のノイズレベルの程度によっては音声ダイナミックレンジコントロールの効果を適切に得られない場合があった。
【0011】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、音声信号に含まれるノイズレベルの程度に関わらず最適な音声ダイナミックレンジコントロールの効果を得ることが可能な音声ダイナミックレンジコントロール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明による音声ダイナミックレンジコントロール装置は、音声のダイナミックレンジを調整する音声ダイナミックレンジコントロール装置であって、外部から入力された音声入力信号に含まれるノイズレベルを検出する音声ノイズレベル検出手段と、音声入力信号を受け、当該音声入力信号の入力レベル対出力レベル特性で規定されるダイナミックレンジ調整特性を変更可能なダイナミックレンジコントロール手段と、ノイズレベルに基づいて、ダイナミックレンジコントロール手段のダイナミックレンジ調整特性を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、外部から入力された音声入力信号に含まれるノイズレベルを検出する音声ノイズレベル検出手段と、音声入力信号を受け、当該音声入力信号の入力レベル対出力レベル特性で規定されるダイナミックレンジ調整特性を変更可能なダイナミックレンジコントロール手段と、ノイズレベルに基づいて、ダイナミックレンジコントロール手段のダイナミックレンジ調整特性を制御する制御手段とを備えるため、音声信号に含まれるノイズレベルの程度に関わらず最適な音声ダイナミックレンジコントロールの効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1による音声ダイナミックレンジコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1によるコントローラによって制御される入出力特性の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1によるコントローラによって制御される入出力特性の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2による音声ダイナミックレンジコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【図5】従来の音声ダイナミックレンジコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面に基づいて以下に説明する。
【0016】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1による音声ダイナミックレンジコントロール装置の構成を示すブロック図である。また、図5は、従来の音声ダイナミックレンジコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
図5に示すように、従来の音声ダイナミックレンジコントロール装置では、音声信号(音声入力信号)は音声信号入力部1に入力され、ダイナミックレンジコントロール回路2にて入力した音声入力信号の入力レベルに応じて音声出力信号の出力レベルを調整する。ダイナミックレンジコントロール回路2にて出力レベルが調整された音声出力信号は、音声信号出力部3で増幅されてスピーカー(図示せず)から出力される。なお、ダイナミックレンジコントロール回路2は音声DSP(Digital Signal Processor)内に備えられているものとし、音声信号出力部3はアンプであるものとする。
【0018】
本実施形態1による音声ダイナミックレンジコントロール装置は、従来(図5)と比較して、音声ノイズレベル検出回路5およびコントローラ4を備えていることを特徴としている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態1による音声ダイナミックレンジコントロール装置は、外部から音声信号入力部1に入力された音声入力信号に含まれるノイズレベルを検出する音声ノイズレベル検出回路5(音声ノイズレベル検出手段)と、音声信号入力部1に入力された音声入力信号を受け、当該音声入力信号の入力レベル対出力レベル特性で規定されるダイナミックレンジ調整特性を変更可能なダイナミックレンジコントロール回路2(ダイナミックレンジコントロール手段)と、音声ノイズレベル検出回路5にて検出されたノイズレベルに応じた設定値に基づいて、ダイナミックレンジコントロール回路2のダイナミックレンジ調整特性を制御するコントローラ4(制御手段)とを備えている。また、ダイナミックレンジコントロール回路2にてダイナミックレンジ調整特性に基づいて調整された音声入力信号は、音声出力信号として音声信号出力部3で増幅されてスピーカー(図示せず)から出力される。
【0020】
なお、ダイナミックレンジコントロール回路2および音声ノイズレベル検出回路5は音声DSP内に備えられ、コントローラ4はマイコン(マイクロコンピューター)であり、音声信号出力部3はアンプであるものとする。
【0021】
図2は、本発明の実施形態1によるコントローラ4によって制御される入出力特性(音声信号入力部1に入力された音声入力信号の入力レベル対出力レベル特性で規定されるダイナミックレンジ調整特性)の一例を示す図である。
【0022】
図2に示すように、音声ダイナミックレンジは音声入力信号の入力レベルに応じて小音量領域(入力レベルが小さい領域)、中音量領域(入力レベルが中間の領域)、大音量領域(入力レベルが大きい領域)の3つの領域に分かれている。図中の細い破線は、ダイナミックレンジの圧縮比率が傾き1であり、ダイナミックレンジが圧縮されていないことを示している。
【0023】
小音量領域では、ダイナミックレンジの圧縮比率(ダイナミックレンジ調整特性)は略傾き1であり、オフセット量(図中のoffset_A,offset_B)分だけ出力レベルを上げている(入力レベルに対して出力レベルを大きくしている)。
【0024】
中音量領域では、ダイナミックレンジの圧縮比率は緩やかな一定の傾きであり、出力音声の音量に違和感がないようにダイナミックレンジの圧縮制御が行われている。
【0025】
大音量領域では、出力音声の音量が大きくなり過ぎないように、ダイナミックレンジの圧縮比率を大きくした圧縮制御が行われている。
【0026】
図2では、音声ノイズレベル検出回路5にて検出されたノイズレベルに応じて閾値TH1aと閾値TH1bとを切り替え、閾値TH1a,TH1bによって小音量領域のダイナミックレンジの圧縮比率を変更している。すなわち、ダイナミックレンジの圧縮比率(ダイナミックレンジ調整特性)の変更は、小音量領域の圧縮比率と中音量領域の圧縮比率とを切り替える閾値TH1a,TH1bを変更することによって行われる。従って、音声ノイズレベル検出回路5にて検出されたノイズレベルが大きい場合は閾値TH1bとして、図2の太い破線で示されるようなダイナミックレンジの圧縮比率で圧縮制御が行われる(このときのオフセット量はoffset_B)。一方、ノイズレベルが小さい場合は閾値TH1aとして、図2の実線で示されるようなダイナミックレンジの圧縮比率で圧縮制御が行われる(このときのオフセット量はoffset_A)。
【0027】
上記より、デジタル放送などS/Nが良い(ノイズレベルが小さい)音源の場合は、閾値TH1aとして、大きなオフセット量(offset_A)で十分なダイナミックレンジの圧縮効果を得ることによって、小さな音でも明瞭に聞くことができる。また、アナログ放送などS/Nが悪い(ノイズレベルが大きい)音源の場合は、閾値TH1bとして、小さなオフセット量(offset_B)にすることによって、ノイズが耳障りにならない範囲でダイナミックレンジの圧縮効果を得ることができる。
【0028】
図3は、本発明の実施形態1によるコントローラ4によって制御される入出力特性(音声信号入力部1に入力された音声入力信号の入力レベル対出力レベル特性で規定されるダイナミックレンジ調整特性)の別の一例を示す図である。
【0029】
図3では、中音量領域におけるダイナミックレンジの圧縮比率の傾きを変化させている。すなわち、中音量領域のダイナミックレンジ調整特性の圧縮比率を変更している。従って、図3に示すように、ノイズレベルが大きい場合は、図3の太い破線で示されるようなダイナミックレンジの圧縮比率で圧縮制御が行われる(このときのオフセット量はoffset_B)。一方、ノイズレベルが小さい場合は、図3の実線で示されるようなダイナミックレンジの圧縮比率で圧縮制御が行われる(このときのオフセット量はoffset_A)。なお、図3に示す入出力特性の効果は、図2に示す入出力特性の効果と同様である。
【0030】
また、音声ノイズレベル検出回路5では、入力された音声信号の中からノイズのみを抽出してノイズレベルを検出することは容易ではない。従って、テレビ受信機の場合は、簡易的に番組の無音部分の音声レベルをノイズレベルとして検出してもよい。すなわち、音声ノイズレベル検出回路5は、音声入力信号の最小レベルをノイズレベルとして検出してもよい。このような場合において、放送の受信チャンネルの切り替え時や入力の切り替え時には、S/Nの検出レベルを一旦リセットし、オフセット量を小さくしてダイナミックレンジの圧縮比率を控えめに(圧縮率を小さく)しておく。その後、番組の音声入力信号レベルを一定時間検出し、音声入力信号レベルが最小となったときの信号レベルを無音状態のノイズレベルと推定する。ノイズレベルが大きい場合は、オフセット量を小さくしてダイナミックレンジの圧縮比率を控えめに(圧縮率を小さく)する。また、ノイズレベルが小さい場合は、オフセット量を大きくしてダイナミックレンジの圧縮比率を大きくすることによって、ダイナミックレンジコントロールの効果を大きくすることができる。
【0031】
以上のことから、本実施形態1の音声ダイナミックレンジコントロール装置によれば、ノイズレベルが大きい場合よりも小さい場合の方が、ダイナミックレンジが圧縮されるように音声入力信号の入力レベル対出力レベル特性で規定されるダイナミックレンジ調整特性が制御されるため、音声信号に含まれるノイズレベルの程度に関わらず最適な音声ダイナミックレンジコントロールの効果を得ることができる。
【0032】
〈実施形態2〉
図4は、本発明の実施形態2による音声ダイナミックレンジコントロール装置の構成を示すブロック図である。本実施形態2では、実施形態1における音声ノイズレベル検出回路5(図1参照)に代えて、音声入力信号とともに外部から入力された映像信号に含まれるノイズレベルを検出する映像ノイズレベル検出回路7(映像ノイズレベル検出手段)を備えることを特徴としている。その他の構成および動作については、実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、映像ノイズレベル検出回路7は、映像処理IC(Integrated Circuit)内に備えられているものとする。
【0033】
図4に示すように、映像ノイズレベル検出回路7は、外部から映像信号入力部6に入力された映像信号に含まれるノイズレベルを検出する。コントローラ4では、映像ノイズレベル検出回路7にて検出されたノイズレベルから音声信号入力部1に入力された音声入力信号に含まれるノイズレベルを推測し、推測したノイズレベルに基づいてダイナミックレンジコントロール回路2における音声入力信号の入力レベル対出力レベル特性で規定されるダイナミックレンジ調整特性を制御する。
【0034】
なお、アナログテレビ放送などでは、垂直帰線期間中の走査線のノイズレベルを検出することができる映像処理ICが既に一般的に存在しており、そのような映像処理ICを用いることによって映像信号のノイズレベルを容易に検出することができる。
【0035】
以上のことから、本実施形態2の音声ダイナミックレンジコントロール装置によれば、映像信号に含まれるノイズレベルを検出し、検出したノイズレベルから音声信号のノイズレベルを推測して用いることによって、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の活用例として、テレビなどのAV(Audio Visual)機器や車載音響機器など、音声出力回路全般に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 音声信号入力部、2 ダイナミックレンジコントロール回路、3 音声信号出力部、4 コントローラ、5 音声ノイズレベル検出回路、6 映像信号入力部、7 映像ノイズレベル検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声のダイナミックレンジを調整する音声ダイナミックレンジコントロール装置であって、
外部から入力された音声入力信号に含まれるノイズレベルを検出する音声ノイズレベル検出手段と、
前記音声入力信号を受け、当該音声入力信号の入力レベル対出力レベル特性で規定されるダイナミックレンジ調整特性を変更可能なダイナミックレンジコントロール手段と、
前記ノイズレベルに基づいて、前記ダイナミックレンジコントロール手段の前記ダイナミックレンジ調整特性を制御する制御手段と、
を備える、音声ダイナミックレンジコントロール装置。
【請求項2】
前記ノイズレベル検出手段は、前記音声入力信号の最小レベルを前記ノイズレベルとして検出することを特徴とする、請求項1に記載の音声ダイナミックレンジコントロール装置。
【請求項3】
前記音声ノイズレベル検出手段に代えて、前記音声入力信号とともに外部から入力された映像信号に含まれるノイズレベルを検出する映像ノイズレベル検出手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の音声ダイナミックレンジコントロール装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ノイズレベルが大きい場合よりも小さい場合の方が、前記ダイナミックレンジが圧縮されるように前記ダイナミックレンジ調整特性を制御することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の音声ダイナミックレンジコントロール装置。
【請求項5】
前記ダイナミックレンジ調整特性の変更は、前記音声入力信号を小音量領域、中音量領域、大音量領域の3つの領域に分けた場合における、前記小音量領域の前記ダイナミックレンジ調整特性と前記中音量領域の前記ダイナミックレンジ調整特性とを切り替える閾値の変更を含むことを特徴とする、請求項4に記載の音声ダイナミックレンジコントロール装置。
【請求項6】
前記ダイナミックレンジ調整特性の変更は、前記音声入力信号を小音量領域、中音量領域、大音量領域の3つの領域に分けた場合における、前記中音量領域の前記ダイナミックレンジ調整特性の圧縮比率の変更を含むことを特徴とする、請求項4に記載の音声ダイナミックレンジコントロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−70024(P2012−70024A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210415(P2010−210415)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】