説明

音波式配管調査システムおよびそれを用いた配管調査方法

【課題】音波式配管調査システムにおいて、実際の反射波信号と多重反射波信号とを精度よく識別することができるようにすること。
【解決手段】音波式配管調査システム10は、調査対象となる配管1の配管路に音波信号を入射する発音部2と、入射した音波信号の反射波信号を計測するセンサ部3と、センサ部3にて得られた反射波信号を処理する信号処理部6とを備えている。信号処理部6は、発音部と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号との差異を拡大する処理を行なう多重反射波識別手段61を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波式配管調査システムおよびそれを用いた配管調査方法に係り、特に配管路に入射した音波の反射波を計測して信号処理することにより配管路状態を調査する音波式配管調査システムおよびそれを用いた配管調査方法に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中や地上あるいは建物内部等にはガスや上下水道用の配管を始めとして、電力ケーブルや各種通信ケーブルを収容するための配管が多数埋設あるいは敷設されている。これら配管は物理・化学的影響により経時的に次第に劣化される傾向にあるものとなっている。したがって、それら配管に対しては、定期的点検あるいは必要に応じて随時の点検により、その内部状態を調査し、必要に応じて随時適当な補修が施される。また、設計通りに配管が敷設されているか否かの確認をするために、内部状態を調査することも行なわれている。これらのような配管路の内部状態を調査するための音波式配管調査システムが検討されている。
【0003】
従来の音波式配管調査システムとしては、特開平11−125623号公報(特許文献1)に示されるものがある。この特許文献1の音波式配管調査システムは、スピーカ(発音部)及びマイク(センサ部)によって構成され、配管構造物(配管)の管端に装着されるアセンブリを備えている。スピーカは、管端から配管構造物の内部へと音響信号(音波信号)を送信する手段であり、マイクは配管構造物内部からの反射波を受信するための手段である。スピーカを用いて正弦波の音響信号を配管構造物の内部に送信する回路として、信号発生回路及び増幅器が設けられている。スピーカによって配管構造物の内部に送信された音響信号は、配管構造物にて生じている各種の音響的不連続部、例えば継手によって反射される。マイクはこのような反射波を受信し、演算部に供給する。演算部は、音響信号反射率の周波数特性を検出し、これを継手の種類毎にあらかじめ測定されている周波数特性と比較することにより、各継手の種類を判別する。
【0004】
【特許文献1】特開平11−125623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の音波式配管調査システムでは、各継手の種類を判別することに配慮されているものの、多重反射波に対する配慮については開示されていない。
【0006】
音波を用いて管路内の調査を行なう場合には、発音部から入射された音波に多重反射が生じ、この多重反射波信号が観察された場合、その信号を配管路内での反射源からのものであると誤判定してしまう虞がある。多重反射は配管路中に位置する分岐部や末端部と反射音波のセンサ部との間で主に発生し、配管路内に位置する分岐部等の正規の設置位置からの反射信号とは無関係のタイミングで発生するので、配管路内に実存しないにも拘らず、配管路内に反射源となる部材が存在しているとして誤判定する虞がある。
【0007】
本発明の目的は、実際の反射波信号と多重反射波信号とを精度よく識別することができる音波式配管調査システムおよびそれを用いた配管調査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するための本発明の第1の態様の音波式配管調査システムは、調査対象となる配管の配管路に音波信号を入射する発音部と、入射した音波信号の反射波信号を計測するセンサ部と、前記センサ部にて得られた反射波信号を処理する信号処理部とを備え、前記信号処理部は、前記発音部と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号との差異を拡大する処理を行なう多重反射波識別手段を備えている構成にしたことにある。
【0009】
前述の目的を達成するための本発明の第2の態様の音波式配管調査システムは、調査対象となる配管の配管路に音波信号を入射する発音部と、入射した音波信号の反射波信号を計測するセンサ部と、前記センサ部にて得られた反射波信号を処理する信号処理部と、
前記発音部及び前記センサ部を装着した状態で前記配管の端部に取付けられて計測管路長を変更する管路長可変機構とを備え、前記管路長可変機構は、前記配管の端部に取付けられる固定部と、前記固定部に移動可能に取付けられた可動部とを備え、前記信号処理部は、前記可動部を移動して複数の位置で前記発音部による音波信号の入射と前記センサ部による計測とを行なって得られた各反射波信号を、前記可動部の移動分だけ補正して基準位置を一致させると共に加算して、前記発音部と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号との大きさの差を拡大する処理を行なう多重反射波識別手段を備えている構成にしたことにある。
【0010】
係る本発明の第2の態様におけるより好ましい具体的な構成例は次の通りである。
(1)前記固定部を前記配管の端部に気密的に固定可能とすると共に、前記可動部を前記固定部に気密的に移動可能に設置したこと。
(2)前記(1)に加えて、前記固定部は前記配管の端部外側に配置される固定筒状部材を備え、前記可動部は前記固定筒状部材の外側に係合して軸方向に摺動可能に配置された可動筒状部材を備えたこと。
(3)前記(2)に加えて、配管の内径より大きな内径の可動筒状部材の摺動部分が配管の開口端部より突出して形成される段差部を可動範囲にわたって塞ぐ段差閉塞部材を備えたこと。
(4)前記(3)に加えて、前記段差閉塞部材は前記可動筒状部材から前記配管の端部内面に延びる薄肉筒状の部材で形成されていること。
【0011】
前述の目的を達成するための本発明の第3の態様である音波式配管調査システムを用いた配管調査方法は、調査対象となる配管の配管路に音波信号を入射する発音部と、入射した音波信号の反射波信号を計測するセンサ部と、前記センサ部にて得られた反射波信号を処理する信号処理部とを備えた音波式配管調査システムにおいて、前記発音部及び前記センサ部を基準位置に配置して前記配管の配管路に音波信号を入射すると共にその反射波信号を計測し、前記発音部及び前記センサ部を基準位置から所定量移動した位置に配置して前記配管の配管路に音波信号を入射すると共にその反射波信号を計測し、前記基準位置で計測した反射波信号と前記基準位置から所定量移動した位置で計測した反射波信号に基づいて、前記発音部と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号との差異を拡大する処理を前記信号処理部で行なうようにしたことにある。
【0012】
係る本発明第3の態様におけるより好ましい具体的な構成例は次の通りである。
(1)前記発音部及び前記センサ部を装着した状態で前記配管の端部に取付けられて計測管路長を変更する管路長可変機構を用いて、前記発音部及び前記センサ部を基準位置から複数箇所に移動して前記配管の配管路に音波信号を入射すると共にその反射波信号を計測すること。
【発明の効果】
【0013】
本発明の音波式配管調査システムおよびそれを用いた配管調査方法によれば、実際の反射波信号と多重反射波信号とを精度よく識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例の音波式配管調査システムおよびそれを用いた配管調査方法を、図を用いて説明する。
【0015】
まず、本実施例の音波式配管調査システムの全体構成に関して図1を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例の音波式配管調査システムの構成図である。
【0016】
音波式配管調査システム10は、調査対象となる配管1の配管路に音波を入射する発音部2と、入射した音波の反射波を計測するセンサ部3と、配管1の端部に取付けられて計測管路長を変更する管路長可変機構4と、発音部2に送る信号を発生する信号発生器5と、センサ部3にて得られた反射波信号を処理する信号処理部6と、信号処理部6で処理された波形を表示する波形表示部7とを主要構成要素として構成されている。
【0017】
調査対象となる配管1は、鋼管などで構成されるガス管や水道管などであり、図示例では、その配管路の途中に分岐部1aを有すると共に、一側の管端部が開口され、他側は配管が続いている。なお、配管1は、一般的に、各種継手を介して複数組合された状態として様々に接続され、その内部が途中で分岐管に分岐接続されたり、エルボ管に接続されたりしている。本実施例の音波式配管調査システム10は、これらの継手状態や分岐状態やエルボ状態の存否などの配管路状態を音波により識別しようとするものである。
【0018】
発音部2は、スピーカなどで構成され、管路長可変機構4の一側端部に配管路に面して取付けられており、管路長可変機構4の内部で構成する配管路を通して配管1の配管路内に音波を入射するように構成されている。なお、信号発生器5で生成された周期性信号が増幅器8で増幅されて発音部2に送信され、発音部2から周期性信号が配管路内に発せられる。
【0019】
センサ部3は、マイクロフォンなどで構成され、発音部2の近傍に位置して管路長可変機構4に取付けられており、入射した音波の反射波を管路長可変機構4の配管路内で受信するように構成されている。センサ部3で受信された反射波信号は増幅器9で増幅されて信号処理部6に送信される。
【0020】
管路長可変機構4は、配管路の計測時に、発音部2及びセンサ部3を装着した状態で、配管1の一側開口端部に気密的に取付けられる。管路長可変機構4の内部は配管1の配管路に連通する配管路を構成する。なお、管路長可変機構4は計測終了後に取外され、その部分には正規の配管1が配設される。
【0021】
信号処理部6は、センサ部3にて得られた反射波信号を波形表示部7で表示できるように処理するものであり、多重反射波識別手段61を備えている。この多重反射波識別手段61は、図1にブロックで図示するが、処理ソフトの一部で構成されるものであり、発音部2と反射点と間の多重反射波信号を小さくする処理を行なうものである。多重反射波識別手段61は、管路長可変機構4の可動部42を移動して複数の位置で発音部2による音波信号の入射波とセンサ部3による計測とを行なって得られた各反射波信号を、可動部42の移動分だけ補正して基準位置を一致させると共に加算して、発音部2と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号との大きさの差を拡大する処理を行なうものである。なお、本実施例では、前記反射点は分岐部1aである。
【0022】
音波式配管調査システム10は、発音部2、センサ部3及び管路長可変機構4からなるメカユニット10Aと、信号発生器5、増幅器8、増幅器9、信号処理部6及び波形表示部7からなる電気ユニット10Bとにユニット化され、両ユニット10A、10B間を配線で接続自在としている。これによって、配管1が埋設管であっても音波式配管調査システム10を容易に設置することができると共に、輸送などの取扱い性も良好である。
【0023】
次に、管路長可変機構4の具体的構成に関して、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は本実施例における管路長可変機構4を配管1に取付けた状態の一部断面側面図、図3は図2の要部拡大図である。図2及び図3において、(a)は管路長可変機構4を最も縮めた状態を示し、(b)は最も長く伸ばした状態を示す。
【0024】
管路長可変機構4は、配管1の開口端部に取付けられる固定部41と、固定部41に移動可能に取付けられた可動部42とを備えて構成されている。固定部41は配管1の開口端部外側に配置される固定筒状部材41aを備え、可動部42は固定筒状部材41aの外側に係合して軸方向に摺動可能に配置された可動筒状部材42aを備えて構成されている。具体的には、固定部41は固定筒状部材41aと固定ナット41bとから構成され、可動部42は可動筒状部材42aと発音部保持部材42bと段差閉塞部材42cとから構成されている。
【0025】
そして、固定筒状部材41aは固定ナット部41bにシールを介して気密的にネジ締結され、固定ナット部41bは配管1にシールを介して気密的に取付けられる。可動筒状部材42aは、固定筒状部材41aの外側に係合して軸方向に摺動する部分にOリング等のシール材42dを設けており、これにより固定筒状部材41aとの気密性を持たせている。発音部保持部材42bは、可動筒状部材42aの端部にネジ締結され、可動筒状部材42aと気密的に固定されている。係る構成によって、管路長可変機構4の内部は、配管1に対して気密性が保たれ、配管1の内部と共に計測時配管路の一部を構成する。
【0026】
可動筒状部材42aにはセンサ部3が取付けられ、可動部42の内部配管路から反射波信号を受信できるようになっている。また、発音部保持部材42bには発音部2が可動部42の内部の配管路に面して取付けられ、配管路内に音波信号を入射できるようになっている。
【0027】
段差閉塞部材42cは、配管1の内径より大きな内径の可動筒状部材42aの摺動部分が配管1の開口端部より突出することにより形成される段差部4eを可動部42の可動範囲にわたって塞ぐものである。この段差閉塞部材42cは、可動筒状部材42aから配管1の端部内面に延びる薄肉筒状の部材で形成されている。なお、段差閉塞部材42cは、配管1との間で形成される段差部によって生じる多重反射波信号が無視できる程度の肉厚に設定することが可能である。
【0028】
計測時における配管路長は、図示例の場合には、発音部2から分岐部1aまでの長さである。管路長可変機構4を最も縮めた状態の配管路長は図2(a)に示す長さLであり、管路長可変機構4を最も伸ばした状態の配管路長は図2(b)に示す長さL+3ΔLである。なお、管路長可変機構4はその伸縮を任意の位置に設定することができるようになっている。これによって、計測回数を容易に増加することができる。また、管路長可変機構4に位置センサを備え、伸縮されたそれぞれの位置をこの位置センサで自動的に計測して信号処理部6に取込むようにすることが望ましい。
【0029】
次に、音波式配管調査システム10の動作例に関して図4及び図5を参照しながら説明する。図4は本実施例の音波式配管調査システムの動作フロー図、図5は図4に対応する波形図である。
【0030】
管路長可変機構4が最も縮められた状態で配管1に取付けられて調査が開始された場合について説明する。まず、信号発生器5により周期性信号である1サイクルの正弦波信号が生成される(ステップS1)。この正弦波信号は、増幅器8で増幅された後(ステップS2)、発音部2から配管1内に音波信号として入射される(ステップS3)。
【0031】
配管1内で反射された反射波は、センサ部3により計測され(ステップS4)、増幅器9で増幅された後(ステップS5)、信号処理部6に取込まれてメモリに記憶される(ステップS6)。信号処理部6に取込まれた反射波信号は、波形表示部7で表示できるように信号処理された後にメモリに記憶される(ステップS7)。信号処理された反射波信号は、入射波信号と共に波形表示部7に表示される(ステップS8)。図5に示す例では、波形表示部7に表示される波形は、入射波、分岐部反射波及び分岐部多重反射波の3つであり、第1回目の計測であれば、図5(a)に示すように表示される。
表示波形は、必要に応じて任意に設定することが可能である。
【0032】
次いで、計測回数をカウントした後(ステップS9)、計測回数が所定回数かを判定する(ステップS10)。本実施例では、この所定回数が4回に設定されているので、第1回目の計測が終了した状態になると、計測の再開が指示されるまで待機する。そして、管路長可変機構4の可動部42を次の計測位置までΔLだけ移動して計測開始が指示されると(ステップS11)、ステップ1に戻り、ステップ1〜9の処理が行なわれる。計測回数が4回に達するまでは、可動部42をΔLだけ順次移動して再開指示が行なわれ、ステップ1〜9の処理が繰返される。
【0033】
ステップ1〜9の繰返しの際には、ステップ6〜9の処理が次の通り繰返し回数に応じた内容で行なわれる。
【0034】
ステップS6では、計測された反射波信号の記憶は処理回数に応じて時系列的に別の場所に記憶される。
【0035】
ステップS7では、計測された反射波信号の波形を可動部42の移動分ΔL〜3ΔLだけ補正して基準位置を一致させる処理と、この処理結果を処理回数に応じて時系列的に別の場所に記憶する処理とが行なわれる。
【0036】
係る基準位置を一致させる処理について図5を参照しながら説明する。従来のように基準位置の一致処理が行なわれない場合には、図5(b)〜(d)の点線に示すように反射波が波形表示部7に表示されるが、本実施例のように基準位置の一致処理が行なわれた場合には、図5(b)〜(d)の実線に示すように反射波が波形表示部7に表示される。即ち、第2回目の調査による反射波信号はΔLの移動分に相当する時間だけ前倒しシフトされる。これによって、第2回目の分岐部の反射波信号のスタート位置が第1回目の分岐部の反射波信号の基準位置と一致される。一方、第2回目の多重反射波信号は、第1回目の多重反射波信号の基準位置より2ΔLだけ遅れてスタートするので、ΔLの移動分に相当する時間だけ前倒しシフトしたとしても、第1回目の多重反射波信号の基準位置よりΔLだけ遅れてスタートすることとなる。次いで、第3回目の調査による反射波信号は2ΔLの移動分に相当する時間だけ前倒しシフトされ、第4回目の調査による反射波信号は3ΔLの移動分に相当する時間だけ前倒しシフトされることにより、それぞれの分岐部の反射波信号のスタート位置は第1回目の基準位置と一致されるが、それぞれの多重反射波信号のスタート位置は第1回目の基準位置より遅れた状態となる。
【0037】
ステップS10において、計測回数が所定回数なったと判定されると、基準位置を一致させる処理をされた反射波信号を加算する処理が行なわれて信号処理部6のメモリに記憶され(ステップS12)、その加算処理された反射波信号が波形表示部7に図5(e)のように表示される(ステップS13)。図5(e)から明らかなように、分岐部の反射波信号は、各測定回数の反射波信号の基準位置が一致されていることにより4倍に加算されることとなるが、分岐部の多重反射波信号は、各測定回数の反射波信号の基準位置がずれていることにより4倍に加算されることなく、分岐部の加算された反射波信号と明確に相違する波形信号となる。従って、配管路状態を容易に確認することができる。
【0038】
以上により、調査が終了される。なお、管路長可変機構4が最も伸ばされた状態で配管1に取付けられて調査が開始され、徐々に管路長可変機構4を縮めて同様な動作が行われても良い。
【0039】
本実施例の音波式配管調査システム10によれば、調査対象となる配管1の配管路に音波信号を入射する発音部2と、入射した音波信号の反射波信号を計測するセンサ部3と、センサ部3にて得られた反射波信号を処理する信号処理部6とを備えており、信号処理部6はと、発音部2と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号の大きさの差を拡大する処理を行なう多重反射波識別手段61を備えているので、実際の反射波信号と多重反射波信号とを精度よく識別することができ、反射点の数や位置を容易に検出できる。
【0040】
また、音波式配管調査システム10は、発音部1及びセンサ部3を装着した状態で配管1の端部に取付けられて計測管路長を変更する管路長可変機構4を備えており、管路長可変機構4は、配管1の端部に取付けられる固定部42と、固定部41に移動可能に取付けられた可動部42とを備え、信号処理部6は、可動部42を移動して複数の位置で発音部2による音波信号の入射とセンサ部3による計測とを行なって得られた各反射波信号を、可動部42の移動分だけ補正して基準位置を一致させると共に加算して、反射点からの反射波信号と、発音部2と反射点と間で発生する多重反射波信号との大きさの差を拡大する処理を行なう多重反射波識別手段61を備えているので、管路長の変更を容易に行なうことができると共に、簡単で精度の良い調査を行なうことができる。
【0041】
また、固定部41を配管1の端部に気密的に固定可能とすると共に、可動部42を固定部41に気密的に移動可能に設置しているので、ガスの使用状態における配管1の調査を容易に行なうことができる。
【0042】
また、固定部41は配管1の端部外側に配置される固定筒状部材41aを備え、可動部42は固定筒状部材41aの外側に係合して軸方向に摺動可能に配置された可動筒状部材42aを備えているので、配管1の先端から突出量を抑制しつつ、簡単な構造で測定時の配管路長を可変することができる。
【0043】
また、配管1の内径より大きな内径の可動筒状部材42の摺動部分が配管の開口端部より突出して形成される段差部42eを可動範囲にわたって塞ぐ段差閉塞部材42cを備えているので、段差部42eによる多重反射を防止することができる。なお、段差閉塞部材42cは可動筒状部材42から配管1の端部内面に延びる薄肉筒状の部材で形成されているので、簡単な構造で、段差部42eによる多重反射を確実に防止することができる。
【0044】
さらに、本実施例の音波式配管調査システムを用いた配管調査方法によれば、調査対象となる配管1の配管路に音波信号を入射する発音部2と、入射した音波信号の反射波信号を計測するセンサ部3と、センサ部3にて得られた反射波信号を処理する信号処理部6とを備えた音波式配管調査システム10において、発音部2及びセンサ部3を基準位置に配置して配管1の配管路に音波信号を入射すると共にその反射波信号を計測し、発音部2及びセンサ部3を基準位置から所定量移動した位置に配置して配管1の配管路に音波信号を入射すると共にその反射波信号を計測し、基準位置で計測した反射波信号と基準位置から所定量移動した位置で計測した反射波信号に基づいて、発音部2と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号との差異を拡大する処理を信号処理部で行なうように制御しているので、実際の反射波信号と多重反射波信号とを精度よく識別することができ、反射点の数や位置を容易に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例の音波式配管調査システムの構成図である。
【図2】本実施例における管路長可変機構4を配管1に取付けた状態の一部断面側面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本実施例の音波式配管調査システムの動作フロー図である。
【図5】図4に対応する波形図である。
【符号の説明】
【0046】
1…配管、1a…分岐部、1b…管端部、2…発音部、3…センサ部、4…管路長可変機構、5…信号発生器、6…信号処理部、7…波形表示部、8、9…増幅器、10…音波式配管調査システム、41…固定部、41a…固定筒状部材、41b…固定ナット、42…可動部、42a…可動筒状部材、42c…段差閉塞部材、42d…シール材、42e…段差部、61…多重反射波識別手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査対象となる配管の配管路に音波信号を入射する発音部と、
入射した音波信号の反射波信号を計測するセンサ部と、
前記センサ部にて得られた反射波信号を処理する信号処理部とを備え、
前記信号処理部は、前記発音部と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号との差異を拡大する処理を行なう多重反射波識別手段を備えている
ことを特徴とする音波式配管調査システム。
【請求項2】
調査対象となる配管の配管路に音波信号を入射する発音部と、
入射した音波信号の反射波信号を計測するセンサ部と、
前記センサ部にて得られた反射波信号を処理する信号処理部と、
前記発音部及び前記センサ部を装着した状態で前記配管の端部に取付けられて計測管路長を変更する管路長可変機構とを備え、
前記管路長可変機構は、前記配管の端部に取付けられる固定部と、前記固定部に移動可能に取付けられた可動部とを備え、
前記信号処理部は、前記可動部を移動して複数の位置で前記発音部による音波信号の入射と前記センサ部による計測とを行なって得られた各反射波信号を、前記可動部の移動分だけ補正して基準位置を一致させると共に加算して、前記発音部と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号との大きさの差を拡大する処理を行なう多重反射波識別手段を備えている
ことを特徴とする音波式配管調査システム。
【請求項3】
請求項2に記載された音波式配管調査システムにおいて、前記固定部を前記配管の端部に気密的に固定可能とすると共に、前記可動部を前記固定部に気密的に移動可能に設置したことを特徴とする音波式配管調査システム。
【請求項4】
請求項3に記載された音波式配管調査システムにおいて、前記固定部は前記配管の端部外側に配置される固定筒状部材を備え、前記可動部は前記固定筒状部材の外側に係合して軸方向に摺動可能に配置された可動筒状部材を備えたことを特徴とする音波式配管調査システム。
【請求項5】
請求項4に記載された音波式配管調査システムにおいて、配管の内径より大きな内径の可動筒状部材の摺動部分が配管の開口端部より突出して形成される段差部を可動範囲にわたって塞ぐ段差閉塞部材を備えたことを特徴とする音波式配管調査システム。
【請求項6】
請求項5に記載された音波式配管調査システムにおいて、前記段差閉塞部材は前記可動筒状部材から前記配管の端部内面に延びる薄肉筒状の部材で形成されていることを特徴とする音波式配管調査システム。
【請求項7】
調査対象となる配管の配管路に音波信号を入射する発音部と、入射した音波信号の反射波信号を計測するセンサ部と、前記センサ部にて得られた反射波信号を処理する信号処理部とを備えた音波式配管調査システムを用いた配管調査方法において、
前記発音部及び前記センサ部を基準位置に配置して前記配管の配管路に音波信号を入射すると共にその反射波信号を計測し、
前記発音部及び前記センサ部を基準位置から所定量移動した位置に配置して前記配管の配管路に音波信号を入射すると共にその反射波信号を計測し、
前記基準位置で計測した反射波信号と前記基準位置から所定量移動した位置で計測した反射波信号に基づいて、前記発音部と反射点と間で発生する多重反射波信号と、反射点からの反射波信号との差異を拡大する処理を前記信号処理部で行なう
ことを特徴とする音波式配管調査システムを用いた配管調査方法。
【請求項8】
請求項7に記載の音波式配管調査システムを用いた配管調査方法において、前記発音部及び前記センサ部を装着した状態で前記配管の端部に取付けられて計測管路長を変更する管路長可変機構を用いて、前記発音部及び前記センサ部を基準位置から複数箇所に移動して前記配管の配管路に音波信号を入射すると共にその反射波信号を計測することを特徴とする音波式配管調査システムを用いた配管調査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−275891(P2006−275891A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97831(P2005−97831)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成14年度、経済産業省、地方都市ガス事業天然ガス化促進対策調査(経年内管対策更新技術開発)に関する委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000233295)日立ハイブリッドネットワーク株式会社 (195)
【Fターム(参考)】