説明

音波気象探知機を有する風力エネルギータービン用早期警戒システム

【課題】風力発電装置の故障を引き起こす損害又は状況から風力発電装置を保護し、同時に、最大限のエネルギー収率がまた実現され得る測定及び可能な方法を提供する。
【解決手段】風力発電装置は、風の状態の音波探知及び測距のための音波気象探知機システムであって、風力発電装置のロータのハブ領域において且つ風の方向に風力発電装置のロータの平面の正面において風力発電装置の胴体部に取り付けられ、風力発電装置のロータの正面の領域における風の状態を探知及び測距するように向けられる上記音波気象探知機システムを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波気象探知機を有する風力エネルギータービン用早期警戒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置は、それぞれの大きさ及び出力の設計に応じて、比較的高価な設備投資項目であり、上記装置は、風力発電装置について約束された高耐用性が達せられるべきならば、風力発電装置の故障を引き起こす破壊、損害、又は他の原因から保護されるべきである。同時に、風力発電装置に関して、最大規模のエネルギー収率(energy yield)を実現することもまた可能であるように、常にそれらを最大限の出力において稼動したいという望みがある。両方の目的、すなわち、一方においては高耐用性と、他方においては可能な限り最高のエネルギー収率とは、部分的にまったく正反対の関係にあるが、結局広く認められるように、基本的に風力発電装置はまた、部分的に過負荷範囲において作動されることが可能であり、それにより、そのエネルギー収率が増加されるが、同時に、これはまた耐用年数に著しい短縮をもたらす。対照的に、風力発電装置が、かなり低い風速範囲においてのみ作動されるならば、上記装置は、確かに前記のものよりより良く保護されるが、エネルギー収率の観点からすれば不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、風力発電装置の故障を引き起こす損害又は状況から風力発電装置を保護し、同時に、最大限のエネルギー収率がまた実現され得る測定及び可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、請求項1又は請求項2に記載されている特徴を有する本発明により達せられる。有利な展開が、付随する請求項に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、従来のように、風速計により風力発電装置において風の状態を測定するだけでなく、風の方向に第1の風力発電装置の後ろに配置されている風力発電装置のためにそれらの測定結果を使用することの実現に基づいており、例えば、突風又はスコール(squall)が起こる場合には、必要に応じて、上記装置が、突風又はスコールが風力発電装置に衝突する前のまだ良好な間にそのブレード(blade)の取付け角に関して変更を行うことができ、突風又はスコールが風力発電装置に衝突する場合には、負荷は、損害を生じさせるほど大きくはない。
【0006】
本発明に係る早期警戒システムは、2つの部分的に異なる解決手段(アプローチ:approach)に基本的に基づいており、それらはまた共に結合され、お互いに補足し得る。
【0007】
1つの実施可能な手段は、風力発電装置自体に、好ましくはその胴体部(ポッド:pod)に、例えば、回転翼(ロータ:rotor)の正面のフロントハブ(front hub)領域に、いわゆる音波気象探知機システム(ソーダーシステム:SODAR system)(例えば、http://aku100.physik.uni-oldenburg.de/Schallausbreitung/sodar1参照)を取り付けることを伴う。上記の音波気象探知機システム(音波の探知及び測距)は、風力発電装置の正面の所望の方向において(風の方向において)風の状態を(オンラインで)3次元的に探知可能である。従って、音波気象探知機システムが、風力発電装置の胴体部に取り付けられ、風力発電装置のロータの正面の上記領域の方へ向けられるならば、(音波気象探知機システムが胴体部とともに常に主な風向きの方向に向きを合わせられるように)あらゆるその後の調整は必要なく、突風又はスコールが起こるかどうかを確かめるために、風力発電装置のロータの正面の上記領域を観測することができる。
【0008】
音波気象探知機システムは、確かに基本的に今まで知られているが、これまでそれらは、固定して組み立てられるのみ、又はトレーラー上の移動装置の形で移動され、それから所定の領域において風の分布(プロファイル:profile)の1回限りの測定に役立つのみである。
【0009】
本発明に基づいて、上記の音波気象探知機システムは、風力発電装置にそのままにしておかれ、一回固定して据え付けられるだけではない。その結果、風力発電装置の好ましくない過負荷をもたらし得る突風又はスコールが近づく場合には、良好な間に探知され、ロータブレードは、突風又はスコールがまだ風力発電装置に衝突する前である時に適切に調整され、それにより、突風又はスコールが風力発電装置に加える負荷は、調整されていないロータブレードよりも著しく小さい。
【0010】
音波気象探知機システムが、風力発電地帯に立てられた1つの(又は複数の)風力発電装置に取り付けられるならば、及び、風力発電装置が、近づいてくる風が第1に衝突する風力発電地帯の縁部の領域に立てられるならば、音波気象探知機システムにより測定されるデータは、音波気象探知機システムを備えている上記風力発電装置だけでなく、風の方向に音波気象探知機システムを備えた風力発電装置の後ろにあるすべての別の風力発電装置によっても処理され、それにより、風力発電装置が適切に風の方へロータブレードを向け、スコール又は突風、又は他の損害を与える風の状態について強い影響を与えられないならば、通過する突風又はスコール、又は他の弊害をもたらす風の状態はまた、少しも損害を引き起こすことができない。
【0011】
しかし、風力発電地帯の場合には、1つの風力発電装置に取り付けられている前記風速計及び負荷測定装置が、風速計又は負荷測定装置を備えている上記風力発電装置に重要であるデータを供給するために使用され得るだけでなく、また風速計を備えた上記風力発電装置の後ろの風向きのために使用するために据えられるかぎりにおいて、早期警戒システムの可能な代替形態がまた存在する。例えば、風速計が非常に強い風の強さを測定するならば、対応する情報項目が、風の方向において風力発電装置の後ろに位置する別の装置に伝えられ、それらの別の装置がまた、危険な負荷を伴う好ましくない風の状態の発生前の良好な間に、ロータブレードを調整することができる、或いは、例えば、完全に装置を停止する等の他の手段をとることができ、それにより、弊害をもたらす風の状態により引き起こされる負荷、ひいては起こり得るあらゆる損害ができるだけわずかとなり、好ましくは完全に回避される。
【0012】
風の方へロータブレードを向けることは、一般に、風にさらされるロータブレードの表面積を減少させることを意味しており、また、ある状況下では、電気出力の減少もまたもたらし得る。しかし、過負荷の回避とともに、それらが引き起こす損害を回避することができるならば、その不利な点が受け入れられる。結局、ごくわずかの過負荷の状況でさえ装置全体の耐用年数を著しく縮め得るので、風力発電装置の全体的な耐用年数を考慮するならば、一時的に下げられた出力レベルは、ほとんど重要ではない。
【0013】
1つの風力発電装置において測定されるデータ(風及び負荷のデータ)がまた、他の風力発電装置のために使用され得る本発明に係る早期警戒システムは、風力発電地帯の風力発電装置間の通信ネットワークを前提としており、その点において、データ送信が、無線を使用して、或いはまた配線で接続されたシステムによりもたらされてもよく、既に知られているネットワーク技術が、伝達自体のために使用されてもよい。
【0014】
この場合には、データ通信は、1つの装置からもう1つの装置に行われてもよく、また中央制御(central control)を経由して行われてもよい。中央制御は、上記装置で測定される風の状態に関する情報項目を風力発電地帯のすべての、又は選択された風力発電装置(例えば、所定の装置の‘風の陰’にある装置)に順番に伝え、及び/又は、必要とされる制御信号を順番に与え、それぞれの風力発電装置にそれらを伝達し得る。当然のことながら、伝達が、一方では1つの装置からもう1つの装置に、他方では、例えば、エラー修正を可能にする情報の冗長が存在するように中央制御によって行われるように、探知手段を評価する音波気象探知機と風速計との組み合わせを考えることもまた可能である。正確性(plaubility)の調査はまた、例えば、風力発電装置のための中央制御からの制御命令が、1つの装置からもう1つの装置に伝達される風速又は風向データに基づいて調査され、正確性が確かめられる場合のみ実行されるようにして達せられ得る。
【0015】
他方では、当然のことながら、各々の装置が、装置間で伝達されるデータに基づいてそれぞれの制御装置において適切な制御をもたらすこともまた可能であり、中央制御装置は、対応する監視処置を実行する。
【0016】
風力発電地帯の個々の風力発電装置間の距離が一定であるとき、損害を与える風の状態が起こる場合には、既知の風速に基づいて、例えば、突風又はスコール等のそれ相応に弊害をもたらす風の状態が上記装置に達する場合には、かなり確実に(事前に)計算することが可能である。従って、例えば、必要とされる調整(風に対するロータブレードの迎え角)を行うために、装置が必要とする風速依存性の準備期間を計算することが可能である。代わりに、或いは更に、準備期間のために修理された構成部品を導入することが可能である。
【0017】
個々の風力発電装置間の距離と風速によってもたらされる事前警戒時間は、通常よい時(ピッチ角速度が約4〜8度/秒の間である)にブレードの角度を変えるのに十分であるべきである。
【0018】
上記のように、風力発電装置で測定される風の状態に関する情報項目を確かめる操作は、基本的に、風力発電地帯のすべての風力発電装置でもたらされ得る。別の手段が、風向きに依存する情報通信であってもよく、その場合には、少なくとも一直線に風の通り道のそばにある装置に情報を伝達するために、広がり角度(spread angle)を設定することができる。その角度は、再び調整され得る、又は風の方向の変動に依存して選択され得る。
【0019】
当然のことながら、情報通信の過程で、純粋な風速及び風向データに加えて、送信及び目標風力発電装置の識別、エラー訂正符号、又は同様の情報項目のような更なるデータを伝達することもまた可能である。
【0020】
実質的に一定である風向きに加えて、風力発電装置の一部にのみ達する(ことができる)局部的な突風が、いつもさらに発生するという観点から風の方向を特に考慮することは適切であると思われ、収率最適化の観点からすれば、そこで起こる負荷ができるだけ低いという結果になるように上記の突風の行く手を実際にふさぐ風力発電装置のみがまた、適切に制御されなければならない。
【0021】
図1は、一例として、中央制御2に各々結合される複数の風力発電装置1を有する風力発電地帯の配置を示している。この場合には、中央制御は、個々の装置から測定されるデータを適切に処理し、個々の装置用の適切な制御信号をまた提供し得る。
【0022】
図2は、一例として、典型的な使用状況を示している。この場合には、風3が、第1に所定の装置4に流れ、測定されたデータが中央制御に又は他の方法(中央制御ではない)で他の装置に順番に伝えられる。装置に衝突する風がまた、上記装置の直接の風の陰(狭い斜線)に配置される装置に衝突することが見込まれる。しかし、部分的に又は完全に斜線範囲に該当するすべての装置において、第1装置の測定結果がまた第1装置の風の陰にある別の装置を制御するために使用され、それにより、別の装置への損害が発生せず、上記装置がまた、第1装置の測定結果の評価によって保護されるように広範な‘風の陰’を規定するために、広がり角度がまた、より広くされることが可能である。
【0023】
既述されるように、中央制御2の代わりに、もう1つの制御概念を使用することもまた可能である。従って、例えば、その概念はまた、隣接した装置間の又は所定の範囲の風力発電装置間のデータ(無線)通信である上記のものでもよく、そのように測定データがまた、無線を使用して、風力発電装置間の中央制御なしに交換されてもよい。
【0024】
所定の風の状況が発生する場合、例えば、突風の場合には、調整されるものは、特定の装置だけでなく、その装置のすぐ隣付近にあるすべての装置、又は影響される装置と所定の地理的関係にある装置である。例えば、図2に示されるように、それはまた、風の方向において影響される装置の右側に及び左側に位置する風力発電装置6であり得る。
【0025】
図2に示されるように、第1装置4が、音波気象探知機を備えているならば、突風が第1風力発電装置に衝突する場合には、その突風は、既に測定されており、適切な予防措置がまた、あらゆる損害を回避するために第1風力発電装置において取られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】中央制御に各々結合される複数の風力発電装置を有する風力発電地帯の配置を示す図である。
【図2】典型的な使用状況を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風の状態の音波探知及び測距のための音波気象探知機システムであって、風力発電装置のロータのハブ領域において且つ風の方向に風力発電装置のロータの平面の正面において風力発電装置の胴体部に取り付けられ、風力発電装置のロータの正面の領域における風の状態を探知及び測距するように向けられる上記音波気象探知機システムを有することを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
上記音波気象探知機システムが、ロータの正面の風の状態を測定するように構成され、風力発電装置の制御に対応測定データを伝達し、特に望ましくない風の状態が発生する場合には、次には、好ましくない負荷及び損害から装置全体を保護するために、ロータブレードの迎え角を適切に変えることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
上記望ましくない風の状態が、突風であることを特徴とする請求項2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
風の速度を探知するための上記音波気象探知機システムが、超音波を用いて作動することを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の風力発電装置。
【請求項5】
上記音波気象探知機システムが、風の速度を3次元的に探知することを特徴とする請求項1〜4の何れか一に記載の風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−303883(P2008−303883A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209001(P2008−209001)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【分割の表示】特願2003−517449(P2003−517449)の分割
【原出願日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】