音波赤外線画像化における多重モード可撓性励起のためのシステム及び方法
【課題】音エネルギによって付勢された構造を熱画像化する欠陥検出システムを提供すること。
【解決手段】このシステム(10)は、音信号を構造(12)の中に結合するトランスデューサ(14)を含み、構造(12)の中で音信号は、欠陥を加熱させる。ある実施例では、音信号は、構造(12)の固有モードにおける又はそれに近い1つ又は複数の周波数を有している。別の実施例では、非線形結合物体(16)がトランスデューサ(14)と構造(12)との間に配置され、トランスデューサ(14)からの音エネルギを構造(12)に結合させる。所定の力(26)が、トランスデューサ(14)に与えられ、音信号のパルス継続時間とパルス周波数とは、音エネルギが音響カオスを構造(12)において誘導し、従って、熱エネルギを増加させるように、選択される。熱画像化カメラ(22)が、構造が音信号によって加熱されると、その構造を画像化する。
【解決手段】このシステム(10)は、音信号を構造(12)の中に結合するトランスデューサ(14)を含み、構造(12)の中で音信号は、欠陥を加熱させる。ある実施例では、音信号は、構造(12)の固有モードにおける又はそれに近い1つ又は複数の周波数を有している。別の実施例では、非線形結合物体(16)がトランスデューサ(14)と構造(12)との間に配置され、トランスデューサ(14)からの音エネルギを構造(12)に結合させる。所定の力(26)が、トランスデューサ(14)に与えられ、音信号のパルス継続時間とパルス周波数とは、音エネルギが音響カオスを構造(12)において誘導し、従って、熱エネルギを増加させるように、選択される。熱画像化カメラ(22)が、構造が音信号によって加熱されると、その構造を画像化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広くは、物質における欠陥を検出するシステム及びそれに関連する方法に関し、更に詳しくは、物質における欠陥を検出するシステムであって、物質において音響カオスを生じさせる態様で音声エネルギを物質の中に結合する又は多重モードの可撓性励起信号を物質の中に結合するトランスデューサと、音響カオス又は可撓性励起の結果として物質に生じた熱を画像化する熱画像化カメラとを含むシステム及びそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の構造の構造的一体性を維持することは、安全性への配慮、ダウンタイム、コストなどの理由から、多くの分野で非常に重要である。構造的一体性は、物質の欠陥によって損なわれるのが典型的であり、この欠陥には、構造の中に存在しうるクラック、層間剥離、ディスボンド(分離、disbonds)、腐食、含有物、空隙などがある。例えば、発電産業においては、タービン、発電機及びプラント装置の関連するバランスを検査し運転中にコンポーネント及びシステムが故障しないことを保証するための信頼性の高い技術を利用できることが非常に重要である。同様に、航空産業において、航空機の外装及び構造的なコンポーネントの構造的一体性を検査し飛行中に航空機が構造的な故障を生じないことを保証するための信頼性の高い技術を利用できることが非常に重要である。タービン・ブレード及びロータや車両のシリンダ・ヘッドの構造的一体性もまた、それぞれの産業において非常に重要である。クラックや欠陥を検出するもっとも一般的な方法は、熟練した人間による視覚的検査である。しかし、構造的コンポーネントの一体性に影響する可能性があるクラックや欠陥は、検査者を補助する特別の技術を用いなければ容易には見ることができないことがある。従って、この技術分野では、多くの産業における異なる構造的コンポーネントや物質を非侵襲的かつ非破壊的に解析するための様々な技術が開発されてきた。欠陥を探すために非侵襲的かつ非破壊的に物質を検査する既知の技術の1つに、染料の浸透物を用いて物質を処理し、その物質に存在しうる全てのクラック又は欠陥に染料が浸透するようにする、という技術がある。この場合、次に、物質を洗浄した後で、粉末を用いて処理し、クラックの中に残っている染料が粉末の中にしみ出させるのである。そして、紫外(UV)光源を用いて物質を検査し、染料の結果である蛍光を発する物質の位置を観察する。しかし、この技術は、検査者集約的かつ検査者依存的であるという短所を有する。というのは、蛍光を検査する者が熟練していなければならないからである。更に、線量は、隙間なく閉じているクラックや物質の表面にないクラックの中には浸透しないのである。
【0003】
欠陥を探すためにコンポーネントを検査する既知の技術で第2のものでは、そのコンポーネントにおいて渦電流を誘導する電磁コイルを用いる。コイルをコンポーネントの周囲で移動させると、クラック又はそれ以外の欠陥の位置で渦電流パターンが変化し、これをオシロスコープで観察することができる。しかし、この技術は、非常にオペレータ集約的であって、極度に低速であり時間がかかるという短所がある。
【0004】
コンポーネントにおける欠陥を検出する別の既知の技術では、コンポーネントの熱画像化を用いて欠陥を識別する。他の熱画像化技術では、フラッシュ・ランプやヒート・ガンなどの熱源を用いて、熱の平坦パルスをコンポーネントの表面に向ける。コンポーネントは熱を吸収し、赤外線波長の放射を放出する。ある種の欠陥があるとその欠陥の位置の表面温度は周囲の領域の表面温度とは異なる比率で低下する。熱又は赤外線画像化カメラを用いてコンポーネントを画像化して、結果的に生じる表面温度の変化を検出するのである。この技術はディスボンドと腐食との検出には成功したが、コンポーネントにおける垂直方向のクラックの検出については成功しないのが通常である。垂直方向のクラックとは、コンポーネントの表面に対して直角なクラックである。その理由は、疲労クラックは平坦熱パルスにはナイフ・エッジのように見えるため、そのようなクラックからは熱反射は全く又は最小限にしか生ぜず、熱画像において見るのは困難又は不可能であるからである。
【0005】
物質における欠陥を検出する熱画像化は、物質の超音波励起を用いて熱を発生させるシステムにも拡張されている。音波がクラックやそれ以外の欠陥を含む固体の中を伝搬してその物質を振動させると、音響熱効果が生じる。クラックの両面は音波が通過するときに通常は同時に振動しないので、両面の間の摩擦などの散逸的現象により、振動エネルギの一部が熱に変換される。この熱効果を赤外線画像化と組み合わせることにより、非常に効率的な非破壊的なクラック検出システムを実現することができる。このような画像化システムは、一般に、ソニックIR、サーモソニック。アコースティック・サーモグラフィなどとして文献に記載される。
【0006】
Rantala, J.他による"Lock-in Thermography with Mechanical Loss Angle Heating at Ultrasonic Frequencies," Quantitative Infrared Thermography, Eurotherm Series 50, Edizioni Ets Piza 1997, pgs. 389-393には、そのような欠陥検出技術が開示されている。超音波がクラックの対向するエッジを相互に摩擦させることによりクラックを加熱させる。コンポーネントの損傷のない部分は超音波により最小限に加熱されるだけであるから、そのコンポーネントの結果的な熱画像は、暗い背景に対して明るい領域としてクラックを示すことになる。
【0007】
2001年5月22日にThomas他に与えられ、この出願の譲受人に譲渡されている"Infrared Imaging of Ultrasonically Excited Subsurface Defects in Materials"と題する米国特許第6,236,049号には、超音波励起によってコンポーネントにおけるクラックやそれ以外の欠陥を検出する熱画像化システムが開示されている。超音波トランスデューサがコンポーネントに結合され、トランスデューサからの超音波エネルギが欠陥を加熱させ、その様子が熱カメラにより検出される。超音波エネルギは振幅がほぼ一定のパルスの形式を有している。制御ユニットを用いて、この超音波トランスデューサとカメラとの動作のためのタイミング及び制御機能が提供される。
【発明の開示】
【0008】
本発明の教示によると、音エネルギによって加熱された構造における表面下クラック及びそれ以外の欠陥を熱画像化するシステム及び方法が開示される。トランスデューサなどの音源が音信号を構造の中に結合し、信号の中の音波が欠陥のエッジを相互に振動させ加熱させる。熱画像化カメラが、音源によって加熱されているときにその構造を画像化して、欠陥を識別する。
【0009】
ある実施例では、音信号は、特定の構造に対して選択された周波数の組合せを含むことにより、その構造の固有モードの又はその付近の周波数が生じるようになっている。この実施例では、音源は、異なる周波数を中心とする信号とチャープ信号、パルス・エンベロープ信号などの組合せを発生して、音信号の周波数、振幅及び継続時間を変動させることができ、それにより、固有モードが、励起される、又は、可撓的な多重モード励起のために回避される。
【0010】
別の実施例では、非線形結合物質などの結合物質が音源と構造との間に置かれ、音信号を構造に結合させる。所定の力が音源に加えられて、音源を構造に対して押しつけられる。この力と音信号のパルス継続時間及び周波数とは、音エネルギが構造において音響カオスを誘導するように選択され、構造においては、音響カオスが熱エネルギの発生を増加させる。構造の振動は、振動計又はマイクロフォンによって測定することができ、カオス周波数が存在しているかどうかが判断される。
【0011】
本発明の更なる効果及び特徴は、以下の詳細な説明と冒頭の特許請求の範囲とを添付の図面を参照して読むことにより明らかになるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
構造における欠陥を検出する欠陥検出システムに向けられた本発明の実施例に関する以下の説明は、その性質として単なる例示であり、本発明又はその応答例若しくは使用を制限する意図は全くない。
【0013】
図1は、本発明のある実施例による欠陥検出システム10のブロック図である。システム10は、コンポーネント12においてクラック、腐食、層間剥離、ディスボンドなどの欠陥を検出するのに用いられる。コンポーネント12は、壊滅的な故障を生じさせる可能性があるタイプの欠陥を含みうる、航空機の外装、タービン・ブレード、タービン・ロータ・発電機、車両のシリンダ・ヘッドなど、任意の構造的コンポーネント又は物質を表すものとする。強調しておきたいのは、コンポーネント12は金属であることは必要でなく、セラミクスや複合材などそれ以外の物質であり得るということである。
【0014】
システム10は、ある超音波周波数帯域内の音信号を発生する超音波トランスデューサ14を含む。超音波トランスデューサ14は、音信号をコンポーネント12に結合するホーン18を含む。トランスデューサ14は、本発明のサーモソニック・プロセスの目的に適した従来型のトランスデューサでよい。トランスデューサ14は、圧電素子の使用により、電気パルスの機械的変位への変換を提供する。例えば、トランスデューサ14は、正確な寸法に切断され結晶の切断寸法によって命じられる非常に狭い周波数で動作する圧電結晶のPZTスタックを用いる。PZTスタックはホーン18に機械的に結合され、ホーン18の先端はコンポーネント12に対して押しつけられる。この先端は、固定された寸法を有し可撓的ではないので、接触領域において、大きな接触領域及び圧力を示す。これは、コンポーネント12の平坦でなく平滑でない表面によって更に影響を受ける。トランスデューサ14は、また、米国特許第6,232,701号及び米国特許第6,274,967号に記載されたものや、米国メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)所在のウィルコックス・リサーチ(Wilcox Research)社の製造によるモデルF7−1圧電シェイカー・システムなどの、調整可能な圧電機械式励起装置であり得る。
【0015】
ある実施例では、トランスデューサ14は、1秒の約半分の時間周期の間、約800ワットの電力レベルで、約40kHzの周波数を有する超音波エネルギのパルスを発生する。しかし、この技術分野の当業者であれば理解するように、本発明の範囲の中で、他の超音波又は音周波数、電力レベル及びパルスの継続時間を用いることが可能である。トランスデューサ14は、超音波溶接トランスデューサを駆動する800Wのブランソン40kHz電源であり得る。
【0016】
トランスデューサ14からの超音波エネルギは、機械的カプラ16を介してコンポーネント12の中に結合される。カプラ16は、トランスデューサのホーン18とコンポーネント12の前面20とに機械的に接触している。図2は、カプラ16及びコンポーネント12と接触しているホーン18を示す分解された側面図である。ある実施例では、カプラ16は、自動車のガスケット物質、皮革、ダクト・テープ、コルク、テフロン(登録商標)、紙などの非線形カプラであり、音響エネルギの結果としてコンポーネント12の中の欠陥の周囲に後で論じる音響カオスを生じさせる。他の実施例では、カプラ16は、銅などの柔らかい金属の薄片であり、超音波エネルギをコンポーネント12の中に効率的に結合することができる。しかし、注意すべきことであるが、応用例によっては、カプラ16は必要とされずに、しかし、依然として音響カオスを提供するということである。任意の適切な道具(図示せず)によって力26をトランスデューサ14に与えてホーン18をカプラ16及びコンポーネント12とに対して押しつけることもできる。トランスデューサ14に加えられる力の大きさを選択することにより、コンポーネント12の中での音響カオスの発生を増加させることができる。
【0017】
検出システム10は、図示されているように、コンポーネント12から所定の距離だけ離間させた熱画像化カメラ22を含む。カメラ22は、コンポーネント12の超音波励起と共に、コンポーネント12の画像を発生する。カメラ22は、1枚の画像において希望するコンポーネント12の画像を提供するのに適した任意の距離だけコンポーネント12の背面から離間させ、所望の解像度で複数の欠陥を同時に検出することができる。他の実施例では、トランスデューサ14からの超音波エネルギとカメラ22によって発生された画像とは、コンポーネント12の同じ側に、又は、コンポーネント12の任意の側に提供されうる。熱カメラ22は、ここで述べている目的に適した任意のカメラでよい。例えば、レイセオン(Raytheon)社から入手可能なレイディアンス(Radiance)HSカメラや、インディゴ・システムズ(Indigo Systems)社のフィニックス(Phoenix)IRカメラなどである。ある実施例では、カメラ22は、3−5ミクロンの波長範囲の赤外線放射を感知して、毎秒100フレームで画像を発生する。カメラ22は、256x256InSbのピクセルを有し所望の解像度を生じる焦平面アレイを含む。
【0018】
コントローラ30は、トランスデューサ14とカメラ22との間のタイミングを提供する。コントローラ30は、ここで述べている目的に適する任意のコンピュータでよい。検出プロセスが開始されると、コントローラ30は、カメラ22に、所定の速度でコンポーネント12のシーケンシャルな画像の撮影を開始させる。画像のシーケンスがいったん開始すると、コントローラ30は、信号を電力増幅器32に送って、増幅器32にパルスをトランスデューサ14に送らせてパルス化された超音波信号を生じさせる。超音波エネルギは、所望の周波数を有する単純なパルスの形式である。画像は、カメラ22によって発生され、コンポーネント12の画像を表示するモニタ34に送られる。画像は、また、希望する場合には別の場所で見るために記憶装置36に送ることもできる。
【0019】
コンポーネント12に与えられた超音波エネルギは、コンポーネント12におけるクラック及びそれ以外の欠陥の面を相互に摩擦させ熱を生じさせる。システム10において適切なパラメータを提供することにより、既に論じたように、音響カオスがコンポーネント12において生じて、欠陥の加熱を促進する。カメラ22によって発生される画像では、熱は、明るいスポットとして現れる。従って、システム10は、非常に小さな狭い間隔で閉じているクラックを識別するのに優れている。クラックの両面が接触しないような開いたクラックの場合には、熱は、クラックの先端の応力集中点において発生される。この点は、画像では明るいスポットとして現れ、開いたクラックの端部又は先端を示す。超音波エネルギは、エネルギ・パルスに対するクラックの向きとは無関係にコンポーネント12におけるクラック又は欠陥を加熱するのに効果的である。カメラ22は、コンポーネント12の表面の画像を撮影し、コンポーネント12の厚さの中でクラックがどの位置にあるのかとは関係なくコンポーネント12の中の任意のクラックの視覚的指示を提供する。
【0020】
より詳細には後述するが、トランスデューサ14からの超音波エネルギは、コンポーネント12に音響カオスを発生する。音響カオスは、コンポーネント12の振動を測定してカオス周波数を決定することによって測定することができる。ある実施例では、ポリテク(Polytec)PIOFV−511シングル・ファイバ・ドップラ・レーザ振動計などの振動計28を用いて、コンポーネント12の振動を測定することができる。振動計28は、コンポーネント12の方向に光ビームを放射し、コンポーネントからの光の反射が振動計に受け取られる。光信号のコンポーネント12への及びコンポーネント12からの移動時間により、コンポーネント12が振動計28にどのくらい近くにあるかを、そして、その振動を決定する。振動計28は、ドップラ効果と適切なアルゴリズムとを用いて振動周波数を計算する。振動計28によってなされる測定は、コントローラ30に送られ、モニタ34上で周波数信号として表示される。コントローラ30は、振動計28からの信号をフーリエ変換して、振動スペクトルに時間依存する周波数信号を発生する。ある実施例では、振動計28は、2.56MHzまでのデジタル化速度を有し、それにより、約1.2MHzまでの振動周波数を決定することができる。注意すべきであるが、振動計28は、コンポーネント12に対して法線方向に向けられている必要はない。
【0021】
別の実施例では、振動計28は、トランスデューサ14が超音波パルスを放射するときに可聴周波数又はホーンの「叫び声(スクリーチ)」を単純に測定するマイクロフォンによって代替することができる。ホーンのスクリーチ自体は、コンポーネント12において音響カオスが生じていることを示すものであると考えられる。マイクロフォンが受け取る信号は、また、コントローラに送られモニタ34上に表示される。
【0022】
ここで論じているコンポーネントにおけるクラックを画像化するプロセスを図解するため、図3(a)から図3(d)は、構造42における開いた疲労クラック40の4つのシーケンシャルな画像38を示している。図3(a)は、超音波エネルギが加えられる前の構造42の画像38を示している。図3(b)は、超音波エネルギが加えられてから約14ms後の構造42の画像38を示している。明らかなように、明るい(温度が高い)スポット44(暗い領域としてスケッチされている)が、クラック40の閉じた端部に現れており、その場所では機械的な振動が熱を生じさせているのである。図3(c)及び3(d)は、それぞれ、約64ms及び114ms後の時点における後の画像38を示している。画像38上の明るいスポット44は、このシーケンスでは劇的に増加しており、クラック40の位置を明確に指示している。
【0023】
本発明の別の実施例によると、トランスデューサ14を、電磁気的音響トランスデューサ(EMAT)によって代替することが可能である。この目的に用いられるEMATは、Thomas他に与えられ、ウェイン州立大学とジーメンス・ウェスティングハウス・パワー・コーポレーションに譲渡された米国特許第6,399,948号に開示されている。この米国特許は、この出願において援用する。
【0024】
EMATは、試験対象の物体において静磁場を生じさせる永久磁石又は電磁石を含む。提供される電磁石は、時間と共に変動する電流によって付勢されて試験対象の物体の表面の上とすぐ下とに渦電流を発生するものである。この渦電流が静磁場と相互作用をして、物体内の自由電子に対して作用するローレンツ力を生じさせ、それにより、静磁場の方向と局所的な渦電流と尼僧後に垂直な方向に、物体内のイオンとの衝突を誘導する。この相互作用により、物体の中の不連続点から反射され欠陥を識別する様々な分極を有する音波を生じさせる。本発明では、これらの音波が、欠陥の位置に熱を生じさせる。音波は様々な形態で存在するのであって、限定列挙ではないが、シア(sheer)波、表面波、平面波、レイリー波、ラム波などを含む。この出願で論じられている音響カオスを生じさせるためには、EMATは、特定の共振周波数に同調させることはできず、ブロードバンドであるべきである。
【0025】
本発明のこの実施例を図解するために、図4は、上述したタイプのEMAT52を用いる欠陥検出システム50の分解された全体図である。EMAT52は、タービン・エンジンの内部のタービン・ブレード54に接するように配置されているのであるが、欠陥を検出される任意の適切な部分でありうる。長いケーブル56が、EMAT52と、上述したコントローラ30のようなコントローラ(図示せず)とに結合される。ケーブル56は、永久磁石60の周囲を包囲しているコイル58を含む。コイル58に与えられたケーブル56上のAC電圧信号により、渦電流が、タービン・ブレード54において永久磁石60によって発生される静磁場と相互作用をする。渦電流と静磁場との間の相互作用により、音波及び超音波が生じて、これにより、ブレード54におけるクラック64又はそれ以外の欠陥の面が相互に摩擦して熱放射64を生じる。放射収集装置66が、カメラ22のような適切な赤外線カメラ(図示せず)に結合され、画像を提供する。
【0026】
結合物質が、永久磁石60とタービン・ブレード54との間に提供され、EMAT52からの電磁エネルギをタービン・ブレード54の中に効果的に結合させる。この結合物質は、磁石60の永久構造の一部であり、システム50をタービン・エンジンの内部での遠隔検出に最寄り適用可能とすることができる。EMAT52はブロードバンドとすることができるから、カオスは、後述する電気的に発生されたカオス信号を印加することによって、タービン・ブレード54において、生じさせることができる。
【0027】
本発明によると、音響カオスは、コンポーネント12において生じて、音響カオスが存在しない場合よりも上のレベルまでコンポーネント12の欠陥における熱エネルギの量を増加させるように作用する。音響カオスとは、この出願では、スペクトル周波数が励起周波数(ここでは、40KHz)と有理数の比率によって関係付けられている振動波形を提供する周波数の範囲として定義される。音響カオスと関連する周波数は、励起周波数よりも低い場合も高い場合もありうる。音響カオスは、数学的関係としてモデル化が可能であり、多くの文献がある。その一例として、Rasband, S. Neil他による”Chaotic Dynamics of Non-Linear Systems”(1990)がある。
【0028】
コンポーネント12において音響カオスを生じさせるには、トランスデューサ14に加えられる力26と、カプラ16の材料と、カプラ16の厚さと、音響入力パルスの周波数と、音響入力パルスの継続時間との正しい組合せが提供されなければならない。40kHzの音響パルスは、通常の成人の聴力を超えている。しかし、カメラ22からの最良の画質は、音響サウンドすなわち「ホーン・スクリーチ」が感知されたときであることが観察されている。この可聴のスクリーチの存在は、通常は、ホーン18とコンポーネント12との間の結合における非線形性に起因するとされる。しかし、このホーン・スクリーチは、音響カオスの開始の結果である非調和周波数の結果として、又は、音響カオスに先立つ擬似カオス的な条件から生じる。
【0029】
非線形特性を示す様々な物質が、カプラ16には適している。カプラ16は、ホーン18をコンポーネント12と接する位置に保持し密着した接触を提供するためにトランスデューサ14に加えられる力26によって圧縮される。しかし、トランスデューサ14に加えた力の量が、所望のスクリーチすなわちより高品質の画像を得るために重要である。力が弱すぎると、コンポーネント12には非常に僅かな音だけが結合される。力が強すぎても、同じ効果が生じてしまう。スクリーチを生じさせるのに必要な力の正確な量は、音を注入するのに用いられる特定の音響ホーンに依存する。というのは、異なるホーンは異なる振動振幅を有するからであると考えられる。従って、振動振幅と加えられる力との特定の組合せが、スクリーチの発生には重要である。
【0030】
適切な力がホーン18に加えられることによって、ホーン18の先端が、入力パルスの音響周期の負の半分の間にコンポーネント12の表面から反動することが可能となる。そのような反動が生じると、コンポーネント12への入力は、正弦波であるよりも、超音波入力周波数における一連の間隔が等しいキック又はバンプである可能性が大きい。キックされているシステムが自然共振を有するときは、これらの共振の中の1つ又は複数が、キッスによって励起される。一連の規則的な間隔のキックを受ける共振システムの数学的問題の解は、上で引用した書物において見つけることができる。n番目のキックの後での解は次の方程式によって与えられる。
【0031】
【数1】
【0032】
ただし、ここで、係数An及びBnは次の式によって与えられる。
【0033】
【数2】
【0034】
【数3】
【0035】
ここで、Cはキックの強さであり、ωは発振器の自然周波数であり、Ω=(2π/τ)は角「キッキング」周波数である。ω/Ωが有理数である場合には、上述の方程式は周期的であり、共振が存在する可能性がある。
【0036】
ここで論じている超音波信号の印加の結果としてコンポーネント12に生じる音響カオスを更に研究するには、コンポーネント12の振動応答画像を、例えば、振動計28を用いて得ることができる。図5は、水平軸が時間で垂直軸が振幅であって、入力パルスの継続時間の間に振動計によって感知された波形を示すグラフである。この波形は、5つのAからEまでの5つの領域に分割されている。別個の領域AからEのそれぞれは、フーリエ解析されてあり、領域Aのフーリエ解析は純粋な40kHzのサンプル振動を示す。領域Bにおける「バンプ」は、振動の振る舞いの定性的な変化を示唆している。実際、解析によると、160kHzまでの20kHzすべての整数倍と共に、の20kHzにおける強い低調波信号の存在が示されるが、追加的な測定可能な周波数は存在しない。領域Bにおける「バンプ」に続いて、領域Cは長い領域でありここではフーリエ解析によっても低調波の存在は示されない。しかし、200kHzまでの40kHzのすべての整数倍が存在する。従って、代書の3つの領域であるAからCでは、可聴周波数は存在しない。
【0037】
領域D及び領域Eにおいて波形及びそのスペクトルの劇的な変化が生じ、これは、可聴的な「スクリーチ」の開始に対応する。図6は、水平軸が周波数で垂直軸が振幅であり、領域Dのフーリエ変換のスペクトルのグラフである。明らかなように、領域Dは、多数の小さな識別されていない周波数と共に、基本周波数(40kHz)の1/11の整数倍である一連の周波数を含んでいる。
【0038】
領域Eでは、波形の別の劇的な変化が生じており、図7に示されているように、フーリエ変換により、基本周波数(40kHz)の1/13の整数倍の一連の周波数が生じている。より典型的な波形では、多くのそのようなシーケンスの混合物が存在していて、半分、3分の1、4分の1、5分の1、7分の1、8分の1、9分の1、11分の1、13分の1、24分の1などの分数が存在している。振幅が増加すると、これらの波形の多くにおいて、明確な変化がシーケンスの間に存在している。振幅と波形の複雑性とが大きくなるのに関連して、画像に示されているように、加熱の明らかな増加がある。同じ現象は、異なる電源、トランスデューサ、基本周波数なとを用いても観察された。
【0039】
振動するにおける非常に多くの周波数の存在は、方程式(1)−(3)において記述されているように、擬似カオス的な励起の明らかな証拠である。方程式(1)−(3)は、別の周期的システムによって「キックされた」調和振動子に基づいて得られたものである。この現象は、単純な平面の場合にだけでなく、タービン・エンジンのファン・ディスクのような非常に大きく複雑な形状の物体の倍にも観察されている。従って、ここで論じている共振システムは実際に音響ホーン及びそれに関連する電子装置であり、ホーンがサンプルを「キックしている」と考えるのではなく、サンプルがホーンを「キックしている」と考える方が示唆的であると思われる。
【0040】
図8は、欠陥を有する又は有しない検査対象の物体72において音響カオスを生じさせる欠陥検出システム70のブロック図である。物体72は、上述した熱画像化カメラ(図示せず)によって画像化され、欠陥が存在するかどうかが判断される。この実施例では、カオス信号は、上述した音響ホーンに加えられた力、結合物質、カプラの厚さ並びに励起パルスの周波数及び継続時間などに依存するのではなく、電子カオス信号発生器74によって発生される。カオス信号発生器74は、この出願で論じられているタイプのカオス信号を発生する任意の装置でよい。一般に、発生器74は、カオス的な音の特別な周波数成分をすべて有する電気波形を作成する非線形回路素子を含む。あるいは、カオス信号は、デジタル・コンピュータによってデジタル的に発生させることもできる。
【0041】
発生器74によって発生されたカオス信号は、その信号を増幅するパワー増幅器76に与えられる。増幅されたカオス信号は、ブロードバンド・トランスデューサ78に与えられる。この信号は、カプラ80を会して物体72の中に結合されたトランスデューサ78において音信号を発生する。トランスデューサ78に与えられた信号は、既にカオス的であるから、トランスデューサ78によって物体72の中に線形に結合することができる。トランスデューサ78からの音響信号は、このようにして、物体72において音響カオスを誘導し、物体72の中の欠陥の加熱を増加させる。
【0042】
本発明の別の実施例によると、サーモグラフィ欠陥検出システムが、複数の周波数にわたる超音波励起信号を用いて検査される物体を励起し、物体の中にあるクラック又はクラックのような欠陥の位置において熱を生じさせ、それを赤外線カメラによって検出できるようにする。物体は、金属、セラミクス、プラスチック、ガラス、コーティングされた金属、金属マトリクス混合物、セラミクス・マトリクス混合物、ポリマ・マトリクス混合物など、固体物質で構成される任意のものである。
【0043】
この技術分野において知られているように、弾性体には、固有モードと固有周波数とが存在するのであるが、これらは、物体の幾何学的構成、弾性的な性質、固定物におけるクランピングなど追加的な境界条件、そして、物体において振動を生じさせる技術などによって定義される。物体の固有モードは、振動が与えられた物体の中の場所に共振が生じる周波数を定義する。従って、物体における局所的な振動振幅と、これによる欠陥の検出可能性とは、励起信号の励起周波数、振幅及び継続時間に著しく依存する。物体の固有モードにおける又はそれに近い周波数を有する励起信号は、結果的に、物体における振動振幅の著しい増加を生じさせる。工業製品のコンポーネントの固有モードを知るのは容易ではないし、それは、コンポーネントの幾何学的構成、弾性的な性質及び境界条件が僅かに変化しただけで、ときには非線形的に変化するので、単一の周波数、振幅及び継続時間の励起信号を用いても、予期しない振動の結果が生じる場合がある。結果における実質的な変動は、所定の周波数、振幅及び継続時間における1つ又は複数のパルスを放射する震動源を用いた場合にも観測されている。
【0044】
ある組の周波数又は変化する周波数を用いて物体を刺激するのは、その物体の複数の固有モードを励起させることができ、従って、振動振幅の分布がより均一化するすなわちノードを回避できるので、好ましい。特に、対応する周波数とモード・パターンとに属する異なる歪み振幅を組み合わせると、十分に高い振幅の歪みと、欠陥が検出される物体の任意の位置における十分な数のサイクルとが生じる。これは、異なるモード・パターンを異なる自然周波数と組み合わせることによって行うことができる。周波数を選択する可能性は、物体特にその薄い箇所を損傷する可能性がある特別の固有モードが存在する場合に役に立つ。励起信号は、このような周波数を回避するように同調又は調節することができる。
【0045】
図9は、この出願において一般的に論じられているタイプの物体92において欠陥を検出するサーモグラフィ欠陥検出システムのブロック図である。このサーモグラフィ・システム90は、ある種の定義された周波数パターンで音エネルギを物体92の中に結合させるホーン96を有する超音波トランスデューサ94を含む。他の実施例では、ホーン96は、後述するように、ブロードバンド・トランスデューサで代替することができる。トランスデューサ94は、トランスデューサ14と同じものでもよいし、この出願での議論と矛盾しない別の適切な音響装置でもよい。例えば、トランスデューサ94は、所望の周波数パターンを提供する圧電式、電磁気的又は磁歪素子でもかまわない。後述するように、物体92に結合された音エネルギは、物体92の中の欠陥(クラック)を加熱するパルス化された周波数信号の形式を有する。赤外線カメラ98は、加熱され物体において識別される欠陥を画像化する。
【0046】
コントローラ100は、システム90の動作を制御して、トランスデューサ94とカメラ98との間のタイミングを提供する。コントローラ100は、所望のパルス速度、パルス継続時間、周波数、エンベロープの形状などを有し様々な実施例に関してこの出願での議論と矛盾しない信号をトランスデューサ94に提供する信号整形器102を制御する。システム90は、また、物体に接するように配置され励起信号によって励起されたときに物体92の内部の振動モード及びパターンを聴く振動センサ104も含む。振動センサ104は、この出願で論じられている目的に適した任意のセンサでよい。例えば、加速度計、渦電流ベースの振動センサ、光振動センサ、マイクロフォン、超音波トランスデューサ、超音波振動センサなどである。センサ104は、振動パターンを示す信号をコントローラ100に提供することにより、コントローラ100は、励起信号によってどのような振動が物体92の中に誘導されているのかを知ることになる。コンピュータ100は、次に、この情報を用いて信号整形器102に与えた信号を変更し、トランスデューサ94から物体92に与えられた励起信号を変動させ、欠陥をよりよく加熱するために、物体92の中の異なっていておそらくはより好ましい振動パターンを得る。
【0047】
ある実施例では、トランスデューサ94は、異なる中心周波数に同調されている周波数又は比較的大きな周波数帯域を有するブロードバンド信号を提供することができるブロードバンド・トランスデューサである。このブロードバンド・トランスデューサ94は、異なる周波数を中心とする信号をシーケンシャルに又は同時に提供することができる。これらの周波数は、増加する態様で又は減少する態様で、ランダムに、上方向に掃引されて、下方向に掃引されて、ランダムな掃引で提供することができる。複数の周波数帯域を提供することにより、物体92の中で、動作のないすなわち付勢されていない領域をなくすことができる。また、励起信号は、周波数が時間と共に変化するチャープ信号でもありうる。
【0048】
あるいは、システム90は、異なるナローバンドの中心周波数に同調させた複数のトランスデューサを用いて、周波数が異なる複数の励起信号を用いて物体92を励起することができる。このように、システム90は、音励起信号を物体92の中に結合する第2のトランスデューサ106を用いることもできる。この場合、トランスデューサ94及び106は、異なるバローバンド周波数に同調される。更に、システム90は、トランスデューサのアレイを用いることもできる。コントローラ100はトランスデューサ94及び106からの励起信号のタイミングを制御し、信号整形器102はトランスデューサ94及び106によって発生された信号の形状を定義して物体92の内部において所望の振動を得る。もちろん、システム90は、3以上の周波数入力信号に対して3以上のトランスデューサを用いることもできる。
【0049】
トランスデューサ94、コントローラ100及び信号整形器102の中の1つ又は複数に対して用いることができ音及び超音波信号信号を提供するる可撓的な励起システムが、この技術分野において知られている。これらのシステムは、適切な任意の波形発生器、増幅器、コンバータ及び周波数パターンを発生するそれ以外の関連する装置を含む。これらのシステムによれば、連続的な信号の適切な混合や、連続的な信号とパルス信号との組合せによって、又は、連続的な信号の振幅の特定の制御によって、選択的な周波数コンテンツ及び振幅特性で構成される任意の又は特定の設計の波形の作成が可能になる。従って、パルス・エンベロープ及び周波数特性の任意の形状を作成することができる。これらの任意の形状は、デジタル・コンピュータやデジタル整形器によってデジタル的に発生させることも可能である。更に、システム成分は、動的に駆動され、それによって、振動センサや加速度計などからの追加的な入力に基づく振幅及び周波数の制御が可能になる。
【0050】
図10ないし図18は、様々な応用例について様々な周波数特性を有し物体92に与えることができる様々な励起信号を示すグラフである。既に述べたように、トランスデューサ94からの様々な励起信号は、物体92における固有モードを励起する又はそれを回避して、物体92における欠陥の加熱を増加又は強化することを意図している。図10ないし図13は、2msの時間フレームでの励起信号の一部を示している。図15は、4msの時間フレームでの励起信号の一部を示している。これらのタイプの信号に対する励起信号の典型的な継続時間は、約1秒である。図14及び図16−19は、励起信号の全体を示している。
【0051】
図10は、20kHzと21kHzとを中心とする2つの周波数の組合せである励起信号パルスを示している。図11は、20kHzと40.5kHzとを中心とする2つの周波数の組合せである励起信号パルスを示している。図12は、20kHzと41kHzとを中心とする2つの周波数の組合せである励起信号パルスを示している。図13は、20kHzと21kHzと22kHzとを中心とする3つの周波数の組合せである励起信号パルスを示している。図14は、20kHzの周囲のガウス周波数帯域である励起信号パルスを示している。図15は、上方向の周波数掃引を有するチャープ信号である励起信号を示している。図16は、励起信号をオン及びオフに切り換えるデジタル・シーケンス(1,0,1,0,0,1,1,1,0,0,1,1,・・・)のランダム・パルスの組によっ定義されたシグナチュア信号である励起信号を示している。ただし、ここには、全体の励起信号が示されている。パルスのランダムな組が感知された赤外線信号に転送され復号化されてSN比を改善する。図17は、20kHzの周囲の矩形周波数帯域に基づく励起信号を示している。ただし、ここには、全体の励起信号が示されている。
【0052】
図18は、開始時にステップを有する増加する振幅を有する励起信号を示している。ただし、ここには、全体の励起信号が示されている。誘導された振動がトランスデューサ94の一定でない過渡的な応答、トランスデューサ94の不安定な結合、不安定なクランピング条件などの場合にコントローラによって一定に維持されなければならない、又は、指数関数的な減少など励起信号のある種の特性が意図されている場合には、振幅の変動は上昇する。図19は、選択されたエンベロープ周波数を有する2つのパルスの組である励起信号を示している。第1のパルスの幅は小さく、その結果、表面欠陥の検出に適した小さな熱拡散長が生じる。第2のパルスはそれよりもかなり幅が広く、結果的に、表面下の欠陥に適したより大きな拡散長が生じる。
【0053】
本発明によると、物体92の様々な特徴を調べることができるが、それには、振動モードの調査、同調された検査の実行、励起信号のエンベロープの振動(強度変調)などが含まれる。振動モードの調査は、物体92の固有モードの自然周波数及び空間的パターンの決定のために、入力の周波数掃引を実行することを含む。物体92の測定の方法は、追加的なセンサを用いての、電圧と電流との間の位相シフト、実効電力又は振動振幅の測定を含む。
【0054】
同調された検査の実行には、励起信号の周波数の変動を提供することができる。周波数のこのような変動には、周波数の組を用いた物体92の励起と、周波数帯域を用いた物体92の励起と、既存の固有モードの範囲内の周波数帯域を含むノイズ信号を用いた物体92の励起と、チャープ信号を用いた物体92の励起とが含まれる。チャープ信号の反復は、励起信号の周波数を固有モードが存在する定義された帯域の中で上下に反復的に掃引することによって可能である。励起信号の振幅の同調された検査の実行は、励起信号にステップ状の又は変動する振幅パルス又はパルスの組を提供する、物体92の励起に掃引の態様によりローからハイへ又はハイからローへ連続的に変動する振幅を提供する、又は、物体92の励起に循環的に振幅の態様で連続的に変化する振幅を提供することを含む。更に、物体92の固有モードに基づく信号エネルギ入力の位置を変動させることができる。
【0055】
励起信号のエンベロープの変動のために、励起信号は、図16に関して上述した赤外線応答の中のシグナチュアの認識のように、エンベロープの特別なシグナチュアを有することがありうる。また、欠陥の深さや物体92の熱特性への適応を含むエンベロープの特別な周波数を選択する信号の励起は、図19に関して上述したように、提供することができる。強度変調のこれらの周波数は、典型的には、図19に示されているように、音周波数よりも数オーダー分だけ大きさが劣るのが通常である。また、動作レンジの中で周波数を変動させる励起信号を提供することが可能であるし、又は、市販されている超音波溶接装置を様々な方法で用いることができる。励起信号の周波数は、そのレンジにおいて、ローからハイの周波数へ変動又は掃引することができる。あるいは、励起信号の周波数は、ローからハイへ及びハイからローへ循環的に変動させることができるし、周波数変調の態様で複数回反復させることができる。
【0056】
励起信号は、物体92に転送される振動エネルギを一定に維持することができ、よって、追加的な振動センサを用いて振動振幅の測定の基づいて、又は、物体92のIR応答を用いた又は基準サンプルからの励起信号に基づいて、結合及びクランピング条件の変化を均衡させる。励起信号は、定常的に増加する振幅を有することができ、これは、損傷が予想されるレベルの下で停止する又は結果的に一定に維持される。信号の開始は、ゼロ振幅又は安全振幅においてでなければならない。
【0057】
本発明の別の実施例によると、一連のN個の励起を用いた欠陥検出テストの変形例が与えられる。ここでNは、1よりも大きく、予め選択された又は自動的に選択された励起パルスの数である。1からNまでの励起パルスのそれぞれは、予め選択された周波数、振幅及び継続時間から構成され、励起1から励起Nまで、それぞれの励起感覚の間に物体92において異なる固有モードの振動を生じさせる。赤外線又は熱画像化は、Nショットの周期全体の間アクティブなままで維持され、それによって、ある種の変化する振動条件に適した欠陥加熱イベントがテスト・シーケンスの全体で積分又は平均化することができる。
【0058】
可撓的な励起技術は、クラック位置における局所的な加熱を生じさせ、非線形の振動モード変化の間の過剰な振動から生じうる物体92の任意の加熱を最小化させる最適振動モードの機会を最大化する。欠陥位置からの加熱の最大化と物体92の任意の又は一般的な加熱の最小化とのこのような組合せにより、SN比を向上させることができ、欠陥の位置の識別に役立つ。
【0059】
システム90は、開ループ又は閉ループ制御に向けて設計することができる。開ループ制御の実施例では、同調されたエンベロープの励起信号を用いて、物体92の固有モード解析に基づいて、すなわち、解析的又は経験的測定方法によって、物体92における振動を生じさせることができる。所定の固有モードは、信号オプションの特性と比較して評価され、システムのテスト・サイクルで用いられるために、1つのオプションが選択される。同調された又はエンベロープ励起信号の周波数、継続時間及び振幅という特性は、全体のテストの感度を制御し、物体92を損傷させるのに要求されるレベルに対する振動によって物体92に誘導される応力及び歪みのレベルを制御し、物体92における制限された領域又は関心対象の領域を制御し、振動のほぼ均一な配分を達成し、検査のための関心対象の特定の欠陥を加熱するのに効果的であると判断されるモードを選択するように、選択することができる。しかし、固有モードが既知でない場合には、固有モードが識別されうる周波数帯域と、周波数帯域による励起信号の1つ又は複数の選択と、1つ又は複数の固有モードを保証するノイズ信号又はチャープ信号が励起される。
【0060】
閉ループ制御の実施例では、同調された励起信号を用いて物体92を振動させることができる。物体92に誘導された実際の振動は、物体92の固有モード解析の基礎のために測定される。この解析は、計算のためのハードウェア又はソフトウェア・ツールによって実行することができ、その結果は、サーモグラフィ・システム90によって、物体92の適切な振動を誘導する同調された又はエンベロープ励起信号の周波数、継続時間及び振幅などの制御特性を選択するのに用いられる。これらの特性は、テストの全体的な感度を制御し、物体92を損傷するのに必要なレベルに対する震度によって物体92において誘導された応力及び歪みのレベルを制御し、物体92上の限定された領域又は関心領域を制御し、振動のほぼ均一な分布を達成し、又は、検査の対象である特定の欠陥を加熱するのに効率的であると判断されるモードを選択するために、選択される。
【0061】
プラスティック及びそれ以外の物質の超音波溶接に秘匿用いられる圧電式コンバータを用いる超音波振動励起装置は、この技術分野において入手可能である。これらの装置は、トランスデューサ94のために用いることができる。これらの装置の制御システムは、周波数、振幅、継続時間及び限定された領域を会しての接触力を変動させることができ、内部的に修正することが可能であり、あるいは、入力信号調整装置を追加することによって、可撓的な励起を可能にすることができる。例えば、圧電式、電磁気的、磁歪装置などコンパクトで低コストの超音波振動励起装置がこの技術分野において入手可能であり、これらは、信号発生に関する既知のトランスデューサの原理を用いてコンフィギュレーションにおいて可撓的(柔軟)な励起を可能にすることができる。そのような装置の例は、米国特許第6,232,701号及び米国特許第6,274,967号に開示されている。また、米国メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)所在のウィルコックス・リサーチ(Wilcox Research)社の製造によるモデルF7−1圧電シェイカー・システムを使用することもできる。これらの装置は、任意の波形発生器、可撓性関数発生器、又はデジタル制御信号発生器などと組み合わせて、必要となる振動サーモグラフィ・システムのための可撓的励起信号を提供するようにプログラムすることができる適切なパワー増幅器及びマイクロプロセッサ・ベース又はコンピュータ・ベースの制御システムを提供する。
【0062】
コンパクトで低コストの超音波振動励起装置は、複数の励起装置や別の実現例での励起装置のアレイの応用に役立つ。換言すると、トランスデューサ94は、一連のトランスデューサ又は励起装置で置き換えることができる。励起モードをカスタマイズする追加的な可撓性も提供されうる。これは、例えば、周波数、継続時間及び振幅を含む励起装置特性と、選択された周波数又は周波数及び信号モードの組合せでノード及びアンチ・ノードなど固有モードの特徴とを組合せを選択することによってなされる。これにより、関心対象の選択された領域に対する検査結果と、物体92における状況変化において指示される欠陥及び劣化のタイプとを最適化できる。これには、製造変動の結果や物体の加齢又は摩耗や物体92の動作条件への露出に起因する劣化などがある。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のある実施例による欠陥検出システムのブロック図である。
【図2】図1に示された欠陥検出システムの一部の展開側面図である。
【図3】図3(a)から図3(d)まであり、本発明による欠陥検出システムによって超音波励起がなされ熱画像化されたコンポーネントにおける解放クラックの所定の時間間隔での連続的な画像を示している。
【図4】本発明の別の実施例による、電磁気音響トランスデューサを用いた欠陥検出システムの平面図である。
【図5】40kHzの励起パルスによって励起されたサンプルの振動応答を示す波形であり、波形は5つの領域AからEまでに分割されている。
【図6】水平軸を周波数とし垂直軸を振幅として、図5に示されている波形の領域Dにおける音響カオスによって発生された周波数ピークを示すグラフである。
【図7】水平軸を周波数とし垂直軸を振幅として、図5に示されている波形の領域Eにおける音響カオスによって発生された周波数ピークを示すグラフである。
【図8】本発明の別の実施例による音響カオス欠陥検出システムのブロック図である。
【図9】本発明の別の実施例によるサーモグラフィ欠陥検出システムのブロック図であり、このシステムは、選択された周波数を有する可撓的な多重モード入力信号を提供して入力信号の周波数と振幅と継続時間とを制御することができる。
【図10】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフであり、20kHzを中心とする第1の周波数と21kHzを中心とする第2の周波数との2つの周波数を有している。
【図11】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフであり、20kHzを中心とする第1の周波数と40.5kHzを中心とする第2の周波数との2つの周波数を有している。
【図12】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフであり、20kHzを中心とする第1の周波数と41kHzを中心とする第2の周波数との2つの周波数を有している。
【図13】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフであり、20kHzを中心とする第1の周波数と21kHzを中心とする第2の周波数と22kHzを中心とする第3の周波数との3つの周波数を有している。
【図14】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、20kHzを中心とするガウス周波数帯域である図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図15】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、上方向に掃引されるチャープ信号である図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図16】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、デジタル・シーケンスのランダム・パルスを有するシグナチュア信号である図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図17】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、20kHzを中心とする矩形周波数帯域に基づく図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図18】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、最初にステップを有する増加する振幅を有する図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図19】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、それぞれが選択されたエンベロープ周波数ヲ有する2つのパルスを含む図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
この発明は、広くは、物質における欠陥を検出するシステム及びそれに関連する方法に関し、更に詳しくは、物質における欠陥を検出するシステムであって、物質において音響カオスを生じさせる態様で音声エネルギを物質の中に結合する又は多重モードの可撓性励起信号を物質の中に結合するトランスデューサと、音響カオス又は可撓性励起の結果として物質に生じた熱を画像化する熱画像化カメラとを含むシステム及びそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の構造の構造的一体性を維持することは、安全性への配慮、ダウンタイム、コストなどの理由から、多くの分野で非常に重要である。構造的一体性は、物質の欠陥によって損なわれるのが典型的であり、この欠陥には、構造の中に存在しうるクラック、層間剥離、ディスボンド(分離、disbonds)、腐食、含有物、空隙などがある。例えば、発電産業においては、タービン、発電機及びプラント装置の関連するバランスを検査し運転中にコンポーネント及びシステムが故障しないことを保証するための信頼性の高い技術を利用できることが非常に重要である。同様に、航空産業において、航空機の外装及び構造的なコンポーネントの構造的一体性を検査し飛行中に航空機が構造的な故障を生じないことを保証するための信頼性の高い技術を利用できることが非常に重要である。タービン・ブレード及びロータや車両のシリンダ・ヘッドの構造的一体性もまた、それぞれの産業において非常に重要である。クラックや欠陥を検出するもっとも一般的な方法は、熟練した人間による視覚的検査である。しかし、構造的コンポーネントの一体性に影響する可能性があるクラックや欠陥は、検査者を補助する特別の技術を用いなければ容易には見ることができないことがある。従って、この技術分野では、多くの産業における異なる構造的コンポーネントや物質を非侵襲的かつ非破壊的に解析するための様々な技術が開発されてきた。欠陥を探すために非侵襲的かつ非破壊的に物質を検査する既知の技術の1つに、染料の浸透物を用いて物質を処理し、その物質に存在しうる全てのクラック又は欠陥に染料が浸透するようにする、という技術がある。この場合、次に、物質を洗浄した後で、粉末を用いて処理し、クラックの中に残っている染料が粉末の中にしみ出させるのである。そして、紫外(UV)光源を用いて物質を検査し、染料の結果である蛍光を発する物質の位置を観察する。しかし、この技術は、検査者集約的かつ検査者依存的であるという短所を有する。というのは、蛍光を検査する者が熟練していなければならないからである。更に、線量は、隙間なく閉じているクラックや物質の表面にないクラックの中には浸透しないのである。
【0003】
欠陥を探すためにコンポーネントを検査する既知の技術で第2のものでは、そのコンポーネントにおいて渦電流を誘導する電磁コイルを用いる。コイルをコンポーネントの周囲で移動させると、クラック又はそれ以外の欠陥の位置で渦電流パターンが変化し、これをオシロスコープで観察することができる。しかし、この技術は、非常にオペレータ集約的であって、極度に低速であり時間がかかるという短所がある。
【0004】
コンポーネントにおける欠陥を検出する別の既知の技術では、コンポーネントの熱画像化を用いて欠陥を識別する。他の熱画像化技術では、フラッシュ・ランプやヒート・ガンなどの熱源を用いて、熱の平坦パルスをコンポーネントの表面に向ける。コンポーネントは熱を吸収し、赤外線波長の放射を放出する。ある種の欠陥があるとその欠陥の位置の表面温度は周囲の領域の表面温度とは異なる比率で低下する。熱又は赤外線画像化カメラを用いてコンポーネントを画像化して、結果的に生じる表面温度の変化を検出するのである。この技術はディスボンドと腐食との検出には成功したが、コンポーネントにおける垂直方向のクラックの検出については成功しないのが通常である。垂直方向のクラックとは、コンポーネントの表面に対して直角なクラックである。その理由は、疲労クラックは平坦熱パルスにはナイフ・エッジのように見えるため、そのようなクラックからは熱反射は全く又は最小限にしか生ぜず、熱画像において見るのは困難又は不可能であるからである。
【0005】
物質における欠陥を検出する熱画像化は、物質の超音波励起を用いて熱を発生させるシステムにも拡張されている。音波がクラックやそれ以外の欠陥を含む固体の中を伝搬してその物質を振動させると、音響熱効果が生じる。クラックの両面は音波が通過するときに通常は同時に振動しないので、両面の間の摩擦などの散逸的現象により、振動エネルギの一部が熱に変換される。この熱効果を赤外線画像化と組み合わせることにより、非常に効率的な非破壊的なクラック検出システムを実現することができる。このような画像化システムは、一般に、ソニックIR、サーモソニック。アコースティック・サーモグラフィなどとして文献に記載される。
【0006】
Rantala, J.他による"Lock-in Thermography with Mechanical Loss Angle Heating at Ultrasonic Frequencies," Quantitative Infrared Thermography, Eurotherm Series 50, Edizioni Ets Piza 1997, pgs. 389-393には、そのような欠陥検出技術が開示されている。超音波がクラックの対向するエッジを相互に摩擦させることによりクラックを加熱させる。コンポーネントの損傷のない部分は超音波により最小限に加熱されるだけであるから、そのコンポーネントの結果的な熱画像は、暗い背景に対して明るい領域としてクラックを示すことになる。
【0007】
2001年5月22日にThomas他に与えられ、この出願の譲受人に譲渡されている"Infrared Imaging of Ultrasonically Excited Subsurface Defects in Materials"と題する米国特許第6,236,049号には、超音波励起によってコンポーネントにおけるクラックやそれ以外の欠陥を検出する熱画像化システムが開示されている。超音波トランスデューサがコンポーネントに結合され、トランスデューサからの超音波エネルギが欠陥を加熱させ、その様子が熱カメラにより検出される。超音波エネルギは振幅がほぼ一定のパルスの形式を有している。制御ユニットを用いて、この超音波トランスデューサとカメラとの動作のためのタイミング及び制御機能が提供される。
【発明の開示】
【0008】
本発明の教示によると、音エネルギによって加熱された構造における表面下クラック及びそれ以外の欠陥を熱画像化するシステム及び方法が開示される。トランスデューサなどの音源が音信号を構造の中に結合し、信号の中の音波が欠陥のエッジを相互に振動させ加熱させる。熱画像化カメラが、音源によって加熱されているときにその構造を画像化して、欠陥を識別する。
【0009】
ある実施例では、音信号は、特定の構造に対して選択された周波数の組合せを含むことにより、その構造の固有モードの又はその付近の周波数が生じるようになっている。この実施例では、音源は、異なる周波数を中心とする信号とチャープ信号、パルス・エンベロープ信号などの組合せを発生して、音信号の周波数、振幅及び継続時間を変動させることができ、それにより、固有モードが、励起される、又は、可撓的な多重モード励起のために回避される。
【0010】
別の実施例では、非線形結合物質などの結合物質が音源と構造との間に置かれ、音信号を構造に結合させる。所定の力が音源に加えられて、音源を構造に対して押しつけられる。この力と音信号のパルス継続時間及び周波数とは、音エネルギが構造において音響カオスを誘導するように選択され、構造においては、音響カオスが熱エネルギの発生を増加させる。構造の振動は、振動計又はマイクロフォンによって測定することができ、カオス周波数が存在しているかどうかが判断される。
【0011】
本発明の更なる効果及び特徴は、以下の詳細な説明と冒頭の特許請求の範囲とを添付の図面を参照して読むことにより明らかになるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
構造における欠陥を検出する欠陥検出システムに向けられた本発明の実施例に関する以下の説明は、その性質として単なる例示であり、本発明又はその応答例若しくは使用を制限する意図は全くない。
【0013】
図1は、本発明のある実施例による欠陥検出システム10のブロック図である。システム10は、コンポーネント12においてクラック、腐食、層間剥離、ディスボンドなどの欠陥を検出するのに用いられる。コンポーネント12は、壊滅的な故障を生じさせる可能性があるタイプの欠陥を含みうる、航空機の外装、タービン・ブレード、タービン・ロータ・発電機、車両のシリンダ・ヘッドなど、任意の構造的コンポーネント又は物質を表すものとする。強調しておきたいのは、コンポーネント12は金属であることは必要でなく、セラミクスや複合材などそれ以外の物質であり得るということである。
【0014】
システム10は、ある超音波周波数帯域内の音信号を発生する超音波トランスデューサ14を含む。超音波トランスデューサ14は、音信号をコンポーネント12に結合するホーン18を含む。トランスデューサ14は、本発明のサーモソニック・プロセスの目的に適した従来型のトランスデューサでよい。トランスデューサ14は、圧電素子の使用により、電気パルスの機械的変位への変換を提供する。例えば、トランスデューサ14は、正確な寸法に切断され結晶の切断寸法によって命じられる非常に狭い周波数で動作する圧電結晶のPZTスタックを用いる。PZTスタックはホーン18に機械的に結合され、ホーン18の先端はコンポーネント12に対して押しつけられる。この先端は、固定された寸法を有し可撓的ではないので、接触領域において、大きな接触領域及び圧力を示す。これは、コンポーネント12の平坦でなく平滑でない表面によって更に影響を受ける。トランスデューサ14は、また、米国特許第6,232,701号及び米国特許第6,274,967号に記載されたものや、米国メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)所在のウィルコックス・リサーチ(Wilcox Research)社の製造によるモデルF7−1圧電シェイカー・システムなどの、調整可能な圧電機械式励起装置であり得る。
【0015】
ある実施例では、トランスデューサ14は、1秒の約半分の時間周期の間、約800ワットの電力レベルで、約40kHzの周波数を有する超音波エネルギのパルスを発生する。しかし、この技術分野の当業者であれば理解するように、本発明の範囲の中で、他の超音波又は音周波数、電力レベル及びパルスの継続時間を用いることが可能である。トランスデューサ14は、超音波溶接トランスデューサを駆動する800Wのブランソン40kHz電源であり得る。
【0016】
トランスデューサ14からの超音波エネルギは、機械的カプラ16を介してコンポーネント12の中に結合される。カプラ16は、トランスデューサのホーン18とコンポーネント12の前面20とに機械的に接触している。図2は、カプラ16及びコンポーネント12と接触しているホーン18を示す分解された側面図である。ある実施例では、カプラ16は、自動車のガスケット物質、皮革、ダクト・テープ、コルク、テフロン(登録商標)、紙などの非線形カプラであり、音響エネルギの結果としてコンポーネント12の中の欠陥の周囲に後で論じる音響カオスを生じさせる。他の実施例では、カプラ16は、銅などの柔らかい金属の薄片であり、超音波エネルギをコンポーネント12の中に効率的に結合することができる。しかし、注意すべきことであるが、応用例によっては、カプラ16は必要とされずに、しかし、依然として音響カオスを提供するということである。任意の適切な道具(図示せず)によって力26をトランスデューサ14に与えてホーン18をカプラ16及びコンポーネント12とに対して押しつけることもできる。トランスデューサ14に加えられる力の大きさを選択することにより、コンポーネント12の中での音響カオスの発生を増加させることができる。
【0017】
検出システム10は、図示されているように、コンポーネント12から所定の距離だけ離間させた熱画像化カメラ22を含む。カメラ22は、コンポーネント12の超音波励起と共に、コンポーネント12の画像を発生する。カメラ22は、1枚の画像において希望するコンポーネント12の画像を提供するのに適した任意の距離だけコンポーネント12の背面から離間させ、所望の解像度で複数の欠陥を同時に検出することができる。他の実施例では、トランスデューサ14からの超音波エネルギとカメラ22によって発生された画像とは、コンポーネント12の同じ側に、又は、コンポーネント12の任意の側に提供されうる。熱カメラ22は、ここで述べている目的に適した任意のカメラでよい。例えば、レイセオン(Raytheon)社から入手可能なレイディアンス(Radiance)HSカメラや、インディゴ・システムズ(Indigo Systems)社のフィニックス(Phoenix)IRカメラなどである。ある実施例では、カメラ22は、3−5ミクロンの波長範囲の赤外線放射を感知して、毎秒100フレームで画像を発生する。カメラ22は、256x256InSbのピクセルを有し所望の解像度を生じる焦平面アレイを含む。
【0018】
コントローラ30は、トランスデューサ14とカメラ22との間のタイミングを提供する。コントローラ30は、ここで述べている目的に適する任意のコンピュータでよい。検出プロセスが開始されると、コントローラ30は、カメラ22に、所定の速度でコンポーネント12のシーケンシャルな画像の撮影を開始させる。画像のシーケンスがいったん開始すると、コントローラ30は、信号を電力増幅器32に送って、増幅器32にパルスをトランスデューサ14に送らせてパルス化された超音波信号を生じさせる。超音波エネルギは、所望の周波数を有する単純なパルスの形式である。画像は、カメラ22によって発生され、コンポーネント12の画像を表示するモニタ34に送られる。画像は、また、希望する場合には別の場所で見るために記憶装置36に送ることもできる。
【0019】
コンポーネント12に与えられた超音波エネルギは、コンポーネント12におけるクラック及びそれ以外の欠陥の面を相互に摩擦させ熱を生じさせる。システム10において適切なパラメータを提供することにより、既に論じたように、音響カオスがコンポーネント12において生じて、欠陥の加熱を促進する。カメラ22によって発生される画像では、熱は、明るいスポットとして現れる。従って、システム10は、非常に小さな狭い間隔で閉じているクラックを識別するのに優れている。クラックの両面が接触しないような開いたクラックの場合には、熱は、クラックの先端の応力集中点において発生される。この点は、画像では明るいスポットとして現れ、開いたクラックの端部又は先端を示す。超音波エネルギは、エネルギ・パルスに対するクラックの向きとは無関係にコンポーネント12におけるクラック又は欠陥を加熱するのに効果的である。カメラ22は、コンポーネント12の表面の画像を撮影し、コンポーネント12の厚さの中でクラックがどの位置にあるのかとは関係なくコンポーネント12の中の任意のクラックの視覚的指示を提供する。
【0020】
より詳細には後述するが、トランスデューサ14からの超音波エネルギは、コンポーネント12に音響カオスを発生する。音響カオスは、コンポーネント12の振動を測定してカオス周波数を決定することによって測定することができる。ある実施例では、ポリテク(Polytec)PIOFV−511シングル・ファイバ・ドップラ・レーザ振動計などの振動計28を用いて、コンポーネント12の振動を測定することができる。振動計28は、コンポーネント12の方向に光ビームを放射し、コンポーネントからの光の反射が振動計に受け取られる。光信号のコンポーネント12への及びコンポーネント12からの移動時間により、コンポーネント12が振動計28にどのくらい近くにあるかを、そして、その振動を決定する。振動計28は、ドップラ効果と適切なアルゴリズムとを用いて振動周波数を計算する。振動計28によってなされる測定は、コントローラ30に送られ、モニタ34上で周波数信号として表示される。コントローラ30は、振動計28からの信号をフーリエ変換して、振動スペクトルに時間依存する周波数信号を発生する。ある実施例では、振動計28は、2.56MHzまでのデジタル化速度を有し、それにより、約1.2MHzまでの振動周波数を決定することができる。注意すべきであるが、振動計28は、コンポーネント12に対して法線方向に向けられている必要はない。
【0021】
別の実施例では、振動計28は、トランスデューサ14が超音波パルスを放射するときに可聴周波数又はホーンの「叫び声(スクリーチ)」を単純に測定するマイクロフォンによって代替することができる。ホーンのスクリーチ自体は、コンポーネント12において音響カオスが生じていることを示すものであると考えられる。マイクロフォンが受け取る信号は、また、コントローラに送られモニタ34上に表示される。
【0022】
ここで論じているコンポーネントにおけるクラックを画像化するプロセスを図解するため、図3(a)から図3(d)は、構造42における開いた疲労クラック40の4つのシーケンシャルな画像38を示している。図3(a)は、超音波エネルギが加えられる前の構造42の画像38を示している。図3(b)は、超音波エネルギが加えられてから約14ms後の構造42の画像38を示している。明らかなように、明るい(温度が高い)スポット44(暗い領域としてスケッチされている)が、クラック40の閉じた端部に現れており、その場所では機械的な振動が熱を生じさせているのである。図3(c)及び3(d)は、それぞれ、約64ms及び114ms後の時点における後の画像38を示している。画像38上の明るいスポット44は、このシーケンスでは劇的に増加しており、クラック40の位置を明確に指示している。
【0023】
本発明の別の実施例によると、トランスデューサ14を、電磁気的音響トランスデューサ(EMAT)によって代替することが可能である。この目的に用いられるEMATは、Thomas他に与えられ、ウェイン州立大学とジーメンス・ウェスティングハウス・パワー・コーポレーションに譲渡された米国特許第6,399,948号に開示されている。この米国特許は、この出願において援用する。
【0024】
EMATは、試験対象の物体において静磁場を生じさせる永久磁石又は電磁石を含む。提供される電磁石は、時間と共に変動する電流によって付勢されて試験対象の物体の表面の上とすぐ下とに渦電流を発生するものである。この渦電流が静磁場と相互作用をして、物体内の自由電子に対して作用するローレンツ力を生じさせ、それにより、静磁場の方向と局所的な渦電流と尼僧後に垂直な方向に、物体内のイオンとの衝突を誘導する。この相互作用により、物体の中の不連続点から反射され欠陥を識別する様々な分極を有する音波を生じさせる。本発明では、これらの音波が、欠陥の位置に熱を生じさせる。音波は様々な形態で存在するのであって、限定列挙ではないが、シア(sheer)波、表面波、平面波、レイリー波、ラム波などを含む。この出願で論じられている音響カオスを生じさせるためには、EMATは、特定の共振周波数に同調させることはできず、ブロードバンドであるべきである。
【0025】
本発明のこの実施例を図解するために、図4は、上述したタイプのEMAT52を用いる欠陥検出システム50の分解された全体図である。EMAT52は、タービン・エンジンの内部のタービン・ブレード54に接するように配置されているのであるが、欠陥を検出される任意の適切な部分でありうる。長いケーブル56が、EMAT52と、上述したコントローラ30のようなコントローラ(図示せず)とに結合される。ケーブル56は、永久磁石60の周囲を包囲しているコイル58を含む。コイル58に与えられたケーブル56上のAC電圧信号により、渦電流が、タービン・ブレード54において永久磁石60によって発生される静磁場と相互作用をする。渦電流と静磁場との間の相互作用により、音波及び超音波が生じて、これにより、ブレード54におけるクラック64又はそれ以外の欠陥の面が相互に摩擦して熱放射64を生じる。放射収集装置66が、カメラ22のような適切な赤外線カメラ(図示せず)に結合され、画像を提供する。
【0026】
結合物質が、永久磁石60とタービン・ブレード54との間に提供され、EMAT52からの電磁エネルギをタービン・ブレード54の中に効果的に結合させる。この結合物質は、磁石60の永久構造の一部であり、システム50をタービン・エンジンの内部での遠隔検出に最寄り適用可能とすることができる。EMAT52はブロードバンドとすることができるから、カオスは、後述する電気的に発生されたカオス信号を印加することによって、タービン・ブレード54において、生じさせることができる。
【0027】
本発明によると、音響カオスは、コンポーネント12において生じて、音響カオスが存在しない場合よりも上のレベルまでコンポーネント12の欠陥における熱エネルギの量を増加させるように作用する。音響カオスとは、この出願では、スペクトル周波数が励起周波数(ここでは、40KHz)と有理数の比率によって関係付けられている振動波形を提供する周波数の範囲として定義される。音響カオスと関連する周波数は、励起周波数よりも低い場合も高い場合もありうる。音響カオスは、数学的関係としてモデル化が可能であり、多くの文献がある。その一例として、Rasband, S. Neil他による”Chaotic Dynamics of Non-Linear Systems”(1990)がある。
【0028】
コンポーネント12において音響カオスを生じさせるには、トランスデューサ14に加えられる力26と、カプラ16の材料と、カプラ16の厚さと、音響入力パルスの周波数と、音響入力パルスの継続時間との正しい組合せが提供されなければならない。40kHzの音響パルスは、通常の成人の聴力を超えている。しかし、カメラ22からの最良の画質は、音響サウンドすなわち「ホーン・スクリーチ」が感知されたときであることが観察されている。この可聴のスクリーチの存在は、通常は、ホーン18とコンポーネント12との間の結合における非線形性に起因するとされる。しかし、このホーン・スクリーチは、音響カオスの開始の結果である非調和周波数の結果として、又は、音響カオスに先立つ擬似カオス的な条件から生じる。
【0029】
非線形特性を示す様々な物質が、カプラ16には適している。カプラ16は、ホーン18をコンポーネント12と接する位置に保持し密着した接触を提供するためにトランスデューサ14に加えられる力26によって圧縮される。しかし、トランスデューサ14に加えた力の量が、所望のスクリーチすなわちより高品質の画像を得るために重要である。力が弱すぎると、コンポーネント12には非常に僅かな音だけが結合される。力が強すぎても、同じ効果が生じてしまう。スクリーチを生じさせるのに必要な力の正確な量は、音を注入するのに用いられる特定の音響ホーンに依存する。というのは、異なるホーンは異なる振動振幅を有するからであると考えられる。従って、振動振幅と加えられる力との特定の組合せが、スクリーチの発生には重要である。
【0030】
適切な力がホーン18に加えられることによって、ホーン18の先端が、入力パルスの音響周期の負の半分の間にコンポーネント12の表面から反動することが可能となる。そのような反動が生じると、コンポーネント12への入力は、正弦波であるよりも、超音波入力周波数における一連の間隔が等しいキック又はバンプである可能性が大きい。キックされているシステムが自然共振を有するときは、これらの共振の中の1つ又は複数が、キッスによって励起される。一連の規則的な間隔のキックを受ける共振システムの数学的問題の解は、上で引用した書物において見つけることができる。n番目のキックの後での解は次の方程式によって与えられる。
【0031】
【数1】
【0032】
ただし、ここで、係数An及びBnは次の式によって与えられる。
【0033】
【数2】
【0034】
【数3】
【0035】
ここで、Cはキックの強さであり、ωは発振器の自然周波数であり、Ω=(2π/τ)は角「キッキング」周波数である。ω/Ωが有理数である場合には、上述の方程式は周期的であり、共振が存在する可能性がある。
【0036】
ここで論じている超音波信号の印加の結果としてコンポーネント12に生じる音響カオスを更に研究するには、コンポーネント12の振動応答画像を、例えば、振動計28を用いて得ることができる。図5は、水平軸が時間で垂直軸が振幅であって、入力パルスの継続時間の間に振動計によって感知された波形を示すグラフである。この波形は、5つのAからEまでの5つの領域に分割されている。別個の領域AからEのそれぞれは、フーリエ解析されてあり、領域Aのフーリエ解析は純粋な40kHzのサンプル振動を示す。領域Bにおける「バンプ」は、振動の振る舞いの定性的な変化を示唆している。実際、解析によると、160kHzまでの20kHzすべての整数倍と共に、の20kHzにおける強い低調波信号の存在が示されるが、追加的な測定可能な周波数は存在しない。領域Bにおける「バンプ」に続いて、領域Cは長い領域でありここではフーリエ解析によっても低調波の存在は示されない。しかし、200kHzまでの40kHzのすべての整数倍が存在する。従って、代書の3つの領域であるAからCでは、可聴周波数は存在しない。
【0037】
領域D及び領域Eにおいて波形及びそのスペクトルの劇的な変化が生じ、これは、可聴的な「スクリーチ」の開始に対応する。図6は、水平軸が周波数で垂直軸が振幅であり、領域Dのフーリエ変換のスペクトルのグラフである。明らかなように、領域Dは、多数の小さな識別されていない周波数と共に、基本周波数(40kHz)の1/11の整数倍である一連の周波数を含んでいる。
【0038】
領域Eでは、波形の別の劇的な変化が生じており、図7に示されているように、フーリエ変換により、基本周波数(40kHz)の1/13の整数倍の一連の周波数が生じている。より典型的な波形では、多くのそのようなシーケンスの混合物が存在していて、半分、3分の1、4分の1、5分の1、7分の1、8分の1、9分の1、11分の1、13分の1、24分の1などの分数が存在している。振幅が増加すると、これらの波形の多くにおいて、明確な変化がシーケンスの間に存在している。振幅と波形の複雑性とが大きくなるのに関連して、画像に示されているように、加熱の明らかな増加がある。同じ現象は、異なる電源、トランスデューサ、基本周波数なとを用いても観察された。
【0039】
振動するにおける非常に多くの周波数の存在は、方程式(1)−(3)において記述されているように、擬似カオス的な励起の明らかな証拠である。方程式(1)−(3)は、別の周期的システムによって「キックされた」調和振動子に基づいて得られたものである。この現象は、単純な平面の場合にだけでなく、タービン・エンジンのファン・ディスクのような非常に大きく複雑な形状の物体の倍にも観察されている。従って、ここで論じている共振システムは実際に音響ホーン及びそれに関連する電子装置であり、ホーンがサンプルを「キックしている」と考えるのではなく、サンプルがホーンを「キックしている」と考える方が示唆的であると思われる。
【0040】
図8は、欠陥を有する又は有しない検査対象の物体72において音響カオスを生じさせる欠陥検出システム70のブロック図である。物体72は、上述した熱画像化カメラ(図示せず)によって画像化され、欠陥が存在するかどうかが判断される。この実施例では、カオス信号は、上述した音響ホーンに加えられた力、結合物質、カプラの厚さ並びに励起パルスの周波数及び継続時間などに依存するのではなく、電子カオス信号発生器74によって発生される。カオス信号発生器74は、この出願で論じられているタイプのカオス信号を発生する任意の装置でよい。一般に、発生器74は、カオス的な音の特別な周波数成分をすべて有する電気波形を作成する非線形回路素子を含む。あるいは、カオス信号は、デジタル・コンピュータによってデジタル的に発生させることもできる。
【0041】
発生器74によって発生されたカオス信号は、その信号を増幅するパワー増幅器76に与えられる。増幅されたカオス信号は、ブロードバンド・トランスデューサ78に与えられる。この信号は、カプラ80を会して物体72の中に結合されたトランスデューサ78において音信号を発生する。トランスデューサ78に与えられた信号は、既にカオス的であるから、トランスデューサ78によって物体72の中に線形に結合することができる。トランスデューサ78からの音響信号は、このようにして、物体72において音響カオスを誘導し、物体72の中の欠陥の加熱を増加させる。
【0042】
本発明の別の実施例によると、サーモグラフィ欠陥検出システムが、複数の周波数にわたる超音波励起信号を用いて検査される物体を励起し、物体の中にあるクラック又はクラックのような欠陥の位置において熱を生じさせ、それを赤外線カメラによって検出できるようにする。物体は、金属、セラミクス、プラスチック、ガラス、コーティングされた金属、金属マトリクス混合物、セラミクス・マトリクス混合物、ポリマ・マトリクス混合物など、固体物質で構成される任意のものである。
【0043】
この技術分野において知られているように、弾性体には、固有モードと固有周波数とが存在するのであるが、これらは、物体の幾何学的構成、弾性的な性質、固定物におけるクランピングなど追加的な境界条件、そして、物体において振動を生じさせる技術などによって定義される。物体の固有モードは、振動が与えられた物体の中の場所に共振が生じる周波数を定義する。従って、物体における局所的な振動振幅と、これによる欠陥の検出可能性とは、励起信号の励起周波数、振幅及び継続時間に著しく依存する。物体の固有モードにおける又はそれに近い周波数を有する励起信号は、結果的に、物体における振動振幅の著しい増加を生じさせる。工業製品のコンポーネントの固有モードを知るのは容易ではないし、それは、コンポーネントの幾何学的構成、弾性的な性質及び境界条件が僅かに変化しただけで、ときには非線形的に変化するので、単一の周波数、振幅及び継続時間の励起信号を用いても、予期しない振動の結果が生じる場合がある。結果における実質的な変動は、所定の周波数、振幅及び継続時間における1つ又は複数のパルスを放射する震動源を用いた場合にも観測されている。
【0044】
ある組の周波数又は変化する周波数を用いて物体を刺激するのは、その物体の複数の固有モードを励起させることができ、従って、振動振幅の分布がより均一化するすなわちノードを回避できるので、好ましい。特に、対応する周波数とモード・パターンとに属する異なる歪み振幅を組み合わせると、十分に高い振幅の歪みと、欠陥が検出される物体の任意の位置における十分な数のサイクルとが生じる。これは、異なるモード・パターンを異なる自然周波数と組み合わせることによって行うことができる。周波数を選択する可能性は、物体特にその薄い箇所を損傷する可能性がある特別の固有モードが存在する場合に役に立つ。励起信号は、このような周波数を回避するように同調又は調節することができる。
【0045】
図9は、この出願において一般的に論じられているタイプの物体92において欠陥を検出するサーモグラフィ欠陥検出システムのブロック図である。このサーモグラフィ・システム90は、ある種の定義された周波数パターンで音エネルギを物体92の中に結合させるホーン96を有する超音波トランスデューサ94を含む。他の実施例では、ホーン96は、後述するように、ブロードバンド・トランスデューサで代替することができる。トランスデューサ94は、トランスデューサ14と同じものでもよいし、この出願での議論と矛盾しない別の適切な音響装置でもよい。例えば、トランスデューサ94は、所望の周波数パターンを提供する圧電式、電磁気的又は磁歪素子でもかまわない。後述するように、物体92に結合された音エネルギは、物体92の中の欠陥(クラック)を加熱するパルス化された周波数信号の形式を有する。赤外線カメラ98は、加熱され物体において識別される欠陥を画像化する。
【0046】
コントローラ100は、システム90の動作を制御して、トランスデューサ94とカメラ98との間のタイミングを提供する。コントローラ100は、所望のパルス速度、パルス継続時間、周波数、エンベロープの形状などを有し様々な実施例に関してこの出願での議論と矛盾しない信号をトランスデューサ94に提供する信号整形器102を制御する。システム90は、また、物体に接するように配置され励起信号によって励起されたときに物体92の内部の振動モード及びパターンを聴く振動センサ104も含む。振動センサ104は、この出願で論じられている目的に適した任意のセンサでよい。例えば、加速度計、渦電流ベースの振動センサ、光振動センサ、マイクロフォン、超音波トランスデューサ、超音波振動センサなどである。センサ104は、振動パターンを示す信号をコントローラ100に提供することにより、コントローラ100は、励起信号によってどのような振動が物体92の中に誘導されているのかを知ることになる。コンピュータ100は、次に、この情報を用いて信号整形器102に与えた信号を変更し、トランスデューサ94から物体92に与えられた励起信号を変動させ、欠陥をよりよく加熱するために、物体92の中の異なっていておそらくはより好ましい振動パターンを得る。
【0047】
ある実施例では、トランスデューサ94は、異なる中心周波数に同調されている周波数又は比較的大きな周波数帯域を有するブロードバンド信号を提供することができるブロードバンド・トランスデューサである。このブロードバンド・トランスデューサ94は、異なる周波数を中心とする信号をシーケンシャルに又は同時に提供することができる。これらの周波数は、増加する態様で又は減少する態様で、ランダムに、上方向に掃引されて、下方向に掃引されて、ランダムな掃引で提供することができる。複数の周波数帯域を提供することにより、物体92の中で、動作のないすなわち付勢されていない領域をなくすことができる。また、励起信号は、周波数が時間と共に変化するチャープ信号でもありうる。
【0048】
あるいは、システム90は、異なるナローバンドの中心周波数に同調させた複数のトランスデューサを用いて、周波数が異なる複数の励起信号を用いて物体92を励起することができる。このように、システム90は、音励起信号を物体92の中に結合する第2のトランスデューサ106を用いることもできる。この場合、トランスデューサ94及び106は、異なるバローバンド周波数に同調される。更に、システム90は、トランスデューサのアレイを用いることもできる。コントローラ100はトランスデューサ94及び106からの励起信号のタイミングを制御し、信号整形器102はトランスデューサ94及び106によって発生された信号の形状を定義して物体92の内部において所望の振動を得る。もちろん、システム90は、3以上の周波数入力信号に対して3以上のトランスデューサを用いることもできる。
【0049】
トランスデューサ94、コントローラ100及び信号整形器102の中の1つ又は複数に対して用いることができ音及び超音波信号信号を提供するる可撓的な励起システムが、この技術分野において知られている。これらのシステムは、適切な任意の波形発生器、増幅器、コンバータ及び周波数パターンを発生するそれ以外の関連する装置を含む。これらのシステムによれば、連続的な信号の適切な混合や、連続的な信号とパルス信号との組合せによって、又は、連続的な信号の振幅の特定の制御によって、選択的な周波数コンテンツ及び振幅特性で構成される任意の又は特定の設計の波形の作成が可能になる。従って、パルス・エンベロープ及び周波数特性の任意の形状を作成することができる。これらの任意の形状は、デジタル・コンピュータやデジタル整形器によってデジタル的に発生させることも可能である。更に、システム成分は、動的に駆動され、それによって、振動センサや加速度計などからの追加的な入力に基づく振幅及び周波数の制御が可能になる。
【0050】
図10ないし図18は、様々な応用例について様々な周波数特性を有し物体92に与えることができる様々な励起信号を示すグラフである。既に述べたように、トランスデューサ94からの様々な励起信号は、物体92における固有モードを励起する又はそれを回避して、物体92における欠陥の加熱を増加又は強化することを意図している。図10ないし図13は、2msの時間フレームでの励起信号の一部を示している。図15は、4msの時間フレームでの励起信号の一部を示している。これらのタイプの信号に対する励起信号の典型的な継続時間は、約1秒である。図14及び図16−19は、励起信号の全体を示している。
【0051】
図10は、20kHzと21kHzとを中心とする2つの周波数の組合せである励起信号パルスを示している。図11は、20kHzと40.5kHzとを中心とする2つの周波数の組合せである励起信号パルスを示している。図12は、20kHzと41kHzとを中心とする2つの周波数の組合せである励起信号パルスを示している。図13は、20kHzと21kHzと22kHzとを中心とする3つの周波数の組合せである励起信号パルスを示している。図14は、20kHzの周囲のガウス周波数帯域である励起信号パルスを示している。図15は、上方向の周波数掃引を有するチャープ信号である励起信号を示している。図16は、励起信号をオン及びオフに切り換えるデジタル・シーケンス(1,0,1,0,0,1,1,1,0,0,1,1,・・・)のランダム・パルスの組によっ定義されたシグナチュア信号である励起信号を示している。ただし、ここには、全体の励起信号が示されている。パルスのランダムな組が感知された赤外線信号に転送され復号化されてSN比を改善する。図17は、20kHzの周囲の矩形周波数帯域に基づく励起信号を示している。ただし、ここには、全体の励起信号が示されている。
【0052】
図18は、開始時にステップを有する増加する振幅を有する励起信号を示している。ただし、ここには、全体の励起信号が示されている。誘導された振動がトランスデューサ94の一定でない過渡的な応答、トランスデューサ94の不安定な結合、不安定なクランピング条件などの場合にコントローラによって一定に維持されなければならない、又は、指数関数的な減少など励起信号のある種の特性が意図されている場合には、振幅の変動は上昇する。図19は、選択されたエンベロープ周波数を有する2つのパルスの組である励起信号を示している。第1のパルスの幅は小さく、その結果、表面欠陥の検出に適した小さな熱拡散長が生じる。第2のパルスはそれよりもかなり幅が広く、結果的に、表面下の欠陥に適したより大きな拡散長が生じる。
【0053】
本発明によると、物体92の様々な特徴を調べることができるが、それには、振動モードの調査、同調された検査の実行、励起信号のエンベロープの振動(強度変調)などが含まれる。振動モードの調査は、物体92の固有モードの自然周波数及び空間的パターンの決定のために、入力の周波数掃引を実行することを含む。物体92の測定の方法は、追加的なセンサを用いての、電圧と電流との間の位相シフト、実効電力又は振動振幅の測定を含む。
【0054】
同調された検査の実行には、励起信号の周波数の変動を提供することができる。周波数のこのような変動には、周波数の組を用いた物体92の励起と、周波数帯域を用いた物体92の励起と、既存の固有モードの範囲内の周波数帯域を含むノイズ信号を用いた物体92の励起と、チャープ信号を用いた物体92の励起とが含まれる。チャープ信号の反復は、励起信号の周波数を固有モードが存在する定義された帯域の中で上下に反復的に掃引することによって可能である。励起信号の振幅の同調された検査の実行は、励起信号にステップ状の又は変動する振幅パルス又はパルスの組を提供する、物体92の励起に掃引の態様によりローからハイへ又はハイからローへ連続的に変動する振幅を提供する、又は、物体92の励起に循環的に振幅の態様で連続的に変化する振幅を提供することを含む。更に、物体92の固有モードに基づく信号エネルギ入力の位置を変動させることができる。
【0055】
励起信号のエンベロープの変動のために、励起信号は、図16に関して上述した赤外線応答の中のシグナチュアの認識のように、エンベロープの特別なシグナチュアを有することがありうる。また、欠陥の深さや物体92の熱特性への適応を含むエンベロープの特別な周波数を選択する信号の励起は、図19に関して上述したように、提供することができる。強度変調のこれらの周波数は、典型的には、図19に示されているように、音周波数よりも数オーダー分だけ大きさが劣るのが通常である。また、動作レンジの中で周波数を変動させる励起信号を提供することが可能であるし、又は、市販されている超音波溶接装置を様々な方法で用いることができる。励起信号の周波数は、そのレンジにおいて、ローからハイの周波数へ変動又は掃引することができる。あるいは、励起信号の周波数は、ローからハイへ及びハイからローへ循環的に変動させることができるし、周波数変調の態様で複数回反復させることができる。
【0056】
励起信号は、物体92に転送される振動エネルギを一定に維持することができ、よって、追加的な振動センサを用いて振動振幅の測定の基づいて、又は、物体92のIR応答を用いた又は基準サンプルからの励起信号に基づいて、結合及びクランピング条件の変化を均衡させる。励起信号は、定常的に増加する振幅を有することができ、これは、損傷が予想されるレベルの下で停止する又は結果的に一定に維持される。信号の開始は、ゼロ振幅又は安全振幅においてでなければならない。
【0057】
本発明の別の実施例によると、一連のN個の励起を用いた欠陥検出テストの変形例が与えられる。ここでNは、1よりも大きく、予め選択された又は自動的に選択された励起パルスの数である。1からNまでの励起パルスのそれぞれは、予め選択された周波数、振幅及び継続時間から構成され、励起1から励起Nまで、それぞれの励起感覚の間に物体92において異なる固有モードの振動を生じさせる。赤外線又は熱画像化は、Nショットの周期全体の間アクティブなままで維持され、それによって、ある種の変化する振動条件に適した欠陥加熱イベントがテスト・シーケンスの全体で積分又は平均化することができる。
【0058】
可撓的な励起技術は、クラック位置における局所的な加熱を生じさせ、非線形の振動モード変化の間の過剰な振動から生じうる物体92の任意の加熱を最小化させる最適振動モードの機会を最大化する。欠陥位置からの加熱の最大化と物体92の任意の又は一般的な加熱の最小化とのこのような組合せにより、SN比を向上させることができ、欠陥の位置の識別に役立つ。
【0059】
システム90は、開ループ又は閉ループ制御に向けて設計することができる。開ループ制御の実施例では、同調されたエンベロープの励起信号を用いて、物体92の固有モード解析に基づいて、すなわち、解析的又は経験的測定方法によって、物体92における振動を生じさせることができる。所定の固有モードは、信号オプションの特性と比較して評価され、システムのテスト・サイクルで用いられるために、1つのオプションが選択される。同調された又はエンベロープ励起信号の周波数、継続時間及び振幅という特性は、全体のテストの感度を制御し、物体92を損傷させるのに要求されるレベルに対する振動によって物体92に誘導される応力及び歪みのレベルを制御し、物体92における制限された領域又は関心対象の領域を制御し、振動のほぼ均一な配分を達成し、検査のための関心対象の特定の欠陥を加熱するのに効果的であると判断されるモードを選択するように、選択することができる。しかし、固有モードが既知でない場合には、固有モードが識別されうる周波数帯域と、周波数帯域による励起信号の1つ又は複数の選択と、1つ又は複数の固有モードを保証するノイズ信号又はチャープ信号が励起される。
【0060】
閉ループ制御の実施例では、同調された励起信号を用いて物体92を振動させることができる。物体92に誘導された実際の振動は、物体92の固有モード解析の基礎のために測定される。この解析は、計算のためのハードウェア又はソフトウェア・ツールによって実行することができ、その結果は、サーモグラフィ・システム90によって、物体92の適切な振動を誘導する同調された又はエンベロープ励起信号の周波数、継続時間及び振幅などの制御特性を選択するのに用いられる。これらの特性は、テストの全体的な感度を制御し、物体92を損傷するのに必要なレベルに対する震度によって物体92において誘導された応力及び歪みのレベルを制御し、物体92上の限定された領域又は関心領域を制御し、振動のほぼ均一な分布を達成し、又は、検査の対象である特定の欠陥を加熱するのに効率的であると判断されるモードを選択するために、選択される。
【0061】
プラスティック及びそれ以外の物質の超音波溶接に秘匿用いられる圧電式コンバータを用いる超音波振動励起装置は、この技術分野において入手可能である。これらの装置は、トランスデューサ94のために用いることができる。これらの装置の制御システムは、周波数、振幅、継続時間及び限定された領域を会しての接触力を変動させることができ、内部的に修正することが可能であり、あるいは、入力信号調整装置を追加することによって、可撓的な励起を可能にすることができる。例えば、圧電式、電磁気的、磁歪装置などコンパクトで低コストの超音波振動励起装置がこの技術分野において入手可能であり、これらは、信号発生に関する既知のトランスデューサの原理を用いてコンフィギュレーションにおいて可撓的(柔軟)な励起を可能にすることができる。そのような装置の例は、米国特許第6,232,701号及び米国特許第6,274,967号に開示されている。また、米国メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)所在のウィルコックス・リサーチ(Wilcox Research)社の製造によるモデルF7−1圧電シェイカー・システムを使用することもできる。これらの装置は、任意の波形発生器、可撓性関数発生器、又はデジタル制御信号発生器などと組み合わせて、必要となる振動サーモグラフィ・システムのための可撓的励起信号を提供するようにプログラムすることができる適切なパワー増幅器及びマイクロプロセッサ・ベース又はコンピュータ・ベースの制御システムを提供する。
【0062】
コンパクトで低コストの超音波振動励起装置は、複数の励起装置や別の実現例での励起装置のアレイの応用に役立つ。換言すると、トランスデューサ94は、一連のトランスデューサ又は励起装置で置き換えることができる。励起モードをカスタマイズする追加的な可撓性も提供されうる。これは、例えば、周波数、継続時間及び振幅を含む励起装置特性と、選択された周波数又は周波数及び信号モードの組合せでノード及びアンチ・ノードなど固有モードの特徴とを組合せを選択することによってなされる。これにより、関心対象の選択された領域に対する検査結果と、物体92における状況変化において指示される欠陥及び劣化のタイプとを最適化できる。これには、製造変動の結果や物体の加齢又は摩耗や物体92の動作条件への露出に起因する劣化などがある。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のある実施例による欠陥検出システムのブロック図である。
【図2】図1に示された欠陥検出システムの一部の展開側面図である。
【図3】図3(a)から図3(d)まであり、本発明による欠陥検出システムによって超音波励起がなされ熱画像化されたコンポーネントにおける解放クラックの所定の時間間隔での連続的な画像を示している。
【図4】本発明の別の実施例による、電磁気音響トランスデューサを用いた欠陥検出システムの平面図である。
【図5】40kHzの励起パルスによって励起されたサンプルの振動応答を示す波形であり、波形は5つの領域AからEまでに分割されている。
【図6】水平軸を周波数とし垂直軸を振幅として、図5に示されている波形の領域Dにおける音響カオスによって発生された周波数ピークを示すグラフである。
【図7】水平軸を周波数とし垂直軸を振幅として、図5に示されている波形の領域Eにおける音響カオスによって発生された周波数ピークを示すグラフである。
【図8】本発明の別の実施例による音響カオス欠陥検出システムのブロック図である。
【図9】本発明の別の実施例によるサーモグラフィ欠陥検出システムのブロック図であり、このシステムは、選択された周波数を有する可撓的な多重モード入力信号を提供して入力信号の周波数と振幅と継続時間とを制御することができる。
【図10】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフであり、20kHzを中心とする第1の周波数と21kHzを中心とする第2の周波数との2つの周波数を有している。
【図11】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフであり、20kHzを中心とする第1の周波数と40.5kHzを中心とする第2の周波数との2つの周波数を有している。
【図12】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフであり、20kHzを中心とする第1の周波数と41kHzを中心とする第2の周波数との2つの周波数を有している。
【図13】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフであり、20kHzを中心とする第1の周波数と21kHzを中心とする第2の周波数と22kHzを中心とする第3の周波数との3つの周波数を有している。
【図14】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、20kHzを中心とするガウス周波数帯域である図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図15】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、上方向に掃引されるチャープ信号である図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図16】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、デジタル・シーケンスのランダム・パルスを有するシグナチュア信号である図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図17】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、20kHzを中心とする矩形周波数帯域に基づく図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図18】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、最初にステップを有する増加する振幅を有する図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【図19】水平軸を時間とし垂直軸を振幅として、それぞれが選択されたエンベロープ周波数ヲ有する2つのパルスを含む図9に示されているシステムのための入力励起信号の一部を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造における欠陥を検出する欠陥検出システムであって、
音入力信号を前記構造に与える音源であって、前記入力信号は異なる周波数を有する複数の周波数信号を含み、前記入力信号は前記構造における欠陥を加熱する、音源と、
前記構造の熱画像を発生して前記欠陥を識別する熱画像化カメラと、
を備えていることを特徴とする欠陥検出システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は異なる周波数を中心とする2以上の周波数信号の組合せであることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号はガウス周波数帯域を有することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は周波数が時間と共に変化するチャープ信号であることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は擬似ランダム・パルスの組を有するシグナチュア信号であることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は増加、減少又は一定振幅を、振幅におけるオプショナルなステップを含む様々なシーケンシャルな組合せで有していることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は矩形周波数帯域に基づくことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は、異なる震度の欠陥を検出するために、小さなパルス幅を有する1つのパルスとより大きなパルス幅を有するもうひとつのパルスとを含む選択されたエンベロープ周波数であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、前記音源は、EMAT、超音波振動子、圧電振動子、電磁気振動子及び磁歪振動子から構成されるグループから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1記載のシステムにおいて、信号整形器を更に備えており、前記信号整形器は所定の継続時間と振幅と周波数とを有する前記入力信号を発生することを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1記載のシステムにおいて、前記音源はブロードバンド周波数信号を提供することができるブロードバンド・トランスデューサであることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1記載のシステムにおいて、前記音源はそれぞれが異なるナローバンド中心周波数に同調された複数のトランスデューサを含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1記載のシステムにおいて、前記構造に結合された振動センサを更に備えており、前記振動センサは前記構造における振動を感知することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13記載のシステムにおいて、前記振動センサは、渦電流ベースの振動センサと加速度計と光振動センサとマイクロフォンと超音波トランスデューサと超音波振動センサとから構成されるグループから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項13記載のシステムにおいて、前記振動センサは前記感知された振動の電流と電圧との間の位相シフトを測定して前記構造の自然周波数を判断することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項13記載のシステムにおいて、前記振動センサは前記感知された振動の電流と電圧との振幅特性を測定して前記構造の自然周波数を判断することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は開ループ又は閉ループ制御を提供する同調された励起信号であることを特徴とするシステム。
【請求項18】
構造における欠陥を検出する欠陥検出システムであって、
音入力信号を前記構造に与える音源であって、前記入力信号は1つ若しくは複数の周波数を有するか、又は、前記構造の固有モードにおける若しくはその近くに選択された、若しくは、前記構造の前記固有モードを回避するように選択された振幅変調を伴う単一周波数信号であり、前記入力信号は前記構造における欠陥を加熱する、音源と、
前記構造の熱画像を発生して前記欠陥を識別する熱画像化カメラと、
を備えていることを特徴とする欠陥検出システム。
【請求項19】
請求項18記載のシステムにおいて、前記入力信号は、異なる周波数を中心とする2以上の周波数信号の組合せを有する入力信号と、ガウス周波数帯域を有する入力信号と、チャープ信号である入力信号と、ランダム・パルスの組を有するシグナチュア信号である入力信号と、矩形周波数帯域を有する入力信号と、ステップを伴う増加する振幅を有する入力信号と、異なる深度の欠陥を検出するために短いパルス継続時間を有する1つのパルスと幅の広いパルス継続時間を有するもうひとつのパルスとを含む入力信号とから構成される入力信号のグループから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項20】
構造における欠陥を検出する欠陥検出システムであって、
音入力信号を前記構造に与える音源であって、前記入力信号は振幅変調を伴う単一の周波数信号であり、前記入力信号は前記構造における欠陥を加熱する、音源と、
前記構造の熱画像を発生して前記欠陥を識別する熱画像化カメラと、
を備えていることを特徴とする欠陥検出システム。
【請求項1】
構造における欠陥を検出する欠陥検出システムであって、
音入力信号を前記構造に与える音源であって、前記入力信号は異なる周波数を有する複数の周波数信号を含み、前記入力信号は前記構造における欠陥を加熱する、音源と、
前記構造の熱画像を発生して前記欠陥を識別する熱画像化カメラと、
を備えていることを特徴とする欠陥検出システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は異なる周波数を中心とする2以上の周波数信号の組合せであることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号はガウス周波数帯域を有することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は周波数が時間と共に変化するチャープ信号であることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は擬似ランダム・パルスの組を有するシグナチュア信号であることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は増加、減少又は一定振幅を、振幅におけるオプショナルなステップを含む様々なシーケンシャルな組合せで有していることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は矩形周波数帯域に基づくことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は、異なる震度の欠陥を検出するために、小さなパルス幅を有する1つのパルスとより大きなパルス幅を有するもうひとつのパルスとを含む選択されたエンベロープ周波数であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、前記音源は、EMAT、超音波振動子、圧電振動子、電磁気振動子及び磁歪振動子から構成されるグループから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1記載のシステムにおいて、信号整形器を更に備えており、前記信号整形器は所定の継続時間と振幅と周波数とを有する前記入力信号を発生することを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1記載のシステムにおいて、前記音源はブロードバンド周波数信号を提供することができるブロードバンド・トランスデューサであることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1記載のシステムにおいて、前記音源はそれぞれが異なるナローバンド中心周波数に同調された複数のトランスデューサを含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1記載のシステムにおいて、前記構造に結合された振動センサを更に備えており、前記振動センサは前記構造における振動を感知することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13記載のシステムにおいて、前記振動センサは、渦電流ベースの振動センサと加速度計と光振動センサとマイクロフォンと超音波トランスデューサと超音波振動センサとから構成されるグループから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項13記載のシステムにおいて、前記振動センサは前記感知された振動の電流と電圧との間の位相シフトを測定して前記構造の自然周波数を判断することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項13記載のシステムにおいて、前記振動センサは前記感知された振動の電流と電圧との振幅特性を測定して前記構造の自然周波数を判断することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項1記載のシステムにおいて、前記入力信号は開ループ又は閉ループ制御を提供する同調された励起信号であることを特徴とするシステム。
【請求項18】
構造における欠陥を検出する欠陥検出システムであって、
音入力信号を前記構造に与える音源であって、前記入力信号は1つ若しくは複数の周波数を有するか、又は、前記構造の固有モードにおける若しくはその近くに選択された、若しくは、前記構造の前記固有モードを回避するように選択された振幅変調を伴う単一周波数信号であり、前記入力信号は前記構造における欠陥を加熱する、音源と、
前記構造の熱画像を発生して前記欠陥を識別する熱画像化カメラと、
を備えていることを特徴とする欠陥検出システム。
【請求項19】
請求項18記載のシステムにおいて、前記入力信号は、異なる周波数を中心とする2以上の周波数信号の組合せを有する入力信号と、ガウス周波数帯域を有する入力信号と、チャープ信号である入力信号と、ランダム・パルスの組を有するシグナチュア信号である入力信号と、矩形周波数帯域を有する入力信号と、ステップを伴う増加する振幅を有する入力信号と、異なる深度の欠陥を検出するために短いパルス継続時間を有する1つのパルスと幅の広いパルス継続時間を有するもうひとつのパルスとを含む入力信号とから構成される入力信号のグループから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項20】
構造における欠陥を検出する欠陥検出システムであって、
音入力信号を前記構造に与える音源であって、前記入力信号は振幅変調を伴う単一の周波数信号であり、前記入力信号は前記構造における欠陥を加熱する、音源と、
前記構造の熱画像を発生して前記欠陥を識別する熱画像化カメラと、
を備えていることを特徴とする欠陥検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−17447(P2007−17447A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227305(P2006−227305)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【分割の表示】特願2004−531468(P2004−531468)の分割
【原出願日】平成15年8月25日(2003.8.25)
【出願人】(502096303)ウェイン・ステイト・ユニバーシティ (2)
【出願人】(505072801)シーメンズ・ウエスティングハウス・パワー・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【分割の表示】特願2004−531468(P2004−531468)の分割
【原出願日】平成15年8月25日(2003.8.25)
【出願人】(502096303)ウェイン・ステイト・ユニバーシティ (2)
【出願人】(505072801)シーメンズ・ウエスティングハウス・パワー・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
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