音源検出装置及び接近車両検出装置
【課題】必要な音源(特に、接近車両)のみを検出することができる音源検出装置及び接近車両検出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】自車両に搭載され、複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置であって、複数の集音器11R,11C,11Lは自車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域11Ra,11Ca,11Laを有するとともに、指向性領域11Ra,11Ca,11Laが互いに交差するように配置され、指向性領域11Ra,11Ca,11Laが交差している領域を検出範囲11bR,11bLとすることを特徴とする。
【解決手段】自車両に搭載され、複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置であって、複数の集音器11R,11C,11Lは自車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域11Ra,11Ca,11Laを有するとともに、指向性領域11Ra,11Ca,11Laが互いに交差するように配置され、指向性領域11Ra,11Ca,11Laが交差している領域を検出範囲11bR,11bLとすることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の集音器で集音された音に基づいて音源(特に、接近する車両の音源)を検出する音源検出装置及び接近車両検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接近車両検出装置では、複数の集音器で周囲の音をそれぞれ集音し、その各音の到達時間差等に基づいて音源(特に、車両の走行音)の移動方向を特定する。特許文献1に記載の装置では、所定の間隔で配設された複数のマイクロホンが出力する電気信号から帯域通過フィルタで低周波帯域と高周波帯域の周波数成分をそれぞれ除去して補正電気信号に変換し、その補正電気信号から車両の走行音の特徴の現れる所定の周波数帯域のパワーを算出し、そのパワーレベルが所定値より大きい場合に接近車両有りと判定するとともに、その補正電気信号により不要な雑音成分を除去して雑音抑制信号に変換し、複数のマイクロホンの雑音抑制信号間の相互相関を演算し、相関が最大となる到達時間差から接近車両の接近方向を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−92767号公報
【特許文献2】特開平8−202999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の接近車両検出装置では、自車両の左右方向から接近する車両を検出するために、複数のマイクロホンが車両に対して水平(道路面に平行)に並べて配置されている。このように複数のマイクロホンを配置した場合、自車両と同一平面上の道路を走行している車両だけでなく、自車両と上下方向で異なる道路(例えば、上方(高架)の道路、下方の道路)を走行している車両も、接近車両として検出する。つまり、自車両と同じ高さ位置に存在する音源と上方又は下方に存在する音源とでは、水平に配置される複数のマイクロホンでは音の到達時間差に違いが生じないので、自車両と同一平面上か否かの判別ができない。また、例えば、道路構造上、左右方向の一方の方向からしか車両が来ない場合でも、無指向性のマイクロホンではあらゆる方向からの音を検出するので、車両が来ない他方の方向からの音(例えば、他のノイズ音、壁や建物で反射した音)も検出し、接近車両と誤検出する場合がある。このように、従来の接近車両検出装置では、自車両と衝突する可能性のない車両(音)も接近車両として検出する場合がある。その結果、検出された接近車両に対する不要な警報等を行う。
【0005】
そこで、本発明は、必要な音源(特に、接近車両)のみを検出することができる音源検出装置及び接近車両検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る音源検出装置は、複数の集音器で集音された音に基づいて音源を検出する音源検出装置であって、複数の集音器は、平面状に広がる指向性領域を有するとともに、該指向性領域が互いに交差するように配置され、指向性領域が交差している領域を検出範囲とすることを特徴とする。
【0007】
この音源検出装置では、平面状に広がる指向性領域を有する複数の集音器を備えており、その複数の集音器が指向性領域が互いに交差するように配置されている。指向性領域の上下方向の範囲は、狭い範囲がよく、音源検出装置が搭載される移動体等の高さ付近までの指向性を持つものが好ましい。2個の集音器の指向性領域が交差している領域(指向性領域が重なっている部分)は、その2個の集音器が共に音を集音できる領域であり、2個の集音器の音の到達時間差等を利用して音源を検出可能な領域である。したがって、各集音器の取り付け位置や指向性領域の左右方向の広さ、2個の集音器の指向性領域の交差のさせ方等を調整することにより、左右方向の検出範囲を任意に設定できる。したがって、左右方向において特定の方向に存在する音源のみを検出できる。また、2個の集音器の指向性領域が交差可能な上下方向の範囲は移動体等の高さ程度の範囲であるので、上下方向の検出範囲は同一平面上に存在する移動体等の高さ程度の範囲である。したがって、同一平面上に存在する音源のみを検出できる。このように、音源検出装置では、平面状に広がる指向性領域を有する複数の集音器を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出でき、必要な音源のみを検出することができる。これによって、上下方向で異なる位置に存在する音源や左右方向で検出不要な方向に存在する音源等を検出することがなくなる。
【0008】
本発明に係る接近車両検出装置は、自車両に搭載され、複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置であって、複数の集音器は、自車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有するとともに、該指向性領域が互いに交差するように配置され、指向性領域が交差している領域を検出範囲とすることを特徴とする。
【0009】
この接近車両検出装置では、車両の上下方向よりも左右方向に広い指向性領域を有する複数の集音器を備えており、その複数の集音器が指向性領域が互いに交差するように配置されている。指向性領域の上下方向の範囲は、狭い範囲がよく、車両の高さ付近までの指向性を持つものが好ましい。2個の集音器の指向性領域が交差している領域(指向性領域が重なっている部分)は、その2個の集音器が共に音を集音できる領域であり、2個の集音器の音の到達時間差等を利用して接近する車両の音源を検出可能な領域である。したがって、各集音器の取り付け位置や指向性領域の左右方向の広さ、2個の集音器の指向性領域の交差のさせ方等を調整することにより、左右方向の検出範囲を任意に設定できる。したがって、左右方向において特定の方向に存在する接近車両のみを検出できる。また、2個の集音器の指向性領域が交差可能な上下方向の範囲は車両の高さ程度の範囲であるので、上下方向の検出範囲は自車両と同一平面上に存在する車両高さ程度の範囲である。したがって、自車両と同一平面上の道路に存在する接近車両のみを検出できる。このように、接近車両検出装置では、車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有する複数の集音器を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、自車両と同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出でき、自車両にとって必要な接近車両のみを検出することができる。これによって、自車両と上下方向で異なる道路上に存在する車両や左右方向で検出不要な方向に存在する音等を検出することがなくなる。その結果、不要な警報等を抑制できる。
【0010】
本発明の上記接近車両検出装置では、複数の集音器のうちの少なくとも1個の集音器が自車両のロール方向に回転可能であり、回転可能な集音器を回転させることによって指向性領域が互いに交差する検出範囲を任意に設定可能とすると好適である。
【0011】
この接近車両検出装置では、少なくとも1個の集音器が自車両のロール方向に回転可能であるので、回転可能な集音器のロール方向の回転量を調整することにより、その集音器の指向性領域の傾き量を任意に設定でき、指向性領域が交差する領域(検出範囲)を任意に設定できる。このように、接近車両検出装置では、集音器が自車両のロール方向に回転可能な構成することにより、検出範囲を任意に設定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、平面状に広がる指向性領域を有する複数の集音器を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出でき、必要な音源のみを検出することができる。また、本発明によれば、車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有する複数の集音器を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、自車両と同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出でき、自車両にとって必要な接近車両のみを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係る接近車両検出装置の構成図である。
【図2】超指向性集音器の指向性領域を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る複数の超指向性集音器を左右方向にずらして配置した場合の指向性領域を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が側面図である。
【図4】本実施の形態に係る集音器ユニットの指向性領域を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が側面図である。
【図5】本実施の形態に係る2個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図であり、(c)が側面図である。
【図6】図5の2個の集音器ユニットによる検出範囲を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図である。
【図7】本実施の形態に係る3個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図であり、(c)が側面図である。
【図8】図7の3個の集音器ユニットによる検出範囲を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図である。
【図9】本実施の形態に係る道路構造に応じた検出範囲の一例であり、(a)が右折のみ可能な道路での検出範囲であり、(b)がT字路での検出範囲であり、(c)が十字路での検出範囲である。
【図10】本実施の形態に係る運転者の注意方向を考慮した検出範囲の一例である。
【図11】本実施の形態に係るロール方向に回転可能な3個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す正面図である。
【図12】本実施の形態に係るロール方向に回転可能な2個の集音器ユニットの指向性領域を示す正面図であり、(a)が検出範囲を正面とする場合であり、(b)が検出範囲を右方とする場合であり、(c)が検出範囲を左方とする場合である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る音源検出装置及び接近車両検出装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
本実施の形態では、本発明を、車両に搭載される接近車両検出装置に適用する。本実施の形態に係る接近車両検出装置は、複数(2個以上)の集音器(マイクロホン)で集音された各音に基づいて自車両に接近する車両を検出し(つまり、周辺車両の走行音の音源の移動方向を特定し)、接近車両の情報を運転支援装置に提供する。なお、各図において指向性領域や検出範囲を示しており、各図に描かれている指向性領域や検出範囲の大きさは車両の大きさと比較してそれほど変わらない大きさであるが、実際には遠方の車両まで検出可能な大きな領域や範囲である。
【0016】
なお、車両の走行音は、主として、ロードノイズ(タイヤ表面と路面との摩擦音)とパターンノイズ(タイヤ溝における空気の渦(圧縮/開放))である。この車両の走行音の周波数成分の範囲は、実験等によって予め測定しておいてもよい。
【0017】
図1〜図4を参照して、本実施の形態に係る接近車両検出装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る接近車両検出装置の構成図である。図2は、超指向性集音器の指向性領域を示す図である。図3は、本実施の形態に係る複数の超指向性集音器を左右方向にずらして配置した場合の指向性領域を示す図である。図4は、本実施の形態に係る集音器ユニットの指向性領域を示す図である。
【0018】
接近車両検出装置1は、車両の上下方向より左右方向に広くなるように平面状に広がる指向性領域(集音領域)を有する集音器ユニット(特許請求の範囲に記載の集音器に相当)を少なくとも2個備えており、隣り合う集音器ユニットの指向性領域が互いに交差するように集音器ユニットが配置されている。接近車両検出装置1は、指向性領域が交差している領域を検出範囲として、その検出範囲内に存在する音源(車両)を検出する。接近車両検出装置1は、集音器アレイ10(集音器ユニット11,11,・・・)及びECU[Electronic Control Unit]20を備えている。なお、図1の構成図では、集音器ユニットが3個の場合を示している。
【0019】
集音器アレイ10は、2個以上の集音器ユニット11を有している。集音器ユニット11は、複数個の超指向性集音器12を用いて構成される。超指向性集音器12は、図2に示すように、前方に非常に長くかつ左右方向や上下方向が狭い紡錘型の指向性領域12aを有している。超指向性集音器12は、音響電気変換器であり、車外の周囲の音を集音し、集音した音を電気信号に変換する。なお、超指向性集音器12は、既知の集音器であり、一般的に使用されているものでよい。
【0020】
集音器ユニット11は、図3(a)に示すように、紡錘型の指向性領域の左右方向の領域の一部(例えば、半分程度、2/3程度)が互いに重なるように、複数個の超指向性集音器12を左右方向に一定角度間隔でずらして配置(すなわち、扇状に配置)して構成されたものである。また、集音器ユニット11は、図3(b)に示すように、紡錘型の指向性領域の上下方向の領域が全て(略全て)重なるように、複数個の超指向性集音器12を配置して構成されたものである。
【0021】
上記のように複数個の超指向性集音器12を配置することにより、集音器ユニット11は、図4(a)に示すように、指向性領域11aとして左右方向に扇型の領域を有する。また、集音器ユニット11は、図4(b)に示すように、指向性領域11aとして上下方向に狭い領域(超指向性集音器12の指向性領域12aの上下方向と同程度)を有する。このように、集音器ユニット11は、左右方向に広くかつ上下方向に狭い指向性(平面状に広がる指向性領域)であり、略面状の扇型の指向性を持つ指向性領域11aを有する。
【0022】
なお、集音器ユニット11の指向性領域11aの上下方向の範囲は、同一平面上の道路に存在する車両のみを検知するために、車両の高さ付近までの範囲が好ましく、狭いほうがよい。この範囲は、超指向性集音器12の指向性領域12aの上下方向の範囲に依存する。集音器ユニット11の指向性領域11aの左右方向の範囲は、任意に設定可能であり、検出範囲の広さや集音器ユニット11の配置間隔等に応じて決められる。集音器ユニット11の指向性領域11aの左右方向の範囲と超指向性集音器12の指向性領域12aの左右方向の範囲に応じて、集音器ユニット11の構成に必要な超指向性集音器12の個数を決定する。
【0023】
複数個の集音器ユニット11の配置について説明する。複数個の集音器ユニット11は、車両の前端部に車幅方向(左右方向)に並べて配置される。そして、隣り合う集音器ユニット11,11の少なくとも一方を車両のロール方向に水平位置から傾け、略面状の指向性領域11a,11aが互いに交差するように、配置される。この指向性領域11a,11aが交差している領域(重なっている部分)は、隣り合う集音器ユニット11,11の両方で集音可能であるので、音源(ひいては、車両)を検出可能な領域(以下、「検出範囲」と記載する)となる。
【0024】
例えば、図5及び図6を参照して、2個の集音器ユニット11C、11Rの場合の配置の一例を説明する。図5は、本実施の形態に係る2個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す図である。図6は、図5の2個の集音器ユニットによる検出範囲を示す図である。
【0025】
集音器ユニット11Cは、図5に示すように、車両の前端部の車幅方向における中央(車両中心)に配置される。集音器ユニット11Rは、図5に示すように、車両の前端部の車幅方向において集音器ユニット11Cよりも右方かつ上下方向において集音器ユニット11Cよりも上方に配置される。集音器ユニット11C,11Rの指向性領域11Ca,11Raは、大きさ及び形状が同じであり、左右方向が半円よりも広い扇型であり、上下方向が非常に狭い範囲である。
【0026】
また、集音器ユニット11Cは、図5(b)に示すように、略面状の指向性領域11Caが水平(道路面に平行)になるように配置される。集音器ユニット11Rは、図5(b)に示すように、略面状の指向性領域11Raが車両の外側を向くように(車両を正面から見てロール方向において水平位置から反時計周りに所定角度回転)配置される。この配置以外にも、例えば、集音器ユニット11Rを集音器ユニット11Cよりも下方に配置し、集音器ユニット11Rを指向性領域11Raが車両の内側を向くように(車両を正面から見てロール方向において水平位置から時計周りに所定角度回転)配置されてもよい。
【0027】
上記のように、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rを配置した場合、図6に示す斜線領域(検出範囲)11bRが、指向性領域11Caと指向性領域11Raとが交差して重なる領域である。この検出範囲11bRでは、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rが共に集音可能である。したがって、この集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rの配置の場合、左右方向において車両の右方かつ上下方向において非常に狭い範囲(例えば、上下方向の範囲は数10cm程度の範囲であり、2〜3m程度でも十分に実用可能である)に存在する音源を検知でき、それ以外の音源を検知しない。上下方向の範囲は非常に狭いが、自車両と同一平面上の道路に存在する車両であれば、この範囲内に含まれる。その結果、この配置の場合、自車両の右方の検出範囲11bRによって、同一平面上の道路に存在する右方の接近車両のみを検出できる。
【0028】
また、図7及び図8を参照して、3個の集音器ユニット11C、11L,11Rの場合の配置の一例を説明する。図7は、本実施の形態に係る3個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す図である。図8は、図7の3個の集音器ユニットによる検出範囲を示す図である。
【0029】
集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rの配置は、上記の図5に示す配置と同様の配置である。集音器ユニット11Lは、図7に示すように、車両の前端部の車幅方向において集音器ユニット11Cよりも左方かつ上下方向において集音器ユニット11Cよりも上方に配置される。また、集音器ユニット11Lは、図7(b)に示すように、略面状の指向性領域11Laが車両の外側を向くように(車両を正面から見てロール方向において水平位置から時計周りに所定角度回転)配置される。この配置以外にも、例えば、集音器ユニット11Lを集音器ユニット11Cよりも下方に配置し、集音器ユニット11Lを略面状の指向性領域11Raが車両の内側を向くように(車両を正面から見てロール方向において水平位置から反時計周りに所定角度回転)配置されてもよい。集音器ユニット11Lの指向性領域11Laも、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rの指向性領域11Ca,Raと大きさ及び形状が同じである。
【0030】
上記のように、集音器ユニット11C、集音器ユニット11R及び集音器ユニット11Lを配置した場合、図8に示す斜線領域(検出範囲)11bRが指向性領域11Caと指向性領域11Raとが交差して重なる領域であり、斜線領域(検出範囲)11bLが指向性領域11Caと指向性領域11Laとが交差して重なる領域である。この検出範囲11bRは、上記と同様の領域である。検出範囲11bLは、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Lが共に集音可能である。したがって、この集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Lの配置の場合、左右方向において車両の左方かつ上下方向において非常に狭い範囲に存在する音源を検知でき、それ以外の音源を検知しない。その結果、この配置の場合、自車両の右方の検出範囲11bRによって同一平面上の道路に存在する右方の接近車両を検出でき、左方の検出範囲11bLによって同一平面上の道路に存在する左方の接近車両を検出できる。
【0031】
上記の3個の集音器ユニット11C,11R,11Lのうち2個の集音器ユニット11C,11Lだけを配置する構成とすることにより、検出範囲11bLだけとなり、左右方向において車両の左方かつ上下方向において非常に狭い範囲に存在する音源だけを検知できる。その結果、この配置の場合、自車両の左方の検出範囲11bLによって同一平面上の道路に存在する左方の接近車両のみを検出できる。
【0032】
なお、上記の集音器ユニット11C,11R,11Lの配置では、集音器ユニット11Cと左右の集音器ユニット11R,11Lとの高さ位置が異なるように配置したが、同じ高さ位置でもよい。また、上記の集音器ユニット11C,11R,11Lの配置では、集音器ユニット11Cを傾けずに、左右の集音器ユニット11R,11Lだけをロール方向に回転させて傾ける構成としたが、集音器ユニット11Cもロール方向に回転させて傾ける構成としてもよい。また、ロール方向の回転角度を調整することにより、左右方向において車両の正面に存在する音源を検知できる検出範囲を設定できる。
【0033】
ECU20は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、接近車両検出装置1を統括制御する。ECU20では、複数個の集音器ユニット11,・・・から各電気信号をそれぞれ入力する。集音器ユニット11は複数の超指向性集音器12によって構成されるので、集音器ユニット11の電気信号としては複数の超指向性集音器12の各電気信号の平均化した信号等を用いる。そして、ECU20では、隣り合う集音器ユニット11,11毎に、2個の集音器ユニット11,11の電気信号間の相互相関から音の到達時間差を計算し、到達時間差に基づいて音源の有無の判定や音源が存在する場合には音源の接近方向を判別する。この際、音源として、車両の走行音に相当する周波数成分の音源のみを抽出する。そして、ECU20では、その結果に基づいて接近車両情報を生成し、接近車両情報を運転支援装置2に送信する。接近車両情報としては、例えば、接近車両の有無、接近車両が存在する場合には接近方向や自車両との相対距離の情報である。
【0034】
例えば、右方の検出範囲11bR、左方の検出範囲11bL、正面の検出範囲11bCを全て有する集音器アレイ10とした場合、ECU20では、1回の処理毎に、道路状況等に応じて自車両にとって必要な特定の検出方向を決定し、その検出方向に応じて3つの検出範囲11bR,11bL,11bCから選択し、その選択した検出範囲を形成する集音器ユニット11,11の対の電気信号のみを利用して処理をするようにするとよい。
【0035】
運転支援装置2は、運転者に対して各種運転支援する装置である。特に、運転支援装置2では、一定時間毎に、接近車両検出装置1から接近車両情報を受信すると、接近車両に関する運転支援を実施する。例えば、自車両に対して接近する車両が存在する場合、自車両に対する接近車両の衝突の可能性を判定し、衝突の可能性があると判定したときには運転者に対して警報を出力したり、接近車両の情報を提供し、更に、衝突の可能性が高まった場合には自動ブレーキ等の車両制御を行う。
【0036】
この接近車両検出装置1によれば、略面状で扇型の指向性領域11aを有する複数個の集音器ユニット11,・・・を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、自車両と同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出可能な検出範囲11bを任意に設定でき、自車両にとって必要な接近車両のみを検出することができる(不要な車両を検出しない)。これによって、自車両と上下方向で異なる道路上に存在する車両や左右方向で検出不要な方向に存在する音源等を検出することがなくなる(車両以外の他の音源の音も誤検出しない)。その結果、運転支援装置2における不要な警報出力や車両制御等を抑制できる。
【0037】
上記の接近車両検出装置1では、自車両にとって必要な特定の方向のみを検出するための検出範囲11bを設定できる。そこで、自車両(運転者)にとって必要な特定の検出方向を決定するための手法について説明する。
【0038】
まず、図9を参照して、道路構造を利用した手法について説明する。図9は、本実施の形態に係る道路構造に応じた検出範囲の一例であり、(a)が右折のみ可能な道路での検出範囲であり、(b)がT字路での検出範囲であり、(c)が十字路での検出範囲である。
【0039】
この手法の場合、接近車両検出装置が、ECU内に検出方向決定部を有しており、道路構造を取得するための取得装置を備えている。この取得装置としては、例えば、地図データベースと現在位置を検知するためのナビゲーション装置、カメラと撮像画像から道路形状を認識するための画像認識装置、インフラから道路形状情報や通行止め情報等を受信するための路車間通信装置である。取得装置では、自車両が走行中の道路における前方の交差点等の道路形状情報を取得する。すると、ECU内の検出方向決定部では、その道路形状情報に基づいて、自車両が進行可能な方向を判定し、自車両にとって必要な特定の検出方向を決定する。
【0040】
例えば、図9(a)に示すように、右方のみ曲がることが可能な道路の情報を取得した場合(例えば、左方が工事で通行不可)、右方を自車両にとって必要な特定の検出方向として決定し、右方を検出する検出範囲11bRとする。この場合、左方からは車両が来る可能性がないにもかかわらず、左方に他の音源が存在するような場合でも、その他の音源を誤検出しない。また、図9(b)に示すように、T字路の交差点の情報を取得した場合、右方と左方を自車両にとって必要な特定の検出方向として決定し、右方を検出する検出範囲11bR及び左方を検出する検出範囲11bLとする。また、図9(c)に示すように、十字路の交差点の情報を取得した場合、右方、左方及び正面を自車両にとって必要な特定の検出方向として決定し、右方を検出する検出範囲11bR、左方を検出する検出範囲11bL及び正面を検出する検出範囲11bCとする。
【0041】
次に、図10を参照して、運転者の注意方向を利用した手法について説明する。図10は、本実施の形態に係る運転者の注意方向を考慮した検出範囲の一例である。なお、この運転者の注意方向を利用した手法のみで自車両にとって必要な特定の検出方向を決定してもよいし、上記の道路構造を利用した手法と組み合わせて自車両にとって必要な特定の検出方向を決定してもよい。
【0042】
この手法の場合、接近車両検出装置が、ECU内に検出方向決定部を有しており、運転者の注意方向を検出するための検出装置を備えている。この検出装置としては、例えば、運転者の顔を撮像するカメラと撮像画像から運転者の顔向きや視線方向を認識するための画像認識装置である。検出装置では、運転者が注意している方向を検出する。ECU内の検出方向決定部では、その運転者の注意方向以外の方向から自車両にとって必要な特定の検出方向を決定する。
【0043】
例えば、図10に示すように、T字路の交差点の情報を取得し、かつ、運転者の注意方向として右方を検出した場合、左方のみを自車両にとって必要な特定の検出方向として決定し、左方を検出する検出範囲11bLとする。この場合、運転者は右方から来る車両を注意しているので、右方から車両が来たとしても運転者が認知でき、接近車両に対する警報出力等を行う必要がない。したがって、左方から来る車両のみを検出できるようにする。これによって、誤検知を少なくできるとともに、運転者が認知しているにもかかわらず警報出力等を行うことを抑制できる。
【0044】
さらに、上記の接近車両検出装置1では各集音器ユニット11のロール方向の角度が固定であったが、集音器ユニットを車両のロール方向に回転させる装置を備える構成としてもよい。上記したように、接近車両検出装置1では、隣り合う集音器ユニット11,11の指向性領域11a,11aが互いに交差して重なった部分が検出範囲11bとなる。この構成に集音器ユニットの回転装置を追加することにより、各集音器ユニットをロール方向に任意の角度回転させることによって、各集音器ユニットの略面状の指向性領域が任意の角度回転する。その結果、指向性領域が重なる部分を任意に調整でき、検出範囲の位置や大きさを任意に設定できる。
【0045】
図11を参照して、3個の集音器ユニット11R’,11C’,11L’の場合について説明する。図11は、本実施の形態に係るロール方向に回転可能な3個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す正面図である。
【0046】
この3個の集音器ユニット11R’,11C’,11L’が配置される位置は、図7に示す3個の集音器ユニット11R,11C,11Lの各位置と同じ位置である。この3個の集音器ユニット11R’,11C’,11L’は、回転装置が装備され、車両のロール方向に回転可能であり、指向性領域11Ra’,11Ca’,11La’のロール方向の角度を調整できる。回転できる範囲としては、車両の正面から見て時計周りと反時計周りにそれぞれ回転可能であり、水平位置から最大でも90°回転可能である。なお、この3個の集音器ユニット11R’,11C’,11L’のうち少なくとも1個の集音器ユニットを回転できれば、検出範囲を調整できる。
【0047】
図12を参照して、左右の2個の集音器ユニット11R’11L’を回転させた場合の検出範囲について説明する。図12は、本実施の形態に係るロール方向に回転可能な2個の集音器ユニットの指向性領域を示す正面図であり、(a)が検出範囲を正面とする場合であり、(b)が検出範囲を右方とする場合であり、(c)が検出範囲を左方とする場合である。
【0048】
図12(a)に示すように、各回転装置によって、集音器ユニット11R’を車両を正面から見てロール方向において水平位置から反時計周りに所定角度回転させ、集音器ユニット11L’を車両を正面から見てロール方向において水平位置から時計周りに所定角度回転させている。この場合、略面状の指向性領域11Ra’と指向性領域11La’が共に車両の外側を向くように回転し、指向性領域11Ra’と指向性領域11La’とが車両の正面で交差し、正面を検知する検出範囲が設定される。
【0049】
図12(b)に示すように、回転装置によって集音器ユニット11R’を車両を正面から見てロール方向において水平位置から反時計周りに所定角度回転させ、集音器ユニット11L’を回転させない。この場合、略面状の指向性領域11Ra’が外側を向くように回転し、略面状の指向性領域11La’が水平状態を維持し、指向性領域11Ra’と指向性領域11La’とが車両の右方で交差し、右方を検知する検出範囲が設定される。
【0050】
図12(c)に示すように、回転装置によって集音器ユニット11L’を車両を正面から見てロール方向において水平位置から時計周りに所定角度回転させ、集音器ユニット11R’を回転させない。この場合、略面状の指向性領域11Ra’が水平状態を維持し、略面状の指向性領域11La’が外側を向くように回転し、指向性領域11Ra’と指向性領域11La’とが車両の左方で交差し、左方を検知する検出範囲が設定される。
【0051】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0052】
例えば、本実施の形態では車両に搭載され、検出した接近車両情報を運転支援装置に提供する接近車両検出装置に適用したが、接近車両検出装置の構成としては他の構成でもよい。例えば、運転支援装置の中に接近車両検出機能として組み込まれるものでもよいし、接近車両検出装置の中に警報機能等を有するものでもよい。また、車両以外の音源を検出する音源検出装置に適用してもよい。また、ロボット等の車両以外の移動体に搭載される音源検出装置や接近車両検出装置に適用してもよい。
【0053】
また、本実施の形態では自車両前方の接近車両を主として検出するために自車両の前端部に複数の集音器ユニットを配置する構成としたが、自車両後方の接近車両を主として検出するために自車両の後端部に複数の集音器ユニット(集音器)を配置する構成としてもよい。また、本実施の形態では集音器アレイを2個又は3個の集音器ユニットで構成したが、4個以上の集音器ユニットで集音器アレイを構成してもよい。
【0054】
また、本実施の形態では超指向性の集音器を複数用いて、略面状の左右方向に扇型の指向性領域を有する集音器ユニットを構成したが、単独の集音器により車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有するものを構成してもよい。
【0055】
また、本実施の形態では集音器アレイに含まれる複数の集音器ユニットの指向性領域の大きさ及び形状が同じになるように構成したが、各集音器ユニットの指向性領域の大きさや形状については同じでなくてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…接近車両検出装置、2…運転支援装置、10…集音器アレイ、11,11C,11L,11R,11C’,11L’,11R’…集音器ユニット、11a,11Ca,11La,11Ra,11Ca’,11La’,11Ra’…指向性領域、11b,11bC,11bL,11bR…検出範囲、12…超指向性集音器、12a…指向性領域、20…ECU。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の集音器で集音された音に基づいて音源(特に、接近する車両の音源)を検出する音源検出装置及び接近車両検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接近車両検出装置では、複数の集音器で周囲の音をそれぞれ集音し、その各音の到達時間差等に基づいて音源(特に、車両の走行音)の移動方向を特定する。特許文献1に記載の装置では、所定の間隔で配設された複数のマイクロホンが出力する電気信号から帯域通過フィルタで低周波帯域と高周波帯域の周波数成分をそれぞれ除去して補正電気信号に変換し、その補正電気信号から車両の走行音の特徴の現れる所定の周波数帯域のパワーを算出し、そのパワーレベルが所定値より大きい場合に接近車両有りと判定するとともに、その補正電気信号により不要な雑音成分を除去して雑音抑制信号に変換し、複数のマイクロホンの雑音抑制信号間の相互相関を演算し、相関が最大となる到達時間差から接近車両の接近方向を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−92767号公報
【特許文献2】特開平8−202999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の接近車両検出装置では、自車両の左右方向から接近する車両を検出するために、複数のマイクロホンが車両に対して水平(道路面に平行)に並べて配置されている。このように複数のマイクロホンを配置した場合、自車両と同一平面上の道路を走行している車両だけでなく、自車両と上下方向で異なる道路(例えば、上方(高架)の道路、下方の道路)を走行している車両も、接近車両として検出する。つまり、自車両と同じ高さ位置に存在する音源と上方又は下方に存在する音源とでは、水平に配置される複数のマイクロホンでは音の到達時間差に違いが生じないので、自車両と同一平面上か否かの判別ができない。また、例えば、道路構造上、左右方向の一方の方向からしか車両が来ない場合でも、無指向性のマイクロホンではあらゆる方向からの音を検出するので、車両が来ない他方の方向からの音(例えば、他のノイズ音、壁や建物で反射した音)も検出し、接近車両と誤検出する場合がある。このように、従来の接近車両検出装置では、自車両と衝突する可能性のない車両(音)も接近車両として検出する場合がある。その結果、検出された接近車両に対する不要な警報等を行う。
【0005】
そこで、本発明は、必要な音源(特に、接近車両)のみを検出することができる音源検出装置及び接近車両検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る音源検出装置は、複数の集音器で集音された音に基づいて音源を検出する音源検出装置であって、複数の集音器は、平面状に広がる指向性領域を有するとともに、該指向性領域が互いに交差するように配置され、指向性領域が交差している領域を検出範囲とすることを特徴とする。
【0007】
この音源検出装置では、平面状に広がる指向性領域を有する複数の集音器を備えており、その複数の集音器が指向性領域が互いに交差するように配置されている。指向性領域の上下方向の範囲は、狭い範囲がよく、音源検出装置が搭載される移動体等の高さ付近までの指向性を持つものが好ましい。2個の集音器の指向性領域が交差している領域(指向性領域が重なっている部分)は、その2個の集音器が共に音を集音できる領域であり、2個の集音器の音の到達時間差等を利用して音源を検出可能な領域である。したがって、各集音器の取り付け位置や指向性領域の左右方向の広さ、2個の集音器の指向性領域の交差のさせ方等を調整することにより、左右方向の検出範囲を任意に設定できる。したがって、左右方向において特定の方向に存在する音源のみを検出できる。また、2個の集音器の指向性領域が交差可能な上下方向の範囲は移動体等の高さ程度の範囲であるので、上下方向の検出範囲は同一平面上に存在する移動体等の高さ程度の範囲である。したがって、同一平面上に存在する音源のみを検出できる。このように、音源検出装置では、平面状に広がる指向性領域を有する複数の集音器を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出でき、必要な音源のみを検出することができる。これによって、上下方向で異なる位置に存在する音源や左右方向で検出不要な方向に存在する音源等を検出することがなくなる。
【0008】
本発明に係る接近車両検出装置は、自車両に搭載され、複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置であって、複数の集音器は、自車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有するとともに、該指向性領域が互いに交差するように配置され、指向性領域が交差している領域を検出範囲とすることを特徴とする。
【0009】
この接近車両検出装置では、車両の上下方向よりも左右方向に広い指向性領域を有する複数の集音器を備えており、その複数の集音器が指向性領域が互いに交差するように配置されている。指向性領域の上下方向の範囲は、狭い範囲がよく、車両の高さ付近までの指向性を持つものが好ましい。2個の集音器の指向性領域が交差している領域(指向性領域が重なっている部分)は、その2個の集音器が共に音を集音できる領域であり、2個の集音器の音の到達時間差等を利用して接近する車両の音源を検出可能な領域である。したがって、各集音器の取り付け位置や指向性領域の左右方向の広さ、2個の集音器の指向性領域の交差のさせ方等を調整することにより、左右方向の検出範囲を任意に設定できる。したがって、左右方向において特定の方向に存在する接近車両のみを検出できる。また、2個の集音器の指向性領域が交差可能な上下方向の範囲は車両の高さ程度の範囲であるので、上下方向の検出範囲は自車両と同一平面上に存在する車両高さ程度の範囲である。したがって、自車両と同一平面上の道路に存在する接近車両のみを検出できる。このように、接近車両検出装置では、車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有する複数の集音器を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、自車両と同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出でき、自車両にとって必要な接近車両のみを検出することができる。これによって、自車両と上下方向で異なる道路上に存在する車両や左右方向で検出不要な方向に存在する音等を検出することがなくなる。その結果、不要な警報等を抑制できる。
【0010】
本発明の上記接近車両検出装置では、複数の集音器のうちの少なくとも1個の集音器が自車両のロール方向に回転可能であり、回転可能な集音器を回転させることによって指向性領域が互いに交差する検出範囲を任意に設定可能とすると好適である。
【0011】
この接近車両検出装置では、少なくとも1個の集音器が自車両のロール方向に回転可能であるので、回転可能な集音器のロール方向の回転量を調整することにより、その集音器の指向性領域の傾き量を任意に設定でき、指向性領域が交差する領域(検出範囲)を任意に設定できる。このように、接近車両検出装置では、集音器が自車両のロール方向に回転可能な構成することにより、検出範囲を任意に設定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、平面状に広がる指向性領域を有する複数の集音器を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出でき、必要な音源のみを検出することができる。また、本発明によれば、車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有する複数の集音器を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、自車両と同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出でき、自車両にとって必要な接近車両のみを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係る接近車両検出装置の構成図である。
【図2】超指向性集音器の指向性領域を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る複数の超指向性集音器を左右方向にずらして配置した場合の指向性領域を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が側面図である。
【図4】本実施の形態に係る集音器ユニットの指向性領域を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が側面図である。
【図5】本実施の形態に係る2個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図であり、(c)が側面図である。
【図6】図5の2個の集音器ユニットによる検出範囲を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図である。
【図7】本実施の形態に係る3個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図であり、(c)が側面図である。
【図8】図7の3個の集音器ユニットによる検出範囲を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が正面図である。
【図9】本実施の形態に係る道路構造に応じた検出範囲の一例であり、(a)が右折のみ可能な道路での検出範囲であり、(b)がT字路での検出範囲であり、(c)が十字路での検出範囲である。
【図10】本実施の形態に係る運転者の注意方向を考慮した検出範囲の一例である。
【図11】本実施の形態に係るロール方向に回転可能な3個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す正面図である。
【図12】本実施の形態に係るロール方向に回転可能な2個の集音器ユニットの指向性領域を示す正面図であり、(a)が検出範囲を正面とする場合であり、(b)が検出範囲を右方とする場合であり、(c)が検出範囲を左方とする場合である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る音源検出装置及び接近車両検出装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
本実施の形態では、本発明を、車両に搭載される接近車両検出装置に適用する。本実施の形態に係る接近車両検出装置は、複数(2個以上)の集音器(マイクロホン)で集音された各音に基づいて自車両に接近する車両を検出し(つまり、周辺車両の走行音の音源の移動方向を特定し)、接近車両の情報を運転支援装置に提供する。なお、各図において指向性領域や検出範囲を示しており、各図に描かれている指向性領域や検出範囲の大きさは車両の大きさと比較してそれほど変わらない大きさであるが、実際には遠方の車両まで検出可能な大きな領域や範囲である。
【0016】
なお、車両の走行音は、主として、ロードノイズ(タイヤ表面と路面との摩擦音)とパターンノイズ(タイヤ溝における空気の渦(圧縮/開放))である。この車両の走行音の周波数成分の範囲は、実験等によって予め測定しておいてもよい。
【0017】
図1〜図4を参照して、本実施の形態に係る接近車両検出装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る接近車両検出装置の構成図である。図2は、超指向性集音器の指向性領域を示す図である。図3は、本実施の形態に係る複数の超指向性集音器を左右方向にずらして配置した場合の指向性領域を示す図である。図4は、本実施の形態に係る集音器ユニットの指向性領域を示す図である。
【0018】
接近車両検出装置1は、車両の上下方向より左右方向に広くなるように平面状に広がる指向性領域(集音領域)を有する集音器ユニット(特許請求の範囲に記載の集音器に相当)を少なくとも2個備えており、隣り合う集音器ユニットの指向性領域が互いに交差するように集音器ユニットが配置されている。接近車両検出装置1は、指向性領域が交差している領域を検出範囲として、その検出範囲内に存在する音源(車両)を検出する。接近車両検出装置1は、集音器アレイ10(集音器ユニット11,11,・・・)及びECU[Electronic Control Unit]20を備えている。なお、図1の構成図では、集音器ユニットが3個の場合を示している。
【0019】
集音器アレイ10は、2個以上の集音器ユニット11を有している。集音器ユニット11は、複数個の超指向性集音器12を用いて構成される。超指向性集音器12は、図2に示すように、前方に非常に長くかつ左右方向や上下方向が狭い紡錘型の指向性領域12aを有している。超指向性集音器12は、音響電気変換器であり、車外の周囲の音を集音し、集音した音を電気信号に変換する。なお、超指向性集音器12は、既知の集音器であり、一般的に使用されているものでよい。
【0020】
集音器ユニット11は、図3(a)に示すように、紡錘型の指向性領域の左右方向の領域の一部(例えば、半分程度、2/3程度)が互いに重なるように、複数個の超指向性集音器12を左右方向に一定角度間隔でずらして配置(すなわち、扇状に配置)して構成されたものである。また、集音器ユニット11は、図3(b)に示すように、紡錘型の指向性領域の上下方向の領域が全て(略全て)重なるように、複数個の超指向性集音器12を配置して構成されたものである。
【0021】
上記のように複数個の超指向性集音器12を配置することにより、集音器ユニット11は、図4(a)に示すように、指向性領域11aとして左右方向に扇型の領域を有する。また、集音器ユニット11は、図4(b)に示すように、指向性領域11aとして上下方向に狭い領域(超指向性集音器12の指向性領域12aの上下方向と同程度)を有する。このように、集音器ユニット11は、左右方向に広くかつ上下方向に狭い指向性(平面状に広がる指向性領域)であり、略面状の扇型の指向性を持つ指向性領域11aを有する。
【0022】
なお、集音器ユニット11の指向性領域11aの上下方向の範囲は、同一平面上の道路に存在する車両のみを検知するために、車両の高さ付近までの範囲が好ましく、狭いほうがよい。この範囲は、超指向性集音器12の指向性領域12aの上下方向の範囲に依存する。集音器ユニット11の指向性領域11aの左右方向の範囲は、任意に設定可能であり、検出範囲の広さや集音器ユニット11の配置間隔等に応じて決められる。集音器ユニット11の指向性領域11aの左右方向の範囲と超指向性集音器12の指向性領域12aの左右方向の範囲に応じて、集音器ユニット11の構成に必要な超指向性集音器12の個数を決定する。
【0023】
複数個の集音器ユニット11の配置について説明する。複数個の集音器ユニット11は、車両の前端部に車幅方向(左右方向)に並べて配置される。そして、隣り合う集音器ユニット11,11の少なくとも一方を車両のロール方向に水平位置から傾け、略面状の指向性領域11a,11aが互いに交差するように、配置される。この指向性領域11a,11aが交差している領域(重なっている部分)は、隣り合う集音器ユニット11,11の両方で集音可能であるので、音源(ひいては、車両)を検出可能な領域(以下、「検出範囲」と記載する)となる。
【0024】
例えば、図5及び図6を参照して、2個の集音器ユニット11C、11Rの場合の配置の一例を説明する。図5は、本実施の形態に係る2個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す図である。図6は、図5の2個の集音器ユニットによる検出範囲を示す図である。
【0025】
集音器ユニット11Cは、図5に示すように、車両の前端部の車幅方向における中央(車両中心)に配置される。集音器ユニット11Rは、図5に示すように、車両の前端部の車幅方向において集音器ユニット11Cよりも右方かつ上下方向において集音器ユニット11Cよりも上方に配置される。集音器ユニット11C,11Rの指向性領域11Ca,11Raは、大きさ及び形状が同じであり、左右方向が半円よりも広い扇型であり、上下方向が非常に狭い範囲である。
【0026】
また、集音器ユニット11Cは、図5(b)に示すように、略面状の指向性領域11Caが水平(道路面に平行)になるように配置される。集音器ユニット11Rは、図5(b)に示すように、略面状の指向性領域11Raが車両の外側を向くように(車両を正面から見てロール方向において水平位置から反時計周りに所定角度回転)配置される。この配置以外にも、例えば、集音器ユニット11Rを集音器ユニット11Cよりも下方に配置し、集音器ユニット11Rを指向性領域11Raが車両の内側を向くように(車両を正面から見てロール方向において水平位置から時計周りに所定角度回転)配置されてもよい。
【0027】
上記のように、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rを配置した場合、図6に示す斜線領域(検出範囲)11bRが、指向性領域11Caと指向性領域11Raとが交差して重なる領域である。この検出範囲11bRでは、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rが共に集音可能である。したがって、この集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rの配置の場合、左右方向において車両の右方かつ上下方向において非常に狭い範囲(例えば、上下方向の範囲は数10cm程度の範囲であり、2〜3m程度でも十分に実用可能である)に存在する音源を検知でき、それ以外の音源を検知しない。上下方向の範囲は非常に狭いが、自車両と同一平面上の道路に存在する車両であれば、この範囲内に含まれる。その結果、この配置の場合、自車両の右方の検出範囲11bRによって、同一平面上の道路に存在する右方の接近車両のみを検出できる。
【0028】
また、図7及び図8を参照して、3個の集音器ユニット11C、11L,11Rの場合の配置の一例を説明する。図7は、本実施の形態に係る3個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す図である。図8は、図7の3個の集音器ユニットによる検出範囲を示す図である。
【0029】
集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rの配置は、上記の図5に示す配置と同様の配置である。集音器ユニット11Lは、図7に示すように、車両の前端部の車幅方向において集音器ユニット11Cよりも左方かつ上下方向において集音器ユニット11Cよりも上方に配置される。また、集音器ユニット11Lは、図7(b)に示すように、略面状の指向性領域11Laが車両の外側を向くように(車両を正面から見てロール方向において水平位置から時計周りに所定角度回転)配置される。この配置以外にも、例えば、集音器ユニット11Lを集音器ユニット11Cよりも下方に配置し、集音器ユニット11Lを略面状の指向性領域11Raが車両の内側を向くように(車両を正面から見てロール方向において水平位置から反時計周りに所定角度回転)配置されてもよい。集音器ユニット11Lの指向性領域11Laも、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Rの指向性領域11Ca,Raと大きさ及び形状が同じである。
【0030】
上記のように、集音器ユニット11C、集音器ユニット11R及び集音器ユニット11Lを配置した場合、図8に示す斜線領域(検出範囲)11bRが指向性領域11Caと指向性領域11Raとが交差して重なる領域であり、斜線領域(検出範囲)11bLが指向性領域11Caと指向性領域11Laとが交差して重なる領域である。この検出範囲11bRは、上記と同様の領域である。検出範囲11bLは、集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Lが共に集音可能である。したがって、この集音器ユニット11Cと集音器ユニット11Lの配置の場合、左右方向において車両の左方かつ上下方向において非常に狭い範囲に存在する音源を検知でき、それ以外の音源を検知しない。その結果、この配置の場合、自車両の右方の検出範囲11bRによって同一平面上の道路に存在する右方の接近車両を検出でき、左方の検出範囲11bLによって同一平面上の道路に存在する左方の接近車両を検出できる。
【0031】
上記の3個の集音器ユニット11C,11R,11Lのうち2個の集音器ユニット11C,11Lだけを配置する構成とすることにより、検出範囲11bLだけとなり、左右方向において車両の左方かつ上下方向において非常に狭い範囲に存在する音源だけを検知できる。その結果、この配置の場合、自車両の左方の検出範囲11bLによって同一平面上の道路に存在する左方の接近車両のみを検出できる。
【0032】
なお、上記の集音器ユニット11C,11R,11Lの配置では、集音器ユニット11Cと左右の集音器ユニット11R,11Lとの高さ位置が異なるように配置したが、同じ高さ位置でもよい。また、上記の集音器ユニット11C,11R,11Lの配置では、集音器ユニット11Cを傾けずに、左右の集音器ユニット11R,11Lだけをロール方向に回転させて傾ける構成としたが、集音器ユニット11Cもロール方向に回転させて傾ける構成としてもよい。また、ロール方向の回転角度を調整することにより、左右方向において車両の正面に存在する音源を検知できる検出範囲を設定できる。
【0033】
ECU20は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、接近車両検出装置1を統括制御する。ECU20では、複数個の集音器ユニット11,・・・から各電気信号をそれぞれ入力する。集音器ユニット11は複数の超指向性集音器12によって構成されるので、集音器ユニット11の電気信号としては複数の超指向性集音器12の各電気信号の平均化した信号等を用いる。そして、ECU20では、隣り合う集音器ユニット11,11毎に、2個の集音器ユニット11,11の電気信号間の相互相関から音の到達時間差を計算し、到達時間差に基づいて音源の有無の判定や音源が存在する場合には音源の接近方向を判別する。この際、音源として、車両の走行音に相当する周波数成分の音源のみを抽出する。そして、ECU20では、その結果に基づいて接近車両情報を生成し、接近車両情報を運転支援装置2に送信する。接近車両情報としては、例えば、接近車両の有無、接近車両が存在する場合には接近方向や自車両との相対距離の情報である。
【0034】
例えば、右方の検出範囲11bR、左方の検出範囲11bL、正面の検出範囲11bCを全て有する集音器アレイ10とした場合、ECU20では、1回の処理毎に、道路状況等に応じて自車両にとって必要な特定の検出方向を決定し、その検出方向に応じて3つの検出範囲11bR,11bL,11bCから選択し、その選択した検出範囲を形成する集音器ユニット11,11の対の電気信号のみを利用して処理をするようにするとよい。
【0035】
運転支援装置2は、運転者に対して各種運転支援する装置である。特に、運転支援装置2では、一定時間毎に、接近車両検出装置1から接近車両情報を受信すると、接近車両に関する運転支援を実施する。例えば、自車両に対して接近する車両が存在する場合、自車両に対する接近車両の衝突の可能性を判定し、衝突の可能性があると判定したときには運転者に対して警報を出力したり、接近車両の情報を提供し、更に、衝突の可能性が高まった場合には自動ブレーキ等の車両制御を行う。
【0036】
この接近車両検出装置1によれば、略面状で扇型の指向性領域11aを有する複数個の集音器ユニット11,・・・を指向性領域が互いに交差するように配置することにより、自車両と同一平面上の特定の方向に存在する音源のみを検出可能な検出範囲11bを任意に設定でき、自車両にとって必要な接近車両のみを検出することができる(不要な車両を検出しない)。これによって、自車両と上下方向で異なる道路上に存在する車両や左右方向で検出不要な方向に存在する音源等を検出することがなくなる(車両以外の他の音源の音も誤検出しない)。その結果、運転支援装置2における不要な警報出力や車両制御等を抑制できる。
【0037】
上記の接近車両検出装置1では、自車両にとって必要な特定の方向のみを検出するための検出範囲11bを設定できる。そこで、自車両(運転者)にとって必要な特定の検出方向を決定するための手法について説明する。
【0038】
まず、図9を参照して、道路構造を利用した手法について説明する。図9は、本実施の形態に係る道路構造に応じた検出範囲の一例であり、(a)が右折のみ可能な道路での検出範囲であり、(b)がT字路での検出範囲であり、(c)が十字路での検出範囲である。
【0039】
この手法の場合、接近車両検出装置が、ECU内に検出方向決定部を有しており、道路構造を取得するための取得装置を備えている。この取得装置としては、例えば、地図データベースと現在位置を検知するためのナビゲーション装置、カメラと撮像画像から道路形状を認識するための画像認識装置、インフラから道路形状情報や通行止め情報等を受信するための路車間通信装置である。取得装置では、自車両が走行中の道路における前方の交差点等の道路形状情報を取得する。すると、ECU内の検出方向決定部では、その道路形状情報に基づいて、自車両が進行可能な方向を判定し、自車両にとって必要な特定の検出方向を決定する。
【0040】
例えば、図9(a)に示すように、右方のみ曲がることが可能な道路の情報を取得した場合(例えば、左方が工事で通行不可)、右方を自車両にとって必要な特定の検出方向として決定し、右方を検出する検出範囲11bRとする。この場合、左方からは車両が来る可能性がないにもかかわらず、左方に他の音源が存在するような場合でも、その他の音源を誤検出しない。また、図9(b)に示すように、T字路の交差点の情報を取得した場合、右方と左方を自車両にとって必要な特定の検出方向として決定し、右方を検出する検出範囲11bR及び左方を検出する検出範囲11bLとする。また、図9(c)に示すように、十字路の交差点の情報を取得した場合、右方、左方及び正面を自車両にとって必要な特定の検出方向として決定し、右方を検出する検出範囲11bR、左方を検出する検出範囲11bL及び正面を検出する検出範囲11bCとする。
【0041】
次に、図10を参照して、運転者の注意方向を利用した手法について説明する。図10は、本実施の形態に係る運転者の注意方向を考慮した検出範囲の一例である。なお、この運転者の注意方向を利用した手法のみで自車両にとって必要な特定の検出方向を決定してもよいし、上記の道路構造を利用した手法と組み合わせて自車両にとって必要な特定の検出方向を決定してもよい。
【0042】
この手法の場合、接近車両検出装置が、ECU内に検出方向決定部を有しており、運転者の注意方向を検出するための検出装置を備えている。この検出装置としては、例えば、運転者の顔を撮像するカメラと撮像画像から運転者の顔向きや視線方向を認識するための画像認識装置である。検出装置では、運転者が注意している方向を検出する。ECU内の検出方向決定部では、その運転者の注意方向以外の方向から自車両にとって必要な特定の検出方向を決定する。
【0043】
例えば、図10に示すように、T字路の交差点の情報を取得し、かつ、運転者の注意方向として右方を検出した場合、左方のみを自車両にとって必要な特定の検出方向として決定し、左方を検出する検出範囲11bLとする。この場合、運転者は右方から来る車両を注意しているので、右方から車両が来たとしても運転者が認知でき、接近車両に対する警報出力等を行う必要がない。したがって、左方から来る車両のみを検出できるようにする。これによって、誤検知を少なくできるとともに、運転者が認知しているにもかかわらず警報出力等を行うことを抑制できる。
【0044】
さらに、上記の接近車両検出装置1では各集音器ユニット11のロール方向の角度が固定であったが、集音器ユニットを車両のロール方向に回転させる装置を備える構成としてもよい。上記したように、接近車両検出装置1では、隣り合う集音器ユニット11,11の指向性領域11a,11aが互いに交差して重なった部分が検出範囲11bとなる。この構成に集音器ユニットの回転装置を追加することにより、各集音器ユニットをロール方向に任意の角度回転させることによって、各集音器ユニットの略面状の指向性領域が任意の角度回転する。その結果、指向性領域が重なる部分を任意に調整でき、検出範囲の位置や大きさを任意に設定できる。
【0045】
図11を参照して、3個の集音器ユニット11R’,11C’,11L’の場合について説明する。図11は、本実施の形態に係るロール方向に回転可能な3個の集音器ユニットの配置と指向性領域を示す正面図である。
【0046】
この3個の集音器ユニット11R’,11C’,11L’が配置される位置は、図7に示す3個の集音器ユニット11R,11C,11Lの各位置と同じ位置である。この3個の集音器ユニット11R’,11C’,11L’は、回転装置が装備され、車両のロール方向に回転可能であり、指向性領域11Ra’,11Ca’,11La’のロール方向の角度を調整できる。回転できる範囲としては、車両の正面から見て時計周りと反時計周りにそれぞれ回転可能であり、水平位置から最大でも90°回転可能である。なお、この3個の集音器ユニット11R’,11C’,11L’のうち少なくとも1個の集音器ユニットを回転できれば、検出範囲を調整できる。
【0047】
図12を参照して、左右の2個の集音器ユニット11R’11L’を回転させた場合の検出範囲について説明する。図12は、本実施の形態に係るロール方向に回転可能な2個の集音器ユニットの指向性領域を示す正面図であり、(a)が検出範囲を正面とする場合であり、(b)が検出範囲を右方とする場合であり、(c)が検出範囲を左方とする場合である。
【0048】
図12(a)に示すように、各回転装置によって、集音器ユニット11R’を車両を正面から見てロール方向において水平位置から反時計周りに所定角度回転させ、集音器ユニット11L’を車両を正面から見てロール方向において水平位置から時計周りに所定角度回転させている。この場合、略面状の指向性領域11Ra’と指向性領域11La’が共に車両の外側を向くように回転し、指向性領域11Ra’と指向性領域11La’とが車両の正面で交差し、正面を検知する検出範囲が設定される。
【0049】
図12(b)に示すように、回転装置によって集音器ユニット11R’を車両を正面から見てロール方向において水平位置から反時計周りに所定角度回転させ、集音器ユニット11L’を回転させない。この場合、略面状の指向性領域11Ra’が外側を向くように回転し、略面状の指向性領域11La’が水平状態を維持し、指向性領域11Ra’と指向性領域11La’とが車両の右方で交差し、右方を検知する検出範囲が設定される。
【0050】
図12(c)に示すように、回転装置によって集音器ユニット11L’を車両を正面から見てロール方向において水平位置から時計周りに所定角度回転させ、集音器ユニット11R’を回転させない。この場合、略面状の指向性領域11Ra’が水平状態を維持し、略面状の指向性領域11La’が外側を向くように回転し、指向性領域11Ra’と指向性領域11La’とが車両の左方で交差し、左方を検知する検出範囲が設定される。
【0051】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0052】
例えば、本実施の形態では車両に搭載され、検出した接近車両情報を運転支援装置に提供する接近車両検出装置に適用したが、接近車両検出装置の構成としては他の構成でもよい。例えば、運転支援装置の中に接近車両検出機能として組み込まれるものでもよいし、接近車両検出装置の中に警報機能等を有するものでもよい。また、車両以外の音源を検出する音源検出装置に適用してもよい。また、ロボット等の車両以外の移動体に搭載される音源検出装置や接近車両検出装置に適用してもよい。
【0053】
また、本実施の形態では自車両前方の接近車両を主として検出するために自車両の前端部に複数の集音器ユニットを配置する構成としたが、自車両後方の接近車両を主として検出するために自車両の後端部に複数の集音器ユニット(集音器)を配置する構成としてもよい。また、本実施の形態では集音器アレイを2個又は3個の集音器ユニットで構成したが、4個以上の集音器ユニットで集音器アレイを構成してもよい。
【0054】
また、本実施の形態では超指向性の集音器を複数用いて、略面状の左右方向に扇型の指向性領域を有する集音器ユニットを構成したが、単独の集音器により車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有するものを構成してもよい。
【0055】
また、本実施の形態では集音器アレイに含まれる複数の集音器ユニットの指向性領域の大きさ及び形状が同じになるように構成したが、各集音器ユニットの指向性領域の大きさや形状については同じでなくてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…接近車両検出装置、2…運転支援装置、10…集音器アレイ、11,11C,11L,11R,11C’,11L’,11R’…集音器ユニット、11a,11Ca,11La,11Ra,11Ca’,11La’,11Ra’…指向性領域、11b,11bC,11bL,11bR…検出範囲、12…超指向性集音器、12a…指向性領域、20…ECU。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の集音器で集音された音に基づいて音源を検出する音源検出装置であって、
前記複数の集音器は、平面状に広がる指向性領域を有するとともに、該指向性領域が互いに交差するように配置され、前記指向性領域が交差している領域を検出範囲とすることを特徴とする音源検出装置。
【請求項2】
自車両に搭載され、複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置であって、
前記複数の集音器は、前記自車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有するとともに、該指向性領域が互いに交差するように配置され、前記指向性領域が交差している領域を検出範囲とすることを特徴とする接近車両検出装置。
【請求項3】
前記複数の集音器のうちの少なくとも1個の集音器が前記自車両のロール方向に回転可能であり、
前記回転可能な集音器を回転させることによって指向性領域が互いに交差する検出範囲を任意に設定可能とすることを特徴とする請求項2に記載の接近車両検出装置。
【請求項1】
複数の集音器で集音された音に基づいて音源を検出する音源検出装置であって、
前記複数の集音器は、平面状に広がる指向性領域を有するとともに、該指向性領域が互いに交差するように配置され、前記指向性領域が交差している領域を検出範囲とすることを特徴とする音源検出装置。
【請求項2】
自車両に搭載され、複数の集音器で集音された音に基づいて接近する車両を検出する接近車両検出装置であって、
前記複数の集音器は、前記自車両の上下方向より左右方向に広い指向性領域を有するとともに、該指向性領域が互いに交差するように配置され、前記指向性領域が交差している領域を検出範囲とすることを特徴とする接近車両検出装置。
【請求項3】
前記複数の集音器のうちの少なくとも1個の集音器が前記自車両のロール方向に回転可能であり、
前記回転可能な集音器を回転させることによって指向性領域が互いに交差する検出範囲を任意に設定可能とすることを特徴とする請求項2に記載の接近車両検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−181016(P2012−181016A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42021(P2011−42021)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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