説明

音量調整方法、オーディオ信号再生装置およびプログラム

【課題】デジタル信号処理を有するオーディオ信号再生装置における音声歪、音割れ、SN比の改善を図る。
【解決手段】DSP5から入力されたデジタル音声信号は、デジタルゲイン設定部7でゲイン調整された後、D/Aコンバータ8でアナログ音声信号に変換され、アナログゲイン設定部9でゲイン調整された後、レシーバ用アンプ10を介してレシーバ1へ入力され、レシーバ1から音声として出力される。デジタルゲイン設定部7およびアナログゲイン設定部9のゲインは、指定された複数の音量設定値に対して、該音量設定値が大きくなるに従って大きな値に設定されるとともに、デジタルゲイン設定部7とアナログゲイン設定部9における設定ゲインのゲイン配分比率は、音量設定値が小さい程、デジタルゲイン設定部7における設定ゲインの比率が大きくなるように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号処理により音声や音楽等のオーディオ信号を再生する技術に関し、特に、再生音量調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等における受話用のレシーバは、元々それ専用に低音が豊かな、充分な音量を確保出来る大きなタイプのものが使用されており、そのためレシーバ部品自身での特性も容易にチューニングが可能となっている。そのため、受話時において、歪、音割れやSN比が悪くフロアノイズ(雑音)が目立ちやすい等の問題は少なかった。
【0003】
一方、最近ではデジタルテレビ対応や見易さへの追及、ユニバーサルへの配慮等により、液晶画面が大幅に拡大する傾向があり、一方これと並行して、携帯電話機自体は薄型・小型化が主流になりつつある。これによりレシーバの小型化及び薄型化が必須となり、さらに、スピーカを兼用して使用できるように、スピーカをレシーバとして使用するものもある。
【0004】
そのため、従来の受話用レシーバ相当の音量、音質を確保するには、入力レベルを上げることや周波数特性を調整するイコライザー等でレシーバから出る出力を合わせ込むしかない。そこで、問題となるのが、入力過大による歪、音割れや特にアナログゲインを上げすぎたためにSN比が劣化し、フロアノイズが聞こえ易くなる問題、あるいは部品の特性上、通話に使用している周波数帯域外でのフロアノイズが目立ちやすくなる等の問題がある。
【0005】
携帯通信端末の音量調整ではないが、特許文献1には、音量調整スイッチにより指示された音量調整値を、調整単位の大きい粗調整値と調整単位の小さい精調整値に分解し、精調整値はデジタル減衰手段に出力されて、デジタル減衰手段によりこの精調整値に応じた減衰度でデジタル信号を減衰処理し、粗調整値は電子ボリュームに出力されて、電子ボリュームに入力されるアナログ信号をこの粗調整値に応じた減衰度で減衰することによって、デジタル信号処理を行う音響再生装置における音量調整を、歪率・S/N比を損なうこと無く実行可能にする技術が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−240647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の受話用レシーバ相当の音量、音質を確保するための音量調整方法として、入力レベルをデジタルゲインとアナログゲインとに配分して増幅する場合に、歪、音割れよりもフロアノイズの減少を重視する場合には、デジタルゲイン側で大きなゲインを設定し、アナログ側でゲインを抑えるような調整を行い、逆に、フロアノイズ(雑音)よりも歪、音割れの減少を重視する場合には、アナログゲイン側で大きなゲインを設定し、デジタル側でゲインを抑えるように微調整する方法が考えられる。
【0008】
しかし、このような方法を用いて、携帯電話機の受話音声において豊かな音量及び音質を確保するには以下に示すような課題がある。図3〜図6はこのような従来のモデルにおけるデジタル処理とアナログ処理のゲイン配分と入力レベルの関係を示している。
【0009】
なお、以下のモデルでは、音量設定が1〜6までの6段階あるものとし、図の(a)は音量設定値が1(最小音量)の時と音量設定値が6(最大音量)の時の入力及びその各々のフロアノイズレベルを表しており、図の(b)は各音量設定値におけるゲイン配分の例を示している。フロアノイズはアナログ部で主に生成されるため、アナログゲインを増分した分上がるもので、デジタルゲインでの増分では影響を受けないものである。また、図の上部の方に記載されている点線は最大許容振幅入力レベルを表している。
【0010】
図3は、デジタル部で音量毎にゲインを設定し、アナログ部では固定ゲインを設定したモデルであり、あるレベルの入力信号に対して、デジタルゲイン設定部で音量設定値1〜6に応じて、レベルを上げ、ついでアナログゲイン設定部でさらに固定値分レベルを上げ、最後にレシーバ用アンプ部でさらに固定値分レベルを上げてレシーバへ入力した場合を示している。レシーバへの入力レベルは図3〜図6において全て同一レベルを表している。
【0011】
フロアノイズはアナログゲインと関係し、アナログゲインで上げた分フロアノイズも上がることになる。従って、音量6の時S/Nは斜線入り両端矢印分で示され、音量1の時S/Nは白抜き両端矢印で示される。この場合、アナログゲインは音量1と音量6で変わらないので、フロアノイズも音量1と音量6で変わらないため、音量1の時、S/Nが悪くなってしまう。
【0012】
図4は、デジタル部は固定ゲインで、アナログ部では音量毎にゲインを設定したモデルであり、図3とは逆に、あるレベルの入力信号に対して、デジタルゲイン設定部で固定値分レベルを上げ、ついでアナログゲイン設定部において音量設定値1〜6に応じて、レベルを上げ、最後にレシーバ用アンプ部でさらに固定値分レベルを上げてレシーバへ入力した場合を示している。
【0013】
この場合、フロアノイズはアナログゲインで上げた分フロアノイズも上がることから、音量6の斜線入り両端矢印分のS/Nと音量1の白抜き両端矢印はS/Nは同一になるが、音量6の時アナログゲインが大きいため、フロアノイズ自身が大きくなり、無音の状態で、フロアノイズが目立つ結果となる。
【0014】
図5は、デジタル部で必要な限りのゲインを音量毎に設定し、アナログ部ではゲインを抑えたモデルであり、フロアノイズを抑えることを重視して、あるレベルの入力信号に対して、デジタルゲイン設定部で次のアナログゲイン設定部で必要なゲイン量も含めたゲイン分、音量設定値に応じて、レベルを上げ、次のアナログゲイン設定部では固定値0dBとし、最後にレシーバ用アンプ部で固定値分レベルを上げてレシーバへ入力した場合を示している。
【0015】
この場合、フロアノイズはレシーバ用アンプ部で上げた分だけしか上がらないので、音量6の時に非常にS/Nが良くなる。また、フロアノイズレベルを最大限抑えることが可能であるので、無音状態を含めてフロアノイズが非常に目立ち難くなるが、逆に、デジタルゲイン設定部でのゲインが大きくなるため、設定音量6の斜線入り上向き矢印のように、ダイナミックレンジが非常に狭くなり、デジタル部での歪、音割れが発生し易くなる。
【0016】
図6は、デジタル部でのゲインは極力抑えて、アナログ部で必要な限りのゲインを音量毎に設定したモデルであり、この例では、歪、音割れが発生し難いように、デジタル部でのダイナミックレンジを広くすることを考慮したものであって、あるレベルの入力信号に対して、デジタルゲイン設定部では固定値0dBとし、次のアナログゲイン設定部においてデジタルゲイン設定部で必要であったゲイン量も含めたゲイン分、音量設定値1〜6に応じて、レベルを上げ、最後にレシーバ用アンプ部で固定値分レベルを上げてレシーバへ入力した場合を示している。
【0017】
この場合は、設定音量6の斜線入り上向き矢印と音量1の白抜き上向き矢印のように、ダイナミックレンジが非常に広くなり、デジタル部での歪、音割れはほぼ発生しなくなるが、アナログ部で相当量のゲインを上げているため、フロアノイズが非常に悪く、S/Nも同様に悪くなる。
【0018】
このように、携帯電話機の受話音声再生におけるレシーバ特性改善のために、入力レベルをデジタルゲインとアナログゲインとに配分する際に、デジタルゲイン側で大きなゲイン設定を行い、アナログ側のゲインは抑えるようにしてフロアノイズの減少を重視すると、歪、音割れの発生頻度が増大し、逆にアナログゲイン側で大きなゲイン設定を行い、デジタル側のゲインを抑えた場合には、歪、音割れの発生はなくなるが、フロアノイズ(雑音)が増大し、歪、音割れと、雑音の両方を改善することが困難である。
【0019】
本発明の目的は、上述した課題を解決することが可能なデジタル信号処理を有するオーディオ信号再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の音量調整方法は、入力されたデジタル音声信号のゲイン調整を行うデジタルゲイン設定部と、該デジタルゲイン設定部でゲイン調整されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/Aコンバータと、該変換されたアナログ音声信号のゲイン調整を行うアナログゲイン設定部と、該アナログゲイン設定部でゲイン調整されたアナログ音声信号を増幅してレシーバへ出力するレシーバ用アンプを有するオーディオ信号再生装置における音量調整方法であって、ゲイン設定手段が、前記デジタルゲイン設定部および前記アナログゲイン設定部における各ゲインを、指定された複数の音量設定値に対して、該音量設定値が大きい程大きい値に設定するとともに、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインと前記アナログゲイン設定部における設定ゲインのゲイン配分比率を、前記音量設定値が小さい程、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインの比率を大きく設定することを特徴とする。
【0021】
本発明のオーディオ信号再生装置は、入力されたデジタル音声信号のゲイン調整を行うデジタルゲイン設定部と、該デジタルゲイン設定部でゲイン調整されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/Aコンバータと、該変換されたアナログ音声信号のゲイン調整を行うアナログゲイン設定部と、該アナログゲイン設定部でゲイン調整されたアナログ音声信号を増幅してレシーバへ出力するレシーバ用アンプを有するオーディオ信号再生装置において、前記デジタルゲイン設定部および前記アナログゲイン設定部における各ゲインを、指定された複数の音量設定値に対して、該音量設定値が大きい程大きい値に設定するとともに、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインと前記アナログゲイン設定部における設定ゲインのゲイン配分比率を、前記音量設定値が小さい程、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインの比率を大きく設定するゲイン設定手段を備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明のプログラムは、入力されたデジタル音声信号のゲイン調整を行うデジタルゲイン設定部と、該デジタルゲイン設定部でゲイン調整されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/Aコンバータと、該変換されたアナログ音声信号のゲイン調整を行うアナログゲイン設定部と、該アナログゲイン設定部でゲイン調整されたアナログ音声信号を増幅してレシーバへ出力するレシーバ用アンプを有するオーディオ信号再生装置に備えられたコンピュータを、指定された複数の音量設定値に対して、該音量設定値が大きい程、前記デジタルゲイン設定部および前記アナログゲイン設定部の各ゲインを大きい値に設定するとともに、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインと前記アナログゲイン設定部における設定ゲインのゲイン配分比率を、前記音量設定値が小さい程、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインの比率を大きく設定する手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、例えば受話音量の切り替えが可能な携帯電話機において、受話音声の受話音量設定値毎にデジタルゲインとアナログゲインのゲイン量を共に切り替えるとともに、音量設定値毎にアナログゲインとデジタルゲインの配分比率を、音量設定値が小さい程、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインの比率が大きくなるように変えて音量調整を行う構成としたので、歪や音割れを軽減し、かつノイズを軽減することが可能となり、音質を改善した受話音声再生を提供することができる。
【0024】
また、受話音声の受話音量毎にデジタルゲインとアナログゲインを切り替えて使用することで、歪や音割れ及びノイズを軽減し、かつ、音質を改善可能な受話音声再生をスピーカ及びレシーバ特性を問わず提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の実施形態を示す受話音量調整機能付き携帯電話機の回路ブロック図である。なお、図1に示す携帯電話機の回路ブロックは、本発明と関連するブロックについて主に示しており、本発明と直接関連しない無線通信部等のブロックについては図示を省略している。
【0026】
本実施形態の受話音量調整機能付き携帯電話機において、レシーバ1は、音声やトーン信号を出力する部品であり、本実施例ではスピーカとしても代用可能となっている。CPU(Central Processing Unit)2は、メモリ6に格納された制御プログラムに従って、携帯電話機全体を制御すると共に通話・通信に関連する種々の演算処理に関係する処理・指示を行い、また、本発明と関連する機能として、着信音・音声・送話感度等の音量切り替え指示等の処理を実行する機能を有する。CPU2とメモリ6からなる構成は、メモリ6に格納された本携帯電話機の各種制御プログラムを実行するコンピュータとしての機能を有している。
【0027】
表示部3は、前記CPU2に接続されており、機能設定時の選択画面、機能の設定状況や画像などを表示する。操作部4は、前記CPU2に接続されており、発呼、通話開始・終了、メニュー、音量選択時のキー入力等の際に使用者により操作され、その操作情報はCPU2に入力される。
【0028】
DSP(Digital Signal Processor)5は、CPU2に接続されており、受送話部での音声信号処理、着信音等のメロディーデータの信号処理等を行う。メモリ6は、CPU2とDSP5に接続されており、CPU2が本携帯電話機の動作を制御するためのプログラム、およびCPU2で演算した結果や音量設定状態等の種々の機能設定状態を格納する。
【0029】
デジタルゲイン設定部7は、CPU2とDSP5に接続されており、使用者により設定された音量設定値に応じてCPU2から指示されたゲイン情報を受けて、使用するゲイン設定値を切り替え、DSP5からのデジタル音声信号を該設定したゲインに従って増幅する。D/Aコンバータ8は、デジタルゲイン設定部7に接続されており、デジタルゲイン設定部7で増幅されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0030】
アナログゲイン設定部9は、CPU2とDAコンバータ8に接続されており、使用者により設定された音量設定値に応じてCPU2から指示されたゲイン情報を受けて、使用するゲイン設定値を切り替え、D/Aコンバータ8からのアナログ信号を該設定したゲインに従って増幅する。ここで、デジタルゲイン設定部7とD/Aコンバータ8とアナログゲイン設定部9は、別々のIC、またはひとつにまとまったICのいずれの構成でもよい。
【0031】
レシーバ用アンプ部10は、アナログゲイン設定部9と接続されており、固定のゲイン値をもった音声増幅器であって、アナログゲイン設定部9から入力されたアナログ音声信号を増幅して、最終端にあるレシーバ1を駆動する。
【0032】
図2は、本実施形態の受話音量調整機能付き携帯電話機において、入力音声信号をデジタル処理とアナログ処理してレシーバへ送出する際の、デジタル処理とアナログ処理における各ゲイン配分の実施例を示す図である。
【0033】
本実施形態においても音量設定は6段階あるものとし、図では、音量設定値が1の時と音量設定値が6の時の入力及びその各々のフロアノイズレベルを表している。フロアノイズはアナログ部で主に生成されるため、アナログゲインを増分した分上がるもので、デジタルゲインでの増分では影響を受けないものである。また、上部の方に記載のある点線は最大許容振幅入力レベルを表している。
【0034】
本実施形態では、図2に示すように、あるレベルの入力信号に対して、音量設定値が大きくなるにしたがって、デジタルゲイン設定部7でのゲインを上げて信号レベルを上げ、次のアナログゲイン設定部9でもデジタルゲイン設定部7と同様に音量設定値に応じてゲインを上げて信号レベルを上げるが、その際、デジタルゲイン設定部7における設定ゲインとアナログゲイン設定部9における設定ゲインのゲイン配分比率を、設定音量値が小さい程、デジタルゲイン設定部8における設定ゲインの比率が大きくなるように設定する。
【0035】
例えば図2(b)に示すように、設定音量値が最も小さい1(35dB)の場合には、デジタルゲイン設定部7におけるゲインとアナログゲイン設定部9におけるゲインの比率は17dB対2dBに設定され、設定音量値が最も大きい6(60dB)の場合には、デジタルゲイン設定部7におけるゲインとアナログゲイン設定部9におけるゲインの比率は27dB対17dBに設定される。最後にレシーバ用アンプ部10で固定値分(16dB)レベルを上げる。なお、図2(b)に示す数値は本発明を説明するための便宜的数値であり、図2(b)に示す数値によって本発明を限定するものではない。
【0036】
ここで、フロアノイズについてみると、フロアノイズはアナログゲインで上げた分フロアノイズも上がることから、本実施形態における設定音量値6の時のS/Nは図3における設定音量値6の場合とほぼ同等となり、図4における設定音量値6の時のフロアノイズより小さく抑えることが出来る。一方、設定音量値1の場合には、図3に示す例ではアナログゲイン部で32dB増幅しているのに対して、本実施形態ではアナログゲイン部は18dBのゲインに抑えられているので、図3に示す例よりはS/Nを改善することができる。
【0037】
一方、デジタル部でのダイナミックレンジは、設定音量値6においては、図3における設定音量値6の場合とほぼ同等のダイナミックレンジが確保でき、図5における設定音量値6の時のようにダイナミックレンジが狭くなることはない。また、設定音量値1の場合のダイナミックレンジは、図3における設定音量値1の場合のダイナミックレンジよりは狭くなるが、設定音量値6の場合のダイナミックレンジよりは広く確保されていることから、問題ないと言える。
【0038】
このように本実施形態では、デジタルゲイン設定部とアナログゲイン設定部を備えた携帯電話機のスピーカ及びレシーバ受話音声再生において、レシーバへの入力信号を音量設定値毎にアナログゲインとデジタルゲインの配分を変更して入力信号を制御することで歪、音割れ及び雑音(フロアノイズ)を軽減し、音質向上が可能となる。
【0039】
次に、本実施形態の携帯電話機の動作について、図1〜図2を参照して詳細に説明する。
【0040】
まず機能として、受話音量設定値が6段階あるものとし、受話音量の選択を実施する。メモリ6には、図2(b)に示すような、音量設定値と各ゲイン部における設定ゲイン値がテーブルとして格納されている。
【0041】
使用者は、操作部4を操作して表示部5に受話音量を表示させる。次に、表示された受話音量を見ながら操作部4を操作し、受話音量を例えば6に設定する。CPU2はメモリ6に格納されている上記テーブルを参照することにより受話音量6の情報を入手し、デジタルゲイン設定部7とアナログゲイン設定部9に使用するゲイン設定値として、27dBと17dBの指示を出す。指示を出されたデジタルゲイン設定部7とアナログゲイン設定部9はそれを受けて使用するゲイン設定値を、個々に切り替え設定する。この状態がメモリ6で保持される。
【0042】
ここで、実際携帯電話機で通話をした時、ある音声のデジタル信号がDSP5内で処理され、デジタルゲイン設定部7に入力される。デジタルゲイン設定部7に入力されたデジタル信号は、受話音量6が設定されているので、デジタルゲイン設定部7で受話音量6のゲイン値(27dB)で増幅され、D/Aコンバータ8に入力される。デジタルゲイン設定部7で増幅されたデジタル信号はD/Aコンバータ8でアナログ音声信号に変換され、アナログゲイン設定部9に入力される。
【0043】
アナログゲイン設定部9に入力されたアナログ音声信号は、受話音量6が設定されているので、アナログゲイン設定部9において受話音量6のゲイン値(17dB)で増幅され、レシーバ用アンプ部10に入力される。レシーバ用アンプ部10に入力されたアナログ音声信号は、レシーバ用アンプ部10で固定ゲイン(16dB)増幅された後、レシーバ1に入力され、レシーバ1から音声として出力される。
【0044】
通話者が、操作部4を操作して受話音量の設定値を音量1に変更した時には、前述と同様にしてデジタルゲイン設定部7とアナログゲイン設定部9で設定した音量1のゲイン値、例えば17dBと2dBに切り替わり、このようなゲイン値で増幅された音声信号が、レシーバ1から音量1のレベルで再生される。
【0045】
このように本実施形態では、あるレベルの入力信号に対して、デジタルゲイン設定部7で音量設定値に応じて、レベルを上げ、次のアナログゲイン設定部9でもデジタルゲイン設定部7と同様に音量設定値に応じて、レベルを上げるが、その際、設定音量値が小さくなる程、デジタルゲイン設定部7よりアナログゲイン設定部9のゲインを少なくするように音量設定値毎に調整を行い、音量1の時はアナログゲイン設定部9が最小になるように設定しているので、最大音量値から最小音量値に亘ってS/Nを改善し、かつ、デジタル部での十分なダイナミックレンジを確保することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、携帯電話機における受話音声の例について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、スピーカで音声再生や音楽再生を行う同様構成のオーディオ信号再生装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態を示す受話音量調整機能付き携帯電話機の回路ブロック図である。
【図2】本実施形態の受話音量調整機能付き携帯電話機における音声信号をデジタル処理とアナログ処理する際の各ゲイン配分の例を示す図である。
【図3】音声信号をデジタル処理とアナログ処理する際の従来のモデルにおける各ゲイン配分の例を示す図である。
【図4】音声信号をデジタル処理とアナログ処理する際の従来のモデルにおける各ゲイン配分の例を示す図である。
【図5】音声信号をデジタル処理とアナログ処理する際の従来のモデルにおける各ゲイン配分の例を示す図である。
【図6】音声信号をデジタル処理とアナログ処理する際の従来のモデルにおける各ゲイン配分の例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 レシーバ
2 CPU
3 表示部
4 操作部
5 DSP
6 メモリ
7 デジタルゲイン設定部
8 D/Aコンバータ
9 アナログゲイン設定部
10 レシーバ用アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデジタル音声信号のゲイン調整を行うデジタルゲイン設定部と、該デジタルゲイン設定部でゲイン調整されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/Aコンバータと、該変換されたアナログ音声信号のゲイン調整を行うアナログゲイン設定部と、該アナログゲイン設定部でゲイン調整されたアナログ音声信号を増幅してレシーバへ出力するレシーバ用アンプを有するオーディオ信号再生装置における音量調整方法であって、
ゲイン設定手段が、前記デジタルゲイン設定部および前記アナログゲイン設定部における各ゲインを、指定された複数の音量設定値に対して、該音量設定値が大きい程大きい値に設定するとともに、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインと前記アナログゲイン設定部における設定ゲインのゲイン配分比率を、前記音量設定値が小さい程、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインの比率を大きく設定することを特徴とする音量調整方法。
【請求項2】
入力されたデジタル音声信号のゲイン調整を行うデジタルゲイン設定部と、該デジタルゲイン設定部でゲイン調整されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/Aコンバータと、該変換されたアナログ音声信号のゲイン調整を行うアナログゲイン設定部と、該アナログゲイン設定部でゲイン調整されたアナログ音声信号を増幅してレシーバへ出力するレシーバ用アンプを有するオーディオ信号再生装置において、
前記デジタルゲイン設定部および前記アナログゲイン設定部における各ゲインを、指定された複数の音量設定値に対して、該音量設定値が大きい程大きい値に設定するとともに、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインと前記アナログゲイン設定部における設定ゲインのゲイン配分比率を、前記音量設定値が小さい程、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインの比率を大きく設定するゲイン設定手段を備えていることを特徴とするオーディオ信号再生装置。
【請求項3】
請求項1に記載のオーディオ信号再生装置を供えていることを特徴とする受話音量設定機能付き携帯通信端末。
【請求項4】
入力されたデジタル音声信号のゲイン調整を行うデジタルゲイン設定部と、該デジタルゲイン設定部でゲイン調整されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/Aコンバータと、該変換されたアナログ音声信号のゲイン調整を行うアナログゲイン設定部と、該アナログゲイン設定部でゲイン調整されたアナログ音声信号を増幅してレシーバへ出力するレシーバ用アンプを有するオーディオ信号再生装置に備えられたコンピュータを、
指定された複数の音量設定値に対して、該音量設定値が大きい程、前記デジタルゲイン設定部および前記アナログゲイン設定部の各ゲインを大きい値に設定するとともに、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインと前記アナログゲイン設定部における設定ゲインのゲイン配分比率を、前記音量設定値が小さい程、前記デジタルゲイン設定部における設定ゲインの比率を大きく設定する手段として機能させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−141571(P2010−141571A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315626(P2008−315626)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】