説明

音響センサ装置,音響解析診断装置および音響センサの製造方法

【課題】 比較的簡単な構成で、リアルタイムで測定対象からの音を解析診断するための音響センサ装置,音響解析診断装置および音響センサの製造方法を提供する。
【解決手段】 データ収集・送信回路30は、複数の音響センサ11〜15のそれぞれが異なる音に共振することにより、全帯域内の異なる周波数帯域ごとの音のみを検出し、データ変換回路21〜25でデータに変換し、制御部31によりデータ送信回路32からアンテナ33を介して送信する。データ受信・解析診断回路40は、複数の音響センサ11〜15に対応するデータを受信して、予め記憶している音圧と受信したデータによる音圧とを比較して、測定対象が正常であるか、あるいは異常であるかを判断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響センサ装置,音響解析診断装置および音響センサの製造方法に関し、例えば、音の振動に応じて振動する共振子を用いた音響センサ装置,音響解析診断装置および音響センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機器や設備の異常の有無を判断するために、種々の設備診断方法が提案されている。このような設備診断方法においては、重大事故に至る前の、例えば回転機械におけるベアリングに傷が入ったり、あるいは可動部分の磨耗が進んできたといった程度の、未だ十分に稼動を続けることができるが、そのままにしておくと将来重大故障につながるおそれがある異常を検出対象とするものである。
【0003】
例えば、「音・診断による診断工学」日本音響学界編・コロナ社(非特許文献1)には、エンジンの異打音を診断して解析するために、指向性マイクロホンを用いて音を採取し、その信号音の診断を行うことが記載されている。
【0004】
特開2004−20584号公報(特許文献1)には、診断対象の状態を反映した物理量を示す信号をセンサで得て、その信号を複数の周波数帯域ごとの帯域信号に分割し、得られた複数の帯域信号のそれぞれについて設定された各判定基準に基づいて、診断対象の異常の有無を各周波数帯域ごとに判定するようにした異常監視装置および異常監視プログラムについて記載されている。
【非特許文献1】「音・診断による診断工学」日本音響学界編・コロナ社
【特許文献1】特開2004−20584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載されているマイクロホンを用いた診断方法では、測定環境下で、目的とする音以外に騒音がある場合、騒音の音圧が大きいとその騒音によってマイクロホンの出力が飽和状態になり、目的とする音を捉えることができない。マイクロホンは、検出可能な帯域のすべてで同じ感度を有するように設計されているからである。
【0006】
特許文献1に記載されている装置では、センサの出力信号を複数の周波数帯域ごとの帯域信号に分割するために、プログラマブル帯域通過フィルタを用いている。プログラム帯域通過フィルタでは、帯域の分割数をnとすると、まず第1の周波数帯域についての抽出を行い、抽出した第1の帯域信号についての異常判定処理が終了した後、第2番目の周波数帯域についての抽出処理を行うというようにn回の抽出および異常判定処理を行う必要がある。この処理はプログラムに基づくソフト処理であり、複雑な演算を行うために処理時間がかかるという問題がある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、比較的簡単な構成でリアルタイムで測定対象からの音を解析するための音響センサ装置、音響解析診断装置および音響センサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、測定対象から出る幅広い帯域の音のうちの少なくとも所定の帯域の音を検出する音響センサ装置であって、異なる音に応じて共振する複数の第1の振動子を含み、帯域内の第1の帯域の音を検出し、測定対象の第1の特徴音を抽出する第1の音響検知素子と、異なる音に応じて共振する複数の第2の振動子を含み、帯域内の第1の帯域とは異なる第2の帯域の音を検出し、測定対象の第2の特徴音を抽出する第2の音響検知素子とを備える。
【0009】
広い帯域の音を1つの素子で検出するのに必要な素子は製造に困難を伴うが、第1の音響検知素子と、第2の音響検知素子とに分けて、測定対象から出る第1および第2の所定の帯域の音を検出するようにしたので、素子を製造する上の困難性を解消できる。
【0010】
好ましくは、第1の音響検知素子は、測定対象から出る幅広い全帯域の音のうちの所定の帯域の音を検出し、第2の音響検知素子は、測定対象から出る幅広い全帯域の音のうちの残りの帯域の音を検出する。これにより全帯域の音を検出して、測定対象の状態を解析することができる。
【0011】
好ましくは、第1の音響検知素子は、測定対象から出る幅広い全帯域の音のうちの所定の帯域の音を検出し、第2の音響検知素子は、測定対象から出る幅広い全帯域の音のうちの所定の帯域の内の一部の帯域の音と、残りの帯域の音とを検出する。
【0012】
好ましくは、第1の特徴音は、測定対象が正常であることを示し、第2の特徴音は、測定対象が異常であることを示している。これにより測定対象の正常,異常を診断できる。
【0013】
この発明の他の局面は、測定対象から出る幅広い帯域の音のうちの少なくとも所定の帯域の音を検出し、解析して診断する音響診断解析装置であって、それぞれが異なる音に応じて共振する振動子を含み、幅広い帯域内に含まれ、かつ異なる周波数帯域ごとの音のみを検出する複数の音響検知素子と、複数の音響検知素子から出力されるそれぞれが異なる周波数帯域の音響信号を解析して音の分布を診断し、測定対象の特徴を解析する解析診断部とを備える。
【0014】
この発明では、測定対象が複数の故障モードを持つ装置設備が複数台ある工場である場合に、各故障モードを診断できる。
【0015】
好ましくは、解析診断部は、測定対象の正常,異常を特徴として解析する。
【0016】
好ましくは、解析診断部は、異常検知を解析したことに応じて、測定対象の保守点検の要否を判断する。この解析結果に応じて、保守の要否を的確に判断できる。
【0017】
この発明のさらに他の局面は、測定対象の音響解析に使用する音響センサの製造方法であって、それぞれが異なる音に応じて共振する振動子を含む複数の音響検知素子を準備する工程と、複数の音響検知素子を測定対象の近辺に設置し、目的に応じて測定対象のデータを収集する工程と、収集したデータに基づいて、複数の音響検知素子のうちの所定の帯域の音に共振する音響検知素子の組合せを決定する工程とを備える。この組合せにより、測定対象の状態に応じた監視と診断を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、測定対象の第1の特徴音を抽出する第1の音響検知素子と、測定対象の第2の特徴音を抽出する第2の音響検知素子とを備えることで、測定対象の特徴音に応じて、比較的簡単な構成でリアルタイムで測定対象からの音を解析できる。
【0019】
また、それぞれが異なる音に共振することにより、幅広い帯域内に含まれ、かつ異なる周波数帯域ごとの音のみを検出し、複数の音響検知素子から出力されるそれぞれが異なる周波数帯域の音響信号を解析して音の分布を診断し、測定対象の特徴を解析することにより、リアルタイムで測定対象からの音を解析できる。
【0020】
さらに、それぞれが異なる音に共振する複数の音響検知素子を準備し、複数の音響検知素子を測定対象の近辺に設置し、目的に応じて測定対象のデータを収集し、収集したデータに基づいて、複数の音響検知素子のうちの所定の帯域の音に共振する音響検知素子の組合せを決定することにより、リアルタイムで測定対象からの音を解析する音響検知素子を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、この発明の一実施形態における音響センサ装置の一例の平面図である。図1において、音響検知素子としての音響センサ装置1は、半導体シリコン基板10上に形成されていて、ダイヤフラム2と、横断ビーム3と、終止板4と、複数の共振ビーム5とを含む。
【0022】
ダイヤフラム2は入力音を受けて振動するように薄い板状に形成されている。横断ビーム3はダイヤフラム2と終止板4との間を結合するように形成されており、ダイヤフラム2側の幅が広く、そこから終止板4側に向うに従って徐々に細くなり、終止板4端で最も細くなっている。
【0023】
複数の共振ビーム5は、それぞれ特定の周波数に共振するように長さが調整されており、横断ビーム3から両側に延びるように片持ち支持されている。この音響センサ装置1は、同じ共振周波数を有する共振ビーム5,5を1対ずつ備えたフィッシュボーン構造になっている。終止板4はダイヤフラム2から横断ビーム3を介して伝搬してきた入力音による振動がダイヤフラム2側に戻らないように吸収するために設けられている。なお、ダイヤフラム2と、横断ビーム3と、終止板4と、複数の共振ビーム5の下部は空間になっており、複数の共振ビーム5の周囲は開口されている。
【0024】
入力音による振動によりダイヤフラム2が垂直に振動し、その振動が横断ビーム3を水平方向に伝搬し、複数の共振ビーム5のうち対応する振動子が垂直に振動する。共振ビーム5の長さまたは厚さを変えることにより、それぞれの共振周波数を所望の値に設定することができる。各共振ビーム5には、横断ビーム3側に図示しないピエゾ抵抗が配置されており、ピエゾ抵抗の抵抗値の変化を例えばホィートストンブリッジの出力として取り出すことができる。
【0025】
図2は図1に示した音響センサ装置における複数の共振ビームの周波数応答特性を示す図であり、図3は入出力特性を示す図であり、図4は環境ノイズ耐性を示す図である。
【0026】
図1に示した音響センサ装置1の複数の共振ビーム5は、図2に示すように、例えば1.2kHz〜2.5kHzの共振周波数で共振するように長さを調整することで、それぞれの共振周波数に選択的に応答させることができる。そして、共振ビーム5間の相互作用により、共振周波数間の周波数にも応答させることができる。
【0027】
また、ダイヤフラム2が図3に示す横軸に示す値で振幅したとき、複数の共振ビーム5は図3の縦軸に示す値で振幅するので、出力を約14倍に増幅することができる。
【0028】
さらに、図1に示した音響センサ装置1は、目的とする音以外に妨害音が入力されても、目的とする音の信号を検出するのが可能になる。図4に示す波形aは目的音(2900Hz,0.1Pa)入力時の出力波形を示しており、波形bは妨害音(500Hz,10Pa)入力時の出力波形を示し、波形cは目的音と妨害音を同時に入力時の出力波形を示している。この図4から騒音である妨害音が入力されても、妨害音の1/100の音圧の目的音を検出するのが可能になる。
【0029】
図5はこの発明の一実施形態における音響解析診断装置のブロック図であり、(A)はデータ収集・送信回路を示し、(B)はデータ受信・解析診断回路を示す。
【0030】
図5(A)において、データ収集・送信回路30は、音響センサ11〜15と、データ変換回路21〜25と、制御部31と、データ送信回路32と、アンテナ33とを含む。音響センサ11〜15は、測定対象から出る幅広い帯域の音の全帯域を検出するものであり、図1に示した音響センサ装置1が用いられる。
【0031】
音響センサ11は、例えば500Hz〜1kHz、音響センサ12は900Hz〜1.8kHz、音響センサ13は1.7kHz〜3.4kHz、音響センサ14は3.3kHz〜6.8kHz、音響センサ15は6.7kHz〜10kHzの音に共振するように、音響センサ11〜15のそれぞれに含まれている共振ビームが構成されている。これにより、音響センサ11〜15によって、例えば、600Hz〜10kHzの帯域の音を検出することができる。
【0032】
1つの音響センサ装置1で、広い帯域の音を検出しようとすると、横断ビームが長くなり、共振ビーム5の製造に困難を伴うが、例えば、5個の音響センサ11〜15で各帯域を分けて検出することで、共振ビーム5を比較的容易に製造でき、不要な帯域の振動子を省略できる。
【0033】
なお、測定対象に応じて、帯域を任意に設定することができ、測定対象から出力される、例えば600Hz〜100kHzの全帯域の音を検出できるように音響センサの数を増やしてもよく、あるいは測定対象から出力される全帯域の音のうち、部分的にある周波数帯域のみを検出できるようにしてもよい。さらに、1つの音響センサで全帯域のうちのある帯域の音を検出し、他の音響センサで残りの帯域の音を検出するようにしてもよい。
【0034】
各音響センサ11〜15の出力は、データ変換回路21〜25に与えられる。データ変換回路21〜25は、音響センサ11〜15から出力される周波数帯域の音の信号をA/D変換して、音圧強度分布のデータとして制御部31に出力する。制御部31はデータ変換回路21〜25から与えられるデータを時分割的に順次データ送信回路32に出力し、データ送信回路32はアンテナ33から各データを無線あるいは光などで送信する。
【0035】
図5(B)に示すデータ受信・解析診断回路40は、アンテナ41と、データ受信回路42と、解析診断回路43と、表示部44とを含む。データ受信回路42は、データ収集・送信回路30から送信されてきた各音響センサ11〜15の各データを、アンテナ41を介して受信し、解析診断回路43に与える。
【0036】
解析診断回路43は、診断の目的に応じて予め音圧強度分布をデータとして記憶しており、その音圧強度分布と、データとして与えられた音圧強度とを比較して診断目的の特徴抽出を行う。すなわち、診断の目的が、測定対象が正常状態の検出あるいは異常状態の検出であれば、測定対象が正常に動作しているときあるいは異常であるときの音の音圧分布を特徴音として記憶しておく。測定対象が異常であるときは、正常状態のときとは異なる音の音圧分布が現れているので、それぞれに応じた音の音圧強度を特徴音として予め記憶している。なお、異常状態は、測定対象が故障している状態と、測定対象の故障を予知する状態を含むものとする。
【0037】
解析診断回路43は、各音響センサ11〜15に対応したデータが与えられると、それぞれの音圧強度と予め記憶している音圧強度とを比較し、音響センサ11〜15のうちの最適な組合せを選択する。表示部44は選択された音響センサの組合せを表示する。
【0038】
図6は、この発明の一実施形態における音響解析診断装置の動作を説明するためのフローチャートであり、(A)はデータ収集・送信回路30の動作を示し、(B)はデータ受信・解析診断回路40の動作を示す。
【0039】
次に、図6を参照して、この発明の一実施形態の音響解析診断装置で測定対象の正常または異常を診断する動作について説明する。音響センサ11〜15は、図示しない測定対象の近辺に配置されており、測定対象を動作させると、音響センサ11〜15では、測定対象から発せられる音に応じて図1に示したダイヤフラム2が振動し、この振動が横断ビーム3を介して複数の共振ビーム5に伝搬される。複数の共振ビーム5のうち測定対象の音に対応する振動子が垂直に振動する。この振動によりピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化し、電圧の変化として取出される。
【0040】
各音響センサ11〜15からそれぞれに対応する音の振動に応じた信号が出力され、データ変換回路21〜25に与えられて、A/D変換され音圧強度を示すデータとして、制御部31に与えられる。制御部31は、図6(A)に示すステップ(図示ではSPと略称する)SP1において、音響センサ11〜15からの音圧強度を示すデータが入力されているか否かを判別し、入力されていれば、ステップSP2において、データ送信回路32からアンテナ33を介して、各データを順次送信させる。
【0041】
図5(B)に示すデータ受信・解析診断回路40のデータ受信回路42は、図6(B)に示すステップSP11において、音響センサ11〜15の全てのデータを受信したか否かを判別する。受信していれば、解析診断回路43は、ステップSP12において、各音響センサ11〜15のデータに基づいて、各音の音圧強度から診断目的の特徴信号を抽出し、ステップSP13において、その特徴信号を検出するための少なくとも1個以上の複数個の組合せによる音響センサを診断対象設備の信号検出デバイスとして決定する。そして、ステップSP14において、そのデバイスである音響センサ11〜15のうちの該当するものを表示する。
【0042】
信号検出デバイスとして決定される複数の音響センサ11〜15の組合せは、診断の目的によって選択される。例えば、診断の目的が、測定対象が正常状態であるか、異常状態として故障予知の検出であるか、故障の検出であるかなどによって決められる。正常状態であるか、故障予知であるか、故障状態であるかに応じて測定対象から出る音の分布が異なっているので、それぞれの音の分布を検出できるように音響センサの組合せが決定される。例えば、正常状態を検知するために音響センサ12,13,15の組合せを選択したり、故障予知の検出では音響センサ11,12,13の組合せを選択したり、故障の検出では音響センサ13,14,15の組合せを選択する。
【0043】
上述のごとく、この実施形態によれば、複数の音響センサ11〜15のそれぞれが異なる音に共振することにより、全帯域内の異なる周波数帯域ごとの音のみを検出し、複数の音響センサ11〜15から出力されるそれぞれが異なる周波数帯域の音響信号を解析して音の分布を診断することにより、それぞれの特徴に応じた音響センサの組合せを選択することで、比較的簡単な構成でありながら、リアルタイムで測定対象からの音を解析診断できる。
【0044】
しかも、音響センサ11〜15として、共振ビーム5,5を1対ずつ備えたフィッシュボーン構造のセンサを用いているので、ソフト処理などで周波数分解をする必要がなく、リアルタイムに周波数分解を行うことができる。さらに、各周波数帯域への分解に要する計算時間を削減できるので処理時間を短縮できる。
【0045】
図7は、この発明の他の実施形態における音響解析診断装置を用いて、全帯域で測定対象音を解析診断する例を示す図であり、図8は図7に示した例の音響解析診断装置で最適な音響センサのみを配置した例を示す図である。図7および図8の各(A)はデータ収集・送信回路を示し、(B)はデータ受信・解析診断回路を示す。
【0046】
図7(A)に示すように測定対象50の近辺に音響センサ11〜15が配置される。データ収集・送信回路30aは、図5(A)に示したデータ収集・送信回路30から音響センサ11〜15を除いて構成されており、データ受信・解析診断回路40は、図6(B)に示したフローチャートに基づいて、全帯域で測定対象50からの音を解析診断する。そして、例えば、正常状態を検知するために、音響センサ12,13,15の組合せを選択する。選択された音響センサ12,13,15を配置したのが図8(A)である。
【0047】
図8(B)に示したデータ受信・解析診断回路40により、測定対象50からの音のデータを収集して測定対象の正常状態であるかあるいは異常状態であるかを解析診断し、測定対象50の保守要否判断などの状態監視を行う。なお、図5で説明したように、故障予知を行う場合は、音響センサ11,12,13を配置し、故障検知を行う場合は、音響センサ13,14,15を配置すればよい。
【0048】
図9は、この発明の他の実施形態における音響解析診断装置を示し、(A)は工場内に音響センサを配置した例を示す概念図であり、(B)はデータ受信・解析診断回路を示す。
る。図9(A)において工場60内には、図示しないが、複数の故障モードを有する装置設備が複数台設置されている。このために工場内では複数の異常音である騒音が発生している。そこで、この実施形態では、工場60内で個々の異常音を検出するために複数の音響センサ11〜15が配置される。
【0049】
なお、図9(A)では、図示を省略しているが、図7に示したデータ収集・送信回路30aに各音響センサ11〜15の出力が与えられている。図9(B)に示すデータ受信・解析診断回路40は、工場60の外に配置されている。データ受信・解析診断回路40は、音響センサ11〜15が個々の音を検出するので、各音響センサ11〜15のデータに基づいて、装置設備が正常であるかあるいは異常であり、保守要否判断などの状態監視を行う。
【0050】
図10は、この発明のさらに他の実施形態における音響解析診断装置を示し、(A)は固有の装置に音響センサを配置した例を示す図であり、(B)はデータ受信・解析診断回路を示す。
【0051】
図10(A)に示すように、工場などにおいて固有の装置71〜74が配置されており、それぞれの装置71〜74が騒音を発している。各装置71〜74に近接して音響センサ11〜14が配置されている。データ受信・解析診断回路40は、図示しないデータ収集・送信回路から各音響センサ11〜14に対応して与えられるデータに基づいて、各装置71〜74の固有の音を検出することで、正常,異常の判断や特徴抽出などの診断を行うことができる。
【0052】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明の音響センサ装置,音響解析診断装置および音響センサの製造方法は、工場内の機器や装置設備の異常の有無を判断するのに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の一実施形態における音響センサ装置の一例の平面図である。
【図2】図1に示した音響センサ装置における複数の共振ビームの周波数応答特性を示す図である。
【図3】音響センサ装置における入出力特性を示す図である。
【図4】音響センサ装置における環境ノイズ耐性を示す図である。
【図5】この発明の一実施形態における音響解析診断装置のブロック図である。
【図6】この発明の一実施形態における音響解析診断装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の音響解析診断装置を用いて、全帯域で測定対象音を解析診断する例を示す図である。
【図8】図7に示した例の音響解析診断装置で最適な音響センサのみを配置した例を示す図である。
【図9】工場内に音響センサを配置した例を示す概念図である。
【図10】固有の装置に音響センサを配置した例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 音響センサ装置、2 ダイヤフラム、3 横断ビーム、4 終止板、5 共振ビーム、11〜15 音響センサ、21〜25 データ変換回路、30,30a データ収集・送信回路、31 制御部、32 データ送信回路、33,41 アンテナ、40 データ受信・解析診断回路、42 データ受信回路、43 解析診断回路、44 表示部、50測定対象、60 工場、71〜74 装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象から出る幅広い帯域の音のうちの少なくとも所定の帯域の音を検出する音響センサ装置であって、
異なる音に応じて共振する複数の第1の振動子を含み、前記帯域内の第1の帯域の音を検出し、前記測定対象の第1の特徴音を抽出する第1の音響検知素子と、
異なる音に応じて共振する複数の第2の振動子を含み、前記帯域内の前記第1の帯域とは異なる第2の帯域の音を検出し、前記測定対象の第2の特徴音を抽出する第2の音響検知素子とを備える、音響センサ装置。
【請求項2】
前記第1の音響検知素子は、前記測定対象から出る幅広い全帯域の音のうちの所定の帯域の音を検出し、前記第2の音響検知素子は、前記測定対象から出る幅広い全帯域の音のうちの残りの帯域の音を検出する、請求項1に記載の音響センサ装置。
【請求項3】
前記第1の音響検知素子は、前記測定対象から出る幅広い全帯域の音のうちの所定の帯域の音を検出し、前記第2の音響検知素子は、前記測定対象から出る幅広い全帯域の音のうちの前記所定の帯域の内の一部の帯域の音と、残りの帯域の音とを検出する、請求項1に記載の音響センサ装置。
【請求項4】
前記第1の特徴音は、前記測定対象が正常であることを示し、前記第2の特徴音は、前記測定対象が異常であることを示している、請求項1から3のいずれかに記載の音響センサ装置。
【請求項5】
測定対象から出る幅広い帯域の音のうちの少なくとも所定の帯域の音を検出し、解析して診断する音響診断解析装置であって、
それぞれが異なる音に応じて共振する振動子を含み、前記幅広い帯域内に含まれ、かつ異なる周波数帯域ごとの音のみを検出する複数の音響検知素子と、
前記複数の音響検知素子から出力されるそれぞれが異なる周波数帯域の音響信号を解析して音の分布を診断し、前記測定対象の特徴を解析する解析診断部とを備える、音響解析診断装置。
【請求項6】
前記解析診断部は、前記測定対象の正常,異常を前記特徴として解析する、請求項5に記載の音響解析診断装置。
【請求項7】
前記解析診断部は、前記異常検知を解析したことに応じて、前記測定対象の保守点検の要否を判断する、請求項4から6のいずれかに記載の音響解析診断装置。
【請求項8】
測定対象の音響解析に使用する音響センサの製造方法であって、
異なる音に応じて共振する振動子を含む複数の音響検知素子を準備する工程と、
前記複数の音響検知素子を測定対象の近辺に設置し、目的に応じて前記測定対象のデータを収集する工程と、
前記収集したデータに基づいて、前記複数の音響検知素子のうちの所定の帯域の音に共振する音響検知素子の組合せを決定する工程とを備える、音響センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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