説明

音響画像生成システム、音響画像生成方法、および音響画像生成プログラム

【課題】検知した水中音波に基づき水中目標物の正確な位置を示す音響画像を生成するシステムを提供する。
【解決手段】水中の反射音を捕捉する音響センサ部5とこの反射音に基づき水中の物体の位置を示す音響画像を生成する画像データ生成部とを備え、反響音の水平方向の指向性を示すビームを合成する指向性合成部10と、反射音を捕捉した受信時刻と各反響音ビームの指向性に基づき船舶からの方位および距離として特定される各地点における反響音のレベルを導出する信号強度導出部11と、各位置情報に対応して導出した異なる反響音のレベルを積分して得た値に色情報を割り当てて表示する表示器14を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソナーを利用して水中の目標物の検出を行う水中目標物検出装置に関し、特に、ソナーにより検知した水中音波に基づき目標物の位置を示す音響画像を生成する音響画像生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶にとって、潜水艦等の水中航走体は大きな脅威である。通常、潜水艦等の水中航走体は航走する際に音波を放出することから、その音波を検出することにより、水中航走体を検出することができた。
【0003】
しかしながら、近年は大陸棚などの浅い海の海底に水中航走体が鎮座して、船舶を待ち伏せする戦術がとられるようになった。この場合、水中航走体から音波が放射されないため、海底に鎮座した水中航走体を検出することは困難となる。
【0004】
また、音波発信を行い水中航走体からの反響音に基づき水中航走体を検出するソナーを利用した場合でも、海底に鎮座した水中航走体からの反響音と海底からの反響音とを区別することが困難であるため、海底に鎮座した水中航走体の位置を正確に検知することができないという不都合がある。
【0005】
これに対する関連技術として、水上艦などの船体、水面に浮遊している潜水艦などの浮遊物からの反射信号が海面における波の影響として生じる歪みを軽減することにより、浮遊物の位置を正確に探索するシステムが開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、この関連技術として、ソナーを搭載した船が方位を変えたとき、コンパスの変更量に比例した出力信号を用いて、メモリ装置の読み出し位置を船の走行方向の変更量に比例して変化させることにより、現在の反射信号とメモリ装置に記憶された1画面前の反射信号の読み出し位置を一致させて表示する手法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−256162号公報
【特許文献2】特開昭61−119973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、上記特許文献1は、水面の浮遊物を検知することを目的としたシステムであり、海面における波の影響により発生する反射信号のフラクチュエーションの影響を軽減することにより浮遊物の画像を生成するものであり、船体が全て水中にある水中航走体、特に海底に鎮座した水中航走体を正確に検知することは想定されていない。
【0009】
また、上記特許文献2では、上述のように、海底からの反響音と海底に鎮座した水中航走体からの反響音とを区別することが困難であるため水中航走体の位置を正確に検知することができないという不都合がある。
【0010】
[発明の目的]
本発明は、上記関連技術の有する不都合を改善し、海底に鎮座した水中航走体の位置を正確に示すソナー画像を生成することが可能な音響画像生成システム、音響画像生成方法、および音響画像生成プログラムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る音響画像生成システムは、水上を航走する船舶に設けられ、水中に鎮座する物体の検出用に送出した音信号の反射音を捕捉する音響センサ部と、前記反射音に基づき前記物体の位置を示す音響画像を生成する画像データ生成部とを備えた音響画像生成システムであって、前記反射音に基づき当該反射音の水平方向の指向性を示す反射音ビームを合成する指向性ビーム合成部と、前記反射音を捕捉した受信時刻と前記各反射音ビームの指向性に基づき前記船舶からの方位および距離として特定される各地点の位置情報に対応した反射音のレベルを導出する反射音レベル導出部とを備え、前記画像データ生成部は、共通の位置情報に対応して導出した異なる反射音のレベルを積分して得た値に対応する色情報を決定し、この色情報からなる前記音響画像を表示する反射音レベル積分表示手段とを備えたことを特徴とすることを特徴としている。
【0012】
また、本発明にかかる音響画像生成方法は、水上を航走する船舶に設けられた音響画像生成システムが水中に鎮座する物体の検出用に送出した音信号の反射音を捕捉すると共に、この反射音に基づき前記物体の位置を示す音響画像を生成する音響画像生成方法であって、前記捕捉した反射音に基づき当該反射音の水平方向の指向性を示すビームを合成し、前記反射音を捕捉した受信時刻と前記各反射音ビームの指向性とに基づいて、前記船舶からの方位および距離として特定される各地点における反射音のレベルを導出し、前記各位置情報に対応して導出した異なる反射音のレベルを積分して得た値に基づき、前記音響画像の色情報を決定して表示する構成とし、これら動作手順を前記音響画像生成システムが実行することを特徴としている。
【0013】
また、本発明にかかる音響画像生成プログラムは、水上を航走する船舶に設けられた音響画像生成システムが水中に鎮座する物体の検出用に送出した音信号の反射音を捕捉すると共に、この反射音に基づき前記物体の位置を示す音響画像を生成するための音響画像生成プログラムであって、前記捕捉した反射音に基づき当該反射音の水平方向の指向性を示すビームを合成する指向性ビーム合成機能と、前記反射音を捕捉した受信時刻と前記各反射音ビームの指向性とに基づいて、前記船舶からの方位および距離として特定される各地点における反射音のレベルを導出する反射音レベル導出機能と、前記各位置情報に対応して導出した異なる反射音のレベルを積分して得た値に基づき、前記音響画像の色情報を決定して表示する処理を行う反射音レベル積分表示機能とを、前記音響画像生成システムのコンピュータにより実現することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、水中の反射音に基づき生成した音響画像における反射音のレベルを積分表示する構成としたことにより、海底に鎮座した物体(水中航走体)の位置を正確に示す音響画像(ソナー画像)を生成することが可能な音響画像生成システム、音響画像生成方法、および音響画像生成プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による音響画像生成システムが装備された船舶とこの音響画像生成システムにより検出される水中航走体による音波の影との位置関係を示す説明図である。
【図2】図1に開示した音響画像生成システムが装備された船舶が移動した場合に移動前と移動後それぞれで形成される水中航走体による音波の影を示す説明図である。
【図3】図1に開示した音響画像生成システムを備えた船舶の位置と検出される音波の影の位置関係を示す説明図である。
【図4】図1に開示した音響画像生成システムにおける内部構成の一例を示すブロック図である。
【図5】図1に開示した音響画像生成システムにおける音波の影と船舶との位置関係を示す表示画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
次に、本発明の実施形態について、その基本的構成内容を説明する。
【0017】
本実施形態である音響画像生成システム100は、海上を航走する船舶3に水中航走体の検出用に搭載された水中音波を利用して水中の物体を探知するソナーシステムを含み、検知した反響音(反射音に対応)に基づいて、水中の物体(水中航走体)の位置を示す音響画像を生成するシステムである。
【0018】
この音響画像生成システム100は、船舶3の船体底面に設置され(図1)探信音を放射する(探信音放射機能)と共にこの探信音に対する反響音の検出(反射音検出機能)を行う音響センサ部5と、音響センサ部5が検知した反響音に対応するアナログ信号の電圧をデジタルの数値データに変換するA/D変換部9と、音響センサ5で受信した反響音に対応する信号に基づき水平方向に指向性を持つビームを合成する指向性合成部10と、水平方向に指向性を持ったビームに基づき方位および距離毎の反響音のレベルを示すデータ(方位距離信号強度データ)を生成する方位距離信号強度導出部11と、反響音を受信したタイミングの船舶3の位置(緯度・経度)を検出する位置センサ部12と、反響音を受信したときの船舶3の位置(緯度・経度)およびその針路に基づき、方位距離信号強度データを緯度・経度毎のデータに補正する位置補正処理部13と、補正された方位距離信号強度データ(絶対位置信号強度データ)に基づき予め設定した濃淡または色彩で上記方位距離信号強度データを出力表示する表示器14を備えた構成を有する。
【0019】
一般に、図1に示すように、音響センサ部5から放射された探信音6が海底に鎮座した水中航走体4に反射した場合、水中航走体4の背後には反響音7が検出されない(または、反響音レベルが周囲より低い)領域(音波の影8)が形成される。
本実施形態では、音響センサ5が捕捉した反響音に基づき、この音波の影8の船舶3からの相対的な位置(船舶3からの方位および距離)を正確に示す音響画像を生成する。
【0020】
以下、音響画像生成システム100の構成内容について詳説する。
音響センサ部5は、上述のように、探信音6を放射する探信音放射機能と、この探信音に対する反響音7を検出する反射音検出機能を有する。
また、音響センサ部5は、検出した反響音の強度に基づき電気信号に変換する反響音電圧変換機能を備えている。
【0021】
A/D変換部9は、電気信号として音響センサ部5から送り込まれた反射音をデジタル化した反射波データに変換する(アナログ/デジタル変換機能)。
【0022】
指向性合成部10は、A/D変換部9から送り込まれた反射波データに基づき、船舶3における水平方向に指向性を持つビームを示す反響音ビームを合成する(指向性合成処理)。
尚、この反響音ビームには、音響センサ部5で捕捉された各反響音の船舶3に対する相対的な方位、および船舶3からの距離毎の反響音レベルを示すデータが含まれる。
【0023】
各反響音が船舶3に到達した受信時刻(つまり、音響センサ部5で捕捉された時刻)に基づき、方位距離信号強度として特定(導出、算出)する処理を行う。
【0024】
方位距離信号強度導出部11は、探信音を放射した時刻(探信音の放射時刻)、およびこの探信音に対する反響音を捕捉した時刻(反響音の受信時刻)を音響センサ部5から取得すると共に、指向性合成部10から送り込まれた水平方向に指向性を持った反響音ビームを解析する(反響音ビーム解析機能)。
【0025】
ここで、方位距離信号強度導出部11は、指向性合成により生成されたビームの解析結果として、船舶3からの方位(相対方位)および船舶3から距離毎の反響音の大きさ(反響音レベル)を導出する。
【0026】
具体的には、方位距離信号強度導出部11は、船舶3から反響地点までの距離(距離D)について、探信音を放射した時刻(探信音の放射時刻)、およびこの探信音に対する反響音を捕捉した時刻(反響音の受信時刻)に基づいて、次式(式1)によって導出する。
【0027】
(式1)
距離D =((探信音の放射時刻(秒))−(反響音の受信時刻(秒)))× 約1500m ÷ 2
【0028】
ここでは、水中での音波(探信音、反響音)の伝搬速度を秒速約1500m、放射時刻に対する受信時刻が遅いほど、船舶3から反射地点(反響音が生成された地点)までの距離が遠い(長い)ものとする。
【0029】
これにより、方位距離信号強度導出部11は、船舶3から探信音が到達する範囲の各地点に対応した反響音レベルとしての方位距離信号強度を導出する(信号強度導出機能)。
また、方位距離信号強度導出部11は、導出した各反響ビームに対応して導出した方位距離信号強度を予め設定された記憶部に格納するものとする。
【0030】
位置センサ部12は、GPS(全地球測位システム)を利用することにより、人工衛星が発信する電波に基づき船舶3の緯度および経度を位置情報を検知すると共に、検知した航走中の船舶3における検知した各位置情報を探信音の放射時刻、反射音の受信時刻に対応させて記憶する。
これにより、位置センサ12は、音響センサ部5が反響音を受信したタイミングの船舶3の位置(緯度・経度)を検出するものとする。
【0031】
位置補正処理部13は、反響音を受信したタイミングの船舶3の位置(緯度・経度)それぞれを示す位置情報を位置センサ部12から取得すると共に、船舶3の移動距離、移動方位に基づき反響音の方位距離信号強度データの補正を行う。
すなわち、位置補正処理部13は、方位距離信号強度導出部11から取得した方位距離信号強度データを、音響センサ部5が反響音を受信したときの船舶3の位置情報(緯度・経度)、および針路に対応させたデータ(絶対位置信号強度データ)に補正する。
【0032】
これにより、船舶3からの相対的な方位と距離に対応した方位距離信号強度データは、反響音を受信したときの船舶3の位置情報(緯度・経度)、および針路に対応させた絶対位置に対応した絶対位置信号強度データに変換される。
【0033】
また、位置補正処理部13は、上記絶対位置信号強度データそれぞれを順次表示器14に送信する。
このとき、位置補正処理部13が表示器14に対して絶対位置信号強度データを送り込む単位時間あたりの数(データ入力レート)は、船舶3の移動速度に応じて決定するものとする。
【0034】
これにより、表示器14では、例えば、船舶3の移動速度に関わらず、音波が到達する領域における各位置地点(緯度・経度)で一定の精度の絶対位置信号強度データが得られる。また、データ入力レートを一定とする設定であってもよい。
【0035】
表示器14は、位置補正処理部13から送り込まれた絶対位置信号強度データに基づき音響画像を生成し、表示画面15に出力表示する。このとき、表示器14は、共通の位置情報(緯度・経度)に対応して反響音の信号強度(信号レベル)を積分し、これにより得られた値を予め設定された濃淡または色彩として表示する(図5)。
【0036】
次に、表示機14が、図5に示すように、表示画面15上の濃色の画素領域として表示する音波の影8について、図1,2,および3に基づき説明する。
【0037】
図1では、海面1を走行中の船舶3に設置された音響センサ部5が、上述のように、探信音6を送出すると共に、この探信音6が反射した反響音(反射音)7を検出している状態を示している。
【0038】
このとき、探信音6が水中航走体4に反射した場合、水中航走体4の背後には、図1に示すように、反響音が発生しない、つまり、探信音6が到達しないためにその反射音である反響音が発生しない領域(音波の影8)が形成される。
【0039】
船舶3は、上述のように、海面1を航走しているため、船舶3の音響センサ部5から送出された探信音6に対応する音波の影8は、図2に示すように、移動前の船舶3の位置(3a)で探信音6aを送出した場合と、移動後の船舶3の位置(3b)で探信音6bを送出した場合とで、水中航走体4の背後に形成される、それぞれの探信音が到達しない領域(音波の影)の大きさや位置が異なる。
【0040】
ここで、反響音の影8a、8bはそれぞれ、船舶3の移動前の位置3aに対応する反響音の影を示し、反響音の影8bは、船舶3の移動後の位置3bに対応する反響音の影を示す。
【0041】
この図2では、船舶3が移動前の位置3aから移動後の位置3bへの移動した場合に、検出される反響音の影8の位置および大きさが8aから8bへと変化することが示されている。
【0042】
ここで、船舶3の移動前および移動後の位置と、水中航走体4、および音波の影8の位置関係を、上空見た場合の模式図を図3に示す。
音波の影領域では、探信音が到達しない、または、到達する探信音の強度が低いため、その周囲の地点に比べて反響音のレベルが低くなっている。また、この音波の影の大きさや形状(輪郭)は、船舶3と水中航走体4との位置関係の変化に伴い変化する。
【0043】
音響センサ部5は、図3に示すように、船舶3の移動に伴い異なる位置で反響音を捕捉する。このため、船舶3の移動に伴い捕捉した異なる複数の反響音レベルを積分した場合、音波の影における反響音レベルは、その周囲の領域の反響音レベルに比べてより低い値として算出される。
【0044】
表示器14が共通の位置情報に対応した反響音レベルを積分することにより、反響音レベルが低い領域は、周囲の領域に比して反響音レベルがより低い値として算出されるので、表示器14は、この値に基づき、反響音レベルが周囲より低い領域の大きさや形状をより精細に表示することができる。
尚、ここでは反響音レベルが低い領域に対応する表示画面上の画素をより濃い色で表示するものとする。これにより、音波の影8の大きさ、輪郭(影のエッジ)などをより精細に表示することができる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、ソナー(音響センサ部)による水中航走体の探索時に、海底に鎮座した水中航走体により形成される反響音の影を精度良く示す音響画像を生成することが可能となる。
このため、本実施形態である音響画像生成システムの利用者は、表示画面内に表示された音波の影の位置、形状、大きさに基づいて、海底に鎮座した水中航走体4の位置を正確に識別することが可能になる。
【0046】
[実施形態の動作説明]
次に、上記実施形態である音響画像生成システムの全体的な動作内容について説明する。
【0047】
まず、音響センサ5が捕捉した反射音に基づき、指向性合成部10が、この反響音の水平方向の指向性を示す反響音ビームを合成し(指向性ビーム合成工程)、この反射音を捕捉した受信時刻と各反響音ビームの指向性とに基づいて、方位距離信号強度導出部11が、船舶3からの方位および距離として特定される各地点の反響音のレベル(各地点反響音レベル)を導出する(反響音レベル導出工程)。
【0048】
次いで、表示器14が各位置情報に対応して導出した異なる反響音のレベルを積分して得た値に基づき、音響画像の色情報を決定して表示する(反響音レベル積分表示工程)。
【0049】
ここで、上記指向性ビーム合成工程、反響音レベル導出工程、および反響音レベル積分表示工程については、その実行内容をプログラム化し、コンピュータに実行させるように構成してもよい。
【0050】
また、本プログラムは、非一時的な記憶媒体、例えば、DVD、CD、フラッシュメモリなどに記録されてもよい。その場合、本プログラムは、記録媒体からコンピュータによって読み出され、実行される。
【0051】
次に、本実施形態である音響画像生成システム100における音響画像を生成する動作内容について、具体的に説明する。
【0052】
まず、音響センサ部5が、予め設定されたスピーカから音波(送信音波)を送出し、音響センサ部5の反射音捕捉手段が反響音(音波)7を検知すると共に、この反響音7を電気信号に変換する。
【0053】
次いで、A/D変換部9が、電気信号として音響センサ部5から送り込まれた反射音をデジタル化する処理を行い、反射波データとして指向性合成部10に送信する。
【0054】
次いで、指向性合成部10が、A/D変換部9から送り込まれた反射波データに基づき水平方向に指向性を持つビームを示す反響音ビームを合成する処理を行う(指向性合成処理)。
【0055】
次に、方位距離信号強度処理部11が、指向性合成部10から送り込まれた水平方向に指向性を持った反響音ビームを解析し、各反響音が船に到達した受信時刻に基づき、この反響音ビームが方位、および反響音の(船舶3からの)距離毎の大きさ(レベル)を、方位距離信号強度として特定する処理を行う(信号強度決定機能)。
【0056】
尚、ここで、方位距離信号強度処理部11は、反響音の受信時刻が遅い(発射から反響音が到達するまでの時間が長い)ほど、反射地点までの距離が大きいものとして算出する。
これにより、水中航走体4の位置(相対方向)について、船舶3から水中航走体4までの距離と相対的な方向を特定することができる。
【0057】
また、方位距離信号強度処理部11は、各反響ビームに対応して導出した方位距離信号強度を予め設定された記憶部に格納するものとする。
【0058】
次に、位置補正部13は、導出された各反響ビーム、方位距離信号強度、および位置センサ12により検出した反響音を受信したタイミングの船舶3の位置情報(緯度・経度)に基づき、反響音を受信したときの船舶の位置(緯度・経度)と針路を基に、方位距離信号強度データを緯度・経度毎に基づき補正する処理を行う(位置補正機能)。
【0059】
これにより、位置補正部13は、探信音の放射から反響音を捕捉するまでの船舶3の移動分の補正を行う。すなわち、船舶3の移動に伴い、反響音を受信したときの船舶の位置(緯度・経度)と針路に基づいて、方位距離信号強度データを緯度・経度毎のデータに補正することができる。このため、位置補正部13は音波の影が検出された領域の地理的絶対位置を特定することができる。
【0060】
また、位置センサ12は、GPS等を利用することにより船舶3の地球上の位置を検出する。ここで、位置センサ12は誤差15m程度の精度で使用されるものとする。
更に、位置補正処理部13は、反響音を受信したときの船舶の位置(緯度・経度)と針路に基づき反響音の強度データを緯度・経度毎に対応したデータに補正することができる。
【0061】
最後に、表示器14が、位置補正処理部13から送り込まれた絶対位置信号強度データに基づき音響画像を生成し、表示画面15に出力表示する。
この音響画像(図5)は、海底に鎮座した水中航走体がある場合の表示器14における表示画面の一例を示す。この表示器14は、海底に鎮座した水中航走体4がある場合、反響音が比較的に小さい位置に「音波の影8」が表示されることになる。
【0062】
ここで、表示器14は、緯度・経度毎の反響音について、複数の反響音の信号強度を重ね合わせて(積分して)、その信号の大きさを、表示画面15に濃淡または色彩で表示する。
これにより、表示器14の表示画面15では、積分した結果として、反響音の信号強度が、周囲(海中の平均)より低い領域が音波の影領域8として表示される(図5)。
【0063】
以上のように、本実施形態では、反響音レベルを積分した値が周囲より小さい領域を、海底に鎮座した水中航走体により形成される音波の影として特定することにより、反響音の影を精度良く検出することが可能となる。
【0064】
また、海中においては海底からの反響音の他に、通常海面からの反響音等の複雑な反響音があり、例えば、1回の探信音と反響音の組合せでは、正確な反響音の影の位置を検出することが困難であるが、本実施形態では、探信音が到達する領域における各地点の反響音(反射音)レベルについて、共通の地点に対応する異なる複数の反響音レベルを積分することにより、周囲の領域に比べて検出される反響音レベルの低い音波の影領域の形状、大きさを精細に示す音響画像を生成することができる。
【0065】
上述した実施形態については、その新規な技術的内容の要点をまとめると、以下のようになる。
尚、上記の実施形態の一部又は全部は、新規な技術として以下のようにまとめられるが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0066】
(付記1)
水上を航走する船舶に設けられ、水中に鎮座する物体の検出用に送出した音信号の反射音を捕捉する音響センサ部と、前記反射音に基づき前記物体の位置を示す音響画像を生成する画像データ生成部とを備えた音響画像生成システムであって、
前記反射音に基づき当該反射音の水平方向の指向性を示す反射音ビームを合成する反射音ビーム合成部と、
前記反射音を捕捉した受信時刻と前記各反射音ビームの指向性に基づき前記船舶からの方位および距離として特定される各地点における反射音のレベルを導出する反射音レベル導出部とを備え、
前記画像データ生成部は、
前記各位置情報に対応して導出した異なる反射音のレベルを積分して得た値に基づき前記音響画像の色情報を決定して表示する反射音レベル積分表示手段とを備えたことを特徴とする音響画像生成システム。
【0067】
(付記2)
付記1に記載の音響画像生成システムにおいて、
前記船舶の絶対的な位置情報を測位する位置センサ部と、
前記導出された反射音のレベルを前記絶対的な位置情報に対応して設定すると共に、前記船舶の移動分に応じて前記反射音のレベルを補正する反射音レベル補正部とを備えたことを特徴とする音響画像生成システム。
【0068】
(付記3)
付記1または2に記載の音響画像生成システムにおいて、
前記画像データ生成部は、異なる反射音のレベルを積分して得られた値が予め設定された値より低い前記音響画像内の画像領域を前記物体による音波の影を示す領域として強調表示する影領域強調表示手段を備えたことを特徴とする音響画像生成システム。
【0069】
(付記4)
付記1または2に記載の音響画像生成システムにおいて、
前記画像データ生成部は、前記積分値が前記音響画像内における周囲の積分値より相対的に低い画像領域を前記物体による音波の影を示す領域として強調表示する影領域強調表示手段を備えたことを特徴とする音響画像生成システム。
【0070】
(付記5)
水上を航走する船舶に設けられた音響画像生成システムが水中に鎮座する物体の検出用に送出した音信号の反射音を捕捉すると共に、この反射音に基づき前記物体の位置を示す音響画像を生成する音響画像生成方法であって、
前記捕捉した反射音に基づき当該反射音の水平方向の指向性を示す反射音ビームを合成し、
前記反射音を捕捉した受信時刻と前記各反射音ビームの指向性とに基づいて、前記船舶からの方位および距離として特定される各地点における反射音のレベルを導出し、
前記各位置情報に対応して導出した異なる反射音のレベルを積分して得た値に基づき、前記音響画像の色情報を決定して表示する構成とし、これら動作手順を前記音響画像生成システムが実行することを特徴とした音響画像生成方法。
【0071】
(付記6)
水上を航走する船舶に設けられた音響画像生成システムが水中に鎮座する物体の検出用に送出した音信号の反射音を捕捉すると共に、この反射音に基づき前記物体の位置を示す音響画像を生成するための音響画像生成プログラムであって、
前記捕捉した反射音に基づき当該反射音の水平方向の指向性を示す反射音ビームを合成する反射音ビーム合成機能と、
前記反射音を捕捉した受信時刻と前記各反射音ビームの指向性とに基づいて、前記船舶からの方位および距離として特定される各地点における反射音のレベルを導出する反射音レベル導出機能と、
前記各位置情報に対応して導出した異なる反射音のレベルを積分して得た値に基づき、前記音響画像の色情報を決定して表示する処理を行う反射音レベル積分表示機能とを、前記音響画像生成システムのコンピュータにより実現することを特徴とした音響画像生成プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、海底に鎮座した目標対象物の位置を高い精度で検出するソナーシステムに対して有効に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 海面
2 海底
3 船舶
4 水中航走体
5 音響センサ部
6 探信音
7 反響音
8 音波の影
9 アナログ/デジタル変換部
10 指向性合成部
11 方位距離信号強度導出部
12 位置センサ
13 位置補正部
14 表示器
15 表示画面例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上を航走する船舶に設けられ、水中に鎮座する物体の検出用に送出した音信号に対する異なる方位に対応する反射音を捕捉する音響センサ部と、前記反射音に基づき前記物体の位置を示す音響画像を生成する画像データ生成部とを備えた音響画像生成システムであって、
前記捕捉した異なる反射音に基づき当該反射音の水平方向の指向性を示すビームを合成する指向性ビーム合成部と、
前記反射音を捕捉した受信時刻とそのときの前記反射音ビームの指向性に基づき前記船舶からの方位および距離として特定される各地点における反射音のレベルを算出する反射音レベル算出部とを備え、
前記画像データ生成部は、
前記各地点に対応して算出した異なる反射音のレベルを積分して得た値に基づき前記音響画像の色情報を決定して表示する反射音レベル積分表示手段とを備えたことを特徴とする音響画像生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の音響画像生成システムにおいて、
前記船舶の絶対位置情報を測位する位置センサ部と、
前記導出された反射音のレベルを前記絶対位置情報に対応して設定すると共に、前記船舶の移動分に応じて前記反射音のレベルを補正する反射音レベル補正部とを備えたことを特徴とする音響画像生成システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の音響画像生成システムにおいて、
前記画像データ生成部は、異なる反射音のレベルを積分して得られた値が予め設定された値より低い前記音響画像内の画像領域を前記物体による音波の影を示す領域として強調表示する影領域強調表示手段を備えたことを特徴とする音響画像生成システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の音響画像生成システムにおいて、
前記画像データ生成部は、前記積分値が前記音響画像内における周囲の積分値より相対的に低い画像領域を前記物体による音波の影を示す領域として強調表示する影領域強調表示手段を備えたことを特徴とする音響画像生成システム。
【請求項5】
水上を航走する船舶に設けられた音響画像生成システムが水中に鎮座する物体の検出用に送出した音信号の反射音を捕捉すると共に、この反射音に基づき前記物体の位置を示す音響画像を生成する音響画像生成方法であって、
前記捕捉した反射音に基づき当該反射音の水平方向の指向性を示すビームを合成し、
前記反射音を捕捉した受信時刻と前記各ビームの指向性とに基づいて、前記船舶からの方位および距離として特定される各地点における反射音のレベルを導出し、
前記各位置情報に対応して導出した異なる反射音のレベルを積分して得た値に基づき、前記音響画像の色情報を決定して表示する構成とし、これら動作手順を前記音響画像生成システムが実行することを特徴とした音響画像生成方法。
【請求項6】
水上を航走する船舶に設けられた音響画像生成システムが水中に鎮座する物体の検出用に送出した音信号の反射音を捕捉すると共に、この反射音に基づき前記物体の位置を示す音響画像を生成するための音響画像生成プログラムであって、
前記捕捉した反射音に基づき当該反射音の水平方向の指向性を示すビームを合成する指向性ビーム合成機能と、
前記反射音を捕捉した受信時刻と前記各ビームの指向性とに基づいて、前記船舶からの方位および距離として特定される各地点における反射音のレベルを導出する反射音レベル導出機能と、
前記各位置情報に対応して導出した異なる反射音のレベルを積分して得た値に基づき、前記音響画像の色情報を決定して表示する処理を行う反射音レベル積分表示機能とを、前記音響画像生成システムのコンピュータにより実現することを特徴とした音響画像生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−11475(P2013−11475A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143223(P2011−143223)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(599161890)NECネットワーク・センサ株式会社 (71)
【Fターム(参考)】