説明

頭部保護エアバッグ装置

【課題】エアバッグの前窓遮蔽膨張部の下縁側までの展開膨張を素早くでき、かつ、体格の異なる乗員頭部を好適に保護可能な頭部保護エアバッグ装置の提供。
【解決手段】頭部保護エアバッグ装置のエアバッグ21は、前窓遮蔽膨張部27が、流入口27aから斜め前下方向に延びるパイプ状の傾斜膨張部28と、傾斜膨張部の下端からエアバッグの下縁21bに沿って前方に延びるパイプ状の横膨張部31と、からなる。傾斜膨張部の上縁28aは、ガス供給路部24の上縁側を区画する非流入部の部位44から連続的に斜め前下方向に延びる上ガイド部58と、ガス供給路部の下縁側の非流入部の部位56から延びる下ガイド部59と、の間に配設される。傾斜膨張部と横膨張部とは、平らに展開させた各々の傾斜峰部29と横峰部32とに直交する方向の各々の幅寸法B1,B2を、平らに展開させたガス供給路部24の上下方向の幅寸法B0より、大きくして、配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて、車両の側面衝突時に、乗員の頭部を保護可能なエアバッグを、車両の窓の車内側を覆うように、窓の上縁側から下方に展開膨張させる頭部保護エアバッグ装置に関し、特に、前席に着座した乗員の頭部を保護する前窓遮蔽膨張部を迅速に展開させて膨らませることができる頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部保護エアバッグ装置としては、エアバッグが、膨張用ガスの流入時、車両の窓の車内側を覆うように、窓の上縁側から下方に展開膨張する構成としていた(特許文献1参照)。このエアバッグは、平らに展開した状態の下縁側を上縁側に接近させるように折り畳んで、窓の上縁側に収納され、そして、膨張用ガスを流入させて車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨らむガス流入部と、車内側壁部と車外側壁部とを結合させたように構成されて膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備えて構成されていた。
【0003】
ガス流入部は、車両の前席と後席とに各々着座した乗員の頭部を保護可能に、前席側方と後席側方との窓を覆うように展開膨張する前窓遮蔽膨張部と後窓遮蔽膨張部とを備えていた。さらに、ガス流入部は、エアバッグの上縁側に前後方向に沿って配置されて、前後両端を前窓遮蔽膨張部と後窓遮蔽膨張部との上端に連通させるガス供給路部を備えていた。ガス供給路部は、エアバッグの上縁で上方に延びる筒状の接続口部と連通され、接続口部には、膨張用ガスを供給するインフレーターが接続されていた。
【0004】
非流入部は、ガス流入部の周囲を囲む周縁部と、周縁部から延びて窓遮蔽膨張部を区画する閉じ部と、を備えていた。
【0005】
そして、従来のエアバッグには、ガス供給路部の前方に位置して、周縁部の上縁側から離れて前窓遮蔽膨張部の領域内に進入するように、円形の閉じ部が配設されていた。
【0006】
また、従来の頭部保護エアバッグ装置のエアバッグでは、インフレーターからの膨張用ガスを前窓遮蔽膨張部の前縁側に供給できるように、前下がりとした線状の閉じ部を、上下に並設したものもあった(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−1042号公報
【特許文献2】特開2001−88651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載のエアバッグでは、ガス供給路部の前方に、周囲から離れた円形の閉じ部が配設されており、インフレーターからの膨張用ガスがガス供給路部を通って、前窓遮蔽膨張部内に進入しようとする際、円形の閉じ部に当り、上下に膨張用ガスが分岐され、前窓遮蔽膨張部を迅速に展開膨張させる点に課題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載のエアバッグでは、膨張用ガスの流入時、前下方向に延びる閉じ部間で、膨張用ガスが前窓遮蔽膨張部の前縁の上下方向の中間部位に向かうことから、前窓遮蔽膨張部を展開膨張させ易い。しかし、前窓遮蔽膨張部の領域内の上下方向の中間部位に、斜め下方向として前後方向に延びて膨張用ガスを流入させない閉じ部が配設されていることから、クッション性よく、前席の乗員頭部を受け止めることに課題がある。すなわち、前席に着座する乗員の体格の差により、頭部の高さが異なれば、頭部重心が、クッション性の低い閉じ部の位置に配置される虞れも生じ、好ましくない。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグが、前窓遮蔽膨張部の下縁側までの展開膨張を素早く行え、かつ、体格が異なっている乗員の頭部を好適に受け止めて保護できる頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
<請求項1の説明>
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、エアバッグが、
膨張用ガスの流入時、車両の窓の車内側を覆うように、前記窓の上縁側から下方に展開膨張する構成とし、
平らに展開した状態の下縁側を上縁側に接近させるように折り畳んで、前記窓の上縁側に収納され、
膨張用ガスを流入させて車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨らむガス流入部と、前記車内側壁部と前記車外側壁部とを結合させたように構成されて膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備えて構成され、
前記ガス流入部が、
前後方向に並設された複数の前記窓を覆うように展開膨張し、前席側方の窓を覆う前窓遮蔽膨張部を含めた複数の窓遮蔽膨張部と、
前記エアバッグの上縁側に前後方向に沿って配置されて、前端を前記前窓遮蔽膨張部の後端上部に開口した流入口に連通させ、インフレーターからの膨張用ガスを前記前窓遮蔽膨張部に供給するガス供給路部と、
を備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグの前記前窓遮蔽膨張部が、膨張完了時に、
車幅方向の厚さを大きくした峰部として、前記流入口から斜め前下方向に延びる傾斜峰部と、傾斜峰部の下端から前方に延びる横峰部と、を配設させて構成されるように、
領域内に、前記非流入部を配設させること無く、前記流入口から斜め前下方向に延びるパイプ状の傾斜膨張部と、該傾斜膨張部の下端から、前記エアバッグの下縁における前記周縁部の下縁部位に隣接して前記エアバッグの下縁に沿って前方に延びるパイプ状の横膨張部と、を配設させて構成され、
前記傾斜膨張部が、
上縁側に配置されて、前記ガス供給路部の上縁側を区画する前記非流入部の部位から連続的に斜め前下方向に延びる上ガイド部と、下縁側に配置されて、前記ガス供給路部の下縁側を区画する前記非流入部の部位から斜め前下方向に延びる下ガイド部と、の間に配設されて、
前記傾斜膨張部と前記横膨張部とが、平らに展開させた各々の前記傾斜峰部と前記横峰部とに直交する方向の各々の幅寸法を、平らに展開させた前記ガス供給路部の上下方向の幅寸法より大きくして、配設されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、インフレーターからの膨張用ガスがエアバッグ内に流入すれば、ガス供給路部を経て、各窓遮蔽膨張部内に膨張用ガスが流れる。その際、前窓遮蔽膨張部では、膨張用ガスがガス供給路部の前端の流入口から傾斜膨張部に流入して、傾斜膨張部から横膨張部に流入し、横膨張部の前縁まで到達することとなる。
【0013】
この前窓遮蔽膨張部は、相互に連通する傾斜膨張部と横膨張部とを備えて、領域内に、周囲から分離して配設されるような非流入部を配設させていない。そして、傾斜膨張部は、上ガイド部の下縁と下ガイド部の上縁との間に形成されており、ガス供給路部から前方に向かうように流入する膨張用ガスを、ガス供給路部の上縁側から連続する上ガイド部の下縁側で受け止めて、斜め下向きに円滑に変更させつつ、上ガイド部と下ガイド部との間で横膨張部へ流すことができる。
【0014】
そのため、エアバッグは、ガス供給路部から供給される膨張用ガスが、非流入部の部位で分岐されることなく、流速の低下を極力抑えて、エアバッグの前部で、後上から斜め下方向の前下縁側にかけて流れて、エアバッグの前縁側を含めたエアバッグの下縁を展開させることができ、その結果、エアバッグの前部側の全域を、迅速に、展開させることができる。
【0015】
さらに、傾斜膨張部自体が膨張を完了させれば、直ちに、車内側から見た傾斜膨張部自体の中心線上に位置して、ガス供給路部より車幅方向で厚く膨らむ傾斜峰部を形成できるため、その傾斜峰部によって、前席の乗員の頭部をクッション性よく受け止めることができる。勿論、傾斜膨張部の膨張完了時には、横膨張部も膨張しており、傾斜峰部と同様に、ガス供給路部より厚く膨らむ横峰部を形成していることから、横峰部によっても、前席の乗員の頭部をクッション性よく受け止めることができる。
【0016】
そして、大柄な乗員は、頭部を、前窓遮蔽膨張部の上部側でかつ後部側に配置させ易い。その際、本発明の頭部保護エアバッグ装置のエアバッグでは、大柄な乗員頭部を、傾斜膨張部の傾斜峰部で、クッション性よく受け止めることが可能となる。
【0017】
また、小柄な乗員は、頭部を前窓遮蔽膨張部の下部側でかつ前部側に配置させ易い。その際、本発明の頭部保護エアバッグ装置のエアバッグでは、小柄な乗員頭部を、横膨張部の横峰部で、クッション性よく受け止めることが可能となる。
【0018】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、前窓遮蔽膨張部の下縁側までの展開膨張を素早く行え、かつ、体格が異なっている乗員の頭部を好適に受け止めて保護できる。
【0019】
<請求項2の説明>
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記エアバッグは、膨張完了時に、
前記傾斜膨張部の傾斜峰部の上端を、前記前席側方の窓の領域内における後上隅付近に配置させ、
前記横膨張部の下縁を、前記前席の窓の下縁の高さ付近に配置させるように、構成することが望ましい。
【0020】
このような構成では、大柄な乗員が、前席を後方にスライドさせて窓の後側のピラー部近傍に頭部を配置させて着座する際、エアバッグの厚く膨らんだ傾斜膨張部の傾斜峰部の上部側により、好適に、その大柄乗員の頭部を受け止めることができる。また、上記構成では、小柄な乗員が、前席を前方側にスライドさせて窓の下縁付近に頭部を配置させて着座する際、エアバッグの厚く膨らんだ横膨張部の横峰部の前部側により、好適に、その小柄乗員の頭部を受け止めることができる。
【0021】
<請求項3の説明>
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記エアバッグにおける前記傾斜膨張部と前記横膨張部とは、平らに展開させた各々の前記傾斜峰部と前記横峰部とに直交する方向の各々の幅寸法を、相互に略等しくして、
前記エアバッグの傾斜膨張部は、エアバッグを平らに展開させた状態で、
前記傾斜峰部におけるエアバッグの前後方向に延びる下縁との傾斜角度を、略45°として、かつ、
前記上ガイド部の下縁の下方への延長線を、前記横膨張部における前下隅のコーナ部近傍に交差させるように、
配設することが望ましい。
【0022】
このような構成では、傾斜膨張部が、上ガイド部で区画される上縁側で、ガス供給路部からの前方に向かう膨張用ガスを、略45°の斜め下方向で、かつ、横膨張部の前下隅のコーナ部近傍に向けて流すことができて、エアバッグの前部側では、下縁側の全域が展開すると同時に、前縁側まで膨らむことができて、前窓遮蔽膨張部の展開と膨張とを、極力、迅速に行うことができる。
【0023】
また、傾斜膨張部と横膨張部とは、ガス供給路部より厚くして、略同径のパイプ状に膨らみ、かつ、前窓遮蔽膨張部の前後方向の中間付近に、横峰部と傾斜峰部との交差部位付近が配置される。この交差部位付近では、乗員頭部が、前側にずれても上側にずれても、共に、横峰部と傾斜峰部との何れかで円滑に受け止めることできて、平均的な中柄の乗員の頭部を、広範囲にわたって、好適に受け止めることができる。
【0024】
<請求項4の説明>
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記エアバッグにおける前記ガス供給路部の前端下方から前記傾斜膨張部の下方にかけるエリアに、前記横膨張部の後端下縁側における前記傾斜膨張部との交差部位付近に絞られた開口を配設させて、前記前窓遮蔽膨張部の内圧上昇を抑制可能に、前記前窓遮蔽膨張部から膨張用ガスを流入させて膨張可能な調圧室を、配設することが望ましい。
【0025】
このような構成では、膨張した前窓遮蔽膨張部が乗員頭部を受け止めて内圧を急激に上昇させた際、開口を経て、膨張用ガスが調圧室に流れることから、前窓遮蔽膨張部の内圧値を減少させることができ、乗員頭部をクッション性よく受け止めて保護することができる。
【0026】
<請求項5の説明>
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記エアバッグにおける前記横膨張部の上方に、
前記横膨張部の前端上縁側に連通口を配設させて、膨張用ガスの流入により、フロントピラー部の車内側を覆うガーニッシュを押し開いて、該ガーニッシュの車外側に収納した前記エアバッグの前端部位の展開を容易にさせる押し開き用膨張部を、配設することが望ましい。
【0027】
このような構成では、膨張用ガスを流入させて前窓遮蔽膨張部が膨張する際、連通口を経て、押し開き用膨張部にも膨張用ガスが流れる。そして、押し開き用膨張部が膨張する際、フロントピラー部の車内側を覆うガーニッシュを押し開くことから、エアバッグの前端部位が、収納部位のフロントピラー部から円滑に下方に展開できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る実施形態の頭部保護エアバッグ装置の車内側から見た正面図である。
【図2】実施形態の頭部保護エアバッグ装置に使用するエアバッグを平らに展開させた状態を示す図である。
【図3】実施形態のエアバッグの前窓遮蔽膨張部の拡大正面図であり、膨張時の膨らむ厚さを説明するために、車内側への突出高さに対応する等高線状のラインを付した図である。
【図4】実施形態のエアバッグの膨張状態を示す断面図であり、膨張完了時を併せて示した図2のIV−IV部位に対応する図である。
【図5】実施形態の頭部保護エアバッグ装置の作動時を示す前席側の正面図である。
【図6】実施形態の変形例に使用するエアバッグを平らに展開させた状態を示す図である。
【図7】図6に示すエアバッグの前窓遮蔽膨張部の拡大正面図であり、膨張時の膨らむ厚さを説明するために、車内側への突出高さに対応する等高線状のラインを付した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1に示すように、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sは、エアバッグ21と、インフレーター16と、エアバッグカバー11と、を備えて構成されている。そして、エアバッグ21は、車両Vの車内側における前席や後席の側方の窓(サイドウインド)W1,W2の上縁WU側において、フロントピラー部FPの下縁側から、中間ピラー部CPの上方を経て、リヤピラー部RPの上方まで、の範囲に、折り畳まれて収納されている。
【0030】
インフレーター16は、図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、エアバッグ21における膨張用ガスGを流入させるための接続口部23に挿入され、エアバッグ21と連結されている。このインフレーター16は、取付ブラケット17により保持され、取付ブラケット17がボルト18止めされることにより、中間ピラー部CPの上方付近におけるルーフサイドレール部RRのインナパネル2に対し、ルーフヘッドライニング5の下縁5aに覆われて、取付固定されている。なお、インナパネル2は、車両Vのボディ(車体)1側の部材である。
【0031】
各取付ブラケット13は、取付ボルト14によって、エアバッグ21の各取付部48をインナパネル2に取付固定している。なお、各取付ボルト14は、インナパネル2におけるナット等を設けたねじ孔に、締結されている。
【0032】
エアバッグカバー11は、図1に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4の下縁4a側と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5の下縁5a側と、から構成されている。
【0033】
エアバッグ21は、図1〜5に示すように、インフレーター16からの膨張用ガスGを流入させ、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2、中間ピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように展開膨張する。そして、エアバッグ21は、図2,4に示すように、膨張用ガスGを流入させて車内側壁部22aと車外側壁部22bとを離すように膨張するガス流入部22と、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを結合させたような状態として膨張用ガスGを流入させない非流入部42と、を備えて構成されている。このエアバッグ21は、前端側の取付部48(48A)付近を除いて、ポリアミドやポリエステル等の糸から袋織りして製造されている。
【0034】
ガス流入部22は、接続口部23、ガス供給路部24、窓遮蔽膨張部26、調圧室39、及び、押し開き用膨張部40、を備えて構成されている。接続口部23は、エアバッグ21の上縁21a側の前後方向の中間部位から上方へ延びて、インフレーター16からの膨張用ガスGをガス流入部22内に流入させるように、インフレーター16と接続される。ガス供給路部24は、接続口部23と連通し、エアバッグ21の上縁21a側の前後方向の中央付近で前後方向に沿って配設され、窓遮蔽膨張部26の前窓遮蔽膨張部27と後窓遮蔽膨張部34との間で両者を連通させるように、配設されている。
【0035】
窓遮蔽膨張部26は、エアバッグ21の前部21c側の前窓遮蔽膨張部27と後部21e側の後窓遮蔽膨張部34とを備えて構成されている。前窓遮蔽膨張部27は、膨張完了時、車両Vの前席側方の窓(フロントサイドウインド)W1と中間ピラー部CPの一部との車内側を覆い、後窓遮蔽膨張部34は、膨張完了時、後席側方の窓(リヤサイドウインド)W2とリヤピラー部RPとの車内側を覆う。
【0036】
なお、接続口部23内には、ガス供給路部24の前端24a付近まで挿入されて、インフレーター16からの膨張用ガスGを前後両側に分岐させる図示しない整流布が配設されている。そして、インフレーター16の膨張用ガスGは、接続口部23を経て、整流布により分岐され、前側に流れる膨張用ガスGが前窓遮蔽膨張部27内に流入し、後側に流れる膨張用ガスGが、ガス供給路部24を経て、後窓遮蔽膨張部34内に流入し、それぞれ、前窓遮蔽膨張部27と後窓遮蔽膨張部34とが膨張することとなる。
【0037】
後窓遮蔽膨張部34は、後端下部側の略長方形状の本体膨張部35と、前端で上下方向に配設される前側膨張部36と、ガス供給路部24の後端24bから後方に延びるように配設される上側膨張部37と、を備えて構成されている。上側膨張部37は、後席の乗員MBの頭部Hを保護するとともに、エアバッグカバー11としてのルーフヘッドライニング5の下縁5aにおけるリヤピラー部RPの上方の部位5arを、素早く押し開くことにも寄与している。そして、この部位5arの素早い押し開きにより、折り畳まれた本体膨張部35が、リヤピラーガーニッシュ8の車内側に円滑に展開できる。
【0038】
前窓遮蔽膨張部27は、ガス供給路部24の前端24aに、膨張用ガスGを流入させる流入口27aを配設させている。前窓遮蔽膨張部27は、領域内に、非流入部42を配設させること無く、流入口27aから斜め前下方向に延びるパイプ状の傾斜膨張部28と、傾斜膨張部28の下端から前方に延びるパイプ状の横膨張部31と、の二つだけを配設させて構成されている。横膨張部31は、エアバッグ21の下縁21bにおける後述する周縁部43の下縁46に隣接し、エアバッグ21の下縁21bに沿って前方に延びている。
【0039】
前窓遮蔽膨張部27は、膨張完了時、領域内に非流入部42を配設させていない状態で、パイプ状の傾斜膨張部28と横膨張部31とを膨張させることから、車幅方向の厚さを大きくした峰部(頂部)として、流入口27aから斜め前下方向に延びる傾斜峰部29と、傾斜峰部29の下端から前方に延びる横峰部32と、が配設される。これらの傾斜峰部29や横峰部32は、それぞれの傾斜膨張部28や横膨張部31の平らに展開した幅方向の中央付近(車内側から見た中心線上)に位置して、車幅方向に最も厚く膨らむ部位を連ならせた稜線となる。
【0040】
傾斜膨張部28と横膨張部31とは、平らに展開させた各々の傾斜峰部29と横峰部32とに直交する方向の各々の幅寸法B1,B2を、平らに展開させたガス供給路部24の上下方向の幅寸法B0より、大きくして、配設されている。さらに、実施形態の場合、傾斜膨張部28と横膨張部31とは、幅寸法B1,B2を相互に略等しくしている。
【0041】
そして、傾斜膨張部28の傾斜峰部29は、図3に示すように、平らに展開させたエアバッグ21の前後方向に延びる下縁21bからの傾斜角度θを、略45°とした50°としている。さらに、エアバッグ21を平らに展開した状態で、傾斜膨張部28の傾斜峰部29の下方への延長線LCは、横膨張部31における前下隅のコーナ部31cから後方側の下縁31bと、交差させるように配設されている。
【0042】
また、傾斜膨張部28の傾斜峰部29は、エアバッグ21の車両搭載状態での膨張完了時、上端29aを、前席側方の窓W1の領域内における後上隅WC付近に配置させている(図5参照)。
【0043】
さらに、傾斜膨張部28の下端から前方に延びる横膨張部31は、車両搭載状態での膨張完了時、下縁31bを、前席の窓W1の下縁、すなわち、ベルトラインBLの高さ付近に配置させるように、構成されている。
【0044】
また、エアバッグ21の前部21c側には、エアバッグ21におけるガス供給路部24の前端24aの下方から傾斜膨張部28の下方にかけるエリアに、調圧室39が配設されている。この調圧室39は、横膨張部31の後端31dの下縁31b側における傾斜膨張部28との交差部位30付近に、絞られた開口39aを設けて配設されている。この調圧室39は、前窓遮蔽膨張部27の内圧上昇を抑制可能に、開口39aを経て前窓遮蔽膨張部27から膨張用ガスGを流入させて膨張することとなる。
【0045】
さらに、エアバッグ21における横膨張部31の上方には、押し開き用膨張部40が配設されている。押し開き用膨張部40は、横膨張部31の前端31fの上縁31e側に連通口40aを配設させて、前後方向にパイプ状に延びるように配設されている。押し開き用膨張部40は、連通口40aからの膨張用ガスGの流入により、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ4の下縁4aの上端4auを押し開いて、フロントピラーガーニッシュ4の車外側に収納したエアバッグ21の前端部位の展開を容易にさせる。
【0046】
なお、連通口40aの開口幅は、横膨張部31の幅寸法B2より小さいものの、ガス供給路部24の幅寸法B0より大きく設定されている。また、調圧室39の開口39aの開口幅は、ガス供給路部24の幅寸法B0より小さく絞られている。
【0047】
エアバッグ21の非流入部42は、周縁部43、取付部48、及び、閉じ部50から構成されている。周縁部43は、ガス流入部22の周囲を囲むように、形成されている。
【0048】
取付部48は、エアバッグ21の上縁21a側における周縁部43から上方へ突出するように、複数(実施形態では6個)形成されている。各取付部48には、取付ボルト14を挿通させる取付孔48aが、形成されている。各取付部48には、既述したように、ボディ1側のインナパネル2に取り付けるための取付ブラケット13が固着され、そして、各取付孔48aを挿通する取付ボルト14がインナパネル2の各ねじ孔に締結されることにより、各取付部48が、インナパネル2に固定される。
【0049】
なお、前端の取付部48Aは、既述したように、エアバッグ21の袋織りで形成された部位に対して、ポリアミド等の織布から形成された別体の布材を縫合して、形成されている。また、この取付部48Aは、フロントピラー部FPの下部付近に固定されて、エアバッグ21の膨張完了時、エアバッグ21の下縁21b側、具体的には、取付部48Aとフロントピラー部FPから離れた取付部48(48F)とを結ぶライン上に、強い張力を発揮させ、エアバッグ21における乗員MF,MBの室内側への拘束性を良好にするように、構成されている。
【0050】
閉じ部50は、膨張部位を区画するように配設されて、前閉じ部51、線状閉じ部52,53,55、及び、板状閉じ部56を備えて構成されている。
【0051】
板状閉じ部56は、周縁部43の下縁46側からガス供給路部24まで上方に延びるように略長方形板状として、前窓遮蔽膨張部27と後窓遮蔽膨張部34とを区画している。
【0052】
線状閉じ部55は、周縁部43の後縁47から前方に延びて下方に下がるL字状として、上側膨張部37と本体膨張部35とを区画し、さらに、前側膨張部36と本体膨張部35とを区画するように配設されている。
【0053】
前閉じ部51は、周縁部43の前縁45から後方に延びて、押し開き用膨張部40の連通口40aの前側周縁を構成し、横膨張部31と押し開き用膨張部40とを区画している。
【0054】
線状閉じ部52は、周縁部43の上縁44におけるガス供給路部24の前方付近から斜め前下方に延びて、押し開き用膨張部40の連通口40aの後側周縁を構成し、押し開き用膨張部40と前窓遮蔽膨張部27とを区画している。
【0055】
線状閉じ部53は、板状閉じ部56の上端から前方に延びて下がり、傾斜膨張部28と調圧室39とを区画するように配設されている。
【0056】
線状閉じ部54は、調圧室39内を区画するように、周縁部43の下縁46側から上方に延びている。
【0057】
なお、線状閉じ部52は、ガス供給路部24の上縁側を区画する周縁部43の上縁44から連続的に斜め前下方向に延びており、下縁58aで傾斜膨張部28の上縁28aと区画されており、傾斜膨張部28を斜め前下方向に流れる膨張用ガスGをガイドする上ガイド部58を構成する。
【0058】
また、線状閉じ部53は、ガス供給路部24の下縁側を区画するように板状閉じ部56から前方に延び、ガス供給路部24の前端24a付近から斜め前下方向に延びており、斜め前下に延びる上縁59aで、傾斜膨張部28の下縁28bと区画されており、傾斜膨張部28を斜め前下方向に流れる膨張用ガスGをガイドする下ガイド部59を構成する。
【0059】
そして、これらの上ガイド部58の下縁58aと下ガイド部59の上縁59aとが、相互に略平行として、上ガイド部58の下縁58aの下方への延長線LFを、横膨張部31における前下隅のコーナ部31c近傍に交差させるように、配設されている。なお、実施形態の場合、延長線LFは、横膨張部31におけるコーナ部31cより僅かに後方の下縁31bと交差している。また、これらの上ガイド部58の下縁58aや下ガイド部59の上縁59aも、傾斜峰部29と同様に、エアバッグ21における前後方向の水平方向に沿って配置されることとなる下縁21bからの傾斜角度θを、略45°とした50°としている。
【0060】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sの車両Vへの搭載は、まず、平らに展開したエアバッグ21の下縁21b側を、取付部48を設けた上縁21a側に接近させるように折り畳み、ついで、破断可能な図示しない折り崩れ防止用のラッピング材により、エアバッグ21を巻く。なお、エアバッグ21の折り畳みは、ガス供給路部24を含むエアバッグ21の上縁21aのエリアを、蛇腹折りし、その下方のエリアをロール折りして、折り畳んでいる。
【0061】
そして、エアバッグ21を折り畳んだ後、取付ブラケット17を取り付けたインフレーター16を、エアバッグ21の接続口部23と接続させ、また、エアバッグ21の各取付部48に取付ブラケット13を取り付けてエアバッグ組付体を形成する。
【0062】
その後、取付ブラケット13を組み付けた各取付部48を、ボディ1側のインナパネル2の対応する取付部位に配置させ、各取付孔48aに挿通させる等して、取付ボルト14をねじ孔に締結し、さらに、取付ブラケット17をボルト18止めし、インフレーター16をインナパネル2に固定して、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。ついで、インフレーター16に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1に取り付け、さらに、中間ピラーガーニッシュ7やリヤピラーガーニッシュ8をボディ1に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Sを、車両Vに搭載することができる。
【0063】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sの車両Vへの搭載後、インフレーター16が作動されれば、インフレーター16からの膨張用ガスGが、図2の二点鎖線に示すように、エアバッグ21における接続口部23からガス供給路部24に流入し、エアバッグ21の前窓遮蔽膨張部27や後窓遮蔽膨張部34に流入して、さらに、押し開き用膨張部40にも流入することから、エアバッグ21は、くるんでおいた図示しないラッピング材を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5の下縁4a,6a側のエアバッグカバー11を押し開いて、下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線や図5に示すように、窓W1,W2、中間ピラー部CP、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく展開膨張することとなる。
【0064】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、インフレーター16からの膨張用ガスGがエアバッグ21内に流入すれば、ガス供給路部24を経て、各窓遮蔽膨張部26内に膨張用ガスGが流れる。その際、前窓遮蔽膨張部27では、膨張用ガスGがガス供給路部24の前端24aの流入口27aから傾斜膨張部28内に流入して、傾斜膨張部28から横膨張部31に流入し、横膨張部31の前縁31aまで到達することとなる。
【0065】
この前窓遮蔽膨張部27は、相互に連通する傾斜膨張部28と横膨張部31とを備えて、領域内に、周囲から分離して配設されるような非流入部42を配設させていない。そして、傾斜膨張部28は、上ガイド部58の下縁58aと下ガイド部59の上縁59aとの間に形成されており、ガス供給路部24から前方に向かうように流入する膨張用ガスGを、ガス供給路部24の上縁側から連続する上ガイド部58の下縁58a側で受け止めて、斜め下向きに円滑に変更させつつ、上ガイド部58と下ガイド59部との間で横膨張部31へ流すことができる。
【0066】
そのため、エアバッグ21は、ガス供給路部24から供給される膨張用ガスGが、非流入部42の閉じ部50等の部位で上下に分岐されることなく、流速の低下を極力抑えて、エアバッグ21の前部21cで、後上21cuから斜め下方向の前下縁21db側にかけて流れて、エアバッグ21の前縁21d側を含めたエアバッグ21の下縁21bを展開させることができ、その結果、エアバッグ21の前部21c側の全域を、迅速に、展開させることができる。
【0067】
さらに、傾斜膨張部28自体が膨張を完了させれば、直ちに、車内側から見た傾斜膨張部28自体の中心線上に位置して、ガス供給路部24より車幅方向で厚く膨らむ傾斜峰部29を形成できるため、その傾斜峰部29によって、前席の乗員MF(MFL)の頭部Hをクッション性よく受け止めることができる。勿論、傾斜膨張部28の膨張完了時には、横膨張部31も膨張しており、傾斜峰部29と同様に、ガス供給路部24より厚く膨らむ横峰部32を形成していることから、横峰部32によっても、前席の乗員MF(MFS,MFL)の頭部Hをクッション性よく受け止めることができる。
【0068】
そして、大柄な乗員MFLは、頭部Hを、前窓遮蔽膨張部27の上部側でかつ後部側に配置させ易い。その際、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sのエアバッグ21では、大柄な乗員MFLの頭部Hを、傾斜膨張部28の傾斜峰部29で、クッション性よく受け止めることが可能となる。
【0069】
また、小柄な乗員MFSは、頭部Hを前窓遮蔽膨張部27の下部側に配置させ易い。その際、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sのエアバッグ21では、小柄な乗員MFSの頭部Hを、横膨張部31の横峰部32で、クッション性よく受け止めることが可能となる。
【0070】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、エアバッグ21が、前窓遮蔽膨張部27の下縁側までの展開膨張を素早く行え、かつ、体格が異なっている乗員MFの頭部Hを好適に受け止めて保護できる。
【0071】
また、実施形態では、エアバッグ21が、膨張完了時に、傾斜膨張部28の傾斜峰部29の上端29aを、前席側方の窓W1の領域内における後上隅WC付近に配置させ、横膨張部31の下縁31bを、前席の窓W1の下縁のベルトラインBLの高さ付近に配置させるように、構成されている。
【0072】
そのため、実施形態では、大柄な乗員MFLが、前席を後方にスライドさせて窓W1の後側の中間ピラー部CP近傍に頭部Hを配置させて着座する際、エアバッグ21の厚く膨らんだ傾斜膨張部28の傾斜峰部29の上部29b側により、好適に、その大柄な乗員MFLの頭部Hを受け止めることができる。また、実施形態では、小柄な乗員MFSが、前席を前方側にスライドさせて窓W1の下縁付近となるベルトラインBL付近に頭部Hを配置させて着座する際、エアバッグ21の厚く膨らんだ横膨張部31の横峰部32の前部32a側により、好適に、その小柄な乗員MFSの頭部Hを受け止めることができる。
【0073】
なお、膨張完了時の横膨張部31の下縁31bは、図例の場合、ベルトラインBLより若干高いが、横膨張部31が窓W1の下方の車内側を覆った状態として、ベルトラインBL近傍のベルトラインBLより下方の高さ位置となるように、配置させてもよい。
【0074】
さらに、実施形態では、エアバッグ21における傾斜膨張部28と横膨張部31とが、平らに展開させた各々の幅寸法B1,B2を、相互に略等しくしている。また、エアバッグ21の傾斜膨張部28が、エアバッグを平らに展開させた状態で、傾斜峰部29におけるエアバッグ21の前後方向に延びる下縁21bとの傾斜角度θを、略45°としての50°とし、かつ、上ガイド部58の下縁58aの下方への延長線LFを、横膨張部31における前下隅のコーナ部31c近傍に交差させるように、配設されている。
【0075】
そのため、実施形態では、傾斜膨張部28が、上ガイド部58で区画される上縁28a側で、ガス供給路部24からの前方に向かう膨張用ガスGを、略45°の斜め下方向で、かつ、横膨張部31の前下隅のコーナ部31c近傍に向けて直線的に流すことができて、エアバッグ21の前部21c側では、下縁21b側の全域が展開すると同時に、前縁21d側まで膨らむことができて、前窓遮蔽膨張部27の展開と膨張とを、極力、迅速に行うことができる。
【0076】
また、傾斜膨張部28と横膨張部31とは、ガス供給路部24より厚くして、略同径のパイプ状に膨らみ、かつ、前窓遮蔽膨張部27の前後方向の中間付近に、横峰部32と傾斜峰部29との交差部位30付近が配置される。この交差部位30付近では、乗員の頭部Hが、前側にずれても上側にずれても、共に、横峰部32と傾斜峰部29との何れかで円滑に受け止めることできて、平均的な中柄の乗員MFMの頭部Hを、広範囲にわたって、好適に受け止めることができる。
【0077】
なお、傾斜峰部29や上ガイド部58の下縁58aの下方への延長線LC,LFの傾斜角度θにおける略45°は、エアバッグ21の前部21c側の下縁側と前縁側との展開と膨張とを円滑に行えればよく、厳格に45°だけでなくともよい意味であり、その作用・効果を阻害しない範囲で、±30°となる15〜75°、望ましくは、±10°の35〜55°、さらに望ましくは、±5°の40〜50°の範囲内を指すものである。
【0078】
さらにまた、実施形態では、エアバッグ21におけるガス供給路部24の前端24aの下方から傾斜膨張部28の下方にかけるエリアに、横膨張部31の後端31dの下縁31b側における傾斜膨張部28との交差部位30付近に絞られた開口39aを配設させて、前窓遮蔽膨張部27の内圧上昇を抑制可能に、前窓遮蔽膨張部27から膨張用ガスGを流入させて膨張可能な調圧室39が、配設されている。
【0079】
そのため、実施形態では、膨張した前窓遮蔽膨張部27が乗員MFの頭部Hを受け止めて内圧を急激に上昇させた際、開口39aを経て、膨張用ガスGが調圧室39に流れることから、前窓遮蔽膨張部27の内圧値を減少させることができ、乗員の頭部Hをクッション性よく受け止めて保護することができる。
【0080】
さらに、実施形態では、エアバッグ21における横膨張部31の上方に、横膨張部31の前端31fの上縁31e側に連通口40aを配設させて、膨張用ガスGの流入により、フロントピラーガーニッシュ4の上端4auを押し開いて、フロントピラーガーニッシュ4の車外側に収納したエアバッグ21の前端部位の展開を容易にさせる押し開き用膨張部40が、配設されている。
【0081】
そのため、実施形態では、膨張用ガスGを流入させて前窓遮蔽膨張部27が膨張する際、連通口40aを経て、押し開き用膨張部40にも膨張用ガスGが流れる。そして、押し開き用膨張部40が膨張する際、フロントピラーガーニッシュ4を押し開くことから、エアバッグ21の前端部位が、収納部位のフロントピラー部FPから円滑に下方に展開できる。
【0082】
なお、実施形態のエアバッグ21では、前部21c側の前側膨張部位として、傾斜膨張部28と横膨張部31とを有した前窓遮蔽膨張部27の他に、調圧室39や押し開き用膨張部40を配設させており、これらの調圧室39や押し開き用膨張部40が膨張すれば、これらの部位でも乗員MFの頭部Hを受け止め可能となることから、これらの前窓遮蔽膨張部27、調圧室39、及び、押し開き用膨張部40からなる前側膨張部位によって、前席の乗員MFの頭部Hを広範囲で保護可能となる。
【0083】
また、フロントピラーガーニッシュを円滑に開かせることができれば、図6,7に示すエアバッグ21Aのように、前部21c側には、前窓遮蔽膨張部27と調圧室39とを配設するだけでもよい。このエアバッグ21Aの前窓遮蔽膨張部27は、実施形態のエアバッグ21の前窓遮蔽膨張部27と同様な傾斜膨張部28と横膨張部31とを備えて構成され、このエアバッグ21Aの調圧室39も、実施形態のエアバッグ21の調圧室39と同様に構成されている。そのため、このエアバッグ21Aは、押し開き用膨張部40の作用が無いだけで、実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0084】
なお、このエアバッグ21Aでは、上ガイド部58の下縁58aが、傾斜膨張部28の上縁28aを区画するとともに、下端から前後方向に沿って前方側に延び、横膨張部31の上縁31eを区画している。
【0085】
さらにまた、実施形態のエアバッグ21では、調圧室39を設けたものを示したが、調圧室39は無くしても良い。
【0086】
さらに、実施形態のエアバッグ21では、窓遮蔽膨張部として、前窓遮蔽膨張部27と後窓遮蔽膨張部34との2つを備えたものを示した、三列シート等の車両に対応するように、三個以上の窓遮蔽膨張部を配設させてもよい。
【符号の説明】
【0087】
21,21A…エアバッグ、
21a…上縁、
21b…下縁、
22…ガス流入部、
22a…車内側壁部、
22b…車外側壁部、
26…窓遮蔽膨張部、
27…前窓遮蔽膨張部、
27a…流入口、
28…傾斜膨張部、
29…傾斜峰部、
31…横膨張部、
32…横峰部、
39…調圧室、
39a…開口、
40…押し開き用膨張部、
40a…連通口、
42…非流入部、
58…上ガイド部、
59…下ガイド部、
LC…(傾斜峰部の)延長線、
θ…傾斜角度、
V…車両、
W1…窓、
G…膨張用ガス、
MF…乗員、
MFL…大柄乗員、
MFS…小柄乗員、
MFM…中柄乗員、
H…頭部、
S…頭部保護エアバッグ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグが、
膨張用ガスの流入時、車両の窓の車内側を覆うように、前記窓の上縁側から下方に展開膨張する構成とし、
平らに展開した状態の下縁側を上縁側に接近させるように折り畳んで、前記窓の上縁側に収納され、
膨張用ガスを流入させて車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨らむガス流入部と、前記車内側壁部と前記車外側壁部とを結合させたように構成されて膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備えて構成され、
前記ガス流入部が、
前後方向に並設された複数の前記窓を覆うように展開膨張し、前席側方の窓を覆う前窓遮蔽膨張部を含めた複数の窓遮蔽膨張部と、
前記エアバッグの上縁側に前後方向に沿って配置されて、前端を前記前窓遮蔽膨張部の後端上部に開口した流入口に連通させ、インフレーターからの膨張用ガスを前記前窓遮蔽膨張部に供給するガス供給路部と、
を備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグの前記前窓遮蔽膨張部が、膨張完了時に、
車幅方向の厚さを大きくした峰部として、前記流入口から斜め前下方向に延びる傾斜峰部と、傾斜峰部の下端から前方に延びる横峰部と、を配設させて構成されるように、
領域内に、前記非流入部を配設させること無く、前記流入口から斜め前下方向に延びるパイプ状の傾斜膨張部と、該傾斜膨張部の下端から、前記エアバッグの下縁における前記周縁部の下縁部位に隣接して前記エアバッグの下縁に沿って前方に延びるパイプ状の横膨張部と、を配設させて構成され、
前記傾斜膨張部が、
上縁側に配置されて、前記ガス供給路部の上縁側を区画する前記非流入部の部位から連続的に斜め前下方向に延びる上ガイド部と、下縁側に配置されて、前記ガス供給路部の下縁側を区画する前記非流入部の部位から斜め前下方向に延びる下ガイド部と、の間に配設されて、
前記傾斜膨張部と前記横膨張部とが、平らに展開させた各々の前記傾斜峰部と前記横峰部とに直交する方向の各々の幅寸法を、平らに展開させた前記ガス供給路部の上下方向の幅寸法より大きくして、配設されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグが、膨張完了時に、
前記傾斜膨張部の傾斜峰部の上端を、前記前席側方の窓の領域内における後上隅付近に配置させ、
前記横膨張部の下縁を、前記前席の窓の下縁の高さ付近に配置させるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグにおける前記傾斜膨張部と前記横膨張部とが、平らに展開させた各々の前記傾斜峰部と前記横峰部とに直交する方向の各々の幅寸法を、相互に略等しくして、
前記エアバッグの傾斜膨張部が、エアバッグを平らに展開させた状態で、
前記傾斜峰部におけるエアバッグの前後方向に延びる下縁との傾斜角度を、略45°として、かつ、
前記上ガイド部の下縁の下方への延長線を、前記横膨張部における前下隅のコーナ部近傍に交差させるように、
配設されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグにおける前記ガス供給路部の前端下方から前記傾斜膨張部の下方にかけるエリアに、前記横膨張部の後端下縁側における前記傾斜膨張部との交差部位付近に絞られた開口を配設させて、前記前窓遮蔽膨張部の内圧上昇を抑制可能に、前記前窓遮蔽膨張部から膨張用ガスを流入させて膨張可能な調圧室が、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグにおける前記横膨張部の上方に、
前記横膨張部の前端上縁側に連通口を配設させて、膨張用ガスの流入により、フロントピラー部の車内側を覆うガーニッシュを押し開いて、該ガーニッシュの車外側に収納した前記エアバッグの前端部位の展開を容易にさせる押し開き用膨張部が、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−206660(P2012−206660A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75077(P2011−75077)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】