説明

頭部装着型表示装置

【課題】イヤホンを備えない頭部装着型表示装置において、音声の聞きやすさを向上させる。
【解決手段】頭部装着型表示装置は、頭部装着型表示装置が使用者の頭部に装着された装着状態において、使用者の眼前に配置される覆眼部と、覆眼部の端部から延伸し、使用者の頭部に頭部装着型表示装置を保持するための保持部と、保持部の内側であって、保持部の長手方向の中央部から保持部の延伸方向の先端に位置する先端部までの間に内蔵されたスピーカーとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着する表示装置である頭部装着型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部に装着して用いられる表示装置である頭部装着型表示装置(Head Mounted Display、HMD)が知られている。頭部装着型表示装置は、例えば、液晶ディスプレイおよび光源を利用して画像を表す画像光を生成し、生成された画像光を投写光学系や導光板を利用して使用者の眼に導くことにより、使用者に虚像を認識させる。このような頭部装着型表示装置では、例えば眼鏡のように装着しながら、場所を選ばずどこでも画像(映像)や音声を楽しむことができる。
【0003】
従来の技術では、頭部装着型表示装置の装着時において、使用者は常に音声出力用のイヤホンを装着することが一般的であった。イヤホンの装着は、使用者にとって手間が掛かる上に、外観的にも好ましいものではなかった。また、長時間にわたるイヤホンの使用は、使用者にストレスを与えるおそれがあるという問題があった。このような問題を解決するために、耳部を非圧迫に音声を供給する音声出力部を使用者の耳部周辺に配置した頭部装着型表示装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−331730号公報
【特許文献2】特開2002−232810号公報
【特許文献3】特開平10−294983号公報
【特許文献4】特開2006−74798号公報
【特許文献5】特表2005−534269号公報
【特許文献6】特許03966318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、頭部装着型表示装置の装着時において、イヤホンを装着する必要はなくなっている。しかし、音声の聞きやすさに関しては、十分な工夫がされていないのが実情であった。
【0006】
本発明は、イヤホンを備えない頭部装着型表示装置において、音声の聞きやすさを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
頭部装着型表示装置であって、
前記頭部装着型表示装置が使用者の頭部に装着された装着状態において、使用者の眼前に配置される覆眼部と、
前記覆眼部の端部から延伸し、使用者の頭部に前記頭部装着型表示装置を保持するための保持部と、
前記保持部の内側であって、前記保持部の長手方向の中央部から前記保持部の延伸方向の先端に位置する先端部までの間に内蔵されたスピーカーと、
を備える、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、使用者の眼前に配置される覆眼部の端部から延伸し、使用者の頭部に頭部装着型表示装置を保持するための保持部の内側であって、保持部の長手方向の中央部から保持部の延伸方向の先端に位置する先端部までの間には、音の振動を利用者の外耳道から鼓膜、耳小骨を伝って内耳(蝸牛)へ伝達するためのスピーカーが内蔵される。この結果、イヤホンを備えない頭部装着型表示装置において、音声の聞きやすさを向上させることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の頭部装着型表示装置であって、
前記スピーカーは、前記保持部の内側であって、前記頭部装着型表示装置の装着時における使用者の耳の周辺に対応する位置に内蔵され、
前記保持部は、前記覆眼部の端部から、前記頭部装着型表示装置の装着時における使用者の側頭部に対応する位置にかけて延伸すると共に、前記スピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口が形成されている、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、スピーカーは、保持部の内側であって、さらに、頭部装着型表示装置の装着時における使用者の耳の周辺に対応する位置に内蔵され、保持部には、スピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に音の振動を伝えやすくするための開口が形成されているため、頭部装着型表示装置における音声の聞きやすさをより向上させることができる。
【0010】
[適用例3]
適用例1または2記載の頭部装着型表示装置であって、
前記保持部の内側には、さらに、
発振部と、
前記発振部に当接すると共に、使用者のこめかみまたは耳の後方に当接するための振動伝達部と、
が内蔵されている、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、保持部の内側には、さらに、発振部と、発振部に当接すると共に使用者のこめかみまたは耳の後方に当接するための振動伝達部とを備える骨伝導の機構が内蔵されている。骨伝導では、音の振動を利用者の頭蓋骨から直接内耳(蝸牛)へ伝達するため、騒音の激しい環境であっても、直接内耳にクリアな音を伝達することができる。この結果、頭部装着型表示装置における音声の聞きやすさをより向上させることができる。
【0011】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、さらに、
前記スピーカーの周囲をとり囲むと共に前記スピーカーの振動に共鳴する共鳴体であって、前記スピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口が形成された共鳴体を備える、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、頭部装着型表示装置は、さらに、スピーカーの周囲をとり囲むと共にスピーカーの振動に共鳴する共鳴体であって、スピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口が形成された共鳴体を備えるため、スピーカーの低音を増幅することができる。この結果、頭部装着型表示装置における音声の聞きやすさをより向上させることができる。
【0012】
[適用例5]
適用例2ないし4のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
前記保持部は、前記保持部の前記開口を除く少なくとも一部に緩衝材を含む、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、保持部は、保持部の開口を除く少なくとも一部に緩衝材を含むため、頭部装着型表示装置の装着感を向上させることができる。
【0013】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、さらに、
前記保持部の内側であって、前記保持部の長手方向の中央部までの間には、前記スピーカーと周波数特性の異なる第2のスピーカーが内蔵されていると共に、前記第2のスピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口が形成されている、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、保持部の内側であって、保持部の長手方向の中央部までの間には、スピーカーと周波数特性の異なる第2のスピーカーが内蔵され、第2のスピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口が形成されているため、スピーカーと、第2のスピーカーとの周波数特性を適切に選択することで、より良い音響効果を得ることができる。この結果、頭部装着型表示装置における音声の聞きやすさをより向上させることができる。
【0014】
[適用例7]
適用例3ないし6のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、さらに、
所定の条件に応じて、前記スピーカーと、前記発振部と、前記第2のスピーカーと、に対する電気信号の送信を制御する音源制御部を備える、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、所定の条件に応じて、スピーカーと、発振部と、第2のスピーカーと、に対する電気信号の送信を制御する音源制御部を備えるため、条件に応じてスピーカーと、発振部と、第2のスピーカーとを使い分けることができる。
【0015】
[適用例8]
適用例7記載の頭部装着型表示装置であって、
前記所定の条件は、再生中のコンテンツの種別、環境音、使用者からの指示の有無、もしくはこれらの組合せを用いた条件である、頭部装着型表示装置。
このような構成とすれば、再生中のコンテンツの種別や、環境音、使用者からの指示の有無等に従って、スピーカーと、発振部と、第2のスピーカーとを使い分けることができる。この結果、頭部装着型表示装置において、シーンに応じた音響効果を提供することができる。
【0016】
[適用例9]
適用例1ないし8のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、頭部装着型表示装置は、画像光を生成し射出させる画像光生成部と、射出された前記画像光を使用者の眼に導く光学部材と、を備え、前記光学部材は前記覆眼部として形成されていてもよい。また、適用例1ないし8のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、頭部装着型表示装置は、画像光を生成し射出させる画像光生成部を備え、前記画像光生成部は前記覆眼部として形成されていてもよい。
このような構成とすれば、様々な画像表示方式の頭部装着型表示装置において、適用例1ないし8と同様の効果を得ることができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、頭部装着型表示装置および頭部装着型表示装置の制御方法、頭部装着型表示システム、これらの方法、装置またはシステムの機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例における頭部装着型表示装置の外観の構成を示す説明図である。
【図2】保持部について説明するための説明図である。
【図3】ヘッドマウントディスプレイの構成を機能的に示すブロック図である。
【図4】画像光生成部によって画像光が射出される様子を示す説明図である。
【図5】使用者に認識される虚像の一例を示す説明図である。
【図6】第2実施例における保持部について説明するための説明図である。
【図7】第3実施例における保持部について説明するための説明図である。
【図8】第3実施例におけるヘッドマウントディスプレイの構成を機能的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
【0020】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例における頭部装着型表示装置の外観の構成を示す説明図である。頭部装着型表示装置HMは、頭部に装着する表示装置であり、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、HMD)とも呼ばれる。本実施例のヘッドマウントディスプレイHMは、使用者が、虚像を視認すると同時に外景も直接視認可能な光学透過型の頭部装着型表示装置である。
【0021】
ヘッドマウントディスプレイHMは、使用者の頭部に装着された状態において使用者に虚像を視認させる画像表示部20と、画像表示部20を制御する制御部(コントローラー)10とを備えている。
【0022】
画像表示部20は、使用者の頭部に装着される装着体であり、本実施例では眼鏡形状を有している。画像表示部20は、右保持部21と、右表示駆動部22と、左保持部23と、左表示駆動部24と、右光学パネル26と、左光学パネル28とを含んでいる。右光学パネル26および左光学パネル28は、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者の右および左の眼前に対応する位置に配置されている。右光学パネル26の一端と、左光学パネル28の一端は、それぞれ、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者の眉間に対応する位置で接続されている。右光学パネル26の他端である端部ERからは、右保持部21が延伸している。同様に、左光学パネル28の他端である端部ELからは、左保持部23が延伸している。
【0023】
右保持部21は、右光学パネル26の端部ERから、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者の側頭部に対応する位置にかけて、右光学パネル26とほぼ直角をなすように延伸して設けられた部材である。同様に、左保持部23は、左光学パネル28の端部ELから、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者の側頭部に対応する位置にかけて、左光学パネル28とほぼ直角をなすように延伸して設けられた部材である。右保持部21と、左保持部23は、眼鏡のテンプル(つる)のようにして、使用者の頭部にヘッドマウントディスプレイHMを保持する。
【0024】
右表示駆動部22は、右保持部21の内側(換言すれば、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者の頭部に対向する側)であって、右光学パネル26の端部ER側に配置されている。また、左表示駆動部24は、左保持部23の内側であって、左光学パネル28の端部EL側に配置されている。なお、以降では、右保持部21および左保持部23を総称して単に「保持部」と、右表示駆動部22および左表示駆動部24を総称して単に「表示駆動部」と、右光学パネル26および左光学パネル28を総称して単に「光学パネル」とも呼ぶ。
【0025】
表示駆動部は、図示しないLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)や、投写光学系等を含む。詳細は後述する。光学部材としての光学パネルは、図示しない導光板と、調光板とを含んでいる。導光板は、光透過性の樹脂材料等によって形成され、表示駆動部から取り込んだ画像光を使用者の眼に向けて射出させる。調光板は、薄板状の光学素子であり、ヘッドマウントディスプレイHMの表側(使用者の眼の側とは反対の側)を覆うように配置されている。調光板は、導光板を保護し、導光板の損傷や、汚れの付着等を抑制するとともに、調光板の光透過率を調整することにより、使用者の眼に入る外光量を調整し、虚像の視認のしやすさを調整することができる。なお、調光板は省略可能である。また、光学パネルは特許請求の範囲における「覆眼部」に相当する。
【0026】
画像表示部20は、さらに、画像表示部20を制御部10に接続するための接続部40を有している。接続部40は、制御部10に接続される本体コード48と、本体コード48が2本に分岐した右コード42と、左コード44と、分岐点に設けられた連結部材46と、を含んでいる。右コード42は、右保持部21の延伸方向の先端部APから右保持部21の筐体内に挿入され、右表示駆動部22に接続されている。同様に、左コード44は、左保持部23の延伸方向の先端部APから左保持部23の筐体内に挿入され、左表示駆動部24に接続されている。
【0027】
画像表示部20と制御部10とは、接続部40を介して各種信号の伝送を行う。本体コード48における連結部材46とは反対側の端部と、制御部10とのそれぞれには、互いに嵌合するコネクター(図示省略)が設けられており、本体コード48のコネクターと制御部10のコネクターとの嵌合/嵌合解除により、制御部10と画像表示部20とが接続されたり切り離されたりする。右コード42と、左コード44と、本体コード48には、例えば、金属ケーブルや、光ファイバーを採用することができる。
【0028】
制御部10は、ヘッドマウントディスプレイHMを操作するための装置である。制御部10は、点灯部12と、タッチパッド14と、十字キー16と、電源スイッチ18とを含んでいる。点灯部12は、ヘッドマウントディスプレイHMの動作状態(例えば、電源のON/OFF等)を、その発光状態によって通知する。点灯部12としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。タッチパッド14は、タッチパッド14の操作面上での使用者の指の操作を検出して、検出内容に応じた信号を出力する。十字キー16は、上下左右方向に対応するキーへの押下操作を検出して、検出内容に応じた信号を出力する。電源スイッチ18は、スイッチのスライド操作を検出することで、ヘッドマウントディスプレイHMの電源投入状態を切り替える。
【0029】
図2は、保持部について説明するための説明図である。図2(A)は、左保持部23を内側方向から見た拡大図である。左保持部23は、前方保持部23xと、後方保持部23yと、連結部23zとを備えている。
【0030】
前方保持部23xは、左保持部23のうち、左光学パネル28の端部ELから、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者のこめかみ周辺に対応する位置までを占める部材である。換言すれば、前方保持部23xは、左光学パネル28の端部ELから左保持部23の長手方向の中央部にかけて延伸する。なお、本実施例において「中央」とは、厳密な中央だけでなく「中央付近」の部分をも含む意味で使用する。前方保持部23xの内側には、左表示駆動部24が配置されている。
【0031】
後方保持部23yは、前方保持部23xの先端部から、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者の耳の後方に対応する位置までを占める部材である。換言すれば、後方保持部23yは、左保持部23の長手方向の中央部から左保持部23の先端部APにかけて延伸する。後方保持部23yは、クッション93を含んでいる。クッション93は、後方保持部23yの内側に配置されている。
【0032】
クッション93は、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者の耳付近に当接する位置において、幅広に配置された緩衝材である。クッション93は、例えば、ゴムやポリウレタン等の肌当たりの良い材料により形成されることが好ましい。そうすれば、ヘッドマウントディスプレイHMの装着感を向上させることができる。左保持部23のクッション93には、左スピーカーユニット320が内蔵されている。左スピーカーユニット320の詳細は後述する。
【0033】
連結部23zは、前方保持部23xと後方保持部23yとを連結する部材である。連結部23zは、後方保持部23yの先端部APを、水平方向FTに回動可能とする蝶番として機能する。
【0034】
図2(B)は、左スピーカーユニット320の断面の概略図である。左スピーカーユニット320は、スピーカー321と、共鳴体325とを備える。スピーカー321は、電気信号を物理振動に変換し、音波として、利用者の外耳道へ伝達する。振動は外耳道から、鼓膜、耳小骨(中耳)、内耳(蝸牛)、聴覚神経、脳の聴覚野の順序で伝達され、使用者に「音」として認識される。本実施例におけるスピーカー321は、円筒形状のボイスコイル322と、円筒形状の永久磁石323と、振動板324とを備えている。具体的には、永久磁石323の穴にあたる円筒形の空間に、穴部分よりも僅かに直径の小さいボイスコイル322が挿入されている。ボイスコイル322には、円錐形状を有する振動板324が固定されている。振動板324は、例えば、コーン紙等により形成される。
【0035】
共鳴体325は、スピーカー321の周囲を取り囲むように配置され、スピーカー321の振動に共鳴する。本実施例における共鳴体325は、箱形状であるが、任意の形状を採用することができる。共鳴体325は、スピーカー321が内蔵されている位置と対応する位置、具体的には、スピーカー321が有する振動板の円錐形状の広がり方向に相当する位置に、開口326が形成されている。
【0036】
同様に、クッション93においても、スピーカー321が内蔵されている位置と対応する位置、具体的には、スピーカー321が有する振動板の円錐形状の広がり方向に相当する位置に、開口327が形成されている。また、開口327の内側には、外部からの塵埃の侵入を抑制するための保護カバー328が配置されている。保護カバー328としては、例えば、金属製の網や、スポンジ等を採用することができる。
【0037】
なお、上記では、左保持部23を例示して説明したが、右保持部21についても下記と同様の構成を有する。すなわち、右保持部21も、前方保持部21xと、後方保持部21yと、連結部21zとを備え、後方保持部21yに含まれるクッション91には、右スピーカーユニット310が内蔵されている。右スピーカーユニット310は、ボイスコイル312と、永久磁石313と、振動板314からなるスピーカー311と、共鳴体315とを備えている。
【0038】
図3は、ヘッドマウントディスプレイHMの構成を機能的に示すブロック図である。制御部10は、入力情報取得部110と、記憶部120と、電源130と、CPU140と、インターフェイス180と、送信部(Tx)51および52と、を備え、各部は図示しないバスにより相互に接続されている。
【0039】
入力情報取得部110は、使用者による操作入力に応じた信号(例えば、タッチパッド14や十字キー16、電源スイッチ18に対する操作入力)を取得する機能を有する。記憶部120は、図示しないROM、RAM、DRAM、ハードディスク等を含む記憶部である。電源130は、ヘッドマウントディスプレイHMの各部に電力を供給する。電源130としては、例えば二次電池を用いることができる。
【0040】
CPU140は、予めインストールされたプログラムを実行することで、オペレーティングシステム(ОS)150としての機能を提供する。また、CPU140は、ROMやハードディスクに格納されているファームウェアやコンピュータープログラムをRAMに展開して実行することにより、画像処理部160、音声処理部170、表示制御部190としても機能する。詳細は後述する。
【0041】
インターフェイス180は、制御部10に対して、コンテンツの供給元となる種々の外部機器OA(例えば、パーソナルコンピューターPCや携帯電話端末、ゲーム端末)を接続するためのインターフェイスである。インターフェイス180としては、例えば、USBインターフェイスや、マイクロUSBインターフェイス、メモリーカード用インターフェイス、無線LANインターフェイス等を備えることができる。また、コンテンツとは、画像(静止画像、動画像)や音声等からなる情報内容を意味する。
【0042】
画像処理部160は、インターフェイス180を介して入力されるコンテンツに基づき、クロック信号PCLK、垂直同期信号VSync、水平同期信号HSync、画像データDataを生成し、接続部40を介してこれらの信号を画像表示部20に供給する。具体的には、画像処理部160は、コンテンツに含まれる画像信号を取得する。取得した画像信号は、例えば動画像の場合、一般的に、1秒あたり30枚のフレーム画像から構成されているアナログ信号である。画像処理部160は、取得した画像信号から、垂直同期信号VSyncや水平同期信号HSync等の同期信号を分離する。また、画像処理部160は、分離した垂直同期信号VSyncや水平同期信号HSyncの周期に応じて、図示しないPLL(Phase Locked Loop)回路等を利用してクロック信号PCLKを生成する。
【0043】
画像処理部160は、同期信号が分離されたアナログ画像信号を、図示しないA/D変換回路等を用いてデジタル画像信号に変換する。その後、画像処理部160は、変換後のデジタル画像信号を、対象画像の画像データData(RGBデータ)として、1フレームごとに記憶部120内のDRAMに格納する。なお、画像処理部160は、必要に応じて、画像データに対して、解像度変換処理、輝度や彩度の調整といった種々の色調補正処理、キーストーン補正処理等の画像処理を実行してもよい。
【0044】
画像処理部160は、生成したクロック信号PCLK、垂直同期信号VSync、水平同期信号HSyncと、記憶部120内のDRAMに格納された画像データDataとを、送信部51および52を介してそれぞれ送信する。なお、送信部51を介して送信される画像データDataを「右眼用画像データ」とも呼び、送信部52を介して送信される画像データDataを「左眼用画像データ」とも呼ぶ。送信部51、52は、制御部10と、画像表示部20との間におけるシリアル伝送のためのトランシーバーとして機能する。
【0045】
表示制御部190は、右表示駆動部22および左表示駆動部24を制御する制御信号を生成する。具体的には、表示制御部190は、制御信号により、右LCD制御部211による右LCD241の駆動ON/OFFや、右バックライト制御部201による右バックライト221の駆動ON/OFF、左LCD制御部212による左LCD242の駆動ON/OFFや、左バックライト制御部202による左バックライト222の駆動ON/OFF、などを個別に制御することにより、右表示駆動部22および左表示駆動部24のそれぞれによる画像光の生成および射出を制御する。例えば、表示制御部190は、右表示駆動部22および左表示駆動部24の両方に画像光を生成させたり、一方のみに画像光を生成させたり、両方共に画像光を生成させなかったりする。
【0046】
表示制御部190は、右LCD制御部211と左LCD制御部212とに対する制御信号を、送信部51および52を介してそれぞれ送信する。また、表示制御部190は、右バックライト制御部201と左バックライト制御部202とに対する制御信号を、それぞれ送信する。
【0047】
音声処理部170は、コンテンツに含まれる音声信号を取得し、取得した音声信号を増幅して、画像表示部20の右スピーカーユニット310のスピーカー311および左スピーカーユニット320のスピーカー321に対し、接続部40を介して供給する。なお、例えば、Dolby(登録商標)システムを採用した場合、音声信号に対する処理がなされる。この結果、右スピーカーユニット310および左スピーカーユニット320からは、それぞれ、例えば周波数等が変えられた異なる音が出力される。
【0048】
画像表示部20は、右表示駆動部22と、左表示駆動部24と、右光学パネル26としての右導光板261と、左光学パネル28としての左導光板262と、右スピーカーユニット310と、左スピーカーユニット320とを備えている。
【0049】
右表示駆動部22は、受信部(Rx)53と、光源として機能する右バックライト(BL)制御部201および右バックライト(BL)221と、表示素子として機能する右LCD制御部211および右LCD241と、右投写光学系251を含んでいる。なお、右バックライト制御部201と、右LCD制御部211と、右バックライト221と、右LCD241とを総称して「画像光生成部」とも呼ぶ。
【0050】
受信部53は、制御部10と、画像表示部20との間におけるシリアル伝送のためのレシーバーとして機能する。右バックライト制御部201は、入力された制御信号に基づいて、右バックライト221を駆動する機能を有する。右バックライト221は、例えば、LED等の発光体である。右LCD制御部211は、受信部53を介して入力されたクロック信号PCLKと、垂直同期信号VSyncと、水平同期信号HSyncと、右眼用画像データとに基づいて、右LCD241を駆動する機能を有する。右LCD241は、複数の画素をマトリクス状に配置した透過型液晶パネルである。
【0051】
図4は、画像光生成部によって画像光が射出される様子を示す説明図である。右LCD241はマトリクス状に配置された各画素位置に対応する液晶を駆動することによって、右LCD241を透過する光の透過率を変化させることにより、右バックライト221から照射される照明光ILを、画像を表す有効な画像光PLへと変調する機能を有する。なお、図4のように、本実施例ではバックライト方式を採用することとしたが、フロントライト方式や、反射方式を用いて画像光を射出する構成としてもよい。
【0052】
図3の右投写光学系251は、右LCD241から射出された画像光を並行状態の光束にするコリメートレンズによって構成される。右光学パネル26としての右導光板261は、右投写光学系251から出力された画像光を、所定の光路に沿って反射させつつ使用者の右眼に導く。なお、右投写光学系251と右導光板261とを総称して「導光部」とも呼ぶ。
【0053】
左表示駆動部24は、受信部(Rx)54と、光源として機能する左バックライト(BL)制御部202および左バックライト(BL)222と、表示素子として機能する左LCD制御部212および左LCD242と、左投写光学系252を含んでいる。なお、左バックライト制御部202と、左LCD制御部212と、左バックライト222と、左LCD242とを総称して「画像光生成部」と、左投写光学系252と、左導光板262とを総称して「導光部」とも呼ぶ。右表示駆動部22と左表示駆動部24とは対になっており、左表示駆動部24の各部は、右表示駆動部22で説明する各部と同様の構成および動作を有するため詳細な説明は省略する。
【0054】
図5は、使用者に認識される虚像の一例を示す説明図である。上述のようにして、ヘッドマウントディスプレイHMの使用者の両眼に導かれた画像光が使用者の網膜に結像することにより、使用者は虚像を視認することができる。図5に示すように、ヘッドマウントディスプレイHMの使用者の視野VR内には虚像VIが表示される。また、使用者の視野VRのうち、虚像VIが表示された部分以外については、使用者は、右光学パネル26および左光学パネル28を透過して、外景SCを見ることができる。なお、本実施例のヘッドマウントディスプレイHMでは、使用者の視野VRの内の虚像VIが表示された部分についても、虚像VIの背後に外景SCが透けて見えるようになっている。
【0055】
以上のように、第1実施例によれば、頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイHM)には、使用者の眼前に配置される覆眼部(右光学パネル26、左光学パネル28)の端部ER、ELから延伸し、使用者の頭部に頭部装着型表示装置を保持するための保持部(右保持部21、左保持部23)が設けられる。また、この保持部の内側であって、保持部の長手方向の中央部から保持部の延伸方向の先端に位置する先端部APまでの間に配置されたクッション91、93には、音の振動を利用者の外耳道から鼓膜、耳小骨を伝って内耳(蝸牛)へ伝達するためのスピーカー311、321が内蔵される。この結果、保持部の内側に内蔵されたスピーカーによって、イヤホンを備えない頭部装着型表示装置において、音声の聞きやすさを向上させることができる。
【0056】
さらに、上記第1実施例のように、スピーカー311、321は、保持部(右保持部21、左保持部23)の内側に配置されたクッション91、93の内部であって、さらに、頭部装着型表示装置の装着時における使用者の耳の周辺に対応する位置に内蔵されることが好ましい。また、保持部には、スピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に音の振動を伝えやすくするための開口(開口317、開口327)が形成されていることが好ましい。そうすれば、利用者の耳の周辺に対応する位置に内蔵されたスピーカーと、開口との存在によって、頭部装着型表示装置における音声の聞きやすさをより向上させることができる。
【0057】
さらに、上記第1実施例のように、頭部装着型表示装置は、スピーカー311、321の周囲をとり囲むと共にスピーカーの振動に共鳴する共鳴体315、325を備えることが好ましい。また、共鳴体は、スピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口316、326が形成されていることが好ましい。そうすれば、共鳴体によってスピーカーの低音を増幅することができ、この結果、頭部装着型表示装置における音声の聞きやすさをより向上させることができる。
【0058】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例では、保持部に、スピーカーユニットに代えて骨伝導の機構を内蔵した構成について説明する。以下では、第1実施例と異なる構成および動作を有する部分についてのみ説明する。なお、図中において第1実施例と同様の構成部分については先に説明した第1実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
図6は、第2実施例における保持部について説明するための説明図である。図6(A)は、左保持部23aを内側方向から見た拡大図である。左保持部23aは、前方保持部23xと、後方保持部23yaと、連結部23zとを備えている。
【0060】
後方保持部23yaに含まれるクッション93aの配置および材料は、第1実施例のクッション93と同様である。左保持部23aの内側に配置されたクッション93aには、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者のこめかみまたは耳の後方に相当する位置に骨伝導ユニット340が内蔵されている。
【0061】
図6(B)は、骨伝導ユニット340の断面の概略図である。骨伝導ユニット340は、電気信号を物理振動に変換して、利用者の頭蓋骨へ伝達する。振動は頭蓋骨から、内耳(蝸牛)、聴覚神経、脳の聴覚野の順序で伝達され、使用者に「音」として認識される。本実施例における骨伝導ユニット340は、円筒形状のボイスコイル342と、円柱形状の永久磁石343と、円柱形状の錘344と、円形平板状の振動伝達板345とを備えている。具体的には、永久磁石343は、その一面が錘344と接合されている。ボイスコイル342は、接合された永久磁石343と錘344の側面の少なくとも一部を取り巻くように配置され、かつ、他端が振動伝達板345に当接するように固定されている。振動伝達板345は、例えば、プラスチックやアルミニウムにより形成される。なお、錘344は省略可能である。また、ボイスコイル342と、永久磁石343とは、特許請求の範囲における「発振部」に、振動伝達板345は特許請求の範囲における「振動伝達部」に、それぞれ相当する。
【0062】
なお、上記では、左保持部23aを例示して説明したが、右保持部21aについても下記と同様の構成を有する。すなわち、右保持部21aも、前方保持部21xと、後方保持部21yaと、クッション91aと、連結部21zとを備え、クッション91aには、骨伝導ユニット330が内蔵されている。骨伝導ユニット330は、ボイスコイル332と、永久磁石333と、錘334と、振動伝達板335とを備えている。
【0063】
以上のように、第2実施例によれば、頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイHM)の保持部(右保持部21a、左保持部23a)の内側に配置されたクッション91a、93aには、ボイスコイル332、342と永久磁石333、343からなる発振部と、この発振部に当接すると共に使用者のこめかみまたは耳の後方に当接するための振動伝達部(振動伝達板335、345)とを備える骨伝導の機構(骨伝導ユニット330、340)が内蔵されている。骨伝導では、音の振動を利用者の頭蓋骨から直接内耳(蝸牛)へ伝達するため、騒音の激しい環境であっても、直接内耳にクリアな音を伝達することができる。この結果、頭部装着型表示装置における音声の聞きやすさをより向上させることができる。
【0064】
C.第3実施例:
本発明の第3実施例では、保持部に、2つのスピーカーユニットと、骨伝導の機構とを内蔵した構成について説明する。以下では、第1、第2実施例と異なる構成および動作を有する部分についてのみ説明する。なお、図中において第1、第2実施例と同様の構成部分については先に説明した第1、第2実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図7は、第3実施例における保持部について説明するための説明図である。図7は、左保持部23bを内側方向から見た拡大図である。左保持部23bは、前方保持部23xbと、後方保持部23ybと、連結部23zとを備えている。
【0066】
前方保持部23xbの内側には、左表示駆動部24bが配置されている。左表示駆動部24bは、左サブスピーカーユニット360を内蔵する点でのみ、第1実施例と異なる。左サブスピーカーユニット360は、その周波数特性が異なる部分を除いては、第1実施例で説明した左スピーカーユニット320と同じである。
【0067】
後方保持部23ybは、前方保持部23xbの先端部から、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者の耳の後方に対応する位置にかけて、回り込むように延伸した部材である。第1実施例における後方保持部23yとは、その長手方向の長さが長く、かつ、先端部APが先細り形状を有さない点が異なる。
【0068】
クッション93bは、後方保持部23ybの内側において、幅広に配置された緩衝材である。クッション93bの材料については第1実施例と同じである。クッション93bのうち、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時における使用者の耳の周辺に対応する位置には、左スピーカーユニット320が内蔵されている。左スピーカーユニット320の詳細は第1実施例と同じである。さらに、クッション93bのうち、ヘッドマウントディスプレイHMの装着時のける使用者の耳の後方に対応する位置には、骨伝導ユニット340が内蔵されている。骨伝導ユニット340の詳細は第2実施例と同じである。
【0069】
図8は、第3実施例におけるヘッドマウントディスプレイHMの構成を機能的に示すブロック図である。図3に示した第1実施例との違いは、音声処理部170が、さらに出力制御部171を備える点と、左右のスピーカーユニット310、320に加えて、さらに左右の骨伝導ユニット330、340と、左右のサブスピーカーユニット350、360を備える点のみであり、他の構成や動作は第1実施例と同様である。
【0070】
出力制御部171は、所定の条件に応じて、左右のスピーカーユニット310、320のスピーカー311、312と、左右の骨伝導ユニット330、340のボイスコイル332、342と、左右のサブスピーカーユニット350、360のスピーカー351、361と、に対する電気信号の送信を制御する機能を有する。
【0071】
例えば、出力制御部171は、左右のスピーカーユニット310、320の周波数特性(音響特性)と、左右のサブスピーカーユニット350、360の周波数特性(音響特性)と、左右の骨伝導ユニット330、340の音響特性とを考慮した所定の条件に応じて、各ユニットへの電気信号の送信を制御することができる。この場合、所定の条件には、再生中のコンテンツの種別や、コンテンツ内容の解析結果や、利用者の設定等を採用することができる。例えば、左右のスピーカーユニット310、320は低〜中音再生能力に優れ、骨伝導ユニット330、340は中音を含む低音再生能力に優れ、左右のサブスピーカーユニット350、360は高音再生能力に優れていた場合であって、再生中のコンテンツが「映画」であった場合は、出力制御部171は、左右のスピーカーユニット310、320と、骨伝導ユニット330、340とに対してのみ電気信号を送信することとしてもよい。
【0072】
例えば、出力制御部171は、外界の環境音を取得し、この環境音を考慮した所定の条件に応じて、各ユニットへの電気信号の送信を制御することができる。環境音は、例えば、ヘッドマウントディスプレイHMにマイクを備えることにより取得することができる。この場合、所定の条件には、環境音の大きさ等を採用することができる。例えば、取得した環境音が小さい場合は、利用者は比較的静かな環境でヘッドマウントディスプレイHMを使用していることが推定されるため、出力制御部171は、左右のスピーカーユニット310、320と、左右のサブスピーカーユニット350、360とに対して電気信号を送信する。一方、取得した環境音が大きい場合は、利用者は雑踏の中や駅等の騒々しい環境でヘッドマウントディスプレイHMを使用していることが推定されるため、出力制御部171は、左右のスピーカーユニット310、320と、左右のサブスピーカーユニット350、360とに加えて、骨伝導ユニット330、340に対しても電気信号を送信する。
【0073】
例えば、出力制御部171は、使用者からの指示を取得し、指示に応じて各ユニットへの電気信号の送信を制御することができる。例えば、ヘッドマウントディスプレイHMにおいて「マナーモード」を選択可能とする。出力制御部171は、マナーモードが選択されていない場合は、左右のスピーカーユニット310、320と、骨伝導ユニット330、340と、左右のサブスピーカーユニット350、360との全てに対して電気信号を送信する。一方、出力制御部171は、マナーモードが選択されている場合は、骨伝導ユニット330、340に対してのみ電気信号を送信する。骨伝導は、使用者の生体内部を伝播する音であるため、このようにすれば、周囲に音を漏らすことなく、使用者は音声を楽しむことができる。
【0074】
なお、外界の環境音は、制御部10や画像表示部20等にマイクを備えることで、取得可能である。また、上記「所定の条件」は、予めヘッドマウントディスプレイHM内の記憶部120に記憶させておくことが可能であるし、ヘッドマウントディスプレイHMの利用者により設定されてもよい。
【0075】
以上のように、第3実施例によれば、ヘッドマウントディスプレイHMには、さらに保持部(右保持部21b、左保持部23b)の内側であって、覆眼部の端部ER、ELから保持部の長手方向の中央部までの間に配置された表示駆動部22、24の内側には、スピーカー311、321とは周波数特性の異なる第2のスピーカー(左右のサブスピーカーユニット350、360のスピーカー351、361)が内蔵され、第2のスピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口が形成されている。このため、スピーカーと、第2のスピーカーとの周波数特性を適切に選択することで、より良い音響効果を得ることができる。
【0076】
さらに、第3実施例によれば、ヘッドマウントディスプレイHMの出力制御部171は、再生中のコンテンツの種別や、環境音、使用者からの指示の有無等に従って、スピーカー(左右のスピーカーユニット310、320のスピーカー311、312)と、発振部(左右の骨伝導ユニット330、340のボイスコイル332、342)と、第2のスピーカー(左右のサブスピーカーユニット350、360のスピーカー351、361)とを使い分けることができる。この結果、頭部装着型表示装置において、上述のように、シーンに応じた音響効果を提供することができる。
【0077】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の構成をとることができる。例えば、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。そのほか、以下のような変形が可能である。
【0078】
D1.変形例1:
上記実施例では、ヘッドマウントディスプレイの構成について例示した。しかし、ヘッドマウントディスプレイの構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に定めることが可能であり、例えば、各構成部の追加・削除・変換等を行うことができる。
【0079】
例えば、覆眼部は、使用者の眼を完全に覆う態様でなくともよく、使用者の眼前の一部に被っていれば足りる。また、覆眼部は、使用者の両眼の眼前に配置される必要はなく、使用者の片目の眼前に配置されていれば足りる。
【0080】
例えば、上記実施例では、保持部は、その内側に表示駆動部が配置される前方保持部と、使用者の頭部に沿うよう回動する後方保持部とにわかれているものとした。しかし、保持部は、例えばフレキシブルな素材で形成されることによって、前方保持部・後方保持部の区別のない一体成型としてもよい。
【0081】
例えば、保持部のクッション(緩衝材)は省略可能である。しかし、ヘッドマウントディスプレイの装着感を向上させるという観点からは、クッションは省略しないことが好ましい。例えば、保持部のクッションに設けられた開口は省略可能である。しかし、スピーカーを含むスピーカーユニットから発せられる音波を利用者の外耳道へ伝達させやすくするためには、省略しないことが好ましい。例えば、開口に設けられる保護カバーは省略可能である。しかし、外部からの塵埃の侵入を抑制するという観点からは、保護カバーは省略しないことが好ましい。
【0082】
例えば、接続部のうちの右コードと、左コードとは、それぞれ、右表示駆動部の下方面、左表示駆動部の下方面から挿入され、接続される態様でもよい。また、例えば、接続部を省略し、制御部と、画像表示部とが無線通信可能な構成としてもよい。具体的には、制御部にさらに、無線通信部を備えると共に、画像表示部にさらに、無線通信部と、電源とを備える構成とする。
【0083】
例えば、図1に示した制御部、画像表示部の構成は任意に変更することができる。具体的には、例えば、制御部からタッチパネルを省略し、十字キーのみで操作する構成としてもよい。また、制御部に操作用スティック等の他の操作用インターフェイスを備えても良い。また、制御部にはキーボードやマウス等のデバイスを接続可能な構成として、キーボードやマウスから入力を受け付けるものとしてもよい。また、制御部にWi−Fi(wireless fidelity)等を用いた通信部を設けてもよい。
【0084】
例えば、図1に示した制御部は、有線の信号伝送路を介して画像表示部と接続されているものとした。しかし、制御部と、画像表示部とは、無線LANや赤外線通信やBluetooth(登録商標)等の無線の信号伝送路を介した接続により接続されていてもよい。
【0085】
例えば、ヘッドマウントディスプレイは、両眼タイプの透過型ヘッドマウントディスプレイであるものとしたが、使用者がヘッドマウントディスプレイを装着した状態において外景が遮断される非透過型ヘッドマウントディスプレイとして構成してもよい。また、単眼タイプのヘッドマウントディスプレイとしてもよい。
【0086】
例えば、画像光生成部は、左右のバックライト制御部と、左右のLCD制御部と、左右のバックライトと、左右のLCDとを用いて構成されるものとしたが、これらに代えて、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)と、有機EL制御部とを用いても良い。有機ELの場合、温度上昇に伴う劣化がLCDよりも激しいため、本発明が特に有効である。なお、有機ELおよび有機EL制御部は請求項における「画像光生成部」に相当する。
【0087】
例えば、画像処理部、表示制御部、音声処理部、出力制御部等の機能部は、CPUがROMやハードディスクに格納されているコンピュータープログラムをRAMに展開して実行することにより実現されるものとして記載した。しかし、これら機能部は、当該機能を実現するために設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)を用いて構成されてもよい。
【0088】
例えば、上記実施例では、画像表示部を眼鏡のように装着するヘッドマウントディスプレイであるとしているが、画像表示部が通常の平面型ディスプレイ装置(液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置等)であるとしてもよい。この場合にも、制御部と画像表示部との間の接続は、有線の信号伝送路を介した接続であってもよいし、無線の信号伝送路を介した接続であってもよい。このようにすれば、制御部を、通常の平面型ディスプレイ装置のリモコンとして利用することができる。
【0089】
また、画像表示部として、眼鏡のように装着する画像表示部に代えて、例えば帽子のように装着する画像表示部といった他の形状の画像表示部を採用してもよい。その場合、例えば、各音声出力ユニット(左右のスピーカーユニット、左右の骨伝導ユニット、左右のサブスピーカーユニット)は、帽子の耳あて部に相当する位置に設けることができる。
【0090】
例えば、上記実施例では、電源として二次電池を用いることしたが、電源としては二次電池に限らず、種々の電池を使用することができる。例えば、一次電池や、燃料電池、太陽電池、熱電池等を使用してもよい。
【0091】
D2.変形例2:
上記実施例において、画像処理部は、同じ画像データを右眼用画像データおよび左眼用画像データとして出力することとした。しかし、画像処理部は、右眼用画像データと、左眼用画像データとを、異なる画像データにすることで、使用者に3Dの虚像を視認させることが可能な構成としてもよい。
【0092】
D3.変形例3:
上記実施例では、ヘッドマウントディスプレイにおいて、各音声出力ユニットを設けた態様の一例について例示した。しかし、ヘッドマウントディスプレイにこれらユニットを設ける場合は、上記例示の態様に限られず、種々の態様を採用することが可能である。
【0093】
例えば、上記第1、第2実施例では、ヘッドマウントディスプレイに単一の音声出力ユニットを設けた構成を、上記第3実施例では、ヘッドマウントディスプレイに3つの音声出力ユニットを設けた構成を例示した。しかし、ヘッドマウントディスプレイに搭載される音声出力ユニットの数、およびその組み合わせは任意である。例えば、ヘッドマウントディスプレイにスピーカーユニットと、骨伝導ユニットとの2つの音声出力ユニットを搭載してもよい。また、ヘッドマウントディスプレイに骨伝導ユニットと、サブスピーカーユニットとの2つの音声出力ユニットを搭載してもよい。
【0094】
例えば、スピーカーユニットに含まれるスピーカーの構成として、ダイナミック型のスピーカーの構成を例示したが、スピーカーであればダイナミック型に限られず、他の構成を採用してもよい。骨伝導ユニットの構成や、サブスピーカーユニットの構成についても同様である。
【0095】
例えば、スピーカーを含むスピーカーユニットは、保持部の内側に配置されたクッションの内部であって、さらに、ヘッドマウントディスプレイの装着時における使用者の耳の周辺に対応する位置に内蔵されることが好ましいとした。しかし、スピーカーユニットは、保持部の内側であって、保持部の長手方向の中央部から保持部の延伸方向の先端部までの間であれば、任意の位置に内蔵することができる。すなわち、クッションは省略可能であるし、スピーカーユニットは使用者の耳の周辺に対応する位置以外の位置に内蔵されていてもよい。
【0096】
例えば、共鳴体や、共鳴体に設けられた開口は省略可能である。しかし、共鳴体を設けることによってスピーカーの低音を増幅可能であるため、省略しないことが好ましい。
【0097】
D4.変形例4:
上記第3実施例では、出力制御部が実行する処理の一例を示した。しかし、出力制御部が実行する処理は、上記例示に限られず、種々の変更をすることができる。
【0098】
例えば、出力制御部は、再生中のコンテンツの種別、環境音、使用者からの指示の有無以外にも、コンテンツ内容の解析結果など、様々な条件に基づいて、各音声出力ユニットへの電気信号の送信を制御することができる。
【0099】
D5.変形例5:
上記実施例では、投写型の頭部装着型表示装置を例示した。具体的には、上記実施例では、使用者の眼前には、覆眼部としての光学パネル(光学部材)が配置され、また、覆眼部から延伸した保持部の内側であって、覆眼部の端部側には、画像光を生成し射出させる画像光生成部が配置されるものとした。そして、当該光学パネルが、画像光生成部から取り込んだ画像光を使用者の眼に向けて射出させることで、使用者の眼前に虚像を表示させる構成を採用した。しかし、上記実施例の構成はあくまで一例であり、様々な画像表示方式を採用することができる。
【0100】
例えば、直視型の頭部装着型表示装置とすることもできる。具体的には、使用者の眼前に覆眼部としての画像光生成部が配置されることによって、使用者に、画像光生成部のLCDに表示された画像を直接視認させる構成としてもよい。また、例えば、レーザー網膜投影型の頭部装着型表示装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0101】
10…制御部(コントローラー)
12…点灯部
14…タッチパッド
16…十字キー
18…電源スイッチ
20…画像表示部
21、21a、21b…右保持部(保持部)
21x…前方保持部
21y、21ya、21yb…後方保持部
21z…連結部
22…右表示駆動部
23、23a、23b…左保持部(保持部)
23x、23xb…前方保持部
23y、23ya、23yb…後方保持部
23z…連結部
24…左表示駆動部
26…右光学パネル(覆眼部)
28…左光学パネル(覆眼部)
40…接続部
42…右コード
44…左コード
46…連結部材
48…本体コード
51…送信部
52…送信部
53…受信部
54…受信部
91、91a、91b…クッション(緩衝材)
93、93a、93b…クッション(緩衝材)
110…入力情報取得部
120…記憶部
130…電源
140…CPU
160…画像処理部
170…音声処理部
171…出力制御部
180…インターフェイス
190…表示制御部
201…右バックライト制御部
202…左バックライト制御部
211…右LCD制御部
212…左LCD制御部
221…右バックライト
222…左バックライト
241…右LCD
242…左LCD
251…右投写光学系
252…左投写光学系
261…右導光板
262…左導光板
280…電源
310…右スピーカーユニット
311…スピーカー
312…ボイスコイル
313…永久磁石
314…振動板
315…共鳴体
316…開口
317…開口
320…左スピーカーユニット
321…スピーカー
322…ボイスコイル
323…永久磁石
324…振動板
325…共鳴体
326…開口
327…開口
328…保護カバー
330…骨伝導ユニット
332…ボイスコイル(発振部)
333…永久磁石(発振部)
334…錘
335…振動伝達板
340…骨伝導ユニット
342…ボイスコイル(発振部)
343…永久磁石(発振部)
344…錘
345…振動伝達板
350…右サブスピーカーユニット
351…スピーカー
360…左サブスピーカーユニット
361…スピーカー
PCLK…クロック信号
VSync…垂直同期信号
HSync…水平同期信号
Data…画像データ
EL…端部
ER…端部
OA…外部機器
PC…パーソナルコンピューター
SC…外景
VI…虚像
IL…照明光
PL…画像光
HM…ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型表示装置)
VR…視野

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部装着型表示装置であって、
前記頭部装着型表示装置が使用者の頭部に装着された装着状態において、使用者の眼前に配置される覆眼部と、
前記覆眼部の端部から延伸し、使用者の頭部に前記頭部装着型表示装置を保持するための保持部と、
前記保持部の内側であって、前記保持部の長手方向の中央部から前記保持部の延伸方向の先端に位置する先端部までの間に内蔵されたスピーカーと、
を備える、頭部装着型表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の頭部装着型表示装置であって、
前記スピーカーは、前記保持部の内側であって、前記頭部装着型表示装置の装着時における使用者の耳の周辺に対応する位置に内蔵され、
前記保持部は、前記覆眼部の端部から、前記頭部装着型表示装置の装着時における使用者の側頭部に対応する位置にかけて延伸すると共に、前記スピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口が形成されている、頭部装着型表示装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の頭部装着型表示装置であって、
前記保持部の内側には、さらに、
発振部と、
前記発振部に当接すると共に、使用者のこめかみまたは耳の後方に当接するための振動伝達部と、
が内蔵されている、頭部装着型表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、さらに、
前記スピーカーの周囲をとり囲むと共に前記スピーカーの振動に共鳴する共鳴体であって、前記スピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口が形成された共鳴体を備える、頭部装着型表示装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
前記保持部は、前記保持部の前記開口を除く少なくとも一部に緩衝材を含む、頭部装着型表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、さらに、
前記保持部の内側であって、前記保持部の長手方向の中央部までの間には、前記スピーカーと周波数特性の異なる第2のスピーカーが内蔵されていると共に、前記第2のスピーカーが内蔵されている位置と対応する位置に開口が形成されている、頭部装着型表示装置。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、さらに、
所定の条件に応じて、前記スピーカーと、前記発振部と、前記第2のスピーカーと、に対する電気信号の送信を制御する出力制御部を備える、頭部装着型表示装置。
【請求項8】
請求項7記載の頭部装着型表示装置であって、
前記所定の条件は、再生中のコンテンツの種別、環境音、使用者からの指示の有無、もしくはこれらの組合せを用いた条件である、頭部装着型表示装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
画像光を生成し射出させる画像光生成部と、
射出された前記画像光を使用者の眼に導く光学部材と、
を備え、
前記光学部材は、前記覆眼部として形成されている、頭部装着型表示装置。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか一項記載の頭部装着型表示装置であって、
画像光を生成し射出させる画像光生成部を備え、
前記画像光生成部は、前記覆眼部として形成されている、頭部装着型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93808(P2013−93808A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236050(P2011−236050)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】