説明

頭髪化粧料

【課題】乳化組成物における使用時の審美性を高めて、塗布後の毛髪には不自然な輝きを付与しない頭髪化粧料の提供。
【解決手段】ミツロウと、界面活性剤と、水とからなる乳化組成物中に、ポリビニルアルコールおよびホウ砂を含有してなる頭髪化粧料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
頭髪化粧料には、液状、ジェル状、泡沫状、霧状、クリーム状、ワックス状などの様々な剤型がある。近年では、整髪時に自由にヘアアレンジすることができるともに、整髪後も手直しが容易な剤型として、油剤と水を用いた乳化剤型であるヘアクリーム、ヘアワックスが主流となっている。一方で、近年の需要者は、頭髪化粧料の機能性に加えて、製品外観上の美しさをも求める傾向にあり、製品の審美性は、化粧料の機能性、品質と並ぶ重要な要素となってきている。
【0003】
しかしながら、これらヘアクリーム、ヘアワックスといった乳化組成物は、整髪性の観点から、ロウ類などの室温で固形の油剤が多量に配合されているために乳白濁色、乳白黄色、或いは灰色などを呈しており、使用時の審美性に劣るものであった。
【0004】
これまで、製品外観上の美しさを付与する試みとしては。例えば、界面活性剤、水不溶性シリコーン誘導体、パール顔料および水を含有する化粧料(特許文献1を参照)、粘度20000cp以上の水不溶性シリコーンおよび雲母チタンを含有する毛髪化粧料(特許文献2を参照)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、これら試みに拠って、常時、製品外観上の美しさを付与し、使用時の審美性を高めることはできるものの、パール顔料などを配合する手段では、毛髪にまでパール顔料独特の不自然なキラキラ感を付与してしまう、若しくは、毛髪からパール顔料が剥がれ落ち、衣類や周囲の環境を汚染するといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−43431号公報
【特許文献2】特開平1−224310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、乳化組成物における使用時の審美性を高めて、塗布後の毛髪には不自然な輝きを付与しない頭髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、ミツロウと、界面活性剤と、水とからなる乳化組成物中に、ポリビニルアルコールおよびホウ砂を含有してなる頭髪化粧料に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の頭髪化粧料は、製品外観上は従来の乳化組成物と変わりはないものの、容器からの取り出し時又は吐出時において、内容する乳化組成物にずり応力がかかると、そのずり応力がかかった箇所の表面のみが瞬時に煌びやかな輝きを放つという効果を奏し、使用時の審美性を高めるという効果を奏する。また、本発明の頭髪化粧料は、使用時の審美性のみを高め、塗布後の毛髪には不自然な輝きを付与しないものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の頭髪化粧料は、ミツロウと、界面活性剤と、水とからなる乳化組成物中に、ポリビニルアルコールおよびホウ砂を含有する。
【0011】
用いられるミツロウとは、ミツバチの巣から蜂蜜をとった残渣より、加温圧搾法あるいは溶剤抽出法によって得られるロウである。本発明においては、該ミツロウを日光漂白法、化学的漂白法、吸着により漂白したサラシミツロウを用いても、ミツロウとサラシミツロウを併用しても良い。
【0012】
ミツロウの含有量は、乳化組成物とすることができるのであれば特に限定されないが、通常、乳化の観点から、化粧料中、0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0013】
用いられる界面活性剤としては、乳化することができるものであれば特に限定されないが、例えば、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0014】
具体的な非イオン性界面活性剤としては、モノステアリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリン、モノカプリル酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリンなどのグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシピロピレンオレイルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンヒマシ油;ポリオキシエチレンラノリン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0015】
具体的な陽イオン性界面活性剤としては、ジオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリラウリルアミンなどのアルキルアミン塩;ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドなどの脂肪酸アミドアミン塩;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(20〜22)トリメチルアンモニウムなどのモノアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウムなどのジアルキル型4級アンモニウム塩;塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウムなどのトリアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ベンザルコニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどのベンザルコニウム型4級アンモニウム塩などを例示することができる。
【0016】
界面活性剤の含有量は、乳化組成物とすることができるのであれば特に限定されないが、通常、乳化の観点から、化粧料中、0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0017】
用いられる水は、化粧料原料として使用できるものであれば特に限定はされないが、通常、精製水が用いられる。水の含有量は、乳化組成物とする観点から、化粧料中、20〜99質量%が好ましく、より好ましくは40〜95質量%である。
【0018】
本発明においては、上記した乳化組成物中に、下述するポリビニルアルコールおよびホウ砂を含有させることで、ずり応力のかかった箇所が煌びやかに輝きを放ち、使用時の審美性を高めるという本発明の特有の効果を奏することができる。
【0019】
用いられるポリビニルアルコールとは、ポリ酢酸ビニルをメタノール存在下でけん化することによって得られるものである。好適なポリビニルアルコールとしては、光沢性の観点から、10%水溶液における粘度が、200〜10000mPa・sの範囲となるポリビニルアルコールを用いるのが好ましく、500〜5000mPa・sの範囲となるポリビニルアルコールを用いるのがより好ましい。
【0020】
尚、ポリビニルアルコールは、市販品をそのまま使用することができる。具体的には、例えば、ゴーセノールEG−40(商品名,日本合成化学工業社製)などを例示することができる。
【0021】
ポリビニルアルコールの含有量は、本発明の特有の効果を奏するのであれば特に限定されないが、化粧料中、0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜7質量%である。含有量が、0.5質量%未満の場合、ずり応力のかかった箇所が煌びやかな輝きに劣り、また、10質量%を超えて配合した場合、乳化が困難となるため、何れの場合も好ましくない。
【0022】
用いられるホウ砂の含有量は、本発明の特有の効果を奏するのであれば特に限定されないが、化粧料中、0.01〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1質量%である。含有量が、0.01質量%未満の場合、ずり応力のかかった箇所が煌びやかな輝きに劣り、また、3質量%を超えて配合した場合、乳化が困難となるため、何れの場合も好ましくない。
【0023】
尚、ホウ砂は、市販品をそのまま使用することができる。具体的には、例えば硼砂(商品名,ボラックス・ジャパン社製)などを例示することができる。
【0024】
また、本発明の頭髪化粧料における乳化組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、ミツロウ以外の油剤、多価アルコール、低級アルコール、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤、保湿剤、清涼剤、ビタミン類、植物抽出物などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0025】
ミツロウ以外の油剤としては、例えば、油脂、ミツロウ以外のロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル油、シリコーン油などを例示することができる。これら油剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0026】
具体的な油脂としては、ヒマワリ油、綿実油、大豆油、オリーブ油、ヤシ油、ヒマシ油、ホホバ油、椿油、ミンク油などを例示することができる。
【0027】
具体的なミツロウ以外のロウ類としては、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリンなどを例示することができる。
【0028】
具体的な炭化水素油としては、セレシン、パラフィンワックス、流動パラフィン、流動イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ワセリン、スクワランなどを例示することができる。
【0029】
具体的な高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、2−エチルブタン酸、イソペンタン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などを例示することができる。
【0030】
具体的な高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコールなどを例示することができる。
【0031】
具体的な脂肪酸エステル油としては、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシルなどを例示することができる。
【0032】
メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンなどを例示することができる。
【0033】
ミツロウ以外の油剤の含有量は、乳化組成物とすることができるのであれば特に限定されないが、通常、乳化の観点から、化粧料中、0.5〜50質量%が好ましく、より好ましくは1〜40質量%である。
【0034】
具体的な多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオールなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0035】
多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、通常、使用感の観点から、化粧料中、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%である。
【0036】
本発明の整髪化粧料における乳化組成物は、前記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いた転相乳化法などにより乳化することにより製造することができる。また、混合と乳化は別々に行っても同時に行ってもよい。
【0037】
また、本発明の整髪化粧料の製品形態は、ずり応力のかかった箇所が煌びやかに輝くという本発明の特有の効果を奏することができれば特に限定されないが、例えば、指先で中味を取る際に光沢を発揮させるのであれば広口容器(ジャー容器)に充填した形態が好ましく、吐出時に光沢を発揮させるのであればチューブ容器又はポンプ容器に充填した形態とすることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0039】
(試料の調製)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1〜4および比較例1〜4の各試料を常法に準じて乳化組成物を調製し、広口容器に充填した頭髪化粧料の形態で下記評価に供した。結果をそれぞれ表1および表2に併記する。
【0040】
(試験例1:使用時の輝きの評価)
実施例および比較例で得られた各試料を、120g容の広口容器に充填した。次いで、実際に指先で乳化組成物の表面を削ぎ取るようにして内容物を取り出し、表面状態を下記の評価基準に従って目視評価した。
【0041】
<評価基準>
○:ずり応力のかかった箇所が煌びやかに輝く(光沢を発する)
×:ずり応力のかかった箇所が煌びやかに輝かない(光沢を発しない)
【0042】
(試験例2:塗布後の輝きの評価)
実施例で得られた各試料を、ウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)の毛髪に塗布して整髪を施し、塗布後の毛髪の輝きについて下記の評価基準に従って目視評価した。
【0043】
<評価基準>
○:不自然な輝きがない
×:不自然な輝きがある
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1および表2に示された結果から、各実施例で得られた頭髪化粧料は、各比較例で得られたものと対比して、内容する乳化組成物にずり応力がかかると、そのずり応力がかかった箇所の表面のみが瞬時に煌びやかな輝きを放っていることが分かる。また、各実施例で得られた頭髪化粧料は、塗布後の毛髪には不自然な輝きを付与しないものであることも分かる。このことから、本発明の頭髪化粧料は、使用時の審美性のみを高め、塗布後の毛髪には不自然な輝きを付与しないものであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミツロウと、界面活性剤と、水とからなる乳化組成物中に、ポリビニルアルコールおよびホウ砂が含有されてなる頭髪化粧料。

【公開番号】特開2011−148721(P2011−148721A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10002(P2010−10002)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】