説明

顆粒の製造方法

【課題】徐放性を有するとともに、耐熱性および耐水性に優れ、高い真球度と硬度を有する有機天然高分子を含有する顆粒を提供すること。
【解決手段】有機天然高分子とアルギン酸カルシウムとを含有する顆粒の製造方法。有機天然高分子およびカルシウム塩を含む粉体または粒状物にアルギン酸塩含有水溶液を添加し、該カルシウム塩とアルギン酸塩の少なくとも一部を反応させてアルギン酸カルシウムを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機天然高分子を主成分とし、アルギン酸塩とカルシウム塩とのゲル化による被膜を有する、耐水性、耐熱性に優れ、かつ高硬度、高真球度である顆粒、特に球形顆粒の製造方法に関する。特に本発明は、人体へ触れるような用途にも有用な有機天然高分子を主成分とする顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機天然高分子を使用した顆粒は多々存在する。しかし材料の性質から、水中においては直ぐに崩壊してしまうものがほとんどであった。有機天然高分子を利用した様々な高付加価値製品も、水系で使用すると容易に崩壊してしまうため、水を使用しない系での利用に限られていた。しかし、食品や化成品分野においては、水や熱を使用する機会が非常に多いために、このような顆粒は製品として使用することが難しく、また、香料等の生理活性作用を持つ物質を顆粒に保持させることも困難であった。
【0003】
また、有機天然高分子を使用した顆粒は、非常に脆くて形状のいびつな製品が多数存在する。形状が整っている顆粒は、外観、操作性及び生理活性作用を持つ物質等の保持の点で優れており、香料等保持の点を考えれば、香味の発現性および持続性等で満足いくものも得られる。加えて脆さも改善できればさらに用途は拡大すると期待される。このように、様々な分野で使用される顆粒の耐水性、耐熱性、更には高硬度、高真球度の向上が望まれている。
【0004】
顆粒の耐熱性付与方法として、粉末乃至顆粒状の芯物質に、溶融した常温固体脂質を噴霧して被膜造粒せしめた後に冷却し、耐熱徐放性造粒化組成物を製造する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この造粒化組成物に常温以上の温度が加わると、脂質が溶出してしまうおそれがある。
【0005】
耐水性コートされた顆粒の製造方法として、医薬上許容されるメタクリル酸コポリマーをコーティング物質として使用し、少なくとも部分的に耐水性であるコーティングでコートされている顆粒を製造する方法が提案されている(特許文献2)。しかし、特許文献2に記載の方法は、コーティング方法が煩雑であり生産性の点で問題がある。
【0006】
また、特許文献3には、非水性溶媒中にアルギン酸多価金属塩水溶液を乳化分散させ、さらにカルシウム塩水溶液を加えて球状微粒子集合体を形成させ、微粒子集合体の水中懸濁液を噴霧乾燥して顆粒を製造する方法が開示されている、特許文献3に記載の方法によって得られる顆粒の平均粒径は0.01から5μmと非常に小さく、また遠心分離によって顆粒を回収して洗浄を施すといったような製造工程での煩雑さもあり、コスト面で不利である。
【0007】
また、特許文献4には、セルロース系材料を溶融させた溶液を振動を加えながら噴出させて球形を作り、凝固剤と接触させて乾燥させ、球形顆粒を得る方法が開示されている。しかし、この方法は、薬剤放出性能の向上、すなわち崩壊し易さを追求しており、この方法によって得られる顆粒は難崩壊性、耐水性、耐熱性に劣るものである。
【0008】
特許文献5には、レイヤリング造粒によってコーティングを有する顆粒を製造する方法が開示されている。しかし、この方法では、造粒方法がレイヤリング造粒に限定されている上に、コーティングの目的は香味の強度や安定性の向上であり、顆粒の耐水性および耐熱性の向上は期待できない。
【0009】
また、特許文献6には、アルギン酸カルシウム/ナトリウム塩コンプレックスを含むバリア分散剤により被膜された、摩擦された微結晶セルロース粒子の製造方法が開示されている。しかし、この方法では、顆粒に多層のコーティングを形成できず、顆粒の形状や徐放性において難点がある。
【特許文献1】特開2000−4858号公報
【特許文献2】特表平9−510470号公報
【特許文献3】特開平11−130698号公報
【特許文献4】特開平8−217801号公報
【特許文献5】特開2003−24001号公報
【特許文献6】特許第2800067号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、徐放性を有するとともに、耐熱性および耐水性に優れ、高い真球度と硬度を有する有機天然高分子を含有する顆粒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための手段は、以下の通りである。
(1)有機天然高分子とアルギン酸カルシウムとを含有する顆粒の製造方法であって、有機天然高分子およびカルシウム塩を含む粉体または粒状物にアルギン酸塩含有水溶液を添加し、該カルシウム塩とアルギン酸塩の少なくとも一部を反応させてアルギン酸カルシウムを形成することを特徴とする顆粒の製造方法。
(2)前記有機天然高分子は、澱粉、セルロース、蛋白質、ペプチド、糖およびアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である(1)に記載の製造方法。
(3)前記アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウムである(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)前記カルシウム塩は、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記アルギン酸水溶液の濃度は、0.1〜5質量%である(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)前記粉体または粒状物は、前記有機天然高分子を40〜90質量%含む(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)前記粉体または粒状物は、前記カルシウム塩を10〜60質量%含む(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)加圧処理澱粉および/またはコーングリッツを核物質として使用する(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)前記アルギン酸塩水溶液の添加は、該水溶液を前記粉体または粒状物に噴霧することによって行われる(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)前記アルギン酸塩水溶液の添加を、前記粉体または粒状物の液体含有量が可塑限界の75〜120%となるまで、または、前記顆粒が目的粒径となるまで行う(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)前記顆粒は多層構造を有する(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法。
(12)前記粉体または粒状物へのアルギン酸塩水溶液の添加を繰り返すことにより、多層構造の顆粒を製造する(11)に記載の製造方法。
(13)前記アルギン酸水溶液の添加を遠心流動造粒装置を用いて行う(1)〜(12)のいずれかに記載の製造方法。
(14)前記顆粒の平均アスペクト比は、1.00〜2.00の範囲である(1)〜(13)のいずれかに記載の製造方法。
(15)前記顆粒の平均硬度は、0.1〜5.0kgの範囲である(1)〜(14)のいずれかに記載の製造方法。
(16)前記顆粒の平均粒径は、150〜2000μmの範囲である(1)〜(15)のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬度、真球度、耐水性、耐熱性を備えた徐放性球形顆粒を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳細に説明する。

本発明の顆粒の製造方法は、有機天然高分子とアルギン酸カルシウムとを含有する顆粒の製造方法であって、有機天然高分子およびカルシウム塩を含む粉体または粒状物にアルギン酸塩含有水溶液を添加し、該カルシウム塩とアルギン酸塩の少なくとも一部を反応させてアルギン酸カルシウムを形成することを特徴とする。
本発明によれば、アルギン酸塩とカルシウム塩との反応により形成されるアルギン酸カルシウムゲルが、有機天然高分子のバインダーとして作用することにより、耐熱性および耐水性に優れた顆粒を製造することができる。更に、本発明によれば、前記粉体または粒状物へのアルギン酸塩水溶液の添加を繰り返すことにより、多層構造の顆粒を容易に製造することができる。こうして得られた多層構造の顆粒は、硬度および真球度に優れるとともに、徐放性を有するものである。
【0014】
前記有機天然高分子とは、澱粉、セルロース、蛋白質、ペプチド、糖およびアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種であることができ、澱粉、セルロース、蛋白質、ペプチドであることが好ましく、より好ましくは澱粉である。また天然有機高分子の形状は、粉末であり粒径が1〜500μmのものが好ましく、10〜50μmのものがより好ましい。
【0015】
本発明では、アルギン酸塩とカルシウム塩との反応により、アルギン酸カルシウムゲルを形成する。本発明において使用されるアルギン酸塩は、カルシウムイオンと反応してゲルを形成するものであれば制限を受けないが、人体への安全性等の観点からアルギン酸ナトリウムが好ましい。また本発明において使用されるカルシウム塩は特に制限されないが、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、および硫酸カルシウムであることが好ましい。アルギン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウムは通常、食品に繁用されており、使用コストも経済的である。
【0016】
前記粉体または粒状物中の有機天然高分子含有量は、得られる顆粒の用途等に応じて適宜設定することができ、例えば40〜90質量%とすることができ、50〜80質量%とすることが好ましく、55〜75質量%とすることがより好ましい。また、前記粉体または粒状物中のカルシウム塩含有量は、例えば10〜60質量%とすることができ、20〜50質量%とすることが好ましく、25〜45質量%とすることがより好ましい。なお、例えば押出し造粒法を用いて顆粒を製造する場合には、前記粉体または粒状物にアルギン酸塩水溶液を適量混合することもできる。
【0017】
アルギン酸塩水溶液中のアルギン酸塩の濃度は、例えば0.1〜5質量%とすることができ、好ましくは0.5〜3質量%、より好ましくは1〜2質量%である。アルギン酸塩水溶液の濃度および粉体または粒状物中のカルシウム塩量は、ゲル化反応による被膜形成の容易さおよび得られる被膜の物性を考慮して決定することが好ましい。粉体または粒状物へのアルギン酸塩水溶液の添加量は、後述するように可塑化限界、目的粒径等を考慮して適宜調整することが好ましい。例えば、有機天然高分子、カルシウム塩およびアルギン酸塩水溶液の合計量に対するアルギン酸塩水溶液添加量が、45〜95質量%となる量で、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%となる量で、粉体または粒状物へアルギン酸塩水溶液を添加することができる。
【0018】
本発明において、前記粉体または粒状物にアルギン酸塩水溶液を添加(例えば噴霧)する工程を繰り返すことにより、アルギン酸カルシウムゲルがバインダーとして有機天然高分子を結着しつつ、層を積み重ねていくように造粒され、多層構造の顆粒を製造することができる。徐放性を求める顆粒の場合、この操作を行うことにより層間にも目的物質が入り込むので、目的物質を完全に顆粒内に閉じ込めることなく放出することが可能である。処理時の温度、湿度、処理時間等の条件は、良好にゲル化が進行するように適宜設定することができる。
【0019】
顆粒造粒時には、製造上の便宜さや硬度向上などの観点から、層部とは異なる組成の核物質を用いることができる。核物質は、アルギン酸塩水溶液の添加を行う装置中に、前記粉体または粒状物とともに添加することができる。これにより、核物質の周囲にアルギン酸カルシウムをバインダーとする層部を有する顆粒を製造することができる。核物質としては、例えば粒径が1〜700μm、好ましくは100〜200μmの粒状物質を用いることができる。核物質としては、高硬度の球形物質が適しており、好ましくは加圧処理澱粉またはコーングリッツ(より好ましくは粉砕品)である。加圧処理澱粉粉砕品とは、澱粉粉体を加圧成形したのちに粉砕し、さらに整粒して粒度を揃えたものである。またコーングリッツとは、とうもろこしの胚乳部の良質澱粉部を裂割し、粒度を揃えたものである。上記の核物質を使用することで、核物質を使用しない顆粒に比べて更に高硬度、高真球度の顆粒を得ることができる。核物質の使用量は、適宜設定することができる。
【0020】
上記の必須成分以外に、本発明の目的を阻害しない範囲で、二酸化ケイ素等の流動化剤、メントール等の香料、着色料、もしくは薬効成分等の微粉末もしくは液体を添加していてもよく、また、上記物質または上記以外の物質をシクロデキストリン等の環状分子で包接した化合物等を添加してもよい。これらは顆粒製造の工程の、どの段階で加えられてもよい。またそれらは前記粉体もしくは粒状物、またはアルギン酸塩水溶液のどちらに含有されて使用されてもよく、また、造粒後に添加することもできる。
【0021】
造粒方法としては、流動造粒法、遠心流動造粒法、押出し造粒法など公知の造粒方法を用いることができる。中でも、造粒と被膜形成を同時に行うことができる遠心流動造粒法を用いることが好ましい。遠心流動造粒装置としては、例えば、フロイント産業株式会社製CFグラニュレーターを用いることができる。また、造粒装置と被膜形成装置が異なっていてもよく、例えば押出し造粒機にて、有機天然高分子とカルシウム塩を含む粉体または粒状物から顆粒を造粒した後、その造粒物を被膜装置に移してアルギン酸塩水溶液を噴霧しゲル化処理を行った後、高温、高圧処理可能な装置に移し、必要に応じて切断等の処理を行い顆粒を得ることもできる。
【0022】
以下、核物質を使用する場合の遠心流動造粒方法について説明する。
まず、造粒装置の容器内に核物質を仕込み、天然有機高分子とカルシウム塩との混合粉体を散布装置より散布する。また同時に噴霧装置からアルギン酸塩含有水溶液を噴霧する。造粒が困難だと判断した場合は、糖アルコールや増粘剤などの別のバインダー溶液を添加もしくは噴霧してもよい。
【0023】
このようにして造粒を続けると、核物質を中心として、アルギン酸塩とカルシウム塩との反応により形成されるアルギン酸カルシウムのバインダー効果により、層が形成され球体を成してゆく。目的粒径または可塑限界付近に到達した時点で、内容物を乾燥装置に移し、目的とする水分量まで顆粒の乾燥を継続する。なお、本発明において可塑限界とは、前記遠心流動造粒装置内に噴霧される噴霧液によって、該容器内の球形顆粒が水分過多の為に崩壊する現象のことであり、球形顆粒の液体含有率を示したものである。本発明では、可塑限界の75〜120%となるまで、アルギン酸塩水溶液の噴霧を行うことが好ましい。
【0024】
こうして得られた顆粒を、再び前記造粒装置内の容器内に仕込み、噴霧装置からアルギン酸塩溶液を噴霧することもできる。再噴霧される噴霧溶液は1回目の噴霧と同一のアルギン酸塩水溶液でもよい。顆粒内部および表層部のゲル化が可能であれば、違う濃度のアルギン酸塩水溶液を用いても構わない。その後、目的粒径または目的可塑限界に到達した時点で内容物を乾燥装置に移して、目的とする水分量まで乾燥を継続する。
【0025】
本発明に用いられる乾燥方法としては特に制限なく、流動乾燥や棚段乾燥など任意の乾燥方法を用いることができる。中でも、流動性が高く効率よい加熱乾燥が可能である装置が好ましい。例えば、フロイント産業株式会社製「フローコーター」が使用可能である。
なお、上記に関する造粒装置および被膜装置および乾燥装置の操作条件は、使用する材料や所望する粒径等により適宜設定することができる。
【0026】
以上説明した本発明の製造方法によれば、真球度、硬度、粒度、耐熱性、耐水性の点で優れた顆粒、好ましくは徐放性を有する顆粒を得ることができる。以下、本発明の製造方法によって得られる顆粒の物性について説明する。
【0027】
本発明の製造方法によって得られる顆粒の平均アスペクト比は、例えば1.00〜2.00の範囲であり、好ましくは1.00〜1.50、より好ましくは1.00〜1.20の範囲である。アスペクト比は、球形粒の長軸と短軸の比であり、真球度を表す指標である。すなわち、真球のアスペクト比は1である。アスペクト比は、顆粒の全体写真から長軸と短軸の長さを計測した値の平均値から求められる長軸/短軸比として算出することができる。本発明においては、1種類の処方につき10試料を撮影してその平均値をアスペクト比とみなした。
【0028】
本発明の製造方法により得られる顆粒の平均硬度は、例えば0.1〜5.0kgの範囲であり、好ましくは1.0〜5.0kg、より好ましくは2.0〜5.0kgの範囲である。本発明における硬度とは、一定の力が加わって試料が圧砕する瞬間の最大加圧重の値であり、試料の破壊強度を示す。試料台に試料をのせ、加圧アタッチメントを徐々に下降させて試料の抵抗値を記録することによって計測することができる。本発明においては、1種類の処方につき20試料を計測してその平均値を平均硬度とした。
【0029】
本発明の製造方法によって得られる顆粒の平均粒径は、例えば150〜2000μmの範囲であり、好ましくは400〜1500μm、より好ましくは500〜1000μmの範囲である。また、前記顆粒の粒度は、50〜99質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましい。本発明において粒径とはノギスで計測した顆粒の直径であり、1種類の処方につき20試料を計測してその平均を平均粒径とした。また粒度とは16メッシュおよび30メッシュの2種類の篩を使って、16メッシュパスから30メッシュオン(500から1000μm)の顆粒を篩分し、篩分された顆粒と篩分される前の顆粒の質量との比を求め、質量%で表した。
【0030】
更に、本発明の製造方法によって得られる顆粒は、優れた耐熱性および耐水性を有する。耐熱性、耐水性は、例えば、顆粒と水との懸濁液を調製して耐熱耐圧ガラス瓶に封入後、オートクレーブで加熱を行い、冷却後放置してからの経時的崩壊を目視で確認することにより判断することができ、崩壊が無ければ、耐熱性、耐水性に優れていると判断できる。本発明においては、顆粒1gと水49gとで懸濁液を調製し耐熱耐圧ガラス瓶に封入後、オートクレーブで121℃10分間の加熱を行い、冷却後放置してからの経時的崩壊を目視で確認した。
【実施例】
【0031】
以下に実施例および比較例に従って本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
遠心流動コーティング造粒装置CF-360(フロイント産業株式会社製)に核として加圧処理澱粉粉砕品(粒径100〜200μm)300gを仕込み、回転円盤下方から空気を送入し、100〜200RPMの間で回転した。コーンスターチ700gと塩化カルシウム500gの混合粉体を散布しつつ、スプレーノズルから1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液939gを噴霧した。得られた顆粒はフローコーター(フロイント産業株式会社製)により水分5〜15%まで乾燥させた。乾燥後顆粒500gをCF−360に戻し、スプレーノズルから1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液100gを再噴霧した。得られた顆粒はフローコーターにより水分5〜15%まで乾燥させた。
【0033】
得られた球形顆粒の分析を行った。
平均硬度は3.44kg、アスペクト比は1.02、平均粒径は620μm、粒度は66.1%、顆粒の崩壊は無かった。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0034】
[実施例2]
カルシウム塩として実施例1の塩化カルシウムに代えて炭酸カルシウムを用いた以外は、実施例1と同様に操作した。この球形顆粒を実施例1と同様に分析したところ、平均硬度は1.38kg、アスペクト比は1.04、平均粒径は759μm、粒度は69.6%、顆粒の崩壊は無かった。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0035】
[実施例3]
核として実施例1の加圧処理澱粉粉砕品に代えてコーングリッツを用いた以外は、実施例1と同様に操作した。この球形顆粒を実施例1と同様に分析したところ、硬度は1.36kg、アスペクト比は1.04、平均粒径は692μm、粒度は68.6%、顆粒の崩壊は無かった。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0036】
[実施例4]
澱粉として実施例1のコーンスターチに代えてアセチル化タピオカ澱粉を用い、さらに乾燥後顆粒をCF−360に戻し、スプレーノズルから1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液を再噴霧する操作を省略した以外は、実施例1と同様に操作した。この球形顆粒を実施例1と同様に分析したところ、平均硬度は2.04kg、アスペクト比は1.03、平均粒径は703μm、粒度は55.4%、顆粒の崩壊は無かった。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0037】
[実施例5]
乾燥後顆粒500gをCF−360に戻し、スプレーノズルから1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液100gを再噴霧する処理を省略した以外は、実施例1と同様に操作した。得られた顆粒はフローコーター(フロイント産業株式会社製)により水分5〜15%まで乾燥させた。この球形顆粒を実施例1と同様に分析したところ、平均硬度は2.89kg、アスペクト比は1.08、平均粒径は774μm、粒度は70.9%、顆粒の崩壊は無かった。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0038】
[実施例6]
コーンスターチ7000gおよび塩化カルシウム700gおよび1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液3308gを混合機で混合した。2軸連続押出造粒機に投入し押出し成形した後、整粒機を用いて整粒した。得られた顆粒にCF−360を用いて1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液100gを噴霧した後、棚段乾燥により水分5〜15%まで乾燥させた。この球形顆粒を実施例1と同様に分析したところ、平均硬度は1.1kg、アスペクト比は1.71、平均粒径は1020μm、粒度は50.3%、顆粒の崩壊は無かった。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0039】
[比較例1]
噴霧液として1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液の代わりに3質量%αスターチ懸濁液を用いた以外は、実施例1と同様に操作した。得られた顆粒はフローコーターにより水分5〜15%まで乾燥させた。この球形顆粒を実施例1と同様に分析したところ、平均硬度は0.57kg、アスペクト比は1.02、平均粒径は744μm、粒度は60.2%、顆粒はオートクレーブから取り出し後既に崩壊していた。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0040】
[比較例2]
塩化カルシウムに代えて塩化ナトリウムを用いた以外は、比較例1と同様に操作した。この球形顆粒を実施例1と同様に分析したところ、平均硬度は1.4kg、アスペクト比は1.03、平均粒径は696μm、粒度は76.2%、顆粒はオートクレーブから取り出し後既に崩壊していた。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0041】
[比較例3]
噴霧液として1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液に代えて0.25質量%カルボキシメチルセルロース水溶液を用いた以外は、比較例1と同様に操作した。この球形顆粒を実施例1と同様に分析したところ、硬度は顆粒が柔らかすぎる為に破裂点が判らず計測不能であり、アスペクト比は2.01、平均粒径は730μm、粒度は66.2%、顆粒はオートクレーブ取り出し後既に崩壊していた。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0042】
[比較例4]
コーンスターチ7000gおよび塩化カルシウム700gおよび0.25質量%カルボキシメチルセルロース水溶液3308gを混合機で混合した。2軸連続押出造粒機に投入し押出し成形した後、整粒機を用いて整粒した。得られた顆粒を棚段乾燥により水分5〜15%まで乾燥させた。この球形顆粒を実施例1と同様に分析したところ、平均硬度は1.1kg、アスペクト比は2.01、平均粒径は1086μm、粒度は50.3%、顆粒はオートクレーブ取り出し後既に崩壊していた。これらの球形顆粒の組成および性質を表1および表2に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明により、特に耐水性、耐熱性、難崩壊性が要求される用途において有用な高品質な顆粒の製造が可能となる。これまでにない特徴の顆粒を提供することによって、顆粒における生理活性作用を持つ物質等の保持や徐放性の改善がなされ、人々の健康に対しても大きく寄与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機天然高分子とアルギン酸カルシウムとを含有する顆粒の製造方法であって、有機天然高分子およびカルシウム塩を含む粉体または粒状物にアルギン酸塩含有水溶液を添加し、該カルシウム塩とアルギン酸塩の少なくとも一部を反応させてアルギン酸カルシウムを形成することを特徴とする顆粒の製造方法。
【請求項2】
前記有機天然高分子は、澱粉、セルロース、蛋白質、ペプチド、糖およびアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウムである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記カルシウム塩は、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アルギン酸水溶液の濃度は、0.1〜5質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記粉体または粒状物は、前記有機天然高分子を40〜90質量%含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記粉体または粒状物は、前記カルシウム塩を10〜60質量%含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
加圧処理澱粉および/またはコーングリッツを核物質として使用する請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記アルギン酸塩水溶液の添加は、該水溶液を前記粉体または粒状物に噴霧することによって行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記アルギン酸塩水溶液の添加を、前記粉体または粒状物の液体含有量が可塑限界の75〜120%となるまで、または、前記顆粒が目的粒径となるまで行う請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記顆粒は多層構造を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記粉体または粒状物へのアルギン酸塩水溶液の添加を繰り返すことにより、多層構造の顆粒を製造する請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記アルギン酸水溶液の添加を遠心流動造粒装置を用いて行う請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記顆粒の平均アスペクト比は、1.00〜2.00の範囲である請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記顆粒の平均硬度は、0.1〜5.0kgの範囲である請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記顆粒の平均粒径は、150〜2000μmの範囲である請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−137789(P2007−137789A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330933(P2005−330933)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000231453)日本食品化工株式会社 (68)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】