説明

顆粒状骨補填材

【課題】 特に平坦な欠損への充填時や患部にある程度の高さで盛りつける際にも形が崩れ難い顆粒状骨補填材を提供する。
【解決手段】 互いに略等しい角度で放射状に設けられた4つの凸部から成る顆粒状骨補填材とする。凸部が円錐状,截頭円錐状,多角錐状,截頭多角錐状,円筒状,球状の一種または二種以上の組合せであること、あるいは、形状が正四面体状であることが好ましい。また一粒子の凸部の頂点間隔が平均0.5〜10mmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨腫瘍や骨髄炎等による病巣を取り除いた後の欠損部や自家骨移植後の欠損部の補填用、または歯科用インプラント埋入のための顎骨の補強,補填等に用いる新規な顆粒状骨補填材に関する。
【背景技術】
【0002】
骨補填材としてはハイドロキシアパタイトセラミックス,リン酸三カルシウムセラミックス,リン酸カルシウム系ガラス等の無機系材料が使用されている。骨補填材の形状としては棒状やブロック状が一般的であるが、欠損部の補填用としては欠損の細部にも充填可能であり任意形状の欠損部に適応できる顆粒状の骨補填材も広く用いられている。
【0003】
この欠損部を補填するための骨補填材も前記無機系物質を粉砕等した顆粒状のもの(例えば、特許文献1〜3参照)あるいは牛脱灰凍結乾燥骨等の動物由来の骨補填用材料(例えば、特許文献4参照。)が使用されてきた。しかし、これらの顆粒はその形状が球あるいは略球形の粉砕粒であったから特に平坦な欠損への充填時や欠損部に盛り上げる必要がある際に形が崩れやすく術者の望む形状に充填することが難しいという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平6−339519号公報
【特許文献2】特開2002−58735号公報
【特許文献3】特開2004−24319号公報
【特許文献4】特開平5−237178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に平坦な欠損への充填時や欠損部に盛り上げる際にも形が崩れ難い顆粒状骨補填材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、顆粒状骨補填材の形状をいわゆる消波ブロックの形状やそれに類似した形状とすれば顆粒が移動し難くなり、また、各顆粒間で強い組合せ力が得られるので顆粒を盛った際にも崩れ難くなるので前記課題を解決できることを見出して本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、互いに略等しい角度で放射状に設けられた4つの凸部から成る顆粒状骨補填材であり、凸部が円錐状,截頭円錐状,多角錐状,截頭多角錐状,円筒状,多角柱状,球状の一種または二種以上の組合せであること、あるいは、形状が正四面体状であることが好ましい顆粒状骨補填材である。そして一粒子の凸部の頂点間隔が平均0.5〜10mmであることが好ましい顆粒状骨補填材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る顆粒状骨補填材は、特に平坦な欠損への充填時や欠損部に盛り上げる際にも形が崩れ難い優れた顆粒状骨補填材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る顆粒状骨補填材は、互いに略等しい角度で放射状に設けられた4つの凸部から成る顆粒状骨補填材であり、凸部は厳密に等間隔で存在する必要はないが、等間隔であるほど移動し難く顆粒間の強い組合せ力を得る効果を最も発揮することができ、そのときの理想角は109.5度となる。凸部の形状は、具体的には例えば円錐状,截頭円錐状,多角錐状,截頭多角錐状,円筒状,多角柱状,球状を例示することができる。これらの凸部は一粒子中において同種の凸部が4つあってもよいし、あるいは二種以上の形状の凸部の組合せであってもよい。更に、凸部の形状が一つの凸部の途中から例えば円筒形から三角錐へと変形していてもよい。当然ながら、上記凸部の例において、例えば先端が曲面である円筒状等のように各形状の類似であっても同様の効果を示すことができれば本発明の範囲内であるといえる。
【0010】
本発明に係る顆粒状骨補填材の放射状に4つの凸部を有する形状としては前記の形状の他にも正四面体及びその類似形が好ましい。
【0011】
本発明における顆粒状骨補填材の素材は、従来の顆粒状骨補填材に使用されていたものが制限なく使用可能である。例えば、バイオガラス,水酸アパタイト,炭酸アパタイト,フッ素アパタイト,リン酸水素カルシウム(無水物または2水和物),リン酸三カルシウム,リン酸四カルシウム,リン酸八カルシウム,ハイドロキシアパタイトセラミックス,リン酸三カルシウムセラミックス等の無機系材料であったり、例えば、従来から用いられているポリグリコール酸(PGA),ポリ乳酸(PLA),ポリ乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA),ポリ−ε−カプロラクトン(PCL),乳酸−ε−カプロラクトン共重合体,ポリアミノ酸,ポリアンハイドライド,ポリオルソエステル及びそれらの共重合体中から選択される少なくとも一種の生体吸収性高分子材料を例示することができる。中でもポリグリコール酸(PGA),ポリ乳酸(PLA),ポリ乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)が米国食品医薬庁(FDA)から人体に無害な高分子として承認されていること及びその使用実績の面から最も好ましい。生分解性高分子の重量平均分子量は5000〜2000000であることが好ましく、より好ましくは10000〜500000である。また、無機系材料と生体吸収性高分子材料とを適宜組み合わせてもよい。
【0012】
粒子状物質の大きさは、一粒子の凸部の頂点間隔が平均0.5〜10mmであることが好ましい。0.5mmより小さい粒子を製造することは難しく、10mmを超える大きさでは人体あるいは動物の体内の患部に適用するには大きすぎて使い難くなる。
【0013】
本発明に係る顆粒状骨補填材の作製は特に限定されないが、例えばハイドロキシアパタイトセラミックス等の無機系材料や生体吸収性高分子の粉末を押型や割型に入れて加圧成形することで作製される。また、無機系材料や生体吸収性高分子をワックスや有機溶媒等の媒体と混合した後に混合物を射出成形したり、あるいは該混合物のブロックから切削等より作製することもできる。特に生体吸収性高分子の場合にはクロロホルム,ジクロロメタン,四塩化炭素,ポリエチレングリコール,アセトン,ジオキサン,テトラハイドロフラン等の有機溶媒で溶かしてから型内あるいは型から出した後に凍結乾燥させることで放射状に4つの凸部を有する多孔質な顆粒状骨補填材を容易に作製することもできる。
【実施例】
【0014】
<実施例1>
ハイドロキシアパタイト粉末(粒径約1μm)を成形用金型に充填し、予備成形した後、CIP圧3トンにてCIP成形し、その得られた成形体を大気中で1300℃で3時間焼成して一粒子の凸部の頂点(円の中心)の間隔が平均3.2mmの顆粒状骨補填材を得た。図1として本実施例で得た顆粒状骨補填材の説明用斜視図を示す。
【0015】
<実施例2>
リン酸三カルシウム粉末(粒径約5μm)を成形用金型に充填し、予備成形した後、CIP圧3トンにてCIP成形し、その得られた成形体を大気中で1100℃で3時間焼成して一粒子の凸部の頂点(円の中心)の間隔が平均5.5mmの図1に示した形状の顆粒状骨補填材を得た。
【0016】
<実施例3>
ハイドロキシアパタイト粉末(粒径約1μm)とパラフィンワックスを加熱し混合した後、混合物を射出成形機に投入して成形温度120℃にて射出成形した。型から取り出した成形体を1300℃で3時間焼成し、一粒子の凸部の頂点(円の中心)の間隔が平均4.8mmの図1に示した形状の顆粒状骨補填材を得た。
【0017】
<実施例4>
炭酸アパタイト粉末(粒径約1μm)とポリアクリル酸を混合した後、混合物を成形機に投入して成形温度200℃にて射出成形した。型から取り出した成形体を900℃で3時間焼成し、一粒子の凸部の頂点(円の中心)の間隔が平均8.4mmの図1に示した形状の顆粒状骨補填材を得た。
【0018】
<実施例5>
ポリ−L−乳酸粒子(重量平均分子量約250000)を射出成形機に投入し、成形温度200℃にて射出成形した。一粒子の凸部の頂点(円の中心)の間隔が平均7.3mmの図1に示した形状の顆粒状骨補填材を得た。
【0019】
<実施例6>
乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸:グリコール酸=75:25,重量平均分子量約250000)を射出成形機に投入し、成形温度160℃にて射出成形した。一粒子の凸部の頂点の間隔が平均6.9mmの、4つの凸部が三角錐の形状をした顆粒状骨補填材を得た。
【0020】
<実施例7>
140℃の恒温槽中で溶解させた乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸:グリコール酸=75:25,重量平均分子量約250000)にハイドロキシアパタイト粉末(粒径約1μm)を投入し両者をよく混合させた後、混合物を射出成形機に投入して成形温度160℃にて射出成形した。乳酸−グリコール酸共重合体中にハイドロキシアパタイトが含有された、一粒子の凸部の頂点の間隔が平均6mmの4つの凸部が円錐状の顆粒状骨補填材を得た。
【0021】
<実施例8>
1,4ジオキサン中に乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸:グリコール酸=75:25,重量平均分子量約250000)を12重量%の濃度となるように入れ攪拌機で1時間攪拌し溶解した。割型に溶液を投入し、凍結、続いて乾燥させることで凸部の形状が全て円筒形であり、一粒子の凸部の頂点(円の中心)の間隔が平均4.2mmの図1に示した形状の顆粒状骨補填材を得た。
【0022】
<実施例9>
乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸:グリコール酸=75:25,重量平均分子量約250000)を射出成形機に投入し、成形温度160℃にて射出成形し直径4.5mmの球を作製した。一粒子についてこの球4個を1,4ジオキサンで溶着して顆粒状骨補填材を得た。図2として本実施例で得た顆粒状骨補填材の略図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る顆粒状骨補填材の一実施例の説明用斜視図。
【図2】本発明に係る顆粒状骨補填材の他の実施例の説明用斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに略等しい角度で放射状に設けられた4つの凸部から成る顆粒状骨補填材。
【請求項2】
凸部が円錐状,截頭円錐状,多角錐状,截頭多角錐状,円筒状,多角柱状,球状の一種または二種以上の組合せである請求項1に記載の顆粒状骨補填材。
【請求項3】
形状が正四面体状である請求項1に記載の顆粒状骨補填材。
【請求項4】
一粒子の凸部の頂点間隔が平均0.5〜10mmである請求項1ないし3の何れか一項に記載の顆粒状骨補填材。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−29373(P2008−29373A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202884(P2006−202884)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】