説明

顔料分散液、インクジェット用インク、インクカートリッジ、画像形成装置、記録方法、及び画像形成物

【課題】保存安定性に優れた顔料分散液、これを含有するインクジェット用インクであって、画像濃度が高く、優れた視認性と風合いを付与するような画像部と非画像部の光沢のバランスを有し、インクジェットヘッドの目詰まりが改良され、インク液の吐出安定性やインク液保存安定性に優れたインクジェット用インク、インクカートリッジ、画像形成装置、記録方法、及び画像形成物の提供。
【解決手段】カーボンブラックと分散剤と水を含むインクジェット用顔料分散液において、前記顔料分散液の粒子径0.5μm以上の粗大粒子総数が100万個/5μL以下であるインクジェット用顔料分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散液、インクジェット用インク、インクカートリッジ、画像形成装置、記録方法、及び画像形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、他の記録方式に比べてプロセスが簡単であるため、フルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られるという利点を有する。
インクジェット用インクとしては、各種の水溶性染料を、水又は水と有機溶剤との混合液に溶解させた染料系インクが使用されているが、染料系インクは、色調の鮮明性には優れるものの耐光性に劣るという欠点があった。
一方、カーボンブラックや各種の有機顔料を分散させた顔料系インクは、染料系インクと比較して耐光性に優れるため盛んに研究されている。
しかし、顔料系インクは、染料系インクと比べてノズルの目詰まりが生じやすい傾向がある。
顔料インクは、一般に水やアルコール類等の水性溶媒中に色材及び分散剤を予備分散させた分散物の調製後、この分散物をサンドミル等のメディア型分散機を用いて所定の程度まで分散させる分散工程後に所定の濃度に希釈することにより調製されている。
【0003】
顔料系の水系インクは疎水性の顔料を分散させるために界面活性剤や水溶性樹脂を使用しているのが一般的であるが、得られる画像の信頼性は極めて低い。そこで、画質向上を目的として造膜性の樹脂微粒子をインク液に添加されているが、複数の成分を微細に分散された状態でしかも安定に長期間分散させるのは困難である。これらの微粒子を安定に分散させるために界面活性剤などの分散剤を多用すると、インクタンク、ヘッド内での気泡の発生、画質の劣化などの問題も起こってしまう。また、分散性を向上させる目的で顔料の表面に親水基を導入したり親水基を含有した樹脂などを用いる事が検討されているが、それぞれ単独で安定でも、複数種類を混ぜると分散が不安定になり、保存安定性が悪化するという問題があった。
【0004】
上記のような問題等を解決するとして多くの技術が提案されている。
例えば、特定の顔料微粒子を含有しかつ白色部及び印字部の光沢値が規定されたインク受理部を設けた記録媒体を用いて、印字部の視認性に優れたインクジェット記録画像を得る(例えば、特許文献1参照)、表面粗さ(Ra)値Aを有する記録媒体上に、画像記録部分の表面粗さ(Ra)値Bの各色インクを用いてインクジェット記録することにより、画像の光沢感、平滑性及び質感に優れた記録物を得る(例えば、特許文献2参照)、シリカ及び/又はアルミナ微粒子を含有しかつ光沢度が規定されたインク受容層を有する記録用紙に、樹脂エマルジョンを水性媒体中に含むインクで印字することにより、分散安定性に優れノズル目詰まりがなく、画像濃度が高く、印字部の光沢度低下も少ない記録物を得る(例えば、特許文献3、4参照)、記録媒体上にアルミナ粒子等を含む塗工液で処理し、この上に水系着色インクで印字することにより、光沢性の優れた印刷物を得る(例えば、特許文献5参照)、水不溶性又は難溶性の色材を含有させたポリマー微粒子を含むインクで、多孔質層を最表層として有する記録媒体に印字記録して、画像部の光沢度の低下が抑制された写真に近い画質を得る(例えば、特許文献6参照)等である。
【0005】
その他、顔料粒子をポリマーで被覆させたマイクロカプセル化顔料の水性分散液を含むインクジェット記録インクにより、光沢度が改善された記録物を得る(例えば、特許文献7参照)、表面張力が25〜45mN/mである水系インクで、特定の接触角を有する記録媒体に印字することにより、ベタ濃度が均一で画質が優れた画像を得る(例えば、特許文献8参照)、高い画像濃度を得る目的で、インク中に水不溶性色材と該色材より小さい荷電性樹脂擬似微粒子とを含有させる(例えば、特許文献9参照)、顔料のDBP吸油量を限定した自己分散型顔料を含有させる(例えば、特許文献10参照)、カーボン分散液が表面改質カーボンブラックでHLB値が7〜18であり、かつアセチレン骨格を有するノニオン系界面活性剤とを含有する水系カーボンブラック分散液を用いる(例えば、特許文献11参照)などの発明が報告されている。
【0006】
また、高い画像濃度及び高画質を得るために、HLBが3以上10未満である界面活性剤の含有量を規定したインクジェット用インク(例えば、特許文献12参照)、色材を含む記録液と特定の等電点を持つ処理液とからなるインクセット(例えば、特許文献13参照)などの発明が報告されている。
また、インクの分散性を安定化する目的で、分子内にカルボキシル基とノニオン親水基を有する水分散性樹脂を水に分散させる方法(例えば、特許文献14参照)、水溶性高分子と界面活性剤を同じ極性にするかノニオンを添加する方法(例えば、特許文献15参照)、水系記録液において着色イオン性含有ポリエステル樹脂と着色剤の親水基の極性を同じにする方法(例えば、特許文献16参照)、顔料と樹脂微粒子の分散極性を同じにする方法(例えば、特許文献17参照)、等が報告されている。
【0007】
また上記と同様インクの分散性を安定化する目的で、分散液中の粒子の少なくとも70%が0.1μm未満の直径を有し、当該分散液中の他の粒子が0.1μmに等しいか又はそれ以下の直径を有する粒度分布を有する顔料粒子を含む顔料分散液、アルデヒドナフタレンスルホネート分散剤、及び/又は少なくとも一つのスルホン溶媒、を含む水性インクジェットインク組成物(例えば、特許文献18参照)、顔料、高分子分散剤及び非イオン性界面活性剤を含有する水性媒体からなる記録液(例えば、特許文献19参照)、ABあるいはBABブロックコポリマーを顔料の分散剤として用いる(例えば、特許文献20、21参照)ことが提案されている。さらに、特定の顔料、水溶性樹脂、溶媒を用いる(例えば、特許文献22参照)ことも提案されている。
【0008】
一方、分散剤を用いない顔料分散方法として、カーボンブラックに水可溶化基を含む置換基を導入する方法(例えば、特許文献23参照)、水溶性モノマー等をカーボンブラック表面に重合させる方法(例えば、特許文献24参照)、カーボンブラックを酸化処理する方法(例えば、特許文献25参照)も提案されている。
【0009】
また、酸化処理を施したカーボンブラック及びアクリル酸、スチレン、αメチルスチレンからなる三元重合体を含むインクによって耐水性と吐出安定性を確保する方法が、特許文献26に開示されている。
また、インクジェット記録液における分散粒子の体積平均粒子径が、30nm〜200nmであることを特徴とするインクジェット記録液が、特許文献27に開示されている。
【0010】
しかし、上記従来のインク液ではカラー顔料インクに関しては高い画像濃度は得られるものの黒色顔料インクに関してはいまだ十分ではなく満足するものではなかった。
【0011】
特許文献28〜30には、ビーズミル分散に使用するビーズ径が0.05mmから1.0mm程度のものを使用した例が記載され、また、特許文献31には、分散剤にアニオン系界面活性剤が使用され、その分子量は1000≦m≦30000の範囲が好ましいとされている。しかし、いずれも分散安定性の面では十分ではなく、分散時における強い衝撃に弱い顔料種は分散後の安定性に欠け、インク液において、吐出安定性等が依然として課題として残存している。
【0012】
一方、吐出安定性を改良したものとして、水分蒸発率と粘度上昇率及び粒子径を限定し、吐出安定性を良くした方法(例えば、特許文献32参照)が提案されている。また、ノズル先端での目詰まりのないインクジェト用液体組成として、導電率、粘度、及び水溶性溶媒の表面張力の値を規定する(例えば、特許文献33参照)、表面が第4級化されたカルボキシル基を有し、かつ0.5μm以下の着色微粒子を含有させる(例えば、特許文献34参照)が提案されている。
【0013】
以上の文献において、高い画像濃度、優れた視認性と風合いを付与するような画像部と非画像部の光沢度のバランスを有し、高画像濃度で吐出安定性も良いインクジェット用インク及び記録媒体は、未だ改良が必要とされている。なお本発明者らによるインクジェット用インクの発明(特許文献35〜37)も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、保存安定性に優れた顔料分散液、これを含有するインクジェット用インクであって、画像濃度が高く、優れた視認性と風合いを付与するような画像部と非画像部の光沢のバランスを有し、インクジェットヘッドの目詰まりが改良され、インク液の吐出安定性やインク液保存安定性に優れたインクジェット用インク、インクカートリッジ、画像形成装置、記録方法、及び画像形成物を提供することを目的とする。
【0015】
本発明者らは鋭意検討した結果、記録媒体の表面に、記録情報に応じてインクを付与して記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクはカーボンブラックと分散剤と水を含む顔料分散液と、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、樹脂成分を含有するインクジェト用インクであって、前記顔料分散液の0.5μm以上の粗大粒子総数が100万個/5μL以下のインクを用い、75度光沢度が80%未満である前記記録媒体上で記録した画像光沢度が前記記録媒体の非画像部の光沢度の90%を超えるため、画像部、非画像部の光沢バランスが良好な画像が得られることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> カーボンブラックと分散剤と水とを含むインクジェット用顔料分散液において、前記顔料分散液における粒子径0.5μm以上の粗大粒子総数が100万個/5μL以下であることを特徴とするインクジェット用顔料分散液である。
<2> カーボンブラックは、ガスブラックであり、そのBET比表面積が100m/g〜400m/gであり、一次粒子の平均粒子径(D50)が20nm以上180nm以下である前記<1>に記載のインクジェット用顔料分散液である。
<3> カーボンブラックの粒子径の標準偏差が、平均粒子径の1/2以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液である。
<4> 分散剤がナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物である前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液である。
<5> ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は、ナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、及び4量体を含み、その合計含有量が前記ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物全体の20質量%〜80質量%である前記<4>に記載のインクジェット用顔料分散液である。
<6> 分散剤が質量基準でカーボンブラック1に対して0.01以上2以下の割合で含まれる前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液と、湿潤剤と、界面活性剤と、浸透剤と、樹脂成分とを含有して成るインクジェット用インクであって、カーボンブラックを1質量%〜20質量%、前記湿潤剤を10質量%〜50質量%、前記界面活性剤を0.01質量%〜5質量%、前記浸透剤を0.05質量%〜5質量%、前記樹脂成分を0.01質量%〜7質量%含有することを特徴とするインクジェット用インクである。
<8> 湿潤剤は、温度20℃、相対湿度60%環境中の平衡水分量が、25質量%以上である多価アルコール及びトリメチルグリシンを含む前記<7>に記載のインクジェット用インクである。
<9> トリメチルグリシンの含有量がインクジェット用インクの総量に対して10質量%を超え40質量%以下である前記<8>に記載のインクジェット用インクである。
<10> 界面活性剤が下記構造式(1)の化合物を含む前記<7>から<9>のいずれかに記載のインクジェット用インクである。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、Rfはフッ素含有基を表し、m、n、及びpは整数を表す(ただし、nとpが同時に0となることはない。)。)
<11> 前記<7>から<10>のいずれかに記載のインクジェット用インクを収容したことを特徴とするインクカートリッジである。
<12> 前記<7>から<10>のいずれかに記載のインクジェット用インク、及び、前記<11>に記載のインクカートリッジのいずれかを搭載した画像形成装置である。
<13> 記録媒体の表面に、記録情報に応じてインクを付与して記録を行う記録方法において、前記記録媒体はJIS Z8741による光入射角75度の白紙光沢度が80%未満であり、前記<12>に記載の画像形成装置を用いて前記記録媒体上に記録され、その画像部光沢度が非画像部光沢度の90%を超えることを特徴とする記録方法である。
<14> 記録媒体は、木材パルプを主成分とする原紙の片面又は両面にカオリンとバインダーを含むインク受容層を有し、JIS Z8741による光入射角75度の白紙光沢度が80%未満である前記<13>に記載の記録方法である。
<15> 前記<13>から<14>のいずれかに記載の記録方法を用いて画像が形成されたことを特徴とする画像形成物である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決でき、前記目的を達成することができ、保存安定性に優れた顔料分散液、これを含有するインクジェット用インクであって、画像濃度が高く、優れた視認性と風合いを付与するような画像部と非画像部の光沢のバランスを有し、インクジェットヘッドの目詰まりが改良され、インク液の吐出安定性やインク液保存安定性に優れたインクジェット用インク、インクカートリッジ、画像形成装置、記録方法、及び画像形成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明のインクジェット用インクを収容したインクジェット記録装置を示す図である。
【図2A】図2Aは、カーボンブラックの構造を示す電子顕微鏡写真である(その1)。
【図2B】図2Bは、カーボンブラックの構造を示す電子顕微鏡写真である(その2)。
【図2C】図2Cは、カーボンブラックの構造を示す模式図である(その1)。
【図2D】図2Dは、カーボンブラックの構造を示す模式図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
<顔料分散液>
本発明の顔料分散液は、顔料粒子としてのカーボンブラックと、分散剤と水とを含んでいる。さらに必要に応じてその他の成分を含有することができる。この顔料分散液は、0.5μm以上の粗大粒子の総数が100万個/5μL(すなわち20万個/μL)以下である。
【0022】
(カーボンブラック(黒色顔料))
本発明のインクジェット用顔料分散液に使用される黒色顔料としてのカーボンブラックは、BET比表面積が100m/g〜400m/gであり、その一次粒子の平均径(平均一次粒子径)は10〜30nmであるガスブラックが好ましく用いられる。
平均一次粒子径は電子顕微鏡写真を用いて粒子を撮影し、撮影画像の粒子の径と数から算出することで測定することができ、また、BET比表面積は、窒素吸着によるBET法によって測定することができる。
インクジェット用インクの顔料分散液に使用される顔料粒子としてのカーボンブラックは、その平均粒子径D50(個数粒径分布の50%累積値)が20nm〜180nmが好ましく、50nm〜130nmがより好ましい。D50が180nmを超えると吐出安定性が悪くなり、好ましくない。一方、D50が20nm未満になると画像濃度が低くなり好ましくない。顔料の分散安定性も悪くなり、保存後の吐出安定性にも影響が発生する。
また、顔料粒子として用いられるカーボンブラックの粒子径標準偏差は、D50の1/2以下であるのが好ましい。D50の1/2より大きくなると、吐出安定性が悪くなり、印字画像のカスレ等が発生し易くなり、好ましくない。
乾燥時における溶媒残存率が60%の時点でD50が5μmを超え、或いはD90(個数粒径分布の90%累積値)が10μmを超えると画像濃度が高くなり好ましい。
より好ましくはD50が10μmを超え、D90は20μmを超えた方が良い。
ガスブラックの平均一次粒子径(10nm〜30nm)とは、カーボンの一次粒子径であり、図2Bで示す電子顕微鏡による算術平均径である。
また、カーボンブラックの平均一次粒子径(20nm〜180nm)は、インクの動的光散乱法による粒子測定におけるカーボンブラックの平均粒子径である。
カーボンブラックは、一般の有機顔料と異なり図2Aで表されるような構造となっており、インクではストラクチャーがいくつも凝集しており、凝集体の粒子径の平均をカーボンブラックの一次粒子径とする。
【0023】
(分散剤)
本発明の顔料分散液に用いられる分散剤としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物が用いられる。
前記ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドとの縮合物であり、上記縮合物の繰り返しからなる化合物であれば特に限定されない。
前記ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物における、ナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、及び4量体の合計含有量が、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物全体に対し20質量%〜80質量%であり、35質量%〜65質量%がより好ましい。
前記合計含有量が20質量%未満であると、分散性が悪くなり、顔料分散液及びインクの保存安定性が劣り、その結果、ノズルの目詰まりが発生しやすい。一方、前記合計含有量が80質量%を超えると、粘度が高くなり、分散が困難になることがある。
【0024】
本発明に用いられる顔料分散液は、前記分散剤が質量基準としてカーボンブラック1に対し0.01以上2以下の割合で含まれるのが好ましく、カーボンブラック1に対し0.25〜1で含まれるのがより好ましい。前記分散剤の含有量が、0.01未満であると、本発明の効果が達成されにくく、顔料分散液及びインクの保存安定性が劣り、その結果、ノズルの目詰まりが発生しやすい傾向があり、2を超えると、顔料分散液及びインクの粘度が高すぎてインクジェット方式での印字が困難になる傾向がある。
本発明の顔料分散液においては、前記分散剤が前記顔料分散液全体に対して0.1質量%〜38質量%含まれることが好ましく、1.0質量%〜20質量%含まれることがより好ましい。
【0025】
このような分散剤を採用することにより、本発明の分散液のカーボンブラック体積平均粒子径(D50)が70nm以上180nm以下であり、該カーボンブラックの粒度分布における粒子径標準偏差が前記体積平均粒子径の1/2以下にすることができ、これにより高い画像濃度、吐出安定性、及びインク液保存安定性が良好な顔料分散液を提供することができる。
【0026】
前記カーボンブラックの体積平均一次粒子径測定は、粒度分布計(日機装株式会社製、UPA)を使用して、23℃、55%RHの環境下で測定したものである。また、カーボンブラック平均一次粒子径(D50)とは体積分布による粒子径である。
【0027】
前記顔料分散液においてカーボンブラック濃度としては、前記顔料分散液全体に対して5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましい。前記カーボンブラック濃度が、5質量%未満であると生産性が劣ることがあり、50質量%を超えると、顔料分散液の粘度が高すぎて分散が困難になる傾向がある。
【0028】
(水)
本発明の顔料分散液に用いる水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
また、紫外線照射、又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いることにより、インクを長期間保存する場合にカビやバクテリアの発生を防ぐことができるので好適である。
【0029】
(その他の成分)
本発明の顔料分散液には、前記カーボンブラック、前記分散剤、及び水以外にも、必要に応じて水溶性有機溶剤、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、防腐剤等の各種添加剤を添加することができる。
前記水溶性有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン誘導体;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、などが挙げられる。
【0030】
本発明の顔料分散液は、前記カーボンブラック、前記分散剤と、水、さらに必要に応じて各種添加剤をサンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、ホモジナイザー等の公知の分散機で分散することによって得られる。この際にビーズミル分散方式により分散することが好ましい。たとえばビーズ径が例えば数十μm程度のものを使用してビーズミル分散するビーズミル分散方式により、粗大粒子の個数を所定値以下に調製可能となり、また粒度分布もシャープとなるので、高光沢度を有し、高画像濃度のインクジェット用インクを供することが可能となる。
このとき、前記分散剤を上述したように、質量基準でカーボンブラック1に対し0.1以上2以下の割合で使用するとともに、湿式分散処理を採用するのが好適である。この湿式分散処理とは、カーボンブラック、分散剤、水、必要に応じて水溶性有機溶剤などの混合物を前記分散機により、いわゆる湿式分散方式で微粉砕し、分散する処理を意味する。また本発明の顔料分散液を調製する際に、遠心分離、あるいは微細フィルターを用いてろ過する工程を加えて調製することもできる。
【0031】
得られる本発明の顔料分散液は、特に顔料系インクジェット用インクとして、好適に使用することができる。
【0032】
<インクジェット用インク>
本発明のインクジェット用インクは、前記した本発明の顔料分散液と、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、樹脂成分を含有する。
【0033】
本発明のインクジェット用インクは、前記顔料であるカーボンブラックをインク全体の1質量%〜20質量%で含有し、前記湿潤剤を10質量%〜50質量%で含有し、前記界面活性剤を0.01質量%〜5質量%で含有し、前記浸透剤を0.05質量%〜5質量%で含有し、樹脂成分を0.01質量%〜7質量%で含有している。
使用される湿潤剤は、20℃、相対湿度60%の環境における平衡水分量が25質量%以上である。
【0034】
(湿潤剤)
前記湿潤剤としては、水素結合しやすく、単独では粘度が高いもので、かつ、平衡水分量が高く、水分の存在下では粘度が低下するようなものを含有させることで、本発明のインクジェット用インクを得ることができる。
このような本発明のインクジェット用インクで使用される湿潤剤は、20℃、相対湿度60%の環境における平衡水分量が25質量%以上、好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上の、多価アルコール及びトリメチルグリシンを含有することが望ましい。
【0035】
このトリメチルグリシンの含有量は総量に対し10質量%を超え40質量%以下であることが、上記吐出安定性と画像濃度を両立させるために望ましい条件である。またトリメチルグリシンの含有量は湿潤剤全体の10質量%を超え40質量%以下であることができる。
一方、多価アルコールの一つとしてグリセリンが挙げられ、好ましくは20質量%以上で、特に好ましくは25質量%以上40質量%以下である。
【0036】
このような湿潤剤に用いられる多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。特にグリセリンは、水分蒸発に伴い粘度が急激に上昇するが、着色剤の凝集を押さえ、粒径が大きくなるのを防ぐ効果が高いため、湿潤剤全体の20質量%以上、添加することが重要である。
またトリメチルグリシン乃至グリセリンと併用される湿潤剤としては、1,3−ブタンジオールが望ましい。1,3−ブタンジオールは、トリメチルグリシン乃至グリセリン同様に平衡水分量が高く、信頼性が高いうえに、インクが紙に着弾した際の画素の広がりを均一にし、更に色材を紙表面にとどめる効果も高い。グリセリンは信頼性向上効果が高いが、多量に添加すると画質が悪くなり、また水分蒸発後の粘度上昇が大きくなりすぎて、吐出安定性も悪くなる場合がある。このため、これらの混合比は1:5〜5:1、さらに、1,3−ブタンジオール:トリメチルグリシン乃至グリセリンは1:1〜4:1とすることが望ましい。より好ましくは1:1〜3:1で、特に好ましくは2:1〜3:1である。
インク全体に占める湿潤剤の割合は10〜50質量%が本発明の効果が得られる範囲であるが、特に好ましくは25質量%〜35質量%の範囲である。湿潤剤量が少ないとインクの保存安定性・吐出安定性が悪くなり、ノズルの目詰まりが起こりやすくなる。また湿潤剤量が多すぎると、乾燥性が悪くなり、文字の滲みや色境界の滲みが発生し、画像品質が低下することになる。
【0037】
(界面活性剤)
本発明のインクジェット用インクに用いられる界面活性剤は、下記構造式(1)を有するものである。
【0038】
【化2】

【0039】
上記構造式(1)中、Rfはフッ素含有基を表し、m、n、及びpは整数を表す。
より具体的には、Rfは、F−(CFCF)qで表される(ただし式中、qは1〜4の整数)フッ素含有基を表し、m、n、及びpはそれぞれ、0〜10の整数を表す。ただし、nとpが同時に0となることはない。
インク組成物中での界面活性剤の添加量は0.01質量%〜5.0質量%であり、好ましくは0.5質量%〜3質量%である。0.01質量%未満では添加した効果は無く、5.0質量%より多いと記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けの発生などを引き起こすおそれがある。
より好ましくは界面活性剤の添加量は0.5質量%以上2.5質量%未満で、特に好ましくは0.8質量%以上2.0質量%未満である。
【0040】
(浸透剤)
浸透剤としては、20℃の水に対する溶解度が0.05質量%以上5.0質量%未満のポリオールの少なくとも1種を含有することが望ましい。
より好ましくは1.0質量%以上5.0質量%未満で、特に好ましくは1.0質量%以上4.0質量%未満である。
このようなポリオールのうち、脂肪族ジオールとしては、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが、具体例として挙げられる。
これらのなかで最も望ましいものは2−エチル−1,3−ヘキサンジオール及び/又は2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールである。
【0041】
その他の併用できる浸透剤として、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類などが挙げられるが、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば、これらに限らない。
【0042】
浸透剤の添加量としては0.05質量%〜5.0質量%の範囲が望ましい。添加量が0.05質量%よりも少ないと、速乾性が得られず滲んだ画像となる。逆に添加量が5.0質量%よりも多いと着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなったり、また記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けの発生といった問題が発生する。
より好ましくは0.5質量%以上4.0質量%以下で、特に好ましくは1.0質量%以上3.0質量%以下である。
【0043】
(樹脂成分)
本発明のインクジェット用インクに用いられる樹脂成分として、前記した顔料分散液に、水性エマルジョンなどのポリマーエマルジョンを樹脂成分として添加する。このような樹脂成分は、顔料の固着性・分散安定性の面で、前記ポリマーエマルジョンに用いられる樹脂がポリウレタン系樹脂であることが好ましく、この樹脂としてはポリエステル型、ポリカーボネート型よりエーテル型であることが好ましい。
本発明のインクジェット用インクにおいて、樹脂成分として用いられるポリウレタンエマルジョンの平均粒子径は50nm以下であると分散性が安定するので好ましい。
この樹脂成分として用いられるポリウレタンエマルジョンの添加量は、ポリウレタン固形分として、0.01質量%〜7質量%が好ましい。0.01質量%より少ない場合、顔料に吸着するポリウレタン成分が少なく顔料同士の吸着が多くなり液の粘度が上昇するおそれがある。また7質量%より多いとポリウレタン同士が接着等により液の安定性が悪くなるおそれがある。
色材のカーボンブラックに、このようなポリマー微粒子のポリマーエマルジョンとしてのポリウレタンエマルジョンを使用することにより、溶媒残存率が60%を超えた時点でのD50の平均粒子径及びD90の粒子径が、それぞれD50では5μm以下、或いはD90では10μm以下となり、記録媒体表面への顔料の留まりが悪くなるのを防止し、記録媒体内部への浸透を適度に抑制し、画像濃度を高めることができる。このエマルジョンには、比較的親水性の通常のポリウレタン系樹脂を外部に乳化剤を使用してエマルジョン化したものと、樹脂自体に乳化剤の働きをする官能基を共重合等の手段で導入した自己乳化型のエマルジョンがあり、顔料や分散剤との各種組み合わせにおいて、常に分散安定性に優れているアニオン型自己乳化型ポリウレタンのエマルジョン樹脂を用いることが好ましい。
その際、顔料の固着性・分散安定性の面で、ポリウレタン系樹脂はポリエステル型、ポリカーボネート型よりエーテル型であることが好ましい。なお自己乳化型ポリウレタンがアニオン型でない場合、液の安定性が悪くなるおそれがある。
【0044】
その他、例えば消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤、比抵抗調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、粘度調整剤などをインクジェット用インクに含有することもできる。
【0045】
前記インクジェット用インクは、特に制限はなく、公知の方法により製造することができ、例えば本発明の前記顔料分散液、水、水溶性有機溶剤、及び界面活性剤等を攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置等で粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気することによって得られる。なおインクジェット用インクに用いられる水は、前記した顔料分散液に用いられる水と同様のものが用いられる。
【0046】
<インクカートリッジ>
このようにして得られた本発明のインクジェット用インクは、これをインクカートリッジに好適に収容することが出来る。また本発明のインクジェット用インクは、これを例えば紙のような記録媒体に吐出させ、記録(印字)を行って画像形成する画像記録装置、たとえばインクジェットプリント装置により、画像形成することができる。
印字する方法としては連続噴射型あるいはオンデマンド型が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
記録媒体として本発明では木材パルプを主成分とする原紙の片面又は両面にカオリン及びバインダーを主成分とするインク受容層を有し、JIS Z8741による光入射角75度の白紙光沢度が80%未満であるオフセット印刷用塗工紙の風合いを有するインクジェット記録媒体を挙げることができる。この記録媒体について、以下に説明する。
【0047】
<記録媒体>
本発明で用いられる記録媒体は、木材パルプを主成分とする原紙の片面又は両面にカオリンとバインダーを含むインク受容層を有し、JIS Z8741による光入射角75度の白紙光沢度が80%未満である。
【0048】
(原紙)
本発明の記録媒体に用いられる原紙は木材パルプを主成分とする。原料パルプとして、化学パルプ(針葉樹の晒又は未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒又は未晒クラフトパルプ等)、機械パルプ(グラウンドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミカルサーモメカニカルパルプ等)、脱墨パルプ等のパルプを単独で、又は複数を任意の割合で混合して使用することができる。
原紙の抄紙pHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでも良い。また、原紙中に、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。さらに本発明の原紙には必要に応じて硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、着色剤、染料、消泡剤、pH調整剤等の助剤を含有しても良い。なお原紙の坪量は特に制限されない。
【0049】
本発明では前記した原紙にインク受容層を設ける前に、紙力増強やサイズ性付与などを目的とし、澱粉、PVA、サイズ剤などから調製されたサイズプレス液を含浸又は塗布しても良い。含浸又は塗布を行う方法については特に制限されないが、ポンド式サイズプレスに代表される含浸法、あるいはロッドメタリングサイズプレスやゲートロールコーター、ブレードコーターに代表される塗布法で行われることが好ましい。また、サイズプレス液に含浸、あるいは塗布するときに、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて蛍光染料、導電剤、保水剤、耐水化剤、pH調整剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、界面活性剤等の助剤を任意の割合で混合することができる。
【0050】
(記録媒体のインク受容層)
1.インク受容層の顔料
本発明の記録媒体には、インク受容層をその片面又は両面に有している。インク受容層を形成するために用いられるインク受容層の顔料は、カオリンを主体とする。カオリンはカオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナックライトなどのカオリン鉱物を少なくとも1種類以上含む粘土製のものであり、一般的なオフセット印刷用塗工紙に使用される公知のカオリンを特に制限無く用いることができる。カオリンとしては、例えばジョージア産、ブラジル産、中国産等の産地や、1級、2級、デラミ等のグレードに限定されず、1種類又は2種類以上のカオリンを混合したものを適宜選択して使用することができる。
インク受容層に含まれる全ての無機顔料の合計100質量部に対するカオリンの割合が60質量部以上であることが好ましい。カオリンの含有割合が60質量部未満の場合、カオリンによる特有の光沢度をインク受容層に発現させることが難しく、又、水系インクに対する濡れ性や塗工紙の質感が失われ、オフセット印刷物の風合いが得られない。カオリンの含有割合が70質量部以上であることが好ましく、カオリンの含有割合が100質量部(無機顔料の100%がカオリン)であることが最も好ましい。
インク受容層を形成するために用いるカオリン以外の無機顔料としては、一般的なオフセット印刷用塗工紙に使用される公知の顔料であれば特に制限無く用いることができる。無機顔料として、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、シリカ複合炭酸カルシウム、タルク、上記カオリンを焼成した焼成カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、珪酸カルシウム、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト及びスメクタイト等の無機顔料の中から1種類ないし2種類以上を適宜選択して使用することができる。
【0051】
2.インク受容層のバインダー
インク受容層を形成するために用いるバインダーは、一般的なオフセット印刷用塗工紙に使用される公知のバインダーであれば特に制限無く用いることができる。バインダーとして、例えば酸化澱粉やエーテル化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類、SBラテックスやNBラテックス等のラテックス類、ポリビニルアルコール及びその変性物、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ポリウレタン、酢酸ビニル及び不飽和ポリエステル樹脂等のバインダーの中から1種類ないし2種類以上を適宜選択して使用することができるが、調成された塗料の流動性や塗工適性の観点から、ラテックス類ないし澱粉類、又はその混合物を用いることが好ましい。
インク受容層に含まれる全ての無機顔料の合計100質量部に対するバインダーの割合が5質量部以上15質量部未満であることが好ましい。バインダーの含有量が5質量部未満の場合、インク受容層の強度が不足する。一方、バインダーの含有量が15質量部を超えるとインク受容層中に存在する空隙がバインダーによって満たされ、インクの吸収容量が少なくなるため、高濃度・高粘度インクを用いた場合に良好な印字品質を得ることが困難となる。
【0052】
(その他の成分)
インク受容層には、その他必要に応じて、プラスチックピグメント等の有機顔料、顔料分散剤、増粘剤、保水剤、滑剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光染料、防腐剤、耐水化剤、界面活性剤、pH調整剤等の助剤を適宜添加することができる。
なお、前記有機顔料の割合は無機顔料の合計100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。
【0053】
(塗工量)
前記したインク受容層の塗工量(坪量)は特に制限を設けないが、2g/m以上40g/m未満であることが好ましく、特に5g/m以上30g/m未満であることが好ましい。インク受容層の塗工量が2g/m未満の場合、基材となる原紙を充分に被覆することができないため、塗工紙表面にガサつきが残り、非塗工紙に似た風合いを帯び、目的としたオフセット印刷物の風合いを持つ印字物を得ることができず、また、インク受容層の吸収容量も充分ではないため、フェザーリングやブリードなどの印字不良を起こしやすい。一方、インク受容層の塗工量が40g/m以上となると、塗工時の乾燥負荷が大きいため、作業性が劣り、また高コストとなる。
【0054】
(塗工方法)
前記した原紙上にインク受容層を設ける方法としては、一般的な塗工装置である、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター、スプレーコーター、サイズプレス等の各種装置を、オンマシン又はオフマシンで使用することができる。また、インク受容層は1層又は2層以上設けても良く、さらに、インク受容層を設けた後にマシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、シューカレンダー等のカレンダー装置で表面処理することもできる。
【0055】
(白紙光沢度)
インクジェット記録媒体のインク受容層表面のJIS Z8741による光入射角75度の白紙光沢度は80%未満であることが必要である。白紙光沢度が80%を超えるものは、高い光沢度を得るために非常に強いカレンダー処理を行っているため、インク受容層中の空隙が減少し、良好なインク吸収性が得られない。また、光沢度が低すぎる場合は、オフセット印刷物の風合いを損ねてしまう恐れがあるので、白紙光沢度は15%以上であることが好ましい。より好ましくは、白紙光沢度は15%以上75%未満である。
【0056】
(画像形成装置及び記録方法)
本発明の画像形成装置は、本発明の前記インクジェット用インクを吐出させて画像を形成する吐出手段を少なくとも有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明の記録方法は、本発明の前記インクジェット用インクを吐出させて画像を形成する吐出工程を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0057】
印字(吐出)する方法としては、連続噴射型、又はオンデマンド型が挙げられる。前記オンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
前記ピエゾ方式は、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるものである(特開平2−51734号公報参照)。
前記サーマル方式は、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させてインク滴を吐出させるものである(特開昭61−59911号公報参照)。
前記静電方式は、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるものである(特開平6−71882号公報参照)。
【0058】
図1において、本発明の前記インクジェット用インクが収容されるインクカートリッジ20は、キャリッジ18内に収納される。ここで、インクカートリッジ20は便宜上複数設けられているが、複数である必要はない。このような状態でインクジェット用インクが、インクカートリッジ20からキャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aに供給される。なお、図1において、吐出ノズル面は下方向を向いた状態であるため見えない状態であるが、この吐出ノズル18aからインクジェット用インクが吐出される。
キャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aは、主走査モータ24で駆動されるタイミングベルト23によってガイドシャフト21、22にガイドされて移動する。一方、特定のコート紙(画像支持体)はプラテン19によって液滴吐出ヘッド18aと対面する位置に置かれる。なお、図1中、1はインクジェット記録装置、2は本体筐体、16はギア機構、17は副走査モータ、25及び27はギア機構、26は主走査モータをそれぞれ示す。前記記録方法では、本発明のインクジェット用インクを収容した画像記録装置を用いて記録媒体上に記録され、その画像部光沢度が非画像部光沢度の90%を超える。
【0059】
(画像形成物)
本発明の画像形成物は、記録媒体上に本発明の前記インクジェット用インクを用いて形成された画像を有してなる。
【0060】
本発明におけるインクジェット用インクを収容したインクジェット記録装置を用いて記録媒体上に画像を形成すると、オンデマンドで記録媒体上に印刷された画像形成物が得られる。また、インクジェット用インクの補充はインクカートリッジを取り替えることによって行われる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお実施例、比較例の例中用いる「部」及び「%」は、光沢度比率及び変化率の%を除いて、質量基準(それぞれ質量部、質量%)である。
【0062】
1.原紙の作製
広葉樹漂白クラフトパルプ(濾水度480ml)70%と針葉樹漂白クラフトパルプ(濾水度500ml)30%とを混合し、これに対し、カチオン化澱粉をパルプに対して0.5%添加し、アルキルケテンダイマーをパルプに対して0.05%添加し、硫酸バンドをパルプに対して2%添加し、炭酸カルシウムをパルプに対して10%添加して紙料とした。この紙料を用いて長網抄紙機で紙匹を形成し、3段のウェットプレスを行い乾燥した後、マシンカレンダー処理して、坪量80g/mの原紙を得た。
【0063】
2.記録媒体の作成
(サンプル1)
原紙上にカオリン(DB−KOTE:イメリス社製)70部、シリカ30部、バインダーとなるSBラテックス(ガラス転移温度15℃)8部、バインダーとなる酸化澱粉(マーメイド210:敷島スターチ社製)1部、水酸化ナトリウム0.1部、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.2部及び希釈水を混合して固形分65%の塗料を得た。この塗料を、ブレードコーターを用いて塗工量12g/mとなるように塗工した。塗工後、紙中水分率5%となるまで乾燥し、JIS Z8741に基づく光入射角75度の白紙光沢度が70%となるよう、スーパーカレンダー処理してインクジェット記録媒体を得た。
(サンプル2)
シリカ70部及びシリカ30部をカオリン100部にした以外はサンプル1と同様にして、サンプル2の記録媒体を作成した。
【0064】
3.分散液の作成
・分散液(A):
BET比表面積が110m/g、一次粒子の平均粒子径が25nmのガスブラックカーボン200g、分散剤としてナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(竹本油脂社製、A−45−PN)(ナフタレンスルホン酸2量体、3量体、及び4量体の合計含有量:48%)10g、蒸留水790gの混合物をプレミックス後ビーズミル分散機(寿工業社製、UAM−015)を用い0.03mmジルコニアビーズ(密度6.03×10−5g/m)で周速10m/s、液温32℃で10分間分散した後、遠心分離機(久保田商事社製、Model−3600)で粗大粒子を遠心分離し、0.5μmのメンブランフィルターでろ過し、分散液(A)を得た。
・分散液(B):
分散液Aのガスブラックカーボンを、BET比表面積が260m/g、一次粒子の平均粒子径が15nmのガスブラックカーボンを用い、分散剤の量を12gとし、蒸留水の量を788gにした以外は分散液(A)と同様にして、分散液(B)を得た。
・分散液(C):
分散液Aのガスブラックカーボンを、BET比表面積が320m/g、一次粒子の平均粒子径が13nmのガスブラックカーボンを用い、分散剤の量を15gとし、蒸留水の量を785gにした以外は分散液(A)と同様にして分散液(C)を得た。
・分散液(D):
分散液Aの分散剤の量を20gとした以外は分散液(A)と同様にして分散液(D)を得た。
・分散液(E):
分散液Aの分散剤の量を80gとした以外は分散液(A)と同様にして分散液(E)を得た。
・分散液(F):
分散液Aの分散剤の量を50gとし、蒸留水の量を750gにした以外は分散液(A)と同様にして分散液(F)を得た。
・分散液(G):
分散液Aの分散剤の量を150gとし、蒸留水の量を650gにした以外は分散液(A)と同様にして分散液(G)を得た。
・分散液(H):
分散液Aのガスブラックカーボンを、BET比表面積が460m/g、一次粒子の平均粒子径が13nmのガスブラックカーボンにした以外は分散液(A)と同様にして分散液(H)を得た。
・分散液(I):
分散液Aのガスブラックカーボンを、BET比表面積が90m/g、一次粒子の平均粒子径が29nmのガスブラックカーボンにした以外は分散液(A)と同様にして分散液(I)を得た。
・分散液(J):(表面処理したカーボンブラック顔料分散液)
BET比表面積が220m/g、一次粒子の平均粒子径が17nmのファーネスカーボン90gを、2.5N規定の硫酸ナトリウム溶液3000mlに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させ、酸化処理を行なった。この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行なって得られたカーボンブラックを水洗して乾燥させ、20質量%となるよう純水中に分散させ、分散液(J)を得た。
・分散液(K):
BET比表面積が220m/g、一次粒子の平均粒子径が17nmのファーネスカーボン200gを用い、分散剤としてポリビニルピロリドン(平均分子量25000)2g、蒸留水798gの混合物をプレミックス後にビーズミル分散機(寿工業社製,UAM−015)を用い0.03mmジルコニアビーズ(密度6.03×10−6g/m)で周速10m/s、液温32℃で10分間分散した後、5μmのメンブランフィルターでろ過し、分散液(K)を得た。
・分散液(L):
分散剤をプライサーフA−219B(第一工業製薬社製:ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル)にした以外は分散液(K)と同様にして分散液(L)を得た。
・分散液(M):
分散剤をハイテノール18E(第一工業製薬社製、アニオン系界面活性剤)にした以外は分散液(K)と同様にして分散液(M)を得た。
・分散液(N):
ファーネスカーボンのBET比表面積を250m/g、一次粒子の平均径が15nmにし、分散剤をハイテノール18Eにした以外は分散液(K)と同様にして分散液(N)を得た。
・分散液(O):
ファーネスカーボンのBET比表面積を90m/g、一次粒子の平均径が26nmにした以外は分散液(N)と同様にして分散液(O)を得た。
・分散液(P):
分散液(A)の分散時間が8分間となるように遠心分離条件を調節した以外は、分散液(A)と同様にして分散液(P)を得た。
・分散液(Q):
分散液(A)の分散剤をハイテノール18E(第一工業製薬社製:アニオン系界面活性剤)に変え、分散時間が18分間となるようした以外は、分散液(A)と同様にして分散液(Q)を得た。
・分散液(R):
分散液(A)のナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物のナフタレンスルホン酸2量体、3量体、4量体の合計含有量を15%とした以外は、分散液(R)と同様にして分散液を得た。なお、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物のナフタレンスルホン酸2量体、3量体、4量体の合計含有量は、GPC(液体クロマトグラフ)による分子量測定により行った。
【0065】
以下に本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記処方のインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.5μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インク組成物を得た。
【0066】
(実施例1)
分散液A 10.0%(固形分として)
3−メチル−1,3−ブタンジオール 20.0%
トリメチルグリシン 8.0%
下記構造式(2)に示す界面活性剤: 0.5%
PF−151N(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
タケラックW5025 3.0%(固形分として)
(水溶性ポリウレタン:三井化学ポリウレタン社製)
残りはイオン交換水を加えた。
前記「分散液A 10.0%(固形分として)」とは、インク組成分を100としたときに、分散液Aに含まれる固形分(顔料分)が10であることを意味する。また、「タケラックW5025 3.0%(固形分として)」とは、インク組成分を100としたときに、タケラックW5025に含まれる固形分が3であることを意味する。
【化3】

構造式(2)中、「〜20」は20以下の整数を表し、Xは、0〜8の整数を示す。
【0067】
(実施例2)
分散液A 10.0%(固形分として)
1,6−ヘキサンジオール 17.0%
トリメチルグリシン 10.0%
前記構造式(2)に示す界面活性剤:PF−151N(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)
0.5%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
タケラックW5052 3.0%(固形分として)
(水溶性ポリウレタン:三井化学ポリウレタン社製)
残りはイオン交換水を加えた。
【0068】
(実施例3)
分散液A 10.0%(固形分として)
1,5−ペンタンジオール 15.0%
トリメチルグリシン 12.0%
前記構造式(2)に示す界面活性剤:PF−151N(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)
0.5%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2%
タケラックW5052 3.0%(固形分として)
(水溶性ポリウレタン:三井化学ポリウレタン社製)
残りはイオン交換水を加えた。
【0069】
(実施例4)
分散液A 10.0%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 15.0%
トリメチルグリシン 15.0%
前記構造式(2)に示す界面活性剤:PF−151N(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)
0.5%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2%
タケラックW5025 3.0%(固形分として)
(水溶性ポリウレタン:三井化学ポリウレタン社製)
残りはイオン交換水を加えた。
【0070】
(実施例5)
分散液B 10.0%(固形分として)
3メチル−1,3−ブタンジオール 20.0%
トリメチルグリシン 8.0%
前記構造式(2)に示す界面活性剤:PF−151N(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)
0.5%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
タケラックW5025 3.0%(固形分として)
(水溶性ポリウレタン:三井化学ポリウレタン社製)
残りはイオン交換水を加えた。
【0071】
(実施例6〜12)
実施例1で用いた分散液(A)を、分散液(C)〜(I)に順次変えた以外は実施例1
と同様にして、それぞれ実施例6〜12のインク液を得た。
【0072】
(実施例13〜15)
実施例1で用いた分散液(A)を、分散液(P)〜(R)に順次変えた以外は実施例1
と同様にして、それぞれ実施例13〜15のインク液を得た。
【0073】
(比較例1)
分散液J 10.0%(固形分として)
3−メチル−1,3−ブタンジオール 20.0%
グリセリン 8.0%
サーフィノール456 0.5%
(アセチレン系界面活性剤:エアプロダクツ社製)
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
タケラックW5052 3.0%(固形分として)
(水溶性ポリウレタン:三井化学ポリウレタン社製)
残りはイオン交換水を加えた。
【0074】
(比較例2〜6)
比較例1の分散液(J)を、分散液(K)〜(O)に順次変えた以外は比較例1と同様
にして、それぞれ比較例2から6のインク液を得た。
【0075】
印字品質評価
記録用メディアは前記した記録媒体サンプル1及び2を用いて、300dpi、ノズル
解像度384ノズルを有するドロップオンデマンドプリンタ試作機を使用し、画像解像度
600dpiにて印字を行った。最大滴サイズは18pl(ピコリットル)とし、二次色
の総量規制を140%にして付着量規制を実施した。ベタ印字の際は300dot四方の
インク総量が15g/mを超えないよう、ベタ画像、及び文字を印写した。得られた画
像について、画像品位、画像信頼性を評価した。結果を表1に示す。評価結果に×が示し
てあるものは、インクジェット画像として不適切なものである。
【0076】
1.粗大粒子数評価(0.5μm以上の微粒子数:[個数/5μL])
粗大粒子測定にはPSS社製 AccuSizer 708Aを使用
条件:測定液:0.08%水溶液
測定機条件:Data Collection Time: 60sec
Number Channels :128
Diluent Flow Rate :60ml/min
Target Concentration :4,000Part/ml
#of Samples :3
Time Between samples :1min
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【0077】
2.粒子径測定
粒子径の測定にはマイクロトラックUPA150を使用し、体積平均粒径を測定した(メ
ジアン径:D50、単位は[nm])。
条件:測定液0.1%水溶液
測定機条件:Part Refractive Index:1.86
Part・Density:1.86(gm/cm
Fluid Refractive Index:1.33
【0078】
3.光沢度比率評価
光沢度測定にはGlossMeter VG2000を使用し、記録媒体(前記したサンプル1又は2)を用いて作成した画像形成物の画像部と、非画像部との75度光沢度を測定した。
光沢度比率は以下の式を用いて求めた。
光沢度比率(%)=(画像部光沢度/非画像部光沢度)×100
〔評価基準〕
・光沢度比率(%)
○:90%〜100%
△:70%〜89%
×:69%以下
【0079】
4.画像濃度の評価
実施例及び比較例の黒べた画像部の光学濃度を、分光測色計(X−Rite938)に
て測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
・画像濃度
◎:1.6以上
○:1.3以上
△:1.0以上
×:1.0未満
【0080】
5.吐出安定性評価
吐出安定性は、以下のようにして評価した。
印刷物を印刷した後、プリンタヘッドにキャップした状態でプリンタを40℃の環境下
に1ヶ月放置した。放置後のプリンタの吐出状態が初期の吐出状態に回復するか否かを下
記のクリーニング動作回数によって評価した。
◎:1回の動作により回復した。
○:2回の動作により回復した。
△:3回の動作により回復した。
×:4回以上の動作によっても回復がみられなかった。
【0081】
6.インク液保存性評価
各インクをポリエチレン容器に入れて密封し、70℃で3週間保存した後、その粒径、
表面張力、粘度を測定し、初期とのこれらの変化率を求め、下記の様に評価した。
◎:粒径、表面張力、粘度の全ての項目で変化率が5%未満である。
○:粒径、表面張力、粘度の全ての項目で変化率が10%未満である。
△:粒径、表面張力、粘度の全ての項目で変化率が30%未満である。
×:粒径、表面張力、粘度の少なくとも一つの項目で変化率が30%以上である。
【0082】
また実施例3、4以外は記録媒体としてサンプル1(光沢度55%)を用い、また実施
例3、4はサンプル2(光沢度70%)を用いて上記した1〜6の評価に基づき、実施例
及び比較例を評価した。結果を表1及び2に示す。
【0083】
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の顔料分散液を用いたインクジェット用インクと記録媒体との組み合わせにより、画像濃度が高く、画像部と非画像部の光沢バランスが良好なために画像部の視認性に優れ、又インク吐出安定性や液安定性にも優れたインクジェット用記録インク及び記録方法が提供できる。
【符号の説明】
【0085】
1 インクジェット記録装置
2 本体筐体
16 ギア機構
17 副走査モータ
18 キャリッジ
18a 液滴吐出ヘッド
19 プラテン
20 インクカートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
24 主走査モータ
25 ギア機構
26 主走査モータ
27 ギア機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2005−254611号公報
【特許文献2】特開2005−161859号公報
【特許文献3】特開2004−026947号公報
【特許文献4】特開2004−027026号公報
【特許文献5】特開2007−253357号公報
【特許文献6】特開2006−082378号公報
【特許文献7】特開2005−097517号公報
【特許文献8】特開2005−074938号公報
【特許文献9】特開2006−008858号公報
【特許文献10】特開2002−003767号公報
【特許文献11】特開2006−219584号公報
【特許文献12】特開2001−106949号公報
【特許文献13】特開2004−299386号公報
【特許文献14】特開平5−239392号公報
【特許文献15】特開平8−283633号公報
【特許文献16】特開2000−63727号公報
【特許文献17】特開2001−81366号公報
【特許文献18】特開平08−333531号公報
【特許文献19】特開昭56−147871号公報
【特許文献20】米国特許第5085698号明細書
【特許文献21】米国特許第5221334号明細書
【特許文献22】米国特許第5172133号明細書
【特許文献23】米国特許第5571311号明細書
【特許文献24】特開平8−81646号公報
【特許文献25】特開平8−3498号公報
【特許文献26】特開平9−194775号公報
【特許文献27】特開2000−144028号公報
【特許文献28】特開2005−281691号公報
【特許文献29】特開2005−314528号公報
【特許文献30】特開2006−188626号公報
【特許文献31】特許第3625595号公報
【特許文献32】特開2006−077232号公報
【特許文献33】特開2007−217472号公報
【特許文献34】特開2007−146167号公報
【特許文献35】特開2008−063546号公報
【特許文献36】特開2008−045023号公報
【特許文献37】特開2008−231182号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックと分散剤と水とを含むインクジェット用顔料分散液において、前記顔料分散液における粒子径0.5μm以上の粗大粒子総数が100万個/5μL以下であることを特徴とするインクジェット用顔料分散液。
【請求項2】
カーボンブラックは、ガスブラックであり、そのBET比表面積が100m/g〜400m/gであり、一次粒子の平均粒子径(D50)が20nm以上180nm以下である請求項1に記載のインクジェット用顔料分散液。
【請求項3】
カーボンブラックの粒子径の標準偏差が、平均粒子径の1/2以下である請求項1から2のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液。
【請求項4】
分散剤がナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物である請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液。
【請求項5】
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は、ナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、及び4量体を含み、その合計含有量が前記ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物全体の20質量%〜80質量%である請求項4に記載のインクジェット用顔料分散液。
【請求項6】
分散剤が質量基準でカーボンブラック1に対して0.01以上2以下の割合で含まれる請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット用顔料分散液と、湿潤剤と、界面活性剤と、浸透剤と、樹脂成分とを含有して成るインクジェット用インクであって、カーボンブラックを1質量%〜20質量%、前記湿潤剤を10質量%〜50質量%、前記界面活性剤を0.01質量%〜5質量%、前記浸透剤を0.05質量%〜5質量%、前記樹脂成分を0.01質量%〜7質量%含有することを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項8】
湿潤剤は、温度20℃、相対湿度60%環境中の平衡水分量が、25質量%以上である多価アルコール及びトリメチルグリシンを含む請求項7に記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
トリメチルグリシンの含有量がインクジェット用インクの総量に対して10質量%を超え40質量%以下である請求項8に記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
界面活性剤が下記構造式(1)の化合物を含む請求項7から9のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【化4】


(式中、Rfはフッ素含有基を表し、m、n、及びpは整数を表す(ただし、nとpが同時に0となることはない。)。)
【請求項11】
請求項7から10のいずれかに記載のインクジェット用インクを収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項12】
請求項7から10のいずれかに記載のインクジェット用インク、及び、請求項11に記載のインクカートリッジのいずれかを搭載した画像形成装置。
【請求項13】
記録媒体の表面に、記録情報に応じてインクを付与して記録を行う記録方法において、前記記録媒体はJIS Z8741による光入射角75度の白紙光沢度が80%未満であり、請求項12に記載の画像形成装置を用いて前記記録媒体上に記録され、その画像部光沢度が非画像部光沢度の90%を超えることを特徴とする記録方法。
【請求項14】
記録媒体は、木材パルプを主成分とする原紙の片面又は両面にカオリンとバインダーを含むインク受容層を有し、JIS Z8741による光入射角75度の白紙光沢度が80%未満である請求項13に記載の記録方法。
【請求項15】
請求項13から14のいずれかに記載の記録方法を用いて画像が形成されたことを特徴とする画像形成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2010−261028(P2010−261028A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88980(P2010−88980)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】