説明

顔料分散液の製造方法、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置

【課題】保存安定性が良好で高発色性かつ高堅牢性を有する画像を提供することのできる顔料分散液を提供すること。
【解決手段】インクジェツト記録用インクに使用する顔料、疎水基とアニオン性親水基を有する高分子分散剤および水から主としてなる顔料分散液の製造方法で、1)高分子分散剤を水溶性有機溶媒に溶解させて顔料が分散した高分子分散溶液を作製する工程 2)水と混合する工程 3)中和工程 4)有機溶媒を除去する工程を少なくとも有する方法にて顔料分散液を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散液の製造方法、インクジェット記録用インク(以下単に「インク」という場合がある)、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置に関する。さらに詳しくは、保存安定性が高く印字画像の発色性が良好な顔料分散液の製造方法、該製造方法で作製した顔料分散液を使用したインク、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷インクの着色剤として、耐水性や耐光性などの堅牢性に優れた顔料などの水不溶性色材が広く用いられている。しかし、水不溶性色材を水性インクの色材として用いるためには、水性媒体中に水不溶性色材を安定して分散させることが要求される。そのため、高分子化合物や界面活性剤などの分散剤を添加して水不溶性色材を水性媒体中に均一に分散させた色材分散タイプの水性インクが使用されている。
【0003】
近年、インクジェット記録用途においても、画像堅牢性の面からこの色材分散タイプの水性インクをインクとして使用するようになってきている。インクジェット記録においては、紙面上でのインクの定着性や耐水性を向上させるために、インク中の色材粒子に凝集機能や水不溶化機能を持たせる試みが採られている。しかしながら、このような機能を色材粒子に持たせることによって、インク中での色材粒子の分散安定性が低下することになり、インクの保存中に色材粒子が凝集してインクの濃度むらや沈降が発生しやすくなる、インクジェット装置のノズル先端部でインク乾燥による目詰まりが発生し吐出安定性が低下しやすくなるなどという問題点を持つ。
【0004】
上記問題点を解決するために、特許文献1や2では、水不溶性色材をマイクロカプセル化したインクが提案されているが、これらの提案では、水不溶性色材と分散剤とを混合して分散機で処理する方法や、顔料と高分子化合物を含有する有機溶媒相を水中に投入する方法で作製したインクでは、インク中の色材の粒子径が大きくなってしまい、印字画像において色材凝集体表面での光の乱反射により印字画像の彩度が低下してしまうため、水溶性染料を使用したインクに比べると印字画像の発色性は不充分である。
【0005】
【特許文献1】第2562634号公報
【特許文献2】特開2002−226743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みて為されたもので、保存安定性が良好で高発色性かつ高堅牢性を有する画像を提供することのできる顔料分散液を提供することであり、さらには発色性と堅牢性に優れた画像をいつでも安定して記録し得えるインク、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題点を解決すべく鋭意検討した結果、以下の発明によって解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、インクに使用する顔料、疎水基とアニオン性親水基を有する高分子分散剤および水から主としてなる顔料分散液の製造方法において、
(1)上記顔料と未中和のアニオン性親水基を有する上記高分子分散剤と該高分子分散剤を溶解し得る水溶性有機溶媒とを混合し、上記顔料を上記水溶性有機溶媒により湿潤させるとともに、上記高分子分散剤を上記水溶性有機溶媒に溶解させて顔料が分散した高分子分散剤溶液を作製する第1工程、
(2)上記第1工程で作製した溶液と水とを混合する第2工程、
(3)上記高分子分散剤を中和可能な中和剤が含有される水溶液と、上記第2工程で水を混合して作製した溶液とを混合する第3工程、
(4)上記第3工程で作製した混合水溶液中の有機溶媒を除去する第4工程、
を少なくとも有することを特徴とする顔料分散液の製造方法を提供する。
【0008】
上記本発明においては、前記第1工程におけ性有機溶媒の溶解性パラメータが、前記高分子分散剤の疎水基の溶解性パラメータに対して、−6.0〜3.0(J/cm31/2の範囲であること;および前記第2工程における水の添加量が、前記第1工程で作製した溶液中の水溶性有機溶媒と水との溶解性パラメータが、前記高分子分散剤の有する未中和のアニオン性親水基の溶解性パラメータに対して、−5.0〜5.0(J/cm31/2の範囲になる量であることが好ましい。
【0009】
また、上記本発明においては、前記第2工程における水の添加量が、前記第1工程で作製した溶液中の水溶性有機溶媒と水との溶解性パラメータが、前記高分子分散剤の疎水基の溶解性パラメータに対して2.0〜11.0(J/cm31/2の範囲になる量であること;および前記第2工程と第3工程の間に、さらに弱塩基性物質水溶液を添加する第5工程を設け、第5工程において弱塩基性物質水溶液を添加することで、弱塩基性物質が含有される水溶液の混合量を、該水溶液混合後の有機溶媒−水混合溶液の溶解性パラメータが前記高分子分散剤の有する未中和のアニオン性親水基の溶解性パラメータに対して、−5.0〜7.0(J/cm31/2の範囲になるように調整することが好ましい。
【0010】
また、上記本発明においては、前記第5工程において、前記弱塩基性物質を添加することで、該弱塩基性物質が含有される水溶液の混合量を、該水溶液混合後の有機溶媒−水混合溶液の溶解性パラメータが、前記高分子分散剤の有する未中和のアニオン性疎水基の溶解性パラメータに対して、6.0〜11.0(J/cm31/2の範囲になるように調整すること;および上記弱塩基性物質が、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンおよびモノエタノールアミンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
また、上記本発明においては、前記第3工程における中和剤が、水溶性アルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種であること;前記第3工程における中和剤の添加量が、前記高分子分散剤の未中和のアニオン性親水基に対して0.5〜2.0倍当量の範囲であり、かつ上記中和剤の濃度が、1.0mol/l〜10.0mol/lの範囲であること;前記水溶性有機溶媒が、環状エーテルであること;前記第3工程の後に、水を添加することが好ましい。
【0012】
また、上記本発明においては、前記高分子分散剤が、少なくとも1種の疎水性ブロックと少なくとも1種のアニオン性親水性ブロックとからなるブロック共重合体で、かつ各ブロックがビニルエーテル類から構成された高分子分散剤であること;前記高分子分散剤の親水性ブロックが、非イオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックと、アニオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックとを少なくとも含むこと;および前記高分子分散剤が、疎水性のビニルエーテル類で構成されたブロック、非イオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロック、およびアニオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロックの順番で少なくとも構成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、水不溶性色材、高分子分散剤、水溶性有機溶媒および水から主としてなるインクにおいて、上記水不溶性色材として前記本発明の製造方法で作製した顔料分散液を含有することを特徴とするインクを提供する。
【0014】
また、本発明は、インクにエネルギーを与えて、該インクを飛翔させて被記録材に付与して行うインクジェット記録方法において、上記インクが、前記本発明のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。該記録方法においては、エネルギーが、熱エネルギーであること;および被記録材が、少なくとも一方の面にインクを受容するコーティング層をもつ被記録材であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、インクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、上記インクが、前記本発明のインクであることを特徴とするインクカートリッジ;およびインクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジと、該インクを吐出させるためのヘッド部を備えたインクジェット記録装置において、上記インクが、前記本発明のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明によれば、保存安定性が良好で高発色性かつ高堅牢性を有する画像を提供することのできる顔料分散液を製造することができ、さらには吐出性能が良好で発色性と堅牢性に優れた画像をいつでも安定して記録し得るインク、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明者らは、インクに使用する顔料、疎水基とアニオン性親水基を有する高分子分散剤および水から主としてなる顔料分散液の製造方法において、
(1)上記顔料と未中和のアニオン性親水基を有する上記高分子分散剤と該高分子分散剤を溶解し得る水溶性有機溶媒とを混合し、上記顔料を上記水溶性有機溶媒により湿潤させるとともに、上記高分子分散剤を上記水溶性有機溶媒に溶解させて顔料が分散した高分子分散剤溶液を作製する第1工程、
(2)上記第1工程で作製した溶液と水とを混合する第2工程、
(3)上記高分子分散剤を中和可能な中和剤が含有される水溶液と、上記第2工程で水を混合して作製した溶液とを混合する第3工程、
(4)上記第3工程で作製した混合水溶液中の有機溶媒を除去する第4工程、
を少なくとも有することで、保存安定性が良好で高発色性かつ高堅牢性を有する画像を提供することのできる顔料分散液およびインクを製造することができることを見出した。
【0018】
一般的に、油溶性染料などの水不溶性色材を高分子分散剤で被覆した水不溶性色材分散液の作製方法として、化学的製法、物理的製法または機械的製法など様々な方法が知られているが、小粒子径で均一な水不溶性色材分散液の作製方法として、転相法が挙げられる。転相法は、有機溶媒中で油溶性染料などの水不溶性色材と高分子分散剤を混合させた後、水系へ転相し、水不溶性色材を高分子分散剤でマイクロカプセル化する方法である。しかし、この従来の転相法では、水不溶性色材を内包していない高分子分子分散剤の『空のミセル』が形成してしまう場合があり、インク中への水不溶性色材の分散に寄与していない高分子分散剤が多く存在するため、インクの吐出安定性や長期保存安定性が悪くなるという問題がある。
【0019】
そこで、本発明者らは、転相法の条件の中でも、有機溶媒中で顔料と高分子分散剤を混合し、得られた混合液に水を投入し、顔料粒子を高分子分散剤が取り囲んで顔料分散液を形成する条件に着目して鋭意検討した結果、高分子分散剤の有機溶媒−水混合溶液に対する溶解状態によって、得られる顔料分散液の粒子径や粒子の安定性に大きな違いが発生することを見出し、この有機溶媒−水混合溶液中の高分子分散剤の親和性を正確に制御することで、微粒子で分散安定性の良好な顔料分散液を作製することを可能にした。
【0020】
本発明のように、高分子分散剤として未中和のアニオン性親水基を有する高分子分散剤を使用し、顔料とともに有機溶媒に混合すると、中和させたアニオン性親水基を有する高分子分散剤を使用する場合では中和させたアニオン性親水基の有機溶媒中での溶解性が低く高分子分散剤が単分子状にならずに高分子分散剤同士で強い相互作用を持つのに対し、上記混合によって一旦各々が単分子状になった均一な系が形成される。
【0021】
さらに、高分子分散剤が有する疎水基と親和性の高い水溶性有機溶媒を使用することで、高分子分散剤同士が凝集することなくより均一に溶解することができ、高分子分散剤が有する疎水基と顔料粒子との相互作用が強く働くようになる。このような状態の溶液と水とを混合すると、顔料の有機溶媒−水混合溶液中での湿潤性や高分子分散剤が有する疎水基の有機溶媒−水混合溶液中での溶解性が低下し、すなわち、顔料と溶媒との相互作用や高分子分散剤が有する疎水基と溶媒との相互作用が低下し、高分子分散剤が有する疎水基と顔料粒子との相互作用がより強くなる。
【0022】
次いで、高分子分散剤のアニオン性親水基をイオン化させて親水性を高める働きのある中和剤を含有する水溶液と混合することによって、最初に水を添加せずに中和剤を含有する水溶液だけを添加する場合に比べ、容易に顔料粒子と高分子分散剤との結合体が形成され、すなわち、顔料粒子表面に高分子分散剤が均一に付着することが可能となり、顔料粒子の表面が露出することなく高分子分散剤によって均一に被覆された分散液が安定的に形成され、粒子径が小さく分散安定性に優れた顔料分散液が形成できるようになると考えられる。
【0023】
また、最初に水を混合せずに中和剤を含有する水溶液だけを混合する場合には、高分子分散剤の有する疎水基と顔料粒子との相互作用が弱いため、顔料粒子を内包していない高分子分散剤の凝集物、すなわち、『空のミセル』が形成してしまう可能性があるが、本発明においては、この『空のミセル』の形成を抑えることができるため、顔料粒子をカプセル化するための高分子分散剤の添加量を最小限に抑えることができ、良好な顔料分散液やインクの長期保存安定性や吐出安定性が得られると考えられる。
【0024】
本発明の製造方法について説明する。図1は本発明の製造方法のフローチャートを示したものである。本発明は、インクに使用する顔料、疎水基とアニオン性親水基を有する高分子分散剤および水から主としてなる顔料分散液の製造方法において、
(1)上記顔料と未中和のアニオン性親水基を有する上記高分子分散剤と該高分子分散剤を溶解し得る水溶性有機溶媒とを混合し、上記顔料を上記水溶性有機溶媒により湿潤させるとともに、上記高分子分散剤を上記水溶性有機溶媒に溶解させて顔料が分散した高分子分散剤溶液を作製する第1工程、
(2)上記第1工程で作製した溶液と水とを混合する第2工程、
(3)上記高分子分散剤を中和可能な中和剤が含有される水溶液と、上記第2工程で水を混合して作製した溶液とを混合する第3工程、
(4)上記第3工程で作製した混合水溶液中の有機溶媒を除去する第4工程、
を少なくとも有する顔料分散液の製造方法である。
【0025】
第1工程においては、前記顔料と前記未中和のアニオン性親水基を有する高分子分散剤とを水溶性有機溶媒中に混合し、顔料を水溶性有機溶媒により湿潤させ、高分子分散剤を水溶性有機溶媒に溶解させればよい。使用する水溶性有機溶媒としては、水溶性有機溶媒の溶解性パラメータが、高分子分散剤の疎水基の溶解性パラメータに対して、−6.0〜3.0(J/cm31/2の範囲であるものが好ましく、−4.0〜3.0の範囲であるものが高分子分散剤の疎水基と顔料粒子とが水溶性有機溶媒中に均一に混合されるためより好ましい。顔料と高分子分散剤を水溶性有機溶媒に混合させる場合、攪拌しながら混合する方法、加温して混合する方法または超音波を照射しながら攪拌する方法などが使用できる。
【0026】
第2工程は、水と第1工程で作製した溶液を混合する工程である。水と第1工程で作製した溶液を混合することで、溶液が均一化され、高分子分散剤の有する疎水基と顔料粒子との相互作用がより強くなるため特に望ましい。
【0027】
水の混合量としては、以下のように調整することより粒子径が小さく分散安定性の良好な顔料分散液が得られるため望ましい。第1工程で作製した溶液中の有機溶媒と水との混合液の溶解性パラメータが、高分子分散剤の未中和のアニオン性親水基の溶解性パラメータに対して、−5.0〜5.0(J/cm31/2の範囲になるように調整することが好ましく、−1.0〜4.0(J/cm31/2の範囲であればより好ましい。また、第1工程で作製した溶液中の有機溶媒と水との混合液の溶解性パラメータが高分子分散剤の疎水基の溶解性パラメータに対して、+2.0〜11.0(J/cm31/2の範囲になるように調整することが好ましく、+5.0〜11.0(J/cm31/2の範囲であればより好ましい。
【0028】
第3工程においては、前記高分子分散剤を中和可能な中和剤を含有する水溶液と第2工程で作製した溶液を混合すればよい。この際、中和剤を含有する水溶液を第2工程で作製した溶液に添加すると、顔料粒子表面が高分子分散剤に均一に被覆された顔料粒子の分散液が安定的に形成されるため特に望ましい。
【0029】
さらに、この第3工程の後に、第3工程で作製した溶液と水を混合してもよい。この際、第3工程において、第3工程における中和剤の添加量が、前記高分子分散剤の未中和のアニオン性親水基に対して0.5〜2.0倍当量の範囲であり、かつ、中和剤の濃度が1.0mol/l〜10.0mol/lの範囲であることが好ましい。添加する中和剤の濃度が、1.0mol/lより小さいと、中和が徐々に進むため、顔料粒子を内包していない高分子分散剤の『空のミセル』が形成してしまう場合があり、一方、中和剤の濃度が10.0mol/lより大きいと、高濃度の中和剤が含有される水溶液を添加することになるため、高分子分散剤の分解による凝集物の発生や、分散破壊の問題が起こる可能性がある。
【0030】
また、添加する水溶液としては高分子分散剤を中和可能な中和剤を含有していればさらに他の成分を含有するものも使用できる。中和剤を含有する水溶液と第2工程で作製した溶液を混合する際には、分散液の濃度むらが少なくなるように混合するのが好ましく、混合させる溶液相を攪拌しながら混合する方法や超音波を照射しながら混合する方法あるいは水溶液を噴霧して混合する方法などが挙げられる。
【0031】
第4工程においては、第3工程で作製した水溶液中の有機溶媒を除去すればよく、有機溶媒を完全に除去する必要は無い。有機溶媒を除去する方法としては、加熱により除去する方法や減圧して除去する方法が好ましい。
【0032】
また、本発明においては第2工程と第3工程の間に、第2工程で作製した溶液に弱塩基性物質を添加する第5工程を設けることができる。第5工程では、弱塩基性物質水溶液の混合量が、該水溶液混合後の有機溶媒−水混合溶液の溶解性パラメータが該高分子分散剤の有する未中和のアニオン性親水基の溶解性パラメータに対して、−5.0〜7.0(J/cm31/2の範囲、または該水溶液混合後の有機溶媒−水混合溶液の溶解性パラメータが該高分子分散剤の有する未中和のアニオン性疎水基の溶解性パラメータに対して、+6.0〜11.0(J/cm31/2の範囲が好ましい。
【0033】
第5の工程で、弱塩基性物質を含有することにより、高分子分散剤が有するアニオン性親水基の一部をイオン化させて親水性を高めることができるので、アニオン性親水基の親水性が不充分なために起こり得る親水基の顔料粒子表面への付着を防ぐことができ、混合溶媒中に高分子分散剤が安定に親和した状態となる。これにより、高分子分散剤が有する疎水基が優先的に顔料粒子に付着しやすくなる効果が得られ、疎水基と顔料粒子とはより強く相互作用するようになる。
【0034】
上記溶解性パラメータ(δ(J/cm31/2)は、溶媒の凝集エネルギー密度の平方根として表され、δ=(ΔE/V)1/2(式中、ΔEは溶媒のモル蒸発熱であり、Vは溶媒のモル体積である)の式から算出される溶媒の溶解性を示す溶媒固有の値である。例えば、水はδ=47.0、エタノールはδ=25.7、ヘキサンはδ=14.9である。
【0035】
また、高分子分散剤の溶解性パラメータ(δ)は、高分子分散剤の無限溶解度または最高膨潤度を与える溶媒の溶解性パラメータ=高分子の溶解性パラメータとする実験的に算出した値や、高分子分散剤の官能基の分子凝集エネルギーから算出した値である。
【0036】
高分子分散剤および溶媒の溶解性パラメータ(δ)を官能基の分子凝集エネルギーから算出する方法は、δ=(ΔE/V)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi1/2(式中、ΔEはそれぞれのモル蒸発熱、Vはそれぞれのモル体積、Δeiはそれぞれの原子団の蒸発エネルギー(J/mol)、Δviはそれぞれの原子団のモル体積(cm3/mol)である。)の式から算出する方法が挙げられる。なお、原子団の蒸発エネルギーおよび原子団のモル体積は、Fedorsの値を使用して算出した。また、高分子分散剤の親水基として働く官能基が複数ある場合は、それらの官能基のユニット数を考慮し平均化した値を使用することができる。
【0037】
次いで、本発明の製造方法で使用する各種材料について説明する。
(水溶性有機溶媒)
本発明の製造方法に使用する水溶性有機溶媒としては、水に対する溶解性を持ち、使用する高分子分散剤を溶解することができる有機溶媒であれば単独でも2種以上を混合しても使用することができ、水溶性有機溶媒の溶解性パラメータが、高分子分散剤の疎水基の溶解性パラメータに対して、−6.0〜3.0(J/cm31/2の範囲であるのが好ましく、−4.0〜3.0(J/cm31/2の範囲であるのが特に好ましい。中でも、アルコール類、エーテル類、ケトン類が好ましく、多価アルコールのモノアルキルエーテルや環状エーテルがより好ましい。さらに、水との混合溶液状態から蒸留などの方法で容易に除去できる環状エーテルがより安定な分散液を作りやすいので特に好ましい。
【0038】
多価アルコールのモノアルキルエーテルとしては、好ましくは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエテールおよびトリプロピレングリコールモノメチルエーテルの群から選ばれる少なくとも1以上であると、顔料分散液の安定性がより良好になるため望ましい。
【0039】
環状エーテルとしては、好ましくはジメチルフラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフランおよびジオキサンの群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはテトラヒドロフランであると、顔料分散液の安定性がより良好になるため望ましい。
【0040】
(顔料)
本発明の製造方法に使用する顔料に関しては、特にその種類を限定することなく、有機顔料および無機顔料を使用することができる。以下に、顔料の具体例を示すが、本発明で使用する顔料はこれらに限定されるものではない。
【0041】
Raven 760 Ultra、Raven 1060 Ultra、Raven 1080、Raven 1100 Ultra、Raven 1170、Raven 1200、Raven 1250、Raven 1255、Raven 1500、Raven 2000、Raven 2500 Ultra、Raven 3500、Raven 5250、Raven 5750、Raven 7000、Raven 5000 ULTRAII、Raven 1190 ULTRAII(以上、コロンビアン・カーボン社製);Black Pearls L、MOGUL-L、Regal400R、Regal660R、Regal330R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製);
【0042】
Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW200、Color Black 18、Color Black S160、Color Black S170、Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 6、Special Black 550、Printex 35、Printex 45、Printex 55、Printex 85、Printex 95、Printex U、Printex 140U、Printex V、Printex 140V(以上、デグッサ社製);
【0043】
No.25、No.33、No.40、No.45、No.47、No.52、No.900、No.970、No.2200B、No.2300、No.2400B、MCF−88、MA600、MA77、MA8、MA100、MA230、MA220(以上、三菱化学社製);
【0044】
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185;C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71;C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272;C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64;C.I.ピグメントグリーン7、36;C.I.ピグメントブラウン23、25、26など。
【0045】
本発明の製造方法においての顔料の添加量は、得られた顔料分散液全質量中において、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1.0〜10質量%を占める範囲である。
【0046】
(高分子分散剤)
本発明の製造方法に使用する高分子分散剤としては、疎水性を有するユニット部と未中和のアニオン性親水基を有するユニット部を併有する高分子であれば使用できる。中でも、高分子分散剤が少なくとも1種以上の疎水性ブロックと1種以上のアニオン性親水性ブロックとからなるブロック共重合体で、かつ各ブロックがビニルエーテル類から構成された高分子分散剤であると、より安定な顔料分散液を形成するので好ましい。この場合においては、高分子分散剤が少なくとも1種の親水性ブロックと、少なくとも1種の疎水性ブロックとをそれぞれ有し、各ブロックがビニルエーテル類からなるブロック共重合体であればよく、2種類以上の親水性ブロックや2種類以上の疎水性ブロックを有するものでも使用することができ、単独のブロック共重合体でも2種以上のブロック共重合体が混合されたものでも使用できる。
【0047】
高分子分散剤の親水性ブロックが、非イオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックと、アニオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックとを少なくとも有するものが好ましく、疎水性のビニルエーテル類で構成されたブロック、非イオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロック、およびアニオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロックの順番で少なくとも構成されていることが好ましい。共重合体の形態は直鎖型、グラフト型などが挙げられるが、直鎖型のブロック共重合体が好ましい。
【0048】
本発明で使用する高分子分散剤は、例えば、下記一般式(1)で示される繰り返し単位構造を有することが好ましい。
−(CH2−CH(OR1))− (1)
上記の一般式(1)において、R1は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基およびフェニルピリジル基などのような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。また、芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい。R1の炭素数は1〜18が好ましい。
【0049】
また、R1は、−(CH(R2)−CH(R3)−O)p−R4もしくは−(CH2m−(O)n−R4で表される基でもよい。この場合、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R4は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基などのような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい)、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、−CH2−CH=CH2、−CH2−C(CH3)=CH2、−CH2−COOR5などを表し、これらの基のうちの水素原子は、化学的に可能である範囲で、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子と置換されていてもよい。R4の炭素数は1〜18が好ましい。R5は水素、またはアルキル基である。pは1〜18が好ましく、mは1〜36が好ましく、nは0または1であるのが好ましい。
【0050】
1およびR4において、アルキル基またはアルケニル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイルおよびリノレイルなどであり、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルおよびシクロヘキセニルなどである。
【0051】
以下に、本発明で使用する高分子分散剤を構成するビニルエーテルモノマー(I−a〜I−o)および高分子分散剤(II−a〜II−e)の構造を例示するが、本発明に用いられる高分子分散剤のポリビニルエーテル構造は、これらに限定されるものではない。
【0052】

【0053】

【0054】
さらに、上記ポリビニルエーテルの繰り返し単位数(上記(II−a)〜(II−e)においては、m、n、l)は、それぞれ独立に、1〜10,000であることが好ましい。また、その合計が(上記(II−a)〜(II−e)においては、m+n+l)、10〜20,000であることがより好ましい。数平均分子量は、500〜20,000,000が好ましく、1,000〜5,000,000がより好ましく、2,000〜2,000,000が最も好ましい。
【0055】
また、これらの高分子分散剤が顔料分散液中に占める割合は、顔料分散液全質量中において、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%を占める量である。また、高分子分散剤(A)と上記顔料(B)との顔料分散液中における含有比率は、固形分質量比でA:B=1:100〜2:1であると、この顔料分散液をインクに使用した際にインクの吐出安定性や保存安定性の面から望ましい。
【0056】
ビニルエーテル系ポリマーブロックを有する共重合体(高分子分散剤)の合成方法は、特に限定されないが、青島らによるカチオンリビング重合(特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)などが好適に用いられる。カチオンリビング重合法を用いることにより長さ(分子量)を正確に揃えたホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー、グラフトポリマー、グラデーションポリマーなどの様々なポリマーを合成することができる。また、ポリビニルエーテルは、その側鎖に様々な官能基を導入することができる。
【0057】
(弱塩基性物質)
本発明の製造方法に使用する弱塩基性物質としては、水に溶解するものであれば使用できる。このような弱塩基性物質としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンおよびジエチルアミンなどのアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミンおよびジイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類、アンモニアなどが挙げられるが、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンおよびモノエタノールアミンから選ばれる少なくとも1種であれば、高分子分散剤が分解しない程度の高温において容易に揮発する揮発性の弱塩基物質であるためより好ましく、アンモニアが特に好ましい。
【0058】
(中和剤)
本発明の製造方法において中和剤として使用するアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムおよびリチウムが挙げられるが、これらのアルカリ金属を含有する化合物で水に溶解するものが顔料分散液の安定性がより向上するため好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウムおよび酸化リチウムなどの酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸リチウムなどのアルカリ金属の炭酸化物が挙げられる。以上が、本発明の製造方法で使用する各種材料であるが、これらの成分以外に、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤および防黴剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0059】
次いで、上記製造方法で作製した顔料分散液をインクに使用する場合について説明する。本発明のインクは、水不溶性色材、高分子分散剤、水溶性有機溶媒および水から主としてなるインクにおいて、前記本発明の製造方法で作製した顔料分散液を含有することを特徴とするインクである。本発明のインクに使用する各種材料について説明する。
【0060】
(水不溶性色材)
上記製造方法で作製した顔料分散液を単独で使用するのがよいが、これ以外に水不溶性色材を併用して使用することもできる。このような併用する水不溶性色材としては、水に対する溶解度が、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下の色材である。このような色材としては、油溶性染料、建染染料、分散染料および顔料など挙げられる。本発明のインク中における水不溶性色材の全含有量は、インク全質量中において、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1.0〜10質量%を占めるの範囲である。水不溶性色材の量が0.1質量%未満のインクでは十分な画像濃度が得にくい場合があり、一方、水不溶性色材の量が20質量%を超えるインクであると、ノズルにおけるインクの目詰りなどによるインクの吐出安定性の低下が起こりやすくなる。
【0061】
(水溶性有機溶媒)
本発明のインクに使用する水溶性有機溶媒としては、水溶性の有機溶媒であれば使用することができ、2種以上の水溶性有機溶媒の混合溶媒としても使用できる。上記製造方法で作製した顔料分散液に水溶性有機溶媒が含有されている場合においても、他の水溶性有機溶媒を併用して使用するのが好ましい。
【0062】
好ましい水溶性有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールおよびtert−ブチルアルコールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、チオジグリコールおよび1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオールなどのトリオール類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコールおよびペンタエリスリトールなどのヒンダードアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコーリモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシキド、グリセリンモノアリルエーテル、ポリエチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルフォラン、β−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどである。
【0063】
これらの中でも、沸点が120℃以上の水溶性有機溶媒を使用すると、ノズル先端部でのインク濃縮が抑制されるため好ましい。これらの水溶性有機溶媒のインク中に占める割合は、インク全質量中において、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%を占める量である。
【0064】
(高分子分散剤)
前記製造方法で作製した高分子分散剤を単独で使用するのがよいが、これ以外の高分子分散剤を併用して使用することができる。この併用する高分子分散剤としては、前記製造方法の項で記した高分子分散剤を使用するのがよいが、これ以外の高分子分散剤を使用することもできる。高分子分散剤がインク中に占める割合は、インク全質量中において、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%を占める量である。
【0065】
以上が本発明のインクの必須成分であるが、これらの成分以外に、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤および防黴剤などの各種の添加剤を添加してもよい。このような添加剤のなかでも、インク中に、添加剤としてアルミニウムまたはアルミニウム化合物、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウムおよびチーグラーナッタ触媒のアルミニウム化合物や金属アルミニウム粉末などを、好ましくは水酸化アルミニウムや酸化アルミニウムを含有させると、高分子分散剤の疎水性ブロックおよび親水性ブロックにアルミニウムやアルミニウム化合物が作用し、高分子分散剤同士の結合を向上させ、高分子分散剤による色材粒子のカプセルがより安定化されるため望ましい。このアルミニウムまたはアルミニウム化合物の添加量としては、インク中において高分子分散剤(A)とアルミニウムと(B)のモル比が、好ましくはA:B=3000:1〜1:5、より好ましくは300:1〜20:1であると、高分子分散剤からなる色材粒子のカプセルの安定性が向上するためより望ましい。
【0066】
本発明のインクジェット記録方法の特徴は、インクにエネルギーを与えてインクを飛翔させて行うインクジェット記録方法において、上記本発明のインクを使用することである。エネルギーとしては、熱エネルギーや力学的エネルギーを用いることができるが、熱エネルギーを用いる場合が好ましい。
【0067】
本発明のインクジェット記録方法において、被記録材は限定されるものではないが、いわゆるインクジェット専用紙と呼ばれる、少なくとも一方の面にインクを受容するコーティング層を持つ被記録材が好ましく使用される。コーティング層を持つ被記録材としては、少なくとも親水性ポリマーおよび/または無機多孔質体を含有した少なくとも一方の面にインクを受容するコーティング層を持つ被記録材が望ましい。
【0068】
次に、上記した本発明のインクを用いて記録を行うのに好適な、本発明のインクジェット記録装置の一例を以下に説明する。
(熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置)
図2は、ヘッドにインク供給チューブ104を介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ100の一例を示す図である。101は供給用インクを収納したインク袋であり、その先端には塩素化ブチルゴム製の栓102が設けられている。この栓102に針103を挿入することにより、インク袋101中のインクを記録ヘッド(303〜306)に供給できる。また、インクカートリッジ内に廃インクを受容するインク吸収体を設けてもよい。本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上記のごとき記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、それらが一体になったものも好適に用いられる。
【0069】
図3は、本実施例に使用したインクジェット記録ヘッドの構造を説明するための模式図である。各ノズル202には、それぞれに対応した発熱体204(ヒータ)が設けられており、記録ヘッド駆動回路からヒータ204に所定の駆動パルスを印加することにより加熱し、気泡を発生させ、その作用で吐出口202からインク液滴を吐出する。なお、ヒータ204はシリコン基板206の上に半導体製造プロセスと同様の手法で形成される。203は各ノズル202を構成するノズル隔壁であり、205は各ノズル202にインクを供給するための共通液室であり、207は天板である。
【0070】
本実施形態による記録装置の一部透視図を図4に示す。記録装置300の被記録用紙302は、例えばロール供給ユニット301から供給され、記録装置300本体に具備された搬送ユニットによって、連続的に搬送される。搬送ユニットは搬送モータ312、搬送ベルト313などから構成される。記録は、記録媒体の画像切り出し位置がブラックの記録ヘッド303の下を通過する時に、記録ヘッドからブラックインクを吐出開始、同様に、シアン304、マゼンタ305、イエロー306の順に、各色のインクを選択的に吐出してカラー画像を形成する。
【0071】
記録装置300はこの他、各記録ヘッドを待機中にキャップするキャップ機構311、各々の記録ヘッド303〜306にインクを供給するためのインクカートリッジ307〜310、インクの供給や回復動作のためのポンプユニット(不図示)、記録装置全体を制御する制御基板(不図示)などによって構成されている。
【0072】
図5は本実施例に使用したインクジェット記録装置における回復処理系の概略図である。記録ヘッド303〜306が下降したとき、そのインク吐出口形成面がキャップ機構311内の塩素化ブチルゴムにより形成されたキャップ400に近接することにより所定の回復動作の実行が可能である。
【0073】
回復処理系におけるインク再生回路部は補給されるインクが貯留されポリエチレン袋に収容されるインクカートリッジ100と、吸引ポンプ403などを介して接続されるサブタンク401と、キャップ400とサブタンク401との間を接続する塩化ビニルにより形成されたインク供給路409に配されキャップ機構311からのインクをサブタンク401に回収する吸引ポンプ403、キャップから回収したインク中のゴミなどを除去するフィルター405、インク供給路408を介して接続され記録ヘッド303〜306の共通液室にインクを供給する加圧ポンプ402、記録ヘッドから戻ったインクをサブタンク401に供給するインク供給路407、弁404a〜404dを主要な要素として構成されている。
【0074】
記録ヘッド303〜306のクリーニング時において回復弁404bを閉鎖し加圧ポンプ402を作動することによりサブタンク401から記録ヘッドにインクを加圧供給し、ノズル406から強制排出させる。これにより記録ヘッドのノズル内の泡、インク、ゴミなどを排出する。吸引ポンプ403は、記録ヘッドからキャップ機構311内に排出されたインクをサブタンク401に回収する。
【0075】
(力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置)
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図6に示す。
【0076】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82などを指示固定するための基板84とから構成されている。
【0077】
図6において、インク流路80は、感光性樹脂などで形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケルなどの金属を電鋳やプレス加工による穴あけなどにより吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタンなどの金属フィルムおよび高弾性樹脂フィルムなどで形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZTなどの誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板82を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。
【実施例】
【0078】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中、「部」および「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0079】
[実施例1]
(高分子分散剤Aの作製)
疎水性ブロックと親水性ブロックからなるAB型ジブロック共重合体の合成:
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下、250℃で加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、ビフェニルビニルエーテル12ミリモル、酢酸エチル16ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテート0.1ミリモル、およびトルエン11cm3を加え、系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロライド0.2ミリモルを加え重合を開始し、AB型ジブロックポリマーのA成分を合成した。
【0080】
分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、A成分の重合が完了した後、次いで4−(2−ビニロキシエトキシ)ベンゾイックアシッド(B成分)のカルボン酸部をエチル基でエステル化したビニルモノマー12ミリモルを添加することで合成を行った。重合反応の停止は、系内に0.3%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行い、エステル化させたカルボキシル基は水酸化ナトリウム/メタノール溶液で加水分解させてカルボン酸型に変化させた。反応を終えた混合溶液中にジクロロメタンを加え希釈し、0.6Nの塩酸溶液で3回、次いで蒸留水で3回洗浄し、エバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させてAB型ジブロック共重合体(高分子分散剤A)を得た。化合物の同定には、NMRおよびGPCを用いて行った(Mn=3.7×104、Mw/Mn=1.2)。なお、得られた高分子分散剤の疎水性ブロックA部と親水性ブロックB部の溶解性パラメータをそれぞれ求めたところ22.4(J/cm31/2と24.9(J/cm31/2であった。
【0081】
(顔料分散液Iの作製)
顔料として市販の顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3を5.0部と水溶性有機溶媒としてジエチルエーテル(溶解性パラメータ:14.8(J/cm31/2)100部を混合し、この混合溶液に、高分子分散剤として、上記高分子分散剤A5.0部を添加し、40℃に加温して均一になるようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するジエチルエーテル溶液aを得た。・・・第1工程
【0082】
次いで、イオン交換水17.0部を上記ジエチルエーテル溶液aに添加した。この際ジエチルエーテル溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−ジエチルエーテル混合溶液の溶解性パラメータは、19.63(J/cm31/2であった。・・・第2工程
【0083】
さらに、使用した高分子分散剤が有する未中和のアニオン基の当量に相当するナトリウムを含有する水酸化ナトリウム水溶液73.0部を上記第2工程で得られた溶液に添加した。この際、水−ジエチルエーテル混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。・・・第3工程
【0084】
その後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテルを除去し、目的の顔料分散液Iを得た。この時の溶液中のジエチルエーテルの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出されず、溶液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0085】
[実施例2]
(顔料分散液IIの作製)
顔料として市販の顔料であるC.I.ピグメントイエロー128を10.0部と水溶性有機溶媒としてジエチルエーテル(溶解性パラメータ:14.8(J/cm31/2)120部を混合し、この混合溶液に、高分子分散剤Dとして市販のアニオン基が未中和のスチレン−マレイン酸ランダム共重合体(数平均分子量10,000、疎水基の溶解性パラメータ:20.65(J/cm31/2、親水基の溶解性パラメータ:27.57(J/cm31/2)10.0部を添加し、40℃に加温して均一になるようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するジエチルエーテル溶液bを得た。・・・第1工程
【0086】
次いで、イオン交換水36.0部を上記ジエチルエーテル溶液bに添加した。この際ジエチルエーテル溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−ジエチルエーテル混合溶液の溶解性パラメータは、22.55(J/cm31/2であった。・・・第2工程
【0087】
さらに、使用した高分子分散剤が有する未中和のアニオン基の当量に相当するカリウムを含有する水酸化カリウム水溶液44.0部を上記第2工程で得られた溶液に添加した。この際、水−ジエチルエーテル混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。・・・第3工程
【0088】
その後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテルを除去し、目的の顔料分散液IIを得た。この時の溶液中のジエチルエーテルの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出されず、溶液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0089】
[実施例3]
(高分子分散剤Bの作製)
疎水性ブロックと2つの親水性ブロックからなるABC型トリブロック共重合体の合成:
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、2−デカノキシエチルビニルエーテル12ミリモル、酢酸エチル16ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテート0.1ミリモル、およびトルエン11cm3を加え、系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロライド0.2ミリモルを加え重合を開始し、ABC型トリブロックポリマーのA成分を合成した。
【0090】
分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、A成分の重合が完了した後、次いで2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシビニルエーテル(B成分)24ミリモルを添加し重合を続行した。同様にGPCで分子量をモニタリングし、B成分の重合が完了した後、6−(2−ビニロキシエトキシ)ヘキサノイックアシッド(C成分)のカルボン酸部をエチル基でエステル化したビニルモノマー12ミリモルを添加することで合成を行った。重合反応の停止は、系内に0.3%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行い、エステル化させたカルボキシル基は水酸化ナトリウム/メタノール溶液で加水分解させてカルボン酸型に変化させた。後は実施例1と同様にして、ABC型トリブロック共重合体(高分子分散剤B)を得た。化合物の同定には、NMRおよびGPCを用いて行った(Mn=3.8×104、Mw/Mn=1.2)。なお、得られた高分子分散剤の疎水性ブロックA部と親水性ブロックBC部の溶解性パラメータをそれぞれ求めたところ、17.8(J/cm31/2と19.8(J/cm31/2であった。
【0091】
(顔料分散液IIIの作製)
顔料として市販の顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3を5.0部と水溶性有機溶媒としてアセトン23.0部とジエチレングリコールモノブチルエーテル46.0部の混合溶媒(溶解性パラメータ20.53(J/cm31/2)を混合した。この混合溶液に、高分子分散剤として上記高分子分散剤B5.0部を添加し、40℃に加温して均一になるようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するアセトン−ジエチレングリコールモノブチル溶液cを得た。・・・第1工程
【0092】
次いで、イオン交換水41.4部を上記アセトン−ジエチレングリコールモノブチルエーテル溶液cに添加した。この際、アセトン−ジエチレングリコールモノブチルエーテル溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−アセトン−ジエチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液の溶解性パラメータは、30.86(J/cm31/2であった。・・・第2工程
【0093】
さらに、使用した高分子分散剤が有する未中和のアニオン基の当量に相当するナトリウムを含有する水酸化ナトリウム水溶液2.60部を上記第2工程で得られた溶液に添加した。この際、水−アセトン−ジエチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。・・・第3工程
【0094】
その後、ロータリーエバポレーターでアセトンを除去し、目的の顔料分散液IIIを得た。この時の溶液中のアセトンとジエチレングリコールモノブチルエーテルの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アセトンは検出されず、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが顔料分散液中に46%残留していると判断される結果であった。・・・第4工程
【0095】
[実施例4]
(顔料分散液IVの作製)
顔料として市販の顔料であるC.I.ピグメントイエロー128を10.0部と水溶性有機溶媒として酢酸エチル(溶解性パラメータ:17.89(J/cm31/2)120部を混合し、この混合溶液に、実施例2で使用した高分子分散剤Dとして市販のアニオン基が未中和のスチレン−マレイン酸ランダム共重合体(数平均分子量10,000、疎水基の溶解性パラメータ:20.65(J/cm31/2、親水基の溶解性パラメータ:27.57(J/cm31/2)10.0部を添加し、40℃に加温して均一になるようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有する酢酸エチル溶液dを得た。・・・第1工程
【0096】
次いで、イオン交換水24.0部を上記トルエン溶液dに添加した。この際酢酸エチル溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−酢酸エチル混合溶液の溶解性パラメータは、22.92(J/cm31/2)であった。・・・第2工程
【0097】
さらに、市販の8.0mol/l水酸化ナトリウム水溶液5.40部を上記第2工程で得られた溶液に添加し、使用した高分子分散剤の有する未中和のアニオン性基を中和した。この際、水−酢酸エチル混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。次いで、マグネチックスターラーで良く攪拌しながら、得られた溶液にイオン交換水50.6部を添加した。・・・第3工程
【0098】
その後、ロータリーエバポレーターで酢酸エチルを除去し、目的の顔料分散液IVを得た。この時の溶液中の酢酸エチルの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出されず、溶液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0099】
[実施例5]
(高分子分散剤Cの作製)
疎水性ブロックと親水性ブロックからなるAB型ジブロック共重合体の合成: 三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、2−フェノキシエチルビニルエーテル12ミリモル、酢酸エチル16ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテート0.1ミリモル、およびトルエン11cm3を加え、系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロライド0.2ミリモルを加え重合を開始し、AB型ジブロックポリマーのA成分を合成した。
【0100】
分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、A成分の重合が完了した後、次いで4−(2−ビニロキシエトキシ)ベンゾイックアシッド(B成分)のカルボン酸部をエチル基でエステル化したビニルモノマー12ミリモルを添加することで合成を行った。重合反応の停止は、系内に0.3%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行い、エステル化させたカルボキシル基は水酸化ナトリウム/メタノール溶液で加水分解させてカルボン酸型に変化させた。後は実施例1と同様にして、AB型ジブロック共重合体(高分子分散剤C)を得た。化合物の同定には、NMRおよびGPCを用いて行った(Mn=3.7×104、Mw/Mn=1.2)。なお、得られた高分子分散剤の疎水性ブロックA部と親水性ブロックB部の溶解性パラメータをそれぞれ求めたところ20.6(J/cm31/2と24.9(J/cm31/2であった。
【0101】
(顔料分散液Vの作製)
市販の顔料であるカーボンブラック(三井化学製 MA100)を12.0部と水溶性有機溶媒として1,4−ジオキサン(溶解性パラメータ19.16(J/cm31/2)100.0部を混合し、この混合溶液に、高分子分散剤として上記高分子分散剤C12.0部を添加し、40℃に加温して均一に溶解するようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有する1,4−ジオキサン溶液eを得た。・・・第1工程
【0102】
次いで、イオン交換水11.7部を上記テトラヒドロフラン溶液eに添加した。この際テトラヒドロフラン溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−1,4−ジオキサン混合溶液の溶解性パラメータは、23.88(J/cm31/2であった。・・・第2工程
【0103】
さらに、使用した高分子分散剤が有する未中和のアニオン基の当量に相当するカリウムを含有する水酸化カリウム水溶液54.3部を上記第2工程で得られた溶液に添加した。この際水−1,4−ジオキサン混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。・・・第3工程
【0104】
その後、ロータリーエバポレーターで1,4−ジオキサンを除去し、目的の顔料分散液Vを得た。この時の溶液中の1,4−ジオキサンの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出されず、顔料分散液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0105】
[実施例6]
(顔料分散液VIの作製)
市販の顔料であるC.I.ピグメントレッド122を7.5部と水溶性有機溶媒としてアセトン66.7部とトリエチレングリコールモノメチルエーテル33.3部の混合溶媒(溶解性パラメータ19.54(J/cm31/2)を混合した。この混合溶液に、高分子分散剤として実施例3で使用した高分子分散剤B7.5部を添加し、40℃に加温して均一に溶解するようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するアセトン−トリエチレングリコールモノメチルエーテル溶液fを得た。・・・第1工程
【0106】
次いで、イオン交換水12.0部を上記アセトン−トリエチレングリコールモノメチルエーテル溶液fに添加した。この際アセトン−トリエチレングリコールモノメチルエーテル溶液相はマグネチクスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−アセトン−トリエチレングリコールモノメチルエーテル混合溶液の溶解性パラメータは、22.60(J/cm31/2であった。・・・第2工程
【0107】
さらに、市販の2.0mol/l水酸化カリウム水溶液4.33部を上記第2工程で得られた溶液に添加し、使用した高分子分散剤の有する未中和のアニオン性基を中和した。この際、水−アセトン−トリエチレングリコールモノメチルエーテル混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。次いで、マグネチックスターラーで良く攪拌しながら、得られた溶液にイオン交換水35.37部を添加した。・・・第3工程
【0108】
その後、ロータリーエバポレーターでアセトンを除去し、目的の顔料分散液VIを得た。この時の溶液中のアセトンとトリエチレングリコールモノメチルエーテルの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アセトンは検出されず、トリエチレングリコールモノメチルエーテルは顔料分散液中に33.3%残留していると判断される結果であった。・・・第4工程
【0109】
[実施例7]
(顔料分散液VIIの作製)
市販の顔料であるC.I.ピグメントイエロー128を6.0部と水溶性有機溶媒としてテトラヒドロフラン(溶解性パラメータ18.40(J/cm31/2)100部とを混合し、この混合溶液に、高分子分散剤として実施例1で使用した高分子分散剤A4.0部を添加し、40℃に加温して均一に溶解するようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するテトラヒドロフラン溶液gを得た。・・・第1工程
【0110】
次いで、イオン交換水50.0部を上記テトラヒドロフラン溶液gに添加した。この際テトラヒドロフラン溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−テトラヒドロフラン混合溶液の溶解性パラメータは、28.29(J/cm31/2であった。・・・第2工程
【0111】
さらに、使用した高分子分散剤が有する未中和のアニオン基の当量に相当するナトリウムを含有する水酸化ナトリウム水溶液40.0部を上記第2工程で得られた溶液に添加した。この際、テトラヒドロフラン混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。・・・第3工程
【0112】
その後、ロータリーエバポレーターでテトラヒドロフランを除去し、目的の顔料分散液VIIを得た。この時の溶液中のテトラヒドロフランの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したところ、検出されず、顔料分散液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0113】
[実施例8]
(顔料分散液VIIIの作製)
市販の顔料であるC.I.ピグメントイエロー128を6.0部と水溶性有機溶媒としてテトラヒドロフラン(溶解性パラメータ18.40(J/cm31/2)100部とを混合し、この混合溶液に、高分子分散剤として実施例1で使用した高分子分散剤A4.0部を添加し、40℃に加温して均一に溶解するようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するテトラヒドロフラン溶液gを得た。・・・第1工程
【0114】
次いで、テトラヒドロフラン溶液gにイオン交換水30.0部を添加し、テトラヒドロフラン溶液相を充分に攪拌した(第2工程)後に、市販のアンモニア水(25%aq)を希釈し、0.38%アンモニア水溶液を調整した。この調整したアンモニア水溶液42.16部を上記テトラヒドロフラン溶液gに添加した(第5工程)。この際テトラヒドロフラン溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−テトラヒドロフラン混合溶液の溶解性パラメータは、30.82(J/cm31/2であった。
【0115】
さらに、使用した高分子分散剤が有する未中和のアニオン基の当量に相当するナトリウムを含有する水酸化ナトリウム水溶液17.84部を上記第5工程で得られた溶液に添加した。この際、テトラヒドロフラン混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。・・・第3工程
【0116】
その後、ロータリーエバポレーターでテトラヒドロフランを除去し、目的の顔料分散液VIIIを得た。この時の溶液中のテトラヒドロフランの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したところ、検出されず、顔料分散液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0117】
[実施例9]
(顔料分散液IXの作製)
市販の顔料であるカーボンブラック(三井化学製 MA100)を7.5部と水溶性有機溶媒としてテトラヒドロフラン(溶解性パラメータ18.40(J/cm31/2)80.0部を混合し、この混合溶液に、高分子分散剤として実施例3で使用した高分子分散剤B2.50部を添加し、40℃に加温して均一に溶解するようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するテトラヒドロフラン溶液hを得た。・・・第1工程
【0118】
次いで、イオン交換水43.20部を上記テトラヒドロフラン溶液hに添加した。この際テトラヒドロフラン溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−テトラヒドロフラン混合溶液の溶解性パラメータは、28.80(J/cm31/2であった。・・・第2工程
【0119】
さらに、市販の3.0mol/l水酸化カリウム水溶液0.96部を上記第2工程で得られた溶液に添加し、使用した高分子分散剤の有する未中和のアニオン性基を中和した。この際、水−テトラヒドロフラン混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。次いで、得られた溶液に、マグネチックスターラーでよく攪拌しながら、イオン交換水を45.84部添加した。・・・第3工程
【0120】
その後、ロータリーエバポレーターでテトラヒドロフランを除去し、目的の顔料分散液IXを得た。この時の溶液中のテトラヒドロフランの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出されず、顔料分散液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0121】
[実施例10]
(顔料分散液Xの作製)
市販の顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3を7.0部と水溶性有機溶媒としてテトラヒドロフラン(溶解性パラメータ18.40(J/cm31/2)100部を混合し、この混合溶液に、高分子分散剤として実施例5で使用した高分子分散剤C7.0部を添加し、40℃に加温して均一に溶解するようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するテトラヒドロフラン溶液iを得た。・・・第1工程
【0122】
次いで、イオン交換水60.0部を上記テトラヒドロフラン溶液iに添加した。この際テトラヒドロフラン溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−テトラヒドロフラン混合溶液の溶解性パラメータは、29.53(J/cm31/2であった。・・・第2工程
【0123】
さらに、市販の4.0mol/l水酸化リチウム水溶液9.93部を上記第2工程で得られた溶液に添加し、使用した高分子分散剤の有する未中和のアニオン性基を中和した。この際水−テトラヒドロフラン混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。次いで、得られた溶液に、マグネチックスターラーでよく攪拌しながら、イオン交換水を16.07部添加した。・・・第3工程
【0124】
その後、ロータリーエバポレーターでテトラヒドロフランを除去し、目的の顔料分散液Xを得た。この時の溶液中のテトラヒドロフランの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出されず、顔料分散液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0125】
[実施例11]
(顔料分散液XIの作製)
市販の顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3を5.0部と水溶性有機溶媒としてテトラヒドロフラン(溶解性パラメータ18.40(J/cm31/2)85.0部を混合し、この混合溶液に、高分子分散剤として実施例5で使用した高分子分散剤C2.14部を添加し、40℃に加温して均一に溶解するようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するテトラヒドロフラン溶液jを得た。・・・第1工程
【0126】
次いで、イオン交換水34.0部を上記テトラヒドロフラン溶液jに添加した。この際テトラヒドロフラン溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。この時点において、水−テトラヒドロフラン混合溶液の溶解性パラメータは、26.88(J/cm31/2であった。・・・第2工程
【0127】
さらに、市販の1.0mol/l水酸化ナトリウム水溶液を上記第2工程で得られた溶液jに5.28部添加し、使用した高分子分散剤の有する未中和のアニオン基を中和した。この際、水−テトラヒドロフラン混合溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。次いで、得られた溶液に、マグネチックスターラーでよく攪拌しながら、イオン交換水を53.58部添加した。・・・第3工程
【0128】
その後、ロータリーエバポレーターでテトラヒドロフランを除去し、目的の顔料分散液XIを得た。この時の溶液中のテトラヒドロフランの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出されず、顔料分散液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0129】
[比較例1]
(色材分散液XIIの作製)
実施例2で使用した顔料に替わり市販の油溶性染料であるC.I.ソルベントブラック6を10.0部と水溶性有機溶媒としてジエチルエーテル(溶解性パラメータ:14.8(J/cm31/2)120部を混合し、この混合溶液に、高分子分散剤Dとして市販のアニオン基が未中和のスチレン−マレイン酸ランダム共重合体(数平均分子量10,000、疎水基の溶解性パラメータ:20.65(J/cm31/2、親水基の溶解性パラメータ:27.57(J/cm31/2)10.0部を添加し、40℃に加温して均一になるようによく攪拌して、油溶性染料と高分子分散剤を含有するジエチルエーテル溶液kを得た。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過したが、濾紙上には色材や高分子分散剤の析出物は観察されず、全ての油溶性染料と高分子分散剤が完全に溶解されているものと思われる結果になった。また、使用した油溶性染料の水への溶解性を調べたが、水には全く溶解しなかった。・・・第1工程
次いで、実施例2と同様にして、第2工程、第3工程、第4工程を行い、顔料分散液XIIを得た。
【0130】
[比較例2]
(顔料分散液XIIIの作製)
市販の顔料であるC.I.ピグメントイエロー128を6.0部と水溶性有機溶媒としてテトラヒドロフラン(溶解性パラメータ18.40(J/cm31/2)100部を混合し、この混合溶液に、高分子分散剤Eとしてn−ブチルメタクリレート−メタクリル酸ブロック共重合体(モル比/n−ブチルメタクリレート:メタクリル酸=1:1、Mn=2,500)4.0部を添加し、40℃に加温して均一に溶解するようによく攪拌して、顔料と高分子分散剤を含有するテトラヒドロフラン溶液lを得た。・・・第1工程
【0131】
次いで、使用した高分子分散剤が有する未中和のアニオン基の当量に相当するナトリウムを含有する水酸化ナトリウム水溶液90.0部を上記第1工程で得られた溶液lに添加した。この際テトラヒドロフラン溶液相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。・・・第3工程
【0132】
その後、ロータリーエバポレーターでテトラヒドロフランを除去し、顔料分散液XIIIを得た。この時の溶液中のテトラヒドロフランの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出されず、溶液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0133】
[比較例3]
(顔料分散液XIVの作製)
高分子分散剤として、実施例1で使用した高分子分散剤に代わりに、高分子分散剤D−Naとしてアニオン基をナトリウムで中和したスチレン−マレイン酸ランダム共重合体(数平均分子量10,000)を使用した以外は、実施例1と同様にしてジエチルエーテル溶液mを得た。・・・第1工程
次いで、イオン交換水90.0部を上記ジエチルエーテル溶液mに添加した。この際、水相はマグネチックスターラーでよく攪拌して行った。・・・第2工程
【0134】
その後、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテルを除去し、顔料分散液XIVを得た。この時の溶液中のジエチルエーテルの濃度をガスクロマトグラフィーで分析したが、検出されず、溶液中には残留していないと判断される結果であった。・・・第4工程
【0135】
[比較例4]
(顔料分散液XVの作製)
市販の顔料であるC.I.ピグメントレッド122を7.0部、高分子分散剤Eとして比較例2で使用したn−ブチルメタクリレート−メタクリル酸ブロック共重合体(モル比/n−ブチルメタクリレート:メタクリル酸=1:1、Mn=2,500)7.0部およびこの高分子分散剤中のアニオン性親水基と当量の水酸化カリウムとイオン交換水86.0部を混合し、ビーズミル分散機で均一に分散するように良く攪拌混合し、顔料分散液XVを得た。
【0136】
[比較例5]
(顔料分散液XVIの作製)
市販の顔料であるカーボンブラック(三井化学製 MA100)を4.0部、高分子分散剤Dとして実施例1で使用したスチレン−マレイン酸ランダム共重合体(数平均分子量10,000)4.0部にイオン交換水70.0部をマグネチックスターラーで良く攪拌しながら添加した。・・・第2工程
次いで、この高分子分散剤中のアニオン性親水基と当量に相当するナトリウムを含有する水酸化ナトリウム水溶液22.0部を混合し、ビーズミル分散機で均一に分散するように良く攪拌混合し、顔料分散液XVIを得た。
【0137】

【0138】
(評価)
実施例1〜11の顔料分散液と比較例1〜5の顔料分散液の、平均粒子径と分散安定性について表1記載の評価を行った。その結果、表2に記載したように、いずれの実施例の顔料分散液も比較例の顔料分散液に比べて平均粒子径が小さく分散安定性が良好な結果が得られた。
【0139】

【0140】
*1:平均粒子径
各顔料分散液をレーザー散乱法の粒度分布測定装置PAR−III(大塚電子(株)製)で測定し、平均粒子径を算出した。
【0141】
*2:分散安定性
各顔料分散液を密閉状態で60℃1ヶ月保存した後、粒子径を測定し、式(b)で粒子径増加率(%)を求め分散安定性の尺度とした。粒子径の測定には動的光散乱法(商品名:レーザー粒径解析システムPARIII;大塚電子(株)社製)を用いた。評価基準は下記の通りとした。

◎:粒子径増加率(%)が10%未満である。
○:粒子径増加率(%)が10%以上20%未満である。
△:粒子径増加率(%)が20%以上30%未満である。
×:粒子径増加率(%)が30%以上である。
【0142】
[実施例12]
(インク1の作製)
・上記顔料分散液I 40.0部
・トリエチレングリコール 10.0部
・トリプロピレングリコール 10.0部
・0.005%水酸化アルミニウム水溶液
1.0部
・イオン交換水 39.0部
以上の成分を混合し、充分攪拌して、目的のインク1を得た。
【0143】
[実施例13]
(インク2の作製)
・上記顔料分散液II 30.0部
・ジエチレングリコール 10.0部
・トリプロピレングリコール 10.0部
・0.005%水酸化アルミニウム水溶液
1.0部
・イオン交換水 49.0部
以上の成分を混合し、充分攪拌して、目的のインク2を得た。
【0144】
[実施例14]
(インク3の作製)
・上記顔料分散液III 50.0部
・ジエチレングリコール 2.0部
・0.005%水酸化アルミニウム水溶液
1.0部
・イオン交換水 47.0部
以上の成分を混合し、充分攪拌して、目的のインク3を得た。
【0145】
[実施例15]
(インク4の作製)
・上記顔料分散液IV 30.0部
・グリセリン 10.0部
・トリプロピレングリコール 10.0部
・0.005%水酸化アルミニウム水溶液
1.0部
・イオン交換水 49.0部
以上の成分を混合し、充分攪拌して、目的のインク4を得た。
【0146】
[実施例16]
(インク5の作製)
・上記顔料分散液V 40.0部
・グリセリン 5.0部
・ジエチレングリコール 10.0部
・0.005%水酸化アルミニウム水溶液
1.0部
・イオン交換水 44.0部
以上の成分を混合し、充分攪拌して、目的のインク5を得た。
【0147】
[実施例17]
(インク6の作製)
・上記顔料分散液VI 50.0部
・ジエチレングリコール 4.0部
・0.005%水酸化アルミニウム水溶液
1.0部
・イオン交換水 45.0部
以上の成分を混合し、充分攪拌して、目的のインク6を得た。
【0148】
[実施例18〜21および比較例6〜10]
(インク7〜15の作製)
実施例12で使用した顔料分散液Iに代わり、実施例18では顔料分散液VIIを、実施例19では顔料分散液VIIIを、実施例20では顔料分散液IXを、実施例21では顔料分散液Xを、比較例6で顔料分散液XIを、比較例7では顔料分散液XIIを、比較例8では顔料分散液XIIIを、比較例9では顔料分散液XIVを、比較例10では顔料分散液XVをそれぞれ使用する以外は実施例11と同様にして、目的のインク7〜15を得た。
【0149】
(評価)
実施例12〜21のインクと比較例6〜10のインクを、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置P−660CII(キヤノンファインテック製)にそれぞれ搭載して、光沢紙SP101(キヤノン製)に印字を行い、表2記載の評価を行った。その結果、表2に記載したように、いずれの実施例のインクも比較例のインクに比べて吐出安定性が良好で画像品位と発色特性が良好な結果が得られた。
【0150】

【0151】
*3:吐出特性
各インクを60℃で一ヶ月保存した後、1×108パルスの吐出試験を行った。吐出試験後に、100%ベタ画像を印字し、印字した画像を下記の評価基準で評価した。
◎:白スジが全く無く、正常に印字されている。
○:印字の最初の部分にわずかに白スジが見られる。
△:画像全体に白スジがみられる。
×:画像がほとんど印字されていない。
【0152】
*4:画像特性
各インクを60℃で1ヶ月間保管した後、5℃で湿度が10%の環境下において25mm間隔の方眼模様を印字し、印字した画像を下記の評価基準で評価した。
◎:顕微鏡で観察しても印字が全く乱れることなく、方眼模様は25mm間隔で正常に印字されている。
○:顕微鏡で観察すると一部に印字の乱れがみられるが、方眼模様は25mm間隔に印字されている。
△:肉眼でも一部に印字の乱れがみられ、方眼模様の一部が25mm間隔からずれている。
×:全体で印字の乱れが肉眼でみられ、方眼模様の全体が25mm間隔からずれている。
【0153】
*5:発色特性
印字物の彩度と画像濃度を目視で判断した。
○:彩度が高く画像濃度も高い。
△:彩度が低い、または画像濃度が低い。
×:彩度が低く画像濃度も低い。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、保存安定性が良好で高発色性かつ高堅牢性を有する画像を提供することのできる顔料分散液を製造することができ、さらには吐出性能が良好で発色性と堅牢性に優れた画像をいつでも安定して記録し得えるインク、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】インクの製造方法のフローチャート図である。
【図2】インクカートリッジの構造を説明するための模式図である。
【図3】インクジェット記録ヘッドの構造を説明するための模式図である。
【図4】インクジェット記録装置の透視図である。
【図5】インクジェット記録装置における回復処理系の概略図である。
【図6】インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0156】
100:インクカートリッジ
101:インク袋
102:ゴム栓
103:針
104:チューブ
201:ベースプレート
202:インクノズル(吐出口)
203:隔壁
204:ノズルヒータ
205:共通液室
206:基板
207:天板
300:記録装置
301:ロール供給ユニット
302:被記録媒体(ロール紙)
303:記録ヘッド(ブラック)
304:記録ヘッド(シアン)
305:記録ヘッド(マゼンタ)
306:記録ヘッド(イエロー)
307:インクカートリッジ(ブラック)
308:インクカートリッジ(シアン)
309:インクカートリッジ(マゼンタ)
310:インクカートリッジ(イエロー)
311:キャップ機構
312:搬送モータ
313:搬送ベルト
400:キャップ
401:サブタンク
402:加圧ポンプ
403:吸引ポンプ
404a:供給弁
404b:回復弁
404c:大気開放弁
404d:リサイクル弁
405:フィルター
406:フェース(ノズル)面
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録用インクに使用する顔料、疎水基とアニオン性親水基を有する高分子分散剤および水から主としてなる顔料分散液の製造方法において、
(1)上記顔料と未中和のアニオン性親水基を有する上記高分子分散剤と該高分子分散剤を溶解し得る水溶性有機溶媒とを混合し、上記顔料を上記水溶性有機溶媒により湿潤させるとともに、上記高分子分散剤を上記水溶性有機溶媒に溶解させて顔料が分散した高分子分散剤溶液を作製する第1工程、
(2)上記第1工程で作製した溶液と水とを混合する第2工程、
(3)上記高分子分散剤を中和可能な中和剤が含有される水溶液と、上記第2工程で水を混合して作製した溶液とを混合する第3工程、
(4)上記第3工程で作製した混合水溶液中の有機溶媒を除去する第4工程、
を少なくとも有することを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程における水溶性有機溶媒の溶解性パラメータが、前記高分子分散剤の疎水基の溶解性パラメータに対して、−6.0〜3.0(J/cm31/2の範囲である請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程における水の添加量が、前記第1工程で作製した溶液中の水溶性有機溶媒と水との溶解性パラメータが、前記高分子分散剤の有する未中和のアニオン性親水基の溶解性パラメータに対して、−5.0〜5.0(J/cm31/2の範囲になる量である請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程における水の添加量が、前記第1工程で作製した溶液中の水溶性有機溶媒と水との溶解性パラメータが、前記高分子分散剤の疎水基の溶解性パラメータに対して2.0〜11.0(J/cm31/2の範囲になる量である請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程と第3工程の間に、さらに弱塩基性物質水溶液を添加する第5工程を設け、第5工程において弱塩基性物質水溶液を添加することで、弱塩基性物質が含有される水溶液の混合量を、該水溶液混合後の有機溶媒−水混合溶液の溶解性パラメータが前記高分子分散剤の有する未中和のアニオン性親水基の溶解性パラメータに対して、−5.0〜7.0(J/cm31/2の範囲になるように調整する請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
第5工程において、前記弱塩基性物質を添加することで、該弱塩基性物質が含有される水溶液の混合量を、該水溶液混合後の有機溶媒−水混合溶液の溶解性パラメータが、前記高分子分散剤の有する未中和のアニオン性疎水基の溶解性パラメータに対して、6.0〜11.0(J/cm31/2の範囲になるように調整する請求項6に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項7】
上記弱塩基性物質が、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンおよびモノエタノールアミンから選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程における中和剤が、水溶性アルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項9】
前記第3工程における中和剤の添加量が、前記高分子分散剤の未中和のアニオン性親水基に対して0.5〜2.0倍当量の範囲であり、かつ上記中和剤の濃度が、1.0mol/l〜10.0mol/lの範囲である請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項10】
前記水溶性有機溶媒が、環状エーテルである請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項11】
前記第3工程の後に、水を添加する請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項12】
前記高分子分散剤が、少なくとも1種の疎水性ブロックと少なくとも1種のアニオン性親水性ブロックとからなるブロック共重合体で、かつ各ブロックがビニルエーテル類から構成された高分子分散剤である請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項13】
前記高分子分散剤の親水性ブロックが、非イオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックと、アニオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックとを少なくとも含む請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項14】
前記高分子分散剤が、疎水性のビニルエーテル類で構成されたブロック、非イオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロック、およびアニオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロックの順番で少なくとも構成されている請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項15】
水不溶性色材、高分子分散剤、水溶性有機溶媒および水から主としてなるインクジェット記録用インクにおいて、上記水不溶性色材として請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法で作製した顔料分散液を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項16】
インクにエネルギーを与えて、該インクを飛翔させて被記録材に付与して行うインクジェット記録方法において、上記インクが、請求項15に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項17】
エネルギーが、熱エネルギーである請求項16に記載のインクジェット記録方法。
【請求項18】
被記録材が、少なくとも一方の面にインクを受容するコーティング層をもつ被記録材である請求項16に記載のインクジェット記録方法。
【請求項19】
インクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、上記インクが、請求項15に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項20】
インクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジと、該インクを吐出させるためのヘッド部を備えたインクジェット記録装置において、上記インクが、請求項15に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−328119(P2006−328119A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150070(P2005−150070)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】