説明

顔料組成物、顔料分散体およびそれを使用したインクジェットインキ

【課題】着色力が高く分散性および結晶安定性に優れ、不純物含有量の少ないモノアゾ顔料組成物を提供すること。さらに具体的には、一次粒子径を微細にした際に結晶安定性が低下するというモノアゾ顔料の課題を解決し、さらに微細でありながら分散性の優れた顔料組成物を提供することを。また、それらを使用し、分散安定性の優れた顔料分散体および吐出性の優れたインクジェットインキを提供すること。
【解決手段】各種モノアゾ顔料および各種置換基を有するモノアゾ顔料誘導体を含有した顔料組成物により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色力が高く分散性および結晶安定性に優れ、不純物含有量の少ないモノアゾ顔料組成物に関する。さらに詳しくは、それを使用したインクジェットインキに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでインクジェット法や電子写真法など、デジタル印刷の分野において、黄色顔料としてはC.I.ピグメントイエロー12、同13、同83のようなジスアゾ顔料や、C.I.ピグメントイエロー74のようなモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー93、同95、同128のような縮合アゾ顔料などが主に使用されてきた。
【0003】
これらのうちジスアゾ顔料は、色相や透明性、着色力などの特性は良好であるものの耐光性に劣るものが多い。さらに原料としてジクロロベンジジンを使用しているため、これらの顔料を使用した印字物を廃棄する際に生じる分解性生物が安全性に及ぼす影響も懸念される。また縮合アゾ顔料は、モノアゾ顔料やジスアゾ顔料と比べて耐光性が高いものの着色力が低く、さらに高価であるものが多い。
【0004】
一方、モノアゾ顔料は比較的安価であり、安全性、耐光性の点でジスアゾ顔料よりも優れた特性を有するとともに、縮合アゾ顔料よりも着色力の優れた顔料である。中でもC.I.ピグメントイエロー74の特性が優れており、各種デジタル印刷の分野で盛んに使用されている。
【0005】
モノアゾ顔料は上記のような利点を有するものの、透明性や着色力などの点ではジスアゾ顔料に劣るものが多い。また、溶剤や熱に対する結晶安定性の低いものが多く、使用する条件によっては結晶成長して不透明化する、などの不具合を発生する場合がある。
【0006】
一般的には、顔料の透明性や着色力を向上するためには、顔料の一次粒子径を微細にすることが有効である。しかしその場合、粗大な粒子と比較して顔料粒子同士の凝集が激しくなるため、均一な状態に分散するのが困難となる。また、微細な粒子径のモノアゾ顔料は結晶安定性が低い場合が多く、分散体やインキにした際、使用条件によっては顔料の一次粒子が成長するなどの不具合を生じる場合がある。それにより印刷物の着色力は大幅に低下し、製品の品質を著しく低下させる。以上のような、微細なモノアゾ顔料の結晶安定性を改良するために様々な検討が行われており、特許文献1〜3の方法が開示されている。
【0007】
特許文献1は、特定の構造を有するモノアゾ顔料を99.8〜80モル%と、それとは異なる置換基を有するモノアゾ顔料の0.2〜20モル%を合成時に生成させ、必要に応じてロジン類あるいは公知の処理剤で処理した、インクジェットインキ用画像記録用着色組成物に関するものである。この方法によって得られた顔料組成物は微細な粒子を有し、耐熱性、色相、透明性に優れるものの、分散安定化の効果は十分なものではなかった。
【0008】
特許文献2は、特定の構造を有するモノアゾ系黄色顔料を製造する際に、異種ベースおよび異種カップラーを該モノアゾ系黄色顔料用のベースおよびカップラー100モルに対してそれぞれ1〜10モル添加する、モノアゾ系黄色顔料の製造方法に関するものである。この方法によれば、微細な粒子を有し、耐久性、結晶安定性、各種光学特性に優れた黄色顔料を製造することができる。しかし、特許文献2の場合と同様に、分散安定化の効果は十分なものではなかった。
【0009】
特許文献3は、特定構造の界面活性剤存在下でカップリング反応を行い、さらに反応後に脂肪酸エステルを処理したモノアゾ系黄色顔料組成物の製造方法に関するものである。この方法によれば、微細な粒子径を有し、着色力や透明性が高く、さらに結晶安定性の高い顔料を製造することができる。しかし、特許文献1や特許文献2の場合と同様に、分散安定化の効果は十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−158555号公報
【特許文献2】特開2000−63694号公報
【特許文献3】特開2004−83779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、一次粒子径を微細にした際に結晶安定性が低下するというモノアゾ顔料の課題を解決し、さらに微細でありながら分散性の優れた顔料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の顔料組成物を提供する。
(1)下記一般式1で表される化合物および下記一般式2で表される化合物を含有する顔料組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、m、nおよびpは1〜3の整数を表す。
は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシル基、アセチルアミノ基、カルボキシル基、スルホン基を表す(二つのXが一体となって、更なる窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含み、置換されていてもよい複素環構造を形成してもよい。)。
は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホン基、炭素数1〜5のアルコキシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1〜5のエステル、カルボキシル基、トリフルオロメチル基を表す(二つのXが一体となって、更なる窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含み、置換されていてもよい複素環構造を形成してもよい。)。
はXで表される基または下記一般式3または下記一般式4で表される基のいずれかを表す。
ただし、Xの少なくとも一つは、下記一般式3または下記一般式4で表される基のいずれかである。)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Xは、−SONR’−、−CONR’−のいずれかを表す。
は、XとXを結ぶ直接結合、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリーレン基のいずれかを表す(これらの基は、−NR’−、−O−、−SO−または−CO−から選ばれる2価の連結基で相互に結合されていてもよい。)。
は、水素原子、−OR、−NR、−CONR、−SONR、−COORのいずれかを表す。
ただし、R’は、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基のいずれかを表す。
【0017】
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基のいずれかを表す。RとRは、一体となって、更なる窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでもよく、置換されていてもよい複素環構造を形成してもよい。
R’またはRまたはRとXが一体となって、更なる窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでもよく、置換されていてもよい複素環構造を形成してもよい。)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Xは、−NR’−または−O−を表す。
およびXは、それぞれ独立に、下記一般式5で表される基、−OR’、−NR’、ハロゲン原子のいずれかを表す。
ただし、R’は一般式3で定義されたものを表す。)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、X、X、Xは、一般式3および一般式4で定義されたものを表す。)
(2)一般式2で表される化合物の含有量が、一般式1で表される化合物のモル数と一般式2で表される化合物のモル数を合計した量の0.1〜40モル%である、(1)に記載の顔料組成物。
(3)各種芳香族アミンをジアゾ化した後に各種アセトアセトアニリド化合物とカップリングする顔料の製造方法において、芳香族アミンとして下記一般式6で表される化合物および下記一般式7で表される化合物の混合物を使用し、下記一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物と反応させて得られる、(1)または(2)に記載の顔料組成物。
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、m、n、p、X、X、Xは、一般式1および一般式2で定義されたものを表す。)
(4)各種芳香族アミンをジアゾ化した後に各種アセトアセトアニリド化合物とカップリングする顔料の製造法において、一般式6で表される芳香族アミンのジアゾ化物と一般式2で表される化合物を混合した後に、一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物と反応させて得られる、(1)または(2)に記載の顔料組成物。
(5)各種芳香族アミンをジアゾ化した後に各種アセトアセトアニリド化合物とカップリングする顔料の製造法において、一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物を一般式2で表される化合物と混合した後に、一般式6で表される芳香族アミンのジアゾ化物と反応させて得られる、(1)または(2)に記載の顔料組成物。
(6)各種芳香族アミンをジアゾ化した後に各種アセトアセトアニリド化合物とカップリングする顔料の製造法において、一般式2で表される化合物を含有するpH3〜6の緩衝剤水溶液中に、一般式6で表される芳香族アミンのジアゾ化物と一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物の塩基性水溶液を、同時に一定の流量で添加して得られる、(1)または(2)に記載の顔料組成物。
(7)平均一次粒子径が200nm以下である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の顔料組成物。
(8)イオン交換水で顔料組成物を煮沸抽出した水溶液の比電導度が200μS/cm未満である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の顔料組成物。
(9)カルシウム、マグネシウム、および鉄の含有量の合計が300ppm未満である、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の顔料組成物。
(10)カルシウム、マグネシウム、および鉄の含有量が、それぞれ150ppm未満である、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の顔料組成物。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の顔料組成物を含有する顔料分散体。
(12)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の顔料組成物を含有するインクジェットインキ。
【発明の効果】
【0024】
本発明の顔料組成物は、各種モノアゾ顔料および特定の塩基性官能基を有するモノアゾ顔料誘導体を含むものである。特定の官能基を有するモノアゾ顔料誘導体は、顔料分散剤や結晶成長防止剤としての効果を有するため、それらを含有しないモノアゾ顔料と比較して分散性や結晶安定性の良好な顔料組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の顔料組成物は、上記一般式1で表される化合物(以下、各種モノアゾ顔料と記載する。)と、上記一般式2で表される化合物(以下、各種モノアゾ顔料誘導体と記載する。)を含有するものである。各種モノアゾ顔料誘導体は各種モノアゾ顔料に対する分散効果が高く、さらに結晶成長防止剤としての効果を有する。そのため、非常に微細なモノアゾ顔料を使用しても、分散性および結晶安定性の優れた顔料組成物を製造することができる。
【0026】
各種モノアゾ顔料の種類は特に限定されないが、例えばC.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、9、49、61、62、65、73、74、75、97、98、105、111、116、120、130、133、151、154、167、168、169、175、181、194、203、213などが挙げられる。これらのうち、色相や鮮明性、透明性の点でC.I.ピグメントイエロー74が特に好ましい。これらのモノアゾ顔料は一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明で使用する各種モノアゾ顔料の形態は特に限定されない。市販の顔料をそのまま使用してもよく、合成して使用してもよい。また、必要に応じてアシッドペースティングやソルベントソルトミリング、ドライミリングなどの方法により所望の粒子径に微細化してから使用してもよい。
【0028】
本発明の各種モノアゾ顔料は公知の方法により合成することができる。代表的な合成法を以下に例示する。
【0029】
第一の例としては、各種芳香族アミンのジアゾ化物をアセトアセトアニリド化合物を含んだスラリー中に添加する方法が挙げられる。まず、一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物をpHが10以上のアルカリ性水溶液中で溶解し、それを予め調製した酢酸水溶液に注入してpH3〜6の懸濁液を調製する。一方、一般式6で表される各種芳香族アミンを塩酸水溶液中に添加してpHが2以下の懸濁液を調製し、それを5℃以下に冷却した後、亜硝酸ナトリウムを加えてジアゾ化を行う。ジアゾ化終了後、反応混合物にスルファミン酸を加えて亜硝酸を除去し、ジアゾ化物の水溶液を調製する。以上で調製したジアゾ化物の水溶液を、10〜50℃において30〜90分かけてアセトアセトアニリド化合物のスラリー中に添加することでカップリング反応を行い、得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥、粉砕して顔料組成物を得ることができる。
【0030】
第二の例としては、アセトアセトアニリド化合物のアルカリ性水溶液を各種芳香族アミンのジアゾ化物水溶液中に添加する方法が挙げられる。まず、一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物をpHが10以上のアルカリ性水溶液中で溶解し、水溶液を調製する。一方、一般式6で表される各種芳香族アミンを塩酸水溶液中に添加してpHが2以下の懸濁液を調製し、それを5℃以下に冷却した後、亜硝酸ナトリウムを加えてジアゾ化を行う。ジアゾ化終了後、反応混合物にスルファミン酸を加えて亜硝酸を除去し、さらに酢酸と水酸化ナトリウムを含んだ水溶液を添加して、pHが2〜4のジアゾ化物水溶液を調製する。以上で調製したアセトアセトアニリド化合物の水溶液を、0〜30℃において1〜60分かけてジアゾ化物水溶液に添加することでカップリング反応を行い、得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥、粉砕して顔料組成物を得ることができる。
【0031】
第三の例としては、予め酢酸と水酸化ナトリウムなどの塩基を添加して調製した水溶液中に、芳香族アミンのジアゾ成分とアセトアセトアニリド化合物のアルカリ性水溶液を、同時に一定の流量で徐々に添加する方法が挙げられる。まず、一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物をpHが10以上のアルカリ性水溶液中で溶解し、水溶液を調製する。一方、一般式6で表される各種芳香族アミンを塩酸水溶液中に添加してpHが2以下の懸濁液を調製し、それを5℃以下に冷却した後、亜硝酸ナトリウムを加えてジアゾ化を行う。ジアゾ化終了後、反応混合物にスルファミン酸を加えて亜硝酸を除去し、ジアゾ化物の水溶液を調製する。以上で調製したジアゾ化物の水溶液とアセトアセトアニリド化合物の水溶液を、10〜50℃において30〜90分かけて、pHを6以下に保ちながら同時に添加することでカップリング反応を行い、得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥、粉砕して顔料組成物を得ることができる。
【0032】
本発明で使用する芳香族アミンとしては、例えば、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−(トリフルオロメチル)アニリン、3−(トリフルオロメチル)アニリン、4−(トリフルオロメチル)アニリン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2−メトキシ−4−ニトロアニリン、2−メトキシ−5−ニトロアニリン、4−メトキシ−2−ニトロアニリン、2−メチル−3−ニトロアニリン、2−メチル−4−ニトロアニリン、2−メチル−5−ニトロアニリン、2−メチル−6−ニトロアニリン、3−メチル−4−ニトロアニリン、4−メチル−2−ニトロアニリン、4−メチル−3−ニトロアニリン、5−メチル−2−ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、2−クロロ−5−ニトロアニリン、4−クロロ−2−ニトロアニリン、4−クロロ−3−ニトロアニリン、5−クロロ−2−ニトロアニリン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−ニトロベンゼンスルホン酸、4−アミノ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、2−クロロ−4−メチルアニリン、2−クロロ−5−メチルアニリン、2−クロロ−6−メチルアニリン、3−クロロ−2−メチルアニリン、3−クロロ−4−メチルアニリン、4−クロロ−2−メチルアニリン、4−クロロ−3−メチルアニリン、5−クロロ−2−メチルアニリン、3−アミノ−4−クロロベンズアミド、4−アミノ−3−クロロベンズアミド、4−アミノ−3−メトキシ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N−(4−カルバモイルフェニル)ベンズアミド、アミノテレフタル酸ジメチル、5−アミノイソフタル酸ジメチル、6−アミノ−7−クロロ−4−メチルキノリン−2(1H)−オン、5−アミノイソインドリン−1,3−ジオン等が挙げられる。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本発明で使用するアセトアセトアニリド化合物としては、例えば、アセトアセトアニリド、o−アセトアセトアニシジド、p−アセトアセトアニシジド、2’−クロロアセトアセトアニリド、4’−クロロアセトアセトアニリド、N−アセトアセチル−o−トルイジン、N−アセトアセチル−p−トルイジン、o−アセトアセトアニシジド、p−アセトアセトアニシジド、p−アセトアセトフェネチジド、4’−アセチルアミノアセトアセトアニリド、2’,4’−ジメチルアセトアセトアニリド、4’−クロロ−2’−メチルアセトアセトアニリド、5’−クロロ−2’−メトキシアセトアセトアニリド、4’−クロロ−2’,5’−ジメトキシアセトアセトアニリド、5−アセトアセタミド−2−ベンズイミダゾリノン、N−(7−メトキシ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−イル)−3−オキソブタンアミド等が挙げられる。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0034】
顔料をアシッドペースティングにより微細化する場合、各種モノアゾ顔料を濃硫酸に溶解し、それを大過剰の水と混合することにより微細な顔料粒子を析出させる。その後濾過、水洗を繰り返し、乾燥することにより微細化された顔料粒子を得ることができる。
【0035】
アシッドペースティングの方法は特に限定されないが、例えば各種モノアゾ顔料をその5〜30重量倍の98%−硫酸に溶解し、得られた硫酸溶液をその5〜30重量倍の水と混合する方法が挙げられる。その際、各種モノアゾ顔料を硫酸に溶解する温度は、原料の分解やスルホン化などの反応を発生しない範囲であれば特に限定されないが、例えば3〜40℃の範囲で行うことができる。また、各種モノアゾ顔料の硫酸溶液と水を混合する方法や温度などの条件も特に限定されないが、多くの場合、高温で析出させた場合よりも低温の場合に粒子が微細となる傾向があるため、0℃〜60℃の範囲で行うことが好ましい。その際に使用する水としては水道水、井水、温水など、工業的に使用可能なものはいずれも使用することができるが、析出時の温度上昇を低減するためには、予め冷却した水を使用するのが好ましい。
【0036】
硫酸溶液と水の混合方法は特に限定されず、各種モノアゾ顔料を完全に析出させることができればどのような方法で混合しても良い。例えば硫酸溶液を予め調製した氷水に注入する方法や、アスピレーターなどの装置を使用して流水中に連続的に注入するなどの方法で析出させることができる。
【0037】
以上の方法で得られたスラリーを濾過、洗浄して酸性成分を除去し、その後乾燥、粉砕することで本発明の顔料組成物を得ることができる。スラリーを濾過する際、硫酸溶液と水を混合したスラリーをそのまま濾過してもよいが、スラリーの濾過性が悪い場合は濾過前に加熱攪拌してから濾過してもよい。また、スラリーを各種塩基で中和した後に濾過してもよい。
【0038】
顔料をソルベントソルトミリングにより微細化する場合、各種モノアゾ顔料、水溶性無機塩および水溶性溶剤の少なくとも三成分からなる混合物を粘土状の混合物とし、ニーダー等で強力に混練する。混練後の混合物を水中に投入し、各種攪拌機で攪拌してスラリー状とする。これを濾過することにより、水溶性無機塩および水溶性溶剤を除去する。以上のスラリー化と濾過、水洗を繰り返し、微細化された有機顔料を得ることができる。
【0039】
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等を使用することができる。これらの無機塩は、有機顔料の1重量倍以上、好ましくは20重量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量が1重量倍よりも少ない場合、顔料を十分に微細化することが困難である。一方、20重量倍よりも多い場合、混練後に水溶性の無機塩および水溶性溶剤を除去するために多大な労力を要すると同時に、一回に処理できる顔料の量が少なくなるため、生産性の点で好ましくない。
【0040】
上記の顔料の微細化方法では混練に伴って発熱することが多いため、安全性の点から、沸点が120〜250℃程度の水溶性溶剤を使用することが好ましい。その例としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0041】
顔料をドライミリングにより微細化する場合、各種モノアゾ顔料を各種粉砕機で乾式粉砕することにより微細化する。この方法において、粉砕は粉砕メディア同士の衝突や摩擦を通じて進行する。ドライミリングを行うために使用する装置は特に限定されないが、その例としてはビーズ等の粉砕メディアを内蔵した乾式粉砕装置であるボールミルやアトライター、振動ミルなどが挙げられる。これらの装置を使用して乾式粉砕する際、必要に応じて粉砕容器の内部を減圧したり、窒素ガスなどの不活性ガスを充填させて行ってもよい。また、ドライミリングした後に、上記のソルベントソルトミリングや溶剤中での攪拌処理などを行ってもよい。
【0042】
上記の顔料の微細化方法において、各種モノアゾ顔料は一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。また、乾燥、粉砕して粉状とした後に使用してもよく、乾燥前の水ケーキの形態で使用してもよい。
【0043】
本発明で使用する各種モノアゾ顔料誘導体の例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。ただし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。これらの各種モノアゾ顔料誘導体は一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。本発明の各種モノアゾ顔料誘導体は公知の方法により合成することができ、例えば上記の各種モノアゾ顔料の合成方法と同様にして合成することができる。
【0044】
【化6】

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】

【0049】
本発明において顔料組成物を調製する際、各種モノアゾ顔料と各種モノアゾ顔料誘導体は任意の方法で混合することができる。混合方法としては、例えば予め合成した各種モノアゾ顔料と各種モノアゾ顔料誘導体を粉状のまま混合する方法、またはそれぞれの水スラリー同士を混合する方法、予め合成した各種モノアゾ顔料の水スラリーに粉状あるいは溶解した各種モノアゾ顔料誘導体を添加する方法、各種モノアゾ顔料を合成する際に各種モノアゾ顔料誘導体を同時に生成させる方法、各種モノアゾ顔料誘導体の存在下で各種モノアゾ顔料を合成する方法、などが挙げられる。これらいずれの方法によっても分散性および結晶安定性の良好な顔料組成物を得ることができる。
【0050】
本発明の顔料組成物において、各種モノアゾ顔料誘導体の含有量は、各種モノアゾ顔料と各種モノアゾ顔料誘導体の合計量のうち、0.1モル%〜40モル%の範囲であることが好ましい。好ましくは0.3モル%〜30モル%、さらに好ましくは0.5モル%〜20モル%である。含有量が0.1モル%未満である場合、得られる顔料組成物の分散性または結晶安定性が不十分となり、40モル%を超える場合、添加量の増加に伴った顕著な分散効果や結晶安定化効果は得られず、さらに各種モノアゾ顔料の含有量が低下するために着色力が低下する場合があり、好ましくない。
【0051】
本発明の顔料組成物を製造する方法としては、上記で例示した方法のうち、各種モノアゾ顔料を合成する際に各種モノアゾ顔料誘導体を同時に生成させる方法、または各種モノアゾ顔料誘導体の存在下で各種モノアゾ顔料を合成する方法であることが特に好ましい。これらの方法で顔料組成物を製造した場合、非常に微細かつ各種モノアゾ顔料誘導体が均一に処理された顔料組成物が得られる。そのため各種用途に使用した場合、分散性および結晶安定性に優れ、着色力や透明性の高い顔料組成物が得られるため、特に好ましい。
【0052】
各種モノアゾ顔料を合成する際に各種モノアゾ顔料誘導体を同時に生成させる方法で顔料組成物を製造する場合、芳香族アミンとして一般式6で表される化合物および一般式7で表される化合物を混合し、上記に例示した各種モノアゾ顔料および各種モノアゾ顔料誘導体を合成する方法と同様にして顔料組成物を製造することができる。その際、一般式7で表される化合物の使用量は、一般式6で表される化合物と一般式7で表される化合物を合計した量の0.1モル%〜40モル%の範囲であることが好ましい。好ましくは0.3モル%〜30モル%、さらに好ましくは0.5モル%〜20モル%である。使用量が0.1モル%未満である場合、得られる顔料組成物の分散性または結晶安定性が不十分となり、40モル%を超える場合、添加量の増加に伴った顕著な分散効果や結晶安定化効果は得られず、さらに各種モノアゾ顔料の含有量が低下するために着色力が低下する場合があり、好ましくない。
【0053】
各種モノアゾ顔料誘導体の存在下で各種モノアゾ顔料を合成する方法で顔料組成物を製造する場合、予め合成した各種モノアゾ顔料誘導体をベース成分またはカップラー成分のいずれかに添加し、それ以外は上記に例示した各種モノアゾ顔料および各種モノアゾ顔料誘導体を合成する方法と同様にして顔料組成物を製造することができる。
【0054】
上記のいずれかの方法で調製した顔料組成物は、必要に応じてさらにアシッドペースティングやソルベントソルトミリング、ドライミリングなどの方法により所望の粒子径に微細化してから使用してもよい。その際の方法は、上記各種モノアゾ顔料の場合と同様に行うことができる。
【0055】
また本発明の顔料組成物は、上記いずれの方法においても、必要に応じて樹脂や界面活性剤等を添加して製造することができる。これらの添加剤は顔料組成物を調製するいずれの段階で使用してもよい。例えば顔料組成物を合成する段階で、芳香族アミンまたはアセトアセトアミド化合物とともに使用してもよく、アシッドペースティングやソルベントソルトミリング、ドライミリングなどを行う際に使用してもよい。
【0056】
その際に使用する樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ビニルナフタレン−アクリル酸系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。またこれらは、顔料組成物に対して0.1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%の範囲で使用することができる。
【0057】
顔料組成物を使用する際に使用する界面活性剤の種類は特に限定されないが、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコン系非イオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、四級アミン塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。これらの界面活性剤は一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。またこれらは、顔料組成物に対して0.3〜20重量%、好ましくは1〜10%の範囲で使用することができる。
【0058】
以上、いずれかの方法で調製した本発明の顔料組成物は、平均一次粒子径が200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。平均一次粒子径が200nmを超える場合、各種用途に使用した際の着色力が劣る場合があり、さらに分散体やインキを保存中に沈降物を生じる場合があるため、好ましくない。
【0059】
本発明において、顔料組成物の平均一次粒子径は走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を使用して測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で顔料粒子の写真を撮影し、凝集体を構成する各一次粒子について、それぞれの径を測定する。その際、各粒子について最大となる部分の径を一次粒子径とする。この測定を同一の視野内に含まれる100個の粒子について行い、得られた値の平均値を平均一次粒子径とする。
【0060】
本発明の顔料組成物において、顔料組成物をイオン交換水で煮沸抽出した水溶液の比電導度は、顔料組成物に含まれるイオン性不純物含有量の指標として測定する。一般的に、顔料組成物に含まれるイオン性不純物は、各種用途に使用した場合の分散安定性に影響することが知られており、できる限り少ないことが好ましい。本発明において、顔料組成物をイオン交換水で煮沸抽出した水溶液の比電導度は、200μS/cm未満であることが好ましく、より好ましくは150μS/cm未満、さらに好ましくは100μS/cm未満である。
【0061】
顔料組成物に含まれるイオン性不純物を低減するための方法は、顔料組成物をイオン交換水で煮沸抽出した水溶液の比電導度が上記の範囲となるものであれば特に限定されないが、例えば顔料組成物を調製後に濾過と洗浄を繰り返す方法が挙げられる。その際に使用する水の種類は特に限定されないが、蒸留水やイオン交換水など、イオン性不純物を含有しないものであることが好ましい。
【0062】
また、本発明の顔料組成物において、カルシウム、マグネシウム、および鉄の含有量の合計は300ppm未満であることが好ましく、より好ましくは200ppm未満、さらに好ましくは150ppm未満である。また、それぞれの金属元素の含有量は150ppm未満であることが好ましく、より好ましくは100ppm未満、さらに好ましくは80ppm未満である。カルシウム、マグネシウム、および鉄の含有量の合計が300ppm以上、またはそれぞれの金属元素の含有量が150ppm以上である場合、顔料組成物をインクジェットインキに使用した際、プリンターのインキ流路やヘッドのノズル部において不溶物を発生し、ノズル詰まりの原因となる場合があるため、好ましくない。
【0063】
カルシウム、マグネシウム、および鉄の含有量を測定するための方法としては様々なものが知られているが、例えば、顔料組成物に硝酸を加えてマイクロウェーブで分解処理した溶液を適当な濃度に希釈し、誘導結合プラズマ発光分析(ICP)を用いて測定する方法が挙げられる。
【0064】
顔料組成物に含まれるカルシウム、マグネシウム、および鉄の含有量を低減するための方法は特に限定されないが、例えば顔料組成物を調製後に酸性の水溶液中でスラリー化し、濾過、洗浄を繰り返す方法が挙げられる。その際に使用する酸の種類は特に限定されないが、例えば、硫酸、塩酸、酢酸等を挙げることができる。また、洗浄に使用する水の種類は特に限定されないが、蒸留水やイオン交換水など、イオン性不純物を含有しないものであることが好ましい。
【0065】
本発明の顔料分散体は、本発明の顔料組成物を水性媒体に分散した水性顔料分散体、および有機溶媒に分散した油性顔料分散体のいずれをも包含するものである。
【0066】
本発明の水性顔料分散体は、本発明の顔料組成物、水性媒体、樹脂、界面活性剤等の混合物を各種分散機で分散して調製することができる。また必要に応じて、上記の原料のほかに各種添加剤を添加して分散してもよい。顔料分散体を調製する際の、各原料の添加順序や添加方法については特に限定されない。
本発明の水性顔料分散体において、顔料組成物の含有量は特に限定されないが、5〜50重量%の範囲で使用することが望ましい。特に好ましくは10〜40重量%である。
【0067】
水性顔料分散体の製造に使用する水性媒体の種類や含有量は特に限定されないが、金属イオン等を除去したイオン交換水または蒸留水を使用することが好ましい。水性媒体の含有量は水性顔料分散体中の30〜95重量%であることが好ましい。
【0068】
また水性媒体としては、必要に応じて水と水溶性溶媒を混合して使用することができる。水溶性溶媒は特に限定されないが、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ケトンアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、2,4,6−ヘキサントリオール、テトラフリルアルコール、4−メトキシ−4−メチルペンタノン等が挙げられる。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。これらの水溶性溶媒を使用する場合、水溶性溶媒の含有量は、水性顔料分散体中の1〜50重量%であることが好ましい。
【0069】
水性顔料分散体の製造に使用する樹脂としては、水性媒体中で顔料組成物を分散しうるものであれば特に限定されないが、例えば顔料組成物を製造する際に使用可能な樹脂として例示したもののうち、水溶性のものを使用することができる。それらの樹脂は一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。また、それらの使用量は特に限定されないが、顔料分散体中の0.5〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜20重量%である。
【0070】
また、水性顔料分散体の製造に使用するための界面活性剤としては、水性媒体中で顔料組成物を分散しうるものであれば特に限定されないが、例えば顔料組成物を製造する際に使用可能な界面活性剤として例示したものを使用することができる。それらの界面活性剤は単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。また、それらの使用量は特に限定されないが、顔料分散体中の0.5〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜20重量%である。
【0071】
さらに、水性顔料分散体を製造する際、必要に応じて防黴剤、pH調整剤、消泡剤等の添加物を使用することができる。
【0072】
防黴剤は、水性顔料分散体中での黴の発生を防止するために使用する。防黴剤の種類は特に限定されないが、例えばデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等が挙げられる。これらは、顔料分散体中の0.05〜2重量%の範囲で使用するのが好ましい。
【0073】
pH調整剤は、水性顔料分散体のpHを所望の値に調整するために使用する。pH調整剤の種類は特に限定されないが、例えば各種アミン、各種無機アルカリ、アンモニア、各種緩衝液等が挙げられる。
【0074】
消泡剤は水性顔料分散体の製造において泡の発生を防止するために使用する。消泡剤の種類は特に限定されず、市販のものをいずれも使用することができる。例えば、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールPSA−336(いずれもエアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0075】
本発明の油性顔料分散体は、本発明の顔料組成物、有機溶媒、分散剤等の混合物を各種分散機で分散して調製することができる。また必要に応じて、上記の原料のほかに各種添加剤を添加して分散してもよい。顔料分散体を調製する際の、各原料の添加順序や添加方法については特に限定されない。
【0076】
本発明の油性顔料分散体において、顔料組成物の含有量は特に限定されないが、5〜50重量%の範囲で使用することが望ましい。特に好ましくは10〜40重量%である。
【0077】
油性顔料分散体の製造に使用する有機溶媒の種類や含有量は特に限定されないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチル−n−ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、乳酸メチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等のエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ノナン、イソノナン、ドデカン、イソドデカン等の飽和炭水素類、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の不飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等の環状飽和炭化水素類、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。有機溶媒の含有量は、油性顔料分散体中の30〜95重量%であることが好ましい。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0078】
油性顔料分散体の製造に使用する分散剤は特に限定されないが、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリアリルアミンと遊離のカルボン酸を有するポリエステルの縮合物または造塩物、ポリエーテルエステル型陰イオン性界面活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。これらの使用量は特に限定されないが、顔料分散体中の0.5〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜20重量%である。
【0079】
本発明の顔料分散体を製造するために使用する分散機は特に限定されないが、例えば横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター、マイクロフルイタイザー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等が挙げられ、通常各種分散体を製造するために使用されるあらゆる分散機や混合機を使用することができる。
【0080】
また、各種分散機で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、あるいは2本ロールミル等による固形分散等の処理を行ってもよい。また、各種分散機で分散した後、30〜80℃の加温状態にて数時間〜1週間程度保存する後処理や、超音波分散機や衝突型ビーズレス分散機を用いて後処理する工程は、顔料分散体に分散安定性を付与するために効果的である。さらに各種分散機で分散を行った後に、遠心分離機による処理を施しても良い。この方法は、顔料分散体中に含まれる粗大粒子を除去するために効果的である。
【0081】
本発明のインクジェットインキは、上記水性顔料分散体を使用した水性インキおよび上記油性顔料分散体を使用した油性インキのいずれをも包含するものである。
【0082】
本発明の水性インクジェットインキは、本発明の水性顔料分散体に、水性媒体、樹脂、界面活性剤、その他の添加剤等を加えて均一に混合することにより製造できる。
本発明の水性インクジェットインキにおいて、顔料組成物の含有量は特に限定されないが、水性インクジェットインキ中の1〜10重量%であることが好ましく、さらに好ましくは2〜7重量%である。
【0083】
水性インクジェットインキの製造に使用する水性媒体の種類や含有量は特に限定されないが、金属イオン等を除去したイオン交換水ないし蒸留水を使用することが好ましい。水性媒体の含有量は水性インクジェットインキ中の60〜99重量%であることが好ましい。
【0084】
また水性媒体としては、プリンターヘッドのノズル部分におけるインキの乾燥、固化を防止し、安定な吐出を行うために、必要に応じて水溶性溶媒を使用することができる。水溶性溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、水性顔料分散体の製造で使用することのできる水溶性溶媒として例示したものが挙げられる。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。これらの水溶性溶媒を使用する場合、水溶性溶媒の含有量は、水性インクジェットインキ中の1〜50重量%の範囲であることが好ましい。
【0085】
本発明の水性インクジェットインキを調製する際、顔料組成物の被印刷物への定着性を付与するために樹脂を使用することができる。樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、水性顔料分散体を製造する際に使用可能な樹脂として例示したもののうち、水溶性のもの、またはそれらの水中油滴型エマルションが挙げられる。これらのうち水中油滴型エマルションは、これらを使用した場合、低粘度の水性インクジェットインキおよび耐水性に優れた記録物が得られるため、好ましい。これらの樹脂は、一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。これらの樹脂の含有量は、水性インクジェットインキ中の0.5〜10重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、1〜5重量%である。含有量が0.5%よりも少ない場合、顔料組成物を定着する効果が不十分となり、15%よりも多い場合、インキの粘度が上昇する、あるいは吐出安定性を低下させる、等の不具合を生じる場合があり好ましくない。これらの樹脂は、必要に応じてアンモニア、各種アミン、各種無機アルカリ等のpH調整剤により酸性官能基を中和して使用することができる。
【0086】
本発明の水性インクジェットインキを調製する際、インキ中における顔料組成物の分散安定性を付与するため、必要に応じて界面活性剤を使用することができる。界面活性剤の種類は特に限定されないが、例えば、水性顔料分散体を製造する際に使用可能な界面活性剤として例示したものが挙げられる。これらの界面活性剤は、一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。これらの界面活性剤の含有量は、水性インクジェットインキ中の0.5〜10重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、1〜5重量%である。
【0087】
本発明の水性インクジェットインキを製造する際、その他の添加剤としては乾燥促進剤、浸透剤、防黴剤、キレート剤、pH調整剤等を使用することができる。
【0088】
乾燥促進剤は、水性インクジェットインキを印字した際の乾燥を速めるために使用することができる。乾燥促進剤の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを混合して使用してもよい。また、これらの含有量は、水性インクジェットインキ中の1〜50重量%であることが好ましい。
【0089】
また、被印刷体が紙のような浸透性の基材である場合、基材へのインキの浸透を促進し、見掛けの乾燥性を早くするために、各種浸透剤を使用することができる。浸透剤の例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルやアルキレングリコール、アルキレンジオール等の水溶性溶媒、また、ポリエチレングリコールラウリルエーテルやラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ジ−(2−エチルヘキシル)−スルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤等が挙げられる。これらの使用量は、水性インクジェットインキ中の5重量%以下で十分な効果があり、これよりも多いとインキの滲みや紙抜けを起こすことがあるため、好ましくない。
【0090】
防黴剤は、水性インクジェットインキ中における黴の発生を防止するために使用することができる。防黴剤の種類は特に限定されないが、例えば、水性顔料分散体を製造する際に使用可能な防黴剤として例示したものを使用することができる。これらは、水性インクジェットインキ中の0.05〜1.0重量%の範囲で使用するのが好ましい。
【0091】
キレート剤は、水性インクジェットインキ中に含まれる金属イオンを捕捉し、プリンターヘッドのノズル部やインキ中における不溶性物の析出を防止するために使用することができる。キレート剤の種類は特に限定されないが、例えばエチレンジアミンテトラアセティックアシド、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのナトリウム塩,エチレンジアミンテトラアセティックアシドのジアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのテトラアンモニウム塩等が挙げられる。これらは水性インクジェットインク中の0.005〜0.5重量%の範囲で使用するのが好ましい。
【0092】
また、水性インクジェットインキのpHを所望の値に調整するため、各種pH調整剤を使用することができる。pH調整剤の種類は特に限定されず、各種アミン、無機塩、アンモニア、各種緩衝液等を用いることができる。
【0093】
本発明の油性インクジェットインキは、本発明の油性顔料分散体に、有機溶媒、樹脂、分散剤、その他の添加剤等を加えて均一に混合することにより製造できる。
本発明の油性インクジェットインキにおいて、顔料組成物の含有量は特に限定されないが、油性インクジェットインキ中の1〜10重量%であることが好ましく、さらに好ましくは2〜7重量%である。
【0094】
油性インクジェットインキの製造に使用する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、油性顔料分散体を製造する際に使用可能な有機溶媒として例示したものを使用することができる。有機溶媒の含有量は特に限定されないが、油性インクジェットインキ中の80〜97重量%であることが好ましい。これらの有機溶媒は、一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0095】
本発明の油性インキジェットインキを製造する際、顔料組成物の被印刷物への定着性を付与するために、樹脂を使用することができる。樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、セルロース系樹脂、天然ゴム、合成ゴム、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、テルペンフェノール系樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアリルアミン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブチラール樹脂、クマロンインデン系樹脂、キシレン樹脂、フマル酸樹脂、ポリオレフィン、塩化ポリプロピレン、ワックス−ラテックス系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂等が挙げられる。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。これらの使用量は特に限定されないが、油性インクジェットインキ中の1〜15重量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜8重量%である。
【0096】
本発明の油性インクジェットインキを調製する際、インキ中における顔料組成物の分散安定性を付与するため、必要に応じて分散剤を使用することができる。分散剤の種類は特に限定されないが、例えば、油性顔料分散体を製造する際に使用可能な分散剤として例示したものを使用することができる。これらは一種類のものを単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて使用してもよい。これらの使用量は特に限定されないが、油性インクジェットインキ中の0.1〜15重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
【0097】
本発明の油性インクジェットインキには更なる添加物が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、湿潤剤、脱ガス剤/脱泡剤、保存剤および酸化防止剤等が挙げられる。
【0098】
上記の原料を混合してインクジェットインキを調製する際、原料を混合する方法は特に限定されず、通常の羽を用いた攪拌機のほか、高速の分散機、乳化機等を使用して行うことができる。その際、原料の添加順序や混合方法等は特に限定されない。
【0099】
また、各原料を混合し、調製したインクジェットインキを各種濾過機で濾過することにより、インキ中に含まれる粗大粒子を除去することができる。その際に使用するフィルターの孔径は1μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.65μm以下である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<各種モノアゾ顔料および各種顔料組成物の調製>
製造例1 <モノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)の調製>
ジアゾ成分として2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを水 500gに添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%−塩酸を 105g添加し、5℃以下を維持したまま1時間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム 28.0gを水 72.0gに加えて調製した水溶液を添加し、1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸 0.5gを加えて亜硝酸を消失させ、ジアゾニウム水溶液を調製した。
一方、カップラー成分としてo−アセトアセトアニシジド 84.5gおよび25%−水酸化ナトリウム水溶液 164gを水 140g中に添加し、攪拌して完全に溶解させた。それを、80%−酢酸 82.0gと水 420gを混合した水溶液に注入し、カップラースラリーを調製した。
【0101】
上記で調製したカップラースラリーを40℃に加熱し、その中にジアゾニウム水溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で1時間攪拌し、反応を完結させた。反応終了後、スラリーを90℃に加熱し、1時間攪拌した後に直径285mmのブフナー漏斗で濾過した。濾さいにイオン交換水25リットルを振りかけて洗浄し、乾燥、粉砕してモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74) 150gを得た。
【0102】
製造例2 <モノアゾ顔料B(C.I.Pigment Yellow 1)の調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを4−メチル−2−ニトロアニリン 60.8gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 84.5gをアセトアセトアニリド 72.2gにそれぞれ変更し、それ以外は製造例1と同様にして、モノアゾ顔料B(C.I.Pigment Yellow 1) 132gを得た。
【0103】
製造例3 <モノアゾ顔料C(C.I.Pigment Yellow 9)の調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを4−メチル−2−ニトロアニリン 60.8gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 84.5gをN−アセトアセチル−o−トルイジン 78.0gにそれぞれ変更し、それ以外は製造例1と同様にして、モノアゾ顔料C(C.I.Pigment Yellow 9) 137gを得た。
製造例4 <モノアゾ顔料D(C.I.Pigment Yellow 73)の調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを4−クロロ−2−ニトロアニリン 69.0gに変更し、それ以外は製造例1と同様にして、モノアゾ顔料D(C.I.Pigment Yellow 73) 151gを得た。
【0104】
製造例5 <モノアゾ顔料E(C.I.Pigment Yellow 105)の調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを6−アミノ−7−クロロ−4−メチルキノリン−2(1H)−オン 83.4gに変更し、それ以外は製造例1と同様にして、モノアゾ顔料E(C.I.Pigment Yellow 105) 164gを得た。
製造例6 <モノアゾ顔料F(C.I.Pigment Yellow 213)の調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gをアミノテレフタル酸ジメチル 83.6gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 84.5gをN−(7−メトキシ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−イル)−3−オキソブタンアミド 119gにそれぞれ変更し、それ以外は製造例1と同様にして、モノアゾ顔料F(C.I.Pigment Yellow 213) 198gを得た。
【0105】
実施例1 <顔料組成物Aの調製>
製造例1で調製したモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74) 94.0gと下記一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体Aの粉末 6.0gを均一に混合し、顔料組成物A 100gを得た。顔料組成物A中のモノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、5.0mol%であった。
【0106】


【0107】
実施例2 <顔料組成物Bの調製>
製造例1で調製したモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74) 94.3gと下記一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体Bの粉末 5.7gを均一に混合し、顔料組成物B 100gを得た。顔料組成物B中のモノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、5.0mol%であった。
【0108】


【0109】
実施例3 <顔料組成物Cの調製>
製造例2で調製したモノアゾ顔料B(C.I.Pigment Yellow 1) 90.0gと下記一般式11で表されるモノアゾ顔料誘導体Cの粉末 10.0gを均一に混合し、顔料組成物C 100gを得た。顔料組成物C中のモノアゾ顔料誘導体Cの含有量は、5.0mol%であった。
【0110】


【0111】
実施例4 <顔料組成物Dの調製>
製造例3で調製したモノアゾ顔料C(C.I.Pigment Yellow 9) 94.0gと下記一般式12で表されるモノアゾ顔料誘導体Dの粉末 6.0gを均一に混合し、顔料組成物D 100gを得た。顔料組成物D中のモノアゾ顔料誘導体Dの含有量は、5.0mol%であった。
【0112】


【0113】
実施例5 <顔料組成物Eの調製>
製造例4で調製したモノアゾ顔料D(C.I.Pigment Yellow 73) 94.0gと下記一般式13で表されるモノアゾ顔料誘導体Eの粉末 6.0gを均一に混合し、顔料組成物E 100gを得た。顔料組成物E中のモノアゾ顔料誘導体Eの含有量は、5.0mol%であった。
【0114】


【0115】
実施例6 <顔料組成物Fの調製>
製造例5で調製したモノアゾ顔料E(C.I.Pigment Yellow 105) 93.1gと下記一般式14で表されるモノアゾ顔料誘導体Fの粉末 6.9gを均一に混合し、顔料組成物F 100gを得た。顔料組成物F中のモノアゾ顔料誘導体Fの含有量は、5.0mol%であった。
【0116】


【0117】
実施例7 <顔料組成物Gの調製>
製造例6で調製したモノアゾ顔料F(C.I.Pigment Yellow 213) 95.4gと下記一般式15で表されるモノアゾ顔料誘導体Gの粉末 4.6gを均一に混合し、顔料組成物G 100gを得た。顔料組成物G中のモノアゾ顔料誘導体Gの含有量は、5.0mol%であった。

【0118】
実施例8 <顔料組成物Hの調製>
製造例1で調製したモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74) 282.0g、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 18.0g、塩化ナトリウム1500g、およびジエチレングリコール250gの混合物を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)を使用し、60℃で6時間混練して、粘土状の混練物を得た。この混練物を15リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とした。スラリーを3等分に分割し、それぞれを直径285mmのブフナー漏斗で濾過した。濾さいに50℃の温水をそれぞれ15リットル振りかけて洗浄した。濾さいを取り出し、35%−塩酸 250gと水道水 15リットルを混合した水溶液に添加、攪拌してスラリー化した。1時間攪拌後、スラリーを3等分に分割し、それぞれを直径285mmのブフナー漏斗で濾過した。濾さいに水道水をそれぞれ15リットル振りかけて洗浄した。濾さいを取り出し、15リットルのイオン交換水中に添加、攪拌してスラリー化した。1時間攪拌後、スラリーを3等分に分割し、それぞれを直径285mmのブフナー漏斗で濾過した。濾さいにイオン交換水をそれぞれ15リットル振りかけて洗浄し、乾燥、粉砕して顔料組成物H 230gを得た。顔料組成物H中のモノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、5.0mol%であった。
【0119】
実施例9 <顔料組成物Iの調製>
製造例1で調製したモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74) 282.0g、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 18.0g、塩化ナトリウム1500g、およびジエチレングリコール250gの混合物を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)を使用し、60℃で6時間混練して、粘土状の混練物を得た。この混練物を15リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とした。スラリーを3等分に分割し、それぞれを直径285mmのブフナー漏斗で濾過した。濾さいに50℃の温水をそれぞれ15リットル振りかけて洗浄し、乾燥、粉砕して顔料組成物I 230gを得た。顔料組成物I中のモノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、5.0mol%であった。
実施例10 <顔料組成物Jの調製>
実施例8において使用したモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74) 282.0gを282.8gに、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 18.0gを一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体B 17.2gに変更し、それ以外は実施例8と同様にして顔料組成物J 235gを得た。顔料組成物J中のモノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、5.0mol%であった。
【0120】
実施例11 <顔料組成物Kの調製>
実施例9において使用した、モノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74) 282.0gを282.8gに、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 18.0gを一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体B 17.2gに変更し、それ以外は実施例9と同様にして顔料組成物K 235gを得た。顔料組成物K中のモノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、5.0mol%であった。
実施例12 <顔料組成物Lの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gと下記一般式16で表される芳香族アミンA 5.0gの混合物に変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物L 151gを得た。顔料組成物Lに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、5.0mol%であった。
【0121】


【0122】
実施例13 <顔料組成物Mの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.1gと一般式16で表される芳香族アミンA 0.050gの混合物に変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物M 149gを得た。顔料組成物Mに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、0.05mol%であった。
実施例14 <顔料組成物Nの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 66.8gと一般式16で表される芳香族アミンA 0.50gの混合物に変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物N 150gを得た。顔料組成物Nに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、0.50mol%であった。
【0123】
実施例15 <顔料組成物Oの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 57.1gと一般式16で表される芳香族アミンA 14.9gの混合物に変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物O 154gを得た。顔料組成物Oに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、15.0mol%であった。
実施例16 <顔料組成物Pの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 47.0gと一般式16で表される芳香族アミンA 29.9gの混合物に変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物P 159gを得た。顔料組成物Pに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、30.0mol%であった。
【0124】
実施例17 <顔料組成物Qの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 33.6gと一般式16で表される芳香族アミンA 49.8gの混合物に変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物Q 165gを得た。顔料組成物Qに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、50.0mol%であった。
実施例18 <顔料組成物Rの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gと下記一般式17で表される芳香族アミンB 4.60gの混合物に変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物R 151gを得た。顔料組成物Rに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体Bであり、モノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、5.0mol%であった。
【0125】


【0126】
実施例19 <顔料組成物Sの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.1gと一般式17で表される芳香族アミンB 0.046gの混合物に変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物S 149gを得た。顔料組成物Sに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体Bであり、モノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、0.05mol%であった。
実施例20 <顔料組成物Tの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 33.6gと一般式17で表される芳香族アミンB 45.6gの混合物に変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物T 161gを得た。顔料組成物Tに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体Bであり、モノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、50.0mol%であった。
実施例21 <顔料組成物Uの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、4−クロロ−2−メチルアニリン 53.8gと下記一般式18で表される芳香族アミンC 5.20gの混合物に、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 84.5gを4’−クロロ−2’,5’−ジメトキアセトアセトアニリド 111gに変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物U 165gを得た。顔料組成物Uに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 49および下記一般式19で表されるモノアゾ顔料誘導体Hであり、モノアゾ顔料誘導体Hの含有量は、5.0mol%であった。

【0127】
実施例22 <顔料組成物Vの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、4−アミノ−3−メトキシ−N−フェニルベンゼンスルホンアミド 106gと下記一般式20で表される芳香族アミンD 7.14gの混合物に、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 84.5gを4’−クロロ−2’,5’−ジメトキシアセトアセトアニリド 111gに変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物V 219gを得た。顔料組成物Vに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 97および下記一般式21で表されるモノアゾ顔料誘導体Iであり、モノアゾ顔料誘導体Iの含有量は、5.0mol%であった。
【0128】


【0129】
実施例23 <顔料組成物Wの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gと下記一般式22で表される芳香族アミンE 8.86gの混合物に、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 84.5gを5’−クロロ−2’−メトキシアセトアセトアニリド 98.6gに変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物W 168gを得た。顔料組成物Wに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 111および下記一般式23で表されるモノアゾ顔料誘導体Jであり、モノアゾ顔料誘導体Jの含有量は、5.0mol%であった。
【0130】


【0131】
実施例24 <顔料組成物Xの調製>
製造例1において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 67.2gを、5−アミノイソインドリン−1,3−ジオン 61.6gと一般式16で表される芳香族アミンA 4.98gの混合物に、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 84.5gを2’,4’−ジメチルアセトアセトアニリド 83.7gに変更し、それ以外は製造例1と同様にして、顔料組成物X 148gを得た。顔料組成物Xに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 167および下記一般式24で表されるモノアゾ顔料誘導体Kであり、モノアゾ顔料誘導体Kの含有量は、5.0mol%であった。

【0132】
実施例25 <顔料組成物Yの調製>
ジアゾ成分Aとして、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを水 475gに添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%−塩酸を100g添加し、5℃以下を維持したまま1時間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム 26.6gを水 68.4gに加えて調製した水溶液を添加し、1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸 0.48gを加えて亜硝酸を消失させ、ジアゾニウム水溶液Aを調製した。
【0133】
同様に、ジアゾ成分Bとして、一般式16で表される芳香族アミンA 5.0gを水 25.0gに添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%−塩酸を5.25g添加し、5℃以下を維持したまま1時間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム 1.40gを水 3.60gに加えて調製した水溶液を添加し、1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸 0.03gを加えて亜硝酸を消失させ、ジアゾニウム水溶液Bを調製した。
【0134】
一方、カップラー成分としてo−アセトアセトアニシジド 84.5gおよび25%−水酸化ナトリウム水溶液 164gを水 140g中に添加し、攪拌して完全に溶解させた。それを、80%−酢酸 82.0gと水 420gを混合した水溶液に注入し、カップラースラリーを調製した。
【0135】
上記で調製したカップラースラリーを40℃に加熱し、その中に、まずジアゾニウム水溶液Bを一気に滴下した。そのままの温度で10分間攪拌し、次いでジアゾニウム水溶液Aを1時間かけて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で1時間攪拌し、反応を完結させた。反応終了後、スラリーを90℃に加熱し、1時間攪拌した後に直径285mmのブフナー漏斗で濾過した。濾さいにイオン交換水25リットルを振りかけて洗浄し、乾燥、粉砕して顔料組成物Y 150gを得た。顔料組成物Yに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、5.0mol%であった。
実施例26 <顔料組成物Zの調製>
実施例25において、ジアゾ成分Bとして使用した一般式16で表される芳香族アミンA 5.0gを、一般式17で表される芳香族アミンB 4.60gに変更し、それ以外は実施例25と同様にして、顔料組成物Z 150gを得た。顔料組成物Zに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)および一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体Bであり、モノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、5.0mol%であった。
【0136】
実施例27 <顔料組成物aの調製>
ジアゾ成分として、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを水 475gに添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%−塩酸を 100g添加し、5℃以下を維持したまま1時間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム 26.6gを水 68.4gに加えて調製した水溶液を添加し、1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸 0.48gを加えて亜硝酸を消失させ、ジアゾニウム水溶液を調製した。その中に一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを添加、均一に攪拌して懸濁液とし、モノアゾ顔料誘導体Aを含有するジアゾニウム水溶液とした。
【0137】
一方、カップラー成分としてo−アセトアセトアニシジド 80.4gおよび25%−水酸化ナトリウム水溶液 156gを水 140g中に添加し、攪拌して完全に溶解させた。これを水 420gと80%−酢酸 78.0gを混合した水溶液中に注入し、カップラースラリーを調製した。
【0138】
上記で調製したカップラースラリーを40℃に加熱し、その中にモノアゾ顔料誘導体Aを含有するジアゾニウム水溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で1時間攪拌し、反応を完結させた。反応終了後、スラリーを90℃に加熱し、1時間攪拌した後に直径285mmのブフナー漏斗で濾過した。濾さいにイオン交換水25リットルを振りかけて洗浄し、乾燥、粉砕して顔料組成物a 150gを得た。顔料組成物aに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)およびモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、5.0mol%であった。
【0139】
実施例28 <顔料組成物bの調製>
実施例27において使用した一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体B 8.95gに変更し、それ以外は実施例27と同様にして、顔料組成物b 150gを得た。顔料組成物bに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)およびモノアゾ顔料誘導体Bであり、モノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、5.0mol%であった。
実施例29 <顔料組成物cの調製>
実施例27において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを4−クロロ−2−ニトロアニリン 65.5gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gを2’−クロロアセトアセトアニリド 82.1gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式25で表されるモノアゾ顔料誘導体L 11.4gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例27と同様にして、顔料組成物c 156gを得た。顔料組成物cに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 3および下記一般式25で表されるモノアゾ顔料誘導体Lであり、モノアゾ顔料誘導体Lの含有量は、5.0mol%であった。

【0140】
実施例30 <顔料組成物dの調製>
実施例27において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを4−クロロ−2−ニトロアニリン 65.5gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gをアセトアセトアニリド 68.7gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式26で表されるモノアゾ顔料誘導体M 8.18gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例27と同様にして、顔料組成物d 140gを得た。顔料組成物dに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 6および下記一般式26で表されるモノアゾ顔料誘導体Mであり、モノアゾ顔料誘導体Mの含有量は、5.0mol%であった。

【0141】
実施例31 <顔料組成物eの調製>
実施例27において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを2−アミノ安息香酸 52.1gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gを5−アセトアセタミド−2−ベンズイミダゾリノン 90.4gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式27で表されるモノアゾ顔料誘導体N 13.8gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例27と同様にして、顔料組成物e 153gを得た。顔料組成物eに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 151および下記一般式27で表されるモノアゾ顔料誘導体Nであり、モノアゾ顔料誘導体Nの含有量は、5.0mol%であった。

【0142】
実施例32 <顔料組成物fの調製>
実施例27において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gをアミノテレフタル酸ジメチル 79.4gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gを5−アセトアセタミド−2−ベンズイミダゾリノン 90.4gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式28で表されるモノアゾ顔料誘導体O 11.0gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例27と同様にして、顔料組成物f 177gを得た。顔料組成物fに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 175および下記一般式28で表されるモノアゾ顔料誘導体Oであり、モノアゾ顔料誘導体Oの含有量は、5.0mol%であった。

【0143】
実施例33 <顔料組成物gの調製>
ジアゾ成分として、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを水 475gに添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%−塩酸を100g添加し、5℃以下を維持したまま1時間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム 26.6gを水 68.4gに加えて調製した水溶液を添加し、1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸 0.48gを加えて亜硝酸を消失させ、ジアゾニウム水溶液を調製した。
【0144】
一方、カップラー成分としてo−アセトアセトアニシジド 80.4gおよび25%−水酸化ナトリウム水溶液 156gを水 140g中に添加、攪拌して完全に溶解し、カップラー水溶液を調製した。また、水 420gと80%−酢酸 78.0gおよび一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを混合し、モノアゾ顔料誘導体Aの懸濁液を調製した。その中に、上記で調製したカップラー水溶液を注入し、モノアゾ顔料誘導体Aを含有するカップラースラリーを調製した。
【0145】
上記で調製した、モノアゾ顔料誘導体Aを含有するカップラースラリーを40℃に加熱し、その中にジアゾニウム水溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で1時間攪拌し、反応を完結させた。反応終了後、スラリーを90℃に加熱し、1時間攪拌した後に直径285mmのブフナー漏斗で濾過した。濾さいにイオン交換水25リットルを振りかけて洗浄し、乾燥、粉砕して顔料組成物g 150gを得た。顔料組成物gに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)およびモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、5.0mol%であった。
【0146】
実施例34 <顔料組成物hの調製>
実施例33において使用した一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体B 8.95gに変更し、それ以外は実施例33と同様にして、顔料組成物h 150gを得た。顔料組成物hに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)およびモノアゾ顔料誘導体Bであり、モノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、5.0mol%であった。
実施例35 <顔料組成物iの調製>
実施例33において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを4−ニトロアニリン 52.4gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gをアセトアセトアニリド 68.8gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式29で表されるモノアゾ顔料誘導体P 8.12gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例33と同様にして、顔料組成物i 127gを得た。顔料組成物iに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 4および下記一般式29で表されるモノアゾ顔料誘導体Pであり、モノアゾ顔料誘導体Pの含有量は、5.0mol%であった。
【0147】


【0148】
実施例36 <顔料組成物jの調製>
実施例33において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを5−アミノイソフタル酸ジメチル 79.4gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gを5−アセトアセタミド−2−ベンズイミダゾリノン 90.5gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式30で表されるモノアゾ顔料誘導体Q 9.89gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例33と同様にして、顔料組成物j 176gを得た。顔料組成物jに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 120および下記一般式30で表されるモノアゾ顔料誘導体Qであり、モノアゾ顔料誘導体Qの含有量は、5.0mol%であった。

【0149】
実施例37 <顔料組成物kの調製>
実施例33において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを2−(トリフルオロメチル)アニリン 61.1gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gを5−アセトアセタミド−2−ベンズイミダゾリノン 90.5gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式31で表されるモノアゾ顔料誘導体R 12.7gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例33と同様にして、顔料組成物k 161gを得た。顔料組成物kに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 154および下記一般式31で表されるモノアゾ顔料誘導体Rであり、モノアゾ顔料誘導体Rの含有量は、5.0mol%であった。

【0150】
実施例38 <顔料組成物lの調製>
実施例33において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gをo−アニシジン 46.8gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gを5−アセトアセタミド−2−ベンズイミダゾリノン 90.5gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式32で表されるモノアゾ顔料誘導体S 10.4gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例33と同様にして、顔料組成物l 145gを得た。顔料組成物lに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 194および下記一般式32で表されるモノアゾ顔料誘導体Sであり、モノアゾ顔料誘導体Sの含有量は、5.0mol%であった。

【0151】
実施例39 <顔料組成物mの調製>
ジアゾ成分として、2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを水 475gに添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%−塩酸を 100g添加し、5℃以下を維持したまま1時間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム 26.6gを水 68.4gに加えて調製した水溶液を添加し、1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸 0.48gを加えて亜硝酸を消失させ、さらに水を添加して液量を1000gに調製し、ジアゾニウム水溶液を調製した。
【0152】
一方、カップラー成分としてo−アセトアセトアニシジド 80.4gおよび25%−水酸化ナトリウム水溶液 156gを水 140g中に添加、攪拌して完全に溶解し、さらに水を添加して液量を400gに調整し、カップラー水溶液を調製した。
【0153】
水 365gと80%−酢酸 64.0g、25%−水酸化ナトリウム水溶液 71.2gを均一に混合して反応槽水溶液を調製した。その中に一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを添加して均一に攪拌し、懸濁液とした。それを40℃に加熱し、その温度を維持したままジアゾニウム水溶液およびカップラー水溶液を同時に、それぞれ1時間かけて、反応槽のpHを6.0以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、40℃で1時間攪拌し、反応を完結させた。反応終了後、スラリーを90℃に加熱し、1時間攪拌した後に直径285mmのブフナー漏斗で濾過した。濾さいにイオン交換水25リットルを振りかけて洗浄し、乾燥、粉砕して顔料組成物m 151gを得た。顔料組成物mに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)およびモノアゾ顔料誘導体Aであり、モノアゾ顔料誘導体Aの含有量は、5.0mol%であった。
【0154】
実施例40 <顔料組成物nの調製>
実施例39において使用した一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、一般式10で表されるモノアゾ顔料誘導体B 8.95gに変更し、それ以外は実施例39と同様にして、顔料組成物n 150gを得た。顔料組成物nに含まれる成分はモノアゾ顔料A(C.I.Pigment Yellow 74)およびモノアゾ顔料誘導体Bであり、モノアゾ顔料誘導体Bの含有量は、5.0mol%であった。
実施例41 <顔料組成物oの調製>
実施例39において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを4−クロロ−2−ニトロアニリン 65.5gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gを2’,4’−ジメチルアセトアセトアニリド 79.6gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式33で表されるモノアゾ顔料誘導体T 9.33gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例39と同様にして、顔料組成物o 152gを得た。顔料組成物oに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 2および下記一般式33で表されるモノアゾ顔料誘導体Tであり、モノアゾ顔料誘導体Tの含有量は、5.0mol%であった。

【0155】
実施例42 <顔料組成物pの調製>
実施例39において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを2−ニトロアニリン 52.4gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gをアセトアセトアニリド 68.8gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式34で表されるモノアゾ顔料誘導体U 7.86gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例39と同様にして、顔料組成物p 128gを得た。顔料組成物pに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 5および下記一般式34で表されるモノアゾ顔料誘導体Uであり、モノアゾ顔料誘導体Uの含有量は、5.0mol%であった。

【0156】
実施例43 <顔料組成物qの調製>
実施例39において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを4−クロロ−2−ニトロアニリン 65.5gに、カップラー成分として使用したo−アセトアセトアニシジド 80.4gを4’−クロロ−2’−メチルアセトアセトアニリド 87.6gに、また、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式35で表されるモノアゾ顔料誘導体V 11.8gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例39と同様にして、顔料組成物q 162gを得た。顔料組成物qに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 98および下記一般式35で表されるモノアゾ顔料誘導体Vであり、モノアゾ顔料誘導体Vの含有量は、5.0mol%であった。

【0157】
実施例44 <顔料組成物rの調製>
実施例39において、ジアゾ成分として使用した2−メトキシ−4−ニトロアニリン 63.8gを4−メチル−2−ニトロアニリン 57.7gに、一般式9で表されるモノアゾ顔料誘導体A 9.37gを、下記一般式36で表されるモノアゾ顔料誘導体W 13.2gにそれぞれ変更し、それ以外は実施例39と同様にして、顔料組成物r 149gを得た。顔料組成物rに含まれる成分はC.I.Pigment Yellow 203および下記一般式36で表されるモノアゾ顔料誘導体Wであり、モノアゾ顔料誘導体Wの含有量は、5.0mol%であった。

【0158】
<各種モノアゾ顔料および各種顔料組成物の評価>
製造例1〜6および実施例1〜44で調製したモノアゾ顔料および顔料組成物について、以下の方法で平均一次粒子径と抽出水の比電導度、金属含有量を測定した。結果を表3にまとめた。
【0159】
(平均一次粒子径)
平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡によって撮影した顔料粒子径の写真から測定した。金属製の試料台に導電性両面テープを張り、顔料または顔料組成物を付着させ、スパッタリングによって試料表面に白金を蒸着させたものを試料として、走査型電子顕微鏡(日本電子データム株式会社製、JSM−6700F型走査型電子顕微鏡)で粒子を撮影し、同一の視野中に撮影された顔料の一次粒子100個につき、最大となる径を各々測定した。それらを平均した値を算出し、その値を平均一次粒子径とした。
(抽出水の比電導度)
各種モノアゾ顔料または顔料組成物 5gをエタノール 10gで湿らせ、さらにイオン交換水90gを添加してスラリーとした。マグネチックスターラーで攪拌しながら加熱し、沸騰した後5分間攪拌した。攪拌終了後、室温まで冷却し、スラリーの総量が105gになるようにイオン交換水を添加した。そのスラリーを均一に攪拌し、JIS P 3801で規定された5種Cの濾紙で濾過した。濾液を受ける容器を濾液ですすいだ後、濾液を満たし、電気伝導率計(東亜ディーケーケー株式会社製、CM−40V)で比電導度を測定した。
(金属含有量)
各種モノアゾ顔料または顔料組成物 約2gを硝酸 8ml中に添加し、マイクロ波試料前処理装置(マイルストーンゼネラル株式会社製、ETHOS1)により、表1に記載した温度プログラムで処理した。
【0160】
【表1】

【0161】
処理液を室温まで冷却した後、硝酸2mlを添加し、さらに表2に記した温度プログラムで処理した。
【0162】
【表2】

【0163】
処理液をJIS P 3801で規定された5種Cの濾紙で濾過し、濾液を50mlメスフラスコ中で定容して測定試料とした。
【0164】
測定試料をマルチICP発光分光分析装置(バリアン テクノロジーズ ジャパン リミテッド製、720−ES型)で測定し、各金属元素を定量した。
【0165】
【表3】

【0166】
<各種顔料分散体の調製>
(油性顔料分散体の調製)
実施例45〜68および比較例1〜3
各種顔料組成物または各種モノアゾ顔料 1000g、Disperbyk130(BYK Chemie社製、顔料分散剤) 325g、ジョンクリル586(BASFジャパン株式会社製、スチレン−アクリル樹脂) 250g、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 925gを混合し、均一になるまでハイスピードミキサーで攪拌した。それを横型湿式分散機(DYNO−MILL TYPE KDL−PILOT)で2時間分散し、その後エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 2500gを添加してさらに1時間分散し、油性顔料分散体A〜Zおよびaを得た。各油性顔料分散体に使用した顔料組成物またはモノアゾ顔料を表4にまとめた。
比較例4
各種顔料組成物または各種モノアゾ顔料をHansa Brilliant Yellow 5GX(Clariant社製、C.I.Pigment Yellow 74)に変更し、それ以外は実施例45〜68および比較例1〜3と同様にして油性顔料分散体bを得た。
(水性顔料分散体の調製)
実施例69〜88および比較例5〜7
各種顔料組成物または各種モノアゾ顔料 1000g、ジョンクリルHPD−96J(BASF社製、スチレン−アクリル樹脂、有効成分 34.0%) 735g、サーフィノール104E(エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社製、消泡剤、有効成分 50%) 50g、レバナックスBX−150(昌栄化学株式会社製、防腐剤) 50g、プロピレングリコール 250g、イオン交換水 415gを混合し、均一になるまでハイスピードミキサーで攪拌した。それを横型湿式分散機(DYNO−MILL TYPE KDL−PILOT)で2時間分散し、その後イオン交換水 2500gを添加してさらに1時間分散し、水性顔料分散体A〜Wを得た。各水性顔料分散体に使用した顔料組成物またはモノアゾ顔料を表5にまとめた。
比較例8
各種顔料組成物または各種モノアゾ顔料をHansa Brilliant Yellow 5GX(Clariant社製、C.I.Pigment Yellow 74)に変更し、実施例69〜88および比較例5〜7と同様にして油性顔料分散体Xを得た。
<各種顔料分散体の評価>
各分散体について、以下の方法で分散粒径、粘度、結晶安定性および保存安定性を評価した。結果を表4および表5にまとめた。
(分散粒径)
分散粒径は、マイクロトラックUPA−150(日機装株式会社製)で測定したD50値により評価した。
(粘度)
粘度はB型粘度計VISCOMETER(東機産業株式会社製)により、60rpmで測定した。
(結晶安定性)
結晶安定性の指標として、各顔料分散体中における顔料または顔料組成物粒子の写真を透過型電子顕微鏡により撮影した。
【0167】
支持膜を張ったメッシュ上に各種顔料分散体を滴下、乾燥したものを試料として、透過型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、H−7650型透過型電子顕微鏡)で粒子を撮影し、同一の視野中に撮影された顔料の一次粒子100個につき、最大となる径を各々測定した。それらを平均した値を算出し、その値を平均一次粒子径とした。
【0168】
各分散体をねじ口瓶中に密閉し、70℃で4週間保存した後に同様の測定を行った。保存前後の平均一次粒子径の変化により、結晶安定性を評価した。保存の前後で平均一次粒子径の変化率が0〜15%のものを○、15%を超え30%以下のものを△、30%を超えるものを×と判定した。
(保存安定性)
各分散体をねじ口瓶中に密閉し、70℃で4週間保存した後に分散粒径および粘度を測定した。保存前後における分散粒径および粘度の変化と、保存後の沈降物の有無により、保存安定性を評価した。
【0169】
【表4】

【0170】
表4に示したように、本発明の油性顔料分散体は、その他のものよりも低粘度かつ分散粒径の小さい分散体を与え、良好な分散性を示した。これらの分散体は保存安定性、結晶安定性のいずれも良好であった。
【0171】
【表5】

【0172】
表5に示したように、本発明の水性顔料分散体は、その他のものよりも低粘度かつ分散粒径の小さい分散体を与え、良好な分散性を示した。これらの分散体は保存安定性、結晶安定性のいずれも良好であった。
<各種インクジェットインキの調製>
(油性インクジェットインキの調製)
実施例89〜112および比較例9〜12
実施例45〜68および比較例1〜4で調製した油性顔料分散体 25.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.0g、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 55.0g、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート 10.0gを混合し、1時間攪拌した後、孔径1.0μmのPTFE製メンブランフィルターで濾過して油性インクジェットインキA〜Zおよびa〜bを得た。
(水性インクジェットインキの調製)
実施例113〜132および比較例13〜16
実施例69〜88および比較例5〜8で調製した水性顔料分散体 15.0g、アクリル樹脂エマルション W−215(日本ポリマー工業株式会社製、固形分30%) 1.5g、エチレングリコール 15.0g、イオン交換水 68.5gを混合し、1時間攪拌した後、孔径1.0μmのPTFE製メンブランフィルターで濾過して水性インクジェットインキA〜Xを得た。
<各種インクジェットインキの評価>
(油性インクジェットインキの評価)
各油性インクジェットインキの、プリンターによる吐出性と、得られた印字物の着色力を評価した。結果を表6にまとめた。
【0173】
吐出性の評価においては、各油性インクジェットインキをインクジェットプリンター IP−6500(株式会社セイコーアイ・インフォテック製)のカートリッジに充填し、光沢塩ビシート MD5(メタマーク社製)に印字した。印字物におけるドット抜け(印字されなかった部分)の有無を目視で観察し、吐出性の指標とした。ドット抜けを発生したプリンターヘッドのノズルが、全ノズル中の0%であった場合○、0〜5%の場合△、5%を上回った場合×と判定した。
【0174】
着色力の評価においては、各印字物について、ドット抜けを発生していない部分の反射濃度を反射濃度計 D19C(Gretag Machbeth社製)で測定した。比較例12で調製した油性インクジェットインキbを基準とし、それと同等であったものを△、それより反射濃度が高いものを○、低いものを×と判定した。
(水性インクジェットインキの評価)
各水性インクジェットインキの、プリンターによる吐出性と、得られた印字物の着色力を評価した。結果を表7にまとめた。
【0175】
吐出性の評価においては、各水性インクジェットインキをインクジェットプリンター HG−5130(セイコーエプソン株式会社製)のカートリッジに充填し、写真用紙・光沢 ゴールド (キヤノン株式会社製)に印字した。印字物におけるドット抜け(印字されなかった部分)の有無を目視で観察し、吐出性の指標とした。ドット抜けを発生したプリンターヘッドのノズルが、全ノズル中の0%であった場合○、0〜5%の場合△、5%を上回った場合×と判定した。
【0176】
着色力の評価においては、各印字物について、ドット抜けを発生していない部分の反射濃度を、反射濃度計 D19C(Gretag Machbeth社製)で測定した。比較例16で調製した水性インクジェットインキXを基準とし、それと同等であったものを△、それより反射濃度が高いものを○、低いものを×と判定した。
【0177】
【表6】

【0178】
表6に示したように、本発明の油性インクジェットインキは、その他のものよりも吐出性および着色力が良好であった。
【0179】
【表7】

【0180】
表7に示したように、本発明の油性インクジェットインキは、その他のものよりも吐出性および着色力が良好であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で表される化合物および下記一般式2で表される化合物を含有する顔料組成物。
【化1】


(式中、m、nおよびpは1〜3の整数を表す。
は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシル基、アセチルアミノ基、カルボキシル基、スルホン基を表す(二つのXが一体となって、更なる窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含み、置換されていてもよい複素環構造を形成してもよい。)。
は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホン基、炭素数1〜5のアルコキシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1〜5のエステル、カルボキシル基、トリフルオロメチル基を表す(二つのXが一体となって、更なる窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含み、置換されていてもよい複素環構造を形成してもよい。)。
はXで表される基または下記一般式3または下記一般式4で表される基のいずれかを表す。
ただし、Xの少なくとも一つは、下記一般式3または下記一般式4で表される基のいずれかである。)
【化2】



(式中、Xは、−SONR’−、−CONR’−のいずれかを表す。
は、XとXを結ぶ直接結合、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリーレン基のいずれかを表す(これらの基は、−NR’−、−O−、−SO−または−CO−から選ばれる2価の連結基で相互に結合されていてもよい。)。
は、水素原子、−OR、−NR、−CONR、−SONR、−COORのいずれかを表す。
ただし、R’は、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基のいずれかを表す。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基のいずれかを表す。RとRは、一体となって、更なる窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでもよく、置換されていてもよい複素環構造を形成してもよい。
R’またはRまたはRとXが一体となって、更なる窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでもよく、置換されていてもよい複素環構造を形成してもよい。)
【化3】




(式中、Xは、−NR’−または−O−を表す。
およびXは、それぞれ独立に、下記一般式5で表される基、−OR’、−NR’、ハロゲン原子のいずれかを表す。
ただし、R’は一般式3で定義されたものを表す。)
【化4】

(式中、X、X、Xは、一般式3および一般式4で定義されたものを表す。)
【請求項2】
一般式2で表される化合物の含有量が、一般式1で表される化合物のモル数と一般式2で表される化合物のモル数を合計した量の0.1〜40モル%である、請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項3】
各種芳香族アミンをジアゾ化した後に各種アセトアセトアニリド化合物とカップリングする顔料の製造方法において、芳香族アミンとして下記一般式6で表される化合物および下記一般式7で表される化合物の混合物を使用し、下記一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物と反応させて得られる、請求項1または2に記載の顔料組成物。
【化5】

(式中、m、n、p、X、X、Xは、一般式1および一般式2で定義されたものを表す。)
【請求項4】
各種芳香族アミンをジアゾ化した後に各種アセトアセトアニリド化合物とカップリングする顔料の製造法において、一般式6で表される芳香族アミンのジアゾ化物と一般式2で表される化合物を混合した後に、一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物と反応させて得られる、請求項1または2に記載の顔料組成物。
【請求項5】
各種芳香族アミンをジアゾ化した後に各種アセトアセトアニリド化合物とカップリングする顔料の製造法において、一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物を一般式2で表される化合物と混合した後に、一般式6で表される芳香族アミンのジアゾ化物と反応させて得られる、請求項1または2に記載の顔料組成物。
【請求項6】
各種芳香族アミンをジアゾ化した後に各種アセトアセトアニリド化合物とカップリングする顔料の製造法において、一般式2で表される化合物を含有するpH3〜6の緩衝剤水溶液中に、一般式6で表される芳香族アミンのジアゾ化物と一般式8で表されるアセトアセトアニリド化合物の塩基性水溶液を、同時に一定の流量で添加して得られる、請求項1または2に記載の顔料組成物。
【請求項7】
平均一次粒子径が200nm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料組成物。
【請求項8】
イオン交換水で顔料組成物を煮沸抽出した水溶液の比電導度が200μS/cm未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の顔料組成物。
【請求項9】
カルシウム、マグネシウム、および鉄の含有量の合計が300ppm未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の顔料組成物。
【請求項10】
カルシウム、マグネシウム、および鉄の含有量が、それぞれ150ppm未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の顔料組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の顔料組成物を含有する顔料分散体。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の顔料組成物を含有するインクジェットインキ。




【公開番号】特開2010−260997(P2010−260997A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114714(P2009−114714)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】