説明

顔画像登録装置および方法

【課題】本人の顔画像が複数あったとき、認証用の顔画像として最も適しているものを選択することが困難であった。
【解決手段】複数の本人の顔画像を入力する画像入力部と、複数の他人顔を保持する他人顔保持部と、前記本人の顔画像と前記他人顔保持部に保持された他人顔とを照合して、前記本人の顔画像の誤報特性を算出する誤報特性算出部と、前記複数の本人の顔画像間で照合を行い、前記本人の顔画像の正報特性を算出する正報特性算出部と、前記本人の顔画像の誤報特性および前記本人の顔画像の正報特性を用いて、前記複数の本人の顔画像の中から登録顔画像を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔認識装置の設置環境が変わった場合でも、照合率の高い登録顔を選択できる顔画像登録装置および方法等に適用される技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顔認識装置を用いて顔認証を行う際には、まず、認証したい人物の顔画像を本人顔として顔認証装置に登録する。次に、新たに取得した顔画像が登録された顔画像の中のどの人物の顔であるかを調べて、本人を特定する。
この際、新たな人物を認識しようとする場合には、新たな人物を登録画像として登録する。図27は、従来の顔認証装置のブロック構成図である。図27において、撮像手段9によって撮影した画像を表示手段11に表示、入力手段12によって登録すべき画像を選択して登録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−86625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の発明では、同一人物の複数の顔があったとき、どの顔画像が照合に適した顔画像であるかを判断することは困難であった。照合に適した顔画像とは、該当人物等の顔画像を顔データベースに登録した後に、該当人物の新たな顔画像を入力して、顔データベースに登録されている顔画像と照合した場合、他人と間違われないという誤報特性と、本人と認識されるという正報特性が良いものである。
しかし、顔認証装置の特性上、同一人物の顔画像が複数あった場合、どの顔画像が顔照合に適しているか否かを判断することは困難である。そこで本発明はこれらの問題を解決し、同一人物の顔画像が複数あった場合、顔認証に適した顔画像を選択することの出来る、顔画像登録装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の顔認証装置は、複数の本人の顔画像を入力する画像入力部と、複数の他人顔を保持する他人顔保持部と、前記本人の顔画像と前記他人顔保持部に保持された他人顔とを照合して、前記本人の顔画像の誤報特性を算出する誤報特性算出部と、前記複数の本人の顔画像間で照合を行い、前記本人の顔画像の正報特性を算出する正報特性算出部と、前記本人の顔画像の誤報特性および前記本人の顔画像の正報特性を用いて、前記複数の本人の顔画像の中から登録顔画像を選択する登録顔選択部とを有している。
【0006】
この構成により、複数の本人の顔画像の中から、誤報率を減らし、正報率を高くすることの出来る登録画像を選択することが出来る。
【0007】
また、本発明の顔認証装置は、前記誤報特性算出部は、前記本人の顔画像と前記他人顔保持部に保持された他人顔との照合結果を誤報率として算出し、前記正報特性算出部は、前記本人の顔画像の正報特性を正報率として算出し、前記登録顔画像選択部は、前記複数の本人の顔画像の中から前記本人の顔画像の正報率が所定の閾値のときの、前記本人の顔画像の正報率と前記本人の顔画像の誤報率の差を用いて前記登録顔画像を選択する構成を有している。
【0008】
この構成により、正報率が所定の閾値において、誤報率を減らし、正報率を高くすることの出来る登録画像を選択することが出来る。
【0009】
さらに、本発明の顔認証装置は、前記誤報特性算出部は、前記本人の顔画像と前記他人顔保持部に保持された他人顔との照合結果を誤報率として算出し、前記正報特性算出部は、前記本人の顔画像の正報特性を正報率として算出し、前記登録顔画像選択部は、前記複数の本人の顔画像の中から前記本人の顔画像の誤報率が所定の閾値のときの、前記本人の顔画像の正報率と前記本人の顔画像の誤報率の差を用いて前記登録顔画像を選択する構成を有している。
【0010】
この構成により、誤報率が所定の閾値において、誤報率を減らし、正報率を高くすることの出来る登録画像を選択することが出来る。
【0011】
さらに、本発明の顔認証装置は、前記画像入力部から入力された前記本人の顔画像の顔向きを算出する顔向き算出部を有し、前記他人顔保持部は顔向きごとに他人顔を保持し、前記誤報特性算出部、前記正報特性算出部は、前記顔向き算出部が算出した顔向き毎に前記誤報特性および前記正報特性を算出し、前記登録顔選択部は、前記顔向き算出部が算出した顔向き毎に前記登録画像を選択する構成を有している。
【0012】
この構成により、顔向き画像毎に登録画像を選択することが出来る。
【0013】
さらに、本発明の顔認証装置は、前記画像入力部から前記本人の顔画像を入力する際の前記画像入力部に対する前記本人の撮影位置を取得する位置取得手段を有し、前記他人顔保持部は撮影位置ごとに他人顔を保持し、前記誤報特性算出部、前記正報特性算出部は、前記撮影位置毎に前記誤報特性および前記正報特性を算出し、前記登録顔選択部は、前記撮影位置毎に前記登録画像を選択する構成を有している。
【0014】
この構成により、画像の撮影位置毎に登録画像を選択することが出来る。
【0015】
さらに、本発明の顔認証装置は、前記他人顔保持部に保持された他人顔を更新する他人顔更新部を有し、前記誤報特性算出部は前記他人顔更新部が更新した直近の所定の他人顔を用いて前記誤報特性を算出することを特徴とする構成を有している。
【0016】
この構成により、直近の他人顔を用いて誤報特性を算出することが出来るので、撮影環境が変わった場合でも精度のよい顔認証を行うことが出来る。
【0017】
さらに、本発明の顔認証装置は、画像を入力する画像入力部と、登録画像と、前記登録画像の照合閾値と、前記登録画像の類似度と誤報率の対応関係を表す誤報率特性を保持する登録顔保持部と、前記画像入力部から入力した画像と前記登録顔画像保持部に保持した顔画像を照合して入力画像の類似度を求め、前記入力画像の類似度と前記照合閾値を比較して個人を判定する個人判定部とを有し、前記画像入力部から入力した画像が、前記登録画像保持部に保持された複数の登録画像と同一人物の顔と判定されたとき、前記複数の登録画像に対して、前記誤報率特性から前記入力画像の類似度に対する誤報率を算出し、前記算出した誤報率を比較して前記画像入力部から入力した画像の顔と前記複数の登録画像の顔が同一人物であるか否かを判定する構成を有している。
【0018】
この構成により、照合閾値を超える顔画像が複数あったときでも、誤報率特性から求めた類似度に対する誤報率により、個人を特定することが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、誤報特性と正報特性を高くすることが出来る登録画像を選択することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態の構成を示すブロック構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態の動作を示す説明図
【図3】本発明の第1の実施の形態の誤報率特性を示す説明図
【図4】本発明の第1の実施の形態の正報率特性を示す説明図
【図5】本発明の第1の実施の形態の登録候補Aの特性を示す説明図
【図6】本発明の第1の実施の形態の登録候補Bの特性を示す説明図
【図7】本発明の第1の実施の形態の登録候補Cの特性を示す説明図
【図8】本発明の第1の実施の形態の処理の流れを示すフロー図
【図9】本発明の第2の実施の形態の構成を示すブロック構成図
【図10】本発明の第2の実施の形態の顔向きの種類を示す説明図
【図11】本発明の第2の実施の形態の登録顔候補を示す説明図
【図12】本発明の第2の実施の形態の登録顔の登録方法を示す説明図
【図13】本発明の第2の実施の形態の手法1の動作を示す説明図
【図14】本発明の第2の実施の形態の手法2の動作を示す説明図
【図15】本発明の第2の実施の形態の処理の流れを示す全体フロー図
【図16】本発明の第2の実施の形態の処理の流れを示す詳細フロー図
【図17】本発明の第3の実施の形態の構成を示すブロック構成図
【図18】本発明の第3の実施の形態の動作を示す説明図
【図19】本発明の第3の実施の形態の位置の区分を示す説明図
【図20】本発明の第3の実施の形態の処理の流れを示す全体フロー図
【図21】本発明の第3の実施の形態の処理の流れを示す詳細フロー図
【図22】本発明の第4の実施の形態の構成を示すブロック構成図
【図23】本発明の第5の実施の形態の構成を示すブロック構成図
【図24】本発明の第5の実施の形態の動作を示す説明図
【図25】本発明の第5の実施の形態の照合閾値の使い方を示す説明図
【図26】本発明の第5の実施の形態の処理の流れを示すフロー図
【図27】従来の顔照合装置のブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
以下、本願に係わる第1の実施の形態について、図面により詳細に説明する。図1は本発明の顔認証装置の実施の形態1を示すブロック図である。
図1において、顔認証装置1では、画像入力部2によって撮影された人物の画像から顔画像切出部3によって顔画像が切り出され、誤報特性算出部4と正報特性算出部6に送られる。
【0022】
誤報特性算出部4では、他人顔保持部5を参照しながら顔照合部7を用いて誤報特性が算出される。また、正報特性算出部6では、顔画像切出部3で切り出された顔画像から顔照合部7を用いて正報特性が算出される。
最後に、誤報特性算出部4で算出された誤報特性と、正報特性算出部6で算出された正報特性を用いて、登録顔選択部8が、顔画像切出部3で切り出した顔画像の中から、登録顔画像に適した顔画像を選択する。
【0023】
次に、本願の実施の形態1について詳細に説明する。図2は、本願の実施の形態1の動作を示した説明図である。図2において、コンビニなどの入口21から、本人22が入店している様子を示している。本人22は軌跡25にしたがって進んでいく。このとき、画
像撮影部2よって本人の画像23が複数枚撮影され、顔画像切出部3によって、本人の顔画像24が切り出される。
【0024】
図1において、誤報特性算出部4は、顔画像切出部3の切り出した本人の顔画像のそれぞれに対して、他人顔保持部5との間で顔照合部7を用いて照合を行う。照合部7は、他人顔保持部に保持された他人顔と本人の顔画像との間の類似度を計算する。
このとき、閾値を決めておき、類似度が閾値より小さいときは他人と判断し、類似度が閾値より大きなときは本人と判断する。
【0025】
このため、閾値を大きな値にしたときは、本人と判断されることが少ないので、誤報率は下がるが、閾値を小さな値にしたときは、本人と判断されることが多くなり、誤報率が上がる。
【0026】
図3は、顔画像切出部3によって切り出された本人の顔画像をそれぞれ登録顔候補A、B、Cとしたときの、閾値を変えたときの誤報率を示している。図3では、登録顔候補Aは閾値が小さいときは他の登録顔候補と比較して誤報率が低いが、閾値を上げても誤報率はそれほど下がらないことを示している。また、登録顔候補Bでは、閾値が小さいときは誤報率が高いが、閾値を少し上げると、急激に誤報率が下がることを示している。登録顔候補Cはその中間である。
【0027】
次に、図1において、顔画像切出部3によって切り出された本人の顔画像は、正報特性算出部6に入力される。正報特性算出部6では、顔照合部7を用いて、本人の顔画像間での正報率を算出する。
【0028】
正報率を求める際には、最初に、本人の顔画像の一つを他の全ての本人の顔画像と照合して類似度を計算する。計算される類似度の個数は、本人の顔画像の総数から1を引いた値である。そこで、閾値を設定しておき、類似度が設定した閾値以上になる他の本人の顔画像の個数を、計算された類似度の総数で割った値を正報率とする。閾値を変えると、類似度が閾値を上回る他の本人の顔画像の数が変わるので、各本人の顔画像の一つに対する正報率は、閾値に依存して変動する。
【0029】
入力された本人の顔画像の一つの正報率は、閾値を大きくすると、他の本人の顔画像との類似度のうち閾値を超えるものが少なくなるので、正報率は下がり、一方、閾値を小さくすると、他の本人との顔画像との類似度の閾値を超えるものが多くなるので、正報率は上がる。
【0030】
図4は、先に述べた登録顔候補A、B、Cについて、閾値を変えたときの正報率の変化を示している。図4では、登録顔候補Aは、閾値が小さいとき正報率が高く、閾値を上げると徐々に正報率が下がることを示している。これは、登録顔候補Aは、他の本人の顔画像との類似度を求めると、類似度が小さな物から類似度が大きな物まで、均等にあることを示している。
【0031】
また、登録顔候補Bは、閾値がある値になると急激に正報率が下がることを示している。これは、類似度の大きな他の本人の顔画像が少ないことを示している。
さらに、登録顔候補Cは、他の登録顔候補と比較して正報率が低く、閾値を変えたとき、不安定に正報率が変化することを示している。これは、類似度が小さな他の本人の顔画像や、類似度の大きな他の本人の顔画像が不均等になっていることを示している。
【0032】
図5、図6、図7は、登録候補画像A、B、Cについて、閾値を変えたときの正報率と誤報率の変化を同じグラフに書いたものである。
【0033】
図5において正報率が95%になるときの閾値を求め、さらにこの閾値のときの誤報率をもとめ、その差を取ると、正報率と誤報率の差(正報率基準)53が得られる。同じように、図6、図7において、正報率と誤報率の差(正報率基準)63と、正報率と誤報率の差(正報率基準)73を求めることができる。正報率と誤報率の差(正報率基準)53、正報率と誤報率の差(正報率基準)63、正報率と誤報率の差(正報率基準)73の中では、正報率と誤報率の差(正報率基準)53が一番大きい。
【0034】
正報率と誤報率の差が大きい登録画像のほうが、この登録画像と新たに入力した本人の顔と照合した場合、本人と正しく判定する正報率が高くなり、他人を本人と判定する誤報率が低くなると考えられるので、登録画像としては登録画像Aが最も適している。
【0035】
同様に、図5において、誤報率51が1%になるときの閾値をもとめ、さらにこの閾値のときの正報率52を求め、その差を取ると、正報率と誤報率の差(誤報率基準)54を求めることができる。
【0036】
正報率と誤報率の差(正報率基準)と同様に、正報率と誤報率の差(誤報率基準)54、正報率と誤報率の差(誤報率基準)64、正報率と誤報率の差(誤報率基準)74の中で、その差が最も大きな物が登録画像としては適していると考えられるので、誤報率1%を基準としたときは、登録候補画像Bが最も適している。
登録する顔画像としては、正報率を基準にして決めてもよいし、誤報率を基準にして決めてもよい。
【0037】
図8は、実施の形態1の処理の流れを示したフローチャートである。画像入力部2から本人の画像が入力されるが(S81)、通常は図2のように、本人22を撮影し始めてから一定の時間時間追跡し、順次画像23を入力していく。
【0038】
追跡が終了すると、画像入力の終了(S82)と判断し、各画像から顔画像を切り出す(S83)。次に、切り出した各顔画像に対して誤報特性を算出する(S84)。次に正報特性を算出する(S85)。誤報特性および正報特性を各登録顔候補について算出した後、誤報特性と正報特性から登録画像を選択する(S86)。
【0039】
(実施の形態2)
次に、本願の発明に係わる第2の実施の形態について、図9〜図14を用いて説明する。図9は、第2の実施の形態を示すブロック構成図である。実施の形態2は実施の形態1とほぼ同じで構成で、画像入力部2から入力された画像の顔向きを算出する顔向き算出部81を有し、さらに顔画像切出部3によって切り出された顔画像を顔向毎に保持する顔向画像保持部82を有している。さらに、他人の顔画像を顔向き毎に保持している顔向毎他人顔保持部83を有する点が異なっている。
【0040】
図10は、顔向きの分け方について説明した説明図である。顔向き検出は、AAM(Active Appearance Model)などのアルゴリズムを用いることによって得られるが、これによって得られた顔向きの角度により、例えば上下方向が20度以上で左右方向が−20度未満のときは右上30度の顔画像として分類する。顔の向きは全部で9種類に分けられるが、さらに多くの種類に分けたり、少ない種類に分けることも可能である。
【0041】
図11において、101は、画像入力部2によって入力された画像が、顔向き算出部81によって顔向きが算出され、顔画像切出部3によって切り出された登録顔候補を示している。登録候補の人物が、移動しながら正面や右方向を見ていくため、10枚の候補画像がA〜Jが得られている。そして、これらの顔画像は、顔向画像保持部82に顔向き毎に
保持されている。
【0042】
顔向画像保持部82に顔向毎に保持された後は、顔向毎に実施の形態1と同じ処理を実行する。例えば正面顔に関しては、A,B、Iの3枚を登録顔画像候補とし、顔向毎他人顔保持部83には、他人の顔画像が顔向き毎に保持されているので、顔向き毎に正報率および誤報率を算出し、登録顔に最も適したものを選択する。
【0043】
次に、本人顔の登録画像のうち、画像入力部2から入力されなかった角度に対応する
登録画像の選択方法について、手法1と手法2について述べる。
【0044】
最初に、図12および図13を用いて、手法1について説明する。図11に示す場合では、上30度、右下30度、下30度および左下30度の画像は画像入力部2からは得られていない。
【0045】
手法1では、顔向画像保持部82に保持されているすべての本人の顔について、顔向毎他人顔保持部83に保持されている画像の中で、該当する顔向きの画像を対象として誤報率を算出する。次に、本人の顔画像の一つを他の全ての本人の顔画像と照合して類似度を計算した後、顔向きにあわせた補正係数をこの類似度にかけて補正する。
補正係数は、本人の顔画像の一つの顔向き、他の本人の顔画像の顔向きおよび求めようとする登録顔の顔向きに決定され、あらかじめ多数の人物の様々な顔向きの画像同士の類似度を求めて計算しておく。
【0046】
補正係数について図13を用いてさらに説明する。図13は、補正係数の保持されたデータ構造を示している。図13において、手前の面の横軸は本人の顔画像の一つ(登録顔候補)の顔向きで、右上30度から左下30度まで、9分割されている。また、縦軸は、他の本人の顔画像(計算用本人顔)の顔向きで、同じように、右上30度から左下30度まで、9段階に分割されている。さらに、奥行方向は、求めようとする顔画像の顔向きで、同じく右上30度から左下30度まで、9段階に分割されている。
登録顔候補の顔向き、計算用本人顔の顔向きおよび求めようとする顔画像の顔向きが決まると、補正係数が決まる。補正係数はあらかじめ、多くの顔向き画像を用いて学習しておく。
【0047】
登録顔候補A〜Jについて互い同士の類似度を求め、登録顔候補、計算用本人顔および求めようとする登録顔の顔向きから選んだ補正係数かけて、類似度を補正する。
本人顔間での類似度が求まれば、本人顔毎の正報特性を求めることができるので、実施の形態1と同様にして登録顔候補を選ぶことができる。
【0048】
まず最初に、登録顔候補Aに対する正報特性を計算するときは、計算用本人顔例えばBとの間の類似度を求める。求めようとする顔画像の顔向きが上30度とすると、登録顔候補Aの顔向きが正面、計算用本人顔の顔向きが正面であり、求めようとする登録顔の顔向きを上30度なので、図13のように、登録顔候補が正面、計算用本人顔が正面、求めようとする顔向きが上30度に対応する補正係数Fを選ぶことができる。
【0049】
補正係数を求めたのち、登録顔候補Aと計算用本人顔Bとの間で求めた類似度に、補正係数Fをかけて、登録顔候補の補正後の類似度とする。
以上の処理を、登録顔候補Aについて、他の全ての計算用本人顔C〜Jについて計算することにより、登録顔候補Aについての正報特性を求めることが出来る。同様に、他の登録顔候補についても、正報特性を計算することが出来る。そして、正報特性と誤報特性の差が一番大きい登録顔候補を、該当する角度の登録画像として登録する。
【0050】
次に、手法2として、正報特性を算出するとき、照合相手となる他の全ての本人の顔画像に対して、AAMで推定した3次元モデルを使って、該当する顔向きの本人の顔画像を合成し、この顔を使って類似度を計算する方法について述べる。この場合は類似度の補正は不要である。
【0051】
手法1と同じように、図11で、上30度の本人顔の登録画像を選ぶ場合、上30度の顔画像は画像入力部2からは入力されていないので、他の角度の顔画像A〜Jから選ぶことになる。
まず最初に、手法1と同じく、図14に示すように、本人の顔画像A〜Jのそれぞれに対して、顔向毎他人顔保持部83に保持された上30度の画像を用いて誤報率を求める。
【0052】
次に、正報率を求めようとする本人の顔画像以外の顔画像(手法1と同じく計算用本人顔と呼ぶ)を、正報率を求めたい角度に合成し、合成した顔画像と、登録顔候補との間で類似度を求める。
図14において、正報率を計算する本人の顔候補をAとし、正報率を求めたい角度を上30度とすると、計算用本人顔B〜Jを、上30度に合成する。そして、Aと合成後の顔画像との間で類似度を求めることにより、Aの正報特性を求めることが出来る。
【0053】
同様の処理を登録顔候補B〜Jについても計算する。すなわち、登録顔候補Bの正報率を求めるときは、計算用本人顔として、A、C〜Jまでの顔画像を上30度に合成し、合成していない登録顔候補Bと、合成後の計算用本人顔A,C〜Jとの類似度を求めることにより、登録顔候補Bの正報率を計算する。C以下についても同様の処理を行って、それぞれの画像の正報率を求める。
【0054】
図15は第2の実施の形態の処理の流れを示したフローチャートである。図15において画像入力の終了(S82)までは、実施の形態1と同じである。
本人顔を一定の時間撮影したら、各画像の顔位置を求めて顔向きを算出する(S131)。そして、顔画像を切り出す(S83)。次に、顔向画像保持部82に顔向き毎に顔画像を保持する(S132)。さらに、顔向毎の登録顔選択(S133)を行う。
【0055】
図16は、顔向毎の登録顔候補選択(S133)の処理の流れを示している。登録顔の選択は、図10に示した、右上30度から左下30度までの9つの角度すべてについて行う。全ての顔向きについて登録画像が選択されたら処理は終了する(S141、YES)。全ての顔向きについての登録顔の選択が終わっていなかったら、選択されていない顔向きを一つ選択する(S142)。
【0056】
次に、選択した顔向き(該当する顔向き)について本人顔があるか否かを調べる(143)。図11の例では、右上30度、左上30度、右30度、正面、左30度には、本人の顔があるが、上30度などの他の顔向きについては、本人の顔画像がないことになる。
本人の顔がある場合(S143、YES)は、該当する顔向きについて誤報特性を算出する(S144)。この際、図9の顔向毎他人顔保持部83には、他人の顔が顔向毎に保持されているので、該当する顔向きの他人の顔画像を用いて誤報特性を算出する。
【0057】
次に、該当する顔向きについて正報特性を算出する(S145)。そして、該当する顔向きについて登録画像を選択する(S146)。なお、該当する顔向きに対して本人の顔画像が1枚のときはその顔画像を、2枚のときは、誤報特性の低い方を該当する顔向きについての登録画像とする。
【0058】
該当する顔向きについて本人の顔画像がない場合(S143、NO)は、顔向きに関係なく全ての本人の顔画像について、図12および図13で説明した手法1、または、図1
4で説明した手法2によって正報特性を算出する。(S147)。
そして、正報特性と誤報特性の差が最も大きい画像を、登録顔画像として選択する(S148)。
【0059】
(実施の形態3)
次に、図17〜図19を用いて、本願の発明に係わる実施の形態3について述べる。図17は本発明の実施の形態3のブロック構成図である。実施の形態2と比較して、顔向き算出部81に代えて位置算出部121を有し、顔向画像保持部82に代えて位置毎画像保持部122を有している。また、誤報特性算出部4に代えて顔位置毎誤報特性算出部123、正報特性算出部6に代えて顔位置毎正報特性算出部124を有している。さらに、顔向毎他人顔保持部83に代えて、位置毎他人顔保持部125を有している。
【0060】
図18は、実施の形態3の動作を説明した説明図である。画像入力部2は、人物133が入口131やフロア134にいるところを撮影する。このとき、照明132や、画像入力部2と人物との位置関係によって、様々な条件の画像が得られる。
【0061】
図19は、画像入力部2と人物や照明132との位置関係によってどのような条件の画像が入力されるかを示している。図19に示すように、
A:ダウンライト
B:顔サイズ小
C:ノーマル
D:顔が下向き
E:顔が横向きになりやすい
といった画像が得られる。
【0062】
図17に戻り、実施の形態3では、画像入力部2と人物との位置関係ごとに画像を保持し、正報特性および誤報特性を算出して、位置毎に登録画像を決定する。
【0063】
図20および図21は、実施の形態3の処理の流れを示すフローチャートである。図20および図21においては、実施の形態2のフローチャートである図15及び図16と比較して、顔向きを位置に代えている点が異なり他の点については同じである。
【0064】
なお、実施の形態3で、本人の顔が撮影されていない撮影位置に対する登録顔を選択する場合は、変換係数を用いる方法で行う。すなわち、図13の立体は、縦横奥行きが5×5×5の立体とみなし、右上30度はB:ダウンライト、上30度はB:顔サイズ小、とみなして処理を行う。
【0065】
(実施の形態4)
次に、図22を用いて本願の発明に係わる実施の形態4について述べる。図22において、顔認証装置1は、実施の形態1と同じであるが、他人顔保持部5に保持された他人顔のデータを更新するために、他人顔更新部151および画像蓄積部152を有している。
【0066】
他人顔更新部151は、画像切出部3あるいは画像蓄積部152から入力された他人の顔画像によって他人顔保持部に保持された他人の顔を更新する。
【0067】
他人顔保持部に保持された他人顔の更新の条件としては、以下の場合がある。
(1)直近入場者の顔画像のみを利用する
画像入力部2から動画が入力された場合、直近入場者1000人の顔を他人顔保持部に保持し、古い物を順次削除する。これにより時間変動の影響を小さくすることが出来る。
【0068】
(2)一人当たりの顔画像取得数を制限する
画像入力部2から動画が入力された場合、追跡処理を行って、一人当たりの登録枚数を減らす。
(3)類似度の平均値が小さくなるように他人顔を選ぶ
他人顔保持部5の顔画像の総当りで類似度を求め、類似度の平均ができるだけ小さくなるように他人保持部5の顔を選ぶ。他人顔保持部5内の類似度が大きい場合は、似ている顔が多い可能性があるが、類似度の平均値が小さくなるように他人顔を選ぶことにより、他人顔保持部5に不特定多数の顔画像を保持することが出来る。
【0069】
(実施の形態5)
次に、図23〜図26を用いて、本願の発明に係わる実施の形態5について述べる。図23は本願の実施の形態5のブロック構成図を示している。実施の形態5では、実施の形態1の構成要素に対して、個人判定部161、登録顔保持部162、結果出力部167を有している。登録顔保持部162の内部には、個人毎情報163が個人毎に保持されている。さらに、個人毎情報163の内部には、登録画像164、照合閾値165、誤報特性166が保持されている。
【0070】
実施の形態5では、登録画像164毎に異なる照合閾値165を設定することにより、類似度が低くなりやすい登録画像の人物でも、本人と判定されやすいようにしている。
【0071】
また、入力画像に対して、複数の登録画像164が照合閾値165を超えたとき、誤報特性166を用いることにより、より本人と判定されやすいようにしている。
【0072】
まず最初に、実施の形態1で述べたように、誤報特性算出部4は、画像切出部3が切り出した画像のそれぞれに対して、他人顔保持部5に保持された他人の顔との間で誤報特性を算出する。
【0073】
登録顔の選択は実施の形態1と同じように行うが、登録顔選択部8が登録顔を選択して登録画像保持部162に保持するとき、登録画像164、照合閾値165のほかに、誤報特性を保持する。
【0074】
誤報特性とは本人顔を複数の他人顔と比較したとき、他人を本人と間違えて判断する場合の確率(誤報率)である。他人顔と比較して類似度をもとめ、類似度が照合閾値より大きいときは本人と判断され、小さいときは他人と判断される。このため、照合閾値が小さいほど、誤って本人と判断されることが多くなり誤報率が高くなる。
図24に、登録画像がAAさん、BBさんのときの誤報特性を示している。AAさんの場合、類似度が53のとき、誤報率は0.5%であり、BBさんでは、類似度が58のとき、誤報率は0.8%であることを示している。
【0075】
図25は、登録画像として、AAさん、BBさん、CCさん、およびDDさんが登録されており、それぞれの照合閾値が50、55、48、50であったとき、未知の顔No1(実はAAさん)、未知の顔No2(実はBBさん)、未知の顔No3(実はBBさん)が入力されたときの様子を示している。
【0076】
ここで、照合閾値は、例えばAAさんの登録顔と入力された画像の類似度が、この照合閾値以上のとき、入力された画像はAAさんであると判断する値のことである。
【0077】
未知の顔No1が入力されたときの、AAさん、BBさん、CCさん、DDさんとの類似度を求めると、54、54、40、40になり、AAさんの照合閾値を超えるので、個人判定部161によって、未知の顔No1はAAさんであると判定される。また、その結
果が結果出力部167に出力される。
【0078】
同様に、未知の顔No2の場合は、AAさんなどとの類似度が、40、58、38、45になるので、未知の顔No2はBBさんと判定される。
次に、未知の顔No3(実はAAさん)が入力されたときの、AAさん等との類似度が、53、58、42、43であったとする。この場合は、AAさんの照合閾値50およびBBさんの照合閾値55を共に超えているので、AAさんかBBさんかの区別が出来ない。
【0079】
そこで、図24に示すように、誤報特性を用いて、AAさんの類似度が53のときと、BBさんの類似度が58のときの誤報率を求める。
【0080】
類似度が53のときのAAさんとの誤報率は0.3%であり、類似度が58のときの、BBさんとの誤報率が0.8%のためAAさんとの間での方が他人である可能性が低いことが分かるので、未知の顔No3はAAさんと判断する。
【0081】
図26は、本発明の第5の実施の形態の処理の流れを示したフローチャートである。図23において、画像入力部2から入力された画像は顔画像切出部3によって顔画像が切り出され、個人判定部161に送られる。
【0082】
図26において、画像を入力するステップ(S81)は画像入力部2によって実施され、画像を切り出すステップ(S82)は、顔画像切出部3によって実施される。
【0083】
個人判定部161は、入力された顔画像と登録画像保持部162に保持された個人毎情報163の登録画像164との間で類似度を求める(S221)。
【0084】
全ての登録顔について照合を終了したら(S222),照合閾値を超えたものがあるか否かを調べる(S223)。
【0085】
照合閾値を超えたものがなかったときは(S223、0人)、該当者なし(S224)となる。
【0086】
照合閾値を超えたものが1人のときは(S223、1人)、照合閾値を超えた登録人物が入力されたものと判定する(S225)。
【0087】
照合閾値を超えたものが2人以上のとき(S223、2人以上)は、図24を用いて述べた方法により、誤報特性から誤報率を求める(S226)。この処理を、照合閾値を超えた登録画像全てついて実施する(S227)。
【0088】
照合閾値を超えた全員の顔画像について処理を終えたら、誤報率の一番低い登録人物が入力されたものと判定する(S228)。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本願は、顔認証装置の設置環境が変わったときでも最適な本人の登録画像を選択して登録できる、顔認証装置に係わる発明である。
【符号の説明】
【0090】
1 顔認証装置
2 画像入力部
3 顔画像切出部
4 誤報特性算出部
5 他人顔保持部
6 正報特性算出部
7 顔照合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の本人の顔画像を入力する画像入力部と、
複数の他人顔を保持する他人顔保持部と、
前記本人の顔画像と前記他人顔保持部に保持された他人顔とを照合して、前記本人の顔画像の誤報特性を算出する誤報特性算出部と、
前記複数の本人の顔画像間で照合を行い、前記本人の顔画像の正報特性を算出する正報特性算出部と、
前記本人の顔画像の誤報特性および前記本人の顔画像の正報特性を用いて、前記複数の本人の顔画像の中から登録顔画像を選択する登録顔選択部とを有することを特徴とする顔画像登録装置。
【請求項2】
前記誤報特性算出部は、前記本人の顔画像と前記他人顔保持部に保持された他人顔との照合結果を誤報率として算出し、
前記正報特性算出部は、前記本人の顔画像の正報特性を正報率として算出し、
前記登録顔画像選択部は、前記複数の本人の顔画像の中から前記本人の顔画像の正報率が所定の閾値のときの、前記本人の顔画像の正報率と前記本人の顔画像の誤報率の差を用いて前記登録顔画像を選択することを特徴とする請求項1に記載の顔画像登録装置。
【請求項3】
前記誤報特性算出部は、前記本人の顔画像と前記他人顔保持部に保持された他人顔との照合結果を誤報率として算出し、
前記正報特性算出部は、前記本人の顔画像の正報特性を正報率として算出し、
前記登録顔画像選択部は、前記複数の本人の顔画像の中から前記本人の顔画像の誤報率が所定の閾値のときの、前記本人の顔画像の正報率と前記本人の顔画像の誤報率の差を用いて前記登録顔画像を選択することを特徴とする請求項1に記載の顔画像登録装置。
【請求項4】
前記画像入力部から入力された前記本人の顔画像の顔向きを算出する顔向き算出部を有し、
前記他人顔保持部は顔向きごとに他人顔を保持し、
前記誤報特性算出部、前記正報特性算出部および前記顔選択部は、前記顔向き算出部が算出した顔向き毎に前記誤報特性および前記正報特性を算出し、
前記等録顔選択部は、前記顔向き算出部が算出した顔向き毎に前記登録画像を選択することを特徴とする請求項1に記載の顔画像登録装置。
【請求項5】
前記画像入力部から前記本人の顔画像を入力する際の前記画像入力部に対する前記本人の撮影位置を取得する位置取得手段を有し、
前記他人顔保持部は撮影位置ごとに他人顔を保持し、
前記誤報特性算出部、前記正報特性算出部および前記顔選択部は、前記撮影位置毎に前記誤報特性および前記正報特性を算出し、
前記等録顔選択部は、前記撮影位置毎に前記登録画像を選択することを特徴とする請求項1に記載の顔画像登録装置。
【請求項6】
前記他人顔保持部に保持された他人顔を更新する他人顔更新部を有し、
前記誤報特性算出部は前記他人顔更新部が更新した直近の所定の他人顔を用いて前記語法特性を算出することを特徴とする請求項1に記載の顔画像登録装置。
【請求項7】
画像を入力する画像入力部と、
登録画像と、前記登録画像の照合閾値と、前記登録画像の類似度と誤報率の対応関係を表す誤報率特性を保持する登録顔保持部と、
前記画像入力部から入力した画像と前記登録顔画像保持部に保持した顔画像を照合して入
力画像の類似度を求め、前記入力画像の類似度と前記照合閾値を比較して個人を判定する個人判定部とを有し、
前記画像入力部から入力した画像が、前記登録画像保持部に保持された複数の登録画像と同一人物の顔と判定されたとき、前記複数の登録画像に対して、前記誤報率特性から前記入力画像の類似度に対する誤報率を算出し、前記算出した誤報率を比較して前記画像入力部から入力した画像の顔と前記複数の登録画像の顔が同一人物であるか否かを判定する顔画像登録装置。
【請求項8】
複数の本人の顔画像を入力する画像入力ステップと、複数の他人顔を保持する他人顔保持ステップと、前記本人の顔画像と前記他人顔保持部に保持された他人顔とを照合して、前記本人の顔画像の誤報特性を算出する誤報特性算出ステップと、前記複数の本人の顔画像間で照合を行い、前記本人の顔画像の正報特性を算出する正報特性算出ステップと、前記本人の顔画像の誤報特性および前記本人の顔画像の正報特性を用いて、前記複数の本人の顔画像の中から登録顔画像を選択する登録顔選択ステップとを有することを特徴とする顔画像登録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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