説明

風力発電装置

【課題】従来よりも発電効率の高い風力発電装置を提供する。
【解決手段】回転軸を鉛直方向にしたシャフト51と、シャフト51に取り付けられた羽根53を具備し、周囲を流れる流体によって羽根53に発生する揚力によりシャフト51を回転させ、その回転エネルギーを電気エネルギーに変換する風力発電装置であって、羽根53がその性能を最大限に引き出される取付位置で支持手段52を介してシャフト51に取り付けられているとともに、取付位置を通りシャフトの軸心と直交する直線を引き、その直線と翼弦線との交点を通りシャフト51の軸心を中心とする基準円を引いたとき、その基準円が羽根53を横切る部分の総和が、基準円の周長に対する割合で0.145以上0.174以下となり、かつ、基準円が羽根53の表面と形成する後側の交点が羽根53の内周面に存在するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力を用いて発電を行う風力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、風力を受けて風車が回転し、その回転エネルギーを用いて発電を行う風力発電装置が知られており、自然エネルギーを用いたクリーンな発電手段として注目されている。
【0003】
こうした風力発電装置にも様々なタイプのものがあり、その中でも都市部のように風向きが変動しやすい場所に適したものとして垂直軸型風車が知られている。また、垂直軸型風車であっても、風車に設けた羽根が風から受ける抗力によって廻るもの、風の流れから羽根に発生する揚力によって廻るものの2種類に大別される。さらに、揚力型の垂直軸型風車でも、羽根が曲線状に構成されたダリウス型タイプと、羽根が直線状に構成された直線羽根タイプの2種に大別される。
【0004】
上記の直線羽根タイプの揚力型風力発電装置として、例えば特許文献1や特許文献2に挙げるものが知られている。これらのものは、発電機に連結されたシャフトをその長手方向を鉛直方向として回転可能に設置し、このシャフトに対して周方向に複数の羽根を配置するという構成を基本としつつ、旧来よりも風車に用いる翼の表面形状を変化させることや、風車全体を性質の異なる複数段で構成することによって発電効率を向上させる技術について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4151940号公報
【特許文献2】特開2008−248702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術によっても、いまだ発電効率についての市場の要求を満足させることはできず、更なる効率化が求められている。特に、風車に用いる羽根の最適形状に関する研究は、旧来より航空機関連分野のものから展開されてきたが、さらなる効率化を図るためには、揚力を発生させる羽根を回転させて使用するという特殊な使用状況であることをより重要視して進めていく必要性が生じている。
【0007】
具体的には、数値解析を行うにあたっては実際の現象により近づけ、風車自身が回転することによる空気の流れ場への影響を加味しつつ、羽根に発生する揚力と、それに起因する回転トルク、および発電効率への影響を詳細に調査していくことが必要となる。また、そうした数値解析の結果を検証するために実機での評価も不可欠である。
【0008】
本発明においては上述のような問題点に鑑み、特に風車に用いる羽根の形状および構成に着目して、上記のような実際の流れ場に近い形での数値解析を行い、その結果に加えて実機評価の結果から得られた知見を基にして、従来よりも発電効率の高い風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明の風力発電装置は、回転軸を鉛直方向にして回転可能に設けたシャフトと、当該シャフトに取り付けられた羽根とを具備し、前記羽根の周囲を流れる流体によって前記羽根に発生する揚力によって前記シャフトを回転させ、その回転エネルギーを電気エネルギーに変換するものであって、前記羽根がその性能を最大限に引き出される取付位置で支持手段を介して前記シャフトに取り付けられているとともに、前記取付位置を通り前記シャフトの軸心と直交する直線を引き、前記シャフトの軸心を中心として前記直線と翼弦線との交点を通る基準円を引いたとき、当該基準円が前記羽根を横切る部分の総和が、基準円の周長に対する割合で0.145以上0.174以下となり、かつ、前記基準円が羽根の表面と形成する後側の交点が羽根の内周面に存在することを特徴とする。
【0011】
このように構成すると、羽根が取り付けられたロータが回転を行うという現実の状態に即したパラメータを用いて羽根の特性を表した上で、その中で数値範囲を限定することによって、効率よく風力を回転トルクに変換可能なロータ構成を実現できる。そのため、風力エネルギーから回転エネルギーへの変換効率を向上させることが可能となり、結果として発電効率を高めることが可能となる。
【0012】
また、上記範囲の中でも、広い回転速度領域で高い発電効率を得られるようにするためには、前記基準円が前記羽根を横切る部分の総和が、基準円の周長に対する割合で0.158以上0.174以下とすることがより好ましい。
【0013】
さらに、上記の効果を高めるためには、風により効果的に揚力を発生させることが可能とするため、前記羽根の水平断面を翼型とすることがより好ましい。
【0014】
また、上記の発電装置の発電効率を一層高めるためには、前記羽根を2個取り付けるようにして構成することがより好ましい。
【0015】
また、設計上の基準として簡便に上記の効果を得るためには、前記羽根の性能を最も引き出せる取付位置を、羽根の前縁より翼弦線の略1/4に相当する位置とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、羽根が取り付けられたロータが回転するという現実の状態に即して、羽根の形状および構成を最適化することができるため、従来よりも発電効率の高い風力発電装置を提供することが可能となる。また、従来の風力発電装置から変更する点がロータ部分のみであることから、設計工数が少なく簡単に設備化することが可能であるとともに、既存の風力発電装置を改造することでも容易に発電効率を向上させることが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る風力発電装置の模式図。
【図2】同風力発電装置のロータを示す上面図。
【図3】同風力発電装置のロータの各パラメータを定義するための羽根の断面図。
【図4】図3の羽根の取付角度を変更したときの断面図。
【図5】アジマス角定義のための模式図。
【図6】本発明の実施例1、比較例1および比較例2の各条件および評価結果を示す表。
【図7】図6に基づく周速比と出力係数の関係を示すグラフ。
【図8】本発明の実施例2、実施例3、実施例4および比較例3の各条件および評価結果を示す表。
【図9】図8に基づく周速比と出力係数の関係を示すグラフ。
【図10】実施例1、比較例1の実機による発電量を示したグラフ。
【図11】図6に基づくアジマス角と単独翼トルク係数の関係を示すグラフ。
【図12】図6に基づくアジマス角とロータトルク係数の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
この実施形態の風力発電装置は、図1に示すように、土台2の上に設置された発電機3と、発電機3の上部より鉛直上方に延出された支柱4と、支柱4の上方に回転可能に設けられたロータ5からなり、ロータ5は支柱4の内部を通じて発電機3と連結されているため、ロータ5の回転は発電機3まで伝動し、そこで回転エネルギーを電気エネルギーに変換することができるようになっている。
【0020】
そして前記ロータ5は、支柱4に回転自在に取り付けられたシャフト51と、当該シャフト51に支持手段52を介して取り付けられた羽根53と、支持手段52としての支持棒521とからなる。さらに、シャフト51および羽根53はそれぞれ長手方向を鉛直方向とするように設けており、シャフト51の回転軸も鉛直方向としている。
【0021】
このように構成されたロータ5は、図2に示すように、鉛直方向から見て軸心54を中心として円を描くようにして回転する。また、同図から分かるように、羽根53は軸心54を中心として軸対称となるように配置しており、回転アンバランスを生じないようにしている。
【0022】
羽根53は、図2および図3に示すように、水平断面が一様に翼型となるようにして形成しており、回転方向に対して前方が厚く、後方に行くに従って絞りこまれた形状となっている。そして、羽根53は前記支持棒521を介してシャフト51に対して取り付けられている。
【0023】
羽根53に対する前記支持棒521の取付は、羽根53の前縁533および後縁534を結ぶ線分である翼弦535と、前記支持棒521の中心線521aとが交わる点を基準として行われ、この点を単に取付位置536と称す。取付位置536を設ける場所によっては、ロータ5が回転している際に、揚力や遠心力等の影響から羽根53がねじれたり、後述する羽根の取付角度が変化するような不具合が生じ、ロータ5の性能低下を招く場合がある。一般に、ロータ5の性能は羽根53の断面形状、取付角度、ソリディティ等から決定されるが、こうしたロータ性能を最大限に引き出せる位置に上記の取付位置536は設けてある。具体的には、当該取付位置の決定にあたっては、特許第3368537号公報により開示されているような考え方を基礎として行う。すなわち、取付位置はロータ5が回転する際に回転トルクが大きく高い効率を得られるとともに、自己始動性を損なわないような点にすることが必要であり、前縁からの距離が翼弦長の15〜40%とすることが適切であるとされているため、これを適用した。
【0024】
ここで、図3を用いて、羽根53の形状および取付位置536を表すための各種パラメータを定義する。
【0025】
上述したように、羽根53の前縁533および後縁534を結ぶ線分を翼弦535といい、その長さを翼弦長cとする。そして、ロータ5の軸心54を中心として前記取付位置536を通る円をロータ基準円55として、その半径をロータ半径Rで表す。また、前記取付位置536におけるロータ基準円55に対する接線と、翼弦とのなす角を取付角βとする。
【0026】
このような羽根53の取付枚数をNとしたとき、ロータ5全体の特性を示す数値として、ロータ基準円55の周長に対して羽根53が占める割合として、ソリディティσを次式のように定義する。
【0027】
【数1】

【0028】
また、1枚あたりの羽根53の特性を示す数値として、前記ロータ基準円55が羽根53を横断する部分(横断部551)の長さ、具体的には横断点551a、551b間によって切り取られた弧の長さを横断長Ltとして定義し、さらに当該横断長Ltのロータ基準円周長に対する比として、横断長比Rtを次式のように定義する。
【0029】
【数2】

【0030】
この横断長比Rtは、ロータ基準円55上を移動する羽根53が、当該基準円55に干渉する割合を意味するものであり、回転状態を考慮した上での羽根53の性能を示す数値として考えることができる。
【0031】
さらに、ロータ5全体としての性能を表す数値として、総横断長比NRtを次式のように定義する。
【0032】
【数3】

【0033】
また、上記のような横断点551a、551bは、同一の羽根53を用いても取付角βやロータ半径Rの大きさによって、図3に示すように羽根53の内周面531と外周面532に形成される場合や、図4に示すように双方とも内周面531に形成される場合などの幾つかのパターンをとる。ここで、羽根53の内周面531とは、羽根53の表面のうち図3において翼弦線535よりも下側になる面をいい、外周面532とは翼弦線535よりも上側になる面をいう。
後述するように発明者らの知見によれば、羽根53の後縁534よりに位置する後側横断点551bが形成される位置が、羽根53の内周面531か外周面532であるかによって羽根53の特性は大きく異なる。
【0034】
なお、本実施形態においては、羽根53の取付位置536を上述した考え方を基礎として、前縁533からの距離(図3中のaに相当)が翼弦長cの1/4となるように設定しており、形状検討のために変更するパラメータとはしていない。そのため、後述するロータ形状や構成に係る検討は速やかに実施することが可能であった。
【0035】
また、風の主流方向に対する羽根53の位置を示すパラメータとして、アジマス角θを定義する。アジマス角θは、図5に示すように、ロータ5の回転軸心54を中心として羽根53の前縁533が主流方向と正対する位置を0°として角度で表したものであり、上方向より見て反時計回りの方向を正とする。
【0036】
さらに、こうした羽根53単独の性能およびロータ5全体の性能を示す指標として、単独翼トルク係数CQs、出力係数CPを次のように定義する。
【0037】
【数4】

【0038】
【数5】

ここで、Qは単位翼幅あたりの単独翼トルク、Qは単位翼幅あたりのロータトルクの1回転中の平均値である。また、ωはロータ回転角速度、U0は主流風速、ρは空気密度、Aは単位翼幅あたりの翼投影面積、Aは単位翼幅あたりのロータ面積である。
【0039】
さらに、ロータ5の回転速度を、次式の周速比λとして表す。
【0040】
【数6】

【0041】
本発明においては、上記のパラメータを最適化することで、高い発電能力を有する発電装置を提供することを目的としている。
【0042】
以下に、これらの要素に関する発明者らの検討結果を示す。
【0043】
図6に、本発明における実施例1並びに比較例1および比較例2の条件と、それらの評価結果を示す。また、その評価の基となったデータを図7に示す。
【0044】
図7は、図6に示した表内の各数値を用いて、ソリディティσ一定の条件の下で羽根枚数Nおよび翼弦長cを変更した場合の出力係数CPの変化を数値解析によって求めた結果である。なお、本解析には、汎用熱流体解析コードであるFLUENT6.3を用いており、乱流モデルにはRANSの標準κ−εモデルを使用した。また、時間微分項を考慮した非定常流れとして、ロータ回転軸心を法線とする2次元平面で解析を行った。
【0045】
図7の縦軸に用いた出力係数比CP/CP_maxとは、最大値を示した実施例1の周速比λ=1.8の時の値をCP_maxとして、これを用いて無次元化したものである。
【0046】
図7の結果より、実施例1のものの出力係数が高く、風力発電装置のロータとして好適であることが分かる。すなわち、羽根枚数N=2で、総横断長比NRt=0.174のものが好適といえる。他方、比較例1および比較例2のものは、全体的に出力係数CPが低く不適当であることが分かる。
【0047】
さらに、別の数値解析より得られた検討結果として、図8に、本発明における実施例2実施例3および実施例4並びに比較例3の条件と、それらの評価結果を示す。また、その評価の基となったデータを図9に示す。ここで、図9の縦軸に用いた出力係数比CP/CP_refとは、上述の比較例1の周速比λ=1.8の時の値を基準値CP_refとして、これを用いて無次元化したものである。図8では、N=2について羽根取付角βの出力への影響を詳細に調べた。なお、実施例4の条件に係る羽根は、実施例1のもののロータ半径と翼弦長(羽根断面形状)を1/2に縮小したものであるため、ソリディティσや総横断長比NRtは同一の値となる。そのため、実施例4の羽根は実施例1の羽根と基本的な特性が同一となり、図7における実施例1と周速比が同じであれば出力係数もほぼ同じとなる。
【0048】
図9の結果より、全般的に総横断長比NRt=0.158である実施例3のものの出力係数CPが高く、次いで図7の結果と同様、総横断長比NRt=0.174である実施例4のものの出力係数CPが高く、風力発電装置のロータとして好適であることが分かる。また、実施例2のものも、周速比λに対してややピーキーな特性を有するものの、十分に出力係数CPが高く好適に用いることができる。他方、比較例3のものは全般的に出力係数CPが低く不適当といえる。そこで、実施例2〜4に示す条件のものは、風力発電装置のロータとして好適に用いることができるが、その中でも実施例3や実施例4に近い条件のものが広い周速比領域で出力係数が高くより好適であり、実施例3のものが最も好適といえる。
【0049】
すなわち後側横断点551bの位置が羽根53の内周面531にある場合であって、総横断長比NRtが0.145以上0.174以下の場合が適しており、その中でもNRtが0.158以上0.174以下の条件がより好適であることが分かる。さらに、NRt=0.158の場合が最も好適であることが分かる。
【0050】
以上の数値解析結果を検証するため、発明者らは実機での検討も実施している。その結果を図10に示す。これは上記の実施例1、比較例1の条件のロータを有する風力発電装置を製作して実機による発電量を測定したものである。図10より、実施例1のほうが比較例1よりも全ての風速領域において発電量が大きく好適であることが確認できた。また、上述の数値解析データの正当性も確認することができた。
【0051】
発明者らは、以上のような結果が生じる理由を説明するため、個々の羽根に着目した詳細な解析を行っている。以下、それらの解析結果についても補足しておく。
【0052】
図11は、実施例1、比較例1および比較例2のそれぞれの場合における、アジマス角θと単独翼トルク係数CQsとの関係を示したものである。各々の条件において、図7のグラフ中で最も大きな出力係数CPが得られた周速比λにおける値を用いているため、それぞれ周速比λ=1.8、1.8、2.1の際のものとなっている。なお、図11のグラフにおける縦軸はCQs/CQs_refとして、CQs_refを用いて無次元化してある。ここで、CQs_refとは比較例1、λ=1.8の条件における一回転中の単独翼トルク係数CQsの平均値を示す。
【0053】
図11から分かるように、全ての条件において、羽根はアジマス角θ=90°付近の位置で最大のトルクを発生させ、180〜360°の位置ではほとんどトルクは発生しない。すなわち、ほぼ風上に位置する羽根のみによってロータの回転トルクは発生し、風下に位置する羽根はロータの回転に影響を及ぼさない。よって、ロータの性能を決定する主な要因は、もっぱらアジマス角θ=90°付近で羽根により発生するトルクの大きさであり、羽根の開発においては主にこの位置における羽根への作用力に着目をすればよいことが分かる。また、同図から分かるように、単独翼トルク係数CQsの最大値は実施例1のものが最も大きく、これが好適な出力係数CPを得られた要因といえる。
【0054】
図11の結果を基にして、羽根全てを取り付けた場合のロータトルク係数CQRを計算し、アジマス角θとの関係で表したものを図12に示す。ここで、横軸のアジマス角θはそれぞれ一個の羽根を基準として表し、縦軸はCQR/CQs_refとしてロータトルクCQRを上述のCQs_refを用いて無次元化したものである。本図のように、実施例1のものは、比較例1、比較例2に比べて一回転中の変動は大きいものの大きなロータトルクを得られることがわかる。
【0055】
比較例1や比較例2が、実施例1に比し大きな単独翼トルク係数CQsが得られない理由は次のような点にある。
【0056】
まず、比較例1や比較例2の場合には、アジマス角θ=90°付近における羽根前方での局所風速Uは、主流風速U0よりも風速が低くなる。これは回転円周の前方側の羽根による風速低下の影響を受けることで羽根周りの流速が上がりきらないためであり、その結果単独翼トルク係数CQsが小さくなる。他方、実施例1においては、アジマス角θ=90°付近における羽根前方での局所風速Uは、ほぼ主流風速U0と等しい風速になっており、羽根の前縁付近ではロータ周速と相俟って比較例2よりも大きな風速が得られる。そのため、単独翼トルク係数CQsも大きくなる。
【0057】
また、実施例1、比較例1および比較例2の場合の羽根の周囲の流れ場を詳細に見ると、実施例1では羽根後縁で流れの剥離が生じていないが、比較例1や比較例2の羽根後縁では流れの剥離が生じており、比較例2のほうでより顕著に見られる。このため、比較例1や比較例2では流体力の低下が生じ、実施例1に比べて大きな揚力を得られず、単独翼トルク係数CQsも小さくなる。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る風力発電装置1は、回転軸を鉛直方向にして回転可能に設けたシャフト51と、当該シャフト51に取り付けられた羽根53とを具備し、前記羽根53の周囲を流れる流体によって前記羽根53に発生する揚力によって前記シャフト51を回転させ、その回転エネルギーを電気エネルギーに変換するものであって、前記羽根53がその性能を最大限に引き出される取付位置536で支持手段52を介して前記シャフト51に取り付けられているとともに、前記取付位置536を通り前記シャフト51の軸心54と直交する直線を引き、前記シャフトの軸心54を中心として前記直線と翼弦線535との交点を通る基準円55を引いたとき、当該基準円55が前記羽根53を横切る部分の総和が、基準円55の周長に対する割合で0.145以上0.174以下となり、かつ、前記基準円55が羽根53の表面と形成する後側の交点551bが羽根の内周面に存在することを特徴とする。
【0059】
このように構成しているため、羽根53が取り付けられたロータ5が回転を行うという現実の状態に即したパラメータを用いて羽根53の特性を表すことができ、その上で数値範囲を限定しているため、効率よく風力を回転トルクに変換可能なロータ構成を実現できる。そのため、風力エネルギーから回転エネルギーへの変換効率を向上させ、発電効率を高め、発電量を増加させることが可能となる。また、当該効果を得るためには既存の風力発電装置に対してロータ5の部分を変更するのみで足りるため、新規設備化にあたっては設計工数が少なくすみ、既存設備の改造を行う場合でもロータ5のみの変更で足りるため工事期間および費用を節約可能である。
【0060】
また、上記の範囲の中でも、前記基準円55が前記羽根53を横切る部分の総和が、基準円の周長に対する割合で0.158以上0.174以下とすることにより、広い回転速度領域で高い発電効率が得られるため、結果として発電量を増加させることが可能となる。
【0061】
さらに、前記羽根53の水平断面を翼型としているため効果的に揚力を発生させることができ、一層発電効率を高めることが可能である。
【0062】
さらに、前記羽根53が2個からなるロータ5の構成としていることから、一層発電効率を高めることが可能である。
【0063】
また、前記羽根53の性能を最も引き出せる取付位置536を、羽根の前縁533より翼弦線535の1/4に相当する位置としていることから、これを設計上の基準として簡便に構成を変更するなどの検討が可能となり、開発の効率を高めることが可能となる。
【0064】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0065】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
2…土台
3…発電機
4…支柱
5…ロータ
51…シャフト
52…支持手段
53…羽根
54…軸心
55…ロータ基準円
533…前縁
534…後縁
535…翼弦
536…取付位置
551…横断部
c…翼弦長
R…ロータ半径
β…取付角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を鉛直方向にして回転可能に設けたシャフトと、当該シャフトに取り付けられた羽根とを具備し、前記羽根の周囲を流れる流体によって前記羽根に発生する揚力によって前記シャフトを回転させ、その回転エネルギーを電気エネルギーに変換するものであって、前記羽根がその性能を最大限に引き出される取付位置で支持手段を介して前記シャフトに取り付けられているとともに、前記取付位置を通り前記シャフトの軸心と直交する直線を引き、前記シャフトの軸心を中心として前記直線と翼弦線との交点を通る基準円を引いたとき、当該基準円が前記羽根を横切る部分の総和が、基準円の周長に対する割合で0.145以上0.174以下となり、かつ、前記基準円が羽根の表面と形成する後側の交点が羽根の内周面に存在することを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記基準円が前記羽根を横切る部分の総和が、基準円の周長に対する割合で0.158以上0.174以下となることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記羽根の水平断面が翼型であることを特徴とする請求項1または2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記羽根が2個取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記羽根の性能を最も引き出せる取付位置が、羽根の前縁より翼弦線の略1/4に相当する位置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−137070(P2012−137070A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291395(P2010−291395)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)平成22年6月27日〜平成22年7月2日 「再生可能エネルギー2010国際会議」において再生可能エネルギー協議会より配布されたUSBをもって発表 (2)平成22年7月1日 再生可能エネルギー2010組織委員会主催の「再生可能エネルギー2010国際会議」において文書をもって発表 (3)平成22年10月29日 社団法人日本機械学会発行の「流体工学部門講演会論文集」の第433〜第434ページに記載された文書をもって発表
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】