風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置およびヨー駆動システム
【課題】(従来と同等の大きさであっても)より破損しにくい風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置およびヨー駆動システムを得る。
【解決手段】複数のヨー減速装置G1(〜G4)の出力ピニオン24を風力発電設備10の本体側の旋回歯車28と噛み合わせて、ナセル12を旋回駆動する風力発電設備10のヨー駆動システム14に使用される前記ヨー減速装置G1(〜G4)であって、動力伝達系の中に組み込まれたホロー軸66と、該ホロー軸66に挿入され、当該ホロー軸66の内周で該ホロー軸66と連結されると共に、該ホロー軸66から突出した位置で他の部材と連結される軸部材(連結軸70)と、を有し、前記軸部材(連結軸70)が、前記ホロー軸66の軸方向中央よりも、該軸部材(連結軸70)が当該ホロー軸66から突出する側と反対側寄りで、該ホロー軸66と連結される。
【解決手段】複数のヨー減速装置G1(〜G4)の出力ピニオン24を風力発電設備10の本体側の旋回歯車28と噛み合わせて、ナセル12を旋回駆動する風力発電設備10のヨー駆動システム14に使用される前記ヨー減速装置G1(〜G4)であって、動力伝達系の中に組み込まれたホロー軸66と、該ホロー軸66に挿入され、当該ホロー軸66の内周で該ホロー軸66と連結されると共に、該ホロー軸66から突出した位置で他の部材と連結される軸部材(連結軸70)と、を有し、前記軸部材(連結軸70)が、前記ホロー軸66の軸方向中央よりも、該軸部材(連結軸70)が当該ホロー軸66から突出する側と反対側寄りで、該ホロー軸66と連結される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置およびヨー駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、風力発電設備のナセルを水平面内で旋回させるためのヨー駆動システムが開示されている。
【0003】
この特許文献1に係るヨー駆動システムでは、風力発電設備の本体(円筒支柱)側に旋回歯車が1個設けられ、ナセル側にはブレーキ機構及びヨー減速装置を備えた電動機が複数(開示例では2個)据え付けられている。各ヨー減速装置の出力ピニオンは、前記旋回歯車に同時に噛合しており、出力ピニオンが旋回歯車と噛合したときに旋回歯車側から受ける反作用によって、(電動機が据え付けられた)ナセルが旋回するようになっている。
【0004】
ナセル全体を円筒支柱に対して旋回させることにより、ナセルの先端の向きを所望の方向(例えば風上の方向)に向けることができ、効率的に風圧を受けることができる。また、複数のヨー減速装置の各ピニオンを旋回歯車に同時に噛合させる構成とすることにより、1個1個のヨー減速装置の大きさを小さく抑えることができ、地上から高い位置にある狭いナセル内で据え付ける際の取り扱い性等を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−320891号公報(段落[0020]、[0021]、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、風力発電設備は、自然環境下に設置される設備であるため、ときに乱れた風や突風を受けたりすることがある。このような強い風によりナセルを回転させようとする力が作用すると、旋回歯車側から該風力負荷トルクがヨー減速装置内に入力されてくる「動力の逆流現象」が発生する。
【0007】
通常、このような強い風が吹くときには、ヨー駆動システムの各回転要素は、制動機構によって回転が止められた状態とされ、ナセルが無制御状態で異常に旋回するのを防止している。このため、当該旋回歯車側から入力されてきた風力負荷トルクは、停止状態にあるヨー減速装置内の各要素に掛かることになり、ヨー減速装置は、非常に過酷な状態に置かれる。この結果、甚だしいときには破損に至ることもあるという問題が生じていた。
【0008】
この問題に対処するためにヨー減速装置全体の大きさを大きくするのは、狭いナセル内に設置する機器として大きなデメリットとなる。また、せっかく複数のヨー減速装置に分けて小型化したメリットも減殺されてしまう。何よりも、自然相手の設備であるため、どの程度の大きさまで大きくすれば破壊されない、という明確な指標自体がないため、闇雲にヨー減速装置の大きさを拡大することにも限界がある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、新たに見出した中間課題(後述)に着目し、この中間課題を克服することによって、結果としてヨー減速装置をいたずらに大きくすることなく、より破損しにくい風力発電設備のヨー駆動システムおよびヨー減速装置を提供することをその本来の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムに使用される前記ヨー減速装置であって、動力伝達系の中に組み込まれたホロー軸と、該ホロー軸に挿入され、当該ホロー軸の内周で該ホロー軸と連結されると共に、該ホロー軸から突出した位置で他の部材と連結される軸部材と、を有し、前記軸部材が、前記ホロー軸の軸方向中央よりも、該軸部材が当該ホロー軸から突出する側と反対側寄りで、該ホロー軸と連結される構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0011】
また、本発明は、第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置を少なくとも含む複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムであって、前記第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置は、前記出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のときに、前記第1ヨー減速装置の出力ピニオンの前記本体側の歯車に対するバックラッシと、前記第2ヨー減速装置の出力ピニオンの前記本体側の歯車に対するバックラッシとの差に相当する角度以上、回転方向に捻れ変形する軸部材または回転方向に回転角度差を発生させる捻れ発生機構を、動力伝達系に備えた構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0012】
なお、本発明において、風力発電設備の本体側の「本体」とは、「ヨー減速装置が組み込まれている部材に対して相対的に動く部材」を指している。風力発電設備のヨー駆動システムの場合、ヨー減速装置が組み込まれているナセルの構造部材に対して相対的に動く円筒支柱が「本体」に相当する。
【0013】
本発明想到に当たって着目した中間課題は、公知の課題ではないため、以下、簡単に説明する。
【0014】
ヨー駆動システムを複数のヨー減速装置にて構成する場合、該複数のヨー減速装置の出力ピニオンが同一のバックラッシで均等に旋回歯車と噛合し、全ヨー減速装置が同一の伝達トルクを受け持つように配備される必要がある。
【0015】
従来のヨー駆動システムでも、モータによって駆動された複数のヨー減速装置の出力を1個の旋回歯車に作用させる「通常の駆動時」の場合は、各ヨー減速装置の出力が均等になるように制御するのは比較的容易である。それは、(たとえ各ヨー減速装置の機械的なバックラッシ量が不均一であったとしても)各ヨー減速装置に実際に流れる電流をフィードバック制御することで、それぞれのヨー減速装置の発生トルクを均一にすることが、ある程度可能だからである。
【0016】
しかし、風力負荷トルクによって旋回歯車側から逆駆動されるときは、この「電流のフィードバック制御による等配制御」を活用することができない。そのため、従来のヨー駆動システムでは、強風でナセルが動くことによってバックラッシが最初に詰められたヨー減速装置が大きな負担を強いられることを余儀なくされていた。
【0017】
さらに、前述したように、通常このような強風環境では、ナセルの無制御状態での異常旋回を防止するため、ヨー減速装置の各回転要素が制動機構によって停止された状態に維持されることが多い。このため、最初にバックラッシが詰められたヨー減速装置によってナセルの回転が固定され、他のヨー減速装置は、旋回歯車とのバックラッシが詰められない状態のままとなって、旋回歯車側からの風力負荷を受けることができなくなるという状況も推察される。
【0018】
このような状況に陥ると、最初にバックラッシが詰められた「特定の1個のヨー減速装置」のみに風力負荷トルクが完全に集中してしまうことになる。そして、この最初にバックラッシが詰められた特定の1個のヨー減速装置が破損すると、今度は残ったヨー減速装置のうち、バックラッシが最初に詰められた第2のヨー減速装置が同様な状態となり、次々に連鎖的に破損してしまうのではないかと考えられる。
【0019】
本発明は、この特定の1個のヨー減速装置のみに風力負荷が掛かってしまう現象を中間課題として捉え、この中間課題を合理的に解消し、搭載されている全てのヨー減速装置によって旋回歯車側からの風力負荷トルクを受けることができるように構成している。これにより、ヨー減速装置をいたずらに大きくすることなく、ヨー減速装置の破損を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ヨー減速装置をいたずらに大きくすることなく、より破損しにくい風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置およびヨー駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る風力発電設備のヨー駆動システムに使用するヨー減速装置の全体断面図
【図2】図1の矢視II−II線に沿う断面図
【図3】上記ヨー減速装置が適用される風力発電設備の正面図
【図4】上記風力発電設備のヨー駆動システムにおけるナセルに上記ヨー減速装置が組み込まれている様子を模式的に示す斜視図
【図5】上記ヨー駆動システムの旋回外歯歯車に4個のヨー減速装置の出力ピニオンが噛合している状態を示す平面図
【図6】本発明の他の実施形態の一例に係る図1相当の断面図
【図7】本発明の更に他の実施形態の一例に係る図1相当の断面図
【図8】図7の実施形態の要部を拡大して示す断面図
【図9】本発明の更に他の実施形態の一例に係る図1相当のヨー減速装置の断面図
【図10】図9の実施形態の要部を拡大して示す断面図
【図11】本発明の更に他の実施形態の一例に係る図1相当のヨー減速装置の断面図
【図12】図11の実施形態の要部を拡大して示す断面図
【図13】本発明の更に他の実施形態の一例に係る図1相当のヨー減速装置の断面図
【図14】図13の矢視XIV−XIV線に沿う断面図
【図15】図13の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例に係る風力発電設備のヨー駆動システム、特にその中のヨー減速装置の構成について詳細に説明する。
【0023】
図3〜図5を参照して、この風力発電設備10は、円筒支柱(風力発電設備の本体)11の最上部にナセル(発電室)12を備える。ナセル12には、ヨー(Yaw)駆動システム14と、ピッチ(Pitch)駆動システム16が組み込まれている。ヨー駆動システム14は、円筒支柱11に対するナセル12全体の旋回角を制御するためのものであり、ピッチ駆動システム16は、ノーズコーン18に取り付けられる3枚の風車ブレード20のピッチ角を制御するためのものである。
【0024】
このヨー駆動システム14は、モータ22及び出力ピニオン24付きの4個のヨー減速装置G1〜G4及びそれぞれの出力ピニオン24と噛合する1個の旋回歯車28を備える(図4、図5参照:旋回歯車28は、この例では出力ピニオン24が内接する内歯歯車であるが出力ピニオンが外接する外歯歯車であってもよい)。各ヨー減速装置G1〜G4は、ボルト29を介してそれぞれナセル12の構造体側の所定の位置に固定されている。
【0025】
図5に示されるように、この実施形態では、複数のヨー減速装置G1〜G4は、それぞれの前記出力ピニオン24が、旋回歯車28と周方向で等間隔ではない位置にて噛合している。これは、狭いナセル12内にヨー減速装置G1〜G4を配置しようとした場合に、現実にはヨー減速装置G1〜G4を円周方向において均等に配置するのが困難であることから、このように等間隔でない配置の方がメリットが大きいという事情に基づいている。なお、この図5の配置例は一例であり、現実には実際のナセル内の状況に応じて適宜の配置に変更されてよく、勿論、円周方向に等間隔であっても良い。
【0026】
この構成により、各ヨー減速装置G1〜G4のモータ22によってそれぞれの出力ピニオン24を同時に回転させると、該出力ピニオン24が旋回歯車28と噛合しながら該旋回歯車28の中心36(図4参照)に対して公転する。この結果、ナセル12を円筒支柱11(に固定された旋回歯車28)に対して相対的に移動させることができ、ナセル12全体を円筒支柱11に固定されている旋回歯車28の中心36の周りで旋回させることができる。これにより、ノーズコーン18を所望の方向(例えば風上の方向)に向けることができ、効率的に風圧を受けることができる。
【0027】
前記ヨー減速装置G1〜G4は、それぞれ同一の構成を有しているため、ここではヨー減速装置G1について説明する。
【0028】
図1を参照して、ヨー減速装置G1はモータ22、直交歯車減速機構40、第1、第2平行軸減速機構41、42及び偏心揺動型の遊星歯車減速機構44が動力伝達経路上でこの順に配置されている。
【0029】
以下、動力伝達経路上の順番に説明していく。モータ22のモータ軸46は、直交歯車減速機構40の入力軸を兼ねており、モータ22のモータ軸46の負荷側の端部にはハイポイドピニオン47が直切りで形成されている。なお、該モータ軸46の反負荷側の端部にはブレーキ装置(図示略)が備えられている。
【0030】
直交歯車減速機構40は、モータ22の先端に直切形成された前記ハイポイドピニオン47と、該ハイポイドピニオン47と噛合するハイポイドギヤ50とを備え、モータ軸46の回転方向を直角方向に変更している。ハイポイドギヤ50は、第1中間軸52に固定されている。
【0031】
第1中間軸52には、第1平行軸減速機構41のスパーピニオン54が直接形成されている。第1平行軸減速機構41は、このスパーピニオン54と、該スパーピニオン54と噛合するスパーギヤ56とを備えている。スパーギヤ56は、第2中間軸58に固定されている。第2中間軸58には第2平行軸減速機構42のスパーピニオン60が直接形成されている。
【0032】
第2平行軸減速機構42は、このスパーピニオン60と、該スパーピニオン60と噛合するスパーギヤと64を備えている。スパーギヤ64はホロー出力軸(ホロー軸:第2平行軸減速機構42の出力軸)66に固定されている。ホロー出力軸66はスプライン68を介して連結軸70と連結されている。連結軸70の負荷側は、偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の入力軸でもある偏心体軸(第2のホロー軸)72がスプライン92を介して連結されている。
【0033】
このホロー出力軸66−連結軸70−偏心体軸(第2のホロー軸)72の連結については、後に詳述する。
【0034】
なお、符号73は、ボルト75を介して後述する遊星歯車減速機構44の反負荷側カバー48Cと連結された継ケーシングである。
【0035】
遊星歯車減速機構44は、2枚の外歯歯車76と、該外歯歯車76が揺動しながら内接噛合する内歯歯車78と、内歯歯車78の軸心位置O1に外歯歯車76を貫通して配置されるとともに、外歯歯車76を揺動させる偏心体74を有する偏心体軸72と、を備えたいわゆるセンタクランク型と称される偏心揺動型の減速機構である。
【0036】
2枚の外歯歯車76は、その偏心位相が丁度180度ずれており、互いに離反する方向に偏心した状態を維持しながら揺動回転する。なお、遊星歯車減速機構44のケーシング48は、第1、第2ケーシング体48A、48B、及び、反負荷側及び負荷側カバー体48C、48Dとで主に構成され、ボルト29を介して前記ナセル12の構造体12Aに固定されている。
【0037】
前記内歯歯車78は、このうちの第1ケーシング体48Aと一体化されている内歯歯車本体78Bと、該内歯歯車本体78Bに回転自在に保持されて内歯として機能する円筒状の外ピン78Aによって構成されている。内歯歯車78の内歯の数(外ピン78Aの数)は、外歯歯車76の外歯の数より僅かだけ(この例では1だけ)多い。
【0038】
図2に示されるように、外歯歯車76には、内ピン80が摺動促進部材81とともに複数(この例では10本)、同一円周上で貫通している。内ピン80は、出力フランジ(キャリヤ)82と圧入により一体化され、該出力フランジ82はヨー減速装置G1の出力軸84と一体化されている。
【0039】
なお、各内ピン80は、押さえプレート86によってそれぞれの端部を支持されており、押さえプレート86は、該押さえプレート86に強いラジアル負荷が掛かったときにのみ接触するような極めて僅かな隙間を有して反負荷側カバー体48Cの段部48C1と対峙している。
【0040】
出力軸84は、第2ケーシング体48Bの内周に組み込まれた自動調心ころ軸受85と、第1ケーシング体48Aの内周に配置されたころ83によって支持されている。ころ83は、前記内歯歯車78の内歯を構成する外ピン78Aと同軸に配置され、出力軸84と一体化された出力フランジ82を支持することによって、出力軸84の一端を回転自在に支持している。
【0041】
出力軸84には、スプライン87を介して前出の出力ピニオン24が連結され、該出力ピニオン24が既に説明した旋回歯車28(図4、図5)と噛合する構成とされている。
【0042】
ここで、前記第2平行軸減速機構42のホロー出力軸(ホロー軸)66−連結軸(軸部材)70−偏心体軸(第2のホロー軸)72の連結部についての構成について詳細に説明する。
【0043】
ホロー出力軸66と連結軸70の連結部の構成から説明する。ホロー出力軸66と連結軸70の連結部は、動力伝達系の中(第2平行軸減速機構42の出力段)に組み込まれた該第2平行軸減速機構42のホロー出力軸66と、該ホロー出力軸66に挿入され、当該ホロー出力軸66の内周で該ホロー出力軸66と連結されると共に、該ホロー出力軸66から突出した位置で(他の部材である)偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の偏心体軸72と連結される連結軸70と、で構成されている。
【0044】
ホロー軸66は、この実施形態では、軸方向寸法がL1であり、一対の軸受88、90によって両持ち支持されている。ホロー出力軸66はスプライン68を介して連結軸70と連結されている。連結軸70は、前記ホロー出力軸66の軸方向中央C1よりも、連結軸70がホロー出力軸66から突出する側(図1の例では紙面下側)と反対側寄り(この例では軸方向中央C1よりも紙面上側寄りで)で、該ホロー出力軸66と前記スプライン68を介して連結されている。
【0045】
より具体的には、ホロー出力軸66の一端部、具体的には、連結軸70が偏心体軸72へ向けて突出するのと反対側の端部(つまり、連結軸70がホロー出力軸66以外の他の部材(本実施形態では偏心体軸72)と連結されるのと反対側の端部)内周には前記スプライン68の一方である雌スプライン部66Bが設けられている。また、連結軸70の一端部に前記スプライン68の他方である雄スプライン部70Aが設けられている。連結軸70は、ホロー出力軸66の中空部66Aに挿入されて、この雄スプライン部70Aがホロー出力軸66に設けられた前記雌スプライン部66Bと連結される。また、連結軸70の他端部は、ホロー出力軸66の雌スプライン部66Bが設けられているのと反対側の端部から突出させられている。
【0046】
連結軸70の前記一端部の端面にはボルト98によってプレート100が固定されている。該プレート100は、ホロー出力軸66の軸方向端面にボルト102によって固定されている。これにより、連結軸70の点検および交換を、ボルト98、102での取り付け、取り外しのみで容易に行うことができる。なお、本実施形態においては、ホロー出力軸66および連結軸70の連結部を覆うカバー101が、第1平行軸減速機構41および第2平行軸減速機構42のケーシング103に固定されている。
【0047】
一方、連結軸70の負荷側は、遊星歯車減速機構44の入力軸でもある偏心体軸(第2のホロー軸)72がスプライン92を介して連結されている。偏心体軸72は、軸方向寸法がL2であり、一対の軸受94、96で支持されている。連結軸70と偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の偏心体軸72との連結部では、前記ホロー出力軸66と連結軸70との連結構成と、上下関係が逆になっているだけで同様の連結構成にて、連結軸70が、該第2のホロー軸である偏心体軸72と連結されている。
【0048】
すなわち、連結軸70は偏心体軸72の軸方向中央C2よりも、連結軸70が偏心体軸72から突出する側(この例では紙面上側)と反対側寄り(この例では軸方向中央C2よりも下側寄り)で、該偏心体軸72とスプライン92を介して連結されている。
【0049】
具体的には、連結軸70の他端部にもスプライン92の一方である雄スプライン部70Bが設けられるとともに、偏心体軸72のホロー軸66から遠い方の端部内周にはスプライン92の他方である雌スプライン部72Bが設けられている。連結軸70は、偏心体軸72の中空部72Aにホロー出力軸66に近い方の端部から挿入されて、前記雄スプライン部70Bおよび雌スプライン部72Bからなるスプライン92を介して連結されている。
【0050】
また、連結軸70は、ホロー出力軸66および偏心体軸72の内部に形成された長い中空部66A、72Aに囲まれているため、仮に強く捻れたとしても、著しく曲がったりする不具合は、発生しないように配慮されている。
【0051】
本実施形態に係る第2平行軸減速機構42のホロー出力軸66−連結軸70−偏心体軸(第2のホロー軸)72の連結部は、結果として、単一(同一)の連結軸70を共通に用いて、本発明に係る「2組」の連結構造を組み合わせた構成とされていることになる。また、本実施形態においては、ホロー出力軸66の偏心体軸72から遠い方の端部と偏心体軸72のホロー軸66から遠い方の端部に、連結軸70と連結するための雌スプライン部66B、72Bを設けている。つまり、連結軸70の有効軸方向長さL4、すなわち、ホロー出力軸66と連結軸70との連結部(スプライン68の軸方向中央)から偏心体軸72と連結軸70との連結部(スプライン92の軸方向中央)までの距離を、装置を(軸方向に)大型化することなく、最大限に確保できるようにしている。
【0052】
この結果、連結軸70の有効軸方向長さ(ホロー出力軸66と連結軸70との連結部から偏心体軸72と連結軸70との連結部までの距離)L4は、ホロー出力軸66と偏心体軸72との間の寸法L3にホロー出力軸66の軸方向寸法L1および偏心体軸72の軸方向寸法L2を加えた長さに近い長い寸法となっている。
【0053】
このような連結部構成としたのは、連結軸70が、伝達するべきトルクに対して必要な強度を確保しつつ、所定の条件のときに回転方向に所定の捻れ変形量(回転角位相差)だけ捻れるようにするためである。
【0054】
すなわち、この実施形態に係る連結軸70は、出力ピニオン24に作用する荷重が所定値以上のときに、各ヨー減速装置G1〜G4における出力ピニオン24の旋回歯車28に対するそれぞれの「バックラッシの差」に相当する所定角度以上、回転方向に捻れ変形する。
【0055】
ここで、「出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のとき」の「所定値」とは、本発明の趣旨が「強い風力負荷トルクが掛かったときに、各ヨー減速装置が均等に荷重を受け持つことによって、特定のヨー減速装置のみに荷重が集中しないようにする。」という点にあることを考慮して決定されるものである。
【0056】
具体的には、「モータ22が定格トルクを出力しているときに出力ピニオン24に掛かるトルク相当値(例えば、本実施形態においては1250kgf)」が1つの指標となる。荷重等配を確実に実現するには、最大でも、該定格トルク相当値の2倍(例えば2500kgf)以下に設定されるべきである。すなわち、モータ22の定格トルクの2倍のトルクが発生されているときに、出力ピニオンに掛かるトルクが「所定値の上限」である。
【0057】
一方、「所定値の下限」については、本発明では特に限定されない。しかし、余りに低いレベルから捻れ変形が発生するようにすると、モータ22で駆動するときの応答性が悪くなるほか、必要な強度も確保しにくくなるため、モータ22が疲労等価荷重(モータの定格トルクの半分程度)のトルクを出力したときに出力ピニオン24に掛かる値が、事実上のほぼ下限となる。
【0058】
逆にいうならば、この所定値以下のトルクしか出力ピニオンに掛かっていないような場合には、大きな捻れ変形が発生しないように設定することが好ましい。以上のように、本発明の「所定値」は、モータ22が定格トルクの半分のトルクを出力しているときに出力ピニオンに掛かるトルク以上であって、モータ22が定格トルクの2倍のトルクを出力しているとしたときに出力ピニオンに掛かるトルク以下に設定するのが好ましい。本実施形態においては、モータ22が定格トルクを出力しているときに出力ピニオン24に掛かるトルク相当値に設定されている。
【0059】
また、「バックラッシの差」とは、理想的には、旋回歯車28と出力ピニオン24とのバックラッシが最も小さなヨー減速装置(第1ヨー減速装置、G1〜G4のいずれか)のバックラッシ量と、該バックラッシが最も大きなヨー減速装置(第2ヨー減速装置、G1〜G4のいずれか)のバックラッシ量との差である。より具体的には、「風力負荷トルクによってナセルが回転することにより、前記バックラッシが最小のヨー減速装置のバックラッシが詰まった(0になった)後、最大のバックラッシを有しているヨー減速装置のバックラッシがなくなるまでに当該最大のバックラッシを有しているヨー減速装置の出力ピニオン24が回転する角度」のことである。
【0060】
ただし、バックラッシが最も小さなヨー減速装置の連結軸70が捻れることにより、バックラッシが次に小さなヨー減速装置の出力ピニオン24が旋回歯車28と噛合うと、それだけでも2台のヨー減速装置による等配効果は得られ、さらに当該2台のヨー減速装置の連結軸70が捻れることにより、次のヨー減速装置の出力ピニオン24が旋回歯車28と噛合うとさらに等配効果が得られる。そうすると、結局、「バックラッシの差」とは、任意の2台のヨー減速装置(第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置)におけるバックラッシの差と捉えればよい。
【0061】
バックラッシの差に「相当する角度」とは、対象となる連結軸の動力伝達系上の位置によって、減速比(出力ピニオンから見た場合は増速比)の分乗じた角度ということである。この実施形態では出力ピニオン24から見た遊星歯車減速機構の増速比は43であるため、43倍とした角度、ということになる。 但し、現実問題として、旋回歯車28に対する各ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24の実際の「バックラッシの差」は、出力ピニオン24の歯形の製造誤差のほか、ヨー減速装置G1〜G4をナセル12に組み付ける際の組み付け誤差の影響も大きく受ける。そのため、この「バックラッシの差」は、ヨー減速装置G1〜G4の設計或いは製造の段階では、不明である。
【0062】
この「ヨー減速装置G1〜G4の設計或いは製造時には不明」という問題については、例えば、ヨー減速装置G1〜G4の、実際に取り付けられた状態のバックラッシを複数例サンプリングして平均値を算出する等の手法で対応することができる。
【0063】
例えば、発明者らが、この観点で、最も普及している1.5MW〜3.0MWクラスの風力発電設備の該バックラッシの平均値を測定したところ、概ね0.1mmであった。この値に基づいた具体的な設計数値例を以下に示す。
【0064】
<連結軸70の捻れの程度に関して>
本実施形態の場合、モータ22が定格トルクを出力しているときに出力ピニオン24に掛かるトルク相当値T1は、1250kgfであるから、捻りを生じさせようとする連結軸70に作用する捻りモーメントT2(N・mm)は、遊星歯車減速機構44の減速比が43、効率ηが0.93であることから、
T2=(1250kgf/43)×0.93
=27.03kgf=264894N・mm …(1)
となる。
【0065】
ここで、連結軸70のねじれ角θ(rad)は、
θ=(32・T・L)/(π・G・d4) …(2)
で、表すことができる。Tは捻りモーメント(N・mm)、Lは軸長(mm)、Gは剪断(横)弾性係数(MPa)、dは軸径(mm)である。
【0066】
この実施形態では、連結軸70の軸長Lとして、有効軸方向長さL4=400mmが確保されている。今、連結軸70の径dとして、d2=20mm、剪断(横)弾性係数Gとして、軟鋼の一般値である8300kgf/mm2(81340MPa)を用い、(2)式に具体的数字を(単位を揃えて)代入して、連結軸70でのねじれ角θ(rad)の大きさを確認してみると、連結軸70に作用する捻りモーメントT2(N・mm)は、(32×264894×400)/(3.14×81340×204)=0.0829(rad)となる。
【0067】
0.0829(rad)は、度数に換算すると4.75度である。すなわち、出力ピニオン24にモータ22の出力トルク相当の大きさのトルクが掛かった場合、本実施形態での連結軸70には、4.75度の捻れが発生することになる。
【0068】
一方、バックラッシ0.1mmは、旋回歯車28の歯数が88の場合0.1mm/88=0.00114(rad)に相当する。度数に換算すると0.065度である。これが出力ピニオン24のバックラッシ0.1mmに対する回転角度である。減速比(増速比)43を考慮して連結軸70での回転角度に更に換算すると、0.065×43=2.8度となり、前記4.75度よりも小さい。これは、連結軸70が捻れている間に、旋回歯車28と出力ピニオン24との間のバックラッシ(0.1mm)が解消(消滅)し、第2ヨー減速装置が荷重を分担し得る状態となり得ることを意味している。
【0069】
<連結軸70の耐荷重について>
この種の軸部材における捻りによる剪断応力τ(MPa)は、次式で表される。
τ=16T/(π・d3) …(3)
【0070】
(3)式に、T=T2=264894(N・mm)、d=d2=20(mm)を代入すると、連結軸70での軸剪断応力τ1(MPa)は、(16×264894)/(3.14×203=168.7MPaとなる。168.7MPaは、17.2kgf/mm2に相当する。
【0071】
一般に、SCM材の場合、剪断応力は、19kg/mm2程度であり、浸炭材ならば40kg/mm2程度は、確保可能である。したがって、連結軸70に生じる剪断応力(17.2kg/mm2)に耐え得る強度を確保するのは、十分可能である。
【0072】
以上を総合すると、本実施形態に係る装置にあっては、上記構成および寸法設定により、連結軸70として十分な耐荷重強度を維持した上で、旋回歯車28と出力ピニオン24のバックラッシが解消する以上に連結軸70の捻れ量を確保できることが分かる。
【0073】
ところで、上記計算例では、バックラッシの実際の平均値に基づいて捩れや強度を試算したが、実際のバックラッシの大きさは、風力発電設備の大きさ(より具体的には旋回歯車や出力ピニオンの大きさ)が異なると、異なってくる可能性がある。これに対しては、、例えば、当該「バックラッシの差」と相関のあるパラメータを選定して該「バックラッシの差」を特定する指標とすることもできる。
【0074】
より具体的に説明すると「バックラッシの差」は、例えば、各ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差を使用して定義することができる。ここで、歯車の「単一ピッチ誤差」とは、JIS B1702−1やISO1328−1に定義されており、「歯たけのほぼ中央付近の歯車軸と同一の中心をもつ測定円周上で定義された軸直角平面での実際のピッチと対応する理論ピッチとの差」のことであり、歯車試験機等で出力ピニオン24を測定することにより得ることができる。
【0075】
次に、第1ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差をP1、第2ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差をP2、旋回歯車28の単一ピッチ誤差をPS、出力ピニオン24と旋回歯車28との間の基準バックラッシをBBとし、また単一ピッチ誤差は、時計回りおよび反時計回りのいずれかの方向の誤差を正の値、他の方向の誤差を負の値としてとるものとする。第1ヨー減速装置の出力ピニオン24と旋回歯車28との間のバックラッシB1と、第2ヨー減速装置の出力ピニオン24と旋回歯車28との間のバックラッシB2は、以下の式で表される。
B1=BB−(P1+PS)
B2=BB−(P2+PS)
【0076】
そうすると、バックラッシB1とB2との差は、B2−B1=P1−P2、となる。つまり、第1ヨー減速装置の出力ピニオン24と旋回歯車28との間のバックラッシと、第2ヨー減速装置の出力ピニオン24と旋回歯車28との間のバックラッシとの差は、第1ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差と第2ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差との差として定義できる。
【0077】
即ち、本実施形態に係る連結軸70は、ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24に作用する荷重が所定値以上のときに、2台のヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差の差に、出力ピニオンから連結軸70までの増速比を掛けた角度だけ、捻れ変形するように、連結軸70の外径、全長、素材、および熱処理を含む製造手法等が選定される。
【0078】
この手法に依れば、ヨー減速装置単体に属するパラメータのみに依存して連結軸70等の設計をすることができるため、実際のバックラッシをいちいち確認する必要がない。
【0079】
なお、ここでの「バックラッシ」は、基本的には「旋回歯車28と各ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24との間の寸法上の隙間に係るバックラッシ」を意味しているが、より好ましくは、旋回歯車28と各ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24との間の寸法上の隙間に係るバックラッシに、出力ピニオン24から(該出力ピニオンの回転を制動可能な)ブレーキ機構に至るまでの動力伝達系全体のバックラッシを加味した「補正バックラッシ」の概念を用いると一層良い。
【0080】
本実施形態では、モータ22のモータ軸46に図示せぬブレーキ機構が備えられているため、この「補正バックラッシ」は、旋回歯車28と各ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24とのバックラッシのほか、偏心揺動型の遊星歯車減速機構44、第2平行軸減速機構42、第1平行軸減速機構41、および直交歯車減速機構40における歯車等の各バックラッシ、更には、モータ22の回転機構(モータ軸46を支持する軸受のがた等)におけるバックラッシ等も含めて「補正バックラッシ」を捉えることになる。因みに後述する実施形態のように、ブレーキ機構を例えば、ウォーム減速機構のセルフロック機能によって実現するときには、出力ピニオンから該ウォーム減速機構までのバックラッシが「補正分」ということになる。
【0081】
補正バックラッシの概念を用いることにより、より正確、且つ確実な等配ができるようになる。
【0082】
次に、このヨー減速装置G1の作用を説明する。
【0083】
再び図1を参照して、モータ22のモータ軸46の回転は、直交歯車減速機構40のハイポイドピニオン47及びハイポイドギヤ50の噛合によって初段減速され、同時に回転軸の方向が90度変更されて第1平行軸減速機構41の第1中間軸52に伝達される。
【0084】
第1中間軸52の回転は、第1平行軸減速機構41のスパーピニオン54及びスパーギヤ56の噛合によって第2中間軸58に伝達されると共に、さらに第2平行軸減速機構42のスパーピニオン60及びスパーギヤ64を介してホロー出力軸66に伝達される。ホロー出力軸66の回転は、スプライン68、連結軸70、スプライン92を介して偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の偏心体軸72に伝達される。この部分の作用については、後に詳述する。
【0085】
偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の偏心体軸72が回転すると、偏心体74を介して外歯歯車76が(内歯歯車78に内接しながら)揺動回転する。このため、外歯歯車76と内歯歯車78との噛合位置が順次ずれてゆく現象が生じる。この結果、遊星歯車減速機構44の偏心体軸72が1回回転する毎に、外歯歯車76が1回揺動し、(ナセル12に固定された状態にある)内歯歯車78に対して1歯分ずつ(歯数差分ずつ)位相がずれて行くようになる(自転成分が発生する)。
【0086】
この自転成分を内ピン80、出力フランジ(キャリヤ)82を介して出力軸84から取り出すことにより、遊星歯車減速機構44での減速が実現される。
【0087】
出力軸84の回転は、スプライン87を介して出力ピニオン24に伝達される。出力ピニオン24は旋回歯車28と噛合しており、且つ、該旋回歯車28は、円筒支柱11に固定されているため、反作用によって、結局、出力ピニオン24は、自転しながら旋回歯車28の中心36に対して公転する。
【0088】
ヨー減速装置G1〜G4は、ナセル12に固定されているため、結局、該円筒支柱11側の旋回歯車28の軸心36に対してナセル12が水平方向に回転(旋回)する。
【0089】
ここで、例えば、突風等が風車ブレード20やナセル自体に作用することによってナセル12を強制的に旋回させようとする巨大な「風力負荷トルク」がヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24側から入力されたとする。この場合、この巨大な風力負荷トルクは、ヨー駆動システム14を逆から駆動し、旋回歯車28を介してヨー減速装置G1の出力ピニオン24を回転させようとする。
【0090】
一般に強い風が吹いているときには、モータ22の反負荷側に設けられたブレーキ機構によってヨー減速装置G1〜G4の各回転要素は回転不能の状態とされ、ナセル12が強い風によって無制御状態で旋回してしまうのを防止している。そのため、従来のヨー駆動システムでは、ナセル12が動くことによってバックラッシが最初に詰められたヨー減速装置(便宜上、第1のヨー減速装置G1とする)が「1台のみ」で該旋回歯車28のそれ以上の回転を阻止するため、他のヨー減速装置G2〜G4の出力ピニオン24は、旋回歯車28とのバックラッシが詰められない状態のままとなってしまい、旋回歯車28側からの風力負荷トルクを受けることができない。
【0091】
そのため、結局、最初にバックラッシが詰められた「第1のヨー減速装置G1」にのみ風力負荷トルクが集中し、この第1のヨー減速装置G1が破損してしまう状況が発生し易くなっていたと考えられる。そして、第1のヨー減速装置G1が破損してしまうと、今度は残ったヨー減速装置のうち、バックラッシが最初に詰められた第2のヨー減速装置が同様な状態となるため、こうして全てのヨー減速装置が次々に連鎖的に破損してしまう状況に陥ってしまったと考えられる。
【0092】
しかしながら、本実施形態によれば、最初にバックラッシが詰められた第1のヨー減速装置G1の出力ピニオン24に旋回歯車28から所定値以上の荷重が掛かると(この実施形態ではモータ22が定格トルクを出力しているときに出力ピニオン24に掛かる荷重以上の荷重が掛かると)、この荷重によって、連結軸70が捻れ変形する。このため、出力ピニオン24は、(ブレーキ機構によって減速装置G1〜G4の各回転要素の回転が基本的に止められている状況であるにも拘わらず)連結軸70の当該捻れ変形によって、そのまま更に回転を続けることができ、旋回歯車28もそのまま追随して回転を続けることができる。
【0093】
この連結軸70での捻れ変形量は、出力ピニオン24側から所定値以上の荷重が掛かったときにバックラッシの差以上確保されるように設定されている。そのため、旋回歯車28がこの追随回転を行う間に、2番目にバックラッシの小さかった他のヨー減速装置(例えば第2ヨー減速装置G2)のバックラッシが詰められ、旋回歯車28からの荷重を該第2のヨー減速装置G2によっても受けることができるようになる。この結果、その分、従来ならばそのまま第1のヨー減速装置G1のみに掛かり続けた旋回歯車28側からの荷重の一部が第2のヨー減速装置G2に振り分けられるようになる。
【0094】
そして、第2のヨー減速装置G2でも連結軸70での捻れ変形が可能であるため、同様に、第3のヨー減速装置G3も、バックラッシが詰められて旋回歯車28からの荷重を受け持つようになる。そして、最終的には各ヨー減速装置G1〜G4のそれぞれの連結軸70がほぼ等しい反力を受け持った状態となるように、各ヨー減速装置G1〜G4の連結軸70での捻れ変形がバランスする。
【0095】
この捻れ変形がバランスした状態では、バックラッシの大小の如何に関わらず(旋回歯車28に対して反力を与え始める時期が早いか遅いかに関係なく)、全てのヨー減速装置G1〜G4に旋回歯車28からの荷重が等配された状態となる。
【0096】
これは、要するならば、例えば、本実施形態のように4個のヨー減速装置G1〜G4によってヨー駆動システム14が構成されている場合には、実質的に(従来と比べて)風力負荷トルクをほぼ1/4に減じた(耐風力負荷トルク特性をほぼ4倍に拡充した)ことと同様な作用効果を得ることができることを意味している。この結果、従来と同程度の大きさのヨー減速装置G1〜G4を使用しながら、各ヨー減速装置G1〜G4の破損(特に連鎖的な破損)を極めて効果的に防止することができる。
【0097】
この実施形態のように、旋回歯車28の円周方向にヨー減速装置G1〜G4が等間隔に配置されない場合には、各ヨー減速装置G1〜G4に均等に風力負荷トルクを受け止めさせるのは特に難しい。このため、搭載されている全てのヨー減速装置G1〜G4が、捻れ変形の機能により共同して旋回歯車28側からの風力負荷トルクをほぼ等しい大きさずつ、分担して受けることができるようになるメリットは極めて大きい。
【0098】
ところで、言うまでもなく、動力伝達を行う軸部材(連結軸70)が、伝達すべきトルクを破損することなく確実に伝達するには、当然に相応の強度(剛性あるいは太さ)が必要である。この強度を確保した条件下で本発明に係る大きな「捻れ変形量」を確保するには、軸部材が相応の「軸方向長さ」を有していなければならない。そのため、単純に設計すると、ヨー減速装置G1〜G4が大型化してしまう要因となる。
【0099】
本実施形態では、連結軸70が、第2平行軸減速機構42のホロー出力軸66に挿入されるとともに、ホロー出力軸66の内周で該ホロー出力軸66と連結されている。そして、その上で、連結軸70が、ホロー出力軸66の軸方向中央C1よりも連結軸70が該ホロー出力軸66から突出する側と反対側寄りで、該ホロー出力軸66と連結される構成とされている。
【0100】
また、これと同様の構成が、連結軸70と偏心体軸(第2のホロー軸)72との間でも採用されている。
【0101】
このため、(減速装置G1の全長を殆ど増大させることなく)ホロー出力軸66と偏心体軸72との間の寸法L3に、ホロー出力軸66の軸方向長さL1および偏心体軸72の軸方向長さL2をプラスした長さに近い極めて長い有効軸方向長さL4の連結軸70を組み込むことを可能としている。
【0102】
因みに、もし、本実施形態の手法によらず、ヨー減速装置の全長を変えずに、同じ動力伝達系の連結軸を従来の手法で設計した場合には、連結軸70の長さは、ホロー出力軸66と偏心体軸72との間の距離L3+α、すなわち、本実施形態の1/2程度の長さとなってしまう。このため、例えば、前述した(1)式〜(3)式を用いた計算例で同様の試算を行うと、連結軸で得られる捻りの大きさは、2.75度にしかならない。そのため、旋回歯車28と出力ピニオン24との間のバックラッシを解消するために必要な2.8度の捻り量を確保できなくなってしまう虞がある。換言するならば、この長さの連結軸で本実施形態の「意図する捻り量」を確保するには、連結軸70の外径d2をより小さく(細く)する必要がある。すると、今度は連結軸の耐荷重が十分でなくなる虞が生じてくる。
【0103】
本実施形態の連結軸70の連結構成に依れば、ヨー減速装置G1(〜G4)全体の大きさのコンパクト性を維持しながら、連結軸70において、必要なトルク伝達を行うための所定の強度を維持しつつ、十分な捻れ変形量を確保することができる。
【0104】
なお、上記実施形態においては、モータ22、直交歯車減速機構40、第1、第2平行軸減速機構41、42及び遊星歯車減速機構44が動力伝達経路上でこの順に配置されたヨー減速装置G1(〜G4)が示されていたが、本発明においては、ヨー減速装置の減速機構の具体的な構成は、特に上記構成に限定されない。
【0105】
図6に先の実施形態における直交歯車減速機構40、第1平行軸減速機構41、および第2平行軸減速機構42の代わりに、ウォーム減速機構110を採用したヨー減速装置G1aの構成例を示す。他の3個のヨー減速装置G2a〜G4aもヨー減速装置G1aと同様の構成とされている。
【0106】
なお、この実施形態においては、モータは、紙面と直交する方向に取り付けられるが、この図6においては、モータ自体は表示されておらず、モータの取り付け孔114のみが表示されている。
【0107】
ウォーム減速機構110は、ウォーム116とウォームギヤ118とで構成されている。ウォームギヤ118は、(該ウォーム減速機構110の出力軸である)ウォーム出力軸120と一体化されている。ウォーム出力軸120は、中空であり、先の実施形態における第2平行軸減速機構42のホロー出力軸66と同様の構成を有し、先の実施形態と同様の連結構成にて連結軸70と連結されている。連結軸70以降の構成は、先の実施形態と同一である。
【0108】
この実施形態では、ウォーム減速機構110減速比は、30以上(好ましくは40以上)に設定されている。ウォーム減速機構110の減速比を30以上(好ましくは40以上)に設定すると、該ウォーム減速機構110自体が有するセルフロック機能(負荷側からの荷重によって回転しない機能)を「ブレーキ機構」として利用することができる。このため、先の実施形態では必須であったモータ22に付設されていたブレーキ機構を省略することができ、その分コストダウンが図れる。
【0109】
この実施形態においても、ウォーム減速機構110のウォーム出力軸(ホロー軸)120−連結軸70−偏心体軸72の連結は、先の実施形態と全く同様の連結態様が採用されており、先の実施形態と全く同様の作用効果が得られる。
【0110】
また図7、図8のヨー減速装置G1b(G2b〜G4bも同じ)では、図6のウォーム減速機構110を残し、偏心揺動型の遊星歯車減速機構(44)の方を、2段の第1、第2単純遊星歯車減速機構130、140に置き換えた構成例が示されている。
【0111】
第1単純遊星歯車減速機構130は、太陽歯車132、遊星歯車134、および内歯歯車136を備え、太陽歯車132が入力部材、遊星歯車134を支持しているキャリヤ138が出力部材として機能している。
【0112】
第2単純遊星歯車減速機構140は、前記キャリヤ138とスプライン139を介して連結された太陽歯車142、遊星歯車144、および内歯歯車146を備え、太陽歯車142が入力部材、遊星歯車144を支持しているキャリヤ148が出力部材として機能している。
【0113】
ウォーム出力軸120と連結軸150との連結構造は、先の図6の実施形態のウォーム出力軸120と連結軸70との連結構造と同一である。また、太陽歯車132は、歯部132Aと歯部132Aから軸方向負荷側に延長された延長部132Bを有するとともに、軸方向に貫通する中空部132Cを有する。中空部内周には、歯部132Aのウォーム出力軸120から遠い方の端部に連結軸150と連結するためのスプライン139の一方である雌スプライン部132Dが形成されている。この雌スプライン部132Dは、太陽歯車132の軸方向中心を跨いで形成されているが、連結軸150がウォーム出力時120へ向けて突出する側と反対側の領域の方が大きい。したがって、このような場合にも、太陽歯車(ホロー軸あるいは第2ホロー軸)132の連結軸150が突出するのと反対側寄りで連結軸150のスプライン139の他方である雄スプライン150Aと連結されていることになる。
【0114】
なお、第2単純遊星歯車減速機構140のキャリヤ148は、スプライン154を介して出力軸160から取り出され、出力ピニオン162に伝達される。この実施形態では、出力軸160と出力ピニオン162は、初めから一体化されている。
【0115】
図9に本発明の更に他の実施形態の一例を示す。図10はその要部拡大図である。
【0116】
この実施形態においては、ヨー減速装置G1c(他のヨー減速装置G2c〜G4cも同じ)が減速機構として、二つの偏心揺動型の遊星歯車減速機構170、180を備えている。前段の遊星歯車減速機構170および後段の遊星歯車減速機構180の動力伝達系としての基本構成は、先の実施形態の遊星歯車減速機構44と同一であるため、便宜上、主たる部分に先の実施形態と同一の符号に前段ではP、後段ではSの添え字を付している。また、他の実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0117】
この実施形態においては、図10に示されるように、前段の出力フランジ82Pと一体化された出力軸84Pが本発明の軸部材(連結軸)、後段の偏心体軸72Sが本発明のホロー軸として機能している。すなわち、出力軸84Pは、偏心体軸72Sに挿入され、偏心体軸72Sの内周でスプライン190を介して偏心体軸72Sと連結されると共に、該偏心体軸72Sから突出した位置で(他の部材である)前段の偏心揺動型の遊星歯車減速機構170の内ピン80Pと連結されている。すなわち、この実施形態では、出力軸84Pは、偏心体軸72Sから図9、図10の紙面下側にも僅かに突出しているが、他の部材(内ピン80P)と連結されている紙面上側が、本発明での「突出する側」に相当している。
【0118】
出力軸84Pは、偏心体軸72Sの軸方向中央C3よりも、出力軸84Pが偏心体軸72Sから突出する側(図9、図10の紙面上側)と反対側寄り(この例では軸方向中央C2よりも紙面下側寄り)で、該偏心体軸72Sとスプライン190を介して連結されている。具体的には、偏心体軸72Sの内ピン80Pから遠い方の端部内周において連結されている。
【0119】
したがって、連結軸としての出力軸84Pは、ほぼ偏心体軸72Sの長さL5と同様の長さを確保することができ、捻れ変形が生じ易い構造とされている。
【0120】
この実施形態においても、この出力軸84Pが、出力ピニオン24側から風力負荷トルクが入力されてきたときに、旋回歯車28と出力ピニオン24とのバックラッシの差に相当する回転角度以上に、捻れ変形が発生するように設定されている。そのため、本実施形態においても、先の実施形態と同様の作用効果(全てのヨー減速装置G1c〜G4cが出力ピニオン24側からの荷重をほぼ同量ずつ受け持つという作用効果)が得られる。
【0121】
図11に本発明の更に他の実施形態の一例を示す。図12は、その要部拡大図である。
【0122】
このヨー減速装置G1d(他のヨー減速装置G2d〜G4dも同じ)は、外歯歯車200と、該外歯歯車200が揺動しながら内接噛合する内歯歯車202と、内歯歯車202の軸心O2からずれた位置に外歯歯車200を貫通して配置されるとともに外歯歯車200を揺動させる偏心体204を有する複数(この例では3本:1本のみ図示)の偏心体軸206とを備えた振り分け型の偏心揺動型の減速機構208を有している。
【0123】
モータのモータ軸(共に図示略)には、継軸210が装着されており、該継軸210の先端にはピニオン212が一体に形成されている。ピニオン212には、同一円周上に複数(この例では3個:1個のみ図示)設けられた振り分け歯車214と噛合している。振り分け歯車214は、連結軸216にスプライン217を介して連結されている。本実施形態においては、3本の偏心体軸206全てに連結軸216を配置・連結しているが、1本または2本の偏心体軸206には連結軸216を配置・連結せず、残りの偏心体軸206のみに連結軸216を配置・連結するようにしてもよい。
【0124】
連結軸216は、前記偏心体軸(ホロー軸)206とスプライン220を介して連結されている。この実施形態では連結軸216の図11、図12の紙面下側は突出した位置で他の部材と連結されておらず、上側が他の部材である振り分け軸214と連結されているので上側が偏心体軸(ホロー軸)206から突出した側となる。偏心体軸206は、一対の軸受222、224で支持され、スプライン220は、連結軸216が突出していない側の軸受224と重なる軸方向位置に設けられている。
【0125】
この結果、この実施形態においても、連結軸216が、(ホロー軸である)偏心体軸216の軸方向中央C4よりも該連結軸216が偏心体軸206から突出する側と反対側寄り(図11、図12の紙面下側寄り)で、該偏心体軸206と前記スプライン220を介して連結されている。
【0126】
より具体的には、偏心体軸206の振り分け歯車214と反対側の端部は、軸受224により出力フランジ231(該出力フランジ231が延長されて出力ピニオン230が固定される)に支持されるとともに、当該出力フランジ231を貫通して配置されている。偏心体軸206の出力フランジ231を貫通している端部内周には、連結軸216と連結するための前記スプライン220の一方である雌スプライン部206Aが形成されている。連結軸216は、偏心体軸206の中空部に挿通され、一端が前記スプライン220の他方である雄スプライン部216Aを介して前記雌スプライン部206Aと連結されるとともに、他端部は中空部から突出し、振り分け歯車214が固定される。
【0127】
つまり、偏心体軸206を出力フランジ231を貫通して配置することにより、偏心体軸206の長さをできるだけ大きくし、その偏心体軸206の端部内周に連結軸216を連結することにより、連結軸216の長さ(連結軸216と偏心体軸206の連結部から連結軸と振り分け歯車(他の部材)214との連結部までの距離)を、装置の軸方向寸法を増大させることなくできるだけ長く確保している。
【0128】
この実施形態においては、連結軸216の軸方向長さL6として、偏心体軸106の軸方向長さL7よりも長い長さを確保することができ、必要なトルクを伝達するための強度を維持しながら、出力ピニオン230に作用する荷重が所定値以上のときに、該出力ピニオン230の旋回歯車(28)に対するそれぞれのヨー減速装置G1d〜G4dのバックラッシの差に相当する回転角度以上、回転方向に捻れ変形させることができる。
【0129】
この実施形態においては、これまでの実施形態と同様に、風力負荷トルクが出力ピニオン230に掛かった場合のヨー減速装置G1d〜G4d間の荷重等配が実現できるほか、3本の偏心体軸206を駆動する連結軸216に対して捻れ変形が生じるように設計しているため、モータ側からのトルク伝達、および出力ピニオン230側からの風力負荷トルクの伝達の双方向のトルク伝達において、該3本の偏心体軸206間でのトルク伝達の等配機能をも得ることができる。
【0130】
なお、図示はしないが、このような振り分けタイプの偏心揺動型の減速機構には、複数の偏心体軸のうちの1部(例えば1本のみ)を、外歯歯車を駆動するための駆動偏心体軸として用い、他の偏心体軸については、外歯歯車の揺動を支持するだけの従動偏心体軸として用いる減速機構も知られており、このような減速機構にも適用可能である。
【0131】
ところで、これまでの実施形態においては、いずれも、捻れ変形する構成要素として、単独の軸部材を組み込むようにしていたが、複数の部材で同様な機能を持たせてもよい。要は、本発明は、動力伝達系に、出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のときに、前段側との連結部と、後段側との連結部との間に、回転方向に所定以上の回転角位相差を生じさせ得る機能を備えた捻れ発生軸部材、あるいは捻れ発生機構を有していればよい。
【0132】
この一例を、図13に示す。図14は、図13の矢視XIV−XIV線に沿う断面図、図15は図13の要部拡大図である。
【0133】
この実施形態に係るヨー減速装置G1e(G2e〜G4eも同じ)は、動力伝達系の減速機構の基本構造は、先の図1の実施形態と同一である。図1の実施形態と異なっているのは、第2平行軸減速機構42と偏心揺動型の遊星歯車減速機構44との連結部の構造である。すなわち、このヨー減速装置G1eでは、出力ピニオン24側から風力負荷トルクが掛かったときに回転角位相差を発生させる構成要素が、(単一の軸部材である連結軸70によってではなく)前段側との連結部と、後段側との連結部とで所定以上の回転角度差を許容する捻れ発生機構248によって構成されている。
【0134】
より詳細に説明するならば、この実施形態に係るヨー減速装置G1eでは、第2平行軸減速機構42のホロー出力軸250は、キー252を介して連結部材254と連結されている。キー252による連結部が、捻れ発生機構248の前段側の連結部を構成している。捻れ発生機構248は、連結部材254、ばね260及びブロック体262によって主に構成されている。連結部材254は、負荷側に外径d1の円形のばね収容部256を一体に有している。ばね収容部256は、図14、図15に示されるように、溝部256Aを有し、該溝部256A内に複数(図の例では4個)のばね260を取り囲むようにして収容している。ばね260は、ブロック体262に固定されている。ブロック体262は、偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の入力軸264とスプライン266を介して連結されている。スプライン266による連結部が捻れ発生機構248の後段側の連結部を構成している。入力軸264はキー268を介して偏心体270を備えた偏心体軸272と、更に連結されている。
【0135】
その他の構成は、先の図1の構成と同様であるため、主要な部位に図1の実施形態と同一の符号を付してある。
【0136】
この構成により、モータの駆動によってホロー出力軸250が回転しようとすると、キー252を介して連結部材254のばね収容部256が回転し、溝部256A内に収容されたばね260に対し円周方向の回転力が加えられる。この結果、ばねが固定されているブロック体262が回転し、ホロー出力軸250の回転が若干遅れた状態で(所定の回転角度だけ位相差が生じた状態で)偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の入力軸264に伝達される。
【0137】
逆に、出力ピニオン24の側から風力負荷トルクが入力されてきたときには、遊星歯車減速機構44の入力軸264が回転しようとし、該入力軸264とスプライン266を介して連結されているブロック体262が回転しようとする。この動きは、該ブロック体262に固定されたばね260に伝達される。この結果、モータ22に付設された図示せぬブレーキ機構によって停止状態を維持している捻れ発生機構248の「キー252による前段側との連結部」に対して、「スプライン266による後段側との連結部」は、ばね260が溝部256A内で変形した分だけ動けるようになる(回転角位相差を有した状態となる)。その結果、出力ピニオン24は、その分、旋回歯車28と出力ピニオン24のバックラッシが詰められた位置から更に回転を続けることができる。
【0138】
そして、この更に回転が許容されている間に他のヨー減速装置G2e〜G4eのバックラッシが詰められ、当該他のヨー減速装置G2e〜G4eにおいても、同様な更なる回転が生じ、結局、風力負荷トルクが等配される状態となる。
【0139】
このように本発明においては、本来一体であるべき部材を前段側と後段側に分割し、これらをばね機構等の弾性変形可能な機構にて回転方向で連結することによっても、所期の目的を実現することができる。具体的な捻れ発生機構の構成は、この例に限定されない。
【0140】
なお、上記実施形態においては、本発明を風力発電設備において4個のヨー減速装置を備えたヨー駆動システムに本発明を適用していたが、ヨー減速装置の数は4個に限定されるものではなく、4個より多くても少なくても良い。
【0141】
実施形態においては、連結軸(軸部材)の両端部がホロー軸(ホロー軸、第2のホロー軸)と連結されていたが、連結軸のいずれか一方の端部は、必ずしもホロー軸に連結される必要はなく、例えば中実軸に連結されたり、あるいは図7、図8に示す構造であれば、連結軸150の一端に太陽歯車132が一体形成されていてもよい。
【0142】
また、連結軸(軸部材)の両端部がホロー軸(ホロー軸、第2のホロー軸)と連結される場合に、実施形態においては、いずれのホロー軸についても、軸方向中央よりも連結軸が突出するのと反対側寄りで連結軸と連結されていたが、これに限定されるものではなく、必要な捻れ量が確保できるのであれば、いずれか一方のホロー軸との連結位置については、軸方向中央よりも連結軸が突出する側寄りで連結しても良い。
【0143】
実施形態においては、ホロー軸の端部内周で連結軸と連結して、連結軸の有効軸方向長さ(連結軸とホロー軸の連結部から連結軸と他の部材の連結部までの距離)をできる大きく確保するようにしているが、ホロー軸の端部で連結することには限定されず、ホロー軸の軸方向中央よりも、連結軸(軸部材)が他の部材と連結される側と反対側寄りであれば、どのような位置で連結を行ってもよい。
【符号の説明】
【0144】
10…風力発電設備
11…円筒支柱
12…ナセル(発電室)
14…ヨー駆動システム
16…ピッチ駆動システム
18…ノーズコーン
20…風車ブレード
22…モータ
24…出力ピニオン
44…遊星歯車減速機構
66…ホロー出力軸(ホロー軸)
70…連結軸(軸部材)
72…偏心体軸(第2のホロー軸)
76…外歯歯車(遊星歯車)
78…内歯歯車
80…内ピン(遊星ピン)
82…出力フランジ(キャリヤ)
84…出力軸
G1〜G4…ヨー減速装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置およびヨー駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、風力発電設備のナセルを水平面内で旋回させるためのヨー駆動システムが開示されている。
【0003】
この特許文献1に係るヨー駆動システムでは、風力発電設備の本体(円筒支柱)側に旋回歯車が1個設けられ、ナセル側にはブレーキ機構及びヨー減速装置を備えた電動機が複数(開示例では2個)据え付けられている。各ヨー減速装置の出力ピニオンは、前記旋回歯車に同時に噛合しており、出力ピニオンが旋回歯車と噛合したときに旋回歯車側から受ける反作用によって、(電動機が据え付けられた)ナセルが旋回するようになっている。
【0004】
ナセル全体を円筒支柱に対して旋回させることにより、ナセルの先端の向きを所望の方向(例えば風上の方向)に向けることができ、効率的に風圧を受けることができる。また、複数のヨー減速装置の各ピニオンを旋回歯車に同時に噛合させる構成とすることにより、1個1個のヨー減速装置の大きさを小さく抑えることができ、地上から高い位置にある狭いナセル内で据え付ける際の取り扱い性等を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−320891号公報(段落[0020]、[0021]、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、風力発電設備は、自然環境下に設置される設備であるため、ときに乱れた風や突風を受けたりすることがある。このような強い風によりナセルを回転させようとする力が作用すると、旋回歯車側から該風力負荷トルクがヨー減速装置内に入力されてくる「動力の逆流現象」が発生する。
【0007】
通常、このような強い風が吹くときには、ヨー駆動システムの各回転要素は、制動機構によって回転が止められた状態とされ、ナセルが無制御状態で異常に旋回するのを防止している。このため、当該旋回歯車側から入力されてきた風力負荷トルクは、停止状態にあるヨー減速装置内の各要素に掛かることになり、ヨー減速装置は、非常に過酷な状態に置かれる。この結果、甚だしいときには破損に至ることもあるという問題が生じていた。
【0008】
この問題に対処するためにヨー減速装置全体の大きさを大きくするのは、狭いナセル内に設置する機器として大きなデメリットとなる。また、せっかく複数のヨー減速装置に分けて小型化したメリットも減殺されてしまう。何よりも、自然相手の設備であるため、どの程度の大きさまで大きくすれば破壊されない、という明確な指標自体がないため、闇雲にヨー減速装置の大きさを拡大することにも限界がある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、新たに見出した中間課題(後述)に着目し、この中間課題を克服することによって、結果としてヨー減速装置をいたずらに大きくすることなく、より破損しにくい風力発電設備のヨー駆動システムおよびヨー減速装置を提供することをその本来の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムに使用される前記ヨー減速装置であって、動力伝達系の中に組み込まれたホロー軸と、該ホロー軸に挿入され、当該ホロー軸の内周で該ホロー軸と連結されると共に、該ホロー軸から突出した位置で他の部材と連結される軸部材と、を有し、前記軸部材が、前記ホロー軸の軸方向中央よりも、該軸部材が当該ホロー軸から突出する側と反対側寄りで、該ホロー軸と連結される構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0011】
また、本発明は、第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置を少なくとも含む複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムであって、前記第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置は、前記出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のときに、前記第1ヨー減速装置の出力ピニオンの前記本体側の歯車に対するバックラッシと、前記第2ヨー減速装置の出力ピニオンの前記本体側の歯車に対するバックラッシとの差に相当する角度以上、回転方向に捻れ変形する軸部材または回転方向に回転角度差を発生させる捻れ発生機構を、動力伝達系に備えた構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0012】
なお、本発明において、風力発電設備の本体側の「本体」とは、「ヨー減速装置が組み込まれている部材に対して相対的に動く部材」を指している。風力発電設備のヨー駆動システムの場合、ヨー減速装置が組み込まれているナセルの構造部材に対して相対的に動く円筒支柱が「本体」に相当する。
【0013】
本発明想到に当たって着目した中間課題は、公知の課題ではないため、以下、簡単に説明する。
【0014】
ヨー駆動システムを複数のヨー減速装置にて構成する場合、該複数のヨー減速装置の出力ピニオンが同一のバックラッシで均等に旋回歯車と噛合し、全ヨー減速装置が同一の伝達トルクを受け持つように配備される必要がある。
【0015】
従来のヨー駆動システムでも、モータによって駆動された複数のヨー減速装置の出力を1個の旋回歯車に作用させる「通常の駆動時」の場合は、各ヨー減速装置の出力が均等になるように制御するのは比較的容易である。それは、(たとえ各ヨー減速装置の機械的なバックラッシ量が不均一であったとしても)各ヨー減速装置に実際に流れる電流をフィードバック制御することで、それぞれのヨー減速装置の発生トルクを均一にすることが、ある程度可能だからである。
【0016】
しかし、風力負荷トルクによって旋回歯車側から逆駆動されるときは、この「電流のフィードバック制御による等配制御」を活用することができない。そのため、従来のヨー駆動システムでは、強風でナセルが動くことによってバックラッシが最初に詰められたヨー減速装置が大きな負担を強いられることを余儀なくされていた。
【0017】
さらに、前述したように、通常このような強風環境では、ナセルの無制御状態での異常旋回を防止するため、ヨー減速装置の各回転要素が制動機構によって停止された状態に維持されることが多い。このため、最初にバックラッシが詰められたヨー減速装置によってナセルの回転が固定され、他のヨー減速装置は、旋回歯車とのバックラッシが詰められない状態のままとなって、旋回歯車側からの風力負荷を受けることができなくなるという状況も推察される。
【0018】
このような状況に陥ると、最初にバックラッシが詰められた「特定の1個のヨー減速装置」のみに風力負荷トルクが完全に集中してしまうことになる。そして、この最初にバックラッシが詰められた特定の1個のヨー減速装置が破損すると、今度は残ったヨー減速装置のうち、バックラッシが最初に詰められた第2のヨー減速装置が同様な状態となり、次々に連鎖的に破損してしまうのではないかと考えられる。
【0019】
本発明は、この特定の1個のヨー減速装置のみに風力負荷が掛かってしまう現象を中間課題として捉え、この中間課題を合理的に解消し、搭載されている全てのヨー減速装置によって旋回歯車側からの風力負荷トルクを受けることができるように構成している。これにより、ヨー減速装置をいたずらに大きくすることなく、ヨー減速装置の破損を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ヨー減速装置をいたずらに大きくすることなく、より破損しにくい風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置およびヨー駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る風力発電設備のヨー駆動システムに使用するヨー減速装置の全体断面図
【図2】図1の矢視II−II線に沿う断面図
【図3】上記ヨー減速装置が適用される風力発電設備の正面図
【図4】上記風力発電設備のヨー駆動システムにおけるナセルに上記ヨー減速装置が組み込まれている様子を模式的に示す斜視図
【図5】上記ヨー駆動システムの旋回外歯歯車に4個のヨー減速装置の出力ピニオンが噛合している状態を示す平面図
【図6】本発明の他の実施形態の一例に係る図1相当の断面図
【図7】本発明の更に他の実施形態の一例に係る図1相当の断面図
【図8】図7の実施形態の要部を拡大して示す断面図
【図9】本発明の更に他の実施形態の一例に係る図1相当のヨー減速装置の断面図
【図10】図9の実施形態の要部を拡大して示す断面図
【図11】本発明の更に他の実施形態の一例に係る図1相当のヨー減速装置の断面図
【図12】図11の実施形態の要部を拡大して示す断面図
【図13】本発明の更に他の実施形態の一例に係る図1相当のヨー減速装置の断面図
【図14】図13の矢視XIV−XIV線に沿う断面図
【図15】図13の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例に係る風力発電設備のヨー駆動システム、特にその中のヨー減速装置の構成について詳細に説明する。
【0023】
図3〜図5を参照して、この風力発電設備10は、円筒支柱(風力発電設備の本体)11の最上部にナセル(発電室)12を備える。ナセル12には、ヨー(Yaw)駆動システム14と、ピッチ(Pitch)駆動システム16が組み込まれている。ヨー駆動システム14は、円筒支柱11に対するナセル12全体の旋回角を制御するためのものであり、ピッチ駆動システム16は、ノーズコーン18に取り付けられる3枚の風車ブレード20のピッチ角を制御するためのものである。
【0024】
このヨー駆動システム14は、モータ22及び出力ピニオン24付きの4個のヨー減速装置G1〜G4及びそれぞれの出力ピニオン24と噛合する1個の旋回歯車28を備える(図4、図5参照:旋回歯車28は、この例では出力ピニオン24が内接する内歯歯車であるが出力ピニオンが外接する外歯歯車であってもよい)。各ヨー減速装置G1〜G4は、ボルト29を介してそれぞれナセル12の構造体側の所定の位置に固定されている。
【0025】
図5に示されるように、この実施形態では、複数のヨー減速装置G1〜G4は、それぞれの前記出力ピニオン24が、旋回歯車28と周方向で等間隔ではない位置にて噛合している。これは、狭いナセル12内にヨー減速装置G1〜G4を配置しようとした場合に、現実にはヨー減速装置G1〜G4を円周方向において均等に配置するのが困難であることから、このように等間隔でない配置の方がメリットが大きいという事情に基づいている。なお、この図5の配置例は一例であり、現実には実際のナセル内の状況に応じて適宜の配置に変更されてよく、勿論、円周方向に等間隔であっても良い。
【0026】
この構成により、各ヨー減速装置G1〜G4のモータ22によってそれぞれの出力ピニオン24を同時に回転させると、該出力ピニオン24が旋回歯車28と噛合しながら該旋回歯車28の中心36(図4参照)に対して公転する。この結果、ナセル12を円筒支柱11(に固定された旋回歯車28)に対して相対的に移動させることができ、ナセル12全体を円筒支柱11に固定されている旋回歯車28の中心36の周りで旋回させることができる。これにより、ノーズコーン18を所望の方向(例えば風上の方向)に向けることができ、効率的に風圧を受けることができる。
【0027】
前記ヨー減速装置G1〜G4は、それぞれ同一の構成を有しているため、ここではヨー減速装置G1について説明する。
【0028】
図1を参照して、ヨー減速装置G1はモータ22、直交歯車減速機構40、第1、第2平行軸減速機構41、42及び偏心揺動型の遊星歯車減速機構44が動力伝達経路上でこの順に配置されている。
【0029】
以下、動力伝達経路上の順番に説明していく。モータ22のモータ軸46は、直交歯車減速機構40の入力軸を兼ねており、モータ22のモータ軸46の負荷側の端部にはハイポイドピニオン47が直切りで形成されている。なお、該モータ軸46の反負荷側の端部にはブレーキ装置(図示略)が備えられている。
【0030】
直交歯車減速機構40は、モータ22の先端に直切形成された前記ハイポイドピニオン47と、該ハイポイドピニオン47と噛合するハイポイドギヤ50とを備え、モータ軸46の回転方向を直角方向に変更している。ハイポイドギヤ50は、第1中間軸52に固定されている。
【0031】
第1中間軸52には、第1平行軸減速機構41のスパーピニオン54が直接形成されている。第1平行軸減速機構41は、このスパーピニオン54と、該スパーピニオン54と噛合するスパーギヤ56とを備えている。スパーギヤ56は、第2中間軸58に固定されている。第2中間軸58には第2平行軸減速機構42のスパーピニオン60が直接形成されている。
【0032】
第2平行軸減速機構42は、このスパーピニオン60と、該スパーピニオン60と噛合するスパーギヤと64を備えている。スパーギヤ64はホロー出力軸(ホロー軸:第2平行軸減速機構42の出力軸)66に固定されている。ホロー出力軸66はスプライン68を介して連結軸70と連結されている。連結軸70の負荷側は、偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の入力軸でもある偏心体軸(第2のホロー軸)72がスプライン92を介して連結されている。
【0033】
このホロー出力軸66−連結軸70−偏心体軸(第2のホロー軸)72の連結については、後に詳述する。
【0034】
なお、符号73は、ボルト75を介して後述する遊星歯車減速機構44の反負荷側カバー48Cと連結された継ケーシングである。
【0035】
遊星歯車減速機構44は、2枚の外歯歯車76と、該外歯歯車76が揺動しながら内接噛合する内歯歯車78と、内歯歯車78の軸心位置O1に外歯歯車76を貫通して配置されるとともに、外歯歯車76を揺動させる偏心体74を有する偏心体軸72と、を備えたいわゆるセンタクランク型と称される偏心揺動型の減速機構である。
【0036】
2枚の外歯歯車76は、その偏心位相が丁度180度ずれており、互いに離反する方向に偏心した状態を維持しながら揺動回転する。なお、遊星歯車減速機構44のケーシング48は、第1、第2ケーシング体48A、48B、及び、反負荷側及び負荷側カバー体48C、48Dとで主に構成され、ボルト29を介して前記ナセル12の構造体12Aに固定されている。
【0037】
前記内歯歯車78は、このうちの第1ケーシング体48Aと一体化されている内歯歯車本体78Bと、該内歯歯車本体78Bに回転自在に保持されて内歯として機能する円筒状の外ピン78Aによって構成されている。内歯歯車78の内歯の数(外ピン78Aの数)は、外歯歯車76の外歯の数より僅かだけ(この例では1だけ)多い。
【0038】
図2に示されるように、外歯歯車76には、内ピン80が摺動促進部材81とともに複数(この例では10本)、同一円周上で貫通している。内ピン80は、出力フランジ(キャリヤ)82と圧入により一体化され、該出力フランジ82はヨー減速装置G1の出力軸84と一体化されている。
【0039】
なお、各内ピン80は、押さえプレート86によってそれぞれの端部を支持されており、押さえプレート86は、該押さえプレート86に強いラジアル負荷が掛かったときにのみ接触するような極めて僅かな隙間を有して反負荷側カバー体48Cの段部48C1と対峙している。
【0040】
出力軸84は、第2ケーシング体48Bの内周に組み込まれた自動調心ころ軸受85と、第1ケーシング体48Aの内周に配置されたころ83によって支持されている。ころ83は、前記内歯歯車78の内歯を構成する外ピン78Aと同軸に配置され、出力軸84と一体化された出力フランジ82を支持することによって、出力軸84の一端を回転自在に支持している。
【0041】
出力軸84には、スプライン87を介して前出の出力ピニオン24が連結され、該出力ピニオン24が既に説明した旋回歯車28(図4、図5)と噛合する構成とされている。
【0042】
ここで、前記第2平行軸減速機構42のホロー出力軸(ホロー軸)66−連結軸(軸部材)70−偏心体軸(第2のホロー軸)72の連結部についての構成について詳細に説明する。
【0043】
ホロー出力軸66と連結軸70の連結部の構成から説明する。ホロー出力軸66と連結軸70の連結部は、動力伝達系の中(第2平行軸減速機構42の出力段)に組み込まれた該第2平行軸減速機構42のホロー出力軸66と、該ホロー出力軸66に挿入され、当該ホロー出力軸66の内周で該ホロー出力軸66と連結されると共に、該ホロー出力軸66から突出した位置で(他の部材である)偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の偏心体軸72と連結される連結軸70と、で構成されている。
【0044】
ホロー軸66は、この実施形態では、軸方向寸法がL1であり、一対の軸受88、90によって両持ち支持されている。ホロー出力軸66はスプライン68を介して連結軸70と連結されている。連結軸70は、前記ホロー出力軸66の軸方向中央C1よりも、連結軸70がホロー出力軸66から突出する側(図1の例では紙面下側)と反対側寄り(この例では軸方向中央C1よりも紙面上側寄りで)で、該ホロー出力軸66と前記スプライン68を介して連結されている。
【0045】
より具体的には、ホロー出力軸66の一端部、具体的には、連結軸70が偏心体軸72へ向けて突出するのと反対側の端部(つまり、連結軸70がホロー出力軸66以外の他の部材(本実施形態では偏心体軸72)と連結されるのと反対側の端部)内周には前記スプライン68の一方である雌スプライン部66Bが設けられている。また、連結軸70の一端部に前記スプライン68の他方である雄スプライン部70Aが設けられている。連結軸70は、ホロー出力軸66の中空部66Aに挿入されて、この雄スプライン部70Aがホロー出力軸66に設けられた前記雌スプライン部66Bと連結される。また、連結軸70の他端部は、ホロー出力軸66の雌スプライン部66Bが設けられているのと反対側の端部から突出させられている。
【0046】
連結軸70の前記一端部の端面にはボルト98によってプレート100が固定されている。該プレート100は、ホロー出力軸66の軸方向端面にボルト102によって固定されている。これにより、連結軸70の点検および交換を、ボルト98、102での取り付け、取り外しのみで容易に行うことができる。なお、本実施形態においては、ホロー出力軸66および連結軸70の連結部を覆うカバー101が、第1平行軸減速機構41および第2平行軸減速機構42のケーシング103に固定されている。
【0047】
一方、連結軸70の負荷側は、遊星歯車減速機構44の入力軸でもある偏心体軸(第2のホロー軸)72がスプライン92を介して連結されている。偏心体軸72は、軸方向寸法がL2であり、一対の軸受94、96で支持されている。連結軸70と偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の偏心体軸72との連結部では、前記ホロー出力軸66と連結軸70との連結構成と、上下関係が逆になっているだけで同様の連結構成にて、連結軸70が、該第2のホロー軸である偏心体軸72と連結されている。
【0048】
すなわち、連結軸70は偏心体軸72の軸方向中央C2よりも、連結軸70が偏心体軸72から突出する側(この例では紙面上側)と反対側寄り(この例では軸方向中央C2よりも下側寄り)で、該偏心体軸72とスプライン92を介して連結されている。
【0049】
具体的には、連結軸70の他端部にもスプライン92の一方である雄スプライン部70Bが設けられるとともに、偏心体軸72のホロー軸66から遠い方の端部内周にはスプライン92の他方である雌スプライン部72Bが設けられている。連結軸70は、偏心体軸72の中空部72Aにホロー出力軸66に近い方の端部から挿入されて、前記雄スプライン部70Bおよび雌スプライン部72Bからなるスプライン92を介して連結されている。
【0050】
また、連結軸70は、ホロー出力軸66および偏心体軸72の内部に形成された長い中空部66A、72Aに囲まれているため、仮に強く捻れたとしても、著しく曲がったりする不具合は、発生しないように配慮されている。
【0051】
本実施形態に係る第2平行軸減速機構42のホロー出力軸66−連結軸70−偏心体軸(第2のホロー軸)72の連結部は、結果として、単一(同一)の連結軸70を共通に用いて、本発明に係る「2組」の連結構造を組み合わせた構成とされていることになる。また、本実施形態においては、ホロー出力軸66の偏心体軸72から遠い方の端部と偏心体軸72のホロー軸66から遠い方の端部に、連結軸70と連結するための雌スプライン部66B、72Bを設けている。つまり、連結軸70の有効軸方向長さL4、すなわち、ホロー出力軸66と連結軸70との連結部(スプライン68の軸方向中央)から偏心体軸72と連結軸70との連結部(スプライン92の軸方向中央)までの距離を、装置を(軸方向に)大型化することなく、最大限に確保できるようにしている。
【0052】
この結果、連結軸70の有効軸方向長さ(ホロー出力軸66と連結軸70との連結部から偏心体軸72と連結軸70との連結部までの距離)L4は、ホロー出力軸66と偏心体軸72との間の寸法L3にホロー出力軸66の軸方向寸法L1および偏心体軸72の軸方向寸法L2を加えた長さに近い長い寸法となっている。
【0053】
このような連結部構成としたのは、連結軸70が、伝達するべきトルクに対して必要な強度を確保しつつ、所定の条件のときに回転方向に所定の捻れ変形量(回転角位相差)だけ捻れるようにするためである。
【0054】
すなわち、この実施形態に係る連結軸70は、出力ピニオン24に作用する荷重が所定値以上のときに、各ヨー減速装置G1〜G4における出力ピニオン24の旋回歯車28に対するそれぞれの「バックラッシの差」に相当する所定角度以上、回転方向に捻れ変形する。
【0055】
ここで、「出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のとき」の「所定値」とは、本発明の趣旨が「強い風力負荷トルクが掛かったときに、各ヨー減速装置が均等に荷重を受け持つことによって、特定のヨー減速装置のみに荷重が集中しないようにする。」という点にあることを考慮して決定されるものである。
【0056】
具体的には、「モータ22が定格トルクを出力しているときに出力ピニオン24に掛かるトルク相当値(例えば、本実施形態においては1250kgf)」が1つの指標となる。荷重等配を確実に実現するには、最大でも、該定格トルク相当値の2倍(例えば2500kgf)以下に設定されるべきである。すなわち、モータ22の定格トルクの2倍のトルクが発生されているときに、出力ピニオンに掛かるトルクが「所定値の上限」である。
【0057】
一方、「所定値の下限」については、本発明では特に限定されない。しかし、余りに低いレベルから捻れ変形が発生するようにすると、モータ22で駆動するときの応答性が悪くなるほか、必要な強度も確保しにくくなるため、モータ22が疲労等価荷重(モータの定格トルクの半分程度)のトルクを出力したときに出力ピニオン24に掛かる値が、事実上のほぼ下限となる。
【0058】
逆にいうならば、この所定値以下のトルクしか出力ピニオンに掛かっていないような場合には、大きな捻れ変形が発生しないように設定することが好ましい。以上のように、本発明の「所定値」は、モータ22が定格トルクの半分のトルクを出力しているときに出力ピニオンに掛かるトルク以上であって、モータ22が定格トルクの2倍のトルクを出力しているとしたときに出力ピニオンに掛かるトルク以下に設定するのが好ましい。本実施形態においては、モータ22が定格トルクを出力しているときに出力ピニオン24に掛かるトルク相当値に設定されている。
【0059】
また、「バックラッシの差」とは、理想的には、旋回歯車28と出力ピニオン24とのバックラッシが最も小さなヨー減速装置(第1ヨー減速装置、G1〜G4のいずれか)のバックラッシ量と、該バックラッシが最も大きなヨー減速装置(第2ヨー減速装置、G1〜G4のいずれか)のバックラッシ量との差である。より具体的には、「風力負荷トルクによってナセルが回転することにより、前記バックラッシが最小のヨー減速装置のバックラッシが詰まった(0になった)後、最大のバックラッシを有しているヨー減速装置のバックラッシがなくなるまでに当該最大のバックラッシを有しているヨー減速装置の出力ピニオン24が回転する角度」のことである。
【0060】
ただし、バックラッシが最も小さなヨー減速装置の連結軸70が捻れることにより、バックラッシが次に小さなヨー減速装置の出力ピニオン24が旋回歯車28と噛合うと、それだけでも2台のヨー減速装置による等配効果は得られ、さらに当該2台のヨー減速装置の連結軸70が捻れることにより、次のヨー減速装置の出力ピニオン24が旋回歯車28と噛合うとさらに等配効果が得られる。そうすると、結局、「バックラッシの差」とは、任意の2台のヨー減速装置(第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置)におけるバックラッシの差と捉えればよい。
【0061】
バックラッシの差に「相当する角度」とは、対象となる連結軸の動力伝達系上の位置によって、減速比(出力ピニオンから見た場合は増速比)の分乗じた角度ということである。この実施形態では出力ピニオン24から見た遊星歯車減速機構の増速比は43であるため、43倍とした角度、ということになる。 但し、現実問題として、旋回歯車28に対する各ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24の実際の「バックラッシの差」は、出力ピニオン24の歯形の製造誤差のほか、ヨー減速装置G1〜G4をナセル12に組み付ける際の組み付け誤差の影響も大きく受ける。そのため、この「バックラッシの差」は、ヨー減速装置G1〜G4の設計或いは製造の段階では、不明である。
【0062】
この「ヨー減速装置G1〜G4の設計或いは製造時には不明」という問題については、例えば、ヨー減速装置G1〜G4の、実際に取り付けられた状態のバックラッシを複数例サンプリングして平均値を算出する等の手法で対応することができる。
【0063】
例えば、発明者らが、この観点で、最も普及している1.5MW〜3.0MWクラスの風力発電設備の該バックラッシの平均値を測定したところ、概ね0.1mmであった。この値に基づいた具体的な設計数値例を以下に示す。
【0064】
<連結軸70の捻れの程度に関して>
本実施形態の場合、モータ22が定格トルクを出力しているときに出力ピニオン24に掛かるトルク相当値T1は、1250kgfであるから、捻りを生じさせようとする連結軸70に作用する捻りモーメントT2(N・mm)は、遊星歯車減速機構44の減速比が43、効率ηが0.93であることから、
T2=(1250kgf/43)×0.93
=27.03kgf=264894N・mm …(1)
となる。
【0065】
ここで、連結軸70のねじれ角θ(rad)は、
θ=(32・T・L)/(π・G・d4) …(2)
で、表すことができる。Tは捻りモーメント(N・mm)、Lは軸長(mm)、Gは剪断(横)弾性係数(MPa)、dは軸径(mm)である。
【0066】
この実施形態では、連結軸70の軸長Lとして、有効軸方向長さL4=400mmが確保されている。今、連結軸70の径dとして、d2=20mm、剪断(横)弾性係数Gとして、軟鋼の一般値である8300kgf/mm2(81340MPa)を用い、(2)式に具体的数字を(単位を揃えて)代入して、連結軸70でのねじれ角θ(rad)の大きさを確認してみると、連結軸70に作用する捻りモーメントT2(N・mm)は、(32×264894×400)/(3.14×81340×204)=0.0829(rad)となる。
【0067】
0.0829(rad)は、度数に換算すると4.75度である。すなわち、出力ピニオン24にモータ22の出力トルク相当の大きさのトルクが掛かった場合、本実施形態での連結軸70には、4.75度の捻れが発生することになる。
【0068】
一方、バックラッシ0.1mmは、旋回歯車28の歯数が88の場合0.1mm/88=0.00114(rad)に相当する。度数に換算すると0.065度である。これが出力ピニオン24のバックラッシ0.1mmに対する回転角度である。減速比(増速比)43を考慮して連結軸70での回転角度に更に換算すると、0.065×43=2.8度となり、前記4.75度よりも小さい。これは、連結軸70が捻れている間に、旋回歯車28と出力ピニオン24との間のバックラッシ(0.1mm)が解消(消滅)し、第2ヨー減速装置が荷重を分担し得る状態となり得ることを意味している。
【0069】
<連結軸70の耐荷重について>
この種の軸部材における捻りによる剪断応力τ(MPa)は、次式で表される。
τ=16T/(π・d3) …(3)
【0070】
(3)式に、T=T2=264894(N・mm)、d=d2=20(mm)を代入すると、連結軸70での軸剪断応力τ1(MPa)は、(16×264894)/(3.14×203=168.7MPaとなる。168.7MPaは、17.2kgf/mm2に相当する。
【0071】
一般に、SCM材の場合、剪断応力は、19kg/mm2程度であり、浸炭材ならば40kg/mm2程度は、確保可能である。したがって、連結軸70に生じる剪断応力(17.2kg/mm2)に耐え得る強度を確保するのは、十分可能である。
【0072】
以上を総合すると、本実施形態に係る装置にあっては、上記構成および寸法設定により、連結軸70として十分な耐荷重強度を維持した上で、旋回歯車28と出力ピニオン24のバックラッシが解消する以上に連結軸70の捻れ量を確保できることが分かる。
【0073】
ところで、上記計算例では、バックラッシの実際の平均値に基づいて捩れや強度を試算したが、実際のバックラッシの大きさは、風力発電設備の大きさ(より具体的には旋回歯車や出力ピニオンの大きさ)が異なると、異なってくる可能性がある。これに対しては、、例えば、当該「バックラッシの差」と相関のあるパラメータを選定して該「バックラッシの差」を特定する指標とすることもできる。
【0074】
より具体的に説明すると「バックラッシの差」は、例えば、各ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差を使用して定義することができる。ここで、歯車の「単一ピッチ誤差」とは、JIS B1702−1やISO1328−1に定義されており、「歯たけのほぼ中央付近の歯車軸と同一の中心をもつ測定円周上で定義された軸直角平面での実際のピッチと対応する理論ピッチとの差」のことであり、歯車試験機等で出力ピニオン24を測定することにより得ることができる。
【0075】
次に、第1ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差をP1、第2ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差をP2、旋回歯車28の単一ピッチ誤差をPS、出力ピニオン24と旋回歯車28との間の基準バックラッシをBBとし、また単一ピッチ誤差は、時計回りおよび反時計回りのいずれかの方向の誤差を正の値、他の方向の誤差を負の値としてとるものとする。第1ヨー減速装置の出力ピニオン24と旋回歯車28との間のバックラッシB1と、第2ヨー減速装置の出力ピニオン24と旋回歯車28との間のバックラッシB2は、以下の式で表される。
B1=BB−(P1+PS)
B2=BB−(P2+PS)
【0076】
そうすると、バックラッシB1とB2との差は、B2−B1=P1−P2、となる。つまり、第1ヨー減速装置の出力ピニオン24と旋回歯車28との間のバックラッシと、第2ヨー減速装置の出力ピニオン24と旋回歯車28との間のバックラッシとの差は、第1ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差と第2ヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差との差として定義できる。
【0077】
即ち、本実施形態に係る連結軸70は、ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24に作用する荷重が所定値以上のときに、2台のヨー減速装置の出力ピニオン24の単一ピッチ誤差の差に、出力ピニオンから連結軸70までの増速比を掛けた角度だけ、捻れ変形するように、連結軸70の外径、全長、素材、および熱処理を含む製造手法等が選定される。
【0078】
この手法に依れば、ヨー減速装置単体に属するパラメータのみに依存して連結軸70等の設計をすることができるため、実際のバックラッシをいちいち確認する必要がない。
【0079】
なお、ここでの「バックラッシ」は、基本的には「旋回歯車28と各ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24との間の寸法上の隙間に係るバックラッシ」を意味しているが、より好ましくは、旋回歯車28と各ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24との間の寸法上の隙間に係るバックラッシに、出力ピニオン24から(該出力ピニオンの回転を制動可能な)ブレーキ機構に至るまでの動力伝達系全体のバックラッシを加味した「補正バックラッシ」の概念を用いると一層良い。
【0080】
本実施形態では、モータ22のモータ軸46に図示せぬブレーキ機構が備えられているため、この「補正バックラッシ」は、旋回歯車28と各ヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24とのバックラッシのほか、偏心揺動型の遊星歯車減速機構44、第2平行軸減速機構42、第1平行軸減速機構41、および直交歯車減速機構40における歯車等の各バックラッシ、更には、モータ22の回転機構(モータ軸46を支持する軸受のがた等)におけるバックラッシ等も含めて「補正バックラッシ」を捉えることになる。因みに後述する実施形態のように、ブレーキ機構を例えば、ウォーム減速機構のセルフロック機能によって実現するときには、出力ピニオンから該ウォーム減速機構までのバックラッシが「補正分」ということになる。
【0081】
補正バックラッシの概念を用いることにより、より正確、且つ確実な等配ができるようになる。
【0082】
次に、このヨー減速装置G1の作用を説明する。
【0083】
再び図1を参照して、モータ22のモータ軸46の回転は、直交歯車減速機構40のハイポイドピニオン47及びハイポイドギヤ50の噛合によって初段減速され、同時に回転軸の方向が90度変更されて第1平行軸減速機構41の第1中間軸52に伝達される。
【0084】
第1中間軸52の回転は、第1平行軸減速機構41のスパーピニオン54及びスパーギヤ56の噛合によって第2中間軸58に伝達されると共に、さらに第2平行軸減速機構42のスパーピニオン60及びスパーギヤ64を介してホロー出力軸66に伝達される。ホロー出力軸66の回転は、スプライン68、連結軸70、スプライン92を介して偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の偏心体軸72に伝達される。この部分の作用については、後に詳述する。
【0085】
偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の偏心体軸72が回転すると、偏心体74を介して外歯歯車76が(内歯歯車78に内接しながら)揺動回転する。このため、外歯歯車76と内歯歯車78との噛合位置が順次ずれてゆく現象が生じる。この結果、遊星歯車減速機構44の偏心体軸72が1回回転する毎に、外歯歯車76が1回揺動し、(ナセル12に固定された状態にある)内歯歯車78に対して1歯分ずつ(歯数差分ずつ)位相がずれて行くようになる(自転成分が発生する)。
【0086】
この自転成分を内ピン80、出力フランジ(キャリヤ)82を介して出力軸84から取り出すことにより、遊星歯車減速機構44での減速が実現される。
【0087】
出力軸84の回転は、スプライン87を介して出力ピニオン24に伝達される。出力ピニオン24は旋回歯車28と噛合しており、且つ、該旋回歯車28は、円筒支柱11に固定されているため、反作用によって、結局、出力ピニオン24は、自転しながら旋回歯車28の中心36に対して公転する。
【0088】
ヨー減速装置G1〜G4は、ナセル12に固定されているため、結局、該円筒支柱11側の旋回歯車28の軸心36に対してナセル12が水平方向に回転(旋回)する。
【0089】
ここで、例えば、突風等が風車ブレード20やナセル自体に作用することによってナセル12を強制的に旋回させようとする巨大な「風力負荷トルク」がヨー減速装置G1〜G4の出力ピニオン24側から入力されたとする。この場合、この巨大な風力負荷トルクは、ヨー駆動システム14を逆から駆動し、旋回歯車28を介してヨー減速装置G1の出力ピニオン24を回転させようとする。
【0090】
一般に強い風が吹いているときには、モータ22の反負荷側に設けられたブレーキ機構によってヨー減速装置G1〜G4の各回転要素は回転不能の状態とされ、ナセル12が強い風によって無制御状態で旋回してしまうのを防止している。そのため、従来のヨー駆動システムでは、ナセル12が動くことによってバックラッシが最初に詰められたヨー減速装置(便宜上、第1のヨー減速装置G1とする)が「1台のみ」で該旋回歯車28のそれ以上の回転を阻止するため、他のヨー減速装置G2〜G4の出力ピニオン24は、旋回歯車28とのバックラッシが詰められない状態のままとなってしまい、旋回歯車28側からの風力負荷トルクを受けることができない。
【0091】
そのため、結局、最初にバックラッシが詰められた「第1のヨー減速装置G1」にのみ風力負荷トルクが集中し、この第1のヨー減速装置G1が破損してしまう状況が発生し易くなっていたと考えられる。そして、第1のヨー減速装置G1が破損してしまうと、今度は残ったヨー減速装置のうち、バックラッシが最初に詰められた第2のヨー減速装置が同様な状態となるため、こうして全てのヨー減速装置が次々に連鎖的に破損してしまう状況に陥ってしまったと考えられる。
【0092】
しかしながら、本実施形態によれば、最初にバックラッシが詰められた第1のヨー減速装置G1の出力ピニオン24に旋回歯車28から所定値以上の荷重が掛かると(この実施形態ではモータ22が定格トルクを出力しているときに出力ピニオン24に掛かる荷重以上の荷重が掛かると)、この荷重によって、連結軸70が捻れ変形する。このため、出力ピニオン24は、(ブレーキ機構によって減速装置G1〜G4の各回転要素の回転が基本的に止められている状況であるにも拘わらず)連結軸70の当該捻れ変形によって、そのまま更に回転を続けることができ、旋回歯車28もそのまま追随して回転を続けることができる。
【0093】
この連結軸70での捻れ変形量は、出力ピニオン24側から所定値以上の荷重が掛かったときにバックラッシの差以上確保されるように設定されている。そのため、旋回歯車28がこの追随回転を行う間に、2番目にバックラッシの小さかった他のヨー減速装置(例えば第2ヨー減速装置G2)のバックラッシが詰められ、旋回歯車28からの荷重を該第2のヨー減速装置G2によっても受けることができるようになる。この結果、その分、従来ならばそのまま第1のヨー減速装置G1のみに掛かり続けた旋回歯車28側からの荷重の一部が第2のヨー減速装置G2に振り分けられるようになる。
【0094】
そして、第2のヨー減速装置G2でも連結軸70での捻れ変形が可能であるため、同様に、第3のヨー減速装置G3も、バックラッシが詰められて旋回歯車28からの荷重を受け持つようになる。そして、最終的には各ヨー減速装置G1〜G4のそれぞれの連結軸70がほぼ等しい反力を受け持った状態となるように、各ヨー減速装置G1〜G4の連結軸70での捻れ変形がバランスする。
【0095】
この捻れ変形がバランスした状態では、バックラッシの大小の如何に関わらず(旋回歯車28に対して反力を与え始める時期が早いか遅いかに関係なく)、全てのヨー減速装置G1〜G4に旋回歯車28からの荷重が等配された状態となる。
【0096】
これは、要するならば、例えば、本実施形態のように4個のヨー減速装置G1〜G4によってヨー駆動システム14が構成されている場合には、実質的に(従来と比べて)風力負荷トルクをほぼ1/4に減じた(耐風力負荷トルク特性をほぼ4倍に拡充した)ことと同様な作用効果を得ることができることを意味している。この結果、従来と同程度の大きさのヨー減速装置G1〜G4を使用しながら、各ヨー減速装置G1〜G4の破損(特に連鎖的な破損)を極めて効果的に防止することができる。
【0097】
この実施形態のように、旋回歯車28の円周方向にヨー減速装置G1〜G4が等間隔に配置されない場合には、各ヨー減速装置G1〜G4に均等に風力負荷トルクを受け止めさせるのは特に難しい。このため、搭載されている全てのヨー減速装置G1〜G4が、捻れ変形の機能により共同して旋回歯車28側からの風力負荷トルクをほぼ等しい大きさずつ、分担して受けることができるようになるメリットは極めて大きい。
【0098】
ところで、言うまでもなく、動力伝達を行う軸部材(連結軸70)が、伝達すべきトルクを破損することなく確実に伝達するには、当然に相応の強度(剛性あるいは太さ)が必要である。この強度を確保した条件下で本発明に係る大きな「捻れ変形量」を確保するには、軸部材が相応の「軸方向長さ」を有していなければならない。そのため、単純に設計すると、ヨー減速装置G1〜G4が大型化してしまう要因となる。
【0099】
本実施形態では、連結軸70が、第2平行軸減速機構42のホロー出力軸66に挿入されるとともに、ホロー出力軸66の内周で該ホロー出力軸66と連結されている。そして、その上で、連結軸70が、ホロー出力軸66の軸方向中央C1よりも連結軸70が該ホロー出力軸66から突出する側と反対側寄りで、該ホロー出力軸66と連結される構成とされている。
【0100】
また、これと同様の構成が、連結軸70と偏心体軸(第2のホロー軸)72との間でも採用されている。
【0101】
このため、(減速装置G1の全長を殆ど増大させることなく)ホロー出力軸66と偏心体軸72との間の寸法L3に、ホロー出力軸66の軸方向長さL1および偏心体軸72の軸方向長さL2をプラスした長さに近い極めて長い有効軸方向長さL4の連結軸70を組み込むことを可能としている。
【0102】
因みに、もし、本実施形態の手法によらず、ヨー減速装置の全長を変えずに、同じ動力伝達系の連結軸を従来の手法で設計した場合には、連結軸70の長さは、ホロー出力軸66と偏心体軸72との間の距離L3+α、すなわち、本実施形態の1/2程度の長さとなってしまう。このため、例えば、前述した(1)式〜(3)式を用いた計算例で同様の試算を行うと、連結軸で得られる捻りの大きさは、2.75度にしかならない。そのため、旋回歯車28と出力ピニオン24との間のバックラッシを解消するために必要な2.8度の捻り量を確保できなくなってしまう虞がある。換言するならば、この長さの連結軸で本実施形態の「意図する捻り量」を確保するには、連結軸70の外径d2をより小さく(細く)する必要がある。すると、今度は連結軸の耐荷重が十分でなくなる虞が生じてくる。
【0103】
本実施形態の連結軸70の連結構成に依れば、ヨー減速装置G1(〜G4)全体の大きさのコンパクト性を維持しながら、連結軸70において、必要なトルク伝達を行うための所定の強度を維持しつつ、十分な捻れ変形量を確保することができる。
【0104】
なお、上記実施形態においては、モータ22、直交歯車減速機構40、第1、第2平行軸減速機構41、42及び遊星歯車減速機構44が動力伝達経路上でこの順に配置されたヨー減速装置G1(〜G4)が示されていたが、本発明においては、ヨー減速装置の減速機構の具体的な構成は、特に上記構成に限定されない。
【0105】
図6に先の実施形態における直交歯車減速機構40、第1平行軸減速機構41、および第2平行軸減速機構42の代わりに、ウォーム減速機構110を採用したヨー減速装置G1aの構成例を示す。他の3個のヨー減速装置G2a〜G4aもヨー減速装置G1aと同様の構成とされている。
【0106】
なお、この実施形態においては、モータは、紙面と直交する方向に取り付けられるが、この図6においては、モータ自体は表示されておらず、モータの取り付け孔114のみが表示されている。
【0107】
ウォーム減速機構110は、ウォーム116とウォームギヤ118とで構成されている。ウォームギヤ118は、(該ウォーム減速機構110の出力軸である)ウォーム出力軸120と一体化されている。ウォーム出力軸120は、中空であり、先の実施形態における第2平行軸減速機構42のホロー出力軸66と同様の構成を有し、先の実施形態と同様の連結構成にて連結軸70と連結されている。連結軸70以降の構成は、先の実施形態と同一である。
【0108】
この実施形態では、ウォーム減速機構110減速比は、30以上(好ましくは40以上)に設定されている。ウォーム減速機構110の減速比を30以上(好ましくは40以上)に設定すると、該ウォーム減速機構110自体が有するセルフロック機能(負荷側からの荷重によって回転しない機能)を「ブレーキ機構」として利用することができる。このため、先の実施形態では必須であったモータ22に付設されていたブレーキ機構を省略することができ、その分コストダウンが図れる。
【0109】
この実施形態においても、ウォーム減速機構110のウォーム出力軸(ホロー軸)120−連結軸70−偏心体軸72の連結は、先の実施形態と全く同様の連結態様が採用されており、先の実施形態と全く同様の作用効果が得られる。
【0110】
また図7、図8のヨー減速装置G1b(G2b〜G4bも同じ)では、図6のウォーム減速機構110を残し、偏心揺動型の遊星歯車減速機構(44)の方を、2段の第1、第2単純遊星歯車減速機構130、140に置き換えた構成例が示されている。
【0111】
第1単純遊星歯車減速機構130は、太陽歯車132、遊星歯車134、および内歯歯車136を備え、太陽歯車132が入力部材、遊星歯車134を支持しているキャリヤ138が出力部材として機能している。
【0112】
第2単純遊星歯車減速機構140は、前記キャリヤ138とスプライン139を介して連結された太陽歯車142、遊星歯車144、および内歯歯車146を備え、太陽歯車142が入力部材、遊星歯車144を支持しているキャリヤ148が出力部材として機能している。
【0113】
ウォーム出力軸120と連結軸150との連結構造は、先の図6の実施形態のウォーム出力軸120と連結軸70との連結構造と同一である。また、太陽歯車132は、歯部132Aと歯部132Aから軸方向負荷側に延長された延長部132Bを有するとともに、軸方向に貫通する中空部132Cを有する。中空部内周には、歯部132Aのウォーム出力軸120から遠い方の端部に連結軸150と連結するためのスプライン139の一方である雌スプライン部132Dが形成されている。この雌スプライン部132Dは、太陽歯車132の軸方向中心を跨いで形成されているが、連結軸150がウォーム出力時120へ向けて突出する側と反対側の領域の方が大きい。したがって、このような場合にも、太陽歯車(ホロー軸あるいは第2ホロー軸)132の連結軸150が突出するのと反対側寄りで連結軸150のスプライン139の他方である雄スプライン150Aと連結されていることになる。
【0114】
なお、第2単純遊星歯車減速機構140のキャリヤ148は、スプライン154を介して出力軸160から取り出され、出力ピニオン162に伝達される。この実施形態では、出力軸160と出力ピニオン162は、初めから一体化されている。
【0115】
図9に本発明の更に他の実施形態の一例を示す。図10はその要部拡大図である。
【0116】
この実施形態においては、ヨー減速装置G1c(他のヨー減速装置G2c〜G4cも同じ)が減速機構として、二つの偏心揺動型の遊星歯車減速機構170、180を備えている。前段の遊星歯車減速機構170および後段の遊星歯車減速機構180の動力伝達系としての基本構成は、先の実施形態の遊星歯車減速機構44と同一であるため、便宜上、主たる部分に先の実施形態と同一の符号に前段ではP、後段ではSの添え字を付している。また、他の実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0117】
この実施形態においては、図10に示されるように、前段の出力フランジ82Pと一体化された出力軸84Pが本発明の軸部材(連結軸)、後段の偏心体軸72Sが本発明のホロー軸として機能している。すなわち、出力軸84Pは、偏心体軸72Sに挿入され、偏心体軸72Sの内周でスプライン190を介して偏心体軸72Sと連結されると共に、該偏心体軸72Sから突出した位置で(他の部材である)前段の偏心揺動型の遊星歯車減速機構170の内ピン80Pと連結されている。すなわち、この実施形態では、出力軸84Pは、偏心体軸72Sから図9、図10の紙面下側にも僅かに突出しているが、他の部材(内ピン80P)と連結されている紙面上側が、本発明での「突出する側」に相当している。
【0118】
出力軸84Pは、偏心体軸72Sの軸方向中央C3よりも、出力軸84Pが偏心体軸72Sから突出する側(図9、図10の紙面上側)と反対側寄り(この例では軸方向中央C2よりも紙面下側寄り)で、該偏心体軸72Sとスプライン190を介して連結されている。具体的には、偏心体軸72Sの内ピン80Pから遠い方の端部内周において連結されている。
【0119】
したがって、連結軸としての出力軸84Pは、ほぼ偏心体軸72Sの長さL5と同様の長さを確保することができ、捻れ変形が生じ易い構造とされている。
【0120】
この実施形態においても、この出力軸84Pが、出力ピニオン24側から風力負荷トルクが入力されてきたときに、旋回歯車28と出力ピニオン24とのバックラッシの差に相当する回転角度以上に、捻れ変形が発生するように設定されている。そのため、本実施形態においても、先の実施形態と同様の作用効果(全てのヨー減速装置G1c〜G4cが出力ピニオン24側からの荷重をほぼ同量ずつ受け持つという作用効果)が得られる。
【0121】
図11に本発明の更に他の実施形態の一例を示す。図12は、その要部拡大図である。
【0122】
このヨー減速装置G1d(他のヨー減速装置G2d〜G4dも同じ)は、外歯歯車200と、該外歯歯車200が揺動しながら内接噛合する内歯歯車202と、内歯歯車202の軸心O2からずれた位置に外歯歯車200を貫通して配置されるとともに外歯歯車200を揺動させる偏心体204を有する複数(この例では3本:1本のみ図示)の偏心体軸206とを備えた振り分け型の偏心揺動型の減速機構208を有している。
【0123】
モータのモータ軸(共に図示略)には、継軸210が装着されており、該継軸210の先端にはピニオン212が一体に形成されている。ピニオン212には、同一円周上に複数(この例では3個:1個のみ図示)設けられた振り分け歯車214と噛合している。振り分け歯車214は、連結軸216にスプライン217を介して連結されている。本実施形態においては、3本の偏心体軸206全てに連結軸216を配置・連結しているが、1本または2本の偏心体軸206には連結軸216を配置・連結せず、残りの偏心体軸206のみに連結軸216を配置・連結するようにしてもよい。
【0124】
連結軸216は、前記偏心体軸(ホロー軸)206とスプライン220を介して連結されている。この実施形態では連結軸216の図11、図12の紙面下側は突出した位置で他の部材と連結されておらず、上側が他の部材である振り分け軸214と連結されているので上側が偏心体軸(ホロー軸)206から突出した側となる。偏心体軸206は、一対の軸受222、224で支持され、スプライン220は、連結軸216が突出していない側の軸受224と重なる軸方向位置に設けられている。
【0125】
この結果、この実施形態においても、連結軸216が、(ホロー軸である)偏心体軸216の軸方向中央C4よりも該連結軸216が偏心体軸206から突出する側と反対側寄り(図11、図12の紙面下側寄り)で、該偏心体軸206と前記スプライン220を介して連結されている。
【0126】
より具体的には、偏心体軸206の振り分け歯車214と反対側の端部は、軸受224により出力フランジ231(該出力フランジ231が延長されて出力ピニオン230が固定される)に支持されるとともに、当該出力フランジ231を貫通して配置されている。偏心体軸206の出力フランジ231を貫通している端部内周には、連結軸216と連結するための前記スプライン220の一方である雌スプライン部206Aが形成されている。連結軸216は、偏心体軸206の中空部に挿通され、一端が前記スプライン220の他方である雄スプライン部216Aを介して前記雌スプライン部206Aと連結されるとともに、他端部は中空部から突出し、振り分け歯車214が固定される。
【0127】
つまり、偏心体軸206を出力フランジ231を貫通して配置することにより、偏心体軸206の長さをできるだけ大きくし、その偏心体軸206の端部内周に連結軸216を連結することにより、連結軸216の長さ(連結軸216と偏心体軸206の連結部から連結軸と振り分け歯車(他の部材)214との連結部までの距離)を、装置の軸方向寸法を増大させることなくできるだけ長く確保している。
【0128】
この実施形態においては、連結軸216の軸方向長さL6として、偏心体軸106の軸方向長さL7よりも長い長さを確保することができ、必要なトルクを伝達するための強度を維持しながら、出力ピニオン230に作用する荷重が所定値以上のときに、該出力ピニオン230の旋回歯車(28)に対するそれぞれのヨー減速装置G1d〜G4dのバックラッシの差に相当する回転角度以上、回転方向に捻れ変形させることができる。
【0129】
この実施形態においては、これまでの実施形態と同様に、風力負荷トルクが出力ピニオン230に掛かった場合のヨー減速装置G1d〜G4d間の荷重等配が実現できるほか、3本の偏心体軸206を駆動する連結軸216に対して捻れ変形が生じるように設計しているため、モータ側からのトルク伝達、および出力ピニオン230側からの風力負荷トルクの伝達の双方向のトルク伝達において、該3本の偏心体軸206間でのトルク伝達の等配機能をも得ることができる。
【0130】
なお、図示はしないが、このような振り分けタイプの偏心揺動型の減速機構には、複数の偏心体軸のうちの1部(例えば1本のみ)を、外歯歯車を駆動するための駆動偏心体軸として用い、他の偏心体軸については、外歯歯車の揺動を支持するだけの従動偏心体軸として用いる減速機構も知られており、このような減速機構にも適用可能である。
【0131】
ところで、これまでの実施形態においては、いずれも、捻れ変形する構成要素として、単独の軸部材を組み込むようにしていたが、複数の部材で同様な機能を持たせてもよい。要は、本発明は、動力伝達系に、出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のときに、前段側との連結部と、後段側との連結部との間に、回転方向に所定以上の回転角位相差を生じさせ得る機能を備えた捻れ発生軸部材、あるいは捻れ発生機構を有していればよい。
【0132】
この一例を、図13に示す。図14は、図13の矢視XIV−XIV線に沿う断面図、図15は図13の要部拡大図である。
【0133】
この実施形態に係るヨー減速装置G1e(G2e〜G4eも同じ)は、動力伝達系の減速機構の基本構造は、先の図1の実施形態と同一である。図1の実施形態と異なっているのは、第2平行軸減速機構42と偏心揺動型の遊星歯車減速機構44との連結部の構造である。すなわち、このヨー減速装置G1eでは、出力ピニオン24側から風力負荷トルクが掛かったときに回転角位相差を発生させる構成要素が、(単一の軸部材である連結軸70によってではなく)前段側との連結部と、後段側との連結部とで所定以上の回転角度差を許容する捻れ発生機構248によって構成されている。
【0134】
より詳細に説明するならば、この実施形態に係るヨー減速装置G1eでは、第2平行軸減速機構42のホロー出力軸250は、キー252を介して連結部材254と連結されている。キー252による連結部が、捻れ発生機構248の前段側の連結部を構成している。捻れ発生機構248は、連結部材254、ばね260及びブロック体262によって主に構成されている。連結部材254は、負荷側に外径d1の円形のばね収容部256を一体に有している。ばね収容部256は、図14、図15に示されるように、溝部256Aを有し、該溝部256A内に複数(図の例では4個)のばね260を取り囲むようにして収容している。ばね260は、ブロック体262に固定されている。ブロック体262は、偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の入力軸264とスプライン266を介して連結されている。スプライン266による連結部が捻れ発生機構248の後段側の連結部を構成している。入力軸264はキー268を介して偏心体270を備えた偏心体軸272と、更に連結されている。
【0135】
その他の構成は、先の図1の構成と同様であるため、主要な部位に図1の実施形態と同一の符号を付してある。
【0136】
この構成により、モータの駆動によってホロー出力軸250が回転しようとすると、キー252を介して連結部材254のばね収容部256が回転し、溝部256A内に収容されたばね260に対し円周方向の回転力が加えられる。この結果、ばねが固定されているブロック体262が回転し、ホロー出力軸250の回転が若干遅れた状態で(所定の回転角度だけ位相差が生じた状態で)偏心揺動型の遊星歯車減速機構44の入力軸264に伝達される。
【0137】
逆に、出力ピニオン24の側から風力負荷トルクが入力されてきたときには、遊星歯車減速機構44の入力軸264が回転しようとし、該入力軸264とスプライン266を介して連結されているブロック体262が回転しようとする。この動きは、該ブロック体262に固定されたばね260に伝達される。この結果、モータ22に付設された図示せぬブレーキ機構によって停止状態を維持している捻れ発生機構248の「キー252による前段側との連結部」に対して、「スプライン266による後段側との連結部」は、ばね260が溝部256A内で変形した分だけ動けるようになる(回転角位相差を有した状態となる)。その結果、出力ピニオン24は、その分、旋回歯車28と出力ピニオン24のバックラッシが詰められた位置から更に回転を続けることができる。
【0138】
そして、この更に回転が許容されている間に他のヨー減速装置G2e〜G4eのバックラッシが詰められ、当該他のヨー減速装置G2e〜G4eにおいても、同様な更なる回転が生じ、結局、風力負荷トルクが等配される状態となる。
【0139】
このように本発明においては、本来一体であるべき部材を前段側と後段側に分割し、これらをばね機構等の弾性変形可能な機構にて回転方向で連結することによっても、所期の目的を実現することができる。具体的な捻れ発生機構の構成は、この例に限定されない。
【0140】
なお、上記実施形態においては、本発明を風力発電設備において4個のヨー減速装置を備えたヨー駆動システムに本発明を適用していたが、ヨー減速装置の数は4個に限定されるものではなく、4個より多くても少なくても良い。
【0141】
実施形態においては、連結軸(軸部材)の両端部がホロー軸(ホロー軸、第2のホロー軸)と連結されていたが、連結軸のいずれか一方の端部は、必ずしもホロー軸に連結される必要はなく、例えば中実軸に連結されたり、あるいは図7、図8に示す構造であれば、連結軸150の一端に太陽歯車132が一体形成されていてもよい。
【0142】
また、連結軸(軸部材)の両端部がホロー軸(ホロー軸、第2のホロー軸)と連結される場合に、実施形態においては、いずれのホロー軸についても、軸方向中央よりも連結軸が突出するのと反対側寄りで連結軸と連結されていたが、これに限定されるものではなく、必要な捻れ量が確保できるのであれば、いずれか一方のホロー軸との連結位置については、軸方向中央よりも連結軸が突出する側寄りで連結しても良い。
【0143】
実施形態においては、ホロー軸の端部内周で連結軸と連結して、連結軸の有効軸方向長さ(連結軸とホロー軸の連結部から連結軸と他の部材の連結部までの距離)をできる大きく確保するようにしているが、ホロー軸の端部で連結することには限定されず、ホロー軸の軸方向中央よりも、連結軸(軸部材)が他の部材と連結される側と反対側寄りであれば、どのような位置で連結を行ってもよい。
【符号の説明】
【0144】
10…風力発電設備
11…円筒支柱
12…ナセル(発電室)
14…ヨー駆動システム
16…ピッチ駆動システム
18…ノーズコーン
20…風車ブレード
22…モータ
24…出力ピニオン
44…遊星歯車減速機構
66…ホロー出力軸(ホロー軸)
70…連結軸(軸部材)
72…偏心体軸(第2のホロー軸)
76…外歯歯車(遊星歯車)
78…内歯歯車
80…内ピン(遊星ピン)
82…出力フランジ(キャリヤ)
84…出力軸
G1〜G4…ヨー減速装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムに使用される前記ヨー減速装置であって、
動力伝達系の中に組み込まれたホロー軸と、
該ホロー軸に挿入され、当該ホロー軸の内周で該ホロー軸と連結されると共に、該ホロー軸から突出した位置で他の部材と連結される軸部材と、を有し、
前記軸部材が、前記ホロー軸の軸方向中央よりも、該軸部材が当該ホロー軸から突出する側と反対側寄りで、該ホロー軸と連結される
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記他の部材が第2のホロー軸であり、
前記軸部材が、該第2のホロー軸に挿入され、当該第2のホロー軸の内周で該第2のホロー軸と連結される
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記軸部材が、前記第2のホロー軸の軸方向中央よりも、前記ホロー軸と反対側寄りで、該第2のホロー軸と連結されている
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記軸部材が、前記ホロー軸の軸方向端部で連結される
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記ヨー減速装置を風力発電設備のナセルから取り外すことなく、前記軸部材が交換可能とされている
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記ヨー減速装置が、外歯歯車と、該外歯歯車が揺動しながら内接噛合する内歯歯車と、前記内歯歯車の軸心位置に配置されるとともに前記外歯歯車を揺動させる偏心体を有する1本の偏心体軸と、を備えたセンタクランク型の偏心揺動型の減速機構を有し、前記偏心体軸が前記ホロー軸とされる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記ヨー減速装置が、外歯歯車と、該外歯歯車が揺動しながら内接噛合する内歯歯車と、前記内歯歯車の軸心からずれた位置に配置されるとともに前記外歯歯車を揺動させる偏心体を有する複数の偏心体軸とを備えた振り分け型の偏心揺動型の減速機構を有し、前記複数の偏心体軸のうち少なくとも1本の偏心体軸が前記ホロー軸とされる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記ヨー減速装置が、太陽歯車と、遊星歯車と、内歯歯車とを備えた単純遊星歯車減速機構を有し、前記太陽歯車が前記ホロー軸とされる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項9】
第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置を少なくとも含む複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムであって、
前記第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置は、
前記出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のときに、
前記第1ヨー減速装置の出力ピニオンの前記本体側の歯車に対するバックラッシと、前記第2ヨー減速装置の出力ピニオンの前記本体側の歯車に対するバックラッシとの差に相当する角度以上、回転方向に捻れ変形する軸部材または回転方向に回転角度差を発生させる捻れ発生機構を、
動力伝達系に備えた
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システム。
【請求項10】
請求項9において、
前記軸部材または捻れ発生機構は、前記第1ヨー減速装置の出力ピニオンの単一ピッチ誤差と、前記第2ヨー減速装置の出力ピニオンの単一ピッチ誤差との差に相当する角度以上、捻れ変形または回転角度差を発生させる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システム。
【請求項11】
請求項9または10において、
前記軸部材または捻れ発生機構は、前記出力ピニオンと前記本体側の歯車とのバックラッシに、該出力ピニオンから該出力ピニオンの回転を制動可能なブレーキ機構に至るまでの動力伝達系全体のバックラッシ分が加えられた補正バックラッシに相当する角度以上、捻れ変形または回転角度差を発生させる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システム。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかにおいて、
前記所定値が、前記ヨー減速装置を駆動するモータの定格トルクの2倍以下に設定されている
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システム。
【請求項13】
複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムに使用される第1のヨー減速装置および第2のヨー減速装置であって、
前記出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のときに、前記第1ヨー減速装置の出力ピニオンの単一ピッチ誤差と、前記第2ヨー減速装置の出力ピニオンの単一ピッチ誤差との差に相当する角度以上、回転方向に捻れ変形する軸部材または回転方向に回転角度差を発生させる捻れ発生機構を動力伝達系に備えた
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用される第1のヨー減速装置および第2のヨー減速装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記所定値が、前記ヨー減速装置を駆動するモータの定格トルクの2倍以下に設定されている
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用される第1のヨー減速装置および第2のヨー減速装置。
【請求項1】
複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムに使用される前記ヨー減速装置であって、
動力伝達系の中に組み込まれたホロー軸と、
該ホロー軸に挿入され、当該ホロー軸の内周で該ホロー軸と連結されると共に、該ホロー軸から突出した位置で他の部材と連結される軸部材と、を有し、
前記軸部材が、前記ホロー軸の軸方向中央よりも、該軸部材が当該ホロー軸から突出する側と反対側寄りで、該ホロー軸と連結される
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記他の部材が第2のホロー軸であり、
前記軸部材が、該第2のホロー軸に挿入され、当該第2のホロー軸の内周で該第2のホロー軸と連結される
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記軸部材が、前記第2のホロー軸の軸方向中央よりも、前記ホロー軸と反対側寄りで、該第2のホロー軸と連結されている
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記軸部材が、前記ホロー軸の軸方向端部で連結される
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記ヨー減速装置を風力発電設備のナセルから取り外すことなく、前記軸部材が交換可能とされている
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記ヨー減速装置が、外歯歯車と、該外歯歯車が揺動しながら内接噛合する内歯歯車と、前記内歯歯車の軸心位置に配置されるとともに前記外歯歯車を揺動させる偏心体を有する1本の偏心体軸と、を備えたセンタクランク型の偏心揺動型の減速機構を有し、前記偏心体軸が前記ホロー軸とされる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記ヨー減速装置が、外歯歯車と、該外歯歯車が揺動しながら内接噛合する内歯歯車と、前記内歯歯車の軸心からずれた位置に配置されるとともに前記外歯歯車を揺動させる偏心体を有する複数の偏心体軸とを備えた振り分け型の偏心揺動型の減速機構を有し、前記複数の偏心体軸のうち少なくとも1本の偏心体軸が前記ホロー軸とされる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記ヨー減速装置が、太陽歯車と、遊星歯車と、内歯歯車とを備えた単純遊星歯車減速機構を有し、前記太陽歯車が前記ホロー軸とされる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用されるヨー減速装置。
【請求項9】
第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置を少なくとも含む複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムであって、
前記第1ヨー減速装置および第2ヨー減速装置は、
前記出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のときに、
前記第1ヨー減速装置の出力ピニオンの前記本体側の歯車に対するバックラッシと、前記第2ヨー減速装置の出力ピニオンの前記本体側の歯車に対するバックラッシとの差に相当する角度以上、回転方向に捻れ変形する軸部材または回転方向に回転角度差を発生させる捻れ発生機構を、
動力伝達系に備えた
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システム。
【請求項10】
請求項9において、
前記軸部材または捻れ発生機構は、前記第1ヨー減速装置の出力ピニオンの単一ピッチ誤差と、前記第2ヨー減速装置の出力ピニオンの単一ピッチ誤差との差に相当する角度以上、捻れ変形または回転角度差を発生させる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システム。
【請求項11】
請求項9または10において、
前記軸部材または捻れ発生機構は、前記出力ピニオンと前記本体側の歯車とのバックラッシに、該出力ピニオンから該出力ピニオンの回転を制動可能なブレーキ機構に至るまでの動力伝達系全体のバックラッシ分が加えられた補正バックラッシに相当する角度以上、捻れ変形または回転角度差を発生させる
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システム。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかにおいて、
前記所定値が、前記ヨー減速装置を駆動するモータの定格トルクの2倍以下に設定されている
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システム。
【請求項13】
複数のヨー減速装置の出力ピニオンを風力発電設備の本体側の歯車と噛み合わせて、ナセルを旋回駆動する風力発電設備のヨー駆動システムに使用される第1のヨー減速装置および第2のヨー減速装置であって、
前記出力ピニオンに作用する荷重が所定値以上のときに、前記第1ヨー減速装置の出力ピニオンの単一ピッチ誤差と、前記第2ヨー減速装置の出力ピニオンの単一ピッチ誤差との差に相当する角度以上、回転方向に捻れ変形する軸部材または回転方向に回転角度差を発生させる捻れ発生機構を動力伝達系に備えた
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用される第1のヨー減速装置および第2のヨー減速装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記所定値が、前記ヨー減速装置を駆動するモータの定格トルクの2倍以下に設定されている
ことを特徴とする風力発電設備のヨー駆動システムに使用される第1のヨー減速装置および第2のヨー減速装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−47505(P2013−47505A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186584(P2011−186584)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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