説明

風力装置

【課題】モータの寸法が大きくなるといった不具合を避けることができる風力装置を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つのブレードを備えたロータと、このロータブレードのための調整装置とを有する風力装置に関するものである。装置の寸法の増加に伴って、ロータブレードの調整に対してより大きいロータブレードおよびより大きい駆動部が必要とされる。とくに、ダメージが生じた場合、このような駆動部は、運搬上、より高いレベルで、時間および材料を消費する。このような不具合を避けるために、1つより多い駆動部を備えた調整装置が設けられる。この装置により、各駆動部は出力の対応する割合だけを供給すればよくなる。これはより小さいデザイン構成を実現することができ、次の部品への負荷をより低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのロータブレードを備えたロータと、このロータブレードのための調整装置とを有する風力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような風力装置は、この技術分野では、従来よく知られており、かつ専門家の文献にも記載されている。このようなものとして、例えば、非特許文献1があげられる。
【0003】
この調整装置は、1つのロータブレード、または中央のロータブレードを調整する場合には複数のロータブレードを、許容しうる時間内にあらかじめ決定可能な位置に配置することができるような仕様で設計されなければならない。この目的のため、この技術分野においては、しばしばモータが設けられ、このモータはロータブレードおよびその負荷によってあらかじめ決定される最小の出力を有していなければならない。
【非特許文献1】エーリッヒ・ハウ(Erich Hau)著「風力装置(Windkraftanlagen)」シュプリンガ・フェルラーグ)(Springer-Verlag)、第2版、1996年、231ffページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トランスミッション装置(transmission arrangement)の使用および設計に関連する考察を行なうまでもなく、装置の寸法の増加に伴ってロータブレードも大きくなり、このためロータブレードの調整に用いられるモータもより高い出力をもたなければならないということは、容易に予想することができる。この高出力は、必然的にモータの寸法が大きくなるといった結果を招く。
【0005】
それゆえ、本発明の目的は、この技術分野における上記の不具合を避けることができるような仕様でもって、この明細書の初めの部分に記載されているような風力装置を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、これは、調整装置が少なくとも2つの駆動部を有することにより実現される。このようにして、1つ又は複数のロータブレードの調整のために必要とされる力は、ブレードの根元部(root)に複数の部位に同時に加えられることができる。したがって、駆動部の数に応じて、各駆動部は、次の部品(subsequent components)に、必要な全部の力の対応する割合の分だけを作用させる。これはまた、これらの部品がより小さい設計仕様になることを可能にする。
【0007】
さらに、本発明によれば、すでに現在多数普及し、かつ、すでに連続操作において試験および検査を済ませた有用な駆動部を用いることが可能である。さらに、これを取り扱うための方法および装置もすでに知られ、かつ、試験および検査を済ませている。
【0008】
本発明の特定の好ましい実施の形態においては、駆動部は電気モータであり、より好ましくは直流モータである。故障の場合には、これらの電気モータは、例えばバッテリの形態の既存の緊急電源に接続されることができる。
【0009】
電気モータとして3相非同期モータを用いることもできる。制動トルク(braking torque)を生成するために、これらのモータは、ロータブレード調整手段を流れている3相電流が遮断(switched off)された後、直流電力が供給され、これにより静止磁界が非同期モータ内に生成される。このようにして、まだ回転しているモータは、制動されることができ、制動トルクは静止しているモータ内で維持される。
【0010】
ピッチの調整(pitch regulation)に必要とされるさらなる操作手段に関して、ドイツ特許出願第197 31 918.1号明細書にも注意が向けられるべきである。本発明における構成に関連する範囲内において、当業者はまた、ここに記載されている構造を使用することもできるであろう。必要な限りにおいて、上記出願の内容は又本発明出願の内容ともなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のさらに有利な実施態様は、従属の請求項に記載されている。以下、本発明の実施の形態が、添付の図面を参照しつつ説明される。
【0012】
図1は、ロータブレードの根元部10を、非常に単純化された形態で示している。根元部10の周縁部には3つの調整駆動部12(adjusting drives)が配列されている。ロータブレード根元部10は、それ自体、破線で示すようにその外周部に外歯列14(external tooth arrangement)を有している。
【0013】
調整駆動部12は、ロータブレード根元部の周縁部に均一な間隔で配列されている。調整駆動部は、好ましく、歯列(tooth arrangement)により、ロータブレードのための回転式取り付け部(rotary mounting)の形態で搭載された回転ボール接続(rotary ball connection)で係合し、これによりロータブレードを調整する。理論的ないし基本的には、調整駆動部はロータブレードに直接係合することが可能であるということは明らかである。しかし、ある状況下ではこれは望ましくはない。なぜなら、ロータブレードの根元部──残りのロータブレードも同様──は、ガラス繊維強化プラスチック材料(GRP)またはこれに類するものを含み、ロータブレードに直接係合している調整駆動部はロータブレードに対するダメージを招く結果となるといった事実があるからである。3つの全ての駆動部12を同時に操作することにより、各駆動部12は、ロータブレード10の調整に必要な全部の出力の1/3だけを出力すれだけですむ。
【0014】
さらに、各調整駆動部は、一部分だけを出力すればよく、図示された特別の例では必要な全部の力の1/3だけを出力すればよく、その寸法はまた、調整駆動部12が1つだけ用いられる場合よりも小さくすることができる。
【0015】
調整駆動部12の1つにダメージ(damage)が生じた場合、それは手動で取り扱うことができ、もし寸法が適切であれば、風力装置の塔内の、例えば滑車装置を用いて取り替えることができる。
【0016】
図2は制御装置を示している。制御装置は、中央制御ユニット20と、測定値検出器、及び/又は、基準値生成器、及び/又は入力手段の形態であることができる複数の部品22とを有している。これらの部品により、情報の項目(items of information)は制御ユニット20で利用できるようになり、これらの情報の項目から、制御ユニット20は、調整駆動部12の作動(actuation)に必要とされる制御データを導出(derive)する。
【0017】
これらの制御データは、例えば切替装置24(switching device)に影響を与えることができる。切替装置は、3相非同期モータの形態の調整駆動部12に、ロータブレード10の調整のための3相電流、または、調整駆動部12内に制動トルクを生成するための直流電流のいずれかを供給する。
【0018】
このようにして、調整駆動部は、例えば突然かつ短時間内に方向が変化する突風によりロータブレードの負荷に即時の変化が生じ、これにより有効なロータブレードの調整が不可能となったときには、制動作用を及ぼすことができる。
【0019】
3つの調整駆動部12は、3つの調整駆動部の1つが故障したときでもロータブレードのさらなる調整機能が維持できるように設計される。したがって、もし何らかの理由で調整駆動部が故障しても、風力装置全体を停止させる必要はない。なぜなら、それぞれに必要なピッチの調整効果がこの後現状を維持している2つの調整駆動部により維持されることができるからである。
【0020】
もし、調整駆動部の1つが故障すれば、この後、残りの2つの調整駆動部にかけられる負荷が以前よりも明らかに大きくなる。しかし、各調整駆動部は長期間にわたって過負荷モード(overload mode)で操作されることができるように設計されているということが注目されるべきである。したがって、これに関して、各調整駆動部は多少過大な(oversized)寸法であり、このため調整駆動部の1つが故障した状況(situation)においては、風力装置に対する安全な停止(safe stop)を生じさせ、またはロータブレードを翼位置(feathered position)にもってくるために、1つの駆動部が、なおある期間にわたって過負荷状態で操作されることができる。
【0021】
図3は、リレー24により通常操作電圧に接続された駆動部12の1つを例示している。ここで、リレーは動作位置にある。
【0022】
もしここで出力の故障が起これば、リレー24は動力源が遮断され(de-energised)、リレーの接点が切り替えられ、その残りの位置で調整駆動部12をバッテリ26に接続させる。このような状況においては、ロータブレードの翼位置への移動および風力装置の停止は、高い信頼性で安全に行なうことができる。この場合、バッテリの大量の放電が許容され(不満ではあるが)、不明確なロータブレードのピッチの設定に伴って風力装置が不定の状態となる場合に対しては、好ましい状態が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】複数の駆動部を備えたロータブレードの根元部の単純化された図である。
【図2】本発明にかかる制御装置の単純化された図である。
【図3】直流モータによる本発明にかかる制御装置の単純化された図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ロータブレードの根元部、12 調整駆動部、14 外歯列、20 中央制御ユニット、22 部品、24 リレー、26 バッテリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのロータブレードを備えたロータと、各ロータブレードに対してそのピッチ角を調整するための各ロータブレード自体の調整装置とを有している風力装置において、
上記調整装置が少なくとも2つの電気モータ駆動部(12)を有していて、
上記電気モータ駆動部(12)の各々は、上記各ロータブレードの上記ピッチ角の調整のために必要とされる力のうちの自己の割合分を、種々の位置で上記ロータブレードの根元部(10)に同時にかけるようになっていることを特徴とする風力装置。
【請求項2】
上記電気モータ駆動部が直流電気モータであることを特徴とする、請求項1に記載の風力装置。
【請求項3】
上記電気モータ駆動部が3相非同期モータであり、該3相非同期モータには、適宜、直流電流が供給されることを特徴とする、請求項1に記載の風力装置。
【請求項4】
上記調整装置の電気モータ駆動部(12)が互いに連結されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の風力装置。
【請求項5】
上記3相非同期モータが、変圧器によって互いに電気的に接続されていることを特徴とする、請求項3に記載の風力装置。
【請求項6】
該風力装置の少なくとも一部への即時の負荷を測定するための測定手段(22)と、
即時の負荷に対して要望される少なくとも1つのロータブレードの位置を確定し、これに対応して調整装置により上記位置を調整する制御手段とを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の風力装置。
【請求項7】
該風力装置が少なくとも2つのロータブレードを有していて、
上記少なくとも2つのロータブレードのうちの少なくとも1つは、その他の1つ又は複数のロータブレードに対して同期して調整可能であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の風力装置。
【請求項8】
少なくとも1つのロータブレードの少なくとも一部が、同一のロータブレードの少なくとも1つのさらなる調整可能な部分に対して、または、その他の1つもしくは複数のロータブレードまたは上記その他の1つもしくは複数のロータブレードの一部に対して同期して調整可能であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の風力装置。
【請求項9】
与えられた即時の負荷に対して要望される1つ又は複数のロータブレードの位置が、制御手段(20)に接続された入力手段によってあらかじめ決定されることができることを特徴とする、請求項6に記載の風力装置。
【請求項10】
上記ロータブレードを調整するための調整装置が、これにより駆動される調整トランスミッションと電気モータ駆動部(12)とを有していて、
上記制御手段(20)が、ロータブレードの即時の位置に関連する実際の値を受け取り、調整装置によりロータブレードを調整することを特徴とする、請求項6又は9に記載の風力装置。
【請求項11】
上記制御手段(20)が、測定値の取得に遅れを伴うことなく、ロータブレードの調整を行うことを特徴とする、請求項6、9又は10に記載の風力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−64105(P2008−64105A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267463(P2007−267463)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【分割の表示】特願2002−543154(P2002−543154)の分割
【原出願日】平成13年9月8日(2001.9.8)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】