説明

風車のパワートレーンを振動減衰する方法、風車およびブレーキ装置の使用

【課題】振動減衰のための手段を改良し、最高でも小さな付加的な設置手間もしくはメンテナンス手間しかもたらさず、単なる受動的な振動減衰に比べて高い減衰効率を高い作用精度で生ぜしめるようにする。
【解決手段】風車(13)内のパワートレーン(22)を振動減衰する方法において、該パワートレーンが、ロータ(14)と発電機(45)とを結合させており、パワートレーンの振動(S)を表すパラメータ値(P,Pt0,Pt1)を求め、求められたパラメータ値に基づいて、ブレーキ装置(43)を使用することにより、パワートレーンの振動に対抗して作用する減衰力(D)を制御してパワートレーンに加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンもしくは風車(Windturbine)のパワートレーンを振動減衰する方法において、パワートレーンが、ロータと発電機とを接続している方法に関する。さらに本発明は、このような風車と、このような風車におけるブレーキ装置の特別な使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
風車では、風の運動エネルギが、ロータを回転運動させるために利用される。この回転運動は、パワートレーンを介して発電機に伝達される。発電機は回転エネルギから電気的なエネルギを発生させる。
【0003】
ロータからの発電機への力伝達に基づいて、かつ別の影響(下記参照)に基づいて、パワートレーンと、風車の、該パワートレーンを取り囲む構成要素とは、多重の力にさらされている。これらの力から、振動、つまりパワートレーンにおけるバイブレーションが生じる。この場合、パワートレーンの1つの軸もしくは複数の軸に沿って伝搬する軸方向の振動と、1つの軸または複数の軸に対して横方向に経過する半径方向の振動とは基本的に区別され得る。このような振動は、多数の原因を有している。
【0004】
第1には、たとえば風速、風向き、外気温または乱流のような外的要因が重要である。このような影響要因は、ロータに力を加える。この力は、全てがパワートレーンの軸方向もしくはロータの軸の軸方向に作用するのではない。これにより、特に約10Hzまでの低周波の振動がパワートレーンにおいて引き起こされる。
【0005】
第2には、風車の運転中に、互いに機械的に結合された多数の構成要素から成る複雑なシステム全体が作用する。しばしば、たとえば変速伝動装置が設けられていて、この変速伝動装置は、ロータもしくはパワートレーンの第1のシャフトの比較的に緩慢な回転を、パワートレーンの第2のシャフトのより速い回転に変換する。この伝動装置において、歯車または別の力伝達エレメントにより両パワートレーン構成要素を接続することによって自動的にバイブレーション、つまりねじり振動が発生する。ねじり力は、伝動装置から機械ケーシングに、つまりナセルの内側の構成エレメントにも伝達される。さらに、伝動装置によっても、主に10Hzを上回るより高周波数の範囲の軸方向の振動が生じる。
【0006】
第3には、ピッチモーメント(Nickmoment)と、ヨーモーメント(Giermoment)とが、ナセルと、当該ナセル内に支承された構成要素との間の結合部における束縛力により生じる。この束縛力は、組立て時に生じるが、重量分布によっても、かつ付加的にはパワートレーンの固有振動数(固有周波数)の励振によっても生じる。パワートレーンにおけるピッチモーメントおよびヨーモーメントにより、風車のナセル内で底部に作用し、この底部を損傷し得る力が生じる。この場合、個別構成要素の固有振動数は、その重量もしくは慣性に依存する。組付け時に1つの構成要素システムを組み立てることによって、新しいシステム特性、ひいては新しい固有振動数が生じる。
【0007】
別の振動は、ロータを起点として、このような変速伝動装置の背後に第2のシャフトが配置されていて、該第2のシャフトにブレーキ装置が取り付けられており、第2のシャフトが、連結器を介して、ナセルの後ろ側の領域で発電機の方向に案内されていることによって励起され得る。たとえば、この連結器により、変速伝動装置よりも高くまたは低く支承された発電機の方向で高度補償が実現され得る。この連結器も、運転中に振動を引き起こし得る。
【0008】
本明細書で概観的に要約した、パワートレーンの領域における振動および力作用は、風車の運転中に問題となる。なぜならば、これらの振動は、全体としての風車の寿命、もしくは風車の個別の構成要素の寿命を、場合によっては著しく減じるか、もしくはその機能性を長期間にわたって危険にさらし得るからである。特に、約10Hzからの高周波数の振動は、その振幅が大きな場合、特に伝動装置内、発電機内、および風車のナセルにおいて著しい損傷を生ぜしめ得る。振動は、しばしばパワートレーン全体にわたって継続し、しかも伝動装置内での変速によってさらに増強され得る。その公開内容が明確に本明細書の一部として見なされるドイツ技術者協会規格VDI3834には、風車および風車の構成要素の機械的な振動の測定および評価のための基準が記載されている。特に、上記規格からは、バイブレーションによる負荷限界が明らかになる。この負荷限界は、できるだけ超えられないことが望ましい。
【0009】
上記の振動および力は、種々の対策により補償され得るので、束縛力はできるだけ、伝動装置もしくはパワートレーンからナセルへと伝達されない。現在、パワートレーンは、ナセルのハウジングに弾性的に支承されている。この支承は、たとえば3点または4点支承により行われる。3点または4点支承は、パワートレーンの3つもしくは4つの点において、ナセルの底部とパワートレーンもしくは変速伝動装置との間に、弾性的な可撓性の結合部を有している。この場合、パワートレーンは、長手方向経過に沿った少なくとも1点で、全周または部分円周を取り囲まれ得るので、パワートレーンは、側方に向かっても上方に向かっても安定化される。このような支承部のクッションとして、たとえばエラストマブシュとして形成された軸方向に軟性のエラストマが役立つ。エラストマブシュは、伝動装置もしくはパワートレーン構成要素と、各支承管片もしくは各支承リングとの間の接点を形成する。
【0010】
三点支承は、たとえば1つの主支承装置と、1つの伝動装置支持部とを有していてよい。主支承装置は、パワートレーンのシャフト、つまりパワートレーン構成要素を取り囲む支承リングを有している。したがって、主支承装置は、軸方向の力も半径方向の力も受容する。伝動装置支持部は、変速伝動装置を、両方の側から、つまりパワートレーンの軸線に対して横方向に水平方向で部分的に取り囲んで支承している。伝動装置支持部は、軸方向に可動に形成されており、したがってねじれ力も受容する。この支承装置は、ピッチモーメントおよびヨーモーメントの補償にも役立つ。4点支承は、パワートレーンのシャフトを取り囲む第2の支承装置を有しており、これにより、軸方向の力を付加的に受容することによる高められたシステム安定性の利点を提供する。
【0011】
支承部を用いた振動の受動的な補償に対して付加的に、能動的な振動減衰が設けられていてもよい。このためには、たとえば支承装置において、パワートレーン、もしくは風車の、パワートレーンに結合された構成要素に、当該パワートレーンもしくは該パワートレーンに結合された構成要素の振動に反作用する能動的な力を加えることができる。しかし、このような能動的な減衰構成要素は、風車のナセルの内部で付加的な構造スペースを要求し、さらに費用をかけて提供される必要があり、メンテナンスが頻繁である。別の種類の能動的な振動減衰は、周波数変換装置、つまり電子的な構成部分により行われる。周波数変換置の意図的な調整により、発電機の側からの負荷が減じられるかまたは増大され得る。振動減衰の目的で周波数変換装置を制御することも可能であり、現在も実現されている。しかし、このことは、発電の効率を減じ、さらに付加的な影響要因が周波数変換器の制御時に関与することを意味する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ドイツ技術者協会規格VDI3834
【非特許文献2】Testing the Mechatronic Wedge Brake、Richard Roberts等、SAE紙2004−01−2766
【非特許文献3】Die elektronische Keilbremse、Bernd GombertおよびPhilipp Guttenberg、Automobiltechnische Zeitschrift 11/08, 108, 2006年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明の課題は、振動減衰のための手段を改良して、該手段が、有利には最高でも小さな付加的な設置手間もしくはメンテナンス手間しかもたらさず、かつ/または該手段が、有利には単なる受動的な振動減衰に比べて高い減衰効率を、特に有利にはより高い作用精度で生ぜしめるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するための請求項1に記載の方法では、風車内のパワートレーンを振動減衰する方法において、パワートレーンが、ロータを発電機に結合させており、パワートレーンの振動を表すパラメータ値を求め、求められたパラメータ値に基づいて、ブレーキ装置を使用することにより、パワートレーンの振動に対抗して作用する減衰力を制御してパワートレーンに加えるようにした。
【0015】
上記課題を解決するための請求項10に記載の風車では、パワートレーンにより互いに結合されたロータと発電機とが設けられており、さらにブレーキ装置と、制御装置とが設けられており、該制御装置が、運転中に、パワートレーンの振動を表すパラメータ値から、ブレーキ装置を使用することによりパワートレーンに減衰力を加えるための制御信号を導出し、減衰力が、制御されて、パワートレーンの振動に対抗して加えられる。
【0016】
上記課題を解決するための請求項15に記載のブレーキ装置の使用では、風車内のパワートレーンの振動減衰のためのブレーキ装置の使用であって、パワートレーンがロータと発電機とを結合させており、パワートレーンの振動を表すパラメータ値を求め、求められたパラメータ値に基づいて、ブレーキ装置を使用することにより、パワートレーンの振動に対抗して作用する減衰力を制御してパワートレーンに加える。
【0017】
本発明による方法の有利な実施形態では、ブレーキ装置の制御を電子的に行う。
【0018】
本発明による方法の有利な実施形態では、ブレーキ装置として、楔ブレーキを含有するブレーキ装置を使用し、該ブレーキ装置を、有利には電子的な制動力制御により制御する。
【0019】
本発明による方法の有利な実施形態では、ブレーキ装置を制御して、減衰力を発生させるための制御命令を、風車の構成要素の共振周波数に応じて導出し、共振周波数は風車の始動前に、有利にはシミュレーションおよび/または測定により、かつ/または風車の運転中に求められている。
【0020】
本発明による方法の有利な実施形態では、減衰力を、パワートレーンの惰性運転時に作用させる。
【0021】
本発明による方法の有利な実施形態では、前記ブレーキ装置のブレーキディスクへの作用力を、ブレーキディスクの不均整化量に基づいて変化させる。
【0022】
本発明による方法の有利な実施形態では、複数の測定センサ、有利には風車の構成要素におけるバイブレーションを測定するバイブレーションセンサおよび/または作用させられた減衰力を測定するための力センサからのセンサ信号に基づいて前記パラメータ値を求める。
【0023】
本発明による方法の有利な実施形態では、減衰力を作用させるための制御信号を、前記パラメータ値から導出されたパイロット制御信号に基づいて生成する。
【0024】
本発明による方法の有利な実施形態では、パラメータ値から、減衰されるべき振動の曲線を求め、前記減衰力を、方向および/または強さおよび/または周波数において、求められた曲線に対して鏡像対照的に作用させる。
【0025】
本発明による風車の有利な実施形態では、パワートレーンが、パワートレーン構成要素として、第1のシャフトと第2のシャフトとを有しており、第1のシャフトと第2のシャフトとが変速伝動装置を介して互いに結合されている。
【0026】
本発明による風車の有利な実施形態では、前記ブレーキ装置が、前記第2のシャフトの領域に配置されている。
【0027】
本発明による風車の有利な実施形態では、ブレーキ装置が、楔ブレーキ、有利には電子的な楔ブレーキを有している。
【0028】
本発明による風車の有利な実施形態では、複数のブレーキ装置を有している。
【発明の効果】
【0029】
相応して、冒頭で述べた形式の本発明による方法は、本発明により以下のように改良される。すなわち、パワートレーンの振動を表すパラメータ値を求め、求められたパラメータ値に基づいて制御し、ブレーキ装置を使用することにより、パワートレーンの振動に対抗して作用する減衰力をパワートレーンに加える。
【0030】
パワートレーンの振動から、代表的なパラメータ値、たとえば周波数および振動曲線の振幅が導出され得る。逆の推論では、特的のパラメータ値が、パワートレーンの振動特性も表すとも云える。振動特性には、特にパワートレーンの回転数およびトルクが含まれる。回転数およびトルクから、バイブレーションにつながり得るどのような力がパワートレーンの回転によって形成されるかを間接的に推定することができる。特に、振動測定から直接に明らかになるパラメータ値、つまり、たとえばパワートレーンにおける力測定に基づいて求められ得るこのようなパラメータ値は、パワートレーンの振動特性を表す。
【0031】
このような適当なパラメータの調査は、本発明による方法の枠内で、振動特性を推測し、その振動特性から、能動的な振動減衰装置のための制御命令を導出するために役立つ。振動減衰装置もしくは振動減衰装置の構成部分として、本発明によれば、風車のブレーキ装置が使用される。
【0032】
すなわち種々の危険状況もしくは風車の臨界的な運転状況で、パワートレーンの制動を実施することが必要である。このことは特に、風車の個別の構成要素が運転しておらず、パワートレーンの回転運動により別の損傷が生ぜしめられ得る場合に当てはまる。同じことは、風車が専門作業員によりメンテナンスされるメンテナンス状況にも当てはまる。専門作業員は、メンテナンスのために、通常、風車のナセルの中におり、パワートレーンの回転運動によって、その活動の実施を妨げられるだけでなく、この回転により形成される巨大な力によって強く危険にさらされている。このことは、パワートレーンが、作業員に対する危険と妨害を排除するために、メンテナンス時に通常は完全に制動されロックされていなければならないことを意味する。
【0033】
風状態が極端な場合、特に嵐またはハリケーンの場合にも、パワートレーンの回転運動の完全なまたは部分的な制動が必要である。この制動によってのみ、風速が高い場合にも、ロータまたは発電機内のような風車の機能部分に損傷が発生しないことを確実にすることができる。
【0034】
相応して、大きな出力、つまり100kWよりも大きな出力を有する、工業的に使用される今日の風車は、通常は、常にブレーキ装置を備えている。ブレーキ装置は、パワートレーンの回転運動の部分的な制動および完全な制動を可能にする。このようなブレーキ装置は、通常、(それぞれ)1つのブレーキライニングを備える少なくとも1つのブレーキキャリパを有している。この場合、ブレーキキャリパは、ブレーキディスクを有していて、この場合、ブレーキライニングをブレーキディスクに対して圧着することができ、これによりブレーキディスクの運動を制動するようにされる。このためには、ブレーキディスクが、風車のパワートレーンのパワートレーン構成要素に固く取り付けられている。したがって、ブレーキディスクは、パワートレーン構成要素と同じ回転速度で回転し、ブレーキディスクの回転運動の制動によって、逆にパワートレーン構成要素も一緒に制動される。
【0035】
したがって、本発明は、風車の、いずれにせよ存在している機能構成要素、つまりブレーキ装置を、パラメータ値から導出された上述の制御命令に基づいて能動的な振動減衰を実施するために付加的に使用する、ということを利用する。この場合、ブレーキ装置は、付加的な能動的な減衰装置として働くだけでなく、唯一つの能動的な減衰装置としても働くことができる。唯1つの能動的な減衰装置としての運転時には、能動的な振動減衰部を取り付けるための主な付加手段が不要であることが保証されている。なぜならば、少なくとも、能動的な振動減衰部の機械的な主構成要素、つまりブレーキ装置は、いずれにせよ存在しているからである。このことは、このブレーキ装置の制御を適応させることしか必要としないので、ブレーキ装置をブレーキとしても、能動的な減衰装置としても使用することができる。
【0036】
ブレーキ装置のための制御命令の生成時に、制動命令と減衰命令とは原理的に区別され得る。この場合、制動命令は、ブレーキ装置によってパワートレーンの回転を意図的に制動するために働く制御命令である。これに対して減衰命令は、能動的な振動減衰のために働く制御命令である。制動命令と減衰命令との間で、有利には調和(Abstimmung)が行われるので、ブレーキ装置による制動と減衰との相互作用は、既に前もって、もしくはブレーキ装置の運転時に相互に考慮される。ブレーキ装置が、制動命令によってパワートレーンの制動のために使用されると、場合によっては、パワートレーンの振動特性への影響が生じる。したがって、相応して予測された、もしくは制動プロセスと同時に求められた減衰命令が導出され得るので、ブレーキ装置の制動特性は運転中に調整されて、この場合、パワートレーンのバイブレーションの増大に対抗して能動的に作用するようされる。反対に、ブレーキ装置によるパワートレーンへの能動的な減衰干渉は、制動作用をももたらす。したがって、振動減衰と並行してパワートレーンが制動される場合に、制動プロセスと減衰プロセスとが調和されていると、制動作用は、加えられるべき制動力を求めるために直ちに加えられ得る。最終的には、ブレーキ装置を用いた制動プロセスと減衰プロセスとの調和時に、組み合わせられた制動/減衰命令を導出するために、両種類の制御命令を重畳させることができる。このように制動/減衰命令を重畳させることは、電子的に行われても、ブレーキ装置に作用する機械的な複数のアクチュエータからの力の相互的な影響によって行われても、これら両方の重畳原理の組合せによって行われてもよい。組み合わせられた制動/減衰命令の生成の結果は、常に、パワートレーンへ組み合わせられた制動/減衰力の入力である。
【0037】
つまり、ブレーキ装置によって、パワートレーンの制動が実施されるだけではなく、付加的に、パワートレーンの振動に対する振動減衰を目的とする、適当かつ意図的な力作用が行われる。したがって、相応する減衰制御命令が、パワートレーンの振動特性に関するパラメータ値から導出される。減衰制御命令はブレーキ装置を制御し、この場合、ブレーキ装置が規定された特定の時間に、正確に調整された力をパワートレーンにもたらすようにされる。この力は、パワートレーンの、パラメータ値から導出されるような振動特性に対抗して作用する。
【0038】
制御命令は、風車内の制御装置および/または風車に接続された制御装置(つまりコントロールユニット)内で生成される。つまり、制御装置とは、制動力調整のための制御装置であり、この制御装置は、付加的に、運転中に、パワートレーンの少なくとも1つのパワートレーン構成要素のバイブレーションもしくは振動に対抗して能動的に作用する。したがって、この制御装置は、一種の「制動もしくは減衰プログラム」を実行する。制動もしくは減衰プログラムは、上述のパラメータ測定から制御命令を導出する。この制御命令は、パワートレーン構成要素をバイブレーション周波数に対抗して制動するために適している。
【0039】
ブレーキ装置を用いた能動的な振動減衰に対して付加的に、受動的な振動減衰、たとえば相応する支承部およびばね装置による振動減衰が設けられていてよい。このことは、二重の安全策としてかつ減衰効果を高めるために有利である。
【0040】
相応して、本発明による風車は、パワートレーンを介して互いに結合されたロータおよび発電機と、ブレーキ装置と、制御装置とを有している。この場合、制御装置は、運転中に、パワートレーンの振動を表すパラメータ値から、ブレーキ装置を用いてパワートレーンに減衰力を作用させるための制御命令を導出する。この減衰力は制御されてパワートレーンの振動に対抗して作用する。
【0041】
つまり制御装置は、本発明による方法に相応して、パラメータ値から制御命令を導出するように形成されている。この場合、制御命令は、振動減衰のためにブレーキ装置を適当に制御することに役立つ。
【0042】
本発明は、風車内のパワートレーンを振動減衰するためのブレーキ装置の使用を含む。パワートレーンは、ロータを発電機に接続しており、この場合、パワートレーンの振動を表すパラメータ値が求められ、パワートレーンの振動に対抗して作用する減衰力が、求められたパラメータ値に基づいて制御され、ブレーキ装置を使用しながら、パワートレーンに加えられる。
【0043】
本発明の特に有利な実施形態および改良形は、従属請求項および以下の詳細な説明から明らかになる。この場合、本発明による方法もしくは本発明によるブレーキ装置の使用は、風車のための従属請求項に相応して改良されてよく、また逆も可能である。
【0044】
現在、風車のブレーキ装置における制動作用の制御は、機械的な伝達システムによって、通常はハイドロリック式またはニューマチック式に伝達される。プッシュロッド式伝動装置および/または歯車伝動装置および/または操作ケーブル(Seilzug)のような別の機械的な伝達システムまたは直接的な機械的な作用も考えられる。ブレーキ装置の制御は、電子的に行われると有利である。つまり電子的な制御命令が生成されて、この制御命令は、伝達線路を介して直接にアクチュエータに伝達され、このアクチュエータによりブレーキ装置の位置を相応に調整することによって実現され得る。この場合、相応するエラーおよびメンテナンスの頻繁さ、ならびにより長い反応時間を有する、ハイドロリック式の伝達流体等を用いた非直接的な伝達は不要である。電子的なコントロールおよび制御は、むしろ、極めて細かく調整された、たとえば脈動する制動作用および減衰作用を得ることをも可能にし、制動作用および減衰作用は実際的に実時間(リアルタイム)で、つまりミリ秒範囲で得られることを可能にする。さらに、単に電子的な調整システムによって、閉じられた調整回路を実現することが可能になる。この調整回路では、電子的な制動力調整のための制御装置が評価ユニットに接続されていて(もしくは評価ユニットを有していて)、制動作用もしくは減衰作用の測定からの制御測定信号および減衰測定信号を処理するので、制御装置は、この信号処理の結果から、制動力調整および減衰力調整のための改善された制御命令を導出することができる。つまり自己調整式のシステムが使用可能であり、このシステムでは、ブレーキ装置において不可避に生じる摩耗があるにもかかわらず、常に正確な制動力調整および減衰力調整が、ブレーキ装置の運転中にも可能である。
【0045】
ブレーキ装置として、楔ブレーキを含むブレーキ装置が使用されると有利である。ブレーキ装置は、特に有利には電子的な制動力調整により制御される。相応して、本発明による風車は、楔ブレーキ、有利には電子的な楔ブレーキを含むブレーキ装置を有している。
【0046】
ブレーキ装置の枠内での楔ブレーキの使用は、上述の種類(ニューマチック式もしくはハイドロリック式に制御されたキャリパブレーキ)の従来のブレーキ装置を備える公知先行技術に比べて、複数の重要な利点を有している。特に、制動のために、通常は、より少ない力消費しか必要とせず、もしくは同じ力で、ブレーキ装置のより大きな制動作用を達成可能であることが言及され得る。これにより、より効果的な減衰作用を得ることができる。さらに楔ブレーキは、極めて正確に制御されることが可能であり、ハイドロリック式もしくはニューマチック式の供給システムを要求しないので、そのようなシステムの上述した技術的な問題を回避することができる。特に、伝達流体の濾過および伝達流体の冷却は完全に省かれる。代わりに、楔ブレーキでは、唯1つのアクチュエータが必要である。このアクチュエータは、所望の制動作用もしくは減衰作用が生じるように、もしくは目下の制動作用もしくは減衰作用が減じられるように、ブレーキ楔体を移動させる。振動減衰に関して、特に楔ブレーキの電子的な制御に関連して、極めて細かく調整可能な減衰作用が生じる。この減衰作用は、振動振幅の最大値もしくは最小値が期待され得る場合に、時間に正確に及ぼされるので、最大値および最小値は相応して全体として減じられ得る。
【0047】
楔ブレーキは、今日、自動車において試験的に新種のブレーキシステムとして使用される。これに関して、たとえば、Bernd GombertおよびPhilipp Guttenberg著の論文「Die elektronische Keilbremse」Automobiltechnische Zeitschrift 11/08, 108, 2006年11月、904−912頁が示唆され得る。この論文は、それぞれ自動車利用分野のブレーキシステムに用いられる、従来のハイドロリック式のブレーキシステムと、電子的な楔ブレーキとの比較を再現している。この論文は、電子的な楔ブレーキが、他の自動車ブレーキシステムと同じ制動力を達成するために、より少ない力消費、ひいてはより少ないエネルギしか必要としないとまとめている。
【0048】
風車の枠内における楔ブレーキの使用は、これまで知られていない。風車分野での楔ブレーキの使用は、上述の利点だけではなく、特に効果的である。なぜならば、生ぜしめられる力の大きさおよび潜在的に摩擦力によって生じる熱発生は、乗用車における使用におけるよりも著しく大きいからである。さらに、自動車とは対照的に、風車における制動は、全自動でかつ人的な後調整なしに行われなければならない。一方で、自動車におけるブレーキの作動時のアクチュエータは、最終的には人間、つまり運転者である。同様のことは、振動減衰のための楔ブレーキの使用にも当てはまる。発明者の実験により、楔ブレーキが初めて適当に風車分野で使用され得るほど、風車における楔ブレーキの運転は確実であることが判った。この場合、この巨大技術的な使用において、利点はさらに強まる。第1には、公知先行技術によるブレーキ装置の上述の問題は、約100kWを有する内燃機関のサイズへの技術的な適用時の問題よりも明らかに深刻である。なぜならば、現代の構造形式の風車は、完全に1MWを越える定格出力を有しているからである。第2には、装置の大きさに基づいて、著しく大きな構造空間がブレーキ装置のために存在しているので、最終的に、より単純な構造形式の楔ブレーキを使用することができ、さらにそれどころか楔ブレーキは場所節約効果に寄与する。したがって、たとえば、風車内のブレーキディスクは自動車エンジン室内のブレーキディスクの場合よりも、相応して著しく大きく形成されており、したがって楔ブレーキのブレーキ楔体のためにより多くの作用面を提供する。第3には、アクチュエータから本来のブレーキへの力伝達は、自動車分野におけるよりも重要である。最後に、その著しく細かい制御性によって、楔ブレーキは、振動に対して減衰するように作用する付加的効果として、特に効果的な可能性を提供する。
【0049】
ブレーキ装置を制御して、減衰力を発生させるための制御命令が、風車の構成要素の共振周波数に応じて導出されると特に目的にかなっていることが判った。このためには、共振周波数が、風車の始動前に、有利にはシミュレーションおよび/または測定により、かつ/または風車の運転中に求められる。風車の始動前に共振周波数を測定するベースとして、同じ風車構造型またはほぼ同様に構成された構造型のプロトタイプも役立ち得る。
【0050】
この場合、共振周波数は、基本共振周波数とその高次周波数とを含む。共振周波数は、風車の個別の構成要素、たとえば変速伝動装置、発電機、パワートレーンまたはナセルに関連するが、用語「構成要素」は、共振周波数を有する風車全体をも含む。共振周波数を予め求め、かつ/または進行する風車運転中に(特定の予め規定された試験時間間隔中に)求めることにより、共振周波数が認識され、この共振周波数に後に極めて意図的に対向作用が及ぼされる。これにより、パワートレーンのバイブレーションによる個別構成要素もしくは風車システム全体の「揺動(Aufschaukeln)」は回避される。このことは、技術的な問題の回避において特に効果的であることが判った。すなわち、まさにこのような揺動を回避することによって、特に強い運動が排除されて、これにより摩耗および材料疲労が極めて強く能動的に減じられ得る。
【0051】
風車の運転時には、基本的に、けん引運転(Zugbetrieb)と惰性運転(Schubbetrieb)とが区別され得る。けん引運転時には、風がロータを強く駆動するので、ロータから力がパワートレーンに作用して、この力がパワートレーンを駆動する。惰性運転時には逆の原理が当てはまる。つまり、回転するパワートレーン(および発電機内、場合によっては変速伝動装置内の、パワートレーンに結合された回転している部分)の慣性により、パワートレーンによりロータが駆動されるので、ロータは最終的に、該ロータが優勢な風に基づいて保つ速度ではなく、パワートレーンからの力に基づいて保つ回転速度に達する。パワートレーンは、その慣性運動により、実際には回転運動のために十分な風が存在していない場合でも、ロータの回転を継続させる。したがって、惰性運転では、パワートレーン内に、特に存在している場合には変速伝動装置に別の力も作用する。
【0052】
このような変速伝動装置では、今日、斜めにかみ合う歯車間で伝動が行われる。これによって、2つの歯車の互いに対する各歯車位置では、真っ直ぐに位置調節された歯列の歯車に比べて大きな接触面が歯の間で生じる。歯列の傾斜面により、ねじり力は、部分的に軸方向にも半径方向にも支持される。風車のけん引運転時が、惰性運転に移行する瞬間に、歯車の間で別の力関係(Kraefteverhaltniss)が生じる。なぜならば、それぞれの歯の、(けん引運転時には接触していない)それぞれ他方の接触面が衝突するからである。伝動装置とパワートレーンとは、ヒステリシスを受けている。その結果、反転するねじれ力に基づくパワートレーンの別の方向に向けられた変形と、パワートレーンの別の方向に向けられたピッチモーメントもしくはヨーモーメントとにおける切換えが生じる。ヒステリシスに基づく緩慢な切換えプロセスの間に、衝撃もしくは不都合な振動が生じる。惰性運転からけん引運転への切換えの逆の場合にも、逆の正負符号を伴うこのような挙動を記録することができるが、この場合、力の切換えプロセスは通常は迅速に行われる。ロータは、風によって主にほぼ継続的にエネルギ供給を受ける一方で、惰性運転の間は、パワートレーンと、該パワートレーンに結合された構成要素の運動からの残留エネルギだけが消費される。ロータへの継続的なエネルギ供給によって、ロータ、パワートレーン、伝動装置および発電機から成るシステムは迅速に再び安定化され、したがって、振動は比較的迅速に、いわば自然に(場合によっては受動的な減衰機構によって支援されて)、均等化される。
【0053】
この背景から、発明者は、減衰力がパワートレーンの惰性運転時に加えられる、有利にはパワートレーンの惰性運転時にのみ加えられると特に有利であることが判った。さらに、このことは、風車の効率が、能動的な減衰によりほとんど減じられないという利点を有している。一方では、けん引運転の間に能動的な減衰が行われた場合に、必然的により多くのエネルギが消費される。この減衰の枠内で、表されたパラメータ値から、けん引運転から惰性運転への切換えを検出するための識別信号が導出されると特に有利である。これと同様に、惰性運転からけん引運転への切換えを検出するための識別信号も導出されると有利である。次いでこれらの識別信号は、有利には、ブレーキ装置への制御命令を惰性運転もしくはけん引運転に適合させるために使用される。つまり、風車がけん引運転中であるか、惰性運転中であるかによって、異なる減衰プログラムが実行される。このような減衰プログラムの1つでは、ブレーキ装置を用いた能動的な減衰を、惰性運転中に実施しない、またはけん引運転時に、緊急の場合のみ、たとえば共振周波数において臨界的な振動振幅への到達時にのみ実施することが規定されていてもよい。
【0054】
ブレーキ装置を用いた振動減衰時の影響要因として、ブレーキ装置の状態自体が認められる。ブレーキシューは摩滅され、ブレーキ装置のブレーキディスクは、時間とともに、不規則な変形、同じく摩滅および腐食による付着を受ける。特に、緊急ブレーキによりブレーキディスクは、400℃〜600℃の温度に達し得る。局所的に均一に経過しない冷却時に、ブレーキディスクは、化学的かつ物理的な作用により変形させられる。これは非対称性を生ぜしめる。この背景から、ブレーキ装置のブレーキディスクへの作用力は、ブレーキディスクの不均整化量もしくは均整むら(Gleichmaessigkeitsabweichungen)に応じて変化させられると有利である。この場合、ブレーキディスクの均整の程度を表すパラメータ値もしくは測定信号が読み出され、これにより、ブレーキを制御するための制御命令がブレーキディスクの位置に応じて変化させられる。
【0055】
複数のセンサ、特に有利には風車の構成要素の振動を測定するための振動センサおよび/または加えられた減衰力を測定するための力センサからのセンサ信号に基づいてパラメータ値が求められると有利である。この場合、パラメータ値は、センサ信号から導出され得るか、またはセンサ信号がパラメータ値として直接に使用され得る。測定センサは、たとえば、風車の外側に配置されていてよいが、有利には風車の内室、つまりパワートレーンの、求めようとする振動の近傍に、かつ天候による外部の影響および別の外部影響から保護されて配置されていてよい。測定センサは、特に有利にはパワートレーンに、かつ/または風車の、パワートレーンに結合された構成要素、たとえば発電機、変速伝動装置またはロータに位置している。測定センサは、パワートレーンのトルクおよび/またはパワートレーンの回転数を測定するためのセンサを有していてよい。この場合、このようなセンサは、たとえば、風車が目下、惰性運転であるか、けん引運転であるかを推測することができるパラメータ値を供給することができる。加えられた減衰力の測定は、システム内へのパラメータ値のフィードバックを可能にする。このフィードバックは、減衰手段の効果の表示に役立つ。別の(付加的または択一的に使用可能な)測定センサは、風速、風向および乱流の測定のためのセンサおよび(たとえばパワートレーンもしくは個別のパワートレーン構成要素、または変速伝動装置の伝動装置ケーシングの軸方向の移動を求めるための)距離測定のためのセンサを有していてよい。それぞれの測定に基づいて導出されたパラメータ値から、パワートレーンの振動特性を推測することができる。
【0056】
減衰力の正確な調整は、付加的にパイロット制御によって改善され得る。つまりこのことは、パラメータ値から導出されたパイロット制御信号に基づいて減衰力を加えるための制御命令が生成されることを意味している。このようなパイロット制御信号は、パラメータ−発生値、つまり観察されたパラメータおよび/または複数のパラメータの組合せの値の発生を表す値に基づいた、パワートレーンの振動発生の予測に基づいている。これにより、パワートレーンの振動の将来的な発生を短い時間で比較的に好適に前計算することができる。回転数、トルク、ブレーキディスクの位置および回転のようなパラメータに関するパラメータ値から、現在の減衰制御命令に依存して目標値が求められる。付加的には、パイロット制御が環境からのパラメータ値を受け取るので、減衰の効果としてのパラメータ値の次の発生を予測することが可能である。このことから、帰路に入力され、かつ実状態量と比較される目標状態量が生じる。したがって、制御は、緊急に反応するのではなく、基準として既に前もって計算されるか、または閉じられた制御回路内の微調整において繰り返し実測定値もしくはパラメータ値と補償調整され得る期待値またはガイド信号を有している。これによって、制御はより迅速かつ正確になる。
【0057】
このような状態評価は、たとえば、カルマンフィルタを用いて実施され得る。カルマンフィルタにより、誤差を含む観測しか存在しない場合に、技術、学術およびマネージメントに対応する多くのシステムの状態の推測が可能である。簡単に言えば、カルマンフィルタは、測定器により引き起こされる妨害を取り除くために役立つ。この場合、基礎となる動的なシステムの数学的な構造と測定歪曲(Messverfaelschung)の数学的な構造とが公知でなければならない。
【0058】
原理的には、求められたパラメータ値から、たとえばパワートレーンにおける力測定の値から直接に制御命令を導出することが可能である。制御命令は、ブレーキ装置を用いて、求められた力に直接に対向する力作用を生ぜしめる。有利には、パラメータ値から、減衰されるべき振動の曲線が求められ、減衰力は、方向および/または強さおよび/または周波数で、有利にはこれら3つの全ての特性パラメータを考慮して、求められた曲線に対して鏡像対称的に加えられる。相応して、この曲線から、有利にはまさに対向する曲線の形状を有する制御命令を導出することができる。
【0059】
本発明の特に有利な利用分野は、パワートレーンが、パワートレーン構成要素として第1のシャフトおよび第2のシャフトを有していて、第1のシャフトおよび第2のシャフトが変速伝動装置を介して互いに結合されている風車に関する。この場合、能動的な減衰が特に有利である。なぜならば、変速伝動装置が、上述したように、付加的な高周波の振動を生ぜしめるからである。この場合、ブレーキ装置が第2のシャフト、つまり変速伝動装置から発電機の方向に案内されているシャフトの領域に配置されていると有利である。この場合、本発明によれば、最大の振動振幅は、パワートレーン全体に沿って発生するので、能動的な減衰は、まさにブレーキ装置の使用箇所で特に効果的に使用され得る。
【0060】
変速伝動装置は、第1のシャフトにおける低い回転速度を第2のシャフトのより高い回転速度に変速するので、一方ではより軽量の発電機を駆動することができ、他方では、パワートレーンのブレーキをより正確に調整することができる。したがって、(ロータおよび該ロータに直接に結合された第1のシャフトに比べて)速く回転するシャフトのブレーキおよび減衰をより精密に行うことができる。なぜならば、ブレーキ作用は、減速の絶対値において、ゆっくりと回転するシャフトの場合よりも簡単に測定可能であるからである。同じことは、減衰力の影響の絶対値に関する減衰作用にも当てはまる。さらに、第2のシャフトはゆっくりと回転する第1のシャフトよりも慣性が少ない。
【0061】
楔ブレーキを備えた風車では、楔ブレーキが以下の構成要素を有していると有利である:
−制動されるべきパワートレーン構成要素に結合されたブレーキディスク、
−ブレーキディスクの少なくとも1つの平面に配置され、固く設置された保持構造体。保持構造体はガイド面を備えている。
−ガイド面に面した表面を備える、ガイド面上に支承されたブレーキ楔体。表面の形状はガイド面の形状に一致している。
−運転中にブレーキ楔体をガイド面に沿って移動させるアクチュエータ。
【0062】
ブレーキ楔体は、ガイド面に直接的にも間接的にも接触していることができる。ブレーキ楔体は、たとえば、ローラを介してガイド面に接続されるか、または適当な滑り手段を用いてガイド面に沿って滑動することができる。
【0063】
ブレーキ楔体は、有利には、ブレーキ楔体の、ブレーキディスクの方向でガイド面と反対の側に位置する面に取り付けられたブレーキライニングを有している。このブレーキライニングは、ブレーキ作動時にブレーキディスクに押し当てられる。
【0064】
楔ブレーキの構成要素のこのような配置は、簡単に組み立てることができ(場合によっては既製のブレーキ装置内に後装備することができ)、取扱いが単純である。特に、ガイド面に沿ってブレーキ楔体をガイドすることにより、ブレーキ楔体とガイド面の形状によって、楔ブレーキのブレーキ作用を前もって調整することができる。たとえば、ガイド面および/またはブレーキ楔体の形状付与は、ブレーキ楔体の運動時に線形の力増大を生ぜしめるのではなく、増強された力増大または逆にゆっくりとしか上昇しない力増大が生じるように行われていてよい。
【0065】
上述の構成要素を備えた楔ブレーキは、有利には、アクチュエータとしての電動モータにより操作される。電動モータは、電子的な制御装置により調整されていると有利である。これにより、できるだけ広範囲な電子的もしくは電気的なシステムを使用することが可能となる。このシステムでは、ブレーキ装置の上述の構成要素だけが機械的に実施されていて、調整は完全に電子的なコントロール下で行われる。
【0066】
楔ブレーキのガイド面の形状付与に関して、楔ブレーキの第1の原理的な択一的な実施形態によれば、ガイド面が平坦であり、かつ制動しようとするパワートレーン構成要素の回転軸線に対して斜めに位置調節されている。この場合、ガイド面は、有利には制動しようとするブレーキディスク上に急勾配で延びている。この第1の択一的な実施形態の変化形は、ガイド面が平坦ではなく、一種のスライドガイド(Kulisse)の形態で、その横断面で単調に、有利には厳密に単調に上昇または下降するコースを描いていることである。このことは、既に上述したような効果に対して、ブレーキ楔体の位置の変更時に制動力の非線形の増大をもたらす。有利には、ブレーキ楔体は、ガイド面の形状に適合させられた形状を有している。
【0067】
第2の原理的な択一的な実施形態は、ジグザク形の、たとえばW字形のガイド面および/またはブレーキ楔体の表面を設けることにある。有利には、ガイド面もブレーキ楔体の表面も、同様にジグザク形に形成されている。このようなジグザク形状は、たとえば、論文「Testing the Mechatronic Wedge Brake」、Richard Roberts等、SAE紙2004−01−2766、図1および導入文に記載されている。この記述の理論は、相応して本特許出願の理論として取り込まれる。
【0068】
しかし、ジグザグ形状は、必ずしも角張ったジグザク形状である必要はなく、ジグザク形状は丸み付けされた形状であってもよい。換言すれば、ガイド面および/またはブレーキ楔体の表面は、隆起部および凹設部を有しているので、ブレーキ楔体は、制動力を増大させるために、1つの出発零点からガイド面に対して異なる2つの方向に運動され得る。この択一的な実施形態では、ガイド面とブレーキ楔体との間のより緊密な接触が可能である。これにより、よりコンパクトなシステムが実現され得る。なぜならば、ブレーキ楔体が1つの方向で完全にガイド面から抜け出ることができないので、システム自体がより安定しているからである。
【0069】
本発明による風車は、特に有利な改良形では、複数のブレーキ装置を有している。この場合、一方のブレーキ装置は、該ブレーキ装置がパワートレーンの純粋な制動に役立つように形成されかつ/または制御されていてよい。したがって、このようなブレーキ装置は、極めて簡単な制御スキーマにしたがう。他方のブレーキ装置は、専ら、または特に振動減衰のために形成され、かつ/または相応して制御されていてよい。しかしこのような少なくとも2つのブレーキ装置、特に有利には全てブレーキ装置が、振動減衰のために使用され得るように形成されもしくは制御されていると有利である。
【0070】
複数のブレーキ装置の使用は、本発明の枠内で、特別な利点を提供する。すなわち、複数のブレーキ装置が互いに、運転中、たとえば緊急制動時に、改善されて負荷軽減し合うことができ、したがってより少なく負荷されかつ摩耗させられる。このことは、ブレーキディスクのより小さな不規則性につながり、最終的に、各ブレーキ装置により加えられ得る減衰力のより正確な調整可能性につながる。さらに、能動的な減衰効果は、局所的にも変化され得るので、減衰力を、パワートレーンが特に良好に減衰されるべき箇所においてパワートレーンにもたらすことができる。振動振幅が所定の箇所で特に高い場合には、有利にはまず、ブレーキ装置のうちその箇所の最も近く位置しているブレーキ装置が減衰のために使用される。さらに、ブレーキ装置は種々異なって配置されていてもよく、これによって、たとえば1つのブレーキ装置が、一方の側から制動力をもたらすことができ、別のブレーキ装置が、上方から制動力をもたらすことができる。このことは、種々の振動方向を備える数種の振動を出来るだけ効果的に減衰することができるという効果を有している。
【0071】
この背景から、発明者によりさらに、ブレーキ装置の少なくとも2つ、有利には全てのブレーキ装置を、互いに独立して制御する試みがなされた。これに関連して、独立した制御とは、互いに異なる制御命令が個別のブレーキ装置に導かれることを意味している。しかし、これらの制御命令は、全体として、(これは極めて有利であるが)総合関連しているので、個別のブレーキ装置への制御命令の調整が行われる。これにより、独立したブレーキ装置の「協調的な」減衰操作が可能であり、減衰力は、程度および方向で加算されて、全てのブレーキの総減衰力を形成する。この総減衰力は、コントロールシステムにより所望された減衰作用に一致する。
【0072】
さらに、たとえば風車の電源故障の場合、強く突発的な力でのより大きな衝撃振動時に、ブレーキ装置を減衰に使用することができることも言及すべきである。減衰を伴うブレーキ干渉によって、ブレーキ装置は、ナセルが風車のタワーと一緒に風に抗して運動する、もしくはタワーが、(風向きに応じて)不都合に強くねじられることを阻止する。この場合、ロータの作用は、飛行機プロペラの作用と等しい。ブレーキ装置の減衰干渉によって間接的に対抗モーメントが得られる。この対抗モーメントは、ナセルおよびタワーの運動、ひいてはタワーのねじれを顕著に減じる。
【0073】
本発明を、以下に添付の図面を参照しながら実施形態につきもう一度詳しく説明する。この場合、種々異なる図面に示された同じ構成要素は同じ参照符号を有している。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明による風車の1実施形態をキャビンが開かれた状態で示す側面図である。
【図2】楔ブレーキを断面で示した著しく簡単化した原理図である。
【図3】図1に示した風車のパワートレーンの部分およびブレーキ装置を示す詳細に示した図である。
【図4】本発明の1実施形態による振動減衰方法のフローのための概略的なブロック図である。
【図5】本発明による振動減衰方法の枠内で使用することができる、パイロット制御部を備えたブレーキ装置の制御プロセスのフローのための概略的なブロック図である。
【図6】本発明による振動減衰方法の枠内で導出され得る、パワートレーンの振動曲線との関係で示された概略的な制御曲線である。
【0075】
図1は、本発明の1実施形態による風車もしくは風力タービン13を示している。風車は、風に向けられた前側に、ロータ14を有している。このロータ14は、複数のロータ羽根19を有している。これらのロータ羽根19は、ハブ17に結合されている。ハブ17からは、第1のシャフト21が、風車13のナセル37の内部へ案内されている。第1のシャフト21は、弾性的な主支承部23、第1の鞍部25および第2の鞍部35(これらの鞍部25,35の位置はモータ29,31により移動可能である)によりナセル37内に支承されている。
【0076】
伝動装置33は、第1のシャフト21の回転を、第2のシャフト44の回転に変換させる。この場合、第2のシャフト44は、伝動装置33の、第1のシャフト21とは反対の側に配置されている。第2のシャフト44は、発電機45内に案内されている。該発電機45内で、第2のシャフト44の回転エネルギから電流が得られる。連結器41は、第2のシャフト44の連結および連結解除のために役立つ。これによって、危険状態で、発電機45を、第2のシャフト44の回転から連結解除することができる。第1のシャフト21および第2のシャフト44は、パワートレーン22の共通の部分である。発電機45は、水冷却器49と、付加的な換気装置51により冷却される。水冷却器49の代わりに、オイル冷却器も使用され得る。
【0077】
ナセル37は、旋回可能にタワー27上に支承されている。ナセル37の外側には、気象センサ47が取り付けられている。この気象センサ47は、たとえば風況、気温、雲状況、視界状況等に関する気象データを提供する。
【0078】
第2のシャフト44の領域には、調節モータ39が位置している。調節モータ39は、第2のシャフト44に結合された歯車40に噛み合っている。さらに、ブレーキディスク42が、第2のシャフト44に結合されている。ブレーキディスク42は、ブレーキ装置43により制動される。
【0079】
ブレーキ装置43は、当該ブレーキ装置43が制御されて、パワートレーン22に減衰力を加えるように形成されている。この場合、減衰力は、パワートレーンの不都合な振動に対抗して作用する。この作用形式は、図3から図6につき、さらに詳細に説明される。
【0080】
図2は、楔ブレーキの作用形式を示すために、1つの楔ブレーキ43を原理図に側面図として示している。楔ブレーキ43は、ブレーキ楔体5を有している。ブレーキ楔体5は、滑りローラ9を介して保持構造体10のガイド平面11に沿って可動である。ブレーキ楔体5の表面または支承面12は、ガイド平面11の方向に向けられていて、該ガイド平面11に沿って滑りローラ9が支承されている。ブレーキ楔体5の、支承面12と反対の側には、ブレーキライニング3が位置している。このブレーキライニング3は、ブレーキディスク42の方向に向けられている。ブレーキディスク42は、軸線Aを中心として回転する。この軸線Aに対してガイド平面11は斜めに、つまり180°でも90°でもない角度に位置調節されている。このことは、ブレーキディスク42が、観察者の視線方向に回転することを意味している。
【0081】
ブレーキライニング3を備えたブレーキ楔体5が、ブレーキディスク42に当て付けられた場合、ブレーキディスク42に対して垂直力Fが存在し、該垂直力Fに対して接線方向の摩擦力Fが存在する。これらの両方の力FおよびFの組合せにより、三角形において、合成された制動力Fが生じる。このような力バランスで、ブレーキディスク42の制動が行われる。いま、ブレーキ楔体5がさらに軸線Aの方向へアクチュエータ力Fによって押圧されると、これにより、より強い制動力Fが生じる。回転軸線Aの方向へのブレーキ楔体5の移動により、楔ブレーキ43の制動力の増大を得ることができる。この場合、楔ブレーキ43の制動力は、アクチュエータ力Fと全く同じにように強く増大しないが、ブレーキ楔体5の移動後に、ブレーキ楔体5を定位置に維持するために、もはや別の付加的な力が加えられる必要はない。その代わりに、一定の制動力Fを有する新しい力バランスが生じる。必要となるアクチュエータ力Fは、最終的に、ブレーキディスク42とブレーキライニング3との間の接触部の摩擦特性に依存する。ブレーキ楔体5を軸線Aの方向にさらに移動させ、それによってその都度所望される制動力を得るために、付加的なアクチュエータ力Fが消費される必要がなくなった場合、楔ブレーキ43は、その最適なブレーキ点に到達している。アクチュエータ力Fを制御する制御装置は、最終的に、力のバランスが達成されている、まさにその最適なブレーキ点への到達を目的としている。
【0082】
本発明の枠内では、楔ブレーキが使用されると有利であるが、原理的には別の種類のブレーキ装置を使用することも可能である。
【0083】
図3は、図1からの拡大した詳細図で、第2のシャフト44、特にブレーキ装置43の領域を示している。伝動装置33から、第2のシャフト44が、発電機45(図3には示していない)の方向に案内されている。歯車40は、調節モータ39に結合されている。この調節モータ39は、歯車39aを介して、歯車40に噛み合っている。調節モータ39により、第2のシャフト44の回転位置が調節され、この場合、ロック装置59が規定されたロック位置で歯車40に係合し、これにより歯車40を位置固定することができるようにされる。これにより、第2のシャフト44と同時に、伝動装置33を介して間接的に第1のシャフト21も位置固定され、回転することができない。さらに発電機45の方向は、まずブレーキディスク42ならびに2つのセンサ63,65が配置されている。これらのセンサ63,65は、一方では第2のシャフト44の回転速度もしくはトルクを測定し、これにより間接的に、第2のシャフト44の、本発明の枠内で減衰されるべきバイブレーション、つまり妨害振動を測定する。
【0084】
既に述べたように、本実施形態では、バイブレーションを減衰するためのブレーキ装置43が楔ブレーキとして実現されている。このことは、ブレーキ楔体5が、図2に図示した原理に従って、滑りローラ9に沿ってガイド面51上を上方もしくは下方に向かって運動させられ、これによって所望の制動力FおよびF(図2を参照)をブレーキディスク42において達成することができることを意味している。既に図2に示されたブレーキライニング3の他に、ブレーキキャリパ52を介して、ブレーキライニング3とは反対に位置する側に、第2のブレーキライニング53が配置されている。これにより、楔ブレーキ43のブレーキ楔体5の移動は、(第1の)ブレーキライニング3と第2のブレーキライニング53との間で、ブレーキディスク42の一種の緊締を生ぜしめる。電気的なサーボモータ55は、調整ホイール57を介して、楔ブレーキ43のブレーキ楔体5の位置を調節し、これにより、所望の制動力F,Fが達成されるようにされる。
【0085】
サーボモータ55は、制御装置61により制御される。このためには、制御装置61は、センサ、特に回転センサ63、バイブレーションセンサ65および気象センサ47からの入力データにより働き、これにより、特に第2のシャフト44のバイブレーションの能動的な減衰のために制御命令を導出する。これらの入力データは、パワートレーンの振動特性を表すパラメータ値である。
【0086】
これらのセンサからのデータは、さらに、危険状況が生じているか否か関する情報を提供することができ、この情報に基づいて、第2のシャフト44もしくはパワートレーン22全体の回転速度が減じられるか、もしくは完全に零にさせられることが望ましい。最終的に、制御装置61は、これらの入力データおよび別の入力データ(たとえば楔ブレーキ43の現在のブレーキ作用に関する測定データ)に応じて、楔ブレーキ43の、最適な目下の制動力もしくは減衰力を調整することができる。
【0087】
図4は、本発明の1実施形態による振動減衰方法の概略的なフローチャートを示している。パワートレーン22(図1および3を参照)の振動Sから、この振動Sのために表わされるパラメータ値Pが求められる。このことは、たとえばセンサ63,65(図3を参照)により可能である。導出ステップAbで、これらのパラメータ値Pは、振動Sを振動減衰するための制御命令SBを導出するために使用される。付加的なインプットとして、パワートレーン22、風車13もしくは風車13の個別の構成要素の共振周波数Resに関する情報が役立ち得る、つまり、どの周波数範囲において振動が風車13で特に損害を起こし得るかの情報が役立ち得る。このように生成された制御命令は、ブレーキ装置43に伝達され、ブレーキ装置43の作動により、減衰力Dが、パワートレーン22、より厳密には第2のシャフト44に加えられる。
【0088】
図5は、制御プロセスのフローに関する概略的なブロック線図である。第1の時点で読み出されるパラメータ値Pt0はパイロット制御部VSに入力される。これらのパラメータ値Pt0は、たとえば第2のシャフト44の回転数および/またはトルクの測定値、ロータ14もしくは第1のシャフト21のトルクおよび回転数の測定値ならびに風速の測定値を含んでいる。さらに、これらのパラメータ値Pt0は、ピッチモーメントおよびヨーモーメントに関する測定値、パワートレーン22(もしくはパワートレーン22の個別の構成要素)の軸方向の移動に関する測定値、ブレーキディスク42のディスク状態に関する測定値ならびにブレーキ装置43の現在の緊締力(つまり、ブレーキディスク42に加えられる力)に関する測定値等を含んでいてよい。これらの測定値から、パイロット制御部VSが、パイロット制御信号VSSを導出する。このパイロット制御信号VSSは、ほぼ第2の(後続の)時点において、ブレーキ装置43によって加えられる制動力がどのくらいの強さであると望ましいかに関する情報を含んでいる。このパイロット制御信号VSSは、制御部Stに記憶されて、制御部Stは、これにより制御命令SBを生成する。制御部Stは、この制御命令SBを、実現のためにブレーキ装置43に伝達する。
【0089】
さらに、第1のパラメータ値Pt0およびパイロット制御補償調整信号VASが、補償調整ユニットAEに伝達される。パイロット制御補償調整信号VASは、パイロット制御部VSからの情報、つまりパイロット制御部VSが、パワートレーン22の振動状態に関する第1のパラメータ値Pt0からどのような状態を推測したか、特に、ブレーキ装置43によって減衰干渉が行われたあとに、どのようなパラメータ値がたとえば次に期待され得るのかの情報を含んでいる。補償調整ユニットAEには、第2の時点で、すなわちブレーキ装置43の減衰作用の第1の操作後に、同様に第2のパラメータ値Pt1が入力される。補償調整ユニットAEは、第2のパラメータ値Pt1を、パイロット制御補償調整信号VSAもしくは第1のパラメータ値Pt0と比較して、そこから補償調整データADを生成する。補償調整ユニットAEは、この補償調整データADを、第2のパラメータ値Pt1と共にパイロット制御部VSに戻す。パイロット制御部VSは、ここから、パワートレーン22における振動Sのさらなる発生を推測する。調整データADは、同じく制御部Stにも伝達されるので、制御部Stも、補償調整データADから、将来的に必要となる減衰特性を推測する。
【0090】
この回路は、常に繰り返され、これによって閉じられたループで、ブレーキ装置43の減衰力の常に改善された調整が達成され得る。
【0091】
図6は、時間t(秒単位、メモリなし)上で、本発明による振動減衰方法に基づいて導出され得る概略的な制御曲線Kを、パワートレーン22の著しく概略的に図示された振動曲線Kと関連づけて示している。Y座標は、振動曲線Kに関連して、振動Sが実行する行程s(mm単位、メモリなし)を示している。制御曲線Kに関して、Y座標は、制御命令から導出されるべき減衰力D(単位ニュートン、スケールなし)を示す。振動曲線Kは、図4につき説明したようなパラメータ値Pから導出されている。
【0092】
この場合、振動曲線Kは、極めて簡略化されて、固定的な周波数を有する正弦波として、それぞれ不規則性なしに図示されている。実際には、振動曲線Kは、このような理想典型的な曲線からずれている。なぜならば、特に、多種の振動(たとえば軸方向もしくは半径方向およびねじれ振動)が重畳されるからである。このことは、相応する制御曲線Kに、この複雑さが反映されることを意味している。したがって、振動特性および制御特性に関する説明は、同じく概略的に簡略化されたものとして理解されるべきである。
【0093】
始めに、時点tにおいて、振動Sはまだ能動的に減衰されない。したがって、振動曲線Kは、臨界的な周波数範囲、たとえばナセル37の共振周波数にあって、比較的大きな第1の振幅Ampを有している。第1の振幅Ampは、上側の限界値SWの上方に位置している。この限界値SWへの到達により、アラーム状態が作動する。アラーム状態は、能動的な振動減衰が開始されると望ましいことを意味している。
【0094】
したがって、時点tで、すなわち臨界的な周波数および高い第1の振幅Ampの確認の直後に、能動的に、ブレーキ装置43を用いて、振動Sに対向して制御が行われる。この場合、制御曲線Kは、t軸線(つまり振動曲線Kの振動零点)に沿って軸線対称に鏡像対称的な曲線を描く。これにより、振動曲線Kにまさに対向して減衰力Dが加えられて、この場合、減衰力Dの程度は、振動曲線Kの振動零点からのパワートレーン22の変位の程度が上昇もしくは降下するのに応じて上昇する。したがって、時点tの後に求められた振動曲線Kの振幅Amp,Amp,Ampの程度は、第1の振幅Ampよりも小さい。
【0095】
減衰曲線Kの振幅Amp2’,Amp3’,Amp4’は、この減衰曲線Kの振幅Amp2’,Amp3’,Amp4’が、振動曲線Kの振幅Amp,Amp,Ampと同じ割合で小さくなるという点で、振動曲線Kの振幅Amp,Amp,Ampに一致する。振幅Ampは、減衰によって、下側の限界値SWよりも低い値でしかない。このことは、前もって作動されたアラーム状態が解除され得ることを意味している。したがって、下側の限界値SWを下回った直後の時点tから、ブレーキ装置43を用いた能動的な減衰はストップされる。振動曲線Kは、再び上側の限界値SWに到達するまで、小さな振幅を備える所望の軌道(Bahn)で推移する。したがって、減衰は、専ら風車13内の受動的な減衰器、つまりたとえば主支承部23によって引き受けられる。
【0096】
最終的に、上記で詳細に記載された方法および図示された風車およびその構成要素は単に実施形態の例であり、当業者であれば本発明の範囲から逸脱することなしに変更することができることをもう一度示唆しておく。さらに、不定冠詞「einもしくはeine(1つの)」は、該当する構成が複数存在し得ることを排除しない。特に、「ユニット」は、1つまたは複数の空間的に分配されて配置された構成要素から成っていてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車(13)内のパワートレーン(22)を振動減衰する方法において、該パワートレーン(22)が、ロータ(14)と発電機(45)とを結合させており、パワートレーン(22)の振動(S)を表すパラメータ値(P,Pt0,Pt1)を求め、求められたパラメータ値(P,Pt0,Pt1)に基づいて、ブレーキ装置(43)を使用することにより、パワートレーン(22)の振動(S)に対抗して作用する減衰力(D)を制御してパワートレーン(22)に加えることを特徴とする、風車内のパワートレーンを振動減衰する方法。
【請求項2】
前記ブレーキ装置(43)の制御を電子的に行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ブレーキ装置として、楔ブレーキ(43)を含むブレーキ装置を使用し、該ブレーキ装置を、有利には電子的な制動力調整によって制御する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ブレーキ装置(43)を制御して、減衰力(D)を発生させるための制御命令(SB)を、風車(13)の構成要素の共振周波数(Res)に応じて導出し、共振周波数(Res)は風車(13)の始動前に、有利にはシミュレーションおよび/または測定により、かつ/または風車(13)の運転中に求められている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
減衰力(D)を、パワートレーン(22)の惰性運転時に加える、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ブレーキ装置(43)のブレーキディスク(42)への作用力(F,F,F)を、ブレーキディスク(42)の不均整化量に応じて変化させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
複数の測定センサ(63,65)、有利には風車(13)の構成要素におけるバイブレーションを測定するバイブレーションセンサおよび/または加えられた減衰力(D)を測定するための力センサからのセンサ信号に基づいて、前記パラメータ値(P,Pt0,Pt1)を求める、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
減衰力(D)を加えるための制御信号(SB)を、前記パラメータ値(P,Pt0,Pt1)から導出されたパイロット制御信号(VSS)に基づいて生成する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記パラメータ値(P,Pt0,Pt1)から、減衰されるべき振動(S)の曲線を求め、前記減衰力(D)を、方向および/または強さおよび/または周波数において、求められた前記曲線に対して鏡像対称的に加える、請求項1から8までいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
風車(13)であって、パワートレーン(22)を介して互いに結合されたロータ(14)と発電機(45)とが設けられており、さらにブレーキ装置(43)と、制御装置(55)とが設けられており、該制御装置(55)が、運転中に、パワートレーン(22)の振動(S)を表すパラメータ値(P,P,P,P,P)から、ブレーキ装置(43)を使用してパワートレーン(22)に減衰力(D)を加えるための制御信号(SB)を導出し、減衰力(D)が、制御されて、パワートレーン(22)の振動(S)に対抗して作用することを特徴とする、風車。
【請求項11】
パワートレーン(22)が、パワートレーン構成要素として第1のシャフト(21)と第2のシャフト(44)とを有しており、第1のシャフト(21)と第2のシャフト(44)とが、変速伝動装置(33)を介して互いに結合されている、請求項10記載の風車。
【請求項12】
前記ブレーキ装置(43)が、前記第2のシャフト(44)の領域に配置されている、請求項11記載の風車。
【請求項13】
前記ブレーキ装置が、楔ブレーキ(43)、有利には電子的な楔ブレーキを有している、請求項10から12までのいずれか1項記載の風車。
【請求項14】
複数のブレーキ装置(43)が設けられている、請求項10から13までのいずれか1項記載の風車。
【請求項15】
風車(13)内のパワートレーン(22)を振動減衰するためのブレーキ装置(43)の使用において、パワートレーン(22)が、ロータ(14)と発電機(44)とを結合させており、パワートレーン(22)の振動(S)を表すパラメータ値(P,Pt0,Pt1)を求め、求められたパラメータ値(P,Pt0,Pt1)に基づいて、ブレーキ装置(43)を使用することにより、パワートレーン(22)の振動(S)に対抗して作用する減衰力(D)を制御してパワートレーン(22)に加えることを特徴とする、風車内のパワートレーンを振動減衰するためのブレーキ装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154336(P2012−154336A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12332(P2012−12332)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】