説明

風車及び風車を風向に整合させる方法

【課題】風車を風向と整合させるための改良された方法を提供する。
【解決手段】風車のナセル1の第1の側17において少なくとも第1の圧力を測定するステップと、測定された第1の圧力と、第2の圧力との差圧を決定するステップと、決定された差圧に基づいてナセル1を回転させるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車、及び風車を風向に整合させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い構造荷重を回避しかつ最適な電力を発生するために、例えば水平軸型風車を特定の風向に整合させることが必須である。風向は通常、風向計又は音波風力センサを使用することによって測定される。
【0003】
英国特許第2067247号明細書には、風力発電機を制御するための、特に空気流に対してロータの回転平面の位置を整合させるための風力エネルギを決定するための装置が開示されている。ロータ平面における風力エネルギは、プローブによって測定された差圧を用いて制御され、この場合、圧力プローブはロータ翼の表面に配置されている。測定システムが90゜及び270゜のロータ位置において異なる初期風角度を記憶すると、翼は0゜及び180゜の位置において調整されなければならず、これにより、90゜及び270゜において再び初期風角度の差を平衡させるためにタワー軸線を中心にロータ平面が回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国特許第2067247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、風車を風向と整合させるための改良された方法を提供することである。本発明の別の目的は、改良された風車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の目的は、請求項1に記載の方法によって解決され、第2の目的は、請求項10に記載の風車によって解決される。従属請求項は、発明のさらなる発展を含む。
【0007】
風車を風向に整合させるための本発明の方法は、風車のナセルの第1の側において少なくとも第1の圧力を測定するステップと、測定された第1の圧力と、第2の圧力との差圧を決定するステップとを含む。ナセルは次いで、決定された差圧に依存して又は決定された差圧に応答して回転させられる。
【0008】
第2の圧力は、風との風車の正確な整合に対応するように較正された基準圧力、又は第1の側とは反対側に配置された、風車のナセルの第2の側において測定された圧力であってよい。言い換えれば、ナセルの第1の側において測定された少なくとも1つの圧力値と、基準圧力との差、又はナセルの両側において測定された圧力値の差が、風車のロータのヨーの不整合を修正するために風車制御システムによって使用される。
【0009】
圧力測定のために、利用できる最大の物体、つまり風車のナセルを使用することによって、風車ロータのヨー不整合の極めて頑強な測定が達成されることができる。不整合のこのような頑強な検出により、よりより整合、すなわちより正確な整合を達成することができる。さらに、不整合による構造荷重及び電力発生損失の増大が回避されることができる。測定、ひいてはヨー不整合検出をさらに一層頑強にするために、測定された第1の圧力及び/又は測定された第2の圧力は、差圧を決定する前に所定の時間に亘って積分されてよい。
【0010】
本発明による方法は、第1の圧力及び/又は第2の圧力として動圧、静圧又はこれらの組合せが測定されるかに関わらずに行われることができる。さらに、2つ以上の圧力がナセルの第1の側において測定されてよい及び/又は2つ以上の圧力がナセルの第2の側において測定されてよい。次いで、差圧を決定する前に、ナセルの第1の側において測定された圧力は組み合わされる及び/又はナセルの第2の側において測定された圧力が組み合わされる。択一的に、組み合わされた差圧に応じて又は組み合わされた差圧に応答してナセルを回転させる前に、2つ以上の差圧が決定され、決定された差圧が組み合わされる。ナセルの同じ側において測定された圧力は、同種の圧力測定から又は種々異なる圧力測定から得られてよい。ナセルのそれぞれの側における多数の圧力測定を組み合わせることにより、本発明による方法はより一層頑強にされることができる。以下では、"差圧"又は"決定された差圧"は、そのように明らかに述べられていなくとも、組み合わされた差圧をも含む。
【0011】
選択的に、差圧のための最大限界及び/又は最小限界が規定されてよい。ナセルの回転は、差圧が所定の最大限界に到達又は所定の最大限界を超過した場合に開始されてよい及び/又はナセルの回転は、差圧が所定の最小限界に到達又は所定の最小限界よりも低下した場合に停止させられてよい。最大限界及び最小限界は同じであってもよい。
【0012】
さらに、方法は、風速及び/又は風車ロータの回転速度に従って、差圧及び/又は所定の最大限界及び/又は所定の最小限界を較正するステップを含んでよい。この手段により、ロータの回転によりナセルの周囲の空気流に誘発される小さな非対称性が、考慮されることができる。
【0013】
本発明による風車は、第1の側と、第1の側と反対側に配置された第2の側とを備えるナセルを有する。風車はさらに、ヨー整合制御装置と、ヨー整合制御装置に接続されたヨー駆動装置とを有する。ヨー整合制御装置は、風向に対する風車の不整合、すなわちヨーエラーを決定し、風向に対する風車の再整合につながる風車の回転を表す制御信号を発生するように設計されている。ヨー駆動装置は、制御信号を受信するためにヨー整合制御装置に接続されている。ヨー駆動装置は、制御信号に基づいて風車を風向に整合させるように設計されている。本発明による風車において、少なくとも1つの第1の圧力計がナセルの第1の側に配置されており、圧力計は第1の圧力信号を発生する。さらに、ヨー整合制御装置は、第1の圧力信号を受信するために少なくとも1つの第1の圧力計に接続されている。ヨー整合制御装置は、第1の圧力信号と第2の圧力信号との差圧を決定し、決定された差圧に応じて又は決定された差圧に応答してナセルの回転を表す制御信号を出力するように設計されている。ヨー整合制御装置は、PID制御器、ニューラルネットワーク、ファジイ論理制御装置又は適応制御装置であってよい。
【0014】
本発明による風車は、本発明による方法を行うために適合されており、ひいては本発明による方法に関して既に説明された利点を達成する。これに関して、回転は、特に、回転を開始するための所定の最大限界及び/又は回転を停止させるための所定の最大限界を使用することによって行われてよい。
【0015】
第1の圧力計に加えて、少なくとも1つの第2の圧力計がナセルの第2の側に配置されていてよく、第2の圧力計は第2の圧力信号を発生する。この場合、ヨー整合制御装置は、第2の圧力信号を受信するために少なくとも1つの第2の圧力計に接続されていることができる。ナセルの第2の側に配置された少なくとも1つの第2の圧力計に加えて又はその代わりに、風車は、風に対する風車の正確な整合に対応するように較正された基準信号を含む基準圧力リポジトリを有していてよい。この場合、ヨー整合制御装置は、第2の圧力信号としての基準圧力を受信するために基準圧力リポジトリに接続されていることができる。
【0016】
本発明による風車において、圧力計はナセル側部におけるあらゆる箇所に配置されてよい。さらに、ヨー整合制御装置は、中央制御装置に配置されていてよく、多数の風車に応答することができる。個々の風車の圧力計の信号は、例えば、時間計画に従ってヨー整合制御装置に送信されることができる。好適には、個々の風車には、固有のヨー整合制御装置が装備されていてよい。ヨー整合制御装置は、風車制御装置の一部であるか、又は風車制御装置に組み込まれていてよい。
【0017】
2つ以上の圧力計がナセルの第1の側に配置されていてよい及び/又は2つ以上の圧力計がナセルの第2の側に配置されていてよい。それぞれの圧力計は圧力信号を発生する。ヨー整合制御装置は、個々の圧力信号を受信するために全ての圧力計に接続されており、差圧を決定する前に、ナセルの第1の側に配置された圧力計からの圧力信号を第1の組み合わされた圧力信号に組み合わせるように設計されている及び/又はナセルの第2の側に配置された圧力計からの圧力信号を第2の組み合わされた圧力信号に組み合わせるように設計されている。択一的に、ヨー整合制御装置は、2つ以上の差圧を決定するように設計されていることができ、組み合わされた差圧に応じて又は組み合わされた差圧に応答してナセルの回転を表す制御信号を出力する前に、決定された差圧を組み合わせるように設計されていることができる。ナセル側部における2つ以上の位置において圧力を測定することにより、ヨー整合の決定における頑強さをさらに高める。
【0018】
ロータの回転によって誘発されるナセルの周囲の空気流における小さな非対称性を考慮するために、ヨー整合制御装置は、較正ユニットを含んでよい又は較正ユニットに接続されていてよく、この較正ユニットは、風速及び/又はロータの回転速度に従って、第1の圧力信号と第2の圧力信号との差及び/又は所定の最大限界及び/又は所定の最小限界を較正するように設計されている。特に、較正ユニットは、ロータ回転速度の与えられた値及び/又は風速の与えられた値のための決定された差圧に、補正値を規定するテーブルを提供してよい。その代わりに、補正は、所定の差圧限界に対して行われることができる。
【0019】
圧力計として、様々な装置、例えば、ピトー管、ひずみ計、圧電圧力センサ、薄膜圧力センサ等、又はこれらの組合せが、使用されることができる。
【0020】
本発明の別の特徴、特性及び利点が、添付の図面に関連した発明の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による風車の第1の実施形態を示す上面図である。
【図2】第1の実施形態のヨー整合制御装置を、ブロック線図で概略的に示している。
【図3】図2に示されたヨー整合制御装置の変更態様を示している。
【図4】本発明による風車の第2の実施形態を示す上面図である。
【図5】第2の実施形態のヨー整合制御装置を、ブロック線図で概略的に示している。
【図6】本発明による風車の第3の実施形態を示す上面図である。
【図7】第3の実施形態のヨー整合制御装置を、ブロック線図で概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明による風車を示す上面図である。風車は、風車タワーの上部に配置されたナセル1を有する。タワー自体は、ナセル1の下側に配置されているので図において見えていない。ナセル1は発電機を収容しており、発電機の可動部分は、軸3によって風車ロータ5に結合されている。ロータ5はロータハブ7を有しており、ロータハブ7から、この実施形態において、3枚のロータ翼9が半径方向外向きに延びている(3枚の翼のうち2枚だけが図示されている)。翼の数は、3枚ではなく、例えば2枚であってもよい。しかしながら、3枚翼ロータが現在は最も一般的である。
【0023】
風力の電力への最適な変換を達成するために、軸3の軸線A、すなわち回転軸線は、風向と整合させられる。軸線Aを風向と整合させるために、タワー上部とナセル1との間にはヨー駆動装置が配置されている(ヨー駆動装置は図1には示されていない)。さらに、ヨー整合制御装置が設けられており、ヨー整合制御装置は、風車のロータ軸線Aの回転を表す制御信号を発生し、この回転が、ロータ軸線Aを風向と整合させる。ヨー整合制御装置と、ヨー駆動装置とは、図2に概略的に示されている。
【0024】
この実施形態において、ヨー整合制御装置11は、それぞれナセルの第1の側17と第2の側19とに配置された、第1のピトー管13と第2のピトー管15とに接続されている。第2の側19は第1の側17とは反対側に配置されている。したがって、第1のピトー管13はナセル1の第1の側17において風の動圧を測定するのに対し、第2のピトー管15はナセル1の反対側19において風の動圧を測定する。第1及び第2の圧力計はそれぞれ第1及び第2の圧力信号を生ぜしめる。ピトー管は、本発明と共に使用されてよい圧力計の1つの可能な種類でしかない。その他の圧力計、例えば、動圧の代わりに静圧を測定する圧力計が使用されてもよい。その他の圧力計の例は、ひずみ計、圧電圧力センサ、薄膜圧力センサ等である。
【0025】
ヨー整合制御装置11において、第1及び第2のピトー管13,15によって生ぜしめられた第1及び第2の圧力信号が、減算ユニット21によって受け取られ、減算ユニット21は、第1の圧力信号を第2の圧力信号から引くか、又は第2の圧力信号を第1の圧力信号から引き、第1及び第2の圧力信号の差を表す、すなわちナセル1の両側17,19の差圧を表す、差信号を出力する。
【0026】
減算ユニット21は、例えば、差動増幅器として実現されることができる。ヨー整合制御装置11の全てのその他のユニットと同様に、減算ユニット21は、原理的に、ハードウェアの形式及び適切なハードウェア環境において作動するソフトウェアの形式で実現されることができる。
【0027】
差信号は、比較器23によって受け取られ、比較器23は、差信号を受けるために減算ユニット21に接続されており、差信号を所定の最大限界と比較する。所定の最大限界を超えている場合には、許容限界を超えたヨー不整合が生じている。この場合、比較器は、与えられた最大限界が超えられている程度を決定し、所定の最大限界が超えられている程度を表す比較信号を生ぜしめる。
【0028】
比較信号は、制御ユニット25によって受け取られ、制御ユニット25は、比較器23に接続されており、比較信号に基づいて、軸線を風向に再整合させるために、水平方向での回転軸線Aの回転を表す制御信号を生ぜしめる。次いで、この制御信号は、風車のヨー駆動装置27に出力される。
【0029】
この実施形態において、比較器23は、較正ユニット29から所定の最大限界を受け取り、この較正ユニット29は、減算ユニット21と、ロータ速度センサ31と、風速センサ33とに接続されている。さらに、較正ユニット29は、メモリ35に接続されている。較正ユニット29は、ロータ5の回転によって導入されるナセルの周囲の空気流における小さな非対称性を相殺するために、風速及びロータ速度に従って、所定の差圧最大限界を較正するために働く。このような較正は、例えば、与えられた時間ごとに、又はロータ速度及び/又は風速における変化が検出されるとすぐに、繰り返し行われることができる。
【0030】
較正プロセスにおいて、較正ユニット29は、比較器において使用される所定の最大限界のための補正値を提供する。この補正値は、例えば風速及び/又はロータ速度の測定値に補正値を割り当てるテーブルの形式で、メモリに記憶されている。次いで、較正プロセスの後、較正ユニット29は、測定された風速及び/又はロータ速度に応じて、測定された風速及び/又はロータ速度に対応する補正値を検索し、所定の最大限界が比較器23に出力される前に、検索された補正値を用いて、所定の最大限界を補正する。
【0031】
この実施形態において、差信号は、較正プロセスを行うためだけに、減算ユニット21から受け取られる。しかしながら、所定の最大限界を補正する代わりに、差信号を補正することも可能である。この場合、比較器23は、図2に示された実施形態のように減算ユニット21に直接に接続されておらず、較正ユニット29を介して接続されている。次いで、較正ユニット29は、メモリから検索された補正値を用いて、減算ユニット21から受け取られた差信号を補正する。次いで、補正された差信号が比較器23に出力される。この場合、比較器23は、変更されていない所定の最大限界を含み又は受け取り、この変更されていない所定の最大限界を、比較器が、補正された差信号と比較する。
【0032】
ヨー整合制御装置11は、所定の最大限界が、変更されているか変更されていないかにかかわらず、もはや超過されなくなるまで、ナセルのヨー運動を生じる制御信号を提供及び出力する。次いで、ロータ軸線Aが許容可能な制限内で風向と再整合させられるので、ヨー運動は停止する。この実施形態においては所定の最大限界は回転を開始及び停止させるために使用されるが、回転を停止させるために、最大限界とは異なる限界が使用されることができる。最小限界と呼ばれるこのような限界は、特に、最大限界よりも小さい。
【0033】
図2に示された制御装置の変更が、図3に示されている。図2の制御装置11と同じ、変更された制御装置11′のエレメントは、同じ参照符号で表されており、冗長になるのを回避するためにここでは改めて説明しない。
【0034】
図3に示された変更された制御装置11′は、ピトー管13,15が減算ユニット21に直接に接続されていないという点において、図2に示された制御装置11とは異なる。その代わりに、第1の圧力センサ13及び第2の圧力センサ15は、それぞれ第1の積分器37及び第2の積分器39に接続されている。これらの積分器は、第1の積分された圧力信号及び第2の積分された圧力信号をそれぞれ提供するために、与えられた時間にわたって、受け取られた圧力信号を積分する。次いで、第1の積分された圧力信号及び第2の積分された圧力信号は、さらに、図2に示された制御装置11における第1の圧力信号及び第2の圧力信号と同様に処理される。圧力信号を積分することによって、ロータ軸線Aのヨー不整合のより頑強な決定が可能になる。
【0035】
本発明による風車の第2の実施形態が図4に示されている。第2の実施形態は、付加的な圧力計41,43がナセル1のそれぞれの側17,19に設けられているという点において、第1の実施形態とは異なる。これらの付加的な圧力計41,43は、第1の圧力計13及び第2の圧力計15と同種の圧力計であってよい。しかしながら、異種の圧力計が使用されてもよい。その他の点に関し、第2の実施形態は、図1に示された第1の実施形態のエレメントと同じである。したがって、第1の実施形態に関して既に説明されており且つ第2の実施形態におけるエレメントと同じエレメントは、同じ参照符号で表されており、改めて説明しない。
【0036】
第2の実施形態のヨー整合制御装置111は、図5に概略的に示されている。制御装置は、組合せユニット45,47が設けられているという点において、図2に示された制御装置とは異なる。その他の点に関して、ヨー整合制御装置111は、図2のヨー整合制御装置と同じである。図2のヨー整合制御装置のエレメントと同じエレメントは、図2と同じ参照符号で表されており、改めて説明しない。
【0037】
第1の組合せユニット45は、ナセルの第1の側17に設けられた圧力計13,411...41nに接続されている。第2の組合せユニット47は、ナセルの第2の側19に設けられた圧力計15,431...43nに接続されている。組合せユニット45,47は、ナセル1の一方の側における全ての圧力計の圧力信号を組み合わせるために使用され、第1の組み合わされた圧力信号と第2の組み合わされた圧力信号とをそれぞれ減算ユニット21に出力する。
【0038】
ナセル1の一方の側17,19において測定された圧力信号を組み合わせることは、圧力信号を提供するために使用される圧力計の種類に依存する様々な形式で行われることができる。全ての圧力計が同種である場合、平均値又は重みづけされた平均値が、組み合わされた圧力信号として使用されることができる。重みづけは、例えば、ナセル1の側における個々の圧力計の位置に依存してよい。
【0039】
次いで、圧力計の圧力信号を組み合わせることによって得られた第1及び第2の組み合わされた圧力信号は、図2に示されたヨー整合制御装置11における第1及び第2の圧力信号と同じ形式でさらに処理される。
【0040】
図5には示されていないが、ヨー整合制御装置111は、図3に関して説明されたように、さらに積分ユニットを有していてよい。このような積分ユニットは、組合せユニット45,47の前又は後に配置されていてよい。積分ユニットが組合せユニット45,47の後に配置されている場合、ナセル1のそれぞれの側に対して1つの積分器のみが必要とされる。別の場合、積分されるべきそれぞれの圧力信号に対して積分器が必要とされる。積分器を組合せユニット45,47の前に配置し、それぞれの圧力信号を積分しないようにすることも概して可能である。特に、ナセル1の1つの側において異種の圧力計が使用されている場合、幾つかの種類の圧力計によって提供された信号を積分して、別の種類の圧力計の信号を積分しないことが有利である場合がある。なぜならば、幾つかの種類の使用される圧力計は、積分された信号を既に提供するからである。
【0041】
図5における制御装置111の変更において、ナセル1の第1及び第2の側における対応する圧力計によって供給された圧力信号に対して、個々の差信号が提供されることができる。次いで、個々の差信号は、組み合わされた差信号を形成するために組み合わされ、組み合わされた差信号は所定の限界と比較される。この場合、多数の減算ユニットが設けられており、減算ユニットは、圧力計と単一の組合せユニットとの間に配置されている。さらに、組合せユニットは、比較器23、較正ユニット29及び制御ユニット25に接続されている。
【0042】
本発明による風車の第3の実施形態が、図6に示されている。第3の実施形態は、ナセル1の第1の側17にのみ圧力計が設けられているという点において、第1の実施形態とは異なる。別の点においては、第2の実施形態は、図1に示された第1の実施形態のエレメントと同じである。したがって、第1の実施形態に関して既に説明され、第2の実施形態におけるエレメントと同じであるエレメントは、同じ参照符号で表されており、改めて説明しない。
【0043】
第3の実施形態のヨー整合制御装置211は、図7に概略的に示されている。制御装置は、減算ユニット21が、風との風車の正確な整合に対応するように較正された基準圧力を含む基準圧力リポジトリ22に接続されているという点において、図2に示された制御装置とは異なる。次いで、基準圧力は、差信号を決定するために、第1の実施形態の第2の圧力計によって測定された圧力の代わりに、使用される。別の点においては、第3の実施形態のヨー整合制御装置211は、第1の実施形態のヨー整合制御装置11と同じである。第3の実施形態のヨー整合制御装置211は、圧力計13からの圧力信号を与えられた時間にわたって積分するための、図3に関して説明されているような積分器を有していてよい。
【0044】
較正された基準圧力は、風車の種類及び風車の位置に依存してよい。したがって、較正は、好適には、設置の後に各風車のために行われる。しかしながら、同じ風流条件を示すと予想される位置において同種の風車が使用される場合、一回の較正によって、このような風車に対して共通の基準圧力が決定されてよい。1つの風車又は同様の風車のグループのための較正は、時々、又は風車位置における風流条件が、例えば流れ条件を変化させる伴流を生じる新たに建築されたビル又はウィンドファームにおける新たな風車により変化した場合に、繰り返されてよい。
【0045】
第3の実施形態では、差信号は、ナセルの両側における圧力の差を表しているのではなく、ナセルの1つの側における圧力と、風との風車の正確な整合を表す圧力との差を表している。
【0046】
第3の実施形態では、ナセル1の第1の側17において2つ以上の圧力計が使用されてもよい。この場合、ヨー整合制御装置211は、第2の実施形態のヨー整合制御装置111に関して説明されているような組合せユニットを含む。圧力信号のうちの1つ又は2つ以上を積分するための1つ又は2つ以上の積分器が設けられていてよい。
【0047】
実施形態に関して典型例として説明された本発明は、改良された整合が達成されることができるようにヨー不整合の頑強な検出を行うことができる。整合が改善されることにより、構造荷重が低減され、ヨー不整合による電力減少損失が回避される。
【符号の説明】
【0048】
1 ナセル、 3 軸、 5 風車ロータ、 7 ハブ、 9 ロータ翼、 11 ヨー整合制御装置、 13 ピトー管、 15 第2のピトー管、 17 第1の側、 19 第2の側、 21 減算ユニット、 23 比較器、 25 制御ユニット、 27 ヨー駆動装置、 29 較正ユニット、 31 ロータ速度センサ、 33 風速センサ、 37 第1の積分器、 39 第2の積分器、 41,43 付加的な圧力計、 45 第1の組合せユニット、 47 第2の組合せユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車を風向に整合させる方法において、
風車のナセル(1)の第1の側(17)において少なくとも第1の圧力を測定するステップと、
測定された第1の圧力と、第2の圧力との差圧を決定するステップと、
決定された差圧に基づいてナセル(1)を回転させるステップを含むことを特徴とする、風車を風向に整合させる方法。
【請求項2】
第2の圧力が、第1の側(17)とは反対側に配置された、風車のナセルの第2の側(19)において測定されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2の圧力が、風に対する風車の正確な整合に対応するように較正された基準圧力であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
差圧を決定する前に、測定された第1の圧力及び/又は測定された第2の圧力を所定の時間にわたって積分することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
2つ以上の圧力がナセルの第1の側(17)において測定されかつ/又は2つ以上の圧力がナセルの第2の側(19)において測定され、差圧を決定する前に、ナセルの第1の側において測定された圧力が組み合わされかつ/又はナセルの第2の側において測定された圧力が組み合わされることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
2つ以上の圧力がナセル(1)の第1の側(17)において測定されかつ/又は2つ以上の圧力がナセル(1)の第2の側(19)において測定され、2つ以上の差圧が決定され、組み合わされた差圧に基づいてナセル(1)を回転させる前に、決定された差圧が組み合わされることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
差圧又は組み合わされた差圧に基づいてナセル(1)を回転させることが、差圧又は組み合わされた差圧が所定の最大限界に到達するか又は所定の最大限界を超えた場合に開始されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
差圧又は組み合わされた差圧に基づいてナセル(1)を回転させることが、差圧又は組み合わされた差圧が所定の最小限界に到達するか又は所定の最小限界よりも低下した場合に停止させられることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
風速及び/又は風車のロータ(5)の回転速度に従って、差圧及び/又は所定の最大限界及び/又は所定の最小限界を較正するステップを含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
風車において、
第1の側(17)と、該第1の側(17)とは反対側に配置された第2の側(19)とを備えるナセル(1)が設けられており、
風向に対する風車の不整合を決定しかつ風向に対して風車を再整合させるための風車の回転を表す制御信号を提供するように設計されたヨー整合制御装置(11,11′,111,211)が設けられており、
制御信号に基づいて風車を風向に対して整合させるように設計された、制御信号を受信するための、ヨー整合制御装置(11,11′,111,211)に接続されたヨー駆動装置(27)が設けられている形式のものにおいて、
少なくとも1つの第1の圧力計(13)がナセル(1)の第1の側(17)に配置されており、第1の圧力計(13)が第1の圧力信号を提供し、
ヨー整合制御装置(11,11′,111,211)が、第1の圧力信号を受信するために少なくとも1つの第1の圧力計(13)に接続されており、また、第1の圧力信号と第2の圧力信号との差圧を決定し且つ決定された差圧に基づいて風車の回転を表す制御信号を出力するように設計されていることを特徴とする、風車。
【請求項11】
少なくとも1つの第2の圧力計(15)がナセル(1)の第2の側(19)に配置されており、第2の圧力計(15)が第2の圧力信号を提供し、
ヨー整合制御装置(11,11′,111,211)が、第2の圧力信号を受信するために少なくとも1つの第2の圧力計(15)に接続されており、また、第1の圧力信号と第2の圧力信号との差圧を決定し且つ決定された差圧に基づいて風車の回転を表す制御信号を出力するように設計されていることを特徴とする、請求項10記載の風車。
【請求項12】
風に対する風車の正確な整合に対応するように較正された基準圧力を含む基準圧力リポジトリが設けられており、
ヨー整合制御装置(211)が、第2の圧力信号としての基準圧力を受信するために基準圧力リポジトリ(22)に接続されていることを特徴とする、請求項11記載の風車。
【請求項13】
2つ以上の圧力計(13,41,15,43)がナセル(1)の第1の側(17)に配置されておりかつ/又は2つ以上の圧力計(15,43)がナセル(1)の第2の側(19)に配置されており、各圧力計(13,41,15,43)が圧力信号を提供し、
ヨー整合制御装置(111)が、個々の圧力信号を受信するために全ての圧力計(13,41,15,43)に接続されており、また、差圧を決定する前に、第1の組み合わされた圧力信号を形成するためにナセル(1)の第1の側(17)に配置された圧力計(13,41)からの圧力信号を組み合わせかつ/又は第2の組み合わされた圧力信号を形成するためにナセル(1)の第2の側(19)に配置された圧力計(15,43)からの圧力信号を組み合わせるように設計されていることを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項記載の風車。
【請求項14】
2つ以上の圧力計(13,41)がナセル(1)の第1の側(17,19)に配置されておりかつ/又は2つ以上の圧力計(15,43)がナセル(1)の第2の側(19)に配置されており、各圧力計(13,41,15,43)が圧力信号を提供し、
ヨー整合制御装置(111)が、個々の圧力信号を受信するために全ての圧力計(13,41,15,43)に接続されており、また、多数の差圧を決定し、組み合わされた差圧を形成するために決定された差圧を組み合わせ、組み合わされた差圧に基づいて風車の回転を表す制御信号を出力するように設計されていることを特徴とする、請求項13記載の風車。
【請求項15】
ヨー整合制御装置(11,11′,111,211)が、較正ユニット(29)を有するか又は較正ユニット(29)に接続されており、該較正ユニットが、風速及び/又はロータの回転速度に従って、第1の圧力信号と第2の圧力信号との差及び/又はナセル(1)の回転を開始するための所定の最大限界及び/又はナセル(1)の回転を停止させるための所定の最小限界を較正するように設計されていることを特徴とする、請求項10から14までのいずれか1項記載の風車。
【請求項16】
ヨー整合制御装置(11,11′,111,211)が、PID制御器、ニューラルネットワーク、ファジイ論理制御装置、又は適応制御装置を含むことを特徴とする、請求項10から15までのいずれか1項記載の風車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−106838(P2010−106838A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−246425(P2009−246425)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】