説明

風車用ブレード

【課題】FRP等の非導電性の板材で翼形状に構成された風車用ブレードにおいて、雷を捉え避雷する信頼性が高く、空力的影響が少ない導電性の受雷部を設ける。
【解決手段】導電性材料からなる受雷部3は非導電性の外板2から突出している。さらに受雷部3はブレード1前後方向に沿って外板2の外表面を一周して長く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車用ブレードの落雷対策に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、いわゆる水平軸風車が風力発電装置に広く用いられている。一般的な水平軸風車は、少なくとも2枚以上のブレードがハブから放射状に取り付けられてなるロータと、ハブに接続されるとともに略水平方向に延在された主軸を介してこのロータを軸支するナセルと、略鉛直方向に設置されるとともにナセルをヨー回転自在に支持するタワーとを有して構成される。
【0003】
風力発電において水平軸風車は野外の開けた土地に設置され、そのロータのブレードは受雷しやすい環境下に置かれる。現在、発電能力向上のため、水平軸風車の大型化が進められている。ブレードの素材としては、軽量で丈夫なFRP(Fiber Reinforced Plastics)が好適に用いられている。
【0004】
ところが、FRP等の非導電性材料からなるブレードは金属製のブレードと異なり、受雷すると雷電流をアースに逃がすことができず破壊する危険がある。近時のFRPを用いた風車の大型化は、雷による被害の増加を招いている。そのため、FRP製ブレードを用いた従来の風力発電装置にあっては、FRP製のブレード本体に導電性材料を付設し落雷対策を行っている。
【0005】
一般的には、ピン型の金属受雷部をブレードの外板に打ち込み表面に突出しないように滑らかに仕上げ、内部で導体に接続してハブ方向へ導出する耐雷構造がとられている。
【0006】
特許文献1記載の風力発電装置にあっては、ブレードの表面全体にアルミ、カーボン等の導電性材料からなる多数のドットを塗布により薄膜状に形成し、落雷電流をこのドット同士を繋ぐようにブレード表面上でハブ方向へ流し、落雷による破壊を回避することとしている。
【0007】
特許文献2記載の風力発電装置にあっては、金属製のブレード先端部材で受雷し、ブレード及びタワーに設置された導線を通して雷電流をアースに導くようにしている。
【0008】
特許文献3記載の風力発電装置にあっては、ブレードの表面全体に導電性材料からなる被膜を形成し、落雷による破壊を回避することとしている。
【特許文献1】特開2006−52719号公報
【特許文献2】特開2005−113735号公報
【特許文献3】特開2004−245174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、ブレードが長大になればなるほど、その先端や受雷部に雷が落ちないことがあり、特許文献2記載のブレードでは対処しきれない。ブレードの中間に有効な受雷部が必要となっている。
一般的なピン型の受雷部をブレードの中間に埋め込んでも、そこに落ちるとは限らないことが報告されている。
ピン型受雷部をブレード表面より突出させれば、そこに落雷する確率は高まるが、空力騒音が問題となる。
また、特許文献1及び3記載のブレードにあっては、ブレード内部の導線を用いずブレード表面を流すから、十分な電流の伝導断面積を確保することが難しい。また、ブレード表面全体において滑らかな曲線をだすことが困難である。
【0010】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、非導電性の板材で翼形状に構成された風車用ブレードにおいて、雷を捉え避雷する信頼性が高く、空力的影響が少ない導電性の受雷部を設けることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、非導電性板材で翼形状に構成された風車用ブレードであって、
導電性材料からなり、前記非導電性板材の外表面から突出し、ブレード前後方向に沿って長く形成された受雷部と、
一端が前記受雷部に電気的に接続し、ブレード内で根部方向に延設された導線とを備えることを特徴とする風車用ブレードである。
【0012】
請求項2記載の発明は、非導電性板材で形成された風車用ブレードであって、
導電性材料からなり、前記非導電性板材の外表面から突出し、ブレード前後方向に沿って前記外表面を一周して長く形成された受雷部と、
一端が前記受雷部に電気的に接続し、ブレード内で根部方向に延設された導線とを備えることを特徴とする風車用ブレードである。
【0013】
請求項3記載の発明は、翼断面で分割される分割翼が連結されて全体をなし、分割翼の連結端に鍔状の導電性板材が結合され、この導電性板材の周縁部が前記受雷部とされてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の風車用ブレードである。
請求項4記載の発明は、前記受雷部は、上面視後端部の幅が最大幅の1/2以下で、且つ前記非導電性板材の外表面から突出した前記受雷部の最大高さに対応する前記外表面の位置から受雷部の後端までの長さが最大高さの2倍以上の形状を有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の風車用ブレードである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電性材料からなる受雷部はブレード外板から突出しているため、受雷しやすく、ブレード前後方向に沿って(好ましくは外表面を一周して)長く形成されているので、本受雷部より先端側に落雷しブレード表面を流れる沿面電流を本受雷部により捉えることにより逃しにくい。本受雷部で捉えた雷電流はブレード内に設置された導線により根部方向に導出され、ハブ及びタワーの金属部分又は地面まで延設した導線を通して地面に放出することができ、従って、雷を捉え避雷する信頼性の高いブレードが構成されるという効果がある。
また、本発明によれば、受雷部はブレード外板から突出しているものの、ブレード前後方向に沿って長く形成されているので、空力的影響が少なく、空力上の騒音は抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の一実施の形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0016】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態につき、図1を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態の風車用ブレードを示す部分射視図(a)及びA部断面図(b)である。
【0017】
図1に示すように本実施形態の風車用ブレード1は、FRP製の外板2により翼形状に形成されている。受雷部3は、銅、アルミニウム等の金属又は合金等の導電性材料により鋳造等で形成される。
受雷部3は、図1に示すように、外板2から突出し、ブレード前後方向に沿って外板2の外表面を一周して長く形成されている。受雷部3は、外板2の外表面の一周に亘って突出している。また、受雷部3は、外板2の外表面の一周に亘って(均一な高さである必要はない)突出している。
【0018】
ブレード1内に、引き下げ導線4が設置されている。翼断面方向に延在する第一引き下げ導線4aが外板2を貫通し、その一端が受雷部3と電気的に接続されている。第一引き下げ導線4aの他端は、ブレード1の長手方向に延在する第2引き下げ導線4bに接続されている。第2引き下げ導線4bは、ブレード1の先端部に付設された先端受雷部5にも電気的に接続される。
【0019】
第2引き下げ導線4bは、ブレード1内で、ブレード1の根部方向に延設され、ブレード1の根部が把持されるハブの金属部分に接続される。ハブに雷電流を流す適当な金属部分がない場合は、引き下げ導線をハブ内にも設置し、これにブレード1内の第2引き下げ導線4bを接続する。ナセル、タワーにおいても同様に、金属部分に接続するか、引き下げ導線を設置して、受雷部3,先端受雷部5と地面とを電気的に接続する。
【0020】
受雷部3の取付方法としては、受雷部3の裏面と外板2の外表面とを接着剤により接着する方法が適用できる。また、接着剤を用いる以外に外板2に取り付け穴や溝を設け、ボルト等により受雷部3と外板2を締結する方法も適用可能である。
【0021】
以上の第1実施形態によれば、次のような作用効果がある。
ブレード1表面にはりだした受雷部3は整流形状なので、ブレードの流体性能を妨げず、空力上の騒音は抑えられる。ここで整流形状とは、図3(a)に示すように受雷部3を上面から見た場合、受雷部3のブレード後端部の幅aが、受雷部3の最大幅に対し2分の1以下に収束する。また、図3(c)に示すように受雷部3がブレード外板表面から突出した最大高さ位置に対応した外板2表面位置αから受雷部後端までの長さが最大高さbの2倍以上の長さを有する形状を指す。さらに、受雷部3全体が角部の無い滑らかな形状を指す。この条件を満たさない場合は、空力上の騒音の抑制が困難である。
受雷部3はブレード1の一部であるが表面全周にはりだす形状となるため、ブレードの表裏、前後等のどの場所に落雷しても確実に雷をとらえることができる。
受雷部3はブレード1表面からはりだす形状となるため、ブレードに全体が埋め込まれる従来の受雷部よりも高い受雷効果が期待できる。
先端受雷部5からブレード表面を流れる沿面放電が発生しても、受雷部3で確実に放電をとらえることができる。
【0022】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態につき、図2を参照して説明する。図2は本発明の第2実施形態の風車用ブレードを示す平面図(a)、B1−B1断面図(b)、B2−B2断面図(c)、B3−B3断面図(d)及びB4−B4断面図(e)である。
【0023】
本実施形態のブレード10は、先端受雷部12、分割翼10a及び分割翼10bとからなる。先端受雷部12と分割翼10aとは翼断面(図2(a)のB1−B1断面)で分割される。分割翼10aと分割翼10bとは翼断面(図2(a)のB3−B3断面)で分割される。各断面で先端受雷部12と分割翼10a、分割翼10aと分割翼10bとがそれぞれ連結されてブレード10の全体が構成される。
【0024】
分割翼10a,10bはそれぞれFRP製の外板11a,11bにより翼形状に形成されている。先端受雷部12は全体が金属製の一体成形品で、翼部12aと鍔部12bとからなる。
【0025】
分割翼10aの中央には従来のピン型受雷部13が設けられている。
分割翼10aの連結端には金属製の鍔14aが結合している。分割翼10bの連結端には金属製の鍔14bが結合している。
分割翼10bの中央には、前縁鍔15a及び後縁鍔15bが取り付けられている。
【0026】
翼部12a、鍔部12b、ピン型受雷部13、鍔14a、鍔14b、前縁鍔15a及び後縁鍔15bはブレード10の受雷部に相当し、ブレード10内の引き下げ導電16と電気的に接続する。これらの受雷部は1又は2以上を選択して採用しても良い。また、ブレード1の根元部は先端部に比べ断面積が大きく全周に受雷部を設けるとコストがかかるため、受雷部15a,15bのようにブレードの前縁、後縁のみ整流形状の受雷部を設けても良い。鍔部12b、鍔14a及び鍔14bには、取り付け用の孔17が設けられている。18は翼桁である。
【0027】
以上の第1実施形態によれば、次のような作用効果がある。
ブレード10表面にはりだした受雷部12b,14a,14b,15a,15bは整流形状なので、ブレードの流体性能を妨げず、空力上の騒音は抑えられる。
受雷部12b,14a,14bはブレード1の一部であるが表面全周にはりだす形状となるため、ブレードの表裏、前後等のどの場所に落雷しても確実に雷をとらえることができる。
受雷部12b,14a,14b,15a,15bはブレード1表面からはりだす形状となるため、ブレードに全体が埋め込まれる従来の受雷部よりも高い受雷効果が期待できる。
先端受雷部5からブレード表面を流れる沿面放電が発生しても、受雷部12b,14a,14bで確実に放電をとらえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態の風車用ブレードを示す部分射視図(a)及びA部断面図(b)である。
【図2】本発明の第2実施形態の風車用ブレードを示す平面図(a)、B1−B1断面図(b)、B2−B2断面図(c)、B3−B3断面図(d)及びB4−B4断面図(e)である。
【図3】整流形状が適用された本発明の受雷部の上面図(a)、前面図(b)及び側面図(c)である。
【符号の説明】
【0029】
1 ブレード
2 外板
3 受雷部
4 引き下げ導線
5 先端受雷部
10 ブレード
10a 分割翼
10b 分割翼
11a,11b 外板
12 先端受雷部
12a 翼部(受雷部)
12b 鍔部(受雷部)
13 ピン型受雷部
14a 鍔(受雷部)
14b 鍔(受雷部)
15a 前縁鍔(受雷部)
15b 後縁鍔(受雷部)
16 引き下げ導電

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性板材で翼形状に構成された風車用ブレードであって、
導電性材料からなり、前記非導電性板材の外表面から突出し、ブレード前後方向に沿って長く形成された受雷部と、
一端が前記受雷部に電気的に接続し、ブレード内で根部方向に延設された導線とを備えることを特徴とする風車用ブレード。
【請求項2】
非導電性板材で形成された風車用ブレードであって、
導電性材料からなり、前記非導電性板材の外表面から突出し、ブレード前後方向に沿って前記外表面を一周して長く形成された受雷部と、
一端が前記受雷部に電気的に接続し、ブレード内で根部方向に延設された導線とを備えることを特徴とする風車用ブレード。
【請求項3】
翼断面で分割される分割翼が連結されて全体をなし、分割翼の連結端に鍔状の導電性板材が結合され、この導電性板材の周縁部が前記受雷部とされてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の風車用ブレード。
【請求項4】
前記受雷部は、上面視後端部の幅が最大幅の1/2以下で、且つ前記非導電性板材の外表面から突出した前記受雷部の最大高さに対応する前記外表面の位置から受雷部の後端までの長さが最大高さの2倍以上の形状を有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の風車用ブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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