説明

飛灰処理方法

【課題】混練機により飛灰と重金属安定化薬液とを添加水とともに混練することにより、飛灰からの重金属類の溶出防止処理をするに際し、混練開始の際に、手間をかけずに、混練機内に残存している飛灰固着物の固着を容易に解除することができるようにすること。
【解決手段】混練機により飛灰と重金属安定化薬液とを添加水とともに混練する飛灰処理方法において、混練停止の際に、前記混練機への飛灰、重金属安定化薬液及び添加水の供給を停止した後に、重金属安定化薬液の薬液タンクと前記混練機とを連絡する薬液供給配管路に配管洗浄用の洗浄水を注入しておき、混練開始の際に、前記混練機に飛灰、重金属安定化薬液及び添加水を供給するに先立ち、前記混練機を動作させながら該混練機に前記薬液供給配管路内に溜まっている洗浄水を導入して、前記混練機内に残存している飛灰固着物の固着を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却施設で発生する排ガスから分離された飛灰を埋め立て処分するための前処理として、埋め立て処分された後に飛灰に含まれる重金属類が溶出することを防止するように飛灰を処理する飛灰処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却施設でごみの焼却に伴って発生する排ガス中には飛灰が含まれている。この排ガス中から分離された飛灰は、最終的には埋め立て処理される。しかし飛灰が重金属類(鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、砒素、及びセレンなど)を含有する場合には、飛灰を埋め立てた後に雨水などで重金属類が溶出するおそれがあるため、飛灰を前もって処理して、飛灰中の重金属類が溶出しないよう溶出防止がなされた飛灰処理物とする必要がある。そのため、混練機により飛灰と重金属安定化薬液とを添加水とともに混練することにより、前記飛灰処理物を生成するようにしている。なお、飛灰は、ごみ焼却施設の廃熱ボイラ、ガス冷却室(減温塔)などで捕集された「ばいじん」、及び集じん灰(集じん施設(バクフィルタなど)によって捕集された「ばいじん」)を総称したものである。
【0003】
そして、混練機による混練処理は、例えば、焼却炉が24時間連続運転されるごみ焼却施設では、混練機を1回当り2時間程度運転してそれまで飛灰貯留槽内に貯留されている飛灰を処理し、該混練の終了から約8時間経過後に、次回の混練処理を行うようになされている。このように、飛灰の混練処理がバッチ処理であり、今回の混練処理を終了した時点で混練機内に残存していた被処理物は、次回の混練処理までの間に乾燥して運転動作停止中の混練機内の混練機本体(パドル付きの軸など)に固着することになる。
【0004】
そのため、従来は、混練開始にあたり、混練機に飛灰、重金属安定化薬液及び添加水を供給するに先立って、混練機清掃用の水を供給するために設けられた清掃水供給配管路からの清掃用の水を、動作停止中の混練機内に人手により撒いて、混練機内に残存している飛灰固着物を湿らせながら必要に応じてヘラなどを使用して該飛灰固着物の固着を解除するようにしている。このように、人手による混練機内の清掃が必要で、手間がかかるという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−248136号公報(段落[0002]〜[0004])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、混練機により飛灰と重金属安定化薬液とを添加水とともに混練することにより、飛灰からの重金属類の溶出防止処理をするに際し、混練開始の際に、手間をかけずに、混練機内に残存している飛灰固着物の固着を容易に解除することができるようにした飛灰処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
請求項1の発明は、混練機により飛灰と重金属安定化薬液とを添加水とともに混練することにより、飛灰からの重金属類の溶出防止処理をする飛灰処理方法において、混練停止の際に、前記混練機への飛灰、重金属安定化薬液及び添加水の供給を停止した後に、重金属安定化薬液の薬液タンクと前記混練機とを連絡する薬液供給配管路に配管洗浄用の洗浄水を注入しておき、混練開始の際に、前記混練機に飛灰、重金属安定化薬液及び添加水を供給するに先立ち、前記混練機を動作させながら該混練機に前記薬液供給配管路内に溜まっている洗浄水を導入して、前記混練機内に残存している飛灰固着物の固着を解除することを特徴とする飛灰処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の飛灰処理方法は、混練停止の際に、混練機への飛灰、重金属安定化薬液及び添加水の供給を停止した後に、重金属安定化薬液の薬液タンクと混練機とを連絡する薬液供給配管路に配管洗浄用の洗浄水を注入しておき、混練開始の際に、混練機に飛灰、重金属安定化薬液及び添加水を供給するに先立ち、混練機を動作させながら該混練機に前記薬液供給配管路内に溜まっている洗浄水を導入するようにしている。よって、混練開始の際に、混練機内に残存している飛灰固着物に洗浄水による湿りと混練機4による動きを与えることにより、手間をかけずに、飛灰固着物の固着を容易に解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の方法を実施するための飛灰処理装置を示す概略構成図である。
【0011】
図1において、1は飛灰貯留槽であり、2は飛灰搬送コンベヤであって、ごみ焼却施設における廃熱ボイラ、ガス冷却室(減温塔)及びバクフィルタなどで捕集された飛灰を前記飛灰貯留槽1へ搬送する。3は飛灰貯留槽1からの飛灰の定量切り出し、定量供給を行う飛灰定量供給装置としてのテーブルフィーダであり、4はテーブルフィーダ3によって飛灰が定量供給され、該飛灰と重金属安定化薬液(例えば、キレート剤)とを希釈用の添加水とともに混練する混練機である。
【0012】
5は薬液タンクであり、重金属安定化薬液を貯留している。6は管路途中にポンプ7及び薬液用開閉弁8を有し、薬液タンク5と混練機4とを連絡する薬液供給配管路である。この薬液供給配管路6に備えられた前記ポンプ7により、飛灰貯留槽1からの飛灰の切り出し量に合わせて薬液タンク5から重金属安定化薬液が混練機4に定量供給されるようになっている。
【0013】
10は洗浄水供給配管路である。この洗浄水供給配管路10は、薬液供給配管路6における前記ポンプ7と前記薬液用開閉弁8との間に一方側が接続され、他方側が洗浄水供給源9に接続されており、管路途中に洗浄水用開閉弁11を有している。
【0014】
12は添加水タンクであり、13は管路途中にポンプ14を有し、添加水タンク12と混練機4とを連絡する添加水供給配管路である。前記ポンプ14により、飛灰貯留槽1からの飛灰の切り出し量に合わせて添加水タンク12から希釈のための添加水が混練機4に定量供給されるようになっている。
【0015】
15は搬出コンベヤ、16は飛灰処理物ピットである。混練後の飛灰処理物は、飛灰処理物ピット16での固着防止のため搬出コンベヤ15上で自然養生された後に、飛灰処理物ピット16に貯留されるようになっている。なお、飛灰処理物ピット16に代えて飛灰処理物積出しバンカが用いられるものもある。
【0016】
次に、前記飛灰処理装置を用いて行う飛灰処理方法について説明する。本発明の理解を容易にするため、先に混練停止の際の手順について説明する。
【0017】
(a)まず、混練機4への飛灰、重金属安定化薬液及び添加水の供給が停止される。例えば2時間程度の1バッチ分の混練がすむと、混練機4への飛灰、重金属安定化薬液及び添加水の供給が停止される。
【0018】
(b)次に、配管洗浄用の洗浄水が所定時間薬液供給配管路6に注入される。重金属安定化薬液の供給停止後、薬液供給配管路6の薬液用開閉弁8が閉じられてから、所定時間洗浄水用開閉弁11が開かれる。これにより、所定時間洗浄水が薬液供給配管路6に注入されることで、薬液供給配管路6内の重金属安定化薬液が排出されて洗浄水と置換され、薬液供給配管路6内に洗浄水が溜まった状態となる。このように、薬液供給配管路6内の重金属安定化薬液を洗浄水と置換することにより、薬液供給配管路6内において重金属安定化薬液の分離成分が配管壁面に付着し堆積して引き起こされる配管路6のつまりの発生を防止することができる。
【0019】
(c)この薬液供給配管路6への洗浄水の注入終了後、混練機4の動作が停止される。
【0020】
次に、混練開始の際の手順について説明する。(A)まず、混練機4が起動されてその動作が開始される。
【0021】
(B)次に、混練機4に薬液供給配管路6内に前記の溜まっている洗浄水が送り込まれる。この場合、ポンプ7が運転開始されるとともに、短時間洗浄水用開閉弁11が開かれる。
【0022】
(C)次に、混練機4への飛灰、重金属安定化薬液及び添加水の供給が開始される。これにより今回のバッチ分の混練処理が行われて、飛灰中の重金属類の溶出防止がなされた飛灰処理物が生成される。
【0023】
このように、混練停止の際に、混練機4への飛灰、重金属安定化薬液及び添加水の供給を停止した後に、薬液供給配管路6に配管洗浄用の洗浄水を注入しておき、混練開始の際に、混練機4に飛灰、重金属安定化薬液及び添加水を供給するに先立ち、混練機4を動かしながら該混練機4に薬液供給配管路6内に溜まっている洗浄水を導入するようにしている。よって、混練開始の際に、混練機4内の混練機本体に固着(付着)して残存している飛灰固着物に洗浄水による湿りと混練機4による動きを与えることにより、手間をかけずに、飛灰固着物の固着を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の方法を実施するための飛灰処理装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1…飛灰貯留槽
2…飛灰搬送コンベヤ
3…テーブルフィーダ
4…混練機
5…薬液タンク
6…薬液供給配管路
7…ポンプ
8…薬液用開閉弁
9…洗浄水供給源
10…洗浄水供給配管路
11…洗浄水用開閉弁
12…添加水タンク
13…添加水供給配管路
14…ポンプ
15…搬出コンベヤ
16…飛灰処理物ピット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練機により飛灰と重金属安定化薬液とを添加水とともに混練することにより、飛灰からの重金属類の溶出防止処理をする飛灰処理方法において、混練停止の際に、前記混練機への飛灰、重金属安定化薬液及び添加水の供給を停止した後に、重金属安定化薬液の薬液タンクと前記混練機とを連絡する薬液供給配管路に配管洗浄用の洗浄水を注入しておき、混練開始の際に、前記混練機に飛灰、重金属安定化薬液及び添加水を供給するに先立ち、前記混練機を動作させながら該混練機に前記薬液供給配管路内に溜まっている洗浄水を導入して、前記混練機内に残存している飛灰固着物の固着を解除することを特徴とする飛灰処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−272556(P2008−272556A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274311(P2006−274311)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】