説明

食品の製造装置

【課題】輪切りしたときに見た目のよいスライス状ゆで卵の得られる食品の製造装置を提供すること。
【解決手段】中空筒状の回転ドラム2と、回転ドラム2を軸心まわりに回転させる回転駆動手段3と、回転ドラム2を加熱または冷却する加温手段6と、加熱または冷却によって凝固する食品を回転ドラム2内に供給する食品供給手段8とを備えており、加熱または冷却によって凝固する食品を、先に供給した食品に混ざらない供給タイミングで、複数回に分けて回転ドラム2内に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を製造する製造装置に関するもので、特に、複数個の卵殻を取り除いた生卵を使用して、ゆで卵様の食品を製造する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外食や持ち帰り惣菜などが盛んであるが、購買意欲を高めるために、食材の切り方や配色を工夫するなど、様々な試みがなされている。スライス状のゆで卵もその一翼を担っており、特に料理のトッピングとして欠かせない存在である。
【0003】
しかしながら、従来、スライス状のゆで卵を製造するには、周知の通り、鶏などの生卵を殻つきのまま、高温の湯の中で茹でる工程、茹で上がったものの殻を剥く工程、殻を剥いたゆで卵をカッターなどの刃物により所定厚さにスライスする各工程が必要であるため、手間と時間がかかり製造コストが高いという不具合がある。また、茹でている間に卵殻が破損したり、卵殻の破片が混入したりするなど、衛生上や品質上の問題もあり、大量生産には向いていない。
【0004】
そこで、卵殻の混入がなく、かつ、大量生産に適したゆで卵様加熱卵の製造方法として、生卵を割卵して卵殻を除いた後、全卵のまま、または卵白と卵黄とを別々にして、受け皿などの容器に収容した後、受け皿ごと蒸し器に収容して、湿熱加熱する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−228721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の製造方法は、卵フィリング(切り刻まれたゆで卵にマヨネーズなどの調味料を合わせた卵加工食品)の原料となるゆで卵様加熱卵を大量に製造する方法であって、容器内で加熱されたゆで卵様加熱卵を輪切りすることによって、見た目のよいスライス状ゆで卵を製造するのは大変困難である。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであって、輪切りしたときに見た目のよいスライス状ゆで卵の得られる食品の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の食品の製造装置は、加熱または冷却によって凝固する食品を製造する装置であって、中空筒状の回転ドラムと、回転ドラムを軸心まわりに回転させる回転駆動手段と、回転ドラムを加熱または冷却する加温手段と、加熱または冷却によって凝固する食品を回転ドラム内に供給する食品供給手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の食品の製造装置は、加熱または冷却によって凝固する食品を、先に供給した食品に混ざらない供給タイミングで、複数回に分けて回転ドラム内に供給することを特徴とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明に係る食品の製造装置によれば、
中空筒状の回転ドラムと、回転ドラムを軸心まわりに回転させる回転駆動手段と、回転ドラムを加熱または冷却する加温手段と、加熱または冷却によって凝固する食品材料を回転ドラム内に供給する食品供給手段とを備えているので、
加温手段により加熱または冷却された回転ドラム内に、加熱または冷却によって凝固する食品を供給し、回転駆動手段により回転ドラムを軸心まわりに回転させると、
回転ドラム内に供給された食品を、回転ドラムの回転に合わせて回転ドラムの内壁面に沿って流動させながら凝固させることができ、外径が回転ドラムの内径となる均一の外径を有する食品を製造することができる。
【0009】
また、加熱または冷却によって凝固する食品材料を、先に供給した食品材料に混合しない供給タイミングで、複数回に分けて回転ドラム内に供給するものでは、
先に回転ドラム内に供給された食品を、回転ドラムの内壁面側に配置させるとともに、後から供給された食品を軸心側に配置させることができ、断面視において周方向に積層する複数層状の食品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態にかかるゆで卵様食品の製造装置を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のゆで卵様食品の製造装置1は、中空円筒状の回転ドラム2と、回転ドラム2を回転させる駆動機構3と、回転ドラム2を回転可能に支持する支持機構4と、回転ドラム2の回転動作をオンオフ制御するスイッチ5と、回転ドラム2を収容可能な加熱容器6と、加熱容器6を加熱する加熱装置7と、回転ドラム2内に液状の生卵を注入する注入装置8とを備えている。
【0012】
回転ドラム2は、図2に示すように、ドラム本体20と、ドラム本体20の軸方向両端部に装着されて、ドラム本体20の両端開口を閉鎖するためのキャップ21,22を備えている。
【0013】
ドラム本体20は、図2から図4に示すように、内筒201と外筒202で構成されている。内筒201は、図3に示すように、外径35mm,長さ150mm,厚さ0.3mmの軸方向両端部が開口した円筒状で、円筒体を軸方向に2分割してなる一対の半円筒体201a,201bで構成されている。外筒202は、図4に示すように、内径35.3mm,長さ150mm,厚さ0.8mmの軸方向両端部が開口した円筒状で、軸方向両端部に雄ネジ203が刻設されている。
【0014】
キャップ21は、図2および図5(a)に示すように、ドラム本体20の軸方向両端部に装着される装着部210と、装着部210に一体に形成される係合部211とを備えている。
【0015】
装着部210は、ドラム本体20の両端開口部分を閉止する円板状の蓋部212と、蓋部212の周縁から立ち上がる側壁部213とを備えている。蓋部212と側壁部213との境目部分には、パッキン装着溝24が形成されており、パッキン装着溝24には、ゴムパッキン23が装着されている。また、側壁部212の内周面には、ドラム本体20の雄ネジ203に螺合する雌ネジ25が刻設されている。
【0016】
係合部211は、図2に示すように、蓋部212の中央部分から側壁部213形成側と逆方向に、四角柱状に突出形成されている。係合部211の各側面には、図5(a)に示すように、係合溝214が形成されている。また、係合部211の軸心部分には、直径約3mmの貫通孔215が設けられている。
【0017】
キャップ22は、キャップ21と同様に、ドラム本体20の軸方向両端部に装着される装着部220と、装着部220に一体に形成される係合部221とを備えている。
【0018】
装着部220は、ドラム本体20の両端開口部分を閉止する円板状の蓋部222と、蓋部222の周縁から立ち上がる側壁部223とを備えている。蓋部222と側壁部223との境目部分には、キャップ21と同様に、パッキン装着溝24が形成されており、パッキン装着溝24には、ゴムパッキン23が装着されている。また、側壁部223の内周面には、ドラム本体20の雄ネジ203に螺合する雌ネジ25が刻設されている。
【0019】
係合部221は、図2に示すように、蓋部222の中央部分から側壁部223形成側と逆方向に突出形成されており、図5(b)に示すように、円柱状で、軸心部に直径約7mmの貫通孔224が設けられており、係合部221の先端面には、金属製のパッキン225がビス止めされている。
【0020】
駆動機構3は、図1に示すように、駆動モータ31、減速装置32、駆動モータ31の動力を、減速装置32を介して回転ドラム2に伝達する駆動軸33とを備えている。
【0021】
駆動軸33は、図2,図8に示すように、軸本体34と、軸本体34の一端側に形成される嵌着部35とを備えている。嵌着部35は、回転ドラム2の係合部211を着脱可能に嵌着させるもので、図6,図8に示すように、平面視略正方形状の底面部351と、底面部351の両側から立ち上がる側面部352と、底面部351の後端から立ち上がる背面部353とを備えている。側面部352の内面には凹溝354が形成されており、この凹溝354内に板バネ355が固定されている。軸本体34は、図2,図8に示すように、軸方向中央部に大径部341を備えた円柱状で、一端部が嵌着部35の背面部353に一体形成されており、他端部には雄ネジ342が刻設されている。また、軸本体34の軸心部には、嵌着部35に連通する直径約3mmの連通孔343が設けられている。
【0022】
支持機構4は、図2に示すように、回転ドラム2を加熱容器6内で回転可能に支持するもので、回転ドラム2の一端側に連結された駆動軸33を受け止める駆動側支持部41と、回転ドラム2の他端側を受け止める受動側支持部42で構成されている。
【0023】
駆動側支持部41は、図8に示すように、加熱容器6の外側に取り付けられる第1軸受部材46と、加熱容器6の内側に取り付けられる第2軸受部材47とを備えている。
【0024】
第1軸受部材46は、円筒状の軸受部461と、軸受部461の一端側の外周部分に設けられるフランジ部462とを備えている。フランジ部462には、周方向に沿って等間隔に4ヶ所ボルト挿通孔463が穿設されている。軸受部461は、駆動軸33の軸本体34を挿通可能な軸挿通部464を有しており、フランジ部462側には、軸本体34の大径部341を受け止める大径部465が形成されている。軸受部461には、軸挿通部464の大径部465に連通する注油孔466が穿設されている。
【0025】
第2軸受部材47は、円筒状の軸受部471と、軸受部471の外周部分に設けられるフランジ部472とを備えている。フランジ部472には、第1軸受部材46のフランジ部462と同様に、周方向に沿って等間隔に4ヶ所ボルト挿通孔473が穿設されている。軸受部471は、第1軸受部材46の軸受部461と同様に、駆動軸33の軸本体34を挿通可能な軸挿通部474を有しており、フランジ部472側には、軸本体34の大径部341を受け止める大径部475が形成されている。
【0026】
受動側支持部42は、図7に示すように、加熱容器6の外側に取り付けられる第1軸受部材43と、加熱容器6の内側に取り付けられる第2軸受部材44と、第1軸受部材43および第2軸受部材44に内設されるパッキン機構45とを備えている。
【0027】
第1軸受部材43は、円筒状の軸受部431と、軸受部431の外周部分に設けられるフランジ部432とを備えている。フランジ部432には、周方向に沿って等間隔に4ヶ所ボルト挿通孔433が穿設されている。軸受部431は、フランジ部432の一側に大径部434、他側に小径部435を備えている。軸受部431の軸心部には、調整ボルト453を挿通可能なボルト挿通孔436が設けられており、ボルト挿通孔436の内周面には調整ボルト453の雄ネジ部455に螺合可能な雌ネジが刻設されている。また、大径部434には、軸受部431の外周面からボルト挿通孔434内に連通する図示しないネジ孔が設けられている。
【0028】
第2軸受部材44は、円筒状の軸受部441と、軸受部441の一端側の外周部分に設けられるフランジ部442とを備えている。フランジ部442には、第1軸受部材43のフランジ部432と同様に、周方向に沿って等間隔に4ヶ所ボルト挿通孔443が穿設されている。軸受部441は、フランジ部442側に形成される大径部444、大径部444に連続する小径部445とを備えている。大径部444は、第1軸受部材43の小径部435を挿通可能な内径を有している。小径部445は、回転ドラム2の係合部221が挿通可能な内径を有しており、第1軸受部材43の軸受部431のボルト挿通孔436とほぼ同じ内径に形成されている。
【0029】
パッキン機構45は、図7に示すように、調整ボルト453と、主に銅からなる金属製のパッキン451と、パッキン451と調整ボルト453との間に介装されるコイルスプリング452とを備えている。コイルスプリング452の一端部はパッキン451に固定されており、他端部は調整ボルト453に固定されている。調整ボルト453は、頭部454と、第1軸受部材43に螺着可能な雄ネジ部455とを備えており、雄ネジ部455の軸心には貫通孔456が形成されている。パッキン451の外径は、第1軸受部材43および第2軸受部材44の内部に挿通可能な大きさに形成されている。また、パッキン451には、調整ボルト453の貫通孔456内に挿通可能な案内パイプ457が取り付けられており、案内パイプ457は、調整ボルト453の貫通孔456内を軸方向にスライド自由となっている。
【0030】
加熱容器6は、ステンレス鋼製で、図2に示すように、底部61と、底部61から立ち上がる側壁部62とを備え、上部が開口した形状で、内部に回転ドラム2を収容可能な大きさに形成されている。また、加熱容器6の側壁部62には、図7,図8に示すように、受動側支持部42の第1軸受部材43の小径部435および駆動側支持部41の第2軸受部材47の軸受部471を挿通可能な挿通孔63が穿設されている。
【0031】
駆動軸33は、図8に示すように、嵌着部35を加熱容器6の内部に配置させた状態で、第1軸受部材46および第2軸受部材47内に回転可能に挿通されており、駆動軸33の遊端部は、減速装置32のギア321にスプリングワッシャ52を介してナット53で固定されている。
【0032】
駆動側支持部41は、図8に示すように、第1軸受部材46が、パッキン49を介装させた状態で加熱容器6の外側に配置され、第2軸受部材47が、軸受部471を加熱容器6の挿通孔63に挿嵌させた状態で、加熱容器6の内側に配置され、第1軸受部材46と第2軸受部材47とが、各ボルト挿通孔463,473を連通させてボルトナット50を取り付けることによって、加熱容器6に固定された構造となっている。
【0033】
受動側支持部42は、図7に示すように、第1軸受部材43が、パッキン48を介装させた状態で加熱容器6の外側に配置され、小径部435が挿通孔63に挿嵌されているとともに、第2軸受部材44が、加熱容器6の内側に配置され、第1軸受部材43の小径部435が、第2軸受部材44の大径部444内に挿嵌されており、第1軸受部材43と第2軸受部材44とが、各ボルト挿通孔433,443を連通させてボルトナット50を取り付けることによって、加熱容器6に固定された構造となっている。
【0034】
パッキン機構45は、パッキン451を前方にして、第1軸受部材43側からボルト挿通孔436および小径部445内に挿入され、第1軸受部材43のボルト挿通孔436に調整ボルト453が螺着されている。なお、第1軸受部材43に設けた図示しないネジ孔に、固定ネジ51が捩じ込まれており、調整ボルト453が第1軸受部材43に対して回転しないように固定されている。
【0035】
注入装置8は、図9(a)(b)に示すように、円筒状のシリンダ81と、シリンダ81内の注入物を押し出すピストン82と、シリンダ81に注入物を投入可能な投入器83とを備えている。
【0036】
シリンダ81は、先端部側に外径6.8mmの細い管状の注入部811を備え、後端部側にシリンダ81内部に連通する連通口812を備えており、連通口812の内周面には、投入口833の雄ネジに螺合可能な雌ネジが刻設されている。また、シリンダ81の後端部にはキャップ813が取り付けられている。キャップ813には、ブランジャロッド822およびスライド弁823を挿通可能な挿通孔814,815が穿設されている。
【0037】
ピストン82は、シリンダ81内部の注入物を押圧するブランジャ821と、ブランジャ821を支持するブランジャロッド822と、ブランジャロッド822に平行に配設されるスライド弁823と、ブランジャロッド822とスライド弁823の後端部が固定される持ち手824を備えている。
【0038】
スライド弁823は、図9(b)に示すように、シリンダ81の内周面に沿う凸状に湾曲形成されており、投入口833を密閉可能な幅方向長さを有している。そして、図9(a)に示されるように、ブランジャロッド822とスライド弁823が、シリンダ81のキャップ813の挿通孔814,815内に挿通されており、ブランジャ821が、キャップ813を取り付けてなるシリンダ81内を軸方向に移動可能に構成されている。
【0039】
投入器83は、シリンダ81の後端部側に設けられており、注入物を一時的に貯留する円筒状の貯留部831と、貯留部831の下部に連続して形成される逆円錐状の漏斗部832とを備えている。漏斗部832の外周面には雄ネジが刻設されており、漏斗部832の先端部には投入口833が形成されている。
【0040】
そして、シリンダ81の連通口812に投入器83の投入口833を螺合させることにより、シリンダ81と投入器83とが連通した状態で、シリンダ81の上方に投入器83が配置されている。
【0041】
次に、回転ドラム2の取り付け構造を説明する。図2に示すように、回転ドラム2の一端側の係合部221は、受動側支持部42の軸受部441の小径部445内に挿入されて、受動側支持部42に回転可能に受け止められている。詳しくは、パッキン機構45のコイルスプリング452が、回転ドラム2の係合部221によって押し縮められており、係合部221の先端部に取り付けたパッキン225が、パッキン機構45のコイルスプリング452の弾性力を受けて、パッキン451に摺動可能に密着している。また、回転ドラム2の貫通孔224とパッキン機構45の案内パイプ457とが連通して注入口を形成しており、この注入口内に注入口封止ピン9が挿入されている。注入口封止ピン9は、回転ドラム2内に注入装置8によって液状卵が注入された後、調整ボルト453側から挿入されて図示しないビスによって調整ボルト453に固定されている。
【0042】
一方、回転ドラム2の他端側の係合部211は、係合部211の係合溝214を駆動軸33の嵌着部35に設けられている板バネ355に係合させることによって、嵌着部35に弾性嵌着され、駆動軸33と一体に回転可能となっている。駆動軸33の連通孔343と回転ドラム2の貫通孔215とは連通して連通口を形成しており、この連通口内に連通口封止ピン10が挿入されている。連通口は、回転ドラム2内に液状卵がスムーズに注入されるように、回転ドラム2内の空気を外部に排出させる空気抜き穴であり、連通口封止ピン10は、回転ドラム2内に液状卵が注入された後、駆動軸33の遊端部側から挿入されて、図示しないビスによって駆動軸33に固定されている。
【0043】
次に、ゆで卵様食品を製造する手順について説明する。
まず、回転ドラム2を支持機構4に取り付ける。具体的には、回転ドラム2を加熱容器6の上部開口から加熱容器6の内部に入れて、回転ドラム2の一方のキャップ220に形成されている係合部221を、受動側支持部42の軸受部441の小径部445内に挿入する。そして、係合部221の先端部に取り付けたパッキン225をパッキン機構45のパッキン451に当接させた状態で、係合部221を小径部445内に押し込みながら、反対側のキャップ210に形成されている係合部211を駆動軸33の嵌着部35に挿入し、係合部221の係合溝214を嵌着部35の内面に固定されている板バネ355に係合させて、係合部221を嵌着部35に嵌着させる。
【0044】
次に、図1に示すように、回転ドラム2全体が湯に浸る水位まで加熱容器6内に湯を入れ、加熱装置7によって加熱容器6内の湯温が80度以上になるまで加熱する。
【0045】
そして、シリンダ81の注入部811を注入口に挿入し、所定量の生卵の白身を攪拌して液状にしたもの(以下、液状白身卵という)を投入器83内に投入する。液状白身卵が、投入器83の投入口833に連結された連通口812を通ってシリンダ81内に流入した後、ピストン82をシリンダ81内に押し込んで、注入部811から回転ドラム2内に液状白身卵を注入する。液状白身卵の注入が終了したら、連通口封止ピン10と注入口封止ピン9とをそれぞれ取り付けて、回転ドラム2を密閉する。
【0046】
そして、駆動モータ31のスイッチ5を入れる。駆動モータ31の回転速度は、減速装置32によって減速させられ、減速装置32に連結されている駆動軸33が、1分間に60〜80回転程度の回転速度で回転する。回転ドラム2は、一方の係合部211が駆動軸33に嵌着されているので、駆動軸33と同期して回転する。また、回転ドラム2の係合部221は、受動側支持部42の軸受部441内において、注入口封止ピン9に支持されており、係合部221側のパッキン225がパッキン機構45のパッキン451に摺接しながら回転する。
【0047】
すると、回転ドラム2内の液状白身卵は、回転ドラム2の内壁面に沿って流動しながら加熱され、回転ドラム2の内壁面上に沿って所定の厚さの円筒状に凝固する。液状白身卵が凝固するのに十分な所定時間が経過したら、上記と同様に、連通口封止ピン10と注入口封止ピン9とを取り外して、シリンダ81の注入部811を注入口に挿入して、投入器83に所定量の生卵の黄身を攪拌して液状にしたもの(以下、液状黄身卵という)を投入し、シリンダ81内に流入した液状黄身卵を回転ドラム2内に注入し、回転ドラム2内の軸心部分に形成されている空間を液状黄身卵で満たす。そして、液状黄身卵の注入が終了したら、連通口封止ピン10と注入口封止ピン9とをそれぞれ取り付けて、回転ドラム2を密閉し、再度回転ドラム2の回転を開始する。液状黄身卵は加熱されて凝固し、空間部が凝固した黄身で充填される。
【0048】
ゆで卵様食品ができたら、回転ドラム2を加熱容器6内から取り出す。すなわち、連通口封止ピン10および注入口封止ピン9を取り外し、回転ドラム2の一方の係合部211を嵌着部35から取り外した後、他方の係合部221を軸受部441から取り外す。
【0049】
次に、キャップ21,22をドラム本体20から取り外し、外筒202から内筒201を取り出す。続いて、内筒201を構成する半円筒体201a,202bを取り外して、内筒201内で凝固したゆで卵様食品を取り出し、円柱状に形成されたゆで卵様食品を軸心に垂直に輪切りし、スライス状ゆで卵様食品を得る。
【0050】
以上のように、本実施形態にかかるゆで卵様食品の製造装置1によれば、加熱容器6の内部に回転ドラム2を回転可能に取り付けて、回転ドラム2内に液状白身卵を注入し、回転ドラム2を加熱しながら回転させ、白身が凝固したら、回転ドラム2内に液状黄身卵を注入して、再度回転ドラム2を加熱しながら回転させることによって、外側に白身が配置され、軸心部分に黄身が配置された円柱状のゆで卵様食品を簡単に製造することができる。さらに、このゆで卵様食品を軸心に垂直に輪切りするだけで、均一な外径を有する美しい形状のスライス状ゆで卵様食品を大量に得ることができる。
【0051】
また、ドラム本体20が内筒201と外筒202とで構成される2重構造となっているので、ドラム本体20内の液状卵が外部に漏出する恐れが少ない。また、内筒201が一対の半円筒体201a,201bで構成されており、凝固した円柱状のゆで卵様食品を取り出す際には、ゆで卵様食品から半円筒体201a,201bを1つずつ取り外すだけでよいので、ゆで卵様食品の形状の崩れを効果的に防止できる。
【0052】
また、回転ドラム2の係合部221に摩擦抵抗の少ない金属製のパッキン225を設けるとともに、受動側支持部42内のパッキン機構45に、コイルスプリング452で付勢される同じく金属製のパッキン451を設けているので、回転ドラム2の回転時に、係合部221のパッキン225と、パッキン機構45のパッキン451とが、高い密着性を保持しながら滑らかに摺接する。したがって、回転ドラム2内に加熱容器6内の湯が浸入するのを防止できる上、摩擦熱によるパッキン225,451の変形を防止できるので、回転ドラム2を良好に回転させることができる。
【0053】
また、回転ドラム2の係合部211の各側面に係合溝214が形成されているので、駆動軸33の嵌着部35に対する取り付け方向を確認する手間を省略することができ、容易に着脱することができる。
【0054】
また、駆動軸33の連通孔343と回転ドラム2の貫通孔215とが連通して、回転ドラム2内と外部とを連通する連通口が形成されているので、回転ドラム2内に液状卵を注入する際に、回転ドラム2内の空気がこの連通口内を通って外部に排出されるため、スムーズに注入を行うことができる。また、液状卵注入後は、連通口に連通口封止ピン10が挿入されて固定されるので、回転ドラム2内の液状卵が外部に漏れることもない。
【0055】
また、図2に示すように、駆動軸33の連通孔343と回転ドラム2の貫通孔215によって形成される連通口内に連通口封止ピン10を挿入し、パッキン機構45の案内パイプ457と回転ドラム2の貫通孔224によって形成される注入口内に注入口封止ピン9を挿入しているので、回転ドラム2が支持機構4から脱落するのを防止できる。また、駆動軸33の軸心と回転ドラム2の軸心とを一致させることができるので、回転ドラム2を軸心回りに安定した状態で回転させることができる。
【0056】
なお、本発明にかかる食品の製造装置は、前記説明したものに限定されないし、回転ドラム2内に注入される食品材料は、液状卵に限られず、加熱または冷却によって凝固する食品材料であれば構わない。したがって、例えば冷却によって凝固する液状のチョコレートや、アイスクリームやシャーベット等の原料であってもよい。その場合は、加温手段として冷却装置を用いればよい。また、本実施の形態では、内筒201内に食品材料を充填して円柱状の食品を製造したが、必ずしも内筒201内を食品材料で充填させる必要はなく、例えば内筒201の内壁面を被覆する程度の食品材料を注入して中空円筒状の食品を製造してもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、液状白身卵を注入し、所定時間経過したら液状黄身卵を注入する作業を手動で行っているが、注入装置8による食品の注入タイミングを制御する注入制御装置を用いて、注入作業を自動化してもよい。さらに、注入口封止ピン9と連通口封止ピン10の着脱、駆動モータ31の電源オンオフなども自動化しても構わない。このようにすれば、より効率よく大量にゆで卵様食品を製造できる。
【0058】
さらに、回転ドラム2内に収容される内筒201は、円筒体を軸方向に2分割してなる一対の半円筒体201a,201bで構成されているものに限られず、例えば図10(a)(b)に示す内筒203,204のように、花びら形状としてもよい。このようにすれば、より外観に優れた食品を製造することができる。
【0059】
また、本実施の形態で使用された液状卵は、単に生卵の殻を割って中身を取り出して攪拌したものであるが、必要に応じて調味料や他の乳製品その他の食品添加物を添加してもよい。このようにすれば、味や食感を向上させることができ、よりおいしいゆで卵様食品を提供することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、回転ドラム2を1分間に60〜80回転の回転速度で回転させたが、回転速度は上記に限られない。なお、上記実施の形態において、回転ドラム2の回転速度を上げると、比較的固い食感のゆで卵様食品を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る食品の製造装置の概観図である。
【図2】一部を断面で示した図1の要部拡大正面図である。
【図3】(a)は回転ドラム2を構成する内筒201を示す正面図であり、(b)は(a)の側面図である。
【図4】(a)は回転ドラム2を構成する外筒202を示す正面図であり、(b)は(a)の側面図である。
【図5】(a)は回転ドラム2の左側面図であり、(b)は回転ドラム2の右側面図である。
【図6】駆動軸33の右側面図である。
【図7】受動側支持部42の取り付け構造を示す拡大部分断面図である。
【図8】駆動側支持部41の取り付け構造を示す拡大部分断面図である。
【図9】(a)は注入装置8の一部を断面にして示す説明図であり、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図10】(a)は内筒の第2の実施形態を示す側面図であり、(b)は内筒の第3の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ゆで卵様食品の製造装置(食品の製造装置)
2 回転ドラム
3 駆動機構(回転駆動手段)
31 駆動モータ
32 減速装置
33 駆動軸
6 加熱容器
7 加熱装置(加温手段)
8 注入装置(食品供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱または冷却によって凝固する食品材料から食品を製造する装置であって、
中空筒状の回転ドラムと、回転ドラムを軸心まわりに回転させる回転駆動手段と、回転ドラムを加熱または冷却する加温手段と、加熱または冷却によって凝固する食品材料を回転ドラム内に供給する食品供給手段とを備えていることを特徴とする食品の製造装置。
【請求項2】
加熱または冷却によって凝固する食品材料を、先に供給した食品材料に混合しない供給タイミングで、複数回に分けて回転ドラム内に供給することを特徴とする請求項1記載の食品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−109743(P2006−109743A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299555(P2004−299555)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(504333581)
【Fターム(参考)】