説明

食品加工用薬剤

【課題】分解性能の保存安定性が高く、タンパク質、デンプン、セルロース、油脂等を含有する食品を加工する食品加工用薬剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する食品加工用薬剤。好ましくはさらに化合物(B)を含有する食品加工用薬剤。


[式中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加工用薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工の分野において、酵素を含む食品加工用薬剤を用いて、アミノ酸を分解する等の分解反応により、食品の風味等を改善することが行われている。酵素は温和な条件下で反応することができるため、高温、酸性及びアルカリ性の条件下での反応に比べて、反応における食品の品質低下を低減することができる。
食品加工の分野において、食品加工用薬剤を利用する食品の成分としては、タンパク質、油脂、セルロース及びデンプン等の炭水化物等があり、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ及びアミラーゼ等の酵素を含む食品加工用薬剤が利用されている。
プロテアーゼは、タンパク質をポリアミノ酸、アミノ酸まで分解する反応を触媒する酵素である。プロテアーゼを含む食品加工用薬剤は、肉を柔らかくしたり、風味を改善することに利用されている。
リパーゼは、油脂を脂肪酸、グリセリンにまで分解する反応を触媒する酵素である。リパーゼを含む食品加工用薬剤は、乳化の促進や、風味を改善することに利用されている。
セルラーゼは、セルロースをセロオリゴ糖、セロビオース、最終的にはグルコースにまで分解する反応を触媒する酵素である。セルラーゼを含む食品加工用薬剤は、ジュース、ワイン等の芳香成分の増加、果汁の清澄化、粘度低下、色味の改善、苦味除去や醸造、製パンにおける発酵歩合の向上などに利用されている。セルロースは、高等植物細胞の主要な構成成分であり、広く天然に存在する。セルロースは、グルコースがβ−1,4−グルコシド結合により重合した高分子多糖であり、天然にはセルロースが結晶状あるいは非結晶状態で存在しており、さらには他の成分、リグニン、ヘミセルロース類、ペクチン類などとも複雑に結合して植物組織を構築している。
アミラーゼは、デンプンをオリゴ糖、単糖にまで分解する反応を触媒する酵素である。アミラーゼを含む食品加工用薬剤は、米を柔らかくしたり、風味を改善することに利用されている。
【0003】
一方、食品加工用薬剤は、溶液の状態では保存中に経時と共に分解性能が徐々に低下する。そのため、これまで食品加工用薬剤は、ほとんどが粉末品であった。しかし、食品加工の工程は、加工液に食品を浸漬して行うため、作業性や加工液の調整(薬剤の溶け残りが無い加工液)の観点から液状品が望まれている。
ところで、酵素の水溶液中での安定化方法としては、酵素水溶液に中鎖脂肪酸エステルを配合する方法が提案されている(特許文献1)。また、同様に、トレハロースに代表される多糖類を添加することも提案されている(特許文献2)。
しかしながら、これらの物質は多少の効果はあるが、十分に満足いくレベルではなく、依然として分解性能が低下し、長期的に性能が持続しない課題がある。
そのため、保管期間中に分解性能が低下しない食品加工用薬剤の開発が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−279594号公報
【特許文献2】特開2000−159788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、分解性能の保存安定性が高い食品加工用薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する食品加工用薬剤であることを要旨とする。
【化1】

[式(1)中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の食品加工用薬剤は、分解性能の持続性が高い。
本発明において「分解性能を持続する」とは、一定期間保管した後に測定した分解性能と、保管する直前に測定した分解性能との差が小さいことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の食品加工用薬剤は、下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する食品加工用薬剤である。
【0009】
【化2】

[式(1)中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【0010】
液体の食品加工用薬剤は長期間保存すると分解性能が著しく低下するという問題点があるが、本発明では、特定の化学構造を有する上記の化合物(A)を食品加工用薬剤に含有させることにより解決できる。
【0011】
一般式(1)で表される化合物として、具体的にはグアニジン、尿素及びチオ尿素が挙げられる。
【0012】
一般式(1)で表される化合物の塩としては、グアニジンの塩が挙げられる。
塩としては塩酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩及びリン酸塩等が挙げられる。
【0013】
化合物(A)としては、分解性能の持続性の観点で、グアニジンの塩及び尿素が好ましく、さらに好ましくはグアニジンの塩、次にさらに好ましくはグアニジン塩酸塩である。
【0014】
本発明の食品加工用薬剤中に含まれる化合物(A)の含有量(重量%)は、分解性能の持続性の観点から食品加工用薬剤の重量に対し0.01〜30が好ましく、さらに好ましくは0.02〜10、次にさらに好ましくは0.03〜5、特に好ましくは0.05〜3である。
本発明の食品加工用薬剤中に含まれる化合物(A)の含有量は、分解性能の持続性の観点から、酵素(a)の重量に対し、1〜1000重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜500重量%であり、次にさらに好ましくは10〜300重量%である。
【0015】
本発明の食品加工用薬剤は、さらに下記一般式(2)で表される化合物(B)を含有することができる。分解性能の持続性の観点から、(B)を含有することが好ましい。
【0016】
【化3】

【0017】
一般式(2)中、Qはアミノ基又はアルキル基を表し、アルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の基に置換されていてもよい。
【0018】
Qのアルキル基としては炭素数1〜22のアルキル基が挙げられ、具体的にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、セチル基、ステアリル基及びベヘニル基等が挙げられる。これらのアルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の置換基に置換されてもよい。
水素原子以外の置換基としては、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、エステル基、イミノ基及びヒドロキシル基等が挙げられる。置換基の数は1〜3が好ましく、さらに好ましくは2〜3である。例えばQがブチル基の場合、ブチル基末端の水素原子2つが1つのアミノ基及び1つのカルボキシル基で置換された場合は(B)はアルギニンを表す。
【0019】
化合物(B)としては、アルギニン又はその塩(B−1)、アルギニン誘導体又はその塩(B−2)及びグアニジン誘導体又はその塩(B−3)が挙げられる。
【0020】
アルギニン又はその塩(B−1)として、アルギニン、アルギニンの無機酸塩(塩酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩及びケイ酸塩等)及びアルギニンの有機酸塩(ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、トリメリット酸塩及びピロメリット酸塩等)が挙げられる。
【0021】
アルギニン誘導体又はその塩(B−2)において、アルギニン誘導体は下記一般式(3)で表されるアルギニンのα−アミノ基若しくはα−カルボキシル基又はこれらの両方の基が置換された誘導体である。
α−アミノ基の置換は、下記一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド(Y−1)基又は一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)への置換であり、α−カルボキシル基の置換は下記一般式(6)で表されるエステル基又は下記一般式(7)で表されるN−アルキルアミド基(Z−2)への置換である。
【0022】
言い換えると、アルギニン誘導体又はその塩(B−2)では、α−アミノ基又はα−カルボキシル基の少なくともいずれか一方が置換されている。すなわち、Yがアミノ基の場合、Zは下記一般式(6)で表されるエステル基(Z−1)又は下記一般式(7)で表されるアミド基(Z−2)であり、Zがカルボキシル基の場合は、Yは下記一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)又は下記一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)である。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(3)中、Yはアミノ基、下記一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)又は下記一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)を表す。Zは、カルボキシル基、下記一般式(6)で表されるエステル基(Z−1)又は下記一般式(7)で表されるN−アルキルアミド基(Z−2)を表す。
【0025】
【化5】

【0026】
一般式(4)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜36の1価の炭化水素基を表し、この炭化水素基はその水素原子の一部が水素原子以外の他の官能基に置換されていてもよい。
【0027】
一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)におけるR1の炭化水素基としては、炭素数1〜36の1価の炭化水素基であり、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。
直鎖の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基及びベヘニル基等が挙げられる。
分岐の脂肪族炭化水素基としては、イソプロピル基及びt−ブチル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基及びシクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基及びメチルベンジル基等が挙げられる。
これらの炭化水素基のうち、分解性能の持続性の観点から、直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基、最も好ましくはメチル基である。
水素原子以外の置換基としては、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、エステル基、イミノ基及びヒドロキシル基等が挙げられる。
【0028】
一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)として具体的には、ホルムアミド基、アセチルアミド基、プロピオン酸アミド基、ブチル酸アミド基、ヘキシル酸アミド基、シクロヘキサンカルボキシアミド基、オクチル酸アミド基及びベンゾイルアミド基等が挙げられる。
【0029】
【化6】

【0030】
一般式(5)中、R2とR3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜36の炭化水素基を表し、これらの炭化水素基はその水素原子の一部が水素原子以外の他の官能基に置換されていてもよい。
【0031】
一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)において、R2とR3は、R1と同様の炭化水素基が含まれ、これらの炭化水素基はR1と同様に、その一部が他の官能基に置換されていてもよい。
【0032】
一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)としては、メチルイミノ基等が挙げられる。
【0033】
【化7】

【0034】
一般式(6)中、R4は、炭素数1〜36の炭化水素基を表す、又は多価アルコール若しくは糖から1つのヒドロキシル基を除いた残基を表す。
この炭化水素基はその水素原子一部が他の官能基、例えば、ヒドロキシル基、メトキシル基、エトキシル基、ニトロ基及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる官能基で置換されていてもよい。
【0035】
一般式(6)で表されるエステル基(Z−1)において、R4が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、その炭化水素基は、前記R1と同様の炭化水素基が含まれる。
4が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、これらの炭化水素基のうち、分解性能の持続性の観点から、直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基、最も好ましくはエチル基である。
【0036】
多価アルコールとしては、2価〜3価のアルコールが含まれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。
糖としては、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール及びトレハロース等が挙げられる。
【0037】
【化8】

【0038】
一般式(7)中、R5は、水素原子又は炭素数1〜36の炭化水素基を表し、この炭化水素基はその水素原子の一部が水素原子以外の他の官能基に置換されていてもよい。
【0039】
一般式(7)で表されるアミド基(Z−2)において、R5が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、その炭化水素基としては、前記R1と同様の炭化水素基が含まれ、これらの炭化水素基はR1と同様に、その一部が他の官能基に置換されていてもよい。
5が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、これらの炭化水素基のうち、分解性能の持続性の観点から、直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基、最も好ましくはメチル基である。
【0040】
アルギニン誘導体又はその塩(B−2)がアルギニン誘導体の塩の場合、無機酸塩(塩酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩及びケイ酸塩等)及び有機酸塩(ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、トリメリット酸塩及びピロメリット酸塩等)が挙げられる。
【0041】
アルギニン誘導体又はその塩(B−2)の化合物として具体的に、N−アセチルアルギニンエチルエステル塩酸塩が挙げられる。
【0042】
グアニジン誘導体又はその塩(B−3)としては、Qを特に限定するものではないが、具体的にアミノグアニジン(−NH2)、ジシアンジアミド(−CN)、グアニルチオウレア(−C(=S)NH2)、ドデシルグアニジン(−C1225)、エチルグアニジン(−C25)、オクチルグアニジン(−C817)及びビグアニド(−C(=NH)NH2)が挙げられる。ここで、()内はQを表す。
【0043】
これらのうち、分解性能の持続性の観点で、好ましくは(B−1)及び(B−2)であり、さらに好ましくは、(B−2)であり、特に好ましいのはN−α−アセチルアルギニンエチルエステル塩酸塩である。
【0044】
本発明の食品加工用薬剤中に含まれる化合物(B)の含有量(重量%)は、分解性能の持続性の観点から食品加工用薬剤の重量に対し0.01〜30が好ましく、さらに好ましくは0.03〜10、次にさらに好ましくは0.05〜5である。
本発明の食品加工用薬剤中に含まれる化合物(B)の含有量は、分解性能の持続性の観点から、酵素(a)の重量に対し、1〜1000重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜500重量%であり、次にさらに好ましくは10〜300重量%である。
【0045】
本発明の食品加工用薬剤は化合物(A)のみを含有すればよいが、分解性能の持続性の観点から、化合物(A)及び化合物(B)を含有することが好ましい。
【0046】
(A)及び(B)を含有する場合、(A)と(B)との重量比((A)の重量/(B)の重量)は0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.2〜8であり、特に好ましくは0.5〜5である。
【0047】
本発明における必須成分である酵素(a)としては、食品加工用に使用される酵素であれば特に限定するものではないが、分解性能の持続性の観点で、プロテアーゼ(a−1)、アミラーゼ(a−2)、リパーゼ(a−3)及びセルラーゼ(a−4)が挙げられる。
【0048】
プロテアーゼ(a−1)としては、動物、植物又は微生物起源のものが含まれ、入手しやすさの観点から、微生物起源のものが好ましい。化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。プロテアーゼのうち、分解性能の観点から、セリンプロテアーゼが好ましく、より好ましくはアルカリ性微生物プロテアーゼ及びトリプシン様プロテアーゼである。
【0049】
アルカリ性微生物プロテアーゼとしては、サブチリシン、特にバシラス菌(Bacillus)由来のもの、例えばサブチリシン Novo、サブチリシン Carlsberg、サブチリシン 309、サブチリシン 147及びサブチリシン 168が挙げられる。
トリプシン様プロテアーゼとしては、トリプシン(例えば、ブタ又はウシ起源のもの)及びフザリウム(Fusarium)プロテアーゼが挙げられる。
【0050】
市販のプロテアーゼとしては、ノボザイムス社のAlcalaseTM、SavinaseTM、PrimaseTM、DurazymTM及びEsperaseTM並びにジェネンコア社のPurafectTM及びPurafect OXPTM等が挙げられる。
酵素(a)としてプロテアーゼ(a−1)を含む食品加工用薬剤を使用することにより、タンパク質をポリアミノ酸、アミノ酸まで分解し、肉を柔らかくしたり、風味を改善することができる。
【0051】
アミラーゼ(a−2)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。アミラーゼとしては、例えば、英国特許第1,296,839号明細書に詳細に記載されているB.リヘニフォルミス(B.licheniformis)の特殊株から得られるα−アミラーゼ等が挙げられる。
市販のアミラーゼとしては、ノボザイムス社の DuramylTM、TermamylTM、FungamylTM及びBANTM並びにGist−Brocades社のRapidaseTM及びMaxamyl PTM等が挙げられる。
酵素(a)としてアミラーゼ(a−2)を含む食品加工用薬剤を使用することにより、デンプンをオリゴ糖、単糖にまで分解することができるので、米を柔らかくしたり、風味を改善することができる。
【0052】
リパーゼ(a−3)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。リパーゼの例としては、フミコーラ・ランギノーザ(Humicola lanuginosa)リパーゼ(欧州特許第258 068号明細書及び欧州特許第305 216号明細書)、リゾムーコル・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ及びカンジダ(Candida)リパーゼ(欧州特許第238023号明細書)、C.アンタークティカ(C.ntarctica)リパーゼA及びB、シュードモナス(Pseudomonas)リパーゼ(欧州特許第214761号明細書)、P.シュードアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)及びP.アルカリゲネス(P.alcaligenes)リパーゼ(欧州特許第218272号明細書)、P.セパシア(P.cepacia)リパーゼ(欧州特許第331376号明細書)、P.スタッツェリ(P.stutzeri)リパーゼ、P.フルオレッセンス(P.fluorescens)リパーゼ及びバシラス(Bacillus)リパーゼ(英国特許第1,372,034号明細書)、B.サチリス(B.subtilis)リパーゼ(Dartois 他(1993), Biochemica et Biophysica Acta1131,253−260)、B.ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)リパーゼ(特公昭64−744992号公報)並びにB.ピュミルス(B.pumilus)リパーゼ(国際公開第91/16422号)等が挙げられる。
【0053】
市販のリパーゼとしては、ジェネンコア社の M1 LipaseTM、Luma fastTM及びLipomaxTM、ノボザイムス社のLipolaseTM及びLipolase UltraTM並びに天野エンザイム社のLipase P“Amano”TM等が挙げられる。
酵素(a)としてリパーゼ(a−3)を含む食品加工用薬剤を使用することにより、油脂を脂肪酸、グリセリンにまで分解し、乳化の促進や、風味を改善することができる。
【0054】
セルラーゼ(a−4)としては、セロビオヒドロラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、ベータグルコシダーゼ活性を有するものであれば、特に限定するものではない。
【0055】
市販のセルラーゼとしては、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム属(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ファネロケエテ(Phanerochaete)属、トラメテス属(Trametes)、フーミコラ(Humicola)属、バチルス(Bacillus)属などに由来するセルラーゼ製剤があり、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、セリックCテック(ノボザイム社製)、セルザイム(ノボザイム社製)、KAC−500B(花王社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)及びGC220(ジェネンコア社製)等が挙げられる。
酵素(a)としてセルラーゼ(a−4)を含む食品加工用薬剤を使用することにより、セルロースをセロオリゴ糖、セロビオース、最終的にはグルコースにまで分解することができるので、ジュース、ワイン等の芳香成分の増加、果汁の清澄化、粘度低下、色味の改善、苦味除去や醸造、製パンにおける発酵歩合の向上などの目的で利用することができる。
【0056】
上記の酵素(a)のうち、分解性能の持続性の観点で、プロテアーゼ(a−1)及びアミラーゼ(a−2)が好ましい。
【0057】
本発明において、食品加工用薬剤に含まれる酵素(a)は、2種以上を含むことができる。2種以上を含む場合の組み合わせとしては、プロテアーゼ2種以上、プロテアーゼとアミラーゼ、アミラーゼ2種以上、プロテアーゼとアミラーゼとセルラーゼを含む組み合わせ等が挙げられる。
【0058】
本発明の食品加工用薬剤に含まれる酵素(a)の含有量は、分解性能の観点から食品加工用薬剤の重量に対し、0.01〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.2〜10重量%である。
【0059】
本発明の必須成分である水は、特に限定するものではなく、水道水、イオン交換水、蒸留水及び逆浸透水等が挙げられる。
【0060】
本発明の食品加工用薬剤に含まれる水の含有量は、分解性能の持続性の観点から、食品加工用薬剤の重量に対し、20〜99.97重量%が好ましく、さらに好ましくは50〜99.9重量%、次にさらに好ましくは65〜99.85重量%、特に好ましくは75〜99.8重量%、次に特に好ましくは80〜99.7重量%、次にさらに特に好ましくは82〜99重量%、より特に好ましくは85〜99重量%、最も好ましくは87〜99重量%である。
【0061】
本発明の食品加工用薬剤には、分解性能を向上させるために、上記の化合物(A)、(B)、酵素(a)及び水以外に、界面活性剤(b)、水混和性有機溶剤(c)、無機塩(d)、糖(e)、アルギニン以外のアミノ酸(f)及びpH調整剤(g)を含有することができる。
【0062】
界面活性剤(b)として、ノニオン性界面活性剤(b−1)、アニオン性界面活性剤(b−2)、カチオン性界面活性剤(b−3)及び両性界面活性剤(b−4)が挙げられる。
【0063】
ノニオン性界面活性剤(b−1)としては、脂肪族アルコール(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)[オレイルアルコールエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物等]、脂肪族アミン(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)[ヘキサデシルアミンエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物、ラウリルアミンエチレンオキサイド付加物、ステアリルアミンエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)グリコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=20)及びジステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=30)等]、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸エチレングリコール及びモノラウリン酸ソルビタン等]、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル(ポリ)アルキレンオキサイド付加物(アルキレン基の炭素数2〜8,重合度=1〜100)[ソルビタンモノラウレートエチレンオキサイド(重合度=10)付加物及びメチルグルコースジオレエートエチレンオキサイド(重合度=50)付加物等]、脂肪酸N−ヒドロキシアルキルアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及び1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、アルキル(炭素数1〜22)(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)フェニルエーテル、アルキル(炭素数8〜24)(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)−アミノアルキル(炭素数8〜24)−エーテル及びアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]等が挙げられる。
【0064】
アニオン性界面活性剤(b−2)としては、炭素数8〜24のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンエーテルカルボン酸又はその塩[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレン硫酸エステル塩[ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸ナトリウム及びラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸−トリエタノールアミン塩等]、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸スルホン酸ナトリウム、炭素数8〜24のアルキルフェニルスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキルリン酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンリン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等]、アシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]等が挙げられる。
【0065】
カチオン性界面活性剤(b−3)としては、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]及びアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。
【0066】
両性界面活性剤(b−4)としては、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]等が挙げられる。
【0067】
界面活性剤(b)としては、1種又は2種以上が使用出来る。2種以上を使用する場合、その組み合わせとしては、例えばノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。
【0068】
水混和性有機溶剤(c)としては、水100gに対する溶解度が10g以上の溶剤であれば特に限定するものではないが、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
【0069】
無機塩(d)として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及び硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0070】
糖(e)として、トレハロース、スクロース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、ソルビトール、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸等が挙げられる。
【0071】
アルギニン以外のアミノ酸(f)として、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ロイシン、リシン、ヒスチジン及びそれらの塩等が挙げられる。
【0072】
pH調整剤(g)としては、従来のpH調整剤が使用でき、例えば、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、Trisバッファー、HEPESバッファー及びクエン酸等が挙げられる。
【0073】
本発明の食品加工用薬剤に含まれる界面活性剤(b)の含有量は、分解性能の持続性の観点から食品加工用薬剤の重量に対し、0〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜40重量%、特に好ましくは0〜30重量%である。
本発明の食品加工用薬剤に含まれる水混和性有機溶剤(c)の含有量は、分解性能の観点から、食品加工用薬剤の重量に対し、0〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜30重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
本発明の食品加工用薬剤中に含まれる無機塩(d)の含有量(重量%)は、分解性能の観点から食品加工用薬剤の重量に対し0〜40が好ましく、さらに好ましくは0〜30、次にさらに好ましくは0〜20である。
本発明の食品加工用薬剤中に含まれる糖(e)の含有量(重量%)は、分解性能の観点から食品加工用薬剤の重量に対し0〜10が好ましく、さらに好ましくは0〜8、次にさらに好ましくは0〜5である。
本発明の食品加工用薬剤中に含まれるアミノ酸(f)の含有量(重量%)は、分解性能の観点から食品加工用薬剤の重量に対し0〜10が好ましく、さらに好ましくは0〜8、次にさらに好ましくは0〜5である。
本発明の食品加工用薬剤中に含まれるpH調整剤(g)の含有量(重量%)は、分解性能の観点から食品加工用薬剤の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜3、次にさらに好ましくは0〜1である。
【0074】
本発明の食品加工用薬剤は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。1例を下記に示す。
(1)水に、化合物(A)及び必要により化合物(B)を加え、25℃で均一になるまで撹拌する。
(2)酵素(a)以外の成分を所定量添加し均一に溶解させる。
(3)最後に酵素(a)を添加し溶解させ、食品加工用薬剤を製造する。
【0075】
本発明において食品加工用薬剤とは、食品中のタンパク質、油脂、セルロース及びデンプン等の炭水化物等を分解し、食品を柔らかくしたり、風味の改善、芳香成分の増加、果汁の清澄化、粘度低下、色味の改善、乳化の促進、苦味除去及び発酵歩合を向上すること等を目的に、食品に使用する薬剤である。
【0076】
本発明の食品加工用薬剤は、酵素を使用する従来の食品加工薬剤と同様に使用することができる。例えば、食品加工槽の中に食品及び食品加工用薬剤を加え、適宜水を加え、一定時間温調することで食品加工をおこなうことができる。
【実施例】
【0077】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
<製造例1>
N−α−アセチルアルギニン{アルギニンアセトアミド、株式会社エムピーバイオジャパン}12.6部(0.05モル部)、メタンスルホン酸1部及びエタノール92部(2モル部)を均一混合し、80℃で5時間加熱攪拌し、エバポレーターで濃縮後、塩酸(濃度:35重量%)5.2部(0.05モル部)を加え中和した。その後、水から再結晶し、減圧乾燥{60℃、20Pa}して、化合物(B)であるN−α−アセチルアルギニンエチルエステル塩酸塩を得た。
【0079】
<実施例1〜14>
表1の割合で25℃で配合し、本発明の食品加工用薬剤を作製した。
【0080】
<比較例1〜12>
表2の割合で25℃で配合し、比較用の食品加工用薬剤を作製した。
【0081】
<分解性能試験>
プロテアーゼを含む食品加工用薬剤はカゼインの分解性能、アミラーゼを含む食品加工用薬剤はデンプンの分解性能、セルラーゼを含む食品加工用薬剤はセルロースの分解性能、リパーゼを含む食品加工用薬剤はオレイン酸エステルの分解性能で評価した。分解率が高いほど分解性能が高いことを意味する。
【0082】
<カゼインの分解性能>
0.5重量%のミルクカゼイン溶液(和光純薬工業製カゼイン0.5gを0.05モル/Lのトリス緩衝液100mLに溶解した)5mLに、作製直後の実施例1〜6、11、比較例1、5及び6の食品加工用薬剤10μLをそれぞれ加え、25℃で20分間振とうした。振とう後、15%のトリクロロ酢酸を加え、4℃、15,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを取り除いた。沈殿物に0.5モル/Lの塩酸グアニジン水溶液5mLを加え、再溶解させた。この溶液の280nmにおける吸光度(A20)を測定した。
また、ブランクとして食品加工用薬剤を加えないものも上記と同様におこない、吸光度(A20b)を測定した。
カゼインの分解率は以下の式で算出した。
カゼインの分解率(%)=100−(A20)/(A20b)×100
結果を表1、2に示す。
【0083】
<アミラーゼの分解性能>
0.5重量%のデンプン懸濁液(和光純薬工業製デンプン0.5gを0.05モル/Lのトリス緩衝液100mLに溶解した)5mLに、作製直後の実施例7、8、12、比較例2及び7の食品加工用薬剤10μLをそれぞれ加え、60℃で20分間振とうした。振とう後、あらかじめ重量を測定しておいたワットマン社製ろ紙(グレードNo.1、9cm)でろ過し、ろ紙上に不溶物を得た。この不溶物をろ紙と共に60℃で2時間乾燥し、重量を測定し、ろ紙の重量を差し引いた不溶物の重量(W20)を算出した。
また、ブランクとして食品加工用薬剤を加えないものも上記と同様におこない、不溶物の重量(W20b)を算出した。デンプンの分解率は以下の式より算出した。
デンプンの分解率(%)=100−(W20)/(W20b)×100
結果を表1、2に示す。
【0084】
<リパーゼの分解性能>
0.5重量%のオレイン酸グリセリンエステル懸濁液(和光純薬工業製オレイン酸グリセリンエステル0.5gを0.05モル/Lのトリス緩衝液100mLに溶解した)5mLに、作製直後の実施例9、13、比較例3及び8の食品加工用薬剤10μLをそれぞれ加え、40℃で20分間振とうした。振とう後の溶液の酸価(V20)を測定した。ここで、酸価とは、溶液1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数を意味する。酸価の測定法はJISK2501記載の方法と同様の方法でおこなった。
また、0.5重量%のオレイン酸グリセリンエステルが完全に分解された場合の理論酸価(V20b)から、以下の式より、オレイン酸グリセリンエステルの分解率を算出した。
オレイン酸グリセリンエステルの分解率(%)=(V20)/(V20b)×100
結果を表1、2に示す。
【0085】
<セルラーゼの分解性能>
0.5重量%のセルロース懸濁液(和光純薬工業製セルロース0.5gを0.05モル/Lのトリス緩衝液100mLに溶解した)5mLに、作製直後の実施例10、14、比較例4及び9の食品加工用薬剤10μLをそれぞれ加え、50℃で20分間振とうした。振とう後、あらかじめ重量を測定しておいたワットマン社製ろ紙(グレードNo.1、9cm)でろ過し、ろ紙上に不溶物を得た。この不溶物をろ紙と共に60℃で2時間乾燥し、重量を測定し、ろ紙の重量を差し引いた不溶物の重量(W20)を算出した。
また、ブランクとして食品加工用薬剤を加えないものも上記と同様におこない、不溶物の重量(W20b)を算出した。デンプンの分解率は以下の式より算出した。
デンプンの分解率(%)=100−(W20)/(W20b)×100
結果を表1、2に示す。
【0086】
<保管後の性能試験>
実施例1〜14及び比較例1〜12の食品加工用薬剤を25℃で3ヶ月保管した後、上記と同様に分解性能試験を行い、3ヶ月保管後の食品加工用薬剤を使用した分解率を算出した。結果を表1、表2に示す。
<分解性能の持続性>
分解性能の持続性は下記の式で算出した。
分解性能の持続性(%)=(3ヶ月保管後の分解率)/(作製直後の分解率)×100
結果を表1、2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
表1及び2中の化合物(A)、化合物(B)及び酵素(a)は下記のものを使用した。グアニジン塩酸塩:和光純薬工業製
尿素:和光純薬工業製
アルギニン塩酸塩:和光純薬工業製
プロテアーゼ:和光純薬工業製
アミラーゼ:和光純薬工業製
リパーゼ:和光純薬工業製
セルラーゼ:和光純薬工業製
コラーゲン:和光純薬工業製
トレハロース:和光純薬工業製
【0090】
表2より、比較例1〜9の食品加工用薬剤は、25℃で3ヶ月保管後に分解率が低下しており、3ヶ月保管することによって分解性能が著しく低下していることがわかる。また、酵素(a)を含まない比較例10〜12の食品加工用薬剤は、作製直後及び保管後の分解率が0であり、食品加工用薬剤として使用できるレベルでない。
一方、表1の本発明の食品加工用薬剤である実施例1〜14は、25℃で3ヶ月保管後も分解率が維持されており、3ヶ月保管後も分解性能が持続していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の食品加工用薬剤は、分解性能の持続性が非常に高い。そのため、タンパク質、デンプン、セルロース、油脂等を含有する食品を加工する際の食品加工用薬剤として幅広く使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する食品加工用薬剤。
【化1】

[式中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【請求項2】
酵素(a)が、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ及びリパーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の食品加工用薬剤。
【請求項3】
化合物(A)がグアニジン塩酸塩である請求項1又は2に記載の食品加工用薬剤。
【請求項4】
さらに下記一般式(2)で表される化合物(B)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の食品加工用薬剤。
【化2】

[式中、Qは、アミノ基又はアルキル基を表し、アルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の基に置換されていてもよい。]
【請求項5】
化合物(A)の含有量が食品加工用薬剤の重量を基準として0.01〜30重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の食品加工用薬剤。

【公開番号】特開2011−244811(P2011−244811A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98194(P2011−98194)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】