説明

食品包装用シート材料と食品包装容器

【課題】同じ形態の食品包装容器1であっても、それを上から見るだけで、どの用途に使用すべきものかを容易に識別することができ、かつ収容する食品に悪影響を与えることのない食品包装容器1を得る。
【解決手段】外表面シート11と中芯シート13と内表面シート12との積層体からなる食品包装用シート材料10において、中芯シート13の内表面シート12に面する側に模様14を形成する。そして、模様14は内表面シート12を透過して外側から可視できるようにする。その食品包装用シート材料10を用い、内表面シート12が食品と接する側として製箱して食品包装容器1とする。食品包装容器1は、模様14が内表面シート12を透過して外から可視できるが、模様14が食品と直接接することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品包装用シート材料と食品包装容器に関し、特に、ファーストフード店等において提供されるハンバーガー等の食品を収納するのに適した食品包装容器と、その食品包装容器のための食品包装用シート材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファーストフード店等でハンバーガー等の食品を提供する場合、特許文献1あるいは特許文献2に記載のように、下容器部分と上容器部分がヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされた箱型の食品包装容器が用いられる。図5は、そのような食品包装容器1の一例であり、所要面積の食品包装用シート材料から、展開した形状の台紙(不図示)の複数個が打ち抜かれ、それが組み立てられて図1に示す形状の食品包装容器1となる。
【0003】
前記のように、この種の食品包装容器1は、下容器部分2と上容器部分3とがヒンジ部4を介して接続しており、店頭で店員が食品包装容器1にハンバーガーを包装する場合には、下容器部分2内に下パンaを置き、上容器部分3内に上パンbを予め置く。次に、下パンaの上に、客から求められている種類および枚数の食材や肉(パティ)(不図示)を置き、その上に上パンbを重ねる。最後に、下容器部分2に上容器部分3で覆うことで、ハンバーガー入りの容器とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−204050号公報
【特許文献2】特開2007−210660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファーストフード店等の店頭では、客からの多くの種類の注文に迅速に対処することが求められる。しかし、在庫管理の容易性やコストの観点から、店頭に用意されている食品包装容器1の種類は多くなく、同じ形態の箱型の食品包装容器1に対して、多くの異なった種類のハンバーガー等の食材を包装している。実際の包装に当たっては、通常、複数個の同じ形状の食品包装容器1を並べ置き、それぞれ容器内に異なった種類のハンバーガーを組み上げている。
【0006】
一方、ハンバーガー等を包装する食品包装容器1の内側面は、下容器部分2と上容器部分3ともに、模様のない無地のものであり、店員が食品包装容器1を上から見るだけでは、格別の識別を行うことはできない。もちろん、容器の外側面は、ハンバーガーの種類によって異なるものであり、識別可能であるが、店員は、外側面を視認するのに時間が掛かる。そのために、店員は、各食品包装容器1の下容器部分2と上容器部分3とに、共通部材である下パンaと上パンbをおいた後に、どの容器にはどの具材を置くかを、メモをするか記憶しておく必要があり、店員にとっては大きな負担となっている。場合によっては、組み上げる内容を間違ってしまい、注文とは異なった内容のハンバーガーが客に渡されることも起こり得る。
【0007】
食品包装容器1の内側面に印刷等により識別模様を施すことにより、その模様を手がかりに、店員は、どの容器にどの種類のハンバーガーを作り上げるべきかを、目で確認しながら作業を進めることができる。しかし、食品と接する容器内面に印刷インキを直接印刷して模様を形成することだけでは、食品衛生上から、好ましい解決策ではない。
【0008】
このようなことから、迅速に処理をしながら、各容器内に組み上げるべきハンバーガー等の内容に取り違えが生じないようにすることが、業界での解決すべき大きな課題となっている。
【0009】
本発明は、上記の課題に答えるものであり、同じ形態の食品包装容器であっても、それを上から見るだけで、どの用途に使用すべきものかを容易に識別することができ、かつ収容する食品に悪影響を与えることのない食品包装容器、およびその食品包装容器を製造するための食品包装用シート材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による食品包装用シート材料は、外表面シートと中芯シートと内表面シートとの積層体からなる食品包装用シート材料であって、中芯シートの内表面シートに面する側には模様が形成されており、かつ前記模様は内表面シートを介して識別できることを特徴とする。
【0011】
内側シートは、食品を包装するときに食品を収容(触れる)面を形成し、外側シートは一般的に美的な意匠が施されている。模様は、線、文字、図形、記号、もしくは、これらの結合、またはこれらと色彩との結合であり、制限はない。したがって、文字模様、絵模様、線模様等であってよく、それらの組み合わせ模様であってもよい。色彩を異ならせることで模様としてもよい。いずれの場合も、印刷模様であることが、量産性およびコストの観点から望ましい。
【0012】
本発明による食品包装用シート材料において、前記中芯シートは平板なシートであってもよいが、波形形状をなす紙材であることは好ましい。また、いずれの場合も、未晒し紙であることは好ましい。さらに、本発明による食品包装用シート材料において、前記中芯シートの坪量は、前記内側シートの坪量と同じまたは内側シートの坪量よりも大きいことは好ましい。
【0013】
また、本発明による食品包装容器は、上記の食品包装用シート材料を製箱して作られる食品包装容器であって、前記内表面シートが食品と接する側として製箱されており、前記中芯シートに形成された模様が前記内表面シートを透過して外から可視できることを特徴とする。
【0014】
上記の食品包装容器の一具体的な態様では、前記食品包装容器は、箱型の下容器部分と箱型の上容器部分とがヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされていることを特徴とする。
【0015】
本発明による食品包装用シート材料を製箱して作られる食品包装容器は、中芯シートの内表面シートに面する側に形成した模様を、内表面シートを介して外側から可視できることができる。そのために、例えば店員等である容器使用者は、複数個の食品包装容器を上から見る姿勢であっても、前記模様を手がかりとして、各容器の区別化を容易に行うことができる。
【0016】
そのために、例えば、模様Aの容器はa形態の食品用のもの、模様Bの容器はb形態の食品のもの、というような使用マニアルを周知しておくことにより、店員が店頭で迅速に食品の包装を行う場合であっても、各容器に入れるべき食品の内容に取り違える事態が生じるのを、効果的に回避することができる。
【0017】
また、前記模様は、食品が接する面である内表面シートではなく、中芯シートの内表面シートに面する側に形成されており、模様によって食品が害されることはない。
【0018】
食品包装用シート材料が波形形状をなす紙材であるとき、好ましくは、波形形状を付与する前の平板状の紙材に模様が施こされ、それが波形形状に賦形さる。それにより、明瞭な模様の形勢が可能であるとともに、中芯シートと内表面シートとに接触領域を少なくすることができ、万が一、模様が内表面シートの表面に滲み出るのを一層確実に回避することができる。
【0019】
各シートの選択によっては、中芯シートの内表面シートに面する側に形成した模様が、外表面シートを透過して、容器の外側から見えてしまうことが起こりうる。このことは、容器の外側の意匠性に影響を及ぼす。それを回避するために、中芯シートを未晒し紙で構成することが望ましい。未晒し紙を使用することにより、本来の印刷面、すなわち容器の外側の意匠への前記模様の隠蔽効果が高くなる。
【0020】
また、中芯シートの坪量が内表面シートの坪量と同等かそれ以上であればよい。内表面シートの坪量は30g/m〜150g/mであることが好ましい。この範囲であれば、中芯シートに形成された模様が可視(識別)できる。また、中芯シートの坪量が30g/mよりも大きければ、前記遮蔽効果が得られやすくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による食品包装用シート材料を用いた本発明による食品包装容器では、中芯シートに模様を形成したことにより、同じ形態の食品包装容器であっても、それを上から見るだけで、各容器を容易に区別化することができる。そのために、店員が店頭で迅速に食品の包装を行う場合であっても、各容器に入れるべき食品の内容に取り違える事態が生じるのを効果的に回避することができる。また、模様は中芯シートに形成されており、収容する食品に悪影響を与えることはない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による食品包装用シート材料の一例を説明するための図。
【図2】図1で説明する食品包装用シート材料の断面を示す図。
【図3】本発明による食品包装用シート材料から食品包装容器用の台紙を打ち抜くときの状態を説明するための平面図。
【図4】本発明による食品包装容器の一例を説明するための図。
【図5】従来の食品包装容器の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
最初に、食品包装用シート材料の一例を説明する。食品包装用シート材料10は、外表面シート11と中芯シート13と内表面シート12との積層体からなる。食品包装用シート材料10は、中芯シート13の一方の面に識別模様が形成され、この識別模様が形成された面が内表面シート12によって覆われている。また、中芯シート13の他方の面は、外表面シート11によって覆われている。
【0025】
外表面シート11と内表面シート12は、限定されないが、紙材、または、紙材とポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムとの積層体であることが好ましい。樹脂フィルムを紙材の一面に貼り付けることにより、水気、湿気、油が容器の外側に染み出すことを防ぐことができる。ただし、内表面シート12は、内表面シート12を通して反対側を透視することができる材料であることが必要である。中芯シート13は、軽量で所要の強度があることから、波形形状をなす紙材であることが望ましい。波形形状をなす紙材を中芯シート13として用いる場合には、段ボール構造の食品包装用シート材料10が得られる。
【0026】
図1は、段ボール構造の食品包装用シート材料10を作る場合の製造プロセスの一例を示している。最初に、図1(a)に示すように、平板状である紙材13aの一方の表面に適宜の模様を印刷等の手段で形成する。図1に示す例では、2本の線模様14,14を印刷により形成している。図示しないが、文字や絵文字などの模様であってもよく、色彩を変えて識別を持たせた適宜の模様であってもよい。いずれの場合も、紙材が未晒し紙であることは、反対側から印刷模様を見えにくくする、いわゆる隠蔽効果が発揮されることから好ましい。
【0027】
印刷後の紙材13aに対して、波形加工を施し、図1(b)に示すような、波形形状をなす紙材13bとする。次に、図1(c)に示すように、紙材13bの前記模様14を形成した側に、例えばでんぷんのりを用いて、内表面シート12を貼り付ける。また、紙材13bの反対の側には、表面に商品名やブランド名を印刷した意匠性の高い外表面シート11を貼り付ける。外表面シート11または内表面シート12が紙の一面にポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムが予め貼り合わせたものである場合、樹脂フィルム側を中芯シート13に当てて、熱融着によって貼り付けることもできる。
【0028】
図2は、そのようにして作成した食品包装用シート材料10の断面を示す。前記したように、内表面シート12は、そこを通して反対側を透視することができる材料であり、図2で矢印の方向から見た場合、見る者は、前記模様14を、内表面シート12に邪魔されることなく、内表面シート12を透過して外から視認することができる。
【0029】
前記食品包装用シート材料10を用いて、図5に基づき説明したような食品包装容器1を作成する際には、最初に、図3に示すように、従来知られた方法により、食品包装用シート材料10から台紙1aを型抜きする。なお、図3では、説明の都合上、食品包装用シート材料10の前記中芯シート13には、異なった種類の線模様14a〜14eが印刷されており、それぞれ対応して5列に台紙1aを打ち抜くように示しているが、1つの食品包装用シート材料10に同じ一種類の模様14を反復成形するようにしてもよい。
【0030】
図3において、模様14aは2本で一組の線模様であり、台紙1aにおける左右の側壁に相当する部分に形成されている。模様14bは2本で一組の線模様であり、台紙1aの中央部の1箇所にのみ形成されている。模様14cは太めの1本の線模様であり、やはり台紙1aの中央部の1箇所にのみ形成されている。模様14dは模様14bと比較して細めの線からなる2本で一組の線模様であり、台紙1aの中央部の1箇所にのみ形成されている。模様14eは太めの1本の線模様であり、台紙1aにおける左右の側壁に相当する部分に形成されている。
【0031】
このような台紙1aを用いて組み立てた食品包装容器1の一例が図4に示される。食品包装容器1の全体形状は、図5に基づき説明した食品包装容器1と同じであり、下容器部分2と上容器部分3とがヒンジ部4を介して接続している。図4に示す例は、図3に示した模様14eを台紙1aにおける左右の側壁に相当する部分に形成した台紙1aを用いて組み立てた例である。
【0032】
この食品包装容器1では、中芯シート13に形成した前記した模様14eが、図示されるように、左右の側壁5,5等において、内表面シート12に邪魔されることなく、内表面シート12を透過して外から視認できるようになっている。そして、図示しないが、図3に示した食品包装用シート材料10を用いることにより、全体形状は同じであるが、上から見て異なる模様14a〜14eを視認することのできる、5種類の食品包装容器1が形成される。
【0033】
そのために、前記したように、模様14aの容器はa形態の食品用のもの、模様14bの容器はb形態の食品のもの、模様14cの容器はc形態の食品用のもの、模様14dの容器はd形態の食品のもの、模様14eの容器はe形態の食品用のもの、というように、模様の種類と食品の種類を関連づけた使用マニアルを周知させることにより、例えば、ファーストフード店等でハンバーガー等の食品を提供する場合において、店員が店頭で迅速に食品の包装を行う場合であっても、それぞれの容器1に入れるべき食品の種類を間違えるように事態が生じるのを、容易に回避することが可能となる。
【0034】
さらに、模様14a〜14eは、食品包装容器1における食品が接する面である内表面シート12に形成されるのではなく、中芯シート13の内表面シート12に面する側に形成されているので、模様14a〜14eによって食品が害されることはない。
【0035】
各シートの選択によっては、模様14a〜14eが、外表面シート11を透過して、容器1の外側から見えてしまうことが起こりうるが、中芯シート13を未晒し紙で構成すること、あるいは中芯シート13の坪量をこのような模様を施さない場合のときの坪量よりも、大きなものとすることによって、中芯シート13の隠蔽効果を向上させることで、回避することができる。
【0036】
具体的には、中芯シート13の坪量は、50g/mであれば強度的に十分である。また、中芯シート13の坪量は、内表面シートの坪量と同じかまたはそれ以上であることが好ましい。ここで、内表面シートの坪量は30g/m〜150g/mが望ましい。この範囲であれば、内表面シート面から中芯シートに形成された模様を可視(認識)することができる。したがって、中芯シート13の坪量は30g/m以上が好ましく、50g/m以上であればさらに好ましい。これにより、必要な強度を満たすとともに寝ようが外表面から見えてしまうのを防止できる。
【0037】
前記した模様14a〜14eにおいて、模様は台紙1aの中央部に形成するよりも、台紙1aにおける左右の側壁に相当する部分に形成する方が、好ましい場合がある。その理由は、模様が容器の中央部にある場合には、収容する食品の大きさ等によっては、模様が食品によって遮蔽されてしまうことが起こり得るからである。このことは、模様が文字や絵模様のように独立した模様の場合に起こり易いので、特に注意が必要となる。
【符号の説明】
【0038】
1…食品包装容器、
1a…台紙、
2…下容器部分、
3…上容器部分、
4…ヒンジ部
5…側壁
10…食品包装用シート材料、
11…外表面シート、
12…内表面シート12、
13…中芯シート、
13a…平板状である紙材、
13b…波形形状をなす紙材、
14、14a〜14e…模様。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面シートと中芯シートと内表面シートとの積層体からなる食品包装用シート材料であって、中芯シートの内表面シートに面する側には模様が形成されており、かつ前記模様は内表面シートを介して識別できることを特徴とする食品包装用シート材料。
【請求項2】
前記中芯シートは、波形形状をなす紙材であることを特徴とする請求項1に記載の食品包装用シート材料。
【請求項3】
前記中芯シートは、未晒し紙であることを特徴とする請求項1または2に記載の食品包装用シート材料。
【請求項4】
前記中芯シートの坪量は、前記内表面シートの坪量と同じまたは内表面シートの坪量よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の食品包装用シート材料。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の食品包装用シート材料を製箱して作られる食品包装容器であって、前記内表面シートが食品と接する側として製箱されており、前記中芯シートに形成された模様が前記内表面シートを介して識別できることを特徴とする食品包装容器。
【請求項6】
請求項5に記載の食品包装容器であって、箱型の下容器部分と箱型の上容器部分とがヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされていることを特徴とする食品包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−228768(P2010−228768A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76614(P2009−76614)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】