説明

食品機械用潤滑剤組成物

【課題】 従来の磨耗減少剤を含有した潤滑剤よりも、スラッジ形成の傾向が低い、食品機械用潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】 多量の食品機械用の基油に、スラッジ形成を促進しない一つ以上の磨耗減少剤を含む少なくとも一つの少量の添加剤組成物を、配合する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本明細書に記載の実施例は、食品機械用潤滑剤組成物、特に従来の食品機械用潤滑剤と比べてスラッジコントロール特性の改善された潤滑剤組成物に関連する。
【発明の背景】
【0002】
食品加工業界で使用される機器は、肉・鶏肉、飲料、および乳製品から成る三つの主要な食品分類により様々である。機器は食品分類によって異なるが、ベアリング、ギア、およびスライド機構のような可動部は同様であり、通常潤滑を必要とする。最も一般的に使用される潤滑剤には、万能グリースに加え、油圧オイル、冷凍オイル、およびギアオイルなどがある。しかしながら、食品産業用のオイルは他の業界で使用される潤滑剤よりもさらに厳しい規準を満たさなくてはならない。
【0003】
食品・飲料製造業界において、潤滑剤による汚染は一つの問題であった。大きな事故が起こると製造会社は大々的な製品回収をしなくてはならず、その結果会社の信用に致命的な傷がつくことになる。
【0004】
機械類中に少量の潤滑剤が漏れるのは一般的なことであり、時には不可避でもあり、またいつもすぐに気付くものとは限らない。シールの通常の磨耗だけでもギアボックスや油圧システムの漏れの原因となり、少量のオイルが放出されて食品と接触する可能性がある。さらにチェーンから滴るオイルやオイルミストを含有した圧縮空気の放出なども汚染の原因となる。
【0005】
工場が食品機械用ではない潤滑剤を使用している場合、米国食品医薬品局(FDA)は、潤滑剤と食品との接触を一切認めていない。誤って潤滑剤が食品と接触した場合は、その一群の食品は廃棄されなくてはならない。しかし工場が無毒、無臭、無色、かつ無味の食品機械用潤滑剤を使用している場合は、FDAは潤滑剤汚染[の許容範囲]を10 ppmまでと限定している。
【0006】
食品安全検査局(FSIS)は、連邦政府により検査済みの工場で使用される公認化合物の公式リストを管理する機関である。この公式リストには、食品との偶発的接触の起こりやすい潤滑剤やその他の物質は、USDAの規定により間接食品添加物とみなされる旨が記載されている。従ってH−1またはH−2のいずれかに分類されるこれらの潤滑剤は、食品加工工場で使用される以前にUSDAによって承認されていなくてはならない。食品との偶発的接触の認められた潤滑剤は、最も厳しい分類であるH−1に入る。H−1に分類される潤滑剤は、食品が機械の潤滑部分に接触する可能性のある場合に使用される。H−2に分類される潤滑剤は食品との接触がない場合に使用され、潤滑剤中に既知の毒物あるいは発癌性物質が使用されていないことが保障されている。本開示の目的のため、本明細書では「食品機械用」および「潤滑剤」という用語をほぼ同じ意味で使用する。
【0007】
連邦規制機関によって制定された安全要求事項を満たすことに加え、潤滑剤は特定の用途について効果的でなくてはならず、またコーシャおよびハラールの条件を満たすことが要されることもある。食品加工工場用の潤滑油は、機械部品を潤滑し、粘度の変化に抗し、抗酸化性があり、錆および腐食保護性があり、磨耗保護を提供し、発泡を防止し、使用中のスラッジ形成に抗しなくてはならない。本製品はまた、流体厚膜システムから境界薄膜にわたる様々な潤滑システムにおいて、効果的に機能しなくてはならない。DIN 51524パートIIの仕様を満たす、あるいはそれ以上の潤滑剤は、前述の性能基準を満たす。従来の食品機械用潤滑剤には耐磨耗剤が含有されている。食品機械用に使用された耐磨耗剤の、過リン酸塩の特定のアミン塩は、スラッジ/ワニス形成を増加させることがある。従って、従来の食品機械用潤滑剤のスラッジおよびワニス形成の傾向を克服した、改良された食品機械用潤滑油を提供することが望ましい。
【発明の要約】
【0008】
本明細書の一つの実施例で、多量の食品機械用の基油と少なくとも一つの少量の添加剤組成物を含んだ食品機械用潤滑剤組成物を提示する。この添加剤組成物には、スラッジ形成を促進しない一つ以上の磨耗減少剤が含まれる。この潤滑剤組成物の長所は、従来の磨耗減少剤を含んだ潤滑剤組成物よりもスラッジ形成の傾向が低いことである。
【0009】
別の実施例では、食品加工用の機械の操作方法を提供する。この方法には、多量の食品機械用の基油と少量の添加剤組成物を含有した食品機械用潤滑剤の機械への提供と、その機械の操作とが含まれる。この添加剤組成物にはスラッジ形成を促進しない磨耗減少剤が一つ以上含まれている。潤滑剤を使用した機械の作動中、当該の潤滑剤組成物は、従来の磨耗減少剤を含有した潤滑剤組成物よりもスラッジ形成の傾向が低い。
【0010】
上記で簡単に説明したように、本開示の実施例では、スラッジおよび/またはワニスの形成が減少され、食品機械用潤滑剤の磨耗基準を満たした、改良された食品機械用潤滑剤組成物が提供される。本明細書に記載の組成物のその他の特徴および利点、また方法は、本明細書に記載の実施例を限定することを目的とすることなく実施例の態様を例示することを目的とした、以下の詳細な説明を参照することにより明らかである。
【0011】
前述の概要および以下の詳しい説明は、共に例示および説明のみを目的としたものであり、開示・請求された実施例のさらなる説明を提供することが意図されたものであると理解される。
【発明の詳細な説明】
【0012】
本明細書に記載の例示的実施例には、スラッジおよびワニス形成の低減に特に効果的で、食品加工業界における使用のためのH−1および/またはH−2の条件を満たした、改良された食品機械用潤滑剤組成物が提供されている。この例示的食品機械用潤滑剤はまた、優れた磨耗保護性、錆および腐食に対する適切な保護、および発泡・気泡の優れた除去性などをもたらすのに適している。上述のように、当該潤滑剤組成物には食品機械用の基油が含まれている。
【0013】
本明細書に記載の食品機械用潤滑油中で使用される基油は、食品機械用の鉱油、食品機械用ポリブテン、食品機械用水素化ポリブテン、食品機械用ポリオールエステル、食品機械用ジエステル、炭素数が少なくとも6以上のアルファオリフィンモノマーを含んだ食品機械用水素化ポリ(アルファオレフィン)、および多種多様な植物油などのような食品機械用炭化水素油の中から選択される。当該の基油は、実質的に無臭、無色、および無味であり、USDA H−1および/またはH−2規準、および食品加工工場、その他の目的での使用条件に適合していなくてはならない。
【0014】
一つの例示的な実施例で、当該基油は、精選された潤滑剤ベースストックから作られた工業用の白油のような鉱油である。食品機械用の鉱油はまた、米国薬局方(USP)のより厳しい条件を満たす白色鉱油、または国民医薬品集(NF)のさらに厳しい条件を満たす軽油であることもある。これらの食品機械用の鉱油はしばしば、蒸留、抽出、脱ろう、および厳しい水素処理などの処理段階を経て、原油から直接得られる。その他の方法で得られた好適な基油に、食品機械用ポリブテン、食品機械用水素化ポリブテン、食品機械用ポリオールエステル、食品機械用ジエステル、および炭素数が少なくとも6以上のアルファオリフィンモノマーを含んだ食品機械用水素化ポリ(アルファオレフィン)などがある。
【0015】
植物油もまた、単独で、あるいは上述のオイルとの組み合わせで基油成分として使用される。好適な植物油には、菜種油、ホホバ油、キリ油、ヒマシ油、トールオイル、亜麻仁油、オリーブ油、ピーナッツ油、ロープ油、ヤシ油、大豆油、およびそれらの混合物などが含まれるが、これらに限定されることはない。ラード油、牛脂油、ミンクオイル、その他のような肉製品から得られたオイルは、コーシャおよび/またはハラールの条件を満たす潤滑剤用からは外される。
【0016】
当該の基油は、添加剤を含有する約85.0重量%から99.9重量%の潤滑剤組成物から成り、40℃での粘度が10cStから1000cStの範囲内の製品を提供する。使用される添加剤は、H−1食品機械用潤滑剤組成物を提供するためのHX−1基準を適切に満たし、またH−2食品機械用潤滑剤組成物を提供するためのHX−2基準も満たす。
【0017】
耐磨耗添加剤
本明細書に記載の組成物中で使用される耐磨耗添加剤には、食品機械用の油溶性の硫黄および/またはリンを含んだ化合物、中和アルキルリン酸エステル、およびそれらの混合物が含まれる。
【0018】
使用される硫黄および/またはリン化合物の一つとして、トリフェニルホスホロチオエートがある。食品機械用として現在承認されていないその他の硫黄および/またはリン含有物質には、ジンクジアルキルジチオホスフェート、ジンクジチオカルバメート、アミンジチオカルバメート、およびメチレン・ビス・ジチオカルバメートが含まれる。上述のいずれの化合物も、HX−1に承認されていれば、好適な耐磨耗添加剤となる。
【0019】
好適な中和アルキルリン酸エステル成分には、モノ−およびジ−C−C−アルキルリン酸エステルおよび/または非分岐鎖アミンで中和されたポリホスフェートエステルの混合物を含有した成分が含まれる。この非分岐鎖アミンは、テトラメチルノニルアミン、C11−C14アルキルアミン、その他の中から選択される。
【0020】
食品機械用潤滑剤には、潤滑剤組成物の総重量に対し約0.1重量パーセントから約0.5重量パーセント の耐磨耗添加剤が含有される。トリフェニルホスホロチオエート成分および中和アルキルリン酸エステル磨耗減少剤を含有する食品機械用潤滑剤について、当該組成物の耐磨耗添加剤成分には、約0重量%から約50重量%のトリフェニルホスホロチオエート成分と約35重量%から約100重量%の中和アルキルリン酸エステル成分が含まれる。
【0021】
耐磨耗添加剤の基準の一つとして、添加剤がスラッジ形成を促進しない耐磨耗添加剤であることが挙げられる。従来の耐磨耗添加剤には通常、C12−C14のt−アルキル1級アミンで中和された中和ジアルキルホスフェートが含まれる。驚いたことに、分岐アルキルアミンで中和されていない耐磨耗添加剤を含有した食品機械用潤滑剤は、C12−C14のt−アルキル1級アミンで中和された耐磨耗添加剤を含有した同様の潤滑剤に比べ、スラッジ/ワニス形成の傾向が低い。
【0022】
酸化防止剤
食品機械用潤滑剤組成物の成分として使用される酸化防止剤には、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、およびそれらの混合物が含まれる。
【0023】
フェノール系酸化防止剤には、食品機械用で油溶性の立体的に混み合ったフェノールお
よびチオフェノールが含まれるが、これらに限定はされない。フェノール系およびチオフェノール系酸化防止剤の定義内に含まれるものとしては、ヒンダードフェノールおよびヒンダードビス−フェノール、ヒンダード4,4’−チオビスフェノール、ヒンダード4−ヒドロキシ−および4−チオール安息香酸エステルおよびジチオエステル、またヒンダードビス(4−ヒドロキシ−および4−チオール安息香酸およびジチオ酸)アルキレンエステルなどのような、立体的に混み合ったフェノールがある。このフェノール部分は、ヒドロキシまたはチオール基にオルトの両位置で、これらの基を立体的に混み合わせるアルキル基によって置換されていることがある。このようなアルキル置換基の炭素数は通常3から10、好適には4から8であり、一つのアルキル基は通常直鎖ではなく分岐している(例えばt−ブチル、t−アミル、etc.)。
【0024】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の第一のグループは、単一ヒンダードフェノールである。このような化合物の例には、2,6−ジ −t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−アミル−p−クレゾール、および2−t−ブチル−6−t−アミル−p−クレゾールがある。
【0025】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の第二のグループは、ヒンダードビス−フェノールである。これらの化合物の例には、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ −t−ブチルフェノール)、4,4’−ジメチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−トリメチレンビス(2,2−ジ−t−アミルフェノール)、および4,4’−トリメチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)が含まれる。
【0026】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の別のグループに、ヒンダード4,4’−チオビスフェノールがある。これらの化合物の例には、4,4’−チオビス(2,6−ジ−sec−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−t−ブチル−6−イソプロピルフェノール)、および4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)が含まれる。
【0027】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の第四のグループは、4−アルコキシフェノールである。これらの化合物の例には、ブチル化ヒドロキシ アニソール、ブチル化ヒドロキシフェネトール、およびブチル化ヒドロキノンが含まれる。上記のいずれの化合物も、HX−1に承認されていれば、好適なフェノール系酸化防止剤となる。
【0028】
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)は費用効率が高く、市販されており、またHX−1に承認されている。ブチル化ヒドロキシトルエンは、食品機械用潤滑油組成物の約1重量%未満の量で、また最も一般的には約0.1重量%から約0.6重量%の範囲内の量で食品機械用潤滑油中に存在する。同様に、食品機械用潤滑剤組成物には1重量%未満のフェノール系酸化防止剤が含有される。
【0029】
食品機械用で油溶性の好適な芳香族アミン系酸化防止剤には、ナフチルフェニルアミン、アルキル化フェニルナフチルアミン、およびアルキル化ジフェニルアミンがある。芳香族アミン系酸化防止剤の例には、N−フェニル−アルファ−ナフチルアミン、N−p−メチル−フェニル−アルファ−ナフチルアミンのようなナフチルアミン、またジ−sec−ブチルジフェニルアミン、ジ−イソボルニル−ジフェニルアミン、およびジオクチルジフェニルアミンのようなジフェニルアミンが含まれるが、これらに限定はされない。上記のいずれの化合物も、HX−1に承認されていれば、好適な芳香族アミン系酸化防止剤である。
【0030】
得に好適な芳香族アミン系酸化防止剤は、アルキル化およびジアルキル化されたジフェニルアミン、例えば、n−フェニルベンゼンアミンと2,4,4トリメチルペンテンのア
ルキル化反応生成物である。反応の結果得られる生成物 は、オルト−、メタ−、およびパラ−ビス(オクチルフェニル)アミンの混合物である。ビス(オクチルフェニル)アミンは、ジオクチルジフェニルアミンとも呼ばれ、食品機械用のアミンである。別の好適な食品機械用ジフェニルアミンに、オクチル化、ブチル化ジフェニルアミンがある。芳香族アミンは、潤滑油組成物の約1重量%の量で潤滑剤組成物中に存在する。アルキル化ジフェニルアミンの適量は、潤滑剤組成物の総重量の約0.05重量%から約0.5重量%の範囲内である。
【0031】
当該潤滑剤組成物に含有される酸化防止剤は、一般に一種類のみである。しかしながら、前述の酸化防止剤の組み合わせが使用されることもある。酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、フェノール系および芳香族アミン系酸化防止剤成分の重量比は、20:1から1:20であるが、好適な比率は4:1から1:1である。
【0032】
防錆剤
防錆剤成分には、食品機械用のイオン性および非イオン性界面活性防錆原料の組み合わせが含まれる。目的とする耐錆性を得るために必要となるイオン性および非イオン性界面活性防錆剤の総重量は、どちらか一つだけの防錆剤を使用した場合に比べ、大幅に少なくなる。
【0033】
本明細書に記載の組成物中で使用されるイオン系防錆潤滑剤には、食品機械用リン酸モノ−およびジ−ヘキシルエステル化合物とテトラメチルノニルアミン、およびC10からC18のアルキルアミンが含まれる。いかなる防錆剤化合物でも、HX−1に承認されていれば好適な防錆剤となる。同様に、耐磨耗添加剤として使用される過リン酸塩のアミン塩もまた、その耐錆性により防錆剤として使用される。
【0034】
本明細書に記載の組成物中で使用される非イオン系防錆潤滑剤には、食品機械用の脂肪酸や、それらにソルビタン、グリセロールまたはその他の多価アルコール、あるいはポリアルキレングリコールなどを加えることによって形成されるエステルが含まれる。その他の非イオン系防錆潤滑剤には、アルキレンオキシドでアルコキシル化された脂肪アルコール、またはアルキレンオキシドでアルコキシル化されたソルビタン、あるいはアルキレンオキシドでアルコキシル化されたソルビタンエステルから得られる食品機械用エーテルが含まれる。
【0035】
好適な食品機械用非イオン系防錆潤滑剤の例には、ソルビタンモノ−オレエート、エトキシル化植物油、イソプロピルオレエート、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪アルコール、脂肪グリセリドエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレエート、ポリオキシエチレンソルビタン、グリセロールモノ−オレエート、グリセロールジ−オレエート、グリセロールモノ−ステアレート、およびグリセロールジ−ステアレートが含まれる。上記のいずれの化合物も、HX−1に承認されていれば、好適な防錆剤となる。
【0036】
食品機械用の防錆剤は、約1重量%未満の食品機械用潤滑油から成ることも、また約0.01重量%から約0.3重量%の食品機械用潤滑油から成ることもある。
【0037】
腐食防止剤
いくつかの実施例において、腐食防止剤は、本明細書に記載の組成物中に含有されるのに適した別の種類の添加剤の構成要素となる。このような化合物には、食品機械用チアゾール、トリアゾール、およびチアジアゾールが含まれる。このような化合物の例として、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルチオ−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルジチオ−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ヒドロカルビルチオ)−1,3,4−チアジアゾール、および2,5−ビス(ヒドロカルビルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールなどが挙げられる。好適な化合物としては、その多くが市販されている1,3,4−チアジアゾール、トリルトリアゾールと2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールのような1,3,5−チアジアゾールの組み合わせなどのトリアゾールの組み合わせ、およびN,N−ビス(2−エチル)ある−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミンのようなビス−アルキル−アリルアルキルベンゾトリアゾールアルキルアミンがある。本明細書に記載の食品機械用組成物中の腐食防止剤の量は、潤滑剤組成物の総重量を基にして、約0.01重量%から約0.5重量%の範囲内である。
【0038】
消泡剤
いくつかの実施例において、消泡剤が、食品機械用組成物中での使用に適した別の成分を形成する。消泡剤はシリコン、ポリアクリレート、メタクリレート、界面活性剤、およびHX−1承認基準を満たすその他同種の化合物の中から選択される。本明細書に記載の食品機械用組成物中の消泡剤の量は、食品機械用潤滑剤組成物の総重量を基にして、約0.0025重量%から約0.01重量%の範囲内である。
【0039】
防腐剤
好適な食品機械用防腐剤には、ビタミンE(α−トコフェロール)および/またはプロピルp−ヒドロキシルベンゾエートのようなC−Cアルキルヒドロキシルベンゾエートが含まれるが、これらに限定はされない。潤滑剤組成物中の防腐剤の量は、食品機械用潤滑剤組成物の総重量の約0.001重量%から約0.1重量%の範囲内である。
【0040】
本明細書に記載の組成物の調合に使用される添加剤は、個々に、あるいは様々な組み合わせで基油中に混合することができる。しかしながら、添加剤濃縮物(即ち添加剤プラス基油などの希釈剤)を使用してすべての成分を一度に混合することが好適である。添加剤濃縮物の使用により、添加剤濃縮物の形態での原料の組み合わせによってもたらされる相互の互換性が活用される。さらに、濃縮物の使用により、混合時間が短縮され、また混合エラーの発生の可能性が低くなる。
【0041】
従来の食品機械用潤滑剤組成物(サンプル1−4)および本明細書に記載の例示的な実施例に基づいた食品機械用潤滑剤組成物(サンプル5−8)の処方を、下記の表1に示す。また表2では、流体組成物の試験の結果を比較する。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
表2に示されるように、本開示に基づいた流体組成物(サンプル3−4)は、CCMA試験において、25mg/100mlの限界に対し、15mg/100ml未満という、比較的低いスラッジの結果値を示した。
【0045】
それに比べて、従来の耐磨耗剤(サンプル1−2)を使用した場合、サンプル3−4に比べてスラッジの結果値がかなり高く、25mg/100ml以上であった。サンプル1−2を入れたビーカーには、サンプル3−4のビーカーに比べ、かなり多量のワニスがついていた。サンプル3−4のFZGスカッフィングおよび磨耗データは、スラッジを形成しない耐磨耗剤を含有したサンプル3−4の処方により、低スラッジでも好適な磨耗保護が得られることを示した。
【0046】
前述の実施例はその実行においてかなり変化する余地がある。従って当実施例は、上記に述べられた特定の例証に制限されることを意図したものではない。むしろ前述の実施例は、法律的に使用可能なそれらの対応範囲を含む、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0047】
当特許権者は、開示された実施例のいずれをも一般に提供することは意図しておらず、また開示された修正または変更は、それらがすべて完全に請求項の範囲内に収まらない状
態になるまで、均等論により当実施例の一部であると見なされる。
【0048】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
【0049】
1. 多量の食品機械用の基油と、スラッジ形成を促進しない一つ以上の磨耗減少剤を含む少なくとも一つの少量の添加剤組成物とから成る、食品機械用潤滑剤組成物であり、当該潤滑剤組成物のスラッジ形成の傾向が従来の磨耗減少剤を含有した潤滑剤組成物よりも低い食品機械用潤滑剤組成物。
【0050】
2. スラッジ形成を促進しない一つ以上の磨耗減少剤が、トリフェニルホスホロチオネート、アミン中和リン酸エステル、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択されており、アミンが非分岐鎖アミンである、上記1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【0051】
3. 食品機械用の基油が、白油、植物油およびそれらの混合物から成るグループの中から選択されたオイルから成る、上記1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【0052】
4. 添加剤が、さらにアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびそれらの混合物から成るグループの中から選択された、少なくとも一つの酸化防止剤を含む、上記1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【0053】
5. 磨耗減少剤がトリフェニルホスホロチオネートとアミン中和リン酸エステルの混合物から成り、アミンが非分岐鎖アミンである、上記1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【0054】
6. 添加剤組成物がさらにメタクリレート系消泡剤を含む、上記1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【0055】
7. さらに防腐剤、腐食防止剤および防錆剤から成るグループの中から選択された成分を含む、上記1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【0056】
8. 多量の食品機械用の基油[の量]が、基油と添加剤組成物の総重量を基にして、約85重量パーセントから約99.9重量パーセントである、上記1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【0057】
9. 添加剤組成物がHX−1承認基準を満たす、上記1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【0058】
10. 潤滑剤組成物が動物由来の基油および添加剤を含んでいない、上記1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【0059】
11. 食品加工用の機械の操作方法であり、
‐多量の食品機械用の基油と、スラッジ形成を促進しない一つ以上の磨耗減少剤を含んだ少なくとも一つの少量の添加剤組成物とから成り、スラッジ形成の傾向が従来の磨耗減少剤を含有した潤滑剤組成物よりも低い、食品機械用潤滑剤を機械に提供すること、および‐当該の機械を作動すること
を含んだ、食品加工用の機械の操作方法。
【0060】
12. スラッジ形成を促進しない磨耗減少剤が、トリフェニルホスホロチオネート、アミン中和リン酸エステル、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択されており、アミンが非分岐鎖アミンである、上記11に記載の方法。
【0061】
13. 食品機械用の基油が、白油、植物油およびそれらの混合物から成るグループの中から選択されたオイルから成る、上記11に記載の方法。
【0062】
14. 添加剤が、さらにアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびそれらの混合物から成るグループの中から選択された、少なくとも一つの酸化防止剤を含む、上記11に記載の方法。
【0063】
15. 磨耗減少剤がトリフェニルホスホロチオネートとアミン中和リン酸エステルの混合物から成り、アミンが非分岐鎖アミンである、上記11に記載の方法。
【0064】
16. 添加剤組成物がさらにメタクリレート系消泡剤を含む、上記11に記載の方法。
【0065】
17. 添加剤組成物が、さらに防腐剤、腐食防止剤および防錆剤から成るグループの中から選択された成分を含む、上記11に記載の方法。
【0066】
18. 多量の食品機械用の基油[の量]が、基油と添加剤組成物の総重量を基にして、約85重量パーセントから約99.9重量パーセントである、上記11に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多量の食品機械用の基油と、スラッジ形成を促進しない一つ以上の磨耗減少剤を含む少なくとも一つの少量の添加剤組成物とから成る、食品機械用潤滑剤組成物であり、当該潤滑剤組成物のスラッジ形成の傾向が従来の磨耗減少剤を含有した潤滑剤組成物よりも低い食品機械用潤滑剤組成物。
【請求項2】
スラッジ形成を促進しない一つ以上の磨耗減少剤が、トリフェニルホスホロチオネート、アミン中和リン酸エステル、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択されており、アミンが非分岐鎖アミンである、請求項1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【請求項3】
添加剤が、さらにアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびそれらの混合物から成るグループの中から選択された、少なくとも一つの酸化防止剤を含む、請求項1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【請求項4】
磨耗減少剤がトリフェニルホスホロチオネートとアミン中和リン酸エステルの混合物から成り、アミンが非分岐鎖アミンである、請求項1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。
【請求項5】
食品加工用の機械の操作方法であり、
‐多量の食品機械用の基油と、スラッジ形成を促進しない一つ以上の磨耗減少剤を含んだ少なくとも一つの少量の添加剤組成物とから成り、スラッジ形成の傾向が従来の磨耗減少剤を含有した潤滑剤組成物よりも低い、食品機械用潤滑剤を機械に提供すること、および‐当該の機械を作動すること
を含んだ、食品加工用の機械の操作方法。
【請求項6】
スラッジ形成を促進しない磨耗減少剤が、トリフェニルホスホロチオネート、アミン中和リン酸エステル、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択されており、アミンが非分岐鎖アミンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
添加剤が、さらにアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびそれらの混合物から成るグループの中から選択された、少なくとも一つの酸化防止剤を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
磨耗減少剤がトリフェニルホスホロチオネートとアミン中和リン酸エステルの混合物から成り、アミンが非分岐鎖アミンである、請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2008−138171(P2008−138171A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244998(P2007−244998)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】