説明

食品用トレイ

【課題】 生肉、生魚などの食材から放出された液体がトレイ内側の側壁部に移動することを防止し、展示販売中の商品の見栄えがよい。
【解決手段】 吸水性を有する連続気泡性発泡層1と独立気泡性発泡層2から少なくとも構成されたポリスチレン系樹脂積層発泡シート3からなり、連続気泡性発泡層1が容器内面4となるように成形され、四周5には側壁部6を有する上面開口の食品用トレイにおいて、
前記側壁部6への立ち上がり部8近傍のトレイ底面部7の全周に、厚み方向に圧縮して連続気泡性発泡層1を潰した凹状部9を形成し、その内側底面部7表面に連続気泡性発泡層1に達する開口孔部11が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生肉、生魚などの液体を放出する食材を収容する食品用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特表2001−500459号は、液体を放出する食材および嗜好性食品を収容するトレイに関するもので、非発泡層、吸水性のある連続気泡性発泡層、独立気泡性発泡層の三層構造からなる積層発泡シートを熱成形して得られたトレイに、食材と対面する非発泡層の表面に液体を吸収層に通過させるための開口部を形成した食材を収容するトレイである。
【特許文献1】特表2001−500459号
【0003】
しかし、連続気泡性発泡層を吸水層とする食品用トレイにおいて、トレイ内側の底部に食材を収容配置すると、食材から放出された液体は、トレイ内側の底部に開口する孔から吸水層に吸収すると同時に、その吸水層に吸収した液体が食材が載っていないトレイ内側の側壁部にも移動して、展示販売中の商品の見栄えが悪くなるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、生肉、生魚などの食材から放出された液体がトレイ内側の側壁部に移動することを防止し、展示販売中の商品の見栄えがよい食品用トレイを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、吸水性を有する連続気泡性発泡層と独立気泡性発泡層から少なくとも構成されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなり、連続気泡性発泡層が容器内面となるように成形され、四周には側壁部を有する上面開口の食品用トレイにおいて、
前記側壁部への立ち上がり部近傍のトレイ底面部の全周に、厚み方向に圧縮して連続気泡性発泡層を潰した凹状部を形成し、その内側底面部表面に連続気泡性発泡層に達する開口孔部が形成されていることを特徴とする食品用トレイである。
本発明において連続気泡性発泡層とは、該発泡層の連続気泡率が独立気泡率よりも高い発泡層である。吸水性に優れることから、発泡層の連続気泡率が60%以上であることが好ましい。
また本発明における独立気泡性発泡層とは、該発泡層の独立気泡率が該発泡層の連続気泡率よりも高い発泡層である。強度に優れることから、発泡層の連続気泡率が30%以下であることが好ましい。
なお、連続気泡率(%)は、ASTM D2856−87記載の測定方法に準じて測定されたものであり、
独立気泡率(%)=100−(連続気泡率+樹脂分の占める比率)である。
【発明の効果】
【0006】
従って、本発明の食品用トレイは、収納した食品からでる液体を連続気泡性発泡層に吸収でき、しかも当該液体はトレイ底面部の全周に連続気泡性発泡層を潰した凹状部で遮断されることから、当該液体を側壁部にまで吸収することはなくなり、側壁部の見栄えが悪化し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明に係る食品用トレイの一実施態様を示す概略平面図である。図2は同A−A線概略断面図である。図3は同裏面図である。
図において、1は吸水性を有する連続気泡性発泡層、2は独立気泡性発泡層である。3は連続気泡性発泡層1と独立気泡性発泡層2から少なくとも構成されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートである。本実施形態のトレイは、連続気泡性発泡層1が容器内面4となるように成形され、四周5には側壁部6を有する上面開口の食品用トレイである。なお、本発明に用いられる積層発泡シートとしては、公知の吸水性を有する積層発泡シートを用いることができるが、特開2006−150830号公報記載のものが好ましい。
【0008】
トレイ底面部7には、前記側壁部6への立ち上がり部8近傍の全周に、厚み方向に圧縮して連続気泡性発泡層1を潰した凹状部9を形成し、その内側底面部7表面10に連続気泡性発泡層1に達する開口孔部11が形成されている。この実施形態では前記開口孔部11は側壁部6から離れたトレイ底面部7の中央部12にのみ設けられている。ここで「側壁部への立ち上がり部」とは、トレイ底面部7から側壁部6への上向きの角度がつき始める部分を示している。また「側壁部から離れたトレイ底面部の中央部」とは、トレイの対向する側壁部6の容器内面の立ち上がり部8の間の長さの最短長さの25%の長さが、立ち上がり部8から離れているトレイ底面部7の範囲内を示す。
【0009】
この実施形態では、図3に示す様に前記凹状部9は独立気泡性発泡層2側から厚み方向に圧縮して連続気泡性発泡層1を押し潰し形成している。また図4に示す様に前記凹状部9は連続気泡性発泡層1側から厚み方向に圧縮して押し潰した構成でもよい。
【0010】
前記側壁部6への立ち上がり部8近傍とは、立ち上がり部8から15mm以下、3〜15mmが好ましく、3〜10mmがより好ましい。立ち上がり部8から近いと側壁部が折れやすくなる恐れがあり、15mmを超えて遠いと吸収層たる連続気泡性発泡層1の面積が減って吸水性能が低下する。
【0011】
前記凹状部は、幅が広いとトレイの強度が低下する恐れがあり、狭いと液体遮断性が低下するので、3〜10mmが好ましく、4〜6mmがより好ましい。一方、その深さも連続気泡性発泡層1の厚みが20%以下になる深さが好ましく、10%以下になる深さがより好ましく、連続気泡性発泡層がほぼ非発泡層となる深さが特に好ましい。
前記凹状部の形状は、連続気泡性発泡層が押し潰されている形状であれば特に制限は無く、断面U字状、半円状、台形状などに形成される。
【0012】
連続気泡性発泡層1と独立気泡性発泡層2の厚みや目付けの割合は、吸水性と強度の要求バランスによって調整される。
【0013】
本実施形態の発明は上記の通りであるので、収納した食品からでる液体を連続気泡性発泡層1に吸収でき、しかも当該液体はトレイ底面部の全周に連続気泡性発泡層1を潰した凹状部9で遮断されることから、当該液体を側壁部6にまで吸収することはなくなり、側壁部6の見栄えが悪化し難い。
【0014】
また特に、図3に示すようにトレイ裏面から押し潰してトレイ裏面に凹状部9があると、トレイ内面は平面状を維持できるので、食材からでた液体が凹状部9に入る恐れがなく好ましい。
【0015】
また前記トレイの底面部7の中央部12に凸状部13を形成してもよい。
【0016】
成形は、公知の成形方法で行うことができるが、雄雌嵌合金型によるマッチモールド真空成形が好ましい。凹状部を有さない通常のトレイを成形する場合、トレイ底面部の金型のクリアランスは、積層発泡シートの厚みの1.0〜2.0倍にされる。
一方、本発明では、凹状部9を形成する部分の雄型及び又は雌型の金型に凹状部9に対応する凸状突起が形成されており、該部分の金型クリアランスは、積層発泡シートの独立気泡性発泡層の厚みの1.5〜0.8倍とされている。このようにした金型でマッチモール度真空成形することで連続気泡性発泡層を押し潰すことができる。
すなわち、成形機の加熱層で加熱された積層発泡シートは連続気泡性発泡層はほとんど二次発泡することなく、独立気泡性発泡層は1.3〜2.3倍に二次発泡して厚みが増加する。これを前記金型で成形すると、独立気泡性発泡層は変形するが気泡はほとんど圧潰することがなく、連続気泡性発泡層は気泡が圧潰して凹状部9が形成できる。
なお、連続気泡性発泡層1の表面に印刷フィルム等非発泡樹脂層が積層する構成としても差し支えない。なお、この場合、印刷模様が側壁部にくるように定位置成形されたトレイとすることが望ましい。
【0017】
開口孔部は、食材からでた液体を連続気泡性発泡層に導くことができるものであれば、真円状、楕円状、スリット状などどのような形状でもよい。開口孔部の大きさは、小さいと液体が通過しにくく、大きいとトレイの強度が低下する恐れがあるので、0.3〜5mmが好ましい。
開口孔部11の形成方法としては、成形中、成形後ともに開口孔部を形成する方法が採用できる。強度のあるトレイが得られることから、成形後に成形品を個々の成形品に抜く時に開口孔部を形成することが好ましい。
【実施例】
【0018】
吸水層とする連続気泡性発泡層用に、ポリスチレン樹脂(大日本インキ化学工業社製「XC−515」メルトマスフローレイト1.3g/10分)78.9重量%、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物(旭化成社製「SS9000」)15.8重量%、高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製 HJ565W 密度0.968g/cm、メルトマスフローレイト5.0g/10分)5.3重量%を含む混合樹脂組成物100重量部に対し、界面活性剤として商品名エレストマスターS−520(花王社製 アルキルスルホン酸系界面活性剤20重量%含有ポリスチレン樹脂マスターバッチ)を10重量部、気泡調整剤としてタルク0.6重量部を混合した混合原料を、内径115mmの第一押出機と、内径150mmの第二押出機が連結されたタンデム押出機の第一押出機のホッパーに供給した。押出機のシリンダー温度は最高220℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)3.5重量部を圧入、混練して、第二押出機にて発泡性溶融混合物を冷却し、樹脂温度を161℃に調整して、150kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
【0019】
一方、独立気泡性発泡層用として、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製「HRM−12」メルトマスフローレイト5.5g/10分)100重量部に対し、気泡調整剤としてタルク0.7重量部を混合した混合物を、内径115mmの単軸押出機のホッパーに供給し、押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)4.0重量部を圧入、混練、冷却して、発泡性溶融混合物の樹脂温度を154℃に調整して、100kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
【0020】
合流金型で合流された樹脂は、口径175mmの環状金型に注入され、厚み0.45mmのスリットより円筒形状に押出され、口径670mmの冷却用マンドレルに沿わせて引き取り、マンドレル後部に取り付けた2枚のカッターで円筒状の発泡体を切開して上下2枚の積層発泡シートを得た。スリットから出た直後の発泡体の内および外にエアーを吹付けて発泡体表面を冷却した。
【0021】
得られた積層発泡シートは、全体厚みが2.8mm(連続気泡性発泡層1.9mm、独立気泡性発泡層0.9mm)、全体坪量が200g/m(連続気泡性発泡層120g/m、独立気泡性発泡層80g/m)、全体の連続気泡率52%(連続気泡性発泡層72%)であった。
【0022】
この積層発泡シートを、凹状部を形成させる部分の最小金型クリアランスを1.0mmにした雄雌嵌合金型でマッチモールド真空成形を行い、図1乃至図3に示すトレー成形品を成形した。ついで、直径0.8mmの針で所定の位置に開口部を形成した。トレイ中央部の厚みは3.2mm、凹状部は最大幅5mm、最大深さ1.8mmであった。
【0023】
次に、所定の位置に肉を置き、この食材と対面して当該食材から放出された液体を開口孔部に吸収させた。その結果、吸収した液体は側壁部にまで達さず、側壁部の見栄えが悪化しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、生肉、生魚などの液体を放出する食材を収容する食品用トレイに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明に係る食品用トレイの一実施形態である概略平面図である。
【図2】図2は同A−A線概略横断面図である。
【図3】図3は同裏面図である。
【図4】図4は他実施形態を示す本発明に係る食品用トレイの概略横断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 連続気泡性発泡層
2 独立気泡性発泡層
3 ポリスチレン系樹脂積層発泡シート
4 容器内面
5 四周
6 側壁部
7 底面部
8 立ち上がり部
9 凹状部
10 表面
11 開口孔部
12 中央部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性を有する連続気泡性発泡層と独立気泡性発泡層から少なくとも構成されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなり、連続気泡性発泡層が容器内面となるように成形され、四周には側壁部を有する上面開口の食品用トレイにおいて、
前記側壁部への立ち上がり部近傍のトレイ底面部の全周に、厚み方向に圧縮して連続気泡性発泡層を潰した凹状部を形成し、その内側底面部表面に連続気泡性発泡層に達する開口孔部が形成されていることを特徴とする食品用トレイ。
【請求項2】
前記凹状部が連続気泡性発泡層側から形成されていることを特徴とする請求項1記載の食品トレイ。
【請求項3】
前記凹状部が独立気泡性発泡層側から形成されていることを特徴とする請求項1記載の食品トレイ。
【請求項4】
前記開口孔部が側壁から離れたトレイ底面部の中央部にのみ設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の食品用トレイ。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−189362(P2008−189362A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26339(P2007−26339)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(000158943)技研化成株式会社 (35)
【Fターム(参考)】