説明

食品用皮むきシート

【課題】 合成繊維不織布からなる食品用皮むきシートであって、使用者の手のサイズにかかわりなく容易に野菜などの食品の皮むきを行うことができる、研磨用の硬質粒子を必要としない簡便な形態の食品用皮むきシートを提供する。
【解決手段】 サーマルボンド、またはスパンボンド若しくはメルトブロー製法によって製造された合成繊維不織布を研磨表面とした食品用皮むきシート。前記合成繊維不織布は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリクラールからなる群より選択される少なくとも1種の合成繊維から製造されたものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維不織布からなる食品用皮むきシートに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜などの食品の皮むきを容易にする調理用皮むき用具として、吸水性がなく、耐水性に優れ、摩擦に強い素材のネットを手袋状に形成し、ヌルヌルしたり、滑りやすい食品を扱いやすくした皮むき調理具や、手にはめるサポーターの表面に研磨剤を接着した根菜類野菜の皮むき用具が提案されている(特許文献1、特許文献2)。また、野菜の泥落しや皮むきに使用する布製たわしが提案されている(特許文献3)。手袋やサポーターの形にしたものでは、手指に密着できる適切なサイズものを選定しないと、手袋・サポーターが研磨中にズレやすく、そのために食材へ力が伝わりにくく、皮むき操作が困難となるという問題がある。また、布製たわしの場合、布帛に対して研磨用の砂、人工石、溶融アルミナなどの硬質粒子を接着剤などで接着加工する必要がある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−206228号公報
【特許文献2】実開平6−55538号公報
【特許文献3】登録実用新案第3016298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明においては、使用者の手のサイズにかかわりなく容易に野菜などの食品の皮むきを行うことができる、研磨用の硬質粒子を必要としない簡便な形態の食品用皮むきシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解消するために、<1>サーマルボンド、またはスパンボンド若しくはメルトブロー製法によって製造された合成繊維不織布を研磨表面とした食品用皮むきシートを提供する。
【0006】
また本発明は、<2>前記合成繊維不織布が、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリクラールからなる群より選択される少なくとも1種の合成繊維から製造されたものであることを特徴とする<1>記載の食品用皮むきシートを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の食品用皮むきシートによれば、例えば里芋のように丸い野菜でも、ゴボウのように細長くても、シート状のため自由な形態とすることができるため、例えばシートを筒状に形成すれば筒状の中に野菜を入れ、包むようにまたは挟み込むようにして擦ることが可能であり、操作する手のサイズに関わりなく、皮むきの操作がし易い。また研磨面に皮むきに適する合成繊維不織布を使用するため、剥き終わった皮を掻き落とすだけでなく、ある程度不織布中に剥かれた皮が入り込むことにより、研磨力が維持され、効率的に皮むきをすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において研磨面に使用する合成繊維不織布においては、不織布表面近傍の繊維の端部もしくは繊維同士の交絡部が融着固化している部分が主な研磨点となり、この繊維同士が融着固化して形成された研磨点が鋭利に尖っているもののほうが研磨力に優れるために好ましい。この研磨点の数は特に限定されないが、1cmあたり5〜25個あることが好ましい。5個より少ないと皮むき効率が落ち、また25個より大きいと研磨点が密集しすぎて野菜の皮へ貫入し難くなり、皮むき性に劣ることがある。
合成繊維不織布を製造する方法としては、前記研磨点を形成することからサーマルボンド、スパンボンド、メルトブロー製法であれば、いずれの方法でもよいが、研磨点が鋭利に尖っているものがより容易に得られやすいスパンボンド法またはメルトブロー法が好ましい。また、研磨面がサーマルボンド、スパンボンド、メルトブロー製法で製造されていれば単層で用いても、積層化してもよく、研磨層以外は研磨力がなくてもよい。すなわち非研磨層はレーヨン等の再生繊維、パルプ等の天然繊維等でもよく、複合化の製法としてスパンレース法や熱融着繊維を接着層とするサーマルボンド法を用いても良い。また、非研磨層は布やネットでもよく、接着剤等を用いて研磨層を貼り付ける、または糸などで縫い付けても良い。
研磨面に使用する合成繊維不織布に使用する合成繊維としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリクラールからなる群より選択されるいずれかを単独で、または2種以上を混合したものが使用できるが、比較的融点の低いポリエチレン、ポリプロピレンが加工が容易であるために好ましい。
【0009】
野菜の皮むきを効率的に行うには、研磨力の維持が必要であり、研磨面となる不織布の密度が高い構造のものでは、表面に野菜の皮が蓄積し易く、皮の蓄積により、皮むきのための研磨力が低下しやすくなる。逆に密度が低すぎると、野菜の皮との接触効率が下がり、研磨効率も低下することとなるため、適度な密度が必要となる。そのため本発明において研磨面として使用する合成繊維不織布の密度は、0.01(g/cm)〜0.15(g/cm)であるのが好ましい。0.01(g/cm)未満では、野菜の皮と不織布との接触効率が下がり、研磨効率も低下することがある。一方、0.15(g/cm)より大きいと、表面に野菜の皮が蓄積し易く、皮むきのための研磨力が低下し易くなることがある。研磨面に使用する合成繊維不織布の密度は0.03(g/cm)〜0.08(g/cm)とすることが、野菜の皮との接触効率と、研磨面への皮の蓄積防止効果がより両立するためにより好ましい。
【0010】
研磨層の厚さは特に規定しないが、好ましくは0.4mm以上で、1.0mm以上であればさらに好ましい。0.4mm未満であると、野菜の皮が蓄積し易く、皮むきのための研磨力が低下し易くなることがある。
【0011】
研磨面に使用する合成繊維不織布の坪量は特に限定されないが、20〜80(g/m)の範囲であることが好ましい。20(g/m)未満であると、研磨面の強度が低く、皮むき操作中に研磨面が切れるなどの不具合が生じることがある。また、80(g/m)より大きいと柔軟性が低下し、細かい凹凸がある野菜の皮が剥き難くなることがある。
【0012】
研磨面の合繊繊維の繊維径は特に限定されないが、サーマルボンド製法の場合は太いほうが剛性が上がり研磨力が向上するため好ましい。好ましくは5dt(デシテックス)以上であり、さらに好ましくは10dt程度が研磨力と製造性の観点よりより好ましい。
【0013】
本発明の食品用皮むきシートは、そのままシート状の形態で使用することもできるが、シートを筒状に形成したものが使用しやすいために好ましい。
皮むきシートを筒状に形成する場合、筒の大きさは、筒の直径が5cm以上20cm以下、長さが4cm以上であるのが好ましい。直径が5cm以下の場合は、大根等の5cm以上の径を有する野菜が中に挿入できず、直径が20cm以上であると、手の大きさよりも大きすぎて、効率よく野菜表面と接触させつつ研磨するという操作性の点で劣ることがある。長さは4cm未満であると、筒中を滑らせつつ研磨する際に、めくれ上がる等の不具合が生じやすい。長さは4cm以上であれば、上限は特にないが、30cm以下がより好ましく、30cmより長いと、一度挿入した野菜の取り出しなどの操作性が劣ることがある。
【実施例】
【0014】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0015】
実施例1
ポリエステル/ポリエチレン複合タイプの熱融着繊維(ダイワボウ社製「NBF」)100%、繊維太さ5dtを用いて、エアレイド法にて積繊し、サーマルボンド法(熱風加熱)にて作成した不織布;坪量40g/m)を29×15cmの大きさに裁断し、長辺を2つに折り、重なった短辺同士を140℃に熱したアイロンにて2cm幅の加圧融着を行うことによって筒状の皮むきシートを作成した。
【0016】
実施例2
ポリエステル/ポリエチレン複合タイプの熱融着繊維(ダイワボウ社製「NBF」)100%、繊維太さ11dtを用いて、エアレイド法にて積繊し、サーマルボンド法(熱風加熱)にて作成した不織布;坪量40g/m)を29×15cmの大きさに裁断し、長辺を2つに折り、重なった短辺同士を140℃に熱したアイロンにて2cm幅の加圧融着を行うことによって筒状の皮むきシートを作成した。
【0017】
実施例3
メルトブロー製法によって作成されたポリプロピレン不織布45g/mの片層にスパンレース製法によってレーヨン層を40g/m複合した不織布(クラレクラフレックス社製;米坪量85g/m)を29×15cmの大きさに裁断したシートを、メルトブロー層が内側となるように長辺を2つに折り、重なった短辺同士を140℃に熱したアイロンにて2cm幅の加圧融着を行うことによって筒状の皮むきシートを作成した。
【0018】
実施例4
メルトブロー製法によって作成されたポリプロピレン不織布(クラレクラフレックス社製;米坪量45g/m;型番PC0045R5L)を29×15cm の大きさに裁断し、長辺を2つに折り、重なった短辺同士を140℃に熱したアイロンにて2cm幅の加圧融着を行うことによって筒状の皮むきシートを作成した。
【0019】
実施例5
メルトブロー製法によって作成されたポリプロピレン不織布(クラレクラフレックス社製;米坪量45g/m;型番PC0045R5L)と、ナイロン製のネットをそれぞれ29×15cmに切り、重ねて4辺の縁から1cmの部分をナイロン糸(レジロン50番糸;株式会社フジックス製)で縫い合わせた後、長辺を2つに折り、重なった短辺同士をさらにナイロン糸で縫いつけることによって、筒状の皮むきシートを作成した。
比較例1
実施例4と同様の製法によって作成されたポリプロピレン不織布を75×15cmの大きさに裁断し、短辺を2つに折り、重なった長辺同士を140℃に熱したアイロンにて2cm幅の加圧融着を行うことによって筒状の皮むきシートを作成した。
【0020】
比較例2
ポリエステル/ポリエチレン複合タイプの熱融着繊維(ダイワボウ社製「NBF」)100%、繊維太さ2dtを用いて、エアレイド法にて積繊し、サーマルボンド法(熱風加熱)にて作成した不織布;坪量55g/m)を29×15cmの大きさに裁断し、長辺を2つに折り、重なった短辺同士を140℃に熱したアイロンにて2cm幅の加圧融着を行うことによって筒状の皮むきシートを作成した。
【0021】
比較例3
ポリプロピレン100%をカード法にて積繊し、スパンレース法にて作成した不織布;(ライオン(株)アクも油もとるシート原反 坪量40g/m)を29×15cmの大きさに裁断し、長辺を2つに折り、重なった短辺同士を140℃に熱したアイロンにて2cm幅の加圧融着を行うことによって筒状の皮むきシートを作成した。
【0022】
評価方法
実施例及び比較例のサンプルを用いて、最大直径約6cm、長さ約20cmのにんじんを挿入し、外側から手で握り掴むようにしてにんじんを動かしながら皮むきを実施し、むき上がり、皮むき時のさわり心地、むきやすさ、及び洗浄のしやすさを専門パネルにて官能評価した。
【0023】
[皮のむき上がり]
◎ : 完全に皮むきができた
○ : ごく一部にむき残しを除き、ほとんど皮がむけた
△ : 一部の皮しかむけなかった
× : 全く皮がむけなかった
【0024】
[皮のむき時のさわり心地]
◎ : 手指にザラザラした痛みをまったく感じなかった
○ : 手指に若干ザラザラした痛みを感じたが、皮むきに支障はなかった
△ : 手指にかなりザラザラした痛みを感じたが、皮むきを続行できた
× : 手指に過度のザラザラした痛みを感じ、皮むきを続行できなかった
【0025】
〔皮むきのし易さ〕
○ : 持ち変える必要があったり、野菜を落とすなどがない
△ : 持ち変える必要がたまにあったり、野菜を落とすことがたまに起こったりした
× : 度々持ち変える必要があったり、野菜を落とすことがあった
【0026】
[洗浄のしやすさ]
○ : 簡単に流水で皮を洗い流せた
△ : 流水では洗い流せない皮が一部残った
× : 流水では全く洗い流せなかった
【0027】
〔皮むき効率〕
◎ : にんじん1本剥くのに一度も洗浄せずに剥けた
○ : にんじん1本剥くのに1回洗浄するだけで剥けた
△ : にんじん1本剥くのに数回洗浄した
× : にんじん1本剥くのに4回以上洗浄した
【0028】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルボンド、またはスパンボンド若しくはメルトブロー製法によって製造された合成繊維不織布を研磨表面とした食品用皮むきシート。
【請求項2】
前記合成繊維不織布が、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリクラールからなる群より選択される少なくとも1種の合成繊維から製造されたものであることを特徴とする請求項1記載の食品用皮むきシート。

【公開番号】特開2011−5128(P2011−5128A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153357(P2009−153357)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】