食品組成物
【課題】本発明は、腎臓病用食品等の用途での使用に適した、タンパク質の量の調節が容易であり特有の風味のない擬似肉素材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物により調製される食品組成物に関する。
【解決手段】本発明は、水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物により調製される食品組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉等のタンパク質食品素材の代替物として利用することができる、肉様の食感を有する食品組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
既存の肉代替食品素材(擬似肉)としては、大豆タンパク質等の植物性タンパク質を利用した製品が主流である。植物性タンパク質による擬似肉のタンパク質含量は、肉素材と同程度である。また大豆タンパク質は、動物性タンパク質とは異なる特有の風味を有しているため、肉代替品を得るためには風味付けに工夫を要する。
【0003】
一方、腎臓病患者は低タンパク質食品の摂取が求められ、メタボリックシンドロームや糖尿病患者向けには低エネルギー食品の摂取が求められる。腎臓病患者は、タンパク質の摂取が厳しく制限され、なおかつ十分なエネルギーを食事により摂取することが求められる。進行した腎臓病の患者は多額の治療費を要する透析治療を必要とすることから、腎臓病の早期の発見及び治療が国を挙げて推進されている。このため食事制限を受ける患者数は今後増大するものと見込まれる。これらの様々な食品向けに、タンパク質の量やエネルギーの調節が容易であり特有の風味のない擬似肉素材が求められる。
【0004】
特許第3222439号公報(特許文献1)には、細片化マンナンゲル、油脂、糖、15〜40%の挽肉を含むひき肉加工品が開示されている。特開平7−79640号公報(特許文献2)には、こんにゃくを利用した肉類加工食品が記載されている。特開2001‐327265号公報(特許文献3)には、ι(イオタ)−カラギナンを含むことを特徴とする牛肉加工品が開示されている。これら技術はタンパク質源である肉の添加を必要とし、タンパク質摂取量の大幅な低減は実現できない。
【0005】
コンニャクは低カロリーの食品素材として周知であり、コンニャクマンナンのゲルを利用した食品素材が種々開発されている。特許第3637852号公報(特許文献4)にはコンニャクグルコマンナンを含有するこんにゃく原料を、デキストリン、難消化性デキストリン、でんぷん、溶性でんぷんおよびペクチンから選ばれる三糖類以上の多糖を含む水溶液により、こんにゃくグルコマンナン粒子が粒子状に残るように限定的に膨潤させた状態で、アルカリ剤を加えて凝固させることを特徴とするこんにゃく食品の製造方法が開示されている。特開平4−94664号公報(特許文献5)にはコンニャク精粉の加水膨潤物とセルロース−澱粉複合体、及び糊化澱粉を混練した後、アルカリ処理及び加熱処理によりゲル化物を得、次いでこれを連結した後、乾燥することを特徴とする乾燥食品素材の製造法が開示されている。特開昭62−259550号公報(特許文献6)にはデンプンとコンニャクマンナンを主成分とする乾燥ゲルが開示されている。特開昭62−55052号公報(特許文献7)には蒟蒻芋又は蒟蒻マンナンに澱粉などを添加し混練してこれを常法に従ってゲル化させてなる蒟蒻生成工程を含む乾燥蒟蒻の製造方法が開示されている。しかしながら特許文献4〜7に記載された技術はいずれもコンニャク食品の改質或いは米飯様食材の提供を目的とするものであり、これらの方法を用いて擬似肉を製造することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3222439号公報
【特許文献2】特開平7−79640号公報
【特許文献3】特開2001‐327265号公報
【特許文献4】特許第3637852号公報
【特許文献5】特開平4−94664号公報
【特許文献6】特開昭62−259550号公報
【特許文献7】特開昭62−55052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、肉様の食感を有する食品組成物を提供することを目的とする。また、腎臓病用食品やダイエット食品等の用途での使用に適した、タンパク質の量やエネルギーの調節が容易であり特有の風味のない擬似肉素材を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料に比較して多量の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを混合して調製される食品組成物が、タンパク質の量やエネルギーの調節が容易であり特有の風味のない擬似肉組成物として有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の発明を包含する。
(1)水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物により調製される食品組成物。
(2)前記混合物が、前記コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部の水を含む、(1)に記載の食品組成物。
(3)前記混合物が澱粉を更に含む、(1)又は(2)に記載の食品組成物。
(4)前記混合物が油脂を更に含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の食品組成物。
(5)粒状、球状、紐状、又は板状に成形されたものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の食品組成物。
(6)前記混合物を加熱するか、前記混合物を凍結するか、前記混合物を乾燥するか、或いは、これらの処理の2つ以上により前記混合物を処理することにより調製される、(1)〜(5)のいずれかに記載の食品組成物。
(7)前記混合物を乾燥し、更に、得られた乾燥物を水和復元して調製される、(6)記載の食品組成物。
(8)タンパク質含量が100g当り10g以下である、(1)〜(6)のいずれかに記載の食品組成物。
(9)タンパク質含量が100g当り10g以下である、(7)記載の食品組成物。
(10)(1)〜(6)のいずれかに記載の食品組成物を含む、腎臓病患者用食品。
(11)(7)記載の食品組成物を含む、腎臓病患者用食品。
(12)水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物を形成する工程を含む、食品組成物の製造方法。
(13)前記混合物が、前記コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部の水を含む、(12)に記載の方法。
(14)前記食品組成物を粒状、球状、紐状、又は板状に成形する工程を更に含む、(12)又は(13)に記載の方法。
(15)前記混合物を加熱する工程、前記混合物を凍結する工程、及び前記混合物を乾燥する工程から選択される少なくとも1つの工程を更に含む、(12)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)前記混合物を乾燥する工程を含み、更に、該工程で得られた乾燥物を水和復元する工程を含む、(15)記載の方法。
(17)前記水和復元する工程が、前記乾燥物を温水中に漬ける工程、水中で煮る工程、又は水蒸気により蒸す工程である、(16)に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食品組成物は、肉様の食感を有し、タンパク質の量やエネルギーの調節が容易であり、特有の風味がなく、味付けしやすい。よって本発明の食品はタンパク質摂取量の制限が必要な腎臓病患者向けの食品や、低カロリー食品の用途において肉代替物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の食品組成物の調製工程を示す。
【図2】図2は実施例1の擬似ミンチ肉の写真である。
【図3】図3は実施例2の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図4】図4は実施例3の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図5】図5は実施例4の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図6】図6は実施例8の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図7】図7は実施例9の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図8】図8は実施例10の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図9】図9は実施例11の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図10】図10は実施例12の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図11】図11は実施例13の擬似ハンバーグの乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図12】図12は実施例14の擬似鶏だんごの乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図13】図13は実施例15の、擬似ミンチ肉を用いたレトルトカレーの写真である。
【図14】図14は比較例1の組成物の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図15】図15は比較例2の組成物の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図16】図16は比較例3の組成物の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図17】図17は比較例4の組成物の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図18】図18は比較例5の組成物の乾燥物(袋内)及び乾燥物を袋内で湯戻した後の状態の写真である。
【図19】図19は実施例2の擬似ミンチ肉(乾燥状態)を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像である。
【図20】図20は実施例13の擬似ハンバーグの乾燥物を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像である。
【図21】図21は実施例14の擬似鶏だんごの乾燥物を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.コンニャク原料
本発明に用いるコンニャク原料は、コンニャクイモ由来のグルコマンナンを含むものであれば特に限定されず、様々な形状及び純度のものが使用できる。具体的には、コンニャク粉、コンニャクイモ抽出物、グルコマンナンが挙げられる。
【0012】
2.水不溶性食物繊維
水不溶性食物繊維は肉様の物性を組成物に付与するうえで重要である。本発明にはセルロース、ヘミセルロース、水不溶性海草多糖類、水不溶性ペクチン質、キチン、キトサン、及びリグニンからなる群から選択される少なくとも1種の水不溶性食物繊維、或いは当該水不溶性食物繊維を含む混合物が好適に使用できる。精製の程度は特に限定されず、結晶セルロースなどの高純度のもののみでなく、小麦ファイバー、ニンジンパルプ、リンゴパルプ等の純度の低い水不溶性食物繊維も使用できる。水不溶性食物繊維は、水不溶性食物繊維からなる粉末の形態、又は水不溶性食物繊維と増粘剤(例えば澱粉)との複合体からなる粉末の形態、好ましくはこれらの二種類の形態の粉末の混合物として使用される。水不溶性食物繊維は、粉末の形態で使用することが望ましく、粒度が目開き1000μmのメッシュをパスする大きさ(好ましくは、目開き500μmのメッシュをパスする大きさ)であることが望ましい。
【0013】
3.水、コンニャク原料、及び水不溶性食物繊維の配合比
擬似肉組成物は、コンニャク原料と水不溶性食物繊維との配合比が好適な範囲内に設定されたときのみ製造することができる。具体的には、使用されるコンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して水不溶性食物繊維は4〜40重量部(乾燥物基準)、好ましくは6〜17重量部(乾燥物基準)、さらに好ましくは11〜14重量部(乾燥物基準)、である。コンニャク原料と水不溶性食物繊維との配合比がこの範囲を外れると肉様の物性を実現することが困難である。
【0014】
コンニャク原料を水和膨潤させるための水の量は、コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部であることが好ましく、20〜60重量部であることがより好ましく、25〜48重量部であることが最も好ましい。
【0015】
4.アルカリ性凝固剤
本発明ではコンニャク由来のグルコマンナンをゲル化するためにアルカリ性凝固剤が使用される。アルカリ性凝固剤としては具体的には水酸化カルシウム等が挙げられ、一般に用いられているものを任意に用い得る。アルカリ性凝固剤の量は、コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部とすればよい。
【0016】
5.他の成分
本発明は、水和膨潤した状態のコンニャク原料と、水不溶性食物繊維とを各々所定量含む混合物をアルカリ性凝固剤によりゲル化して調製される食品組成物が肉様の物性を有するという驚くべき知見に基づく発明である。そこで当該混合物には、擬似肉素材と組み合わせることができる他の食品材料を添加することができる。添加する他の食品材料としては油脂、澱粉、野菜、果物、香辛料、調味料等が挙げられる。最終製品が低タンパク質食品の提供を意図するものでなければ畜肉、魚介肉、卵、大豆、これらの加工品を添加してもよい。油脂を添加する場合は、食品組成物に畜肉特有の物性(脂の口溶け、肉汁感)及び風味が達成される。油脂の種類は問わず、油脂の添加量はコンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して1〜30重量部であることが好ましい。澱粉を添加する場合は、食品組成物に畜肉特有の食感(肉汁感)が達成され、さらに、前記混合物を加熱して食品組成物を調製する場合は、加熱時に澱粉がα化することにより、食品組成物の保形性が高まる効果が合せて達成される。ここで、澱粉としては、種類は問わず、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉、米澱粉、豆類の澱粉、とうもろこし澱粉(コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ)が挙げられ、これらを由来とする酸化澱粉、α化澱粉、加工澱粉などの各種加工処理された澱粉を用いることもできる。澱粉は、米粉、小麦粉、とうもろこし粉、もち粉などの穀類粉の形態で用いてもよい。種類の異なる澱粉を併用してもよい。澱粉の添加量はコンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して1〜10重量部であることが好ましい。
【0017】
6.食品組成物の調製
本発明の食品組成物は、各々所定量の水和膨潤した状態のコンニャク原料と、水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物により調製される。
【0018】
水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物中ではアルカリ性凝固剤の作用により、水和膨潤した状態のコンニャク原料のゲル化が進行する。このため、水和膨潤した状態のコンニャク原料と水不溶性食物繊維とアルカリ性凝固剤とを混合することにより、生肉様の物性を呈する緩やかに保形されたゲル状物(本発明では「糊状物」と称する場合がある)が得られる。
【0019】
水和膨潤した状態のコンニャク原料と水不溶性食物繊維とアルカリ性凝固剤とを混合して得られる、緩やかにゲル化した糊状の混合物により、或いは、上記混合物を必要により適宜成形した後、加熱、凍結、乾燥等の種々の処理を施し、食用に適した形態の食品組成物を得ることができる。糊状の混合物を加熱することにより、或いは、糊状の混合物を凍結もしくは乾燥した後に加熱することによりゲルの強度が更に高まり、加熱処理した肉加工品に類似した物性の食品組成物が得られる。
【0020】
前記混合物を加熱する処理としては、熱水中で加熱する、油で揚げる、油で炒める、焼く、蒸す、電子レンジを用いて加熱する、熱風により加熱する、などの通常の肉加工品と同様の処理が挙げられる。各処理を適宜組合わせて実施してもよい。糊状の前記混合物を熱水中で加熱する場合、型崩れを防ぐために、前記混合物を、形状を保持するための容器に封入した状態で熱水中に浸漬し加熱することが好ましい。
【0021】
前記混合物を凍結する処理としては肉加工食品において通常実施される凍結処理を採用することができる。凍結された前記混合物は上記の手順で加熱し、喫食に供することができる。
【0022】
前記混合物を乾燥する処理としては凍結乾燥、熱風乾燥等の方法により実施できる。ミンチ代替物の乾燥物の製造には凍結乾燥、熱風乾燥のどちらも好適に利用できる。ミートボールやハンバーグやつくね等の肉加工品代替物の乾燥物の製造には凍結乾燥の利用が好ましい。
【0023】
乾燥工程を経て得られた本発明の食品組成物は、水和復元したうえで摂食することができる。水和復元する工程としては、乾燥された食品組成物を温水中に漬ける工程(湯戻し)、水中で煮る工程、水蒸気により蒸す工程が挙げられる。
【0024】
本発明の食品組成物の調製手順の好適な実施形態の一例を図1に示す。この手順では水と、コンニャク原料と、水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤と、必要に応じて添加される他の粉体成分(澱粉、重曹等)とを攪拌混合し、必要に応じて例えば30分間以上静置してコンニャク原料を水和膨潤させる。次いで必要に応じて油脂、野菜、香辛料等の成分を添加し、混合した後、所望の形状に成形して、ゲル化した本発明の食品組成物を得る。更に、実施例2等のように最後に乾燥を行うこともできる。アルカリ性凝固剤によるグルコマンナンのゲル化の進行は遅い。したがって図1に示すように、コンニャク原料が水和膨潤する前から予めアルカリ性凝固剤を混合物中に添加する場合でも、水和膨潤の進行と比較してゲル化は遅れて進行するため、水和膨潤した状態のコンニャク原料と水不溶性食物繊維との混合物が一旦生じた後にゲル化が完了することとなる。アルカリ性凝固剤は、水、コンニャク原料及び水不溶性食物繊維と同時に添加することが好ましいがこれには限定されず、コンニャク原料が十分に水和膨潤した後に添加してもよい。
【0025】
食品組成物は目的に応じて成形することができる。例えば粒状、球状、紐状、又は板状に成形することで、ミンチ代替物や、ミートボールやハンバーグやつくね等の肉加工品代替物を得ることができる。
【0026】
7.腎臓病患者用食品組成物
本発明の食品組成物又は乾燥食品組成物はタンパク質量を低減した腎臓病患者用食品のために利用することができる。本発明の腎臓病患者用食品のタンパク質含量は、食品全重量100g当たり、10g以下であることが好ましく、5g以下であることがさらに好ましく、0.5g以下であることが最も好ましい。特別用途食品の低たんぱく質食品の規格によれば、たんぱく質含量が通常の同種の食品の含量の30%以下であると低たんぱく質食品であると表示でき(畜肉100g当たりのタンパク質量は大よそ20gである)、また健康増進法によれば、食品100g当たりのタンパク質含量が0.5g未満である場合、0gと表示できる。本発明の食品組成物ではその何れをも達成することが可能となる。なお、腎臓病患者用食品の油脂含量を、前記の油脂の添加量などを調整することによって、腎臓病患者に対するカロリー補給ができる量に調整することができる。なお、以上のものと同じ成分量の、腎臓病患者用食品以外の用途の食品組成物を供することもできる。
【0027】
8.レトルト食品
本発明の食品組成物は、密封容器内に収容し、レトルト殺菌処理を施して、レトルト食品として提供されることができる。
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらには限定されない。
【0029】
[実施例]
表中、配合量の数値は、全原料(調味料、香辛料を除く)100%に占める当該原料の質量比を、括弧内の数値は、グルコマンナン1に対する当該原料の質量比を示す。
【0030】
実施例1:油脂を除く配合例 グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:11
配合
【0031】
【表1】
【0032】
製造手順
粉体の(A)(B)(C)(D)、調味料、香辛料と(F)水とを、30分程度混合し、グルコマンナンを膨潤させると共に、(C)を作用させて糊状物をつくった。ミンチャーで2mmのメッシュから押し出して、長さは0.5〜2cm程度に成形した。これを沸騰水中で加熱(100℃5分間)した。
【0033】
性能評価
製造直後、食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった(図2参照)。
食感:畜肉特有の筋繊維のような繊維感、及び、柔かさを有した。
異味、異臭がなかった。
擬似ミンチ肉は、100gあたりのタンパク質0.1gを含んだ。
【0034】
なお、前記のように製造した糊状物をミンチャーから押し出したものは、生ミンチ肉様の性状のものであった。そして、ミンチャーから押し出した生ミンチ肉様のものを、つくね状に丸めてなべ調理に加えて食したところ、畜肉のつくね様の肉質と食感を有していた。
【0035】
実施例2: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:11
配合
【0036】
【表2】
【0037】
製造手順
粉体の(A)(B)(C)(D)、調味料、香辛料と(F)水とを、30分程度混合し、グルコマンナンを膨潤させると共に、(C)を作用させて糊状物をつくった。これに(E)を加えて混合し、ミンチャーで2mmのメッシュから押し出して、長さは0.5〜2cm程度に成形した。これを真空凍結乾燥機で凍結乾燥し、擬似ミンチ肉の乾燥物を得た。乾燥条件は、乾燥時間18時間、コールドトラップ温度‐40℃以下、真空度0.1torr以下、棚温度50℃とした。
【0038】
性能評価
湯戻し(100℃、10分間)のように調理して食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった(図3参照)。
食感:畜肉特有の筋繊維のような繊維感及び硬さ、弾力を有した。
異味、異臭がなく、肉様の風味を有した。
【0039】
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、重量100gあたりのタンパク質0.2g、脂質40 gを含んだ。なお、図19にこの擬似ミンチ肉(乾燥状態)を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像を示す。画像では不溶性食物繊維がグルコマンナンに覆われ、これによって前記肉様の性能が達成されると考えられる。
湯戻し後、重量は約3倍になった。(凍結乾燥前の重量に戻った。)
なお、前記のように製造した糊状物をミンチャーから押し出したものは、生ミンチ肉様の性状のものであった。
【0040】
比較例1: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:1
配合
【0041】
【表3】
【0042】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:ミンチ肉としては長さが短く、粒状に近かった(図14参照)。
食感:表面は柔らかくべたついており、蒟蒻に近い弾力があった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質58gを含んだ。
湯戻し後、重量は約2倍になった。
【0043】
比較例2: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:2
配合
【0044】
【表4】
【0045】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:鶏肉のミンチ状の形状をしていたが、透明感がありすぎた(図15参照)。
食感:表面、内部ともに柔らかくべたついていた。繊維感がなかった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質55gを含んだ。
湯戻し後、重量は約2.5倍になった。
【0046】
比較例3: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:3
配合
【0047】
【表5】
【0048】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:鶏肉のミンチ状の形状をしていたが、透明感がありすぎた(図16参照)。
食感:表面、内部ともに柔らかくべたついていた。繊維感がなかった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質52gを含んだ。
湯戻し後、重量は約2.5倍になった。
【0049】
実施例3: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:4
配合
【0050】
【表6】
【0051】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた(図4参照)。
食感:やや柔らかいが、筋繊維のような繊維感があり、畜肉のミンチ肉に類似していた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質50gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0052】
実施例4: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:6
配合
【0053】
【表7】
【0054】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた(図5参照)。
食感:筋繊維のような繊維感があり、畜肉のミンチ肉に類似していた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質45gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0055】
実施例5: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:14
配合
【0056】
【表8】
【0057】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた。
食感:やや硬いが畜肉特有の筋繊維のような繊維感及び硬さ、弾力を有した。
異味、異臭がなく、肉様の風味を有した。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質35gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0058】
実施例6: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:17
配合
【0059】
【表9】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた。
食感:硬いが、筋繊維のような繊維感があり、噛み応えのある畜肉の畜肉のミンチ肉に類似していた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質30gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0060】
実施例7: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:22
配合
【0061】
【表10】
【0062】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた。
食感:硬く、繊維感が強かったが、肉様の食感があった。若干、繊維由来のざらつきがみられた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質27gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0063】
実施例8: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0064】
【表11】
【0065】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた(図6参照)。
食感:やや硬く、繊維感が強く、噛み応えがあった。若干、繊維由来のざらつきがみられた。加熱調理し、繊維感の強くなった鶏肉のミンチ肉に類似していた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0066】
実施例9: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0067】
【表12】
【0068】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:透明感があり、かつ、表面に照りがあるため、調理前の鶏肉のようであった(図7参照)。
食感:柔らかく、脂を多く含んだ肉のようであった。ある程度の繊維感があった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約4倍になった。
【0069】
実施例10: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0070】
【表13】
【0071】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:透明感のある赤茶色であるが、ミンチ肉に類似した組織であった(図8参照)。
食感:非常に柔かく、脂を多く含んだ肉のようであった。ある程度の繊維感があった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0072】
実施例11: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0073】
【表14】
【0074】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:人参のような赤色であり、かつ、やや透明感があるが、ミンチ肉に類似した組織であった(図9参照)。
食感:非常に柔かい肉の食感であり、ある程度の繊維感があった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1g、脂質40gを含むものであった。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0075】
実施例12: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0076】
【表15】
【0077】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった(図10参照)。
食感:やや硬く、繊維感が強かったが、肉様の食感であった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1g、脂質40gを含むものであった。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0078】
比較例4: 水溶性食物繊維の使用
配合
【0079】
【表16】
【0080】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:溶解し、形状を留めなかった(図17参照)。
【0081】
比較例5: 水溶性食物繊維の使用
配合
【0082】
【表17】
【0083】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:溶解し、形状を留めなかった(図18参照、図18では乾燥物を袋内で湯戻した後の状態を示す)。
【0084】
実施例13: 擬似ハンバーグの乾燥物
配合
【0085】
【表18】
【0086】
製造手順
粉体の(A)(B)(C)(D)、調味料、香辛料と(F)水とを、30分程度混合し、蒟蒻粉を膨潤させると共に、(C)を作用させて糊状物をつくった。これにタマネギ、(E)を加えて混合し、円盤状に成形した。真空凍結乾燥機で凍結乾燥し、擬似ハンバーグの乾燥物を得た。乾燥条件は、乾燥時間18時間、コールドトラップ温度‐40℃以下、真空度0.1torr以下、棚温度50℃とした。
【0087】
性能評価
湯戻し(100℃、10分間)のように調理して食した場合の性能は次の通りであった。
外観:カットした玉葱が多数存在するのが見え、手作り感のあるハンバーグ様の外観を有した(図11参照)。
食感:柔らかく、手作り感のあるハンバーグ様の食感を有した。豆腐ハンバーグの食感に近かった。
擬似ハンバーグ(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1.3g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。(凍結乾燥前の重量に戻った。)なお、図20にこの擬似ハンバーグ乾燥物を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像を示す。画像では不溶性食物繊維がグルコマンナンに覆われ、これによって前記ハンバーグ様の性能が達成されると考えられる。
【0088】
実施例14:擬似鶏だんごの乾燥物
配合
【0089】
【表19】
【0090】
製造手順
粉体の(A)(B)(C)(D)、調味料、香辛料と(F)水とを、30分程度混合し、蒟蒻粉を膨潤させると共に、(C)を作用させて糊状物をつくった。これに、生姜、白葱、人参、(E)を加えて混合し、径2〜3cm程度の球状に成形した。真空凍結乾燥機で凍結乾燥し、擬似鶏だんごの乾燥物を得た。乾燥条件は、乾燥時間18時間、コールドトラップ温度‐40℃以下、真空度0.1torr以下、棚温度50℃とした。
【0091】
性能評価
湯戻し(100℃、10分間)のように調理して食した場合の性能は次の通りであった。
外観:2〜3cmの球状。みじん切りにした野菜が見えることで、手作り感のある鶏団子のような外観を有した(図12参照)。
食感:やや繊維感があり、鶏の団子のような食感を有した。
擬似鶏だんご(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1.3g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。(凍結乾燥前の重量に戻った。)なお、図21にこの擬似鶏だんご乾燥物を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像を示す。画像では不溶性食物繊維がグルコマンナンに覆われ、これによって前記鶏だんご様の性能が達成されると考えられる。
【0092】
実施例15:擬似ミンチ肉を用いたレトルトカレー
配合
【0093】
【表20】
【0094】
製造手順
上記原料をレトルトパウチに充填して、120℃で25分間レトルト加熱殺菌処理を施した。
性能評価
1カ月保存後に食した場合の性能は次の通りであった。
外観:ミンチの形状は保持されていた。
カレーソースの中に擬似ミンチ肉が点在し、キーマカレーのような外観であった(図13参照)。
擬似ミンチ肉は、ソースの一部を吸収し、黄色く着色していた。
食感:鶏ミンチのような硬さ、弾力、繊維感を有した。
【0095】
実施例16: レトルト擬似ハンバーグ
配合
【0096】
【表21】
【0097】
製造手順
上記原料をレトルトパウチに充填して、120℃で25分間レトルト加熱殺菌処理を施した。
性能評価
1カ月保存後に食した場合の性能は次の通りであった。
外観:レトルト後も形状は保持できた。
煮込みハンバーグのような外観であった。ソースの一部を吸収し、茶褐色であった。
食感:非常に柔らかく煮込んだハンバーグのような食感を有する。
噛みしめると、油脂及びソースが肉汁のようにでてきた。
【0098】
実施例17: 擬似鶏だんごを用いた汁物
配合
【0099】
【表22】
【0100】
製造手順
上記原料をレトルトパウチに充填して、120℃で25分間レトルト加熱殺菌処理を施した。
性能評価
1カ月保存後に食した場合の性能は次の通りであった。
外観:レトルト後も形状は保持できた。
練りこんだ野菜の色はスタート時から変化がなかった。
食感:やや繊維感があり、鶏団子のような食感を有した。
噛みしめると、油脂及びだし汁が肉汁のようにでてきた。
【0101】
実施例18:擬似ミンチ肉の凍結物
製造手順
(D)加工澱粉(ファリネックスLCF)をコーンスターチに代える以外は、実施例2と同様にして、ミンチ肉状の成形物(凍結乾燥する前のもの)を得た。成形物は生ミンチ肉様の性状であった。前記の成形物をトレイに入れ、ブラストフリーザーで庫内温度−40℃で凍結した。凍結物は冷凍した生ミンチ肉と同様の性状であった。
【0102】
性能評価
擬似ミンチ肉の凍結物を沸騰水中で加熱(100℃、10分間)して調理し食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった。
食感:畜肉特有の筋繊維のような繊維感及び硬さ、弾力を有した。実施例2で湯戻ししたものに比べて、食感はよりソフトであった。異味、異臭がなく、肉様の風味を有した。 擬似ミンチ肉(凍結状態)は、重量100gあたりのタンパク質0.1g、脂質15 gを含んだ。
【0103】
実施例19:擬似ミートボールの凍結物
製造手順
混合物を円盤状に成形する代わりに、ミートボール状(10g/個)に成形する以外は、実施例13と同様にして、成形物(凍結乾燥する前のもの)を得た。成形物は生ミンチ肉のミートボール様の性状であった。前記の成形物をトレイに入れ、冷凍庫で庫内温度−20℃で凍結した。凍結物は冷凍したミートボールと同様の性状であった。
【0104】
性能評価
凍結した擬似ミートボールを油揚げして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:カットした玉葱が多数存在するのが見え、手作り感のあるミートボール様の外観を有した。
食感:柔らかく、具材感と繊維感があり、手作り感のあるミートボール様の食感を有した。
擬似肉ミートボール(凍結状態)は、100gあたりのタンパク質0.5g、脂質15gを含んだ。
【0105】
実施例20:擬似ミートボールの凍結物を用いたレトルト食品
配合
【0106】
【表23】
【0107】
製造手順
凍結したままの擬似ミートボールの凍結物と中華風甘酢あんとをレトルトパウチに充填して、120℃で25分間レトルト加熱殺菌処理を施した。
性能評価
1カ月保存後に食した場合の性能は次の通りであった。
外観:ミートボールの形状は保持されていた。 中華風甘酢あんがミートボールに絡められた外観であった。
食感:畜肉のミートボールのような硬さ、弾力、繊維感を有した。実施例16で保存後に食したものに比べて、食感はよりソフトであった。
【0108】
実施例21:畜肉を混ぜて焼成した擬似ハンバーグ
製造手順
糊状物にタマネギ、(E)ラードを加える際に、さらに牛ミンチ肉以外の原料計100質量部に対して55質量部となる量の牛ミンチ肉を混合する以外は、実施例13と同様にして円盤状の成形物(凍結乾燥する前のもの)を得た。
前記の糊状物と牛ミンチ肉等を混合して成形したものは、ハンバーグ生地類似のものであった。
【0109】
性能評価
ハンバーグの調理法にしたがって、フライパンで加熱調理した場合の性能は次の通りであった。
外観:通常のハンバーグと同様の外観であった。
食感:ハンバーグ類似の組織、食感を有し、牛肉の味を含む美味なものであった。
【0110】
実施例22:擬似ミンチ肉の凍結物
製造手順
実施例1と同様にしてミンチャーから押し出した成形物(沸騰水中で加熱する前のもの)を得、上記成形物を100℃で10分間蒸煮した後、室温にまで冷却したものを、冷凍庫で庫内温度−20℃で凍結した。
【0111】
性能評価
擬似ミンチ肉の凍結物を沸騰水中で加熱(100℃、10分間)して調理し食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった。
食感:畜肉特有の筋繊維のような繊維感、及び、柔かさを有した。
異味、異臭がなかった。
擬似ミンチ肉は、100gあたりのタンパク質0.1gを含んだ。
【0112】
実施例23:他の混合方法
実施例1〜22、比較例1〜5のそれぞれにおいて所定の原料を30分程度混合することによりグルコマンナンの膨潤とアルカリ性凝固剤の作用を進行させる工程に代えて、所定の原料の混合物を5分間攪拌して混合し、次いで約30分間静置することにより、グルコマンナンの膨潤とアルカリ性凝固剤の作用を進行させる工程を行った以外は、実施例1〜22、比較例1〜5と同様の手順で試料の製造及び評価を行った。すると、それぞれ実施例1〜22、比較例1〜5と同様の結果が得られた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉等のタンパク質食品素材の代替物として利用することができる、肉様の食感を有する食品組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
既存の肉代替食品素材(擬似肉)としては、大豆タンパク質等の植物性タンパク質を利用した製品が主流である。植物性タンパク質による擬似肉のタンパク質含量は、肉素材と同程度である。また大豆タンパク質は、動物性タンパク質とは異なる特有の風味を有しているため、肉代替品を得るためには風味付けに工夫を要する。
【0003】
一方、腎臓病患者は低タンパク質食品の摂取が求められ、メタボリックシンドロームや糖尿病患者向けには低エネルギー食品の摂取が求められる。腎臓病患者は、タンパク質の摂取が厳しく制限され、なおかつ十分なエネルギーを食事により摂取することが求められる。進行した腎臓病の患者は多額の治療費を要する透析治療を必要とすることから、腎臓病の早期の発見及び治療が国を挙げて推進されている。このため食事制限を受ける患者数は今後増大するものと見込まれる。これらの様々な食品向けに、タンパク質の量やエネルギーの調節が容易であり特有の風味のない擬似肉素材が求められる。
【0004】
特許第3222439号公報(特許文献1)には、細片化マンナンゲル、油脂、糖、15〜40%の挽肉を含むひき肉加工品が開示されている。特開平7−79640号公報(特許文献2)には、こんにゃくを利用した肉類加工食品が記載されている。特開2001‐327265号公報(特許文献3)には、ι(イオタ)−カラギナンを含むことを特徴とする牛肉加工品が開示されている。これら技術はタンパク質源である肉の添加を必要とし、タンパク質摂取量の大幅な低減は実現できない。
【0005】
コンニャクは低カロリーの食品素材として周知であり、コンニャクマンナンのゲルを利用した食品素材が種々開発されている。特許第3637852号公報(特許文献4)にはコンニャクグルコマンナンを含有するこんにゃく原料を、デキストリン、難消化性デキストリン、でんぷん、溶性でんぷんおよびペクチンから選ばれる三糖類以上の多糖を含む水溶液により、こんにゃくグルコマンナン粒子が粒子状に残るように限定的に膨潤させた状態で、アルカリ剤を加えて凝固させることを特徴とするこんにゃく食品の製造方法が開示されている。特開平4−94664号公報(特許文献5)にはコンニャク精粉の加水膨潤物とセルロース−澱粉複合体、及び糊化澱粉を混練した後、アルカリ処理及び加熱処理によりゲル化物を得、次いでこれを連結した後、乾燥することを特徴とする乾燥食品素材の製造法が開示されている。特開昭62−259550号公報(特許文献6)にはデンプンとコンニャクマンナンを主成分とする乾燥ゲルが開示されている。特開昭62−55052号公報(特許文献7)には蒟蒻芋又は蒟蒻マンナンに澱粉などを添加し混練してこれを常法に従ってゲル化させてなる蒟蒻生成工程を含む乾燥蒟蒻の製造方法が開示されている。しかしながら特許文献4〜7に記載された技術はいずれもコンニャク食品の改質或いは米飯様食材の提供を目的とするものであり、これらの方法を用いて擬似肉を製造することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3222439号公報
【特許文献2】特開平7−79640号公報
【特許文献3】特開2001‐327265号公報
【特許文献4】特許第3637852号公報
【特許文献5】特開平4−94664号公報
【特許文献6】特開昭62−259550号公報
【特許文献7】特開昭62−55052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、肉様の食感を有する食品組成物を提供することを目的とする。また、腎臓病用食品やダイエット食品等の用途での使用に適した、タンパク質の量やエネルギーの調節が容易であり特有の風味のない擬似肉素材を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料に比較して多量の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを混合して調製される食品組成物が、タンパク質の量やエネルギーの調節が容易であり特有の風味のない擬似肉組成物として有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の発明を包含する。
(1)水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物により調製される食品組成物。
(2)前記混合物が、前記コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部の水を含む、(1)に記載の食品組成物。
(3)前記混合物が澱粉を更に含む、(1)又は(2)に記載の食品組成物。
(4)前記混合物が油脂を更に含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の食品組成物。
(5)粒状、球状、紐状、又は板状に成形されたものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の食品組成物。
(6)前記混合物を加熱するか、前記混合物を凍結するか、前記混合物を乾燥するか、或いは、これらの処理の2つ以上により前記混合物を処理することにより調製される、(1)〜(5)のいずれかに記載の食品組成物。
(7)前記混合物を乾燥し、更に、得られた乾燥物を水和復元して調製される、(6)記載の食品組成物。
(8)タンパク質含量が100g当り10g以下である、(1)〜(6)のいずれかに記載の食品組成物。
(9)タンパク質含量が100g当り10g以下である、(7)記載の食品組成物。
(10)(1)〜(6)のいずれかに記載の食品組成物を含む、腎臓病患者用食品。
(11)(7)記載の食品組成物を含む、腎臓病患者用食品。
(12)水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物を形成する工程を含む、食品組成物の製造方法。
(13)前記混合物が、前記コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部の水を含む、(12)に記載の方法。
(14)前記食品組成物を粒状、球状、紐状、又は板状に成形する工程を更に含む、(12)又は(13)に記載の方法。
(15)前記混合物を加熱する工程、前記混合物を凍結する工程、及び前記混合物を乾燥する工程から選択される少なくとも1つの工程を更に含む、(12)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)前記混合物を乾燥する工程を含み、更に、該工程で得られた乾燥物を水和復元する工程を含む、(15)記載の方法。
(17)前記水和復元する工程が、前記乾燥物を温水中に漬ける工程、水中で煮る工程、又は水蒸気により蒸す工程である、(16)に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食品組成物は、肉様の食感を有し、タンパク質の量やエネルギーの調節が容易であり、特有の風味がなく、味付けしやすい。よって本発明の食品はタンパク質摂取量の制限が必要な腎臓病患者向けの食品や、低カロリー食品の用途において肉代替物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の食品組成物の調製工程を示す。
【図2】図2は実施例1の擬似ミンチ肉の写真である。
【図3】図3は実施例2の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図4】図4は実施例3の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図5】図5は実施例4の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図6】図6は実施例8の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図7】図7は実施例9の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図8】図8は実施例10の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図9】図9は実施例11の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図10】図10は実施例12の擬似ミンチ肉の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図11】図11は実施例13の擬似ハンバーグの乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図12】図12は実施例14の擬似鶏だんごの乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図13】図13は実施例15の、擬似ミンチ肉を用いたレトルトカレーの写真である。
【図14】図14は比較例1の組成物の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図15】図15は比較例2の組成物の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図16】図16は比較例3の組成物の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図17】図17は比較例4の組成物の乾燥物(袋内)及び湯戻しして得られたもの(皿上)の写真である。
【図18】図18は比較例5の組成物の乾燥物(袋内)及び乾燥物を袋内で湯戻した後の状態の写真である。
【図19】図19は実施例2の擬似ミンチ肉(乾燥状態)を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像である。
【図20】図20は実施例13の擬似ハンバーグの乾燥物を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像である。
【図21】図21は実施例14の擬似鶏だんごの乾燥物を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.コンニャク原料
本発明に用いるコンニャク原料は、コンニャクイモ由来のグルコマンナンを含むものであれば特に限定されず、様々な形状及び純度のものが使用できる。具体的には、コンニャク粉、コンニャクイモ抽出物、グルコマンナンが挙げられる。
【0012】
2.水不溶性食物繊維
水不溶性食物繊維は肉様の物性を組成物に付与するうえで重要である。本発明にはセルロース、ヘミセルロース、水不溶性海草多糖類、水不溶性ペクチン質、キチン、キトサン、及びリグニンからなる群から選択される少なくとも1種の水不溶性食物繊維、或いは当該水不溶性食物繊維を含む混合物が好適に使用できる。精製の程度は特に限定されず、結晶セルロースなどの高純度のもののみでなく、小麦ファイバー、ニンジンパルプ、リンゴパルプ等の純度の低い水不溶性食物繊維も使用できる。水不溶性食物繊維は、水不溶性食物繊維からなる粉末の形態、又は水不溶性食物繊維と増粘剤(例えば澱粉)との複合体からなる粉末の形態、好ましくはこれらの二種類の形態の粉末の混合物として使用される。水不溶性食物繊維は、粉末の形態で使用することが望ましく、粒度が目開き1000μmのメッシュをパスする大きさ(好ましくは、目開き500μmのメッシュをパスする大きさ)であることが望ましい。
【0013】
3.水、コンニャク原料、及び水不溶性食物繊維の配合比
擬似肉組成物は、コンニャク原料と水不溶性食物繊維との配合比が好適な範囲内に設定されたときのみ製造することができる。具体的には、使用されるコンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して水不溶性食物繊維は4〜40重量部(乾燥物基準)、好ましくは6〜17重量部(乾燥物基準)、さらに好ましくは11〜14重量部(乾燥物基準)、である。コンニャク原料と水不溶性食物繊維との配合比がこの範囲を外れると肉様の物性を実現することが困難である。
【0014】
コンニャク原料を水和膨潤させるための水の量は、コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部であることが好ましく、20〜60重量部であることがより好ましく、25〜48重量部であることが最も好ましい。
【0015】
4.アルカリ性凝固剤
本発明ではコンニャク由来のグルコマンナンをゲル化するためにアルカリ性凝固剤が使用される。アルカリ性凝固剤としては具体的には水酸化カルシウム等が挙げられ、一般に用いられているものを任意に用い得る。アルカリ性凝固剤の量は、コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部とすればよい。
【0016】
5.他の成分
本発明は、水和膨潤した状態のコンニャク原料と、水不溶性食物繊維とを各々所定量含む混合物をアルカリ性凝固剤によりゲル化して調製される食品組成物が肉様の物性を有するという驚くべき知見に基づく発明である。そこで当該混合物には、擬似肉素材と組み合わせることができる他の食品材料を添加することができる。添加する他の食品材料としては油脂、澱粉、野菜、果物、香辛料、調味料等が挙げられる。最終製品が低タンパク質食品の提供を意図するものでなければ畜肉、魚介肉、卵、大豆、これらの加工品を添加してもよい。油脂を添加する場合は、食品組成物に畜肉特有の物性(脂の口溶け、肉汁感)及び風味が達成される。油脂の種類は問わず、油脂の添加量はコンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して1〜30重量部であることが好ましい。澱粉を添加する場合は、食品組成物に畜肉特有の食感(肉汁感)が達成され、さらに、前記混合物を加熱して食品組成物を調製する場合は、加熱時に澱粉がα化することにより、食品組成物の保形性が高まる効果が合せて達成される。ここで、澱粉としては、種類は問わず、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉、米澱粉、豆類の澱粉、とうもろこし澱粉(コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ)が挙げられ、これらを由来とする酸化澱粉、α化澱粉、加工澱粉などの各種加工処理された澱粉を用いることもできる。澱粉は、米粉、小麦粉、とうもろこし粉、もち粉などの穀類粉の形態で用いてもよい。種類の異なる澱粉を併用してもよい。澱粉の添加量はコンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して1〜10重量部であることが好ましい。
【0017】
6.食品組成物の調製
本発明の食品組成物は、各々所定量の水和膨潤した状態のコンニャク原料と、水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物により調製される。
【0018】
水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物中ではアルカリ性凝固剤の作用により、水和膨潤した状態のコンニャク原料のゲル化が進行する。このため、水和膨潤した状態のコンニャク原料と水不溶性食物繊維とアルカリ性凝固剤とを混合することにより、生肉様の物性を呈する緩やかに保形されたゲル状物(本発明では「糊状物」と称する場合がある)が得られる。
【0019】
水和膨潤した状態のコンニャク原料と水不溶性食物繊維とアルカリ性凝固剤とを混合して得られる、緩やかにゲル化した糊状の混合物により、或いは、上記混合物を必要により適宜成形した後、加熱、凍結、乾燥等の種々の処理を施し、食用に適した形態の食品組成物を得ることができる。糊状の混合物を加熱することにより、或いは、糊状の混合物を凍結もしくは乾燥した後に加熱することによりゲルの強度が更に高まり、加熱処理した肉加工品に類似した物性の食品組成物が得られる。
【0020】
前記混合物を加熱する処理としては、熱水中で加熱する、油で揚げる、油で炒める、焼く、蒸す、電子レンジを用いて加熱する、熱風により加熱する、などの通常の肉加工品と同様の処理が挙げられる。各処理を適宜組合わせて実施してもよい。糊状の前記混合物を熱水中で加熱する場合、型崩れを防ぐために、前記混合物を、形状を保持するための容器に封入した状態で熱水中に浸漬し加熱することが好ましい。
【0021】
前記混合物を凍結する処理としては肉加工食品において通常実施される凍結処理を採用することができる。凍結された前記混合物は上記の手順で加熱し、喫食に供することができる。
【0022】
前記混合物を乾燥する処理としては凍結乾燥、熱風乾燥等の方法により実施できる。ミンチ代替物の乾燥物の製造には凍結乾燥、熱風乾燥のどちらも好適に利用できる。ミートボールやハンバーグやつくね等の肉加工品代替物の乾燥物の製造には凍結乾燥の利用が好ましい。
【0023】
乾燥工程を経て得られた本発明の食品組成物は、水和復元したうえで摂食することができる。水和復元する工程としては、乾燥された食品組成物を温水中に漬ける工程(湯戻し)、水中で煮る工程、水蒸気により蒸す工程が挙げられる。
【0024】
本発明の食品組成物の調製手順の好適な実施形態の一例を図1に示す。この手順では水と、コンニャク原料と、水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤と、必要に応じて添加される他の粉体成分(澱粉、重曹等)とを攪拌混合し、必要に応じて例えば30分間以上静置してコンニャク原料を水和膨潤させる。次いで必要に応じて油脂、野菜、香辛料等の成分を添加し、混合した後、所望の形状に成形して、ゲル化した本発明の食品組成物を得る。更に、実施例2等のように最後に乾燥を行うこともできる。アルカリ性凝固剤によるグルコマンナンのゲル化の進行は遅い。したがって図1に示すように、コンニャク原料が水和膨潤する前から予めアルカリ性凝固剤を混合物中に添加する場合でも、水和膨潤の進行と比較してゲル化は遅れて進行するため、水和膨潤した状態のコンニャク原料と水不溶性食物繊維との混合物が一旦生じた後にゲル化が完了することとなる。アルカリ性凝固剤は、水、コンニャク原料及び水不溶性食物繊維と同時に添加することが好ましいがこれには限定されず、コンニャク原料が十分に水和膨潤した後に添加してもよい。
【0025】
食品組成物は目的に応じて成形することができる。例えば粒状、球状、紐状、又は板状に成形することで、ミンチ代替物や、ミートボールやハンバーグやつくね等の肉加工品代替物を得ることができる。
【0026】
7.腎臓病患者用食品組成物
本発明の食品組成物又は乾燥食品組成物はタンパク質量を低減した腎臓病患者用食品のために利用することができる。本発明の腎臓病患者用食品のタンパク質含量は、食品全重量100g当たり、10g以下であることが好ましく、5g以下であることがさらに好ましく、0.5g以下であることが最も好ましい。特別用途食品の低たんぱく質食品の規格によれば、たんぱく質含量が通常の同種の食品の含量の30%以下であると低たんぱく質食品であると表示でき(畜肉100g当たりのタンパク質量は大よそ20gである)、また健康増進法によれば、食品100g当たりのタンパク質含量が0.5g未満である場合、0gと表示できる。本発明の食品組成物ではその何れをも達成することが可能となる。なお、腎臓病患者用食品の油脂含量を、前記の油脂の添加量などを調整することによって、腎臓病患者に対するカロリー補給ができる量に調整することができる。なお、以上のものと同じ成分量の、腎臓病患者用食品以外の用途の食品組成物を供することもできる。
【0027】
8.レトルト食品
本発明の食品組成物は、密封容器内に収容し、レトルト殺菌処理を施して、レトルト食品として提供されることができる。
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらには限定されない。
【0029】
[実施例]
表中、配合量の数値は、全原料(調味料、香辛料を除く)100%に占める当該原料の質量比を、括弧内の数値は、グルコマンナン1に対する当該原料の質量比を示す。
【0030】
実施例1:油脂を除く配合例 グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:11
配合
【0031】
【表1】
【0032】
製造手順
粉体の(A)(B)(C)(D)、調味料、香辛料と(F)水とを、30分程度混合し、グルコマンナンを膨潤させると共に、(C)を作用させて糊状物をつくった。ミンチャーで2mmのメッシュから押し出して、長さは0.5〜2cm程度に成形した。これを沸騰水中で加熱(100℃5分間)した。
【0033】
性能評価
製造直後、食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった(図2参照)。
食感:畜肉特有の筋繊維のような繊維感、及び、柔かさを有した。
異味、異臭がなかった。
擬似ミンチ肉は、100gあたりのタンパク質0.1gを含んだ。
【0034】
なお、前記のように製造した糊状物をミンチャーから押し出したものは、生ミンチ肉様の性状のものであった。そして、ミンチャーから押し出した生ミンチ肉様のものを、つくね状に丸めてなべ調理に加えて食したところ、畜肉のつくね様の肉質と食感を有していた。
【0035】
実施例2: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:11
配合
【0036】
【表2】
【0037】
製造手順
粉体の(A)(B)(C)(D)、調味料、香辛料と(F)水とを、30分程度混合し、グルコマンナンを膨潤させると共に、(C)を作用させて糊状物をつくった。これに(E)を加えて混合し、ミンチャーで2mmのメッシュから押し出して、長さは0.5〜2cm程度に成形した。これを真空凍結乾燥機で凍結乾燥し、擬似ミンチ肉の乾燥物を得た。乾燥条件は、乾燥時間18時間、コールドトラップ温度‐40℃以下、真空度0.1torr以下、棚温度50℃とした。
【0038】
性能評価
湯戻し(100℃、10分間)のように調理して食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった(図3参照)。
食感:畜肉特有の筋繊維のような繊維感及び硬さ、弾力を有した。
異味、異臭がなく、肉様の風味を有した。
【0039】
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、重量100gあたりのタンパク質0.2g、脂質40 gを含んだ。なお、図19にこの擬似ミンチ肉(乾燥状態)を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像を示す。画像では不溶性食物繊維がグルコマンナンに覆われ、これによって前記肉様の性能が達成されると考えられる。
湯戻し後、重量は約3倍になった。(凍結乾燥前の重量に戻った。)
なお、前記のように製造した糊状物をミンチャーから押し出したものは、生ミンチ肉様の性状のものであった。
【0040】
比較例1: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:1
配合
【0041】
【表3】
【0042】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:ミンチ肉としては長さが短く、粒状に近かった(図14参照)。
食感:表面は柔らかくべたついており、蒟蒻に近い弾力があった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質58gを含んだ。
湯戻し後、重量は約2倍になった。
【0043】
比較例2: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:2
配合
【0044】
【表4】
【0045】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:鶏肉のミンチ状の形状をしていたが、透明感がありすぎた(図15参照)。
食感:表面、内部ともに柔らかくべたついていた。繊維感がなかった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質55gを含んだ。
湯戻し後、重量は約2.5倍になった。
【0046】
比較例3: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:3
配合
【0047】
【表5】
【0048】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:鶏肉のミンチ状の形状をしていたが、透明感がありすぎた(図16参照)。
食感:表面、内部ともに柔らかくべたついていた。繊維感がなかった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質52gを含んだ。
湯戻し後、重量は約2.5倍になった。
【0049】
実施例3: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:4
配合
【0050】
【表6】
【0051】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた(図4参照)。
食感:やや柔らかいが、筋繊維のような繊維感があり、畜肉のミンチ肉に類似していた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質50gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0052】
実施例4: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:6
配合
【0053】
【表7】
【0054】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた(図5参照)。
食感:筋繊維のような繊維感があり、畜肉のミンチ肉に類似していた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質45gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0055】
実施例5: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:14
配合
【0056】
【表8】
【0057】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた。
食感:やや硬いが畜肉特有の筋繊維のような繊維感及び硬さ、弾力を有した。
異味、異臭がなく、肉様の風味を有した。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質35gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0058】
実施例6: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:17
配合
【0059】
【表9】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた。
食感:硬いが、筋繊維のような繊維感があり、噛み応えのある畜肉の畜肉のミンチ肉に類似していた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質30gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0060】
実施例7: グルコマンナン:不溶性食物繊維 = 1:22
配合
【0061】
【表10】
【0062】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた。
食感:硬く、繊維感が強かったが、肉様の食感があった。若干、繊維由来のざらつきがみられた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質27gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0063】
実施例8: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0064】
【表11】
【0065】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉に類似していた(図6参照)。
食感:やや硬く、繊維感が強く、噛み応えがあった。若干、繊維由来のざらつきがみられた。加熱調理し、繊維感の強くなった鶏肉のミンチ肉に類似していた。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質0.2g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0066】
実施例9: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0067】
【表12】
【0068】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:透明感があり、かつ、表面に照りがあるため、調理前の鶏肉のようであった(図7参照)。
食感:柔らかく、脂を多く含んだ肉のようであった。ある程度の繊維感があった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約4倍になった。
【0069】
実施例10: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0070】
【表13】
【0071】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:透明感のある赤茶色であるが、ミンチ肉に類似した組織であった(図8参照)。
食感:非常に柔かく、脂を多く含んだ肉のようであった。ある程度の繊維感があった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0072】
実施例11: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0073】
【表14】
【0074】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:人参のような赤色であり、かつ、やや透明感があるが、ミンチ肉に類似した組織であった(図9参照)。
食感:非常に柔かい肉の食感であり、ある程度の繊維感があった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1g、脂質40gを含むものであった。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0075】
実施例12: 他の不溶性食物繊維の使用
配合
【0076】
【表15】
【0077】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった(図10参照)。
食感:やや硬く、繊維感が強かったが、肉様の食感であった。
擬似ミンチ肉(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1g、脂質40gを含むものであった。
湯戻し後、重量は約3倍になった。
【0078】
比較例4: 水溶性食物繊維の使用
配合
【0079】
【表16】
【0080】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:溶解し、形状を留めなかった(図17参照)。
【0081】
比較例5: 水溶性食物繊維の使用
配合
【0082】
【表17】
【0083】
製造手順
実施例2と同様
性能評価
実施例2と同様にして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:溶解し、形状を留めなかった(図18参照、図18では乾燥物を袋内で湯戻した後の状態を示す)。
【0084】
実施例13: 擬似ハンバーグの乾燥物
配合
【0085】
【表18】
【0086】
製造手順
粉体の(A)(B)(C)(D)、調味料、香辛料と(F)水とを、30分程度混合し、蒟蒻粉を膨潤させると共に、(C)を作用させて糊状物をつくった。これにタマネギ、(E)を加えて混合し、円盤状に成形した。真空凍結乾燥機で凍結乾燥し、擬似ハンバーグの乾燥物を得た。乾燥条件は、乾燥時間18時間、コールドトラップ温度‐40℃以下、真空度0.1torr以下、棚温度50℃とした。
【0087】
性能評価
湯戻し(100℃、10分間)のように調理して食した場合の性能は次の通りであった。
外観:カットした玉葱が多数存在するのが見え、手作り感のあるハンバーグ様の外観を有した(図11参照)。
食感:柔らかく、手作り感のあるハンバーグ様の食感を有した。豆腐ハンバーグの食感に近かった。
擬似ハンバーグ(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1.3g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。(凍結乾燥前の重量に戻った。)なお、図20にこの擬似ハンバーグ乾燥物を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像を示す。画像では不溶性食物繊維がグルコマンナンに覆われ、これによって前記ハンバーグ様の性能が達成されると考えられる。
【0088】
実施例14:擬似鶏だんごの乾燥物
配合
【0089】
【表19】
【0090】
製造手順
粉体の(A)(B)(C)(D)、調味料、香辛料と(F)水とを、30分程度混合し、蒟蒻粉を膨潤させると共に、(C)を作用させて糊状物をつくった。これに、生姜、白葱、人参、(E)を加えて混合し、径2〜3cm程度の球状に成形した。真空凍結乾燥機で凍結乾燥し、擬似鶏だんごの乾燥物を得た。乾燥条件は、乾燥時間18時間、コールドトラップ温度‐40℃以下、真空度0.1torr以下、棚温度50℃とした。
【0091】
性能評価
湯戻し(100℃、10分間)のように調理して食した場合の性能は次の通りであった。
外観:2〜3cmの球状。みじん切りにした野菜が見えることで、手作り感のある鶏団子のような外観を有した(図12参照)。
食感:やや繊維感があり、鶏の団子のような食感を有した。
擬似鶏だんご(乾燥状態)は、100gあたりのタンパク質1.3g、脂質40gを含んだ。
湯戻し後、重量は約3倍になった。(凍結乾燥前の重量に戻った。)なお、図21にこの擬似鶏だんご乾燥物を切断した断面の、電子顕微鏡による500倍観察画像を示す。画像では不溶性食物繊維がグルコマンナンに覆われ、これによって前記鶏だんご様の性能が達成されると考えられる。
【0092】
実施例15:擬似ミンチ肉を用いたレトルトカレー
配合
【0093】
【表20】
【0094】
製造手順
上記原料をレトルトパウチに充填して、120℃で25分間レトルト加熱殺菌処理を施した。
性能評価
1カ月保存後に食した場合の性能は次の通りであった。
外観:ミンチの形状は保持されていた。
カレーソースの中に擬似ミンチ肉が点在し、キーマカレーのような外観であった(図13参照)。
擬似ミンチ肉は、ソースの一部を吸収し、黄色く着色していた。
食感:鶏ミンチのような硬さ、弾力、繊維感を有した。
【0095】
実施例16: レトルト擬似ハンバーグ
配合
【0096】
【表21】
【0097】
製造手順
上記原料をレトルトパウチに充填して、120℃で25分間レトルト加熱殺菌処理を施した。
性能評価
1カ月保存後に食した場合の性能は次の通りであった。
外観:レトルト後も形状は保持できた。
煮込みハンバーグのような外観であった。ソースの一部を吸収し、茶褐色であった。
食感:非常に柔らかく煮込んだハンバーグのような食感を有する。
噛みしめると、油脂及びソースが肉汁のようにでてきた。
【0098】
実施例17: 擬似鶏だんごを用いた汁物
配合
【0099】
【表22】
【0100】
製造手順
上記原料をレトルトパウチに充填して、120℃で25分間レトルト加熱殺菌処理を施した。
性能評価
1カ月保存後に食した場合の性能は次の通りであった。
外観:レトルト後も形状は保持できた。
練りこんだ野菜の色はスタート時から変化がなかった。
食感:やや繊維感があり、鶏団子のような食感を有した。
噛みしめると、油脂及びだし汁が肉汁のようにでてきた。
【0101】
実施例18:擬似ミンチ肉の凍結物
製造手順
(D)加工澱粉(ファリネックスLCF)をコーンスターチに代える以外は、実施例2と同様にして、ミンチ肉状の成形物(凍結乾燥する前のもの)を得た。成形物は生ミンチ肉様の性状であった。前記の成形物をトレイに入れ、ブラストフリーザーで庫内温度−40℃で凍結した。凍結物は冷凍した生ミンチ肉と同様の性状であった。
【0102】
性能評価
擬似ミンチ肉の凍結物を沸騰水中で加熱(100℃、10分間)して調理し食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった。
食感:畜肉特有の筋繊維のような繊維感及び硬さ、弾力を有した。実施例2で湯戻ししたものに比べて、食感はよりソフトであった。異味、異臭がなく、肉様の風味を有した。 擬似ミンチ肉(凍結状態)は、重量100gあたりのタンパク質0.1g、脂質15 gを含んだ。
【0103】
実施例19:擬似ミートボールの凍結物
製造手順
混合物を円盤状に成形する代わりに、ミートボール状(10g/個)に成形する以外は、実施例13と同様にして、成形物(凍結乾燥する前のもの)を得た。成形物は生ミンチ肉のミートボール様の性状であった。前記の成形物をトレイに入れ、冷凍庫で庫内温度−20℃で凍結した。凍結物は冷凍したミートボールと同様の性状であった。
【0104】
性能評価
凍結した擬似ミートボールを油揚げして食した場合の性能は次の通りであった。
外観:カットした玉葱が多数存在するのが見え、手作り感のあるミートボール様の外観を有した。
食感:柔らかく、具材感と繊維感があり、手作り感のあるミートボール様の食感を有した。
擬似肉ミートボール(凍結状態)は、100gあたりのタンパク質0.5g、脂質15gを含んだ。
【0105】
実施例20:擬似ミートボールの凍結物を用いたレトルト食品
配合
【0106】
【表23】
【0107】
製造手順
凍結したままの擬似ミートボールの凍結物と中華風甘酢あんとをレトルトパウチに充填して、120℃で25分間レトルト加熱殺菌処理を施した。
性能評価
1カ月保存後に食した場合の性能は次の通りであった。
外観:ミートボールの形状は保持されていた。 中華風甘酢あんがミートボールに絡められた外観であった。
食感:畜肉のミートボールのような硬さ、弾力、繊維感を有した。実施例16で保存後に食したものに比べて、食感はよりソフトであった。
【0108】
実施例21:畜肉を混ぜて焼成した擬似ハンバーグ
製造手順
糊状物にタマネギ、(E)ラードを加える際に、さらに牛ミンチ肉以外の原料計100質量部に対して55質量部となる量の牛ミンチ肉を混合する以外は、実施例13と同様にして円盤状の成形物(凍結乾燥する前のもの)を得た。
前記の糊状物と牛ミンチ肉等を混合して成形したものは、ハンバーグ生地類似のものであった。
【0109】
性能評価
ハンバーグの調理法にしたがって、フライパンで加熱調理した場合の性能は次の通りであった。
外観:通常のハンバーグと同様の外観であった。
食感:ハンバーグ類似の組織、食感を有し、牛肉の味を含む美味なものであった。
【0110】
実施例22:擬似ミンチ肉の凍結物
製造手順
実施例1と同様にしてミンチャーから押し出した成形物(沸騰水中で加熱する前のもの)を得、上記成形物を100℃で10分間蒸煮した後、室温にまで冷却したものを、冷凍庫で庫内温度−20℃で凍結した。
【0111】
性能評価
擬似ミンチ肉の凍結物を沸騰水中で加熱(100℃、10分間)して調理し食した場合の性能は次の通りであった。
外観:畜肉のミンチ肉様の形状、色であった。
食感:畜肉特有の筋繊維のような繊維感、及び、柔かさを有した。
異味、異臭がなかった。
擬似ミンチ肉は、100gあたりのタンパク質0.1gを含んだ。
【0112】
実施例23:他の混合方法
実施例1〜22、比較例1〜5のそれぞれにおいて所定の原料を30分程度混合することによりグルコマンナンの膨潤とアルカリ性凝固剤の作用を進行させる工程に代えて、所定の原料の混合物を5分間攪拌して混合し、次いで約30分間静置することにより、グルコマンナンの膨潤とアルカリ性凝固剤の作用を進行させる工程を行った以外は、実施例1〜22、比較例1〜5と同様の手順で試料の製造及び評価を行った。すると、それぞれ実施例1〜22、比較例1〜5と同様の結果が得られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物により調製される食品組成物。
【請求項2】
前記混合物が、前記コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部の水を含む、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
前記混合物が澱粉を更に含む、請求項1又は2に記載の食品組成物。
【請求項4】
前記混合物が油脂を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の食品組成物。
【請求項5】
粒状、球状、紐状、又は板状に成形されたものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の食品組成物。
【請求項6】
前記混合物を加熱するか、前記混合物を凍結するか、前記混合物を乾燥するか、或いは、これらの処理の2つ以上により前記混合物を処理することにより調製される、請求項1〜5のいずれか1項記載の食品組成物。
【請求項7】
前記混合物を乾燥し、更に、得られた乾燥物を水和復元して調製される、請求項6記載の食品組成物。
【請求項8】
タンパク質含量が100g当り10g以下である、請求項1〜6のいずれか1項記載の食品組成物。
【請求項9】
タンパク質含量が100g当り10g以下である、請求項7記載の食品組成物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項記載の食品組成物を含む、腎臓病患者用食品。
【請求項11】
請求項7記載の食品組成物を含む、腎臓病患者用食品。
【請求項12】
水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物を形成する工程を含む、食品組成物の製造方法。
【請求項13】
前記混合物が、前記コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部の水を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記食品組成物を粒状、球状、紐状、又は板状に成形する工程を更に含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物を加熱する工程、前記混合物を凍結する工程、及び前記混合物を乾燥する工程から選択される少なくとも1つの工程を更に含む、請求項12〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記混合物を乾燥する工程を含み、更に、該工程で得られた乾燥物を水和復元する工程を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記水和復元する工程が、前記乾燥物を温水中に漬ける工程、水中で煮る工程、又は水蒸気により蒸す工程である、請求項16に記載の方法。
【請求項1】
水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物により調製される食品組成物。
【請求項2】
前記混合物が、前記コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部の水を含む、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
前記混合物が澱粉を更に含む、請求項1又は2に記載の食品組成物。
【請求項4】
前記混合物が油脂を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の食品組成物。
【請求項5】
粒状、球状、紐状、又は板状に成形されたものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の食品組成物。
【請求項6】
前記混合物を加熱するか、前記混合物を凍結するか、前記混合物を乾燥するか、或いは、これらの処理の2つ以上により前記混合物を処理することにより調製される、請求項1〜5のいずれか1項記載の食品組成物。
【請求項7】
前記混合物を乾燥し、更に、得られた乾燥物を水和復元して調製される、請求項6記載の食品組成物。
【請求項8】
タンパク質含量が100g当り10g以下である、請求項1〜6のいずれか1項記載の食品組成物。
【請求項9】
タンパク質含量が100g当り10g以下である、請求項7記載の食品組成物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項記載の食品組成物を含む、腎臓病患者用食品。
【請求項11】
請求項7記載の食品組成物を含む、腎臓病患者用食品。
【請求項12】
水和膨潤した状態のコンニャク原料と、該コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して4〜40重量部(乾燥物基準)の水不溶性食物繊維と、アルカリ性凝固剤とを含む混合物を形成する工程を含む、食品組成物の製造方法。
【請求項13】
前記混合物が、前記コンニャク原料中のグルコマンナン1重量部(乾燥物基準)に対して10〜1000重量部の水を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記食品組成物を粒状、球状、紐状、又は板状に成形する工程を更に含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物を加熱する工程、前記混合物を凍結する工程、及び前記混合物を乾燥する工程から選択される少なくとも1つの工程を更に含む、請求項12〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記混合物を乾燥する工程を含み、更に、該工程で得られた乾燥物を水和復元する工程を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記水和復元する工程が、前記乾燥物を温水中に漬ける工程、水中で煮る工程、又は水蒸気により蒸す工程である、請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−41994(P2010−41994A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146639(P2009−146639)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】
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