説明

食品製造用の加熱・搬送装置

【課題】食品製造対象物に搬送過程で精細な温度勾配制御を施して食品製造対象物を加熱することができる乾熱加熱方式の食品製造用の加熱・搬送装置を提供する。
【解決手段】食品製造の対象物を搬送しながら加熱処理する食品製造用の加熱・搬送装置において、対象物を順次搬送ライン上に乗せて間欠送りする間欠送り機構と、搬送ラインに沿って複数設けられ、間欠送りのインターバルに対象物を挟んで加熱する複数の加熱器と、複数の加熱器に対象物を挟むための動作を与える駆動機構と、間欠送りのインターバル及び加熱器の挟み動作を制御すると共に、複数の加熱器を個別に温度制御する制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を製造するための装置において、製造対象となる食品の加熱・搬送を行う食品製造用の加熱・搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造対象とする食品(例えば、食肉加工品)を搬送ライン上で直に挟持し、IHヒータ(電磁誘導加熱器)により加熱処理して食品を大量生産するための装置がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
一方、パスタ等の乾麺を水と共に密封状態でパックし、その包装パックを高温の湯槽に入れて茹でることにより、乾麺をアルデンテ(固ゆで)状態に茹で上げる方法(パスタ早茹で麺の製造方法)がある(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
パスタのような乾麺を早茹でし、茹で麺の仕上がり(味や食感)を良くするには、加熱ステップを何回か繰り返し、また、そのステップごとに温度を変えて加熱している。そのため、乾麺の加熱する際、その加熱温度には精細な温度勾配制御が要求される。
【0005】
【特許文献1】特開2002−373770号公報
【特許文献2】特開平9−215605号公報
【特許文献3】特開平7−4817号公報
【特許文献4】特許第3634116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のパスタ早茹で麺製造装置では、麺と水とを収容した密封パックを湯槽に入れて茹でるため、大量のお湯を使用することになる。そのため、大量の湯を熱するために消費される熱量は多大なものとなり、また、使用後の排水の環境的な配慮が必要となる。そこで、大量の湯を要しない乾式加熱(ドライ式加熱)により、麺等の食品製造の対象物を加熱する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、例えば、上述した食肉加工品等の加熱に用いられる乾式加熱の食品加熱装置は、加熱対象物が加熱手段に非接触或いは接触して連続搬送されるため、加熱対象物に付与される温度勾配は一定となり、加熱対象物に搬送過程で数段階の異なる温度勾配を付与して順次加熱することは難しい。特に、乾麺等の加熱処理には、精細な温度勾配制御が必要であり、上述の加熱製造装置を乾麺の加熱処理に適用しても、茹であがった麺の仕上がり(味や食感)を良好なものとするためには、温度と時間の設定に相当な難しさがある。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、食品製造対象物に搬送過程で精細な温度勾配制御を施して食品製造対象物を加熱することができる乾熱加熱方式の食品製造用の加熱・搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく本発明に係る食品製造用の加熱・搬送装置は、食品製造の対象物を搬送しながら加熱処理する食品製造用の加熱・搬送装置において、前記対象物を順次搬送ライン上に乗せて間欠送りする間欠送り機構と、前記搬送ラインに沿って複数設けられ、前記間欠送りのインターバルに前記対象物を挟んで加熱する複数の加熱器と、前記複数の加熱器に前記対象物を挟むための動作を与える駆動機構と、前記間欠送りのインターバル及び前記加熱器の挟み動作を制御すると共に、前記複数の加熱器を個別に温度制御する制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食品製造対象物に搬送過程で精細な温度勾配制御を施して食品製造対象物を乾式加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1及び図2は、本実施形態の食品製造用の加熱・搬送装置の構成を示す概略図であり、図1は搬送時の状態を示し、図2は加熱時の状態を示している。
【0013】
本実施形態では、食品製造の対象物(以下、「加熱対象物」と称する)5をパスタ等の乾麺としている。より具体的には、加熱対象物5は、乾麺51と水52が一緒に樹脂製パック53内に密封されている(詳細は図3参照)。
【0014】
なお、本加熱・搬送装置は、図示しない他の食品製造装置(例えば、食品冷却装置、包装装置等)の製造ラインの延長上に配置されて使用される。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の加熱・搬送装置は、加熱対象物5を間欠送りする間欠送り機構と、間欠送りのインターバル時に加熱対象物5を挟んで加熱する上下複数対の加熱器2(21〜24),3(31〜34)と、対の加熱器2,3に加熱対象物5を挟む動作を与える挟持機構(駆動機構)9と、間欠送り機構のインターバル、挟持機構9の動作及び複数の加熱器2,3の温度を各対ごとに個別に制御する制御手段4とを備える。
【0016】
間欠送り機構は、2つの搬送ドラム6,7と、その2つの搬送ドラム6,7間に移動可能に架け渡された搬送ベルト1と、搬送ドラムの一方である駆動ドラム6を回転させるモータ(例えば、サーボモータ)12と、そのモータ12を駆動させる駆動回路11とで構成されている。
【0017】
搬送ベルト1の張架部分の上面は、加熱対象物5の搬送面(搬送ライン)となっている。搬送ベルト1の間欠送り速度やインターバル時間は、制御手段4でコントロールされ、駆動回路11を介してモータを駆動12し、ドラム6の回転となって伝達される。搬送ベルト1は、耐熱性及び熱伝導性に優れ、摩擦が大きい材料で形成されるのが好ましい。
【0018】
また、搬送ベルト1は、間欠送りのインターバル時に、加熱器2,3の加熱対象物5への挟み動作解除後に前進、後退による揺さぶり動作を行うように制御される。具体的には、駆動用の搬送ドラム6を小刻みに正回転、逆回転させ、搬送ベルト1を前後移動させる。これにより、搬送ベルト1上の加熱対象物5は前後に揺動する。
【0019】
複数対の加熱器2,3は、電熱ヒータ(IHヒータ或いは抵抗電熱ヒータ)である。複数対の加熱器2,3は、搬送ベルト1に沿って、かつ、搬送ベルト(搬送面)1の上方及び下方に配置される。上方の加熱器3と下方の加熱器2は、互いにヒータ面が対向し、搬送ベルト1を挟んで対をなす。複数対の加熱器2,3は、間欠送りのインターバル時に、加熱対象物5を上下方向から挟持して加熱する挟持機構9を有する。具体的には、挟持機構9は、上方の加熱器3を昇降装置部8により上下移動可能に保持する機構であり、制御手段4の命令に基づき駆動回路10により昇降(上下移動)制御される。加熱器3は、挟持機構9の上下移動により、加熱対象物5の搬送時には搬送ベルト1から間隔hを隔てて上方に位置し、図2に示すように、インターバル時には加熱対象物の上面に接するまで下降する。搬送ベルト下方の加熱器2は、搬送ベルト1の内側(搬送面の下)に、搬送ベルト1とほぼ接して固定配置されている。挟持機構9となる昇降装置としては、モータを利用したピニオン・ラック機構、ボールスクリュー機構、或いはカム機構等がある。駆動回路10は、昇降装置の駆動回路の他に加熱器2,3のヒータ駆動回路を含んでいる。
【0020】
各加熱器2,3は、制御手段4でコントロールされるヒータ駆動回路10を介して温度制御される。本実施形態では、互いに対をなす上方の加熱器3と下方の加熱器2は、同じ温度に設定される。また、対ごとに異なる温度制御が可能である。
【0021】
駆動回路10は、1対の加熱器2,3ごとに設けられる。なお、1対の加熱器2,3が配置された搬送ライン上の各位置を搬送上流側から順次第1ステーション、第2ステーション…と称する。図では4対の加熱器21〜24,31〜34が配置され、ステーション数を4としているが、ステーションは5つ以上設けられてもよく、また、3つ以下でもよい。ステーション(加熱器2,3及び回路10)を増設した場合、より大量の食品製造を早く行うことができる。
【0022】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0023】
図3(a)に示すように、搬送ベルト1上に搬送された加熱対象物5は、間欠送り制御され、各ステーションにおいて加熱対象物が1対の加熱器2,3間に位置決めされて所定時間停止する(インターバル)。加熱対象物5がそれぞれ各ステーションで停止すると、図2に示すように、上方の加熱器3は加熱対象物5の上面に接触するまで下降し、加熱対象物5は上方の加熱器3と下方の加熱器2とに挟持された状態になる。各加熱器2,3の温度は、制御手段4によりコントロールされ、駆動回路10のヒータ駆動電流によって一定の温度に保たれている。
【0024】
これにより、各ステーションでは、加熱対象物5は、上下の加熱器2,3に挟まれて一定時間、一定温度下で加熱される。このとき、加熱対象物5は、両加熱器2,3からの距離が殆どないので、熱伝達効率よく加熱され、加熱対象物間の温度ばらつきがない。
【0025】
ただし、図3(b)に示すように、個々の加熱対象物5においては、加熱器側の表面部分A、側面部分B、中心部分Cで温度が異なる温度分布が生じている(図3(b)中、点線は等温線を示す)。そこで、上方の加熱器3を上昇させて加熱対象物5から離間させた後、搬送ベルト1を前後方向に交互に数回移動させ、搬送ベルト1上の加熱対象物5を揺さぶる。加熱対象物5への揺さぶりより、図3(c)に示すように、包装パック53内の湯水52が攪拌され、包装パック53内の温度分布が均一化される。なお、図3(a)〜図3(c)に示すように、加熱対象物5が乾麺等の麺51の場合、麺の芯方向が搬送ライン方向と垂直になるように配置すると、加熱対象物5の揺動による攪拌の効果が大きい。
【0026】
加熱対象物5は、加熱、攪拌された後、次のステーションに間欠送りされ、再び加熱処理される。
【0027】
図4は、加熱対象物5の加熱時間と温度Tとの関係を示すグラフである。本実施形態の加熱・搬送装置では、第1ステーションの加熱器21,31は温度θ1に設定され、第2ステーションの加熱器22,32は温度θ2に設定されている。第3、第4ステーションの加熱器23,33や24,34もそれぞれ麺の茹で上げ条件に応じて独自の温度に設定される。なお、これらの温度設定条件は様々であり、特に数値的に限定するものではない任意性のものである。各ステーションにおける加熱時間tはいずれも等しい。図4に示すように、加熱対象物5は第1ステーションで高い加熱温度で加熱され、第2ステーションでは前ステーションでの加熱よりも低い温度で加熱される(図中、実線)。すなわち、加熱対象物5は、第1ステーションでは急な温度上昇勾配が付与され、第2ステーションでは緩やかな温度上昇勾配が付与されている。第3、第4ステーションでも所望の温度上昇勾配が付与される。なお、図中、破線で示される従来の一般的な加熱・搬送装置では、加熱されながら連続搬送されているので、温度勾配を時間に関係なく任意に設定することが難しい。
【0028】
このように、本加熱・搬送装置は、ステーションごとに加熱温度を設定可能な構成としているので、例えば、1ライン上で急加熱後に徐加熱する或いは加熱休止といった、精細な温度勾配制御を加熱対象物5に施すことができる。本実施形態のように加熱対象物5が麺である場合、個別に温度設定された各加熱器2,3で順次、温度勾配制御されて加熱されるので、仕上がり(味や食感)が良好な茹で麺を得ることができる。
【0029】
以上、本実施形態の加熱・搬送装置によれば、加熱対象物5を間欠送りし、そのインターバル間に加熱対象物5を加熱器2,3に直接接触させて加熱し、かつ、複数の加熱器2,3の加熱温度を各々設定する構成とすることにより、温度勾配制御を行って加熱対象物を加熱することができる。したがって、デリケートな温度勾配制御を要する食品を、良好な仕上がりで大量生産することができる。また、本装置は、加熱器2,3を用いた乾式加熱により食品を加熱するので、大量のお湯を要することがなく、低コストで製造でき、環境にも配慮されたものである。また、インターバル時の加熱直後に、搬送ベルト1を交互に前進後退させることで加熱対象物5に揺動を付与し、加熱対象物5内部を攪拌させることにより加熱対象物5の温度分布を均一にすることができる。
【0030】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定される。例えば、搬送ベルト1の搬送面には、加熱対象物5の攪拌時の位置ずれを防止するストッパを設けてもよい。
【0031】
本実施形態では、加熱対象物5を攪拌するに際して、搬送ベルト1を交互に前進後退させる構成としたが、他に、加熱対象物5を挟持する一対の加熱器2,3を上下、前後、及び左右のうち少なくとも一方向に移動させて、加熱対象物5を攪拌してもよい。その場合、下方の加熱器2には、上方の加熱器3と連動して上下移動させる機構を設ける(図示せず)。また、1対の加熱器2,3による加熱後、上方の加熱器3を上下移動させて(図3(c)参照)、加熱対象物5の上面に断続的な押圧力を与え、密封容器53内の水を攪拌するようにしてもよい。
【0032】
加熱器2,3の上下移動により、加熱対象物5を攪拌させる場合、加熱と攪拌とを同時に行うようにしてもよい。
【0033】
本加熱・搬送装置において、加熱器2,3の代わりに冷却手段を設け、冷却・搬送装置として利用することもできる。
【0034】
また、加熱対象物は、麺以外の食品についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る一実施形態の加熱・搬送装置において、間欠送り時の状態を示す概略構成図である。
【図2】図1の加熱・搬送装置において、加熱時の状態を示す概略図である。
【図3】加熱対象物の攪拌による温度均一化を説明するための断面図である。
【図4】加熱対象物の温度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1:搬送ベルト
2,3:加熱器
4:制御手段
5:加熱対象物
9:挟持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品製造の対象物を搬送しながら加熱処理する食品製造用の加熱・搬送装置において、
前記対象物を順次搬送ライン上に乗せて間欠送りする間欠送り機構と、
前記搬送ラインに沿って複数設けられ、前記間欠送りのインターバルに前記対象物を挟んで加熱する複数の加熱器と、
前記複数の加熱器に前記対象物を挟むための動作を与える駆動機構と、
前記間欠送りのインターバル及び前記加熱器の挟み動作を制御すると共に、前記複数の加熱器を個別に温度制御する制御手段とを備えたことを特徴とする食品製造用の加熱・搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の食品製造用の加熱・搬送装置において、前記対象物は、茹で上げ対象の麺及び茹で上げに用いる水がパックに密封されたものである食品製造用の加熱・搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の食品製造用の加熱・搬送装置において、前記複数の加熱器の各々は、前記搬送ラインを形成する搬送ベルトを挟んで上下に対向した対の加熱器よりなり、前記対をなす加熱器の一方が前記搬送ベルトの下側に固定され、他方が前記搬送ベルトの上側で前記駆動機構を介して上下移動可能に保持されている食品製造用の加熱・搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の食品製造用の加熱・搬送装置において、前記間欠送り機構は、前記間欠送りのインターバル時に、前記加熱器の前記対象物への挟み動作を解除した後、前記搬送ラインを形成する搬送ベルトを前後移動させて前記対象物を外部から揺さぶる機構を有する食品製造用の加熱・搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の食品製造用の加熱・搬送装置において、前記間欠送りのインターバル時に、前記加熱器に挟み動作を与える前記駆動機構を介して前記対象物を上下、前後、及び左右のうち少なくとも一方向に揺さぶる機構を有する食品製造用の加熱・搬送装置。
【請求項6】
請求項3記載の食品製造用の加熱・搬送装置において、前記間欠送りのインターバル時に、前記対の加熱器の上側の加熱器を上下方向に数回移動させて前記対象物の上面に断続的な押圧力を与える機構を有する食品製造用の加熱・搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−268662(P2009−268662A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121061(P2008−121061)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(390006127)日立設備エンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】