説明

食器洗浄機用液体洗浄剤組成物

【課題】タンパク汚れ、油汚れ等に対する洗浄力が良好で、且つ繰り返し使用などによる茶渋汚れ等、色素汚れの発生を防止できる食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】重量平均分子量が5000〜10万であり、カチオン性モノマーに由来する構造単位を含む高分子化合物(A)と、アルケニルコハク酸金属塩(B)とを含有する食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗浄機は汚れた皿、グラス、料理器具などの食器を洗浄する設備であり、家庭やレストラン、喫茶店などの厨房で使用されている。通常、食器洗浄は洗浄工程―濯ぎ工程の順で行われ、洗浄工程には手洗い用食器洗浄剤と異なる、無泡性或いは低泡性の食器洗浄機用洗浄剤が使用されている。また、レストラン、喫茶店などの厨房で使用されている業務用食器洗浄機には濯ぎ工程でリンス剤が使用されている。
【0003】
食器洗浄機用洗浄剤には、ウォータースポットの低減などを目的として、表面親水化のための高分子化合物を配合することが知られている。例えば、特許文献1、2には、カチオン性モノマーに由来する構造単位を含む高分子化合物と、ノニオン性界面活性剤とを併用することで、リンス剤を用いることなく、汚れの除去、食器の乾燥促進、ウォータースポットの低減等を可能とする食器洗浄機用洗浄剤組成物が提供できることが開示されている。
【特許文献1】特開2007−99811号公報、
【特許文献2】特開2007−119753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表面親水化高分子化合物を配合した食器洗浄機用洗浄剤で洗浄した食器は、当該高分子化合物の種類(分子量、構成単量体など)によっては、繰り返し使用すると、茶渋汚れ等、色素汚れが発生することがあることが判明した。特許文献1、2で用いられている高分子化合物は、これを用いることでウォータースポットを低減でき、リンス剤が不要になるなど、有用な成分であるので、かかる高分子化合物を配合した系で、繰り返し使用により顕在化する茶渋汚れ等、色素汚れの発生を防止できることが望まれる。その際、タンパク汚れ、油汚れといった他の汚れに対する洗浄力も良好であることが必要である。
【0005】
本発明の課題は、タンパク汚れ、油汚れ等に対する洗浄力が良好で、且つ繰り返し使用などによる茶渋汚れ等、色素汚れの発生を防止できる食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重量平均分子量が5000〜10万であり、カチオン性モノマーに由来する構造単位を含む高分子化合物(A)〔以下、(A)成分という〕と、アルケニルコハク酸金属塩(B)〔以下、(B)成分という〕とを含有する食器洗浄機用液体洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タンパク汚れ、油汚れ等に対する洗浄力が良好で、且つ繰り返し使用などによる茶渋汚れ等、色素汚れの発生を防止できる食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<(A)成分>
(A)成分を構成するカチオン性モノマーはカチオン性基を有するビニル系モノマーであり、アミノ基及び4級アンモニウム基から選ばれる基を少なくとも1種有するモノマーが好ましい。更には、下記式(I)で表されるカチオン性モノマー及び/又は下記式(II)で表されるカチオン性モノマーに由来する構造単位を高分子化合物が好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中、R1、R2、R3、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は炭素数1〜3のアルキル基である。X、Yは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR12−、−CONHR12−、−OCOR12−、−R13−OCO−R12−から選ばれる基である。ここでR12、R13は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR12C=C(R3)−X−である。R5は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ベンジル基であり、R6はヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又はベンジル基であり、R6がアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基の場合は、Z-は陰イオンを示す。R6がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基を含む場合、Z-は存在せず、R6中のこれらの基は陰イオンとなる。Z-の陰イオンとしては、たとえばハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸イオン、ヒドロキシイオンを挙げることができる。R10は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR78C=C(R9)−Y−である。R11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【0011】
式(I)の化合物として具体的に好ましいものはアクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N−(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩が好適であり、特にジアリルジメチルアンモニウム塩が良好である。
【0012】
式(II)の化合物として具体的に好ましいものはアクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、N−(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N−アルキル(炭素数1〜3)アミン、アリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミンが好適であり、特に、アリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)アミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシエチル−N,N−ジメチルアミンが良好である。
【0013】
式(I)及び/又は式(II)に由来する構造単位は、全モノマー単位に対して10〜99モル%の割合で含まれることが好ましい。より好ましくは20〜99モル%、更に好ましくは30〜90モル%の割合で含まれる。
【0014】
本発明の(A)成分は、アニオン性モノマーに由来する構造単位を含むことができ、その場合、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーのモル比が、カチオン性モノマー/アニオン性モノマー=10/90〜90/10、更に30/70〜90/10、特に50/50〜80/20であることが好ましい。アニオン性モノマーとしては、下記(i)から選ばれるモノマーが挙げられる。
【0015】
(i)アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸塩、スルホプロピルメタクリレート、リン酸モノ−ω−メタクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜12)から選ばれる化合物
【0016】
また、本発明の(A)成分は、ノニオン性モノマーに由来する構造単位を含むこともできる。ノニオン性モノマーとしては、下記(ii)〜(iv)から選ばれるモノマーが挙げられる。
【0017】
(ii)アクリル(又はメタクリル)アミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアクリル(又はメタクリル)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノメチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドンから選ばれるアミド基含有化合物
【0018】
(iii)アクリル酸(又はメタクリル酸)アルキル(炭素数1〜5)、アクリル酸(又はメタクリル酸)2−ヒドロキシエチル、アクリル酸(又はメタクリル酸)−N,N−ジメチルアミノアルキル(炭素数1〜5)、酢酸ビニルから選ばれるエステル基含有化合物
【0019】
(iv)エチレン、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、n−ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、n−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンから選ばれるオレフィン系化合物
【0020】
これらの中でも特に仕上がり性の観点から(i)又は(ii)のモノマー由来のモノマー単位が好ましく、中でも(i)のモノマー由来のモノマー単位が最も好ましく、これらの中でもアクリル酸またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩、メタクリル酸またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩、マレイン酸またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩が好ましい。ここで(i)のモノマー由来のモノマー単位の対イオンは、含有する重合体のカチオン基部分であっても良い。
【0021】
本発明の(A)成分は、カチオン性モノマーに由来する構造単位とアニオン性モノマーに由来する構造単位のみを構造単位として含むことが好ましい。カチオン性モノマーとアニオン性モノマーのモル比は、表面吸着力の観点から、カチオン性モノマー/アニオン性モノマー=10/90〜90/10、更に30/70〜90/10、より更に50/50〜80/20、特に50/50〜70/30が好ましい。
【0022】
本発明の(A)成分は、仕上がり性及び色素汚れの発生抑制の観点から、重量平均分子量が5000〜10万であり、好ましくは7000〜90000、さらに好ましくは10000〜80000、特に好ましくは20000〜60000であり、この重量平均分子量はアセトニトリルと水の混合溶媒(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリエチレングリコールを標準物質として求めたものである。
【0023】
(A)成分は、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー、ノニオン性モノマーが、重合体中の主鎖または側鎖のいずれに存在していても構わない。これらはランダム重合したもの、ブロック重合したものでも、グラフト重合したものなどでも構わない。
【0024】
本発明の(A)成分は、式(I)で表されるカチオン性モノマーに由来する構造単位を含む高分子化合物が好ましく、中でもジアリルジメチルアンモニウム塩に由来する構造単位を有する高分子化合物が好ましく、特にジアリルジメチルアンモニウム塩とアクリル酸塩の共重合高分子化合物、又はジアリルジメチルアンモニウム塩、アクリル酸塩、アクリルアミドの共重合高分子化合物が好ましい。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分のアルケニルコハク酸金属塩は、炭素数8〜22、更に炭素数10〜16のアルケニル基を有するものが好ましい。また、金属塩は、カリウム塩、ナトリウム塩が挙げられ、カリウム塩が好ましく、モノ塩、ジ塩でもよく、ジ塩が好ましい。(B)成分としては、炭素数12〜14のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸ジカリウム塩が好ましい。
【0026】
<食器洗浄機用液体洗浄剤組成物>
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、(A)成分と(B)成分の重量比が、(A)/(B)=1/5〜5/1、更に1/3〜3/1、より更に1/3〜2/1であることが、タンパク汚れの洗浄性及び色素汚れの発生抑制の観点から好ましい。
【0027】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、(A)成分を、仕上がり性及び色素汚れの発生抑制の観点から、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%、更に好ましくは0.5〜2重量%、より更に好ましくは0.5〜1.5重量%含有する。
【0028】
また、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、(B)成分を、タンパク汚れの洗浄性及び色素汚れの発生抑制の観点から、好ましくは0.2〜6重量%、より好ましくは0.2〜5重量%、更に好ましくは0.5〜4重量%、より更に好ましくは1〜3重量%含有する。
【0029】
また、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の残部は通常、水である。本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、原液又は1重量%濃度の水溶液のpHが、25℃で10〜13、更に11〜12であることが好ましい。
【0030】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、ビルダーと称される化合物を含有することができる。ビルダーの作用機構としては、金属キレート作用、アルカリ緩衝作用、及び固体粒子分散作用が重要である。
【0031】
無機ビルダーとしては、リン酸塩、炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩が挙げられる。具体的には、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、オルソリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウムなどが挙げられる。また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物も挙げられる。
【0032】
有機ビルダーとしては、(イ)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,2−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸などのホスホン酸の塩、(ロ)2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸などのホスホノカルボン酸の塩、(ハ)アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸の塩、(ニ)、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩などのアミノポリ酢酸塩、(ホ)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−2,2,5,5−テトラカルボン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、スルホコハク酸、リンゴ酸、グルコン酸などの有機酸の塩、(ヘ)ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸/ポリマレイン酸共重合高分子化合物及びその塩などが挙げられる。
【0033】
洗浄性、イオン封鎖性、再汚染防止性の観点から、全ビルダー量は本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物に対して、好ましくは5〜99.9重量%、更に好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。
【0034】
その他、(B)成分以外のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、酵素、漂白剤、消泡剤、防錆剤、ハイドロトロープ剤、表面改質剤、香料などを含有することができる。
【0035】
上記の成分は、国際公開第99/58633号パンフレットに記載されているものを参照できる。
【0036】
また、ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンオキシエチレンオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0037】
洗浄性の観点から、下記一般式(III)で表されるノニオン性界面活性剤〔以下、(C1)成分という〕が好適に用いられる。
14−(AO)n−R15 (III)
〔式中、R14、R15は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜24の炭化水素基である。nは平均付加モル数であり、1〜500の数である。AOは同一又は異なってオキシエチレン基、オキシプロピレン基、又はオキシブチレン基である。〕
【0038】
(C1)成分の一般式(III)中、R14、R15はそれぞれ独立して、好ましくは水素原子、又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜24のアルキル基、より好ましくは水素原子、又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数6〜18のアルキル基、特に好ましくは水素原子、又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜14のアルキル基である。また、一般式(III)中、nは平均付加モル数であり、好ましくは1〜400、より好ましくは1〜350、更に好ましくは1〜200、特に好ましくは1〜100の数である。また、一般式(III)中、AOは同一又は異なって、好ましくはエチレン基、プロピレン基である。
【0039】
更に、洗浄性、無泡性や低泡性の観点から、下記一般式(IV)で表されるノニオン活性剤、及び一般式(V)で表されるノニオン性界面活性剤から選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤〔以下、(C2)成分という〕が好ましい。
HO(CH2CH2O)a(CH(CH3)CH2O)b(CH2CH2O)cH (IV)
HO(CH(CH3)CH2O)d(CH2CH2O)e(CH(CH3)CH2O)fH (V)
〔式中、a、b、c、d、e及びfは平均付加モル数であり、それぞれ独立して、1〜350の数である。〕
【0040】
一般式(IV)、(V)において、a、b、c、d、e及びfは、エチレンオキシド(以下、EOと表記する)ないしプロピレンオキシド(以下、POと表記する)の平均付加モル数であり、それぞれ独立して、1〜350の数である。
【0041】
(C2)成分は、何れも、EOとPOの合計中、EOを10モル%以上含むことが好ましく、これを満たすようにa、b、c、d、e及びfを選定することが好ましい。
【0042】
また、(C2)成分の重量平均分子量は、1,000〜15,000が好ましく、より好ましくは1,500〜6,000である。(C2)成分は、「プルロニック」、「プルロニックR」の商品名でBASF社から入手可能である。(B2)成分としては、低泡性の観点から、式(V)のノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0043】
又、仕上がり性の観点から、下記一般式(VI)で表されるノニオン活性剤、及び一般式(VII)で表されるノニオン性界面活性剤から選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤〔以下、(C3)成分という〕が好ましい。
16−O−(EO)p−(PO)q−(EO)r−H (VI)
〔式中、R16は炭素数8〜18の直鎖のアルキル基又は直鎖のアルケニル基を示し、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。p、q、rはそれぞれ平均付加モル数を表し、p=1〜10、q=0.5〜5、r=1〜10である。〕
17−O−(EO)s−(PO)t−H (VII)
〔式中、R17は炭素数8〜18の分岐鎖のアルキル基もしくは分岐鎖のアルケニル基を示し、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。s、tはそれぞれ平均付加モル数を表し、s=4〜10、t=2〜10であり、0.3≦(t/s)≦1.5である。〕
【0044】
一般式(VI)において、R16は炭素数10〜14の直鎖のアルキル基又は直鎖のアルケニル基、更に炭素数10〜14の直鎖のアルキル基が好ましく、p=2〜8が好ましく、q=0.5〜4.5、更に1〜4.5、特に1〜2が好ましく、r=2〜8が好ましく、p+r=1〜30、更に2〜20、特に4〜15が好ましい。一般式(VI)の非イオン界面活性剤の具体例として、ポリオキシエチレン(3)ポリオキシプロピレン(1.5)ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ポリオキシプロピレン(1.5)ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ポリオキシプロピレン(4.5)ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル等が挙げられる。ここで、当該化合物に関し( )内はエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの平均付加モル数である(以下同様)。
【0045】
一般式(VII)において、R17は炭素数10〜14の分岐鎖のアルキル基又は分岐鎖のアルケニル基、更に炭素数10〜14の分岐鎖のアルキル基が好ましい。また、R17の炭素数10〜14の分岐鎖のアルキル基又は分岐鎖のアルケニル基の中でも、炭素数10〜14の2級アルキル基又は2級アルケニル基が好ましい。一般式(VII)中、s=5〜9が好ましく、t=5〜10が好ましい。一般式(VII)の非イオン界面活性剤の具体例として、ポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(8.5)−sec−ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(8.5)−sec−トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(8.5)−sec−テトラデシルエーテル等が挙げられる。
【0046】
また、一般式(VII)の化合物は、R17の分岐鎖(好ましくは2級)アルキル基又は分岐鎖(好ましくは2級)アルケニル基を有する分岐鎖(好ましくは2級)アルコールにEOを付加した後、POを付加することで合成できる。
【0047】
また、(C3)成分の重量平均分子量は、200〜5,000が好ましく、より好ましくは200〜2,000である。(C3)成分の中で、一般式(VI)の化合物は「エマルゲン」の商品名で花王(株)から入手可能であり、一般式(VII)の化合物は「ソフタノール」の商品名で日本触媒(株)から入手可能である。(C3)成分としては、仕上がり性の観点から、一般式(VI)のノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0048】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、使用にあっては水等で適当な濃度に希釈した洗浄液として用いられることが好ましく、かかる洗浄液中の(A)成分の濃度は、仕上がり性及び色素汚れの発生抑制の観点から、好ましくは2〜50ppm(重量比)、より好ましくは3〜50ppm、更に好ましくは5〜40ppm、特に好ましくは5〜30ppmである。また、かかる洗浄液中の(B)成分の濃度は、タンパク汚れの洗浄性及び色素汚れの発生抑制の観点から、好ましくは2〜60ppm(重量比)、より好ましくは3〜60ppm、更に好ましくは5〜50ppm、特に好ましくは10〜40ppmである。
【0049】
本発明は、食器洗浄機で使用するための液体洗浄剤組成物に関するものである。特に業務用の食器洗浄機で使用するための洗浄剤組成物に関するものである。本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、リンス剤を用いなくても、陶磁器、ガラス、プラスチックなどの食器の洗浄において、汚れの除去と同時に食器やグラスの乾燥を速め、ウォータースポットの低減を可能にする。また、処理された食器を繰り返し使用しても、茶渋汚れ等、色素汚れが発生せず、美麗な使用感を維持できる。
【0050】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を用いた業務用食器洗浄機による洗浄の際には、該組成物は、供給装置によって業務用食器洗浄機内部に一定量任意に移送され、適正な洗浄液の濃度が維持される。食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、業務用食器洗浄機専用のチューブを食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が充填されたプラスチック等の容器の中に直接差し込み吸い上げられて、業務用食器洗浄機内部へ供給される。
【0051】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、洗浄液中の濃度が0.05〜0.5重量%で使用されるが、経済性、洗浄性の観点から、0.05〜0.3重量%が好ましく、さらに0.05〜0.2重量%が好ましい。食器の洗浄時間は、洗浄性の観点から、10秒〜3分が好ましく、さらに好ましくは、20秒〜2分である。洗浄液の洗浄温度は、短時間での洗浄性を高めるためには、非常に重要で40℃以上が好ましく、特に40〜70℃が好ましい。食器は洗浄された後、通常、同じ業務用食器洗浄機にて速やかに60〜90℃の温水で濯ぎを行うことが好ましい。本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、リンス剤を用いなくても、食器の乾燥の促進、ウォータースポットの低減を可能にするので、濯ぎは、60〜90℃の温水のみで行うことができる。
【0052】
業務用食器洗浄機では、食器を連続洗浄する場合、洗浄液はポンプで循環させて繰り返し使用し、洗浄している。
【0053】
業務用食器洗浄機により食器を連続洗浄する場合、食器による洗浄液の持ち出しや、洗浄槽への濯ぎ水のキャリーオーバーなどによって、洗浄回数とともに洗浄液の濃度が減少する。適切な洗浄液の濃度を維持するため、自動供給装置によって適正濃度となるように食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が供給される。
【0054】
食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の自動供給装置としては、特に限定されるものではないが、洗浄液の濃度をセンシングし、シグナルを受信して、チューブポンプを駆動させて、必要量の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を供給する。
【0055】
この自動供給装置は、1日の洗浄回数が非常に多い業務用には好適に用いられ、洗浄回数毎の手投入に比べ、格段に手間が省けるという利点があり、またそれ以外に、1日中(洗浄中)適正濃度を維持することが容易となる。
【実施例】
【0056】
表1に示した配合組成の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を調製し、以下の方法で茶渋汚れ付着防止性、洗浄性(タンパク汚れ及び油汚れ)及び低泡性を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
〔1〕茶渋汚れ付着防止性
・評価方法
業務用食器洗浄機〔三洋電機(株)製 SANYO DR53〕の洗浄槽(38L)に食器洗浄機用液体洗浄剤組成物(pH11.8/25℃)57g(0.15%)を投入、試験終了まで定量式ポンプにて濃度コントロールを行う。専用ラックに強化ガラス製カップ2個(直径84mm)をセットして、60℃の洗浄液にて40秒間洗浄した後、リンス剤を用いることなく80℃の濯ぎ水にて10秒間濯いだ。専用ラックから強化ガラス製カップ2個を取り出した後、煮出しした紅茶「アッサム2.5g/熱湯(90℃以上):110g」を注ぎ、10秒放置後、廃棄する。この処理を20回繰り返した後、強化ガラス製カップの茶渋汚れの付着状態を評価した。
【0058】
*茶渋汚れ付着の判定基準
◎;着色痕は全く認められない。
○;僅かな着色痕を認める。
△;明らかに着色痕を認める。
×;カップ内部に着色痕が認められ、更に多く付着。
【0059】
〔2〕洗浄性及び低泡性
・モデル汚垢の作製
新品の直径20cm磁器製皿の中央部に、卵黄2gを刷毛で直径約10cmの円形に均一塗布し、80℃に設定した電気乾燥機に入れた。30分後、卵黄を塗布した磁器製皿を取り出して、自然冷却したものをタンパク汚れのモデル汚垢とした。又、新品の直径20cmのポリプロピレン(PP)製皿の中央部に、市販サラダ油をスダンIV 0.1重量%にて着色したもの5gを直径約10cmの円形に均一塗布、油汚れのモデル汚垢として、洗浄性評価に用いた。
【0060】
・評価方法
業務用食器洗浄機〔三洋電機(株)製 SANYO DR53〕の洗浄槽(38L)に食器洗浄機用液体洗浄剤組成物(pH11.8/25℃)57gを投入、専用ラックにモデル汚垢を塗布した皿4枚(タンパク汚れ塗布:2枚、油汚れ塗布:2枚)をセットして、50℃の洗浄液にて40秒間洗浄し、磁器製及びPP製の皿4枚を取り出した。変性卵黄汚れを塗布した磁器製の皿は、エリスロシン色素1重量%水溶液にて着色させて、以下に示した判定基準にて洗浄性を評価した。また、油汚れを塗布したPP製の皿は、ノルマルヘキサン100gにて完全にすすぎ、ディスポーセルに取り出し、HITACHI製分光光度系(520nm)にて測色を実施し、検量線より皿1枚当たりの油の残存量(mg)を算出、以下に示した判定基準にて洗浄性を評価した。また、洗浄直後における洗浄槽内での泡立ちの様子を観察し、以下に示した判定基準にて低泡性を評価した。
【0061】
*タンパク汚れ洗浄性の判定基準
◎;着色痕は全く認められず、完全に汚れが除去
○;僅かな着色痕を認めるが、殆どの汚れが除去
△;明らかに着色痕を認め、半量程度の汚れが残留
×;殆どに着色痕が認められ、多くの汚れが残留
【0062】
*油汚れ洗浄性の判定基準
◎;油の残存量が10mg未満
○;油の残存量が10mg以上〜20mg未満
△;油の残存量が20mg以上〜30mg未満
×;油の残存量が30mg以上
【0063】
*泡立ち性の判定基準
◎;泡立ちは全く認められない
○;殆ど泡立ちが認められない
△;明らかに泡立ちが認められる
×;顕著な泡立ちが認められる
【0064】
【表1】

【0065】
表中、高分子化合物A1〜A6、(B)成分、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートナトリウムの配合量は、有効成分の数値である。比較例5では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートナトリウムを(B)成分として、また、比較例6では高分子化合物A1を(A)成分として、(A)/(B)重量比を算出した。また、表中の成分は以下のものである。
・高分子化合物A1:モノマー単位(a)塩化ジアリルジメチルアンモニウム、モノマー単位(b)マレイン酸〔(a)/(b)=66/34(モル比)〕、重量平均分子量15000の共重合体(有効分30重量%の水溶液として使用)
・高分子化合物A2:モノマー単位(a)塩化ジアリルジメチルアンモニウム、モノマー単位(b)マレイン酸〔(a)/(b)=66/34(モル比)〕、重量平均分子量25000の共重合体(有効分30重量%の水溶液として使用)
・高分子化合物A3:モノマー単位(a)塩化ジアリルジメチルアンモニウム、モノマー単位(b)マレイン酸〔(a)/(b)=66/34(モル比)〕、重量平均分子量40000の共重合体(有効分30重量%の水溶液として使用)
・高分子化合物A4:モノマー単位(a)塩化ジアリルジメチルアンモニウム、モノマー単位(b)アクリル酸〔(a)/(b)=50/50(モル比)〕、重量平均分子量83000の共重合体(有効分35重量%の水溶液として使用)
・高分子化合物A5:モノマー単位(a)塩化ジアリルジメチルアンモニウム、モノマー単位(b)マレイン酸、モノマー単位(c)SO2〔(a)/(b)/(c)=67/27/6(モル比)〕、重量平均分子量23000の共重合体(有効分25重量%の水溶液として使用)
・高分子化合物A6:モノマー単位(a)塩化ジアリルジメチルアンモニウム、モノマー単位(b)アクリル酸〔(a)/(b)=64/36(モル比)〕、重量平均分子量の450000の共重合体(Merquat280、Calgon社製、有効分40重量%の水溶液として使用)
・アルケニルコハク酸カリウム:アルケニル基の炭素数12、ジカリウム塩(有効分30重量%の水溶液として使用)
・ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートナトリウム:エチレンオキシドの平均付加モル数2、アルキル基の炭素数12〜14(花王(株)製、ES−27C)
・ポリアクリル酸カリウム:オリゴマーM3(花王(株)社製)
・ノニオン性界面活性剤1:PO・EO・POブロックポリマー、Pluronic RPE2520(BASF社製)
・ノニオン性界面活性剤2:分岐鎖脂肪族アルコールアルコキシレート、ソフタノール50〔(株)日本触媒製〕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が5000〜10万であり、カチオン性モノマーに由来する構造単位を含む高分子化合物(A)と、アルケニルコハク酸金属塩(B)とを含有する食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)と(B)の重量比が、(A)/(B)=1/5〜5/1である、請求項1記載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(A)が、アミノ基及び4級アンモニウム基から選ばれる基を少なくとも1種有するモノマーに由来する構造単位を含む、請求項1又は2記載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(A)が、更にアニオン性モノマーに由来する構造単位を含む、請求項1〜3いずれかに記載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
(B)が、アルケニルコハク酸カリウム塩である、請求項1〜4いずれかに記載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−47729(P2010−47729A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215452(P2008−215452)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】