説明

食酢の製造方法

【課題】すし飯、酢豚、漬け物などの従来からある用途の他、飲料、デザート、鶏肉の食酢煮などの幅広い調理用途に適した、今までにない香ばしい風味の食酢を提供する。
【解決手段】酢酸発酵工程を含み、且つ、前記酢酸発酵工程の前段階に酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程を任意に含む食酢の製造方法において、下記の「強制接触工程」を含む。ここにおいて「強制接触工程」とは、酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程、酢酸発酵工程のいずれかの工程により得られた処理液の温度を40℃以上に保持しながら、酸素と、該処理液から揮発した香気成分と、を共に含む気体を、該処理液と強制的に接触させる工程であって、連続的または断続的に行われる工程である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食酢の製造方法に関する。詳しくは、食酢の製造工程において、食酢に香ばしい香味を付与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食酢は古くから一般に広く用いられている調味料である。例えば、すし飯、酢豚、漬け物などの用途がある。
最近では食酢の健康機能が認知されてきたこともあり、飲料用やデザートに用いるなどの用途も提案されてきた。また、鶏肉の食酢煮など、肉類をさっぱり食すための調理用途なども提案されている。
このように従来よりも食酢の用途が広がってきたため、調理適性のよい食酢が好まれるようになってきた。
【0003】
このような中、さまざまな食酢の風味改善方法が報告されている。
例えば、特許文献1には、酢酸発酵物を濃縮して得た食酢用呈味改善剤を食酢に含有させることで、食酢の呈味(濃厚感や複雑さ、まろやかさ等)を改善する方法が報告されている。
特許文献2には、酢酸、グルコン酸および糖を食酢に所定量含有させることで、食酢に起因する刺激臭と刺激味を軽減する方法が報告されている。
特許文献3には、オリゴ糖含有糖類と食酢製造用アルコ−ルとの混合物を酢酸発酵することにより、まろやかなあっさりした酸味と風味を持つ食酢を得られることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−190019号公報
【特許文献2】特開平10−57007号公報
【特許文献3】特開平5−23162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行技術は、主に食酢に起因する酸味・酸臭を抑えてまろやかにする方法である。これらの方法によっても、食酢の調理用途をある程度拡大できる。しかし、多くの調理用途(例えば肉類をさっぱり食すための調理用途など)において、「香ばしさ」が好まれる傾向にある。よって、従来の技術に加えて、さらに食酢の「香ばしさ」を向上する方法が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、すし飯、酢豚、漬け物などの従来からある用途の他、飲料、デザート、鶏肉の食酢煮などの幅広い調理用途に適した、今までにない香ばしい風味の食酢を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は以下の通りである。
〔請求項1〕酢酸発酵工程を含み、且つ、前記酢酸発酵工程の前段階に酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程を任意に含む食酢の製造方法において、下記の「強制接触工程」を含むことを特徴とする食酢の製造方法、
ここにおいて「強制接触工程」とは、
酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程、酢酸発酵工程のいずれかの工程により得られた処理液の温度を40℃以上に保持しながら、
酸素と、該処理液から揮発した香気成分と、を共に含む気体を、該処理液と強制的に接触させる工程であって、
連続的または断続的に行われる工程である。
〔請求項2〕前記処理液が酢酸発酵工程により得られた酢酸発酵液である請求項1に記載の食酢の製造方法。
〔請求項3〕前記処理液が、酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程のいずれかの工程により得られた処理液であり、
前記「強制接触工程」を施した処理液を、前記「強制接触工程」を含まない食酢の製造方法によって得られた酒精発酵液に対して添加した後に、
酢酸発酵を行う、請求項1に記載の食酢の製造方法。
〔請求項4〕前記処理液が、酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程のいずれかの工程により得られた処理液であり、
前記「強制接触工程」の後に酢酸発酵工程を行う、請求項1に記載の食酢の製造方法。
〔請求項5〕前記処理液が、酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程のいずれかの工程により得られた処理液であり、
前記「強制接触工程」を施した処理液を、前記「強制接触工程」を含まない食酢の製造方法によって得られた酢酸発酵液に対して添加する、請求項1に記載の食酢の製造方法。
〔請求項6〕前記「強制接触工程」を密閉系または略密閉系の槽において行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の食酢の製造方法。
〔請求項7〕前記「強制接触工程」の開始時における前記処理液の容積に対する、前記「強制接触工程」の開始時に前記槽内の空寸に存在している酸素の質量と、前記「強制接触工程」の期間中に前記槽外から供給する酸素の質量と、の合計の比率が、処理液1L当たり0.04g以上であって、前記容積が大気圧、20℃でのものである、請求項6に記載の食酢の製造方法。
〔請求項8〕前記「強制接触工程」の開始時における前記処理液の容積に対する、前記「強制接触工程」の開始時に前記槽内の空寸に存在している気体の容積と、前記「強制接触工程」の期間中に前記槽外から供給する気体の容積と、の合計の比率が、処理液1L当たり52L以下であって、前記容積が大気圧、20℃でのものである、請求項7に記載の食酢の製造方法。
〔請求項9〕原料の一部として、玄米、玄麦、米糠、小麦麩皮からなる群より選択した一以上のものを使用する、請求項1〜5に記載の食酢の製造方法。
〔請求項10〕請求項1〜5のいずれか1項に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。
〔請求項11〕請求項6に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。
〔請求項12〕請求項7に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。
〔請求項13〕請求項8に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。
〔請求項14〕請求項9に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、今までにない香ばしい風味を持ち、様々な調理用途に適した、極めて汎用性の高い食酢を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の方法を実施するための装置の一態様(A−1)を示したものである。
【図2】本発明の方法を実施するための装置の一態様(A−2)を示したものである。
【図3】本発明の方法を実施するための装置の一態様(B−1)を示したものである。
【図4】本発明の方法を実施するための装置の一態様(B−2)を示したものである。
【図5】本発明の方法を実施するための装置の一態様(B−3)を示したものである。
【図6】本発明の方法を実施するための装置の一態様(B−4)を示したものである。
【図7】本発明の方法を実施するための装置の一態様(B−5)を示したものである。
【図8】本発明の方法を実施するための装置の一態様(C−1)を示したものである。
【図9】本発明の方法を実施するための装置の一態様(C−2)を示したものである。
【図10】本発明の方法を実施するための装置の一態様(C−3)を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の食酢の製造方法は、後述する「強制接触工程」に特徴を有するものである。
【0011】
<原料>
一般的に食酢には、原料の違いによって米酢、穀物酢、玄米酢、果実酢などの種類がある。本発明において製造する食酢は、どのような種類のものであってもよく、特に限定されない。香ばしさを付与したい食酢であれば、どのような種類の食酢に対しても、本発明の方法を幅広く応用することができる。
【0012】
ただ、ぶどうやりんごなどの果実を原料に用いた食酢(果実酢)や、トマトなどの野菜を原料に用いた食酢は、原料の風味が強く主張する。そのため、本発明の方法を果実酢に適用したとしても、調理用途を拡大する効果はあまり期待できない。よって、本発明は、元々汎用性のある米、玉蜀黍、小麦、大麦、ハト麦、燕麦、黍、高粱、粟、稗、蕎麦、アマランサス、ライ麦などの穀類;大豆、小豆、菜豆、豌豆、ささげ、蚕豆などの豆類;薩摩芋、馬鈴薯、里芋などの芋類;胡麻、胡桃、栗などの種実類、などを含む穀物を原料とする食酢に対してより効果的である。また、本発明は、これらを原料とし、さらに原料の一部としてエタノールや糖類を含む食酢に適用することもできる。
【0013】
中でも、穀物種子の外皮を原料の一部として含有させることで、本発明の効果を増強し、より強い香ばしさを付与することができる。「穀物種子の外皮を原料の一部として含有させる」とは、例えば、玄米や玄麦など外皮で覆われた穀物種子を原料の一部として用いたり、米糠や小麦麩皮など穀物種子の外皮を、米など他の穀物と共に、または単独で、原料として用いたりすることを言う。ここで「玄麦」とは、未精白の小麦又は大麦を指す。また「小麦麩皮」とは、小麦の製粉の際に分離される小麦種子の外皮(ふすま)を指す。
なお、穀物種子の外皮は、穀物植物の種子を粉砕または搗精することにより得ることができる。
【0014】
穀物種子の外皮は、一般的に不溶性成分を多く含むため、諸味への成分抽出の効率や、溶解性が悪くなることが予測される。そのため、穀物種子の外皮は、粒度(粒径)が100μm以下、好ましくは50μm以下となるように、微粉砕して用いることが好ましい。また、原料の取り扱い上の便利さを考慮すると、原料の粒度は10μm以上とするのが好ましい。
【0015】
この他、必要に応じて、穀物を原料とした麹(koji)を原料の一部として用いてもよい。麹とは、原料の穀物を蒸したものに麹菌(koji-mold)を接種して発酵させたものである。麹を原料に加えることにより、食酢の風味が増し、且つ原料の液化・糖化やたんぱく質の分解のために添加される酵素剤が削減可能もしくは、不要となり、製造コストを下げることができる。
なお、本発明における酵素分解工程には、麹による酵素分解を行う工程も含まれる。
【0016】
<食酢製造工程(「強制接触工程」の詳細は後述。)>
本発明の食酢の製造方法は、酢酸発酵工程が静置発酵または深部発酵のいずれの方法で行われるかにかかわらず、どのような発酵工程により製造された食酢にも適用することができる。また、液体培養に限らず、固体培養で発酵した食酢であってもよい。
【0017】
本発明の食酢の製造方法の中で、「強制接触工程」以外の工程は、常法に従って行うことができる。
例えば、穀物などの原料を酵素により分解(酵素分解工程)し、酒精発酵(酒精発酵工程)を行い、濾過(濾過工程)して得た液体を用いて、酢酸発酵(酢酸発酵工程)を行う方法が採用できる。
また、例えば、酢酸発酵工程の前に、酵素分解工程(麹分解工程も含む)、乳酸発酵工程などの工程を任意に含むこともできる。つまり、糖類を原料として用いて酵素分解工程を省略することもできるし、エタノールを原料として用いて酒精発酵工程を省略することもできる。
【0018】
本発明に特有の「強制接触工程」は、食酢の処理液に対して行う。
ここで「処理液」とは、酵素分解工程によって得られた酵素分解液、乳酸発酵工程によって得られた乳酸発酵液、酒精発酵工程によって得られた酒精発酵液、酢酸発酵工程によって得られた酢酸発酵液、のいずれかである。もちろん、上記の発酵工程のうちいずれかの工程を複数経ることによって得た処理液も、本発明の「処理液に」含まれる。
つまり、本発明の「強制接触工程」は、一般的な食酢の製造工程における各分解工程、各発酵工程のうちのどの工程の後に行ってもよい。例えば、酢酸発酵工程の後に「強制接触工程」を行う場合は、酢酸発酵工程により得られた酢酸発酵液が「処理液」となる。また、酒精発酵工程の後に「強制接触工程」を行う場合は、酒精発酵工程により得られた酒精発酵液が「処理液」となる。
【0019】
本発明では、酒精発酵工程を行う代わりに、醸造用アルコールを添加(アルコール添加工程)する方法を採用することもできる。しかし、酒精発酵を行う方が、酵母と酵母の発酵により生じる副成物の好ましい香りが食酢に付与されるため、好ましい。
酒精発酵の工程においては、酵母の他に、例えば乳酸菌などの有用微生物を併用する方法も採用できる。ここで、酵母と共に乳酸菌を使用する場合には、酒精発酵と乳酸発酵(乳酸発酵工程)が並行して行われる。
【0020】
一般的な食酢の製法において、熟成工程を行うことがある。熟成工程とは、一般的には一定期間(数日〜半年程度)酢酸発酵液を静置することにより、食酢の風味を落ち着かせる工程である。
本発明において「強制接触工程」を酢酸発酵工程後に行う場合は、熟成工程後に「強制接触工程」を行ってもよいし、熟成工程前に「強制接触工程」を行ってもよい。また所望により、酢酸発酵工程後に、熟成工程を採用せずに「強制接触工程」を行ってもよい。
【0021】
本発明において、酢酸発酵前に濾過工程を行うと、酢酸発酵の速度が速くなるという点で好ましい。しかし、製造設備の関係上、酢酸発酵後に濾過を行う方が都合が良いようであれば、その方法も採用できる。
また所望により、酵素分解工程、酒精発酵工程、乳酸発酵工程、濾過工程、酢酸発酵工程、熟成工程および「強制接触工程」のいずれかの工程の前後において、濃縮工程や抽出工程を行ってもよい。
【0022】
また、本発明においては、処理液の全部又は一部に対して「強制接触工程」を行うことができる。「処理液の一部に対して『強制接触工程』を行う」ということは、すなわち、「強制接触工程」を含まない従来の一般的な食酢の製造工程の任意の段階において、「強制接触工程」を施した処理液を添加することを意味する。
例えば、従来の食酢の製造方法によって得られた酢酸発酵液に対し、「強制接触工程」を施した酵素分解液、酒精発酵液、乳酸発酵液、酢酸発酵液など任意の段階の処理液を添加することによって製造された食酢も、本発明の食酢に含まれる。
また、従来の食酢の製造方法における中間産物である酒精発酵液に対し、「強制接触工程」を施した任意の段階の処理液を添加し、更に酢酸発酵(及び熟成)させて得られた食酢も、本発明の食酢に含まれる。
なお、ここで「強制接触工程」を施した処理液の添加割合は特に限定されないが、例えば10〜80容量%(v/v)とすることができ、好ましくは20〜70容量%(v/v)、さらに好ましくは20〜60容量%(v/v)とすることができる。
【0023】
<強制接触工程>
本発明における「強制接触工程」とは、
前記した処理液の温度を40℃以上に保持しながら、
酸素と、該処理液から揮発した香気成分と、を共に含む気体を、該処理液と強制的に接触させる工程であって、
連続的または断続的に行われる工程である。
【0024】
本発明の「強制接触工程」では、処理液の温度を40℃以上に保つことが必要である。中でも40℃〜90℃が好ましく、50℃〜80℃がより好ましい。
40℃以上の高温にすることで、酸素と香気成分とを処理液に強制的に接触することによる香ばしさの付与効果を促進する。
また、「強制接触工程」においては、複数段階の温度帯を組み合わせてもよい。例えば、「強制接触工程」の開始後10時間〜30時間程度を高温期(例えば60℃〜85℃、好ましくは75℃〜85℃)とし、その後、10時間〜200時間程度を中温期(例えば40℃〜60℃、好ましくは45℃〜55℃)とする方法を採用することができる。複数段階の温度帯を組み合わせて採用することにより、より深みのある香ばしさを付与できる傾向が認められる。
【0025】
本発明の「強制接触工程」では、酸素と、処理液から揮発した香気成分と、を共に含む気体を、処理液に強制的に接触させる工程が必須である。この工程を経ることで、食酢の香ばしさが格段に向上する。その理由は定かでないが、本発明者らは次のように推察している。すなわち、処理液に酸素が接触して、「香ばしさを向上する成分の基」が生成する。そして、当該「香ばしさを向上する成分の基」が、再度酸素とともに処理液に作用して、「香ばしさを向上する成分」が生成する。
【0026】
本発明において、「処理液から揮発した香気成分と酸素とを共に含む気体を処理液に強制的に接触させる」方法としては様々な方法が採用できる。以下にその例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。(A)の方法は、気体を強制的に動かし気液接触させる方法の事例、(B)の方法は、液体を強制的に動かし気液接触させる方法の事例である。更に、(C)の方法は、気液を強制的に混合し、気泡発生装置にて細かい気泡を発生させ、接触効率を高める事例である。また、(A)、(B)、(C)の方法を組み合わせることも出来る。
【0027】
(A)処理液が入った槽内の空寸に存在している気体を強制的に動かすことにより、処理液と気体を接触させる方法。この方法は、既存のタンクに散気管などの気泡発生装置を付加した装置で実施することができる。起泡発生装置には、マイクロバブルまたはナノバブル発生方式などの種々の方式のものが採用できる。
より具体的な方法を以下に示す。
【0028】
(A−1)処理液が入った槽内の空寸に存在している気体を、ポンプ等により吸い出す。そして、散気管などの微細孔に当該気体を通過させることにより気泡状態として、前記槽内の処理液に強制的に吹き込む方法。
なお、この方法に用いる装置の一例を図1に示す。
【0029】
(A−2)まず、処理液が入った槽内の空寸に存在している気体を、ポンプ等により吸い出し、処理液内に吹きこむ。そして、スクリューやプロペラなどで処理液を機械的に撹拌して、気泡を細かくすることにより、処理液と前記気体を強制的に接触させる方法。
なお、この方法に用いる装置の一例を図2に示す。
【0030】
(B)処理液を強制的に動かすことにより、処理液と、当該処理液が入った槽内の空寸に存在している気体と、を接触させる方法。この方法は、一般的な食品工業用のポンプや攪拌翼が利用できる。
より具体的な方法を以下に示す。
【0031】
(B−1)処理液をポンプ等で吸い上げて、当該処理液が入った槽内の空寸などに存在している気体中に、シャワーリング等で散布することにより、処理液と前記気体を強制的に接触させる方法。
なお、この方法に用いる装置の一例を図3に示す。
【0032】
(B−2)処理液をポンプ等で吸い上げて、当該処理液が入った槽内の空寸部分もしくは液面付近に設置した高速回転する羽根に、処理液を衝突させる。これにより、処理液を霧状とし、前記空寸などに存在している気体と処理液とを強制的に混合する方法。
なお、この方法に用いる装置の一例を図4に示す。
【0033】
(B−3)処理液をポンプ等で吸い上げて、当該処理液が入った槽内の空寸部もしくは別途設けた槽内へ、水頭を利用して、滝状または階段状に、処理液を落下させる。これにより、前記空寸などに存在している気体と処理液とを強制的に混合する方法。
なお、この方法に用いる装置の一例を図5に示す。
【0034】
(B−4)処理液を別途に設けた充填塔に送り、充填材上で、処理液と気体を接触させる。これにより、処理液から揮発した香気成分を含む気体と、処理液と、を強制的に接触させる方法。
なお、この方法に用いる装置の一例を図6に示す。
【0035】
(B−5)処理液が入った槽内であって、当該処理液中かつ当該液面近傍である部位、に設置した攪拌翼を回転させることにより、当該液面を激しく撹拌する。これにより、当該液面付近に存在している気体と処理液との接触面積を増やして、前記気体と処理液とを強制的に接触させる方法。
なお、この方法に用いる装置の一例を図7に示す。
【0036】
(C)処理液が入った槽内の空寸に存在している気体と処理液とを強制的に混合した後、各種気泡発生装置にて気泡を発生させることにより、気液の接触効率を高める方法。この方法における起泡発生装置には、マイクロバブルまたはナノバブル発生方式などの種々の方式のものが採用できる。
より具体的な方法を以下に示す。
【0037】
(C−1)まず、処理液が入った槽内の空寸に存在している気体を、ポンプ等により吸い出す。そして、当該気体を処理液と混合した後、冷却や加圧などにより当該気体の液体への溶解度を上げ、当該気体を処理液中に溶解させる。さらに、処理液を定常状態へ戻して過飽和状態とし、気泡を発生させることにより、処理液と前記気体を強制的に接触させる方法。
なお、この方法に用いる装置の一例を図8に示す。
【0038】
(C−2)まず、処理液が入った槽内の空寸に存在している気体を、ポンプ等により吸い出し、処理液と混合する。そして、混合液を乱流状態にして、前記気体をせん断し、気泡を発生させることにより、処理液と前記気体を強制的に接触させる方法。
なお、前記乱流を発生させる方式としては、旋回流を起こす方式などが採用できる。
なお、この方法に用いる装置の一例を図9に示す。
【0039】
(C−3)まず、処理液が入った槽内の空寸に存在している気体を、ポンプ等により吸い出し、処理液と混合する。そして、キャビテーションを利用し、気泡圧壊を起こし微細気泡を発生させることにより、処理液と前記気体を強制的に接触させる方法。前記キャビテーションを利用する方式としては、ベンチュリー管を応用した方法などが採用できる。
なお、この方法に用いる装置の一例を図10に示す。
【0040】
本発明においては、「強制接触工程」を連続的または断続的に行う。つまり、工程の途中で、一時的に40℃未満に降温して、再度40℃以上に昇温したり、一時的に気液接触処理を中断したりしてもよく、前記工程を長時間に亘って繰り返し行う。
【0041】
「強制接触工程」全体の期間は、24〜240時間とすることが好ましい。より好ましくは48〜144時間、特に好ましくは72〜120時間とする。前記したように、「強制接触工程」を、高温期(例えば、60℃〜85℃)と中温期(例えば、40〜60℃)のように複数の温度帯に分けて行ってもよい。
【0042】
本発明における「強制接触工程」では、「酸素と、処理液から揮発した香気成分と、を共に含む気体を、処理液に強制的に接触させる」ことにより、酸素を消費する。所定量以上の酸素を消費することで、食酢に香ばしさを付与できる。処理液が入った槽内の空寸にある酸素だけでは酸素量が不足する場合には、槽外より酸素または酸素含有気体(空気など)を強制的に供給することもできる。
例えば、処理液が入った槽内の空寸における酸素濃度を測定しつつ「強制接触工程」を行い、酸素濃度が不足してきたら、外気を槽内に供給する方法を採ってもよい。また、この際、酸素濃度を高めた気体を槽内に供給してもよい。
【0043】
供給する酸素量は、「強制接触工程」開始時の前記空寸内に含まれる酸素量との合計で、「強制接触工程」開始時の処理液1L当たり0.04g以上の量とすることが好ましい。中でも、0.15g〜14gとすることがより好ましく、0.3〜6gとすることが更に好ましい。このことを数式に表すと、以下のようになる。
【0044】
(a+b)/c≧0.04(g/L)
【0045】
なお、式中の「a」は、「強制接触工程」の開始時に、処理液が入った槽内の空寸に存在している酸素の質量(単位:g)である。
式中の「b」は、「強制接触工程」の期間中に、処理液が入った槽の外から供給する酸素の質量(単位:g)である。
式中の「c」は、「強制接触工程」の開始時における処理液の容積(単位:L)である。容積は大気圧下、20℃換算の数値である(以下同じ。)。
【0046】
酸素供給量が上記の量よりも少ないと、酸素消費量が不足するため、食酢の香ばしさを増強する効果が得られにくい。
一方、酸素供給量が多過ぎることはさほど問題にはならないが、消費する以上に酸素を供給することは非効率である。
【0047】
本発明の「強制接触工程」は、密閉系又は略密閉系の槽において行うことが好ましい。「略密閉系」とは、密閉度が高く、自由に気体が出入りすることを防ぐ機構となっていることを意味する。気体が自由に出入りしてしまうと、「強制接触工程」で生成する香気成分が散逸してしまい、香ばしさを向上する成分が食酢に残らないためである。
【0048】
しかしながら、前記したように、処理液が入った槽内の空寸に含まれる酸素量だけでは不足することがある。従ってその場合には、酸素や空気などの気体を、前記槽内に供給する必要がある。そうすると、前記槽内の気体の一部が槽外へと排出されてしまう。そこで、香気成分の散逸を可能な限り少ない量に限定するため、前記槽内に供給する気体の量も少ない量とすることが好ましい。
【0049】
すなわち、前記槽内に供給する気体の量としては、「強制接触工程」開始時の前記空寸内に含まれる気体の量との合計で、「強制接触工程」開始時の処理液1L当たり52L以下とすることが好ましい。中でも、20L以下とすることがより好ましい。このことを数式に表すと、以下のようになる。
【0050】
(A+B)/c≦52(L/L)
【0051】
なお、式中の「A」は、「強制接触工程」の開始時に、処理液が入った槽内の空寸に存在している気体の容積(単位:L)である。
式中の「B」は、「強制接触工程」の期間中に、処理液が入った槽の外から供給する気体の容積(単位:L)である。
式中の「c」は、「強制接触工程」の開始時における処理液の容積(単位:L)である。
【0052】
本発明における「槽」という語は、タンク状のものだけを指すのではなく、配管などで連続的に繋がった容器全体を指している。
また「空寸」とは、槽内において液体で満たされていない空間を指す。
【0053】
本発明の「強制接触工程」を行う槽の大きさは、製造する食酢の容積の1.2〜4倍程度のものを用いるとよい。食酢製造量に対してあまり大きな容積の槽を用いることは、不効率であり好ましくない。しかも、そのような場合には、槽内の空寸が大きすぎて、結局、香気成分が散逸してしまうため、非効率であり好ましくない。
一方、食酢製造量に対して小さい容積の槽を用いると、槽内の空寸に溜まっている酸素量がすぐに少なくなってしまう。そうすると、多くの酸素を槽内に供給する必要があり、その分槽外への気体の排出が多くなるため、好ましくない。
【0054】
槽内への酸素供給の方法として、酸素濃度を高めた気体を槽内に供給する方法を採用すると、空気を供給する場合と比べて、供給量が少なくて済む。そのため、槽外への気体の排出量も少なくて済む点で、この方法は有効である。
【0055】
上記した本発明の食酢の製造方法によって製造した食酢は、今までにない香ばしい風味を有している。それゆえ、当該食酢は、煮物や炒め物なども含めた幅広い調理用途に適している。
【0056】
また、本発明により得られる食酢は、前記のように従来の食酢にはない香ばしい風味を有している。従って、当該食酢を他の調味原料と混合することにより、全く新しいタイプの液状調味料を製造することができる。
ここで、他の調味原料としては、例えば、醤油、味噌、味醂、糖類、食塩、旨味調味料、エキス類、出汁類、食用油脂類、香辛料類、甘味料類、色素類、香料、酸味料類、増粘剤類などが挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
【0058】
〔実施例1〕米を原料とする食酢の製造
(1)酒精発酵液の調製
粉砕米を原料として用いて、一般的な食酢の製造方法に従い、下記の通り酒精発酵液を製造した。
まず、精白米(精米歩合(玄米に対する精米の割合)90%。以下同じ。)を定法に従い常圧で蒸煮した。蒸米を冷却した後、種麹菌アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を接種し、30℃で3日間培養した。培養物を乾燥させ、米麹を得た。
粉砕した精白米18kg、前記米麹3kg、液化型アミラーゼ製剤60g、糖化型アミラーゼ製剤60g、及びプロテアーゼ製剤120gに水を加え、全量60Lの諸味を調製した。
この諸味に酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)75gを添加して、30℃で5日間、酒精発酵を行った。発酵終了後の発酵液に酸度15%の高酸度酢を2L加え、濾過して、酒精発酵液48Lを得た。
このようにして得られた酒精発酵液のアルコール濃度は、15容量%(v/v)であった。
【0059】
(2)酢酸発酵液の調製
上記(1)にて調製した酒精発酵液を、一般的な食酢の製造方法に従って酢酸発酵させ、下記の通り酢酸発酵液を製造した。
すなわち、酒精発酵液を水で2倍に希釈し、そこに酢酸菌アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)を含む種菌液(種酢)を接種した。その後、深部発酵槽において発酵温度30℃、攪拌数500rpm、通気量0.2vvmの条件で酢酸発酵させ、酢酸発酵液を得た。
このようにして得られた酢酸発酵液の酸度は、7.0重量/容量%(w/v)であった。
尚、前記種菌液としては、上記(1)の酒精発酵液に前記酢酸菌を接種し、深部発酵槽において、発酵温度30℃、撹拌数500rpm、通気量0.2vvm、酸度7.5重量/容量%(w/v)及びアルコール濃度0.4容量%(v/v)の条件で、旺盛に連続発酵を継続している発酵液を使用した。
【0060】
(3)条件の異なる酸素接触試験(強制接触工程)
上記(2)の方法により調製した酢酸発酵液を、下記の酸素接触試験に供した。
【0061】
・装置
各方式の酸素接触方法及び装置について、表1に示す。なお、本発明における酸素との接触方法(強制接触工程)は、実施例にて採用したものに限定されない。
【0062】
【表1】

【0063】
・使用した酸素濃度測定装置
酸素濃度測定装置:PBI Dansensor社製、CheckMate9900
【0064】
・生酢の品質評価方法
酸素接触試験後の酢酸発酵液を水で希釈して酸度4.5%に調整し、生酢サンプルとして下記の品質評価に供試した。以下同じ。
品質評価試験における評価用語は、下記表2の通り。よく訓練された生酢の官能評価員(25名)により、生酢について「好ましい香ばしさ」の評価を行った。
好ましい香ばしさは、表2に示す1点(とても少ない)〜5点(非常に多い)の5点満点にて各官能評価員が点数をつけ、その平均値を評価値とした。
なお、3点より大きい評点がついたものを好ましい香ばしさが十分に付与されているとした。
【0065】
【表2】

【0066】
(3−i)対照試験
表1に示した対照の装置を用いた。
試験No.Z-1からZ-3として品質評価試験に付した生酢は、従来の製法で調製した食酢である。
すなわち、試験No.Z-1に使用した生酢は、前記(2)で得た酢酸発酵液を酸度4.5%に調整したものである。
試験No.Z-2とZ-3に使用した生酢は、前記(2)で得た酢酸発酵液を熟成し、酸度4.5%に調整したものである。熟成方法は以下の通り。前記(2)で得た酢酸発酵液を20℃の条件下でタンクに30L充填した。その後、加熱冷却用ジャケット内の水温を25℃にすることにより、タンク内の温度を25℃に維持した。自然な空気の出入りを可能にするため、隙間を残してタンクの蓋をした。タンク内の温度を25℃に維持しつつ、30日または90日間熟成させた。
試験No.Z-4に使用した生酢は、酢酸発酵液を、タンク内の気体を循環せず、加温のみの条件で処理して得られたものである。すなわち、前記(2)で得た酢酸発酵液を20℃の条件下でタンクに30L充填した。タンクを密閉した後、タンク内を80℃に加温した。タンク内の温度を80℃に維持しつつ、4日間熟成させた酢酸発酵液を、酸度4.5%に調整したものを生酢とした。
【0067】
結果は表3の通り。
試験No.Z-1〜Z-3の結果から、従来の食酢は香ばしさの評価が低く、これは熟成工程の有無と関係ないことがわかった。
また、80℃で4日間処理した場合(試験No.Z-4)でも、従来の食酢(試験No.Z-1〜Z-3)における評価結果とあまり変わらなかった。このことから、タンク内の気体を循環せず、加温のみの条件で処理しても、好ましい香ばしさの付与ができないことを確認した。
【0068】
【表3】

【0069】
(3−ii)好ましい温度範囲と最適条件を設定する試験
表1に示した散気管方式の装置を用いた。
20℃の条件下でタンクに酢酸発酵液を30L充填し、タンクを密閉した。酢酸発酵液の温度が各設定温度に到達後、ポンプによる気体の循環を開始。4日間(24hr×4日=96hr)、密閉状態で、気体の循環及び酢酸発酵液の攪拌を続けた。循環気体量は2L/分、攪拌翼の回転数は30rpmとした。
【0070】
各試験区の温度設定と処理時間は以下の通り。
試験No.A-1:80℃、24hr+50℃、72hr
試験No.A-2:80℃、96hr
試験No.A-3:40℃、96hr
試験No.A-4:30℃、96hr
【0071】
試験終了後、タンク内を20℃へ冷却した。いずれの試験区も、酸素濃度はほぼゼロであった。
いずれの試験系においても、供給した酸素量を試算すると5.6gであった。すなわち、酢酸発酵液1L当りの供給酸素量は、5.6 (g)/30 (L) =0.19(g/L-酢酸発酵液)であった。
また、供給した空気量は、試験開始時のタンク内空寸部と同量の20Lである。したがって、酢酸発酵液1L当りの供給空気量は、20 (L)/30 (L) = 0.67 (L-空気/L-酢酸発酵液)であった。
【0072】
結果は表4の通り。
生酢の品質評価は、30℃処理区(試験No.A-4)では好ましくない結果であった。
一方、40℃以上の処理区(40℃、80℃)では、評価値が3より高く、好ましい結果であった。
さらには、80℃と50℃での処理を組み合わせた試験No.A-1の結果が最も良かった。
【0073】
【表4】

【0074】
(3−iii)供給する空気量範囲と最適条件を設定する試験
表1に示した散気管方式の装置において、さらに、20℃の新鮮空気が吸入できるよう循環ポンプの吸入側を2股に分岐した。このポンプの吸入口のうち、一方はタンク内の気層部(空寸部)に接続し、他方はタンク外の20℃の新鮮空気に開放した。両吸入口と循環ポンプをつなぐ導管の途中に夫々電磁弁を設置し、交互に開閉するようにした。耐圧タンクの蓋部に排気孔を設け、電磁開放弁によりその開閉を制御できるようにした。循環ポンプにより新鮮空気が吸引されている時のみ前記電磁開放弁を開放し、新鮮空気が液層を通過し大気に放出されるようにした。
【0075】
循環ポンプの導管に設置した前記電磁弁は、タイマーによりON−OFFを繰り返す。ON-OFFの1サイクルタイムを60分間とし、ON-時間、OFF−時間の調整により、タンク内に導入する新鮮空気量を調整した。
【0076】
各試験区の時間設定は、以下の通り。
試験No.B-1:1サイクル中の新鮮空気導入時間 1分間
試験No.B-2: 同 4分間
試験No.B-3: 同 8分間
試験No.B-4: 同 15分間
【0077】
20℃条件下でタンクに酢酸発酵液を30L充填し、タンクを密閉した。タンク内の温度が50℃に到達後、ポンプによる気体の循環を開始。96時間(4日間)、密閉状態で、気体の循環及び酢酸発酵液の攪拌を続けた。循環気体量は2L/分、攪拌翼の回転数は5rpmとした。
【0078】
結果は表5の通り。
生酢の品質評価は、供給空気量が52 L/L-酢酸発酵液を超える場合(試験No.B-4)では、香味が希薄となり、好ましい結果でなかった。接触させる空気量は、少ない程好ましい傾向であった。
【0079】
【表5】

【0080】
(3−iv)香気成分循環の必要性を確認する試験
・試験No.C'-1
表1に示した散気管方式の装置を用いた。20℃の条件下でタンクに酢酸発酵液を30L充填し、タンクを密閉した。タンク内の温度が50℃に到達後、ポンプによる気体の循環を開始。タンク上部の空寸部の気体をポンプにより吸引し、タンク下部に設置した散気管を通して酢酸発酵液中にバブリングした。4日間、気体の循環及び酢酸発酵液の攪拌を続けた。循環気体量は0.1L/分、攪拌翼の回転数は30rpmとした。24時間ごとにタンクの蓋を開けて、新鮮な空気に入れ替えた。気体を入れ替える際は、タンク内の温度を一旦20℃まで冷却した。
接触させた空気量は、試験開始時のタンク空寸部の気体および換気によりタンク内に導入した気体の合計80Lであった。したがって、酢酸発酵液1L当りの供給空気量は、80 (L)/30 (L) = 2.7 (L-空気/L-酢酸発酵液)であった。また、上記の供給空気量から試算した供給酸素量は、0.74 (g/L-酢酸発酵液)であった。
【0081】
・試験No.C'-2
表1に示した散気管方式の装置において、さらに、耐圧タンクの蓋部に冷却管を付けた排気孔を設けた。また、20℃の新鮮空気が吸入できるよう、ポンプの吸入口をタンク外の20℃の新鮮空気に開放した。20℃の条件下でタンクに酢酸発酵液を30L充填した。タンク内の温度が50℃に到達後、ポンプにより新鮮な空気の供給を開始。タンク下部に設置した散気管を通して、酢酸発酵液中に新鮮な空気をバブリングした。4日間、空気の供給及び酢酸発酵液の攪拌を続けた。供給空気量は0.8L/時間、攪拌翼の回転数は30rpmとした。
接触させた空気量は、4日間(96hr)のポンプ流量から0.8 (L)×96 (hr)=76.8 (L)であった。したがって、酢酸発酵液1L当りの供給空気量は、76.8 (L)/30 (L) = 2.6 (L-空気/L-酢酸発酵液)であった。また、上記の供給空気量から試算した供給酸素量は、0.71 (g/L-酢酸発酵液)であった。
【0082】
結果は表6の通り。
何れの試験区も、供給空気量、酸素量は同程度となるように調整した。しかし、タンクを密閉して、酢酸発酵液から揮発した香気成分が含まれる空気を酢酸発酵液中にバブリングした試験No.C'-1の方が、好ましい香ばしさが多くなった。このことから、香気成分を含む空気を酢酸発酵液中に循環させることが、好ましい香ばしさの付与につながることが分かった。
【0083】
【表6】

【0084】
(3−v)供給する酸素量範囲と最適条件を設定する試験
表1に示した散気管方式の装置を用いた。20℃の条件下で、タンクに酢酸発酵液と気体を合計50Lとなるよう充填し、タンクを密閉した。前記気体として、空気、または酸素濃度を調整した酸素・窒素混合気体を用いた。タンク内の温度が80℃に到達後、ポンプによる気体の循環を開始。24時間後にはタンク内を50℃に冷却して、更に72時間気体の循環を実施した。4日間の試験期間中、攪拌翼による酢酸発酵液の攪拌を続けた。循環気体量は1L/分、攪拌翼の回転数は20rpmとした。
試験No.C-3〜C-6では、試験中にタンク内空寸部の気体を新鮮な前記気体と入れ替えた。気体を入れ替える際は、タンク内の温度を一旦20℃まで冷却した。
【0085】
各試験区における気体、発酵液量および新鮮気体入れ替え時間の設定は、以下の通り。
気体 発酵液量 新鮮気体入替
試験No.C-1 酸素3% 30 L なし
試験No.C-2 酸素5% 30 L なし
試験No.C-3 空気 30 L 48時間後
試験No.C-4 空気 30 L 24時間ごと
試験No.C-5 空気 10 L 24時間ごと
試験No.C-6 酸素30% 10 L 24時間ごと
【0086】
結果は表7の通り。
生酢の品質評価では、供給する酸素量が0.04(g/L-酢酸発酵液)以上であった試験No.C-2〜6は、評価値が3より高く、好ましい結果となった。一方、供給する酸素量が0.04(g/L-酢酸発酵液)より低い試験No.C-1は、香ばしさに不足感があった。
このことから、供給酸素量を0.04(g/L-酢酸発酵液)以上とすることにより、好ましい香ばしさがより一層増強されることが分かった。
【0087】
【表7】

【0088】
(3−vi)異なる酸素接触方式を用いる試験
・試験No.D-1
表1に示したシャワーリング方式の装置を用いた。20℃の条件下でタンクに酢酸発酵液を30 L充填し、タンクを密閉した。タンク内の温度が80℃に到達後、シャワーリング装置による酢酸発酵液の噴霧を開始。24時間後にはタンク内を50℃に冷却して、更に72時間噴霧を続けた。循環発酵液量は1L/分とした。
【0089】
・試験No.D-2
表1に示した上面攪拌方式の装置を用いた。20℃の条件下でタンクに酢酸発酵液を30L充填し、タンクを密閉した。タンク内の温度が80℃に到達後、攪拌翼による酢酸発酵液面の攪拌を開始。24時間後にはタンク内を50℃に冷却して、更に72時間攪拌を続けた。攪拌翼の回転数は200rpmとした。
【0090】
結果は表8の通り。
いずれの試験区でも、同等の好ましい香ばしさが付与された。このことから、いずれの方式においても、供給する酸素量、空気量、温度が所定の範囲内であれば、香ばしい香りを付与した酢酸発酵液が製造できることが確認できた。
【0091】
【表8】

【0092】
(3−vii)従来の熟成方法と組み合わせる試験
・試験No.E-1
酢酸発酵液を、表3の試験No.Z-2と同条件で熟成させた後、表7の試験No.C-4と同条件で酸素接触試験を行った。
・試験No.E-2
酢酸発酵液を、表7の試験No.C-4と同条件で酸素接触試験を行った後、表3の試験No.Z-2と同条件で熟成させた。
【0093】
結果は表9の通り。
いずれの試験区でも、同等の好ましい香ばしさが付与された。このことから、本発明の「強制接触工程」の前後に熟成を行っても、本発明による香ばしい香りが付与される効果は変わらないことが分かった。
【0094】
【表9】

【0095】
〔実施例2〕穀物種子外皮を原料とする食酢の製造
(1)酒精発酵液の調製
原料組成を変えたことを除き、一般的な食酢の製造方法に従い、下記の通り酒精発酵液を製造した。
まず、精白米を定法に従い常圧で蒸煮した。蒸米を冷却した後、種麹菌アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を接種し、30℃で3日間培養した。培養物を乾燥させ、米麹を得た。
下記表10に示す原料と、液化型アミラーゼ製剤60g、糖化型アミラーゼ製剤60g、及びプロテアーゼ製剤120gに水を加え、全量60Lの諸味を調製した。
【0096】
【表10】

【0097】
玄米、米糠、玄麦および小麦麩皮はいずれも、穀類植物の種子を粉砕又は搗精することによって生じる、種子外側画分を多く含むものである。この種子外側画分には、一般的に不溶性成分が多く含まれる。そのため、上記原料は、諸味への成分抽出の効率や溶解性が悪くなることが予測された。
したがって、本実施例では、玄米、米糠、玄麦および小麦麩皮については、中心径20〜40μmとなるように微粉砕した後に、試験に使用することとした。なお、前記した原料粉末の粒径は、日機装(株)製の粒度分布計「マイクロトラックHRA」にて分析した。
【0098】
前記諸味に酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)75gを添加して、30℃で5日間、酒精発酵を行った。発酵終了後の発酵液に酸度15%の高酸度酢を2L加え、濾過して、酒精発酵液48Lを得た。
このようにして得られた酒精発酵液のアルコール濃度は、10〜15容量%(v/v)であった。
【0099】
(2)酢酸発酵液の調製
本実施例の上記(1)にて調製した酒精発酵液を、一般的な食酢の製造方法に従って酢酸発酵させ、下記の通り酢酸発酵液を製造した。
すなわち、酒精発酵液を水で希釈して、アルコール濃度が8容量%(v/v)となるように調整した。そこに酢酸菌アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)を含む種菌液(種酢)を接種した。その後、深部発酵槽において発酵温度30℃、攪拌数500rpm、通気量0.2vvmの条件で酢酸発酵させ、酢酸発酵液を得た。
このようにして得られた酢酸発酵液の酸度は、7.0重量/容量%(w/v)であった。
尚、前記種菌液としては、本実施例の上記(1)の酒精発酵液に前記酢酸菌を接種し、深部発酵槽において、発酵温度30℃、撹拌数500rpm、通気量0.2vvm、酸度7.5重量/容量%(w/v)及びアルコール濃度0.4容量%(v/v)の条件で、旺盛に連続発酵を継続している発酵液を使用した。
【0100】
(3)条件の異なる酸素接触試験(強制接触工程)
本実施例の上記(2)の方法により調製した酢酸発酵液を用いて、表7の試験No.C-4と同条件で酸素接触試験を行った。
結果は表11の通り。
なお、対照として、同じ酢酸発酵液を表3の試験No.Z-2と同条件で熟成させた。これにより得られた生酢の香ばしさについての品質評価結果は、表11の括弧内に示した。
【0101】
【表11】

【0102】
いずれの試験区も、原料として精白米のみを使用した表7の試験No.C-4よりも良い結果であった。特に、微粉砕した小麦麩皮を多く使用した試験No.F-4は、非常に良い結果であった。このことから、穀物種子の外皮、特に小麦麩皮の粉末を原料として用いることにより、好ましい香ばしさを付与できることが分かった。
【0103】
〔実施例3〕調理品による比較
従来法により製造した食酢(対照)と本発明により製造した食酢とを用いて調理を行い、出来上がった調理品のおいしさを比較した。
すなわち、対照としては、表3の試験No.Z-2に示した従来熟成法により得られた食酢を使用した。また、本発明品としては、表7の試験No.C-4および表11の試験No.F-4により得られた食酢を使用した。尚、ここでいう食酢とは、各試験において得られた酢酸発酵液を水で希釈して酸度4.5%に調整したものをいう。
各メニューの調理法は表12の通り。
【0104】
【表12】

【0105】
このようにして出来上がった各メニューについて、一般の官能評価員25人により官能評価を行った。
「おいしさ」の評価は、1点(おいしくない)〜5点(非常においしい)の5点満点にて各官能評価員が行い、その平均値を評価値とした。
官能評価における評価用語については、表13の通り。
【0106】
【表13】

【0107】
結果は表14の通り。
従来品(試験No.Z-2)に比べて、本発明を用いた調理品の方がおいしいと評価された。特に、試験No.F-4の小麦麩皮を原料に用いた食酢の場合は、非常に良い結果であった。このことから、本発明の食酢は、酢の物など従来の調理用途だけでなく、炒め物などの調理用途にも非常に適していることが分かった。
【0108】
【表14】

【0109】
〔実施例4〕処理液の一部に対し「強制接触工程」を適用した例
従来の食酢の製造方法によって得られた酢酸発酵液又は酒精発酵液に対して、「強制接触工程」を施した乳酸発酵液を添加することにより、本発明の食酢を製造した。
【0110】
(1)香ばしさを付与した乳酸発酵液の調製
試験No.F-4(ふすま使用)と同じ原料組成の諸味を作製し、当該諸味を用いて乳酸発酵液を調製した。
すなわち、精白米を定法に従い常圧で蒸煮した。蒸米を冷却した後、種麹菌アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を接種し、30℃で3日間培養した。培養物を乾燥させ、米麹を得た。
粉砕小麦麩皮6kg、粉砕した精白米12kg、米麹3kg、液化型アミラーゼ製剤60g、糖化型アミラーゼ製剤60g、及びプロテアーゼ製剤120gに水を加え、全量60Lの諸味を調製した。
【0111】
次に、前記諸味に、予め培養しておいた乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)の種菌液を60ml接種して、30℃で2日間、乳酸発酵を行った。
発酵終了後の発酵液を圧搾し、乳酸発酵液48Lを得た。このようにして得られた乳酸発酵液の乳酸濃度は、1.0重量/容量%(w/v)であった。
尚、前記種菌液は、グルコースと酵母エキスを各2.0重量/容量%(w/v)溶解した培地において、30℃で3日間、静置条件でラクトバチルス・プランタラムを培養したものである。
前記乳酸発酵液30Lを用いて、表11の試験No.F-4と同条件で酸素接触試験(強制接触工程)を行い、香ばしさを付与した乳酸発酵液を得た。
残りの乳酸発酵液18Lは、強制接触工程を行わない、つまり香ばしさを付与していない乳酸発酵液として、以下の各試験(試験No.G-1,G-2)の対照品として用いた。
【0112】
(2)本発明の食酢の調製
・試験No.G-1
従来法により調製した酢酸発酵液に、上記の香ばしさを付与した乳酸発酵液を混合して、食酢を調製した。
すなわち、試験No.F-4と同じ方法で調製した酸度7.0重量/容量%(w/v)の酢酸発酵液(強制接触工程を行っていないもの)100容量部に対し、本実施例の上記(1)で調製した香ばしさを付与した乳酸発酵液(強制接触工程を行ったもの)40容量部を混合し、さらに水で希釈して食酢(酸度4.5%)を調製した。
【0113】
・試験No.G-2
従来法により調製した酒精発酵液に、上記の香ばしさを付与した乳酸発酵液を混合して、食酢を調製した。
すなわち、試験No.F-4と同じ方法で調製した酒精発酵液(強制接触工程を行っていないもの)100容量部に対し、本実施例の上記(1)で調製した香ばしさを付与した乳酸発酵液(強制接触工程を行ったもの)50容量部を混合し、さらに水で希釈してアルコール濃度を8.0容量%(v/v)に調整した。
次に、上記の混合液に種菌液を接種し、実施例1(2)と同じ方法で酢酸発酵を行った。これにより得られた酢酸発酵液を水で希釈して食酢(酸度4.5%)を調製した。
【0114】
(3)「好ましい香ばしさ」の品質評価試験
上記で調製した食酢について、実施例1に記載した「好ましい香ばしさ」の品質評価試験を実施した。結果は表15の通り。
なお、対照として、「強制接触工程」を行った乳酸発酵液の代わりに「強制接触工程」を行っていない乳酸発酵液を使用したこと以外は、上記と同じ方法で食酢を調製した。対照の食酢の品質評価結果は、表15の括弧内に示した。
いずれの試験区においても、「強制接触工程」を施した乳酸発酵液を添加することにより、好ましい香ばしさが付与された。このことから、食酢の製造工程のどの段階で「強制接触工程」を施した処理液を添加しても、好ましい香ばしさが付与されることが分かった。
【0115】
【表15】

【0116】
〔実施例5〕酒精発酵液に対し「強制接触工程」を適用した例(試験No.G-3)
酒精発酵液に対して「強制接触工程」を行い、さらに酢酸発酵を行うことにより、本発明の食酢を製造した。
(1)香ばしさを付与した酒精発酵液の調製
実施例4(1)と同様に、試験No.F-4(ふすま使用)と同じ原料組成の諸味60Lを調製した。
当該諸味に酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)75gを添加して、30℃で5日間、酒精発酵を行った。発酵終了後の発酵液に酸度15%の高酸度酢を2L加え、濾過して、酒精発酵液48Lを得た。
このようにして得られた酒精発酵液のアルコール濃度は、15容量%(v/v)であった。
当該酒精発酵液30Lを用いて、表11の試験No.F-4と同条件で酸素接触試験(強制接触工程)を行い、香ばしさを付与した酒精発酵液を得た。
残りの酒精発酵液18Lは、強制接触工程を行わない、つまり香ばしさを付与していない酒精発酵液として、以下の試験の対照品として用いた。
【0117】
(2)本発明の食酢の調製(酢酸発酵工程)
本実施例の上記(1)にて調製した酒精発酵液を水で希釈して、アルコール濃度が8容量%(v/v)となるように調整した。そこに種菌液を接種して、実施例1(2)と同じ方法で酢酸発酵を行った。これにより得られた酢酸発酵液を水で希釈して食酢(酸度4.5%)を調製した。
【0118】
(3)「好ましい香ばしさ」の品質評価試験
上記で調製した食酢について、実施例1に記載した「好ましい香ばしさ」の品質評価試験を実施した。結果は表16の通り。
なお、対照として、「強制接触工程」を行った酒精発酵液の代わりに「強制接触工程」を行っていない酒精発酵液を使用したこと以外は、上記と同じ方法で食酢を調製した。対照の食酢の品質評価結果は、表16の括弧内に示した。
酒精発酵液に対して「強制接触工程」を行うことにより、好ましい香ばしさが付与された。このことから、食酢の製造工程のどの段階で「強制接触工程」を行っても、好ましい香ばしさが付与されることが分かった。
【0119】
【表16】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、今までにない香ばしい風味を持ち、幅広い料理に適した、汎用性の高い食酢の製造方法を提供する。これにより本発明は、特に食品製造業、外食・中食産業の分野での応用が期待される。
【符号の説明】
【0121】
1 タンク
2 処理液
3 導管
4 ポンプ
5 散気管
6 攪拌翼
7 シャワーリング装置
8 回転羽根
9 棚段塔
10 充填塔
11 冷却装置
12 旋回流発生装置
13 ベンチュリー管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸発酵工程を含み、且つ、前記酢酸発酵工程の前段階に酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程を任意に含む食酢の製造方法において、下記の「強制接触工程」を含むことを特徴とする食酢の製造方法、
ここにおいて「強制接触工程」とは、
酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程、酢酸発酵工程のいずれかの工程により得られた処理液の温度を40℃以上に保持しながら、
酸素と、該処理液から揮発した香気成分と、を共に含む気体を、該処理液と強制的に接触させる工程であって、
連続的または断続的に行われる工程である。
【請求項2】
前記処理液が酢酸発酵工程により得られた酢酸発酵液である請求項1に記載の食酢の製造方法。
【請求項3】
前記処理液が、酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程のいずれかの工程により得られた処理液であり、
前記「強制接触工程」を施した処理液を、前記「強制接触工程」を含まない食酢の製造方法によって得られた酒精発酵液に対して添加した後に、
酢酸発酵を行う、請求項1に記載の食酢の製造方法。
【請求項4】
前記処理液が、酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程のいずれかの工程により得られた処理液であり、
前記「強制接触工程」の後に酢酸発酵工程を行う、請求項1に記載の食酢の製造方法。
【請求項5】
前記処理液が、酵素分解工程、乳酸発酵工程、酒精発酵工程のいずれかの工程により得られた処理液であり、
前記「強制接触工程」を施した処理液を、前記「強制接触工程」を含まない食酢の製造方法によって得られた酢酸発酵液に対して添加する、請求項1に記載の食酢の製造方法。
【請求項6】
前記「強制接触工程」を密閉系または略密閉系の槽において行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の食酢の製造方法。
【請求項7】
前記「強制接触工程」の開始時における前記処理液の容積に対する、前記「強制接触工程」の開始時に前記槽内の空寸に存在している酸素の質量と、前記「強制接触工程」の期間中に前記槽外から供給する酸素の質量と、の合計の比率が、処理液1L当たり0.04g以上であって、前記容積が大気圧、20℃でのものである、請求項6に記載の食酢の製造方法。
【請求項8】
前記「強制接触工程」の開始時における前記処理液の容積に対する、前記「強制接触工程」の開始時に前記槽内の空寸に存在している気体の容積と、前記「強制接触工程」の期間中に前記槽外から供給する気体の容積と、の合計の比率が、処理液1L当たり52L以下であって、前記容積が大気圧、20℃でのものである、請求項7に記載の食酢の製造方法。
【請求項9】
原料の一部として、玄米、玄麦、米糠、小麦麩皮からなる群より選択した一以上のものを使用する、請求項1〜5に記載の食酢の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。
【請求項11】
請求項6に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。
【請求項12】
請求項7に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。
【請求項13】
請求項8に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。
【請求項14】
請求項9に記載の食酢の製造方法により製造した食酢を、他の調味原料と混合することを特徴とする、液状調味料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−9640(P2013−9640A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145633(P2011−145633)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【Fターム(参考)】