説明

飲料のコロイド安定度を高めるためのカルシウム安定性高アシルゲランガム

飲料のコロイド安定度を高めるための、カルシウム感度の低い(カルシウムに対して安定な)高アシルゲランガムを調製する。かかるカルシウム感度の低い高アシルゲランガムは、他の高アリールゲランガムと比較して、コロイド安定性のためのすぐれた懸濁性能を有する。かかるカルシウム感度の低い高アシルゲランガムは、従来のpHレベルおよび保持時間と比較して、低温殺菌前のゲランガム発酵液体培地(ポリマー溶液)のpHを調節し、そして低温殺菌保持時間を減じることによって調製する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「飲料のコロイド安定度を高めるためのカルシウム感度の低い高アシルゲランガム」と題する2004年5月26日付けの米国仮特許出願第60/574,215号についての利益を請求する。
発明の分野
本発明は、カルシウムに対して安定な(低カルシウム感度)高アシルゲランガム、および、カルシウムに対して安定な高アシルゲランガムの製造法に関する。本発明はまた、飲料のコロイド安定度および粒子懸濁を高めるためのカルシウムに対して安定な高アシル天然ゲランガムファミリーの使用に関する。
発明の背景
ハイドロコロイドとも呼ばれるガムは多糖類である。多糖類は、1900年頃以来用いられてきた単純な糖構成単位のポリマーである。ガムの使用は、一世紀にわたり、特に過去40年増加し続け、今日では多種多様な製品および過程で用いられている。ある微生物は、より伝統的な供給源からのガムの性質とは異なる性質を有する多糖類を製造することができる。そのような微生物産生の多糖類の最たる例はキサンタンガムである。さらに最近発見された例はウエランガム(welan gum)、ラムサンガム(rhamsan gum)およびゲランガムである。
【0002】
1978年に最初に発見されたゲランガムは、スフィンゴモナス・エロデア種の菌株[もとはシュードモナス・エロデア]、特に菌株ATCC31461[Kang, K.S.等,EP12552および米国特許第4,326,052号;第4,326,053号;第4,377,636号および第4,385,125号]によって製造される。商業的に、このガムは、適切な炭素、有機および無機の窒素、およびリン酸塩供給源、並びに適する微量元素を含有する培地中での微生物の水性培養によって、細胞外生成物として生成される。発酵は、通気、攪拌、温度およびpHが厳重に制御された殺菌条件下で行われる[Kang等,Appl. Environ. Microbiol.,43,[1982],1086]。発酵が完了したとき、ガムを回収する前に、生成された粘性液体培地を低温殺菌して生育可能な細胞を殺す。ガムはいくつかの方法で回収することができる。液体培地からの直接回収ではその本来の形態または高アシル[HA]形態のガムが生じる。塩基での処理による脱アシル化後の回収では、その低アシル[LA]形態のガムが生じる。ガムに存在するアシル基はその特徴に有意に影響を及ぼすことが分かっている。
【0003】
ゲランガムの構成糖は2:1:1のモル比のグルコース、グルクロン酸およびラムノースである。これらは一緒に結合して、線状の四糖繰返し単位を含む主構造となる[O‘Neill M.A.等,Carbohydrate Res.,124,[1983],123およびJansson,P.E.等,Carbohydrate Res.,124,[1983],135]。本来の形態または高アシル[HA]形態では、2つのアシル置換基、アセテートおよびグリセレートが存在する。両置換基は同じグルコース残基上に位置し、平均して、繰返し単位当たり1つのグリセレートおよび2つの繰返し単位毎に1つのアセテートがある。低アシル[LA]形態では、アシル基は除かれていて実質的にそのような基の欠けた線状の繰返し単位をつくる。光散乱および固有粘度測定では、[LA]ガムの場合、およそ5×10ダルトンの分子量を示す[Grasdalen,H.等,Carbohydrate Polymer,7,[1987],371]。X線回折分析では、ゲランガムは三つ折の左像平行二重らせんとして存在することを示す[Chandreskaran等,Carbohydrate Res.,175,[1988],1181,[1988],23]。
【0004】
低アシル[LA]ゲランガムは、ゲル促進陽イオン、好ましくは2価陽イオン、例えばカルシウムおよびマグネシウムの存在下で冷却するとゲルを形成する。形成されたゲルは堅く脆い。高アシル[HA]ゲランガムは、ゲル形成に陽イオンの存在を必要とせず、形成されるゲルはアシル置換基に有意に影響される構造的およびレオロジー的特徴を有する。従って、[HA]ゲランガムの性質は[LA]ゲランガムの性質とは有意に異なる。[HA]ゲルは典型的に軟質で柔軟であり、熱ヒステリシスが欠けている。
【0005】
[LA]ゲランガムの典型的なゲル化温度は、存在する陽イオンの性質および濃度に依存して30℃〜50℃である。本特許の目的のためには、ゲル化、硬化および溶融温度は適切なレオメーターでのゲルの弾性率(G’)値の測定によって定める。用いられる条件は1〜5%の歪レベルで10ラジアン/秒の周波数である。ほとんどの場合、適切な温度は弾性率値の変化の割合で判断する。冷却により急速に増加するのは硬化温度である;加熱したときに急に低下するのは溶融温度である。しばしば、弾性率が1Paの値を上下する温度が指数として用いられる。[HA]ゲランガムの典型的なゲル化温度は70℃のあたりである。[HA]ゲランガムの高いゲル化温度は、果物の浮遊を妨げることができるフルーツフィリングのようないくつかの用途において有利となる。しかしながら、すぐ食べることができるゼリーおよび砂糖菓子のような他の用途では、高いゲル化温度は堆積前の早期ゲル化に関して問題となる。
【0006】
多様なゲルテクスチャーは[HA]および[LA]ゲランガムのブレンドの調節によってつくることができる。しかしながら、[HA]および[LA]ゲランガム形の混合物が個々の成分と調和した温度で2つの別個の配座転移を示すことが証明されている[Morris,E.R.等,Carbohydrate Polymers,30,[1996],165−175]。[HA]および[LA]分子の両方を有する二重らせんの形成の証拠は見つかっていない。これは、[HA]ゲランガムの高ゲル化温度に関連する問題が、ブレンドされた系に依然として存在することを意味している。
【0007】
回収中に水酸化カリウムのような強塩基を用いる処理条件がゲランガムの組成およびレオロジー的性質の両方に影響することは証明されている[Baird,J.K.,Talashek,T.A.およびChang,H.,Proc. 6th International Conference on Gums and Stabilisers for the Food Industry, Wrexham, Clwyd, Wales. 1991年7月−Phillips G.O.等編,IRL Press at OUP発行[1992],479−487]。これは、ガム回収過程中の強塩基処理によりアシル含有量を制御することで多様なテクスチャーにつながることを示唆している。しかしながら、これまで、この観察によって、そのような制御が商業的規模で実現されるには至らなかった。従って、ゲランガムは2つの形態のみ、すなわち、[HA]および[LA]で本質的に入手可能であるにとどまっている。
【0008】
ゲランガムは食品および非食品製造において多種多様な用途を有し、基本的な[HA]および[LA]形態に加えてある範囲の形態、すなわち、ブレンド以外のある範囲の中間的な形態を提供することが望ましい。ゲランガムのそのような新しい形態は、適するゼラチン代替物についての現在の調査に潜在的に有用である。
【0009】
本来のゲランガムのテクスチャーは、プディングのようなミルクベース製品、コーヒークリーム、飲み物およびデザートを含めた多くの商業的食品用途に理想的である。低用量でのゲランガムのレオロジーにより、ココアのような細かい粒子をミルク系に懸濁することが可能となる。これらのテクスチャーの特徴の結果、ゲランガムは培養乳製品、レトルト乳製品および冷凍乳製品で用いることが長い間求められてきた。
【0010】
参照によりその全てが本明細書中に援用されたものとする米国特許第6,602,996号には、グリセレート置換基に対するアセテート置換基の比が少なくとも1である、残基のいくつかにアセテートおよび/またはグリセレート置換基が付いているグルコース残基の線状の四糖繰返し単位を有する構造を含む高アシルゲランガム組成物の製造が記載されている。
【0011】
高アシルゲランガムは、ヨーグルトドリンク製品(フルーツパルプの懸濁のため)およびレトルトミルク飲料に用いられているが、成功したのは限られている。レトルトミルク飲料に用いられるHAゲラン試料は、硬化温度または熱ヒステリシス試験については試験されず、ゲル強度のみが試験された。この不適切なゲル強度試験のため、ポリマーはコロイドを再現的に懸濁できない。さらに、そのような高アシルゲランガムは、UHTおよびHTST用途においてp−クレゾール形成に伴う異臭が出るため、中性ミルク飲料に用いることができない。部分脱アシル化またはより低い硬化温度および測定可能な熱ヒステリシスにより、高アシルゲランガムは牛乳または大豆に基づく系中のココア、またはジュース飲料中のフルーツパルプに対する懸濁能力に乏しい。そのような高アシルゲランガム組成物はカルシウムに安定ではなく、分解する傾向がある。適切な条件下で製造しない限り、HAゲランガムは、これらの系におけるその機能的性質を損なういくらかのLA成分を含有する。
【0012】
1993年以来米国で商業的に入手しうる生成物である低アシルゲランのケルコゲルは、飲料において全く異なる挙動をし、それは水和の前に金属イオン封鎖剤を必要とし、たんぱく質およびカルシウムに敏感であり、そしてこれらの新しい高アシルゲラン分子よりもカルシウムレベルの変化に対する使用範囲がはるかに狭い。
発明の要旨
本発明は、飲料のコロイド安定性を高めるためのカルシウムに対して安定な(低カルシウム感度)高アシルゲランガムに関する。かかるカルシウムに対して安定な高アシルゲランガムは、他の高アシルゲランガムと比較して、コロイド安定性のためすぐれた懸濁性能を有する。
【0013】
本発明の態様では、カルシウムに対して安定な高アシルゲランガムは、従来のpHレベルおよび保持時間と比較して、低温殺菌前のゲラン発酵液体培地(ポリマー溶液)のpHを調節し、そして低温殺菌保持時間を減じることによって製造される。
【0014】
個々の態様では、ゲラン発酵液体培地のpHは、カルシウムに対して安定なゲランの製造過程全体にわたって、特に低温殺菌または加熱処理工程の間、約7.5未満、好ましくは約6.8未満、より好ましくは約6.5未満に維持される。保持時間は一般に約2分以内、好ましくは約0.5〜約1.5分である。
【0015】
得られるゲランガムは75〜80℃を越える高い硬化点を有し、熱可逆性挙動および低カルシウム感度を有する。
別の態様では、飲料はカルシウムに対して安定な高アシルゲランガムを用いて製造される。そのような飲料には、牛乳に基づくまたは他の乳製品に基づく飲料、大豆に基づく飲料、果物に基づく飲料、および様々な栄養素に基づくまたは食事に代わる飲料が含まれる。かかるカルシウムに対して安定な高アシルゲランガムは、良好なコロイド安定性および粒子懸濁性をもたらし、飲料中に見られるまたは加えられるカルシウムに対する感度が低い。
発明の具体的な説明
本発明は、飲料のコロイド安定性および粒子懸濁性を高めるためのカルシウムに対して安定な高アシル天然ゲランガムの製造および使用に関する。
【0016】
ゲランの本来の形態では、多糖類は同じグルコース残基上でアセチルおよびグリセレート置換基によって修飾されている。
【0017】
【化1】

【0018】
これらの残基は、すぐれたコロイド懸濁能力を示す高アシルゲランガム分子をつくる。これらの置換基のどの脱アシル化もできるだけ少なくして高アシルゲランガムの官能価を最大にすることが重要である。
【0019】
平均して、四糖繰返し単位当たり1つのグリセレートおよび2つの四糖繰返し単位ごとに1つのアセテートがある。本来の液体培地の直接回収ではゲランはその本来の形態または高アシル形態で生じ、高アシル形態はポリマー主鎖上の1つのグルコース糖上にアセチルおよびグリセリル置換基を有するP. Elodeaによって修飾されている。この本来の形態の高アシルゲランの単離では軟質のゲルが得られ、ポリマーは高温(>75℃)で熱可逆性ゾル−ゲル転移をする。
【0020】
本来のゲランは発酵、発酵処理後、またはアルカリ、酵素もしくは高温による回収の間で部分的に脱アシル化されうる。作用の仕方により、ゲランの部分アシル化は低ゲル化温度(30〜70℃)、脆いテクスチャーおよび熱非可逆性ゲル網状組織、および/または熱ヒステリシスのような望ましくない性質をもたらすことになる。さらに、より低い(70℃未満)硬化温度をもつが低い熱ヒステリシスを示す生成物は、コロイドを安定化する能力が低い。アシル基の除去は、ゲランをカルシウムに対してより反応性にし、これによって牛乳に基づく飲料のような製品における適用が制限され、そしてまた、乳たんぱくおよび果物たんぱくへのゲラン分子親和性が高まり、コロイド懸濁液の長期安定性が悪くなることにつながる。
【0021】
本発明は、脱アシル化を最小限にし、低い熱ヒステリシスにすることがカルシウムに対して安定な高アシルゲランをつくるという発見に関する。そのようなゲランは飲料において高いコロイド安定性を有し、懸濁性能の大きな増強を可能にする。ゲランガムは75〜80℃を越える高い硬化点を有し、熱可逆性挙動および低カルシウム感度を有する。
【0022】
カルシウムに対して安定な高アシルゲランガムは、ゲラン分子のランダムまたはブロック脱アシル化をできるだけ少なくする調節された条件下で製造される。これらの本来のゲラン分子は高ゲル化温度、および適切なレオメーターを用いて熱流動学的試験によって特徴づけられるような最小熱ヒステリシス(ポリマーの硬化および再溶融)を有する。pH7.5より高いpHでの低温殺菌または他の形の熱処理は、対照的に、ブロックまたはランダム脱アシル化を招く。
【0023】
カルシウムに対して安定な高アシルゲランガムの分子はまた、より低い硬化温度を有するより少ないアシルタイプのゲランと比較して、たんぱく質反応性およびカルシウム感度が低い。
【0024】
安定化物質は小さいサイズのポリマーまたはたんぱく質の網状組織を形成する必要がある。網状組織中の細孔が大きすぎると、小さいコロイド物質は網状組織の中に流入することができる。ゲル形成ポリマーのいくつかは大きい細孔サイズを有することができる。小さいコロイド物質でも安定化する能力で証明されるように、本発明のカルシウムに対して安定な高アシルゲランガムは小さい細孔サイズを有する。
【0025】
他の安定化方法はゲル網状組織および高粘度をもたらすが、安定化を確実に良好なものにするのに必要な微細構造を得ることができない。例はカルシウムに敏感な低アシルゲランガムである。他の方法には、カルボキシメチルセルロース(Clark等)または金属イオン封鎖剤(P&G)を用いて、低アシルゲランガム(ケルコゲル)でこのカルシウム感度の調節を試みることが含まれる。
【0026】
カルシウムに対して安定な高アシルゲランガム特有の性質は、分子が様々な処理条件下で安定な液体ゲルを容易に形成することを可能にする。例えば、非常に低濃度(0.01〜0.05%)で、カルシウムに対して安定な高アシルゲランガムを広範囲な飲料に用いて、見掛け粘度を高くすることなく、フルーツパルプ、ココアパウダー、ミネラル、ゲル片、大豆たんぱく、ホエー微粒子、乳化フレーバー油、および他のたんぱく質凝集体のような粒状物質の懸濁液を安定化することができる。より高い使用レベル(0.06〜0.20%)では、カルシウムに対して安定な高アシルゲランガムは、粒子懸濁液を安定化することに加えて、濃く粘性のある口当たりをもたらす。
【0027】
カルシウムに対して安定な高アシルゲランガムによって安定化されたコロイドまたは粒子懸濁液は非常に均質な外観を有し、すぐれた長期安定性を示す。さらに、飲料製品が初めは濃くそして時間を経て不安定化することによって懸濁粒子の沈降を招くカルシウムにより敏感な低アシルゲランタイプとは異なり、不溶性または可溶性カルシウム塩を加えて弱い網状組織を不安定にすることなく飲料の栄養価を高めることができる。
【0028】
カルシウムに対して安定な高アシルゲランガムは、低温殺菌する前に、ゲラン発酵液体培地のpHを調節することによって製造される。ポリマー溶液または発酵液体培地の平均pHは、工程全体にわたって、特に低温殺菌または熱処理工程の間、約7.5未満、好ましくは約6.8未満、より好ましくは約6.5未満である。7.5より高いpHでの加熱は避けなければならない。
【0029】
液体培地のpHは、望ましいpHに達するまで、硫酸、塩酸、リン酸およびクエン酸のような適当な酸を加えることによって調節される。
液体培地は80〜約110℃、好ましくは約95℃で約5分以内、好ましくは約0.5〜約1.5分間、一般に約1分間低温殺菌される。
【0030】
ゲルは次いで、例えば、イソプロピルアルコールまたはエタノールのようなアルコールの添加によって沈殿させる。
沈殿したゲラン繊維は適当な温度、例えば約40〜約100℃、一般に約75℃で、固形分が約85〜約98%、好ましくは約92〜約95%に達するまで乾燥する。乾燥繊維は次に、適当な方法で粉砕して微粉末にする。
【0031】
カルシウムに対して安定な高アシルゲランは、懸濁粒子を含有する任意の適する飲料に加えることができる。そのような飲料には、これらに限定されないが、チョコレートミルクおよび他の牛乳に基づくまたは乳製品に基づく飲料、大豆に基づく飲料、果物に基づく飲料、および様々な栄養素に基づくまたは食事に代わる飲料、および繊維に富む通じにきくドリンクが含まれる。
実施例1:カルシウムに対して安定な(CS)HAゲランガムおよび比較ガムの製造方法
高いゲル硬化温度および低い熱ヒステリシスを有するカルシウムに対して安定な(CS)HAゲラン、高ヒステリシス指数(HHI)ゲラン、および低硬化温度(LST)ゲランを製造した。3リットルの温かい本来のゲラン液体培地(50℃、pH6.5)を3つの1リットル部に分けた。各1リットルの液体培地を別々に処理して3つのHAゲラン試料を作った。
【0032】
CS HAゲランは、液体培地を希硫酸でpH5.5に調節することによって調製した。次に、液体培地を95℃で1分間低温殺菌し、次いでブレンダー中で3リットルの85%イソプロピルアルコールで沈殿させた。
【0033】
HHI HAゲランは、1.8gの45%(w/w)KOHを液体培地に加え、50℃で1時間撹拌することによって調製した。上記のような低温殺菌および沈殿の前に、液体培地のpHは希硫酸でpH5.5に調節した。
【0034】
LST HAゲランは、液体培地のpHを希KOH(5%、w/w)溶液で調節することによって準備した。次に、液体培地を95℃で5分間低温殺菌し、次いでブレンダー中で3リットルの85%イソプロピルアルコールで沈殿させた。
【0035】
沈殿ゲラン繊維は75℃で92〜95%固形分に乾燥し、そして微粉末に粉砕した。
実施例2:3つの形のHAゲランガムについての差異
HAゲランガムの熱流動学的性質はレオメーターを用いて試験した。1.5gの各ゲランガム粉末を、一定の撹拌を行いながら95℃に加熱することによって、294gのDI水中で水和させた。6mlの0.3M塩化カルシウム溶液をこの熱溶液へ加えた。熱DI水を加えて、溶液の最終重量を300gに調整した。
【0036】
熱溶液の温度の関数としてのレオロジー的性質は、95℃から20℃へ(4℃/分)、次いで直ちに20℃から95℃へ(4℃/分)再加熱する、歪0.2および1ヘルツの振動モード下で操作される4cmの4°円錐およびプレートシステムのボーリン(Bohlin)CVOレオメーターを用いて測定した。2つの熱流動学的性質、ゲル硬化温度およびヒステリシス指数を明示し、HAゲランガムの区別に用いた。ゲル硬化温度は、試料の弾性率(G’)が冷却中に1Paに達する温度と定義した。ヒステリシス指数は、再加熱中のゲル硬化温度でのG’対冷却中のゲル硬化温度でのG’の比と定義した。3種のHAゲラン試料の熱レオロジー的性質はこの方法を用いて測定および比較した。
【0037】
3種の試料の熱流動学的性質は表1に示す。CSゲランは、3種のHAゲラン試料の中で、最高ゲル化温度および最低ヒステリシス指数を有する。HHI試料は最高ヒステリシス指数を有し、LST試料は最低ゲル硬化温度を有する。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例3:カルシウムのHAゲランガムへの影響
カルシウムイオンが3種のHAゲラン試料の弾性率へ及ぼす影響を観察した。0.035%ゲラン溶液を90℃へ加熱することによって脱イオン(DI)水中で準備した。望ましい量のカルシウムイオン(0、2、4および8mM)を熱溶液へ加え、その後、溶液を一定の撹拌を行いながら氷浴中で12℃に冷却した。室温で18時間置いた後、弾性率をビラスティック(Vilastic)V−Eシステムレオメーターを用いて歪0.2および1ヘルツで測定した。
【0040】
カルシウムイオン濃度が3種の0.035%ゲランガム溶液の相対弾性率へ及ぼす影響は表1に示す。相対弾性率値はカルシウム濃度ゼロでの弾性率に関して正規化した。
溶液の弾性率は、溶液の構造的特性および懸濁粒子物質へ及ぶその力をよく示すものである。あるレベルの弾性率は粒子が溶液中に懸濁し続けるのに必要とされるが、弾性率が高すぎることは、飲料製品にとって望ましくない官能特性を有する非常に組織化された網状構造を意味することになる。
【0041】
図1に示すように、HHIゲラン溶液の弾性率はカルシウムイオン濃度に非常に敏感であり、カルシウム濃度が高くなるに伴って鋭い上昇および下降を示した。LST試料では、溶液は8mMカルシウムの存在でその弾性率がほとんどなくなり、粒子懸濁性がより高いカルシウムレベルではよくないことを示唆している。これに対して、CS試料はカルシウム濃度が高くなるに伴ってより安定な弾性率曲線を示した。
実施例4:カルシウムに対する水和に関する感度
低アシル(LA)ゲランはカルシウムシオンの存在下での水和はわずかである。他方、CS HAゲランはカルシウムシオンの存在下で水和する。
【0042】
2mMのカルシウムイオンを含有するゲラン溶液(0.035%)は、実施例3に記載の方法と同様の方法を用いて、CS HAゲランおよびLAゲランガムから製造した。各ゲラン試料から2つの溶液を製造した。第1の溶液では、90℃に加熱した後にカルシウムを加えた。第2の溶液では、90℃に加熱する前にガムを2mMカルシウム溶液へ直接加えた。これらの溶液の弾性率データは表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
弾性率データから、CS HAゲランは水和することができ、カルシウムの存在下でゲラン網状構造を展開することが明らかである。これに対して、LAゲランは、カルシウムを加熱前に加えると全く水和しない。
実施例4:HAゲランを含むチョコレート飲料中のココア懸濁
CS HAゲランは、HHIおよびLST HAゲランガムとは対照的に、ココア粒子をチョコレート飲料に懸濁することができる。
【0045】
HAゲランで安定化されたチョコレート飲料は、表3に示す配合で製造された。
【0046】
【表3】

【0047】
手順
1.全ての乾燥成分を混合する。
2.予備混合成分を撹拌しながら水に加える。
【0048】
3.溶液を87℃に加熱する。
4.1500psi第1段階、500psi第2段階で均質化する。
5.138℃で6秒UHT処理する。
【0049】
6.無菌状態下、25℃で充填する。
ココア粉末の懸濁および飲料試料の外観は3人のパネリストによって視覚的に評価された。表4に示す結果は、CS HAゲランがHHIまたはLSTゲランよりもはるかにすぐれていることを示している。
【0050】
【表4】

【0051】
実施例6:カルシウム強化大豆チョコレートミルク中のココア懸濁およびミネラル安定化
CS HAゲランは、ココア粒子およびカルシウムミネラルを大豆チョコレートミルク中で懸濁する能力を有する。
【0052】
CS HAゲランガムで安定化されたカルシウム強化大豆チョコレートミルクは、表5に示す配合を用いて製造した。
【0053】
【表5】

【0054】
手順
1.全ての乾燥成分を混合する。
2.予備混合成分を撹拌しながら水に加える。
【0055】
3.溶液を87℃に加熱する。
4.1500psi第1段階、500psi第2段階で均質化する。
5.138℃で6秒UHT処理する。
【0056】
6.無菌状態下、25℃で充填する。
CS HAで安定化された大豆チョコレートミルクの目視評価は、ココア粒子またはカルシウムミネラルの沈降がないことを示した。
【0057】
本発明の現在好ましい実施方法を含めた具体的な実施例について本発明を説明してきたが、本発明の精神および範囲内で上記の系および技術を様々に変更しうることは、本技術分野における当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】3種の0.035%ゲランガム溶液の相対弾性率へのカルシウムイオン濃度の影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム感度の低い高アシルゲランガムの製造方法であって、ゲランガム発酵液体培地を調製し、該液体培地のpHを約7.5未満に調節し、そして該液体培地を低温殺菌することを含む方法。
【請求項2】
pHを約6.8未満に調節することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
pHを約6.5未満に調節することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
硫酸、塩酸、リン酸およびクエン酸よりなる群から選択される酸を加えることによってpHを調節することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
液体培地を約80℃〜約110℃の温度で低温殺菌することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
液体培地を約2分未満の間低温殺菌することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
液体培地を約0.5〜約1.5分間低温殺菌することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
低温殺菌後、ゲランガムを液体培地から沈殿させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ゲランガム調製中のアセチルおよびグリセレート置換基の脱アシル化を防ぐ方法であって、ゲランガム発酵液体培地を調製し、該液体培地のpHを約7.5未満に調節し、そして該液体培地を低温殺菌することを含む方法。
【請求項10】
pHを約6.8未満に調節することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
pHを約6.5未満に調節することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
硫酸、塩酸、リン酸およびクエン酸よりなる群から選択される酸を加えることによってpHを調節することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
液体培地を約80℃〜約110℃の温度で低温殺菌することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
pHが約7.5未満のゲランガム液体培地を低温殺菌することによって調製された、硬化点が70℃を超えるカルシウム感度の低い高アシルゲランガム。
【請求項15】
pHが約6.8未満である、請求項14に記載のカルシウム感度の低い高アシルゲランガム。
【請求項16】
pHが約6.5未満である、請求項15に記載のカルシウム感度の低い高アシルゲランガム。
【請求項17】
懸濁粒子およびカルシウム感度の低い高アシルゲランガムを含む飲料であって、該ゲランガムが約7.5未満のpHを有するゲランガム液体培地を低温殺菌することによって調製される、前記飲料。
【請求項18】
懸濁粒子が、フルーツパルプ、ココアパウダー、ミネラル、ゲル片、大豆たんぱく、ホエー微粒子、乳化フレーバー油、およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項17に記載の飲料。
【請求項19】
ゲランガムの濃度が0.01〜0.05重量%である、請求項17に記載の飲料。
【請求項20】
ゲランガムの濃度が0.06〜0.20重量%である、請求項17に記載の飲料。
【請求項21】
不溶性または可溶性カルシウム塩をさらに含む、請求項17に記載の飲料。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−500048(P2008−500048A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515227(P2007−515227)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/018040
【国際公開番号】WO2005/117607
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506128352)シーピー・ケルコ・ユーエス・インコーポレーテッド (18)
【Fターム(参考)】