説明

飲料ディスペンサ

【課題】製造コストが増大する事態や飲料の品質が低下する事態を招来することなく、可及的に濃度が一定の飲料を効率良く提供すること。
【解決手段】抽出手段10によって抽出された飲料Bを貯留する飲料タンク20を備え、この飲料タンク20から飲料Bの供給を行う飲料ディスペンサ1において、飲料タンク20の上方部において飲料タンク20の内部に進入した後、飲料タンク20の下方部に向けて屈曲延在し、飲料タンク20の下方部に開口する吐出口51aを介して飲料タンク20の内部に飲料Bを供給する飲料供給管路51を設けることにより、抽出手段10から供給される飲料Bにより、飲料タンク20の内部に貯留された下層部の飲料Bが上層部の飲料Bと混合するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料ディスペンサに関するもので、特に、抽出原料から抽出した飲料を一旦飲料タンクに貯留し、この飲料タンクから飲料の供給を行うようにした飲料ディスペンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料の提供を行う飲料ディスペンサには、レギュラーコーヒーやリーフティー等のように、抽出原料から抽出した飲料を供給するものがある。この種の飲料ディスペンサでは、粉末状のインスタント原料によって生成する場合に比べて、味や香りの点で本格的な飲料を供給することができるようになる。しかしながら、飲料を生成する時間に関しては、都度抽出原料に湯を加えて抽出するものであるため、インスタント飲料を用いたものに比べて長大化せざるを得ず、供給効率の点で不利となる。
【0003】
このため従来においては、抽出原料から抽出した飲料を飲料タンクに滴下して貯留し、この飲料タンクから飲料の供給を行うようにしたものも提供されている。こうした飲料ディスペンサによれば、抽出原料から抽出した複数杯分の飲料を予め飲料タンクに貯留しておけば、短時間のうちに飲料の供給が可能となり、その効率を大幅に改善することが可能になる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−85363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、抽出原料から抽出される飲料は、その濃度が一定とはならず、抽出当初が濃くなり、抽出時間が経過するに従って漸次薄くなる傾向がある。従って、飲料タンクの内部においても、当初に抽出した飲料が貯留する下層部と、抽出後期の飲料が貯留する上層部とでは飲料に濃度差が生じるようになり、最初に提供する飲料と最後に提供する飲料とで味や香りが大きく異なる虞れがある。
【0006】
こうした飲料タンク内部の濃度差に起因した問題は、飲料タンク内部の飲料を撹拌することで解消することは可能である。しかしながら、飲料を撹拌するためには、そのためのパドルや動力源を追加しなければならないため、飲料ディスペンサの製造コストが増大する事態を招来することになる。しかも、飲料を撹拌した場合には、空気に対する接触機会が大幅に増大するため酸化が促進されることになり、味や香り等の品質を確保する上で必ずしも好ましいとはいえない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、製造コストが増大する事態や飲料の品質が低下する事態を招来することなく、可及的に濃度が一定の飲料を効率良く提供することのできる飲料ディスペンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る飲料ディスペンサは、抽出手段によって抽出された飲料を貯留する飲料タンクを備え、この飲料タンクから飲料の供給を行う飲料ディスペンサにおいて、前記抽出手段から供給される飲料により、飲料タンクの内部に貯留された下層部の飲料が上層部の飲料と混合するように、これら抽出手段と飲料タンクとの間に飲料供給管路を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る飲料ディスペンサは、上述した請求項1において、前記飲料供給管路は、飲料タンクの下方部に吐出口を有し、この吐出口を介して飲料タンクの内部に飲料を供給するものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る飲料ディスペンサは、上述した請求項2において、前記飲料供給管路は、飲料タンクの上方部において飲料タンクの内部に進入した後、飲料タンクの下方部に向けて屈曲延在するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る飲料ディスペンサは、上述した請求項3において、前記飲料供給管路は、飲料タンクの内壁面から離隔した位置に配置したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る飲料ディスペンサは、上述した請求項3において、前記飲料タンクは、横断面が円形状を成すものであり、前記飲料供給管は、下流端部が飲料タンクの径方向に沿い、かつ吐出口を飲料タンクの軸心に向けて配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、飲料供給管路を通じて供給される飲料によって飲料タンクの内部に貯留された下層部の飲料を上層部の飲料と混合させるようにしているため、動力源等の専用の混合手段が不要であり、しかも空気との接触機会が増えることもなく、飲料タンクに貯留された飲料に濃度差が生じる事態を防止することができる。従って、製造コストの増大や飲料の品質が低下する事態を招来することなく、可及的に濃度が一定の飲料を効率良く提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る飲料ディスペンサの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明の実施の形態である飲料ディスペンサを示したものである。ここで例示する飲料ディスペンサ1は、挽き豆から抽出したコーヒー飲料Bを販売するもので、コーヒー抽出手段10及び飲料タンク20を備えている。
【0016】
コーヒー抽出手段10は、図には明示していないが、例えば抽出容器及びフィルタブロックを備え、抽出容器において挽き豆と湯とを混合させることによってコーヒーの抽出を行い、その後、フィルタブロックを通じてコーヒー飲料Bのろ過供給を行うものである。本実施の形態では、一度に複数杯分(例えば、カップ10杯分)のコーヒー飲料Bを生成することのできる大きさのコーヒー抽出手段10を適用している。
【0017】
飲料タンク20は、コーヒー抽出手段10において抽出したコーヒー飲料Bを一旦貯留するためのものである。図1及び図2に示すように、本実施の形態では、横断面が円形状を成し、かつ底壁20aが中心部に向けて漸次下方に傾斜してテーパ状を成す飲料タンク20を適用している。飲料タンク20の上端部には、開口20bが設けてある。この開口20bは、蓋部材22を螺合させた場合に内部を密封することが可能である一方、蓋部材22を開放した場合にはその内部の清掃を行うことが可能である。
【0018】
この飲料タンク20には、吸気通路30、吐出通路40及び供給通路50が接続してある。吸気通路30は、飲料タンク20の上方部から延在し、吸気バルブ31を介して真空ポンプ32に接続したものである。この吸気通路30は、吸気バルブ31を開成した状態で真空ポンプ32を駆動した場合に飲料タンク20の内部から空気を排出することにより、飲料タンク20の内部圧力を減少させることが可能である。吐出通路40は、飲料タンク20の底壁20aにおいて最も低所となる中央部から延在し、吐出バルブ41を介して吐出ノズル42に至るものである。この吐出通路40は、吐出バルブ41を開成した場合に飲料タンク20の内部に貯留したコーヒー飲料Bを吐出ノズル42から吐出することが可能である。供給通路50は、コーヒー抽出手段10と飲料タンク20との間を接続し、コーヒー抽出手段10で抽出されたコーヒー飲料Bを飲料タンク20に供給するためのものである。図に示すように、本実施の形態では、飲料タンク20の上方部において飲料タンク20の内部に進入した後、飲料タンク20の下方部に向けて屈曲延在し、飲料タンク20の下方部において吐出口51aが開口する飲料供給管路51を備えて供給通路50を構成している。この飲料供給管路51は、飲料タンク20の内部において内壁面から離隔する態様で延在するとともに、その下流端部が飲料タンク20の径方向に沿って僅かに屈曲延在し、さらにその吐出口51aが飲料タンク20の軸心に向けて開口するように配置してある。
【0019】
尚、図には明示していないが、この飲料ディスペンサ1においては、飲料タンク20の湯煎を行うための手段が付設されており、飲料タンク20に貯留されたコーヒー飲料Bを所望の加温状態に維持することが可能である。
【0020】
上記のように構成した飲料ディスペンサ1では、コーヒー抽出手段10において定期的に複数杯分のコーヒー飲料Bが生成される。コーヒー抽出手段10でコーヒー飲料Bの生成が開始されると、吸気通路30において吸気バルブ31が開成した状態で真空ポンプ32が駆動し、飲料タンク20の内部から空気が排出されることになる。このとき、飲料タンク20は、上部の開口20bが蓋部材22によって閉成されているとともに、供給通路50の吐出バルブ41が閉成した状態にある。この結果、飲料タンク20の内部圧力が減少され、コーヒー抽出手段10で生成されたコーヒー飲料Bが供給通路50を通じて飲料タンク20に吸引されることになり、飲料タンク20の内部に順次コーヒー飲料Bが貯留される。
【0021】
コーヒー抽出手段10のコーヒー飲料Bがすべて飲料タンク20に供給されると、吸気バルブ31が閉成するとともに、真空ポンプ32の駆動が停止する一方、図示していない加圧手段によって飲料タンク20の内部が加圧され、販売待機状態となる。
【0022】
この販売待機状態において、利用者が図示せぬ販売ボタンを操作すると、図示せぬ制御手段から供給指令が与えられ、販売動作を開始する。すなわち、吐出ノズル42の下方域にカップCを投入した後、吐出バルブ41を所定の時間だけ開成する。これにより、飲料タンク20に貯留したコーヒー飲料BがカップCに注出され、利用者に対してコーヒー飲料Bを提供することができる。
【0023】
以下、上述した販売動作が繰り返し実行され、飲料タンク20に貯留したコーヒー飲料Bが順次利用者に販売されることになる。この場合、都度挽き豆と湯とを混合させてコーヒー飲料Bを抽出する必要がないため、コーヒー飲料Bを提供するまでの時間を大幅に短縮することができ、販売効率の点できわめて有利となる。
【0024】
ここで、上述した飲料ディスペンサ1においても、コーヒー抽出手段10によって抽出されるコーヒー飲料Bは、挽き豆と湯とから抽出するものであるから、抽出当初が濃くなり、抽出時間が経過するに従って漸次薄めの傾向となる。従って、飲料タンク20に供給されるコーヒー飲料Bに関しても、当初に供給されるものに比べて後半に供給されるものの濃度が薄くならざるを得ない。
【0025】
しかしながら、上記の飲料ディスペンサ1では、飲料供給管路51の吐出口51aを飲料タンク20の下方部において底壁20aに向かう態様で開口させている。従って、飲料供給管路51の吐出口51aから吐出されるコーヒー飲料Bは、飲料タンク20の下方部からさらに下方に向かった後、底壁20aの内面に到達した時点で反転し、飲料タンク20の上方部に向かう。さらに飲料タンク20の上方部に到達したコーヒー飲料Bはそこで反転して再び下方に向かうことになる。これにより、抽出当初の濃いめに抽出されて飲料タンク20の下層部に貯留されたコーヒー飲料Bは、後から供給される薄めのコーヒー飲料Bによって飲料タンク20の上層部に押し出され、かつ上層部のコーヒー飲料Bと混合するようになる。
【0026】
以下、飲料供給管路51の吐出口51aからコーヒー飲料Bが供給されている間、飲料タンク20の内部においては上述した動作が繰り返し行われることになり、飲料タンク20に貯留されたコーヒー飲料Bに濃度差が生じる事態を可及的に防止することができるようになる。また、コーヒー抽出手段10のコーヒー飲料Bがすべて飲料タンク20に供給された直後にあっては、飲料供給管路51の吐出口51aから気泡が吐出される場合もあり、この気泡の上昇によるコーヒー飲料Bの撹拌効果も期待することができる。これらの結果、飲料タンク20から最初に販売したコーヒー飲料Bと、後半に販売したコーヒー飲料Bとの品質に味や香りのバラ付きが生じることも無く、常に一定の品質のコーヒー飲料Bを利用者に提供することができる。
【0027】
しかも、飲料供給管路51の吐出口51aから吐出されるコーヒー飲料Bによって飲料タンク20の内部を混合させるようにしているため、別途専用の手段を要することがなく飲料ディスペンサ1の製造コストが増大する事態を招来することもない。さらに、吐出されるコーヒー飲料Bによって飲料タンク20の内部に貯留したコーヒー飲料Bが混合されるのであるから、パドル等の撹拌手段によって撹拌する場合に比べて空気との接触機会も大幅に減少することになり、コーヒー飲料Bが早期に酸化する等、品質が低下する事態を招来することもない。
【0028】
以上説明したように、上記飲料ディスペンサ1によれば、飲料供給管路51を通じて供給される飲料によって飲料タンク20の内部に貯留された下層部の飲料を上層部の飲料と混合させるようにしているため、製造コストの増大や飲料の品質が低下する事態を招来することなく、可及的に濃度が一定のコーヒー飲料Bを効率良く販売することが可能となる。
【0029】
尚、上述した実施の形態では、コーヒー飲料Bを販売する飲料ディスペンサを例示しているが、提供する飲料は必ずしもコーヒー飲料Bである必要はなく、抽出飲料であればリーフティー等、その他の飲料であっても構わない。また、飲料を提供する装置としては自動販売機として構成してももちろん良い。
【0030】
さらに、上述した実施の形態では、飲料タンク20の上方部において飲料タンク20の内部に進入した飲料供給管路51を下方部に向けて屈曲延在させるようにしているため、飲料供給管路51に残留することなくすべての飲料を提供することが可能になるが、必ずしも上方部において飲料タンクの内部に進入させる必要はなく、直接飲料タンクの下方部に吐出口を開口させるようにしても良い。
【0031】
また、上述した実施の形態では、飲料供給管路51を飲料タンク20の内壁面から離隔する態様で配置しているため、飲料タンク20の内部を清掃する際に飲料供給管路51が邪魔になることがなく、清掃作業の容易化を図ることが可能になるが、必ずしも飲料タンクの内壁面から離隔させる必要はない。
【0032】
さらに、上述した実施の形態では、飲料タンク20として横断面が円形状のものを適用しているが、飲料タンクの形状はその他のものであっても構わない。
【0033】
またさらに、上述した実施の形態では、飲料タンク20の内部圧力を減少させることによって抽出手段の飲料を飲料タンク20に供給するようにしているが、必ずしもこれに限らない。例えば、抽出手段で抽出した飲料を加圧することによって飲料タンクに飲料を供給することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態である飲料ディスペンサの構成を概念的に示す図である。
【図2】図1に示した飲料タンクの断面平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 飲料ディスペンサ
10 コーヒー抽出手段
20 飲料タンク
50 供給通路
51 飲料供給管路
51a 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出手段によって抽出された飲料を貯留する飲料タンクを備え、この飲料タンクから飲料の供給を行う飲料ディスペンサにおいて、
前記抽出手段から供給される飲料により、飲料タンクの内部に貯留された下層部の飲料が上層部の飲料と混合するように、これら抽出手段と飲料タンクとの間に飲料供給管路を設けたことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項2】
前記飲料供給管路は、飲料タンクの下方部に吐出口を有し、この吐出口を介して飲料タンクの内部に飲料を供給するものであることを特徴とする請求項1に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項3】
前記飲料供給管路は、飲料タンクの上方部において飲料タンクの内部に進入した後、飲料タンクの下方部に向けて屈曲延在するものであることを特徴とする請求項2に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項4】
前記飲料供給管路は、飲料タンクの内壁面から離隔した位置に配置したことを特徴とする請求項3に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項5】
前記飲料タンクは、横断面が円形状を成すものであり、
前記飲料供給管は、下流端部が飲料タンクの径方向に沿い、かつ吐出口を飲料タンクの軸心に向けて配置したことを特徴とする請求項3に記載の飲料ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−66289(P2009−66289A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239623(P2007−239623)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】