説明

飲料用水の製造工程における活性炭の脱塩素能力回復方法

【課題】脱塩素処理に用いられる活性炭の脱塩素能力を効果的に回復乃至維持できる、活性炭の脱塩素能力回復維持方法を提供する。
【解決手段】逆浸透膜処理された処理水に塩素剤を添加し、その後、活性炭を備えた脱塩素処理槽に通水することにより脱塩素処理する工程を備えた飲料用水の製造工程において、酸を添加した酸添加水で前記脱塩素処理槽を洗浄することにより、活性炭の脱塩素能力を回復させることを特徴とする、飲料用水の製造工程における活性炭の脱塩素能力回復方法を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼飲料水、茶、コーヒー、ビールなどの製造に用いる飲料用水を製造する工程において、脱塩素処理に用いられる活性炭の脱塩素能力を回復する方法、並びに、これを利用した飲料用水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼飲料水、茶、コーヒー、ビールなどの製造に用いる飲料用水の原料水として、従来は水道水や井戸水などが用いられてきたが、近年、製品品質の均一化及びミネラル成分の調整などを目的として、脱塩水が用いられることが多くなっている。
このような脱塩水を製造するための脱塩方法として、イオン交換樹脂法や逆浸透膜法などを挙げることができるが、イオン交換樹脂法は定期的な薬品再生を必要とするなど運転管理が煩雑であることから、逆浸透膜法が採用されることが増えている。
【0003】
ところで、清涼飲料水、茶、コーヒー、ビールなどの飲料水製造現場では、脱塩処理された処理水を貯留しておく必要があるため、用水貯留工程の細菌繁殖を防止する目的で殺菌・消毒が行われる。
【0004】
塩素殺菌は、我が国の水道の安全性を支えてきた重要な技術であり、特に水系伝染病の撲滅には大きな成果を上げてきた。殺菌・消毒技術としてはオゾン、紫外線利用などの技術も利用され始めているが、塩素消毒は依然として、殺菌・消毒の主流を担う技術と言える。清涼飲料水、茶、コーヒー、ビールなどの飲料水製造業などにおいても、用水貯留工程の細菌繁殖を防止する目的で塩素剤が添加されることが多い。
しかし、残留塩素は独特の塩素臭を有し、また、製品の味を変質させる場合もあるため、飲料水製造業の用水利用の最終段階では残留塩素を除去する脱塩素処理が行われている。
【0005】
脱塩素処理の方法としては、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を添加する方法もあるが、還元剤の過剰添加などの問題があるため、活性炭による脱塩素処理を採用するのが一般的である。
【0006】
活性炭によって脱塩素処理する技術に関しては、例えば特許文献1において、塩素イオンを含む飲料水を、直流電圧を印加した一対の白金電極間に通水することにより、残留塩素を含有したアルカリ水を得た後、活性炭を内蔵した塩素除去フィルタに通流して飲料水を得る装置の発明が開示されている。
また、特許文献2において、逆浸透膜処理の前処理として生物活性炭塔を配置し、該生物活性炭の流入水を水温10〜35℃、pH4〜8、残留塩素0.5〜5mg/リットルとすることを特徴とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−198555号公報
【特許文献2】特開2002−336887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、清涼飲料水、茶、コーヒー、ビールなどの製造に用いる飲料用水の製造方法として、原料水を脱塩処理して得られた処理水に塩素剤を添加して消毒し、得られた消毒水を、活性炭を備えた脱塩素処理槽に通水することにより脱塩素処理して飲料用水を製造する方法が採用されているが、脱塩処理方法として逆浸透膜処理法を採用すると、活性炭の脱塩素能力が経時的に低下し、残留塩素濃度が高くなるという問題を生じることが次第に分かってきた。
【0009】
そこで本発明の目的は、清涼飲料水、茶、コーヒー、ビールなどの製造に用いる飲料用水の製造工程において、脱塩処理方法として逆浸透膜処理法を採用した場合であっても、脱塩素処理に用いられる活性炭の脱塩素能力を効果的に回復させることができる、活性炭の脱塩素能力回復方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、逆浸透膜処理された処理水に塩素剤を添加し、その後、活性炭を備えた脱塩素処理槽に通水することにより脱塩素処理する工程を備えた飲料用水の製造工程において、酸を添加した酸添加水で前記脱塩素処理槽を洗浄することにより、活性炭の脱塩素能力を回復させることを特徴とする、飲料用水の製造工程における活性炭の脱塩素能力回復方法を提案するものである。
【発明の効果】
【0011】
活性炭による脱塩素反応は、活性炭中の活性点による触媒反応と考えられ、その阻害要因としては、例えば酸化作用による活性点の減少や、活性点表面への鉄化合物、マンガン化合物、カルシウム化合物及び有機物などの付着及び酸化物の蓄積などによる活性炭表面の被覆或いは触媒被毒などが考えられる。本発明者らは、逆浸透膜処理した場合、鉄化合物、マンガン化合物、カルシウム化合物及び有機物などは全て除去されるため、逆浸透膜処理水に対する脱塩素反応阻害は、活性点表面へClOが吸着してCOが蓄積・安定化したり、活性点表面へ水酸イオン(OH)が吸着してCOHが蓄積・安定化したりすることにより、活性炭の活性点Cが減少して行くことが要因であると推定した。そして、活性炭の活性点表面に吸着する可能性のある酸化物やOHを除くことができれば、活性炭の活性点Cを回復することができると考え、酸を添加した酸添加水で前記脱塩素処理槽を洗浄することにより、酸化物やOHを除くようにしたところ、活性炭の脱塩素能力を回復させることができた。
【0012】
本発明によれば、清涼飲料水、茶、コーヒー、ビールなどの製造に用いる飲料用水を製造する飲料用水の製造工程において、脱塩処理方法として逆浸透膜処理法を採用したとしても、活性炭の脱塩素能力が経時的に低下しないようにすることができるから、塩素臭が気にならない美味しい飲料用水を安定して製造することができる。しかも、逆浸透膜処理法による用水処理において、溶性ケイ酸に起因する水回収率の低下を招くことなく、また、低い残留塩素濃度による用水貯留工程の消毒効果が得られ、かつ、活性炭の脱塩素能力の低下も来たさない飲料用水の製造方法及びその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の一例(逆流洗浄)を示す工程図である。
【図2】図1の変形例(逆流洗浄)を示した工程図である。
【図3】本発明の実施形態の他例(順流洗浄)を示す工程図である。
【図4】図3の変形例(順流洗浄)を示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態の一例として、本発明が提案する活性炭の脱塩素能力回復方法を利用した飲料用水の製造方法の好適な例について説明する。但し、本発明の範囲が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<本製法>
本発明の実施形態の一例に係る飲料用水の製造方法(以下「本製法」と称する)は、原料水を逆浸透膜処理する脱塩工程と、逆浸透膜処理された処理水に塩素剤を添加する消毒工程と、消毒工程で得られた消毒水を、活性炭を備えた脱塩素処理槽に通水することにより脱塩素処理する脱塩素工程とを備えた飲料用水の製造方法において、酸を添加した酸添加水で前記脱塩素処理槽を洗浄することにより、活性炭の脱塩素能力を回復させることを特徴とする飲料用水の製造方法である(図1〜4参照)。
但し、各工程の順番は適宜変更することが可能であるし、他の工程を追加することも可能である。例えば、消毒工程で得られた消毒水を所定時間貯留しておく貯留工程を、脱塩素工程の前に挿入することができる。
【0016】
(逆浸透膜処理工程)
逆浸透膜処理は、供給水を高圧下で膜透過水と濃縮水に膜分離する処理操作であり、逆浸透膜処理の方法及び装置は、現在公知のものを適宜採用すればよい。
【0017】
脱塩処理方法として、逆浸透膜処理を採用した場合、処理水回収率を向上させる上で最大の阻害因子となるのが、濃縮水中における溶性ケイ酸の析出である。
そこで、溶性ケイ酸の溶解度を高めるために、逆浸透膜処理工程に供給する水のpHを高くして水回収率を高くするのが好ましい。この際、逆浸透膜処理工程に供給する水のpHを9.0以上にすれば、溶性ケイ酸の溶解度を高める効果を得ることができる一方、pHを一定以上に高くし過ぎても、水回収率の向上に繋がらない反面、後工程において塩素の消毒効果が低下するため塩素濃度を高くする必要が生じる。かかる観点から、逆浸透膜処理工程に供給する水のpHを9.0〜10.5、中でも9.5〜10.5に調整するのが好ましい。
この際、pH調整に用いるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化物、重炭酸ナトリウムなどの炭酸塩などを挙げることができる。これらに限定するものではない。特に水酸化ナトリウムが好適である。
【0018】
具体的には、図1〜4に示すように、アルカリ剤貯槽4、薬注ポンプ5、制御計6、pH計7から構成される装置によるアルカリ調整工程を、逆浸透膜処理工程の前に配置し、溶性ケイ酸を含有する原水16にアルカリを添加してpHを9.0〜10.5に調整して溶性ケイ酸の溶解度を大きくした状態で、逆浸透膜処理装置1による脱塩処理工程に供給して溶解塩類を除去するようにすればよい。但し、このような具体的手段に限定するものではない。
【0019】
また、一般に逆浸透膜は残留塩素などに対する耐酸化性が低いため、逆浸透膜処理の前処理段階で、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を添加したり、活性炭処理により残留塩素を除去したりするようにしてもよい。
【0020】
(消毒工程)
本工程では、逆浸透膜処理された処理水に塩素剤を添加し、水中塩素濃度を0.1〜10.0mg/リットルに調整するのが好ましい。
水中塩素濃度、すなわち残留塩素量が0.1mg/リットル以上であれば、後工程における用水貯留槽や配管などの用水貯留工程において菌繁殖を防止することができる。他方、残留塩素量が10.0mg/リットルよりも多くても、菌繁殖防止効果の向上には繋がらず、後段の脱塩素処理工程の活性炭等の処理寿命を低下させることになる。
このような観点から、塩素剤の添加量としては、水中塩素濃度を0.1〜10.0mg/リットルに調整する量であるのが好ましく、中でも1.0mg/リットル以上、或いは5.0mg/リットル以下、その中でも特に3.0mg/リットル以下であるのがさらに好ましい。
【0021】
使用する塩素剤としては、例えば次亜塩素酸塩、塩素ガスなど特に限定するものではないが、次亜塩素酸ナトリウムが好適である。
【0022】
具体的には、図1〜4に示すように、塩素剤貯槽8、薬注ポンプ9、制御計10、残留塩素計11から構成される装置による消毒工程を、逆浸透膜処理工程の次に配し、塩素剤を添加して、用水貯留槽2及び配管などの装置による用水貯留工程における菌繁殖を防止するようにするのが好ましい。但し、このような具体的手段に限定するものではない。
【0023】
(貯留工程)
消毒工程で得られた消毒水は、すぐに飲料製造用に使用することは稀であり、貯留槽などで適宜時間貯留した後、使用するのが通常である。
よって、本製法においても、消毒工程で得られた消毒水を一旦貯留した後(貯留工程)、脱塩素工程に供するようにしてもよい。
貯留する場合の温度は30℃以下、特に15〜25℃であるのが好ましく、貯留時間は30分〜24時間が好ましく、特に1時間以上或いは2時間以下であるのが好ましい。
【0024】
(脱塩素工程)
脱塩素工程では、塩素を含有した消毒水を、活性炭を備えた脱塩素処理槽に通すことにより、塩素濃度を低下させることができ、具体的には、残留塩素濃度を0.05mg/リットル以下、好ましくは0.01mg/リットル以下、特に好ましくは0.005mg/リットル以下まで低下させることができる。
【0025】
脱塩素処理に用いる装置は、活性炭を充填してなる層を備えた装置であれば任意の構成のものを採用することが可能である。例えば、粒状活性炭、活性炭素繊維及び活性炭成形体などを充填した活性炭層を備えたものや、それらを充填したカートリッジフィルターを備えた構成のものでも、他の構成のものであってもよい。
【0026】
後述するように、本製法で使用する脱塩素処理槽は、通水pHにおける残留塩素半減層厚を20cm以下に維持することが望ましく、仮に脱塩素能力がこれよりも低下した場合には、通水pHにおける残留塩素半減層厚が20cm以下になるように、後述する酸添加水によって脱塩素処理槽を洗浄して脱塩素能力を回復させることが望ましい。
【0027】
(洗浄処理)
本製法においては、酸を添加して調製した酸添加水を用いて、脱塩素処理槽を洗浄することにより、活性炭の脱塩素能力を回復させることが重要である。
【0028】
この際、添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び炭酸などを挙げることができる。中でも、炭酸は、塩類濃度を増加させない点から特に好ましい。
炭酸を添加する際は、炭酸ガスを吹き込んだ炭酸水を添加するようにしてもよいし、また、炭酸ガスを直接吹き込んでもよい。
【0029】
酸の添加量としては、添加後の水のpHが9未満となるように調整するのが好ましい。中でもpH5.8以上、或いは8.6以下、その中で特にpH7.0以上、或いは8.6以下に調整するのが好ましい。
【0030】
洗浄方法としては、逆流洗浄、順流洗浄のいずれを採用してもよいが、微粉炭除去の観点からすると、逆流洗浄を採用するのが好ましい。
脱塩素処理槽を洗浄する際、酸添加水の通水量は、洗浄時の活性炭層膨張率などに応じて適宜調整すればよいが、目安としては、線速度LV(Linear Velocity:通水断面積当りの通水量[m/m/hour])30〜60m/hourで通水して洗浄を行うようにすればよい。
【0031】
逆流洗浄の具体例としては、図1及び図2に示すように、通常状態、すなわち洗浄を行わない状態においては、切換バルブ21及び切換バルブ19を開、切換バルブ22及び切換バルブ20を閉として、脱塩素処理装置3による脱塩素処理工程に通水し、脱塩素処理を行うようにする。
そして、脱塩素処理装置3を洗浄する際には、切換バルブ21および切換バルブ19を閉とし、切換バルブ22及び切換バルブ20を開として、切換バルブ22と脱塩素処理装置3の間に設けた酸調整設備、すなわち酸剤貯槽12、薬注ポンプ13、制御計14及びpH計15から構成される酸調整設備によって酸添加水を調製し、脱塩素処理装置3の逆流洗浄を行い、脱塩素処理装置充填剤の活性点の再生を行うようにすればよい。
但し、このような具体的手段に限定するものではない。
【0032】
他方、順流洗浄の具体例としては、図3及び図4に示すように、通常状態、すなわち洗浄を行わない状態においては、切換バルブ19を開、切換バルブ20を閉として、脱塩素処理装置3による脱塩素処理工程に通水し、脱塩素処理を行うようにする。
そして、脱塩素処理装置3を洗浄する際には、切換バルブ19を閉、切換バルブ20を開として、用水貯留槽2と脱塩素処理装置3の間に設けた酸調整設備、すなわち酸剤貯槽12、薬注ポンプ13、制御計14及びpH計15から構成される酸調整設備によってpH8.6以下とした酸添加水を調製し、脱塩素処理装置3の順流洗浄を行い、脱塩素処理装置充填剤の活性点の再生を行うようにすればよい。
但し、このような具体的手段に限定するものではない。
【0033】
洗浄処理する頻度としては、少なくとも一週間に1回、好ましくは少なくとも一日1回の頻度で上記洗浄を実施するのが好ましい。
また、一回の洗浄時間としては、10分〜8時間、特に20分〜1時間連続して逆流洗浄若しくは順流洗浄するのが好ましい。
【0034】
<本発明の評価>
活性炭の脱塩素能力の指標として、塩素半減層厚(ドイツ国家規格DIN19603(1963年))が知られている。この指標は、流入水の残留塩素濃度を半分の濃度にするために要する活性炭層厚のセンチメートル数で定義される(下記式(v)参照)。
【0035】
Gg=0.301×t÷log(u/ν)・・・(v)
Gg:粒状活性炭の残留塩素半減層厚(cm)
t:活性炭層厚(cm)
u:原水の残留塩素濃度(mg/リットル)
ν:通水29分後の処理水の残留塩素濃度(mg/リットル)
(試験条件):pH:7.0、u:2.5mg/リットル、通水LV:36m/hour
【0036】
発明者らの試算では、脱塩素反応の理論式から算出すると、脱塩素処理装置の活性炭充填層厚を1000mm、通水LVを20m/hour、処理水残留塩素を0.05mg/リットル未満とすると、流入水残留塩素濃度10mg/リットルの場合、必要となる活性炭の塩素半減層厚は20cmとなるため、本発明では、活性炭を備えた脱塩素処理槽の通水pHにおける残留塩素半減層厚を20cm以下に回復させることができれば、本発明のような飲料用水の製造方法においては、十分な脱塩素能力を発揮していると評価することとした。
【0037】
なお、ドイツ国家規格DIN19603の試験方法はpH7.0によるものであるが、実際の脱塩素処理においては、実際の通水pHにおける塩素半減層厚で評価する必要がある。そこで、本発明では、塩素半減層厚は全てそれぞれの通水pHにおける塩素半減層厚を評価することにした。
【0038】
<用語の説明>
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0039】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
【0040】
(比較例1)
千葉県袖ケ浦市の水道水に水酸化ナトリウムを添加してpH値を9.5〜10.5に調整した。この水を、日東電工製NTR−759HR逆浸透膜エレメントを使用した逆浸透膜処理装置を用いて脱塩し、得られた処理水に、遊離残留塩素を2.0〜2.5mg/リットルとなるように次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加し、22〜25℃にて滞留時間2時間の用水貯留槽に貯留した。その後、荏原エンジニアリングサービス(株)製の粒状活性炭エバダイヤLG−10SC(塩素半減層厚(DIN19603準拠):2.5cm、活性炭の平均径:1.0mm、均等係数:1.5)を充填した脱塩素処理装置に、線速度LV(Linear Velocity:通水断面積当りの通水量[m/m/hour])20m/hour、空塔速度SV(Space Velocity : 充填容積当りの通水量[m/m/hour])20hour−1で通水して脱塩素処理を行い、飲料用水を得た。なお、脱塩素処理装置は週1回の頻度で通水原水による逆流洗浄を実施した。
通水開始6カ月後の脱塩素処理水の残留塩素は0.15mg/リットルであり、充填活性炭のpH10.5における塩素半減層厚は55.8cmであった。
【0041】
(実施例1)
図2に示すように、通水原水に炭酸ガスを添加してpH6.5に調整した酸添加水を用いて、週1回の頻度で30分、脱塩素処理装置の逆流洗浄を行った。それ以外は、比較例1と同様に飲料用水を得た。
通水開始6カ月後の脱塩素処理水の残留塩素は0.05mg/リットル未満であり、充填活性炭のpH10.5における塩素半減層厚は18.8cmであった。
【0042】
(実施例2)
図3に示すように、通水原水に硫酸を添加してpH6.5に調整した酸添加水を用いて、週1回の頻度で1時間、脱塩素処理装置の順流洗浄を行った。それ以外は、比較例1と同様に飲料用水を得た。
通水開始6カ月後の脱塩素処理水の残留塩素は0.05mg/リットル未満であり、充填活性炭のpH10.5における塩素半減層厚は19.4cmであった。
【0043】
(実施例3)
図1に示すように、通水原水に塩酸を添加してpH6.5に調整した酸添加水を用いて、1日1回の頻度で20分、脱塩素処理装置の逆流洗浄を行った。それ以外は、比較例1と同様に飲料用水を得た。
通水開始6カ月後の脱塩素処理水の残留塩素は0.05mg/リットル未満であり、充填活性炭のpH10.5における塩素半減層厚は15.8cmであった。
【0044】
(比較例2)
千葉県袖ケ浦市の水道水に水酸化ナトリウムを添加してpH値を10.0〜10.5に調整した。この水を、逆浸透膜処理装置(荏原エンジニアリングサービス株式会社製)で脱塩して得られた処理水に、遊離残留塩素を2.0〜2.5mg/リットルとなるように次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加し、22〜25℃にて滞留時間2時間の用水貯留槽に貯留後、市販の活性炭素繊維を充填したカートリッジフィルター式の脱塩素処理装置に、線速度LV(Linear Velocity:通水断面積当りの通水量[m/m/hour])100m/hourで通水して脱塩素処理を行い、飲料用水を得た。なお、脱塩素処理装置は週1回の頻度で通水原水による逆流洗浄を実施した。
通水開始2カ月後の脱塩素処理水の残留塩素は0.4mg/リットルであった。
【0045】
(実施例4)
図2に示すように、通水原水に炭酸ガスを添加してpH6.5に調整した酸添加水を用いて、週1回の頻度で30分、脱塩素処理装置の逆流洗浄を行った。それ以外は、比較例2と同様に飲料用水を得た。
通水開始2カ月後の脱塩素処理水の残留塩素は0.05mg/リットル未満であった。
【0046】
(実施例5)
図3に示すように、通水原水に硫酸を添加してpH6.5に調整した酸添加水を用いて、週1回の頻度で1時間、脱塩素処理装置の順流洗浄を行った。それ以外は、比較例2と同様に飲料用水を得た。
通水開始2カ月後の脱塩素処理水の残留塩素は0.05mg/リットル未満であった。
【0047】
(実施例6)
図1に示すように、通水原水に塩酸を添加してpH6.5に調整した酸添加水を用いて、1日1回の頻度で20分、脱塩素処理装置の逆流洗浄を行った。それ以外は、比較例2と同様に飲料用水を得た。
通水開始2カ月後の脱塩素処理水の残留塩素は0.05mg/リットル未満であった。
【0048】
【表1】

【0049】
(考察)
比較例1と、これと同じフローにおいて、酸添加水で逆浸透膜処理装置を洗浄処理した実施例1〜3とを比較すると、酸添加水で逆浸透膜処理装置を洗浄することによって、逆浸透膜処理装置の処理槽の塩素半減層厚を顕著に減少させることができ、20cm以下にまで脱塩素能力を回復させることができた。比較例2と実施例4〜6を比較しても同様であった。
【0050】
添加する酸は、炭酸ガス、硫酸及び塩酸のいずれであっても効果が認められたが、残留塩類濃度を増加させない点からすると、炭酸ガスが最も好ましいと考えることができる。
また、上記以外の試験結果を踏まえると、逆浸透膜処理装置の洗浄処理は、少なくとも1週間に一回の頻度で1回につき10分実施すれば、最低限の効果を得ることができるものと考えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1: 逆浸透膜処理装置 2: 用水貯留槽 3: 脱塩素処理装置
4: アルカリ剤貯槽 5: 薬注ポンプ 6: 制御計
7: pH計 8: 塩素剤貯槽 9: 薬注ポンプ
10: 制御計 11: 残留塩素計 12: 酸剤貯槽
13: 薬注ポンプ 14: 制御計 15: pH計
16: 原水 17: 脱塩素水 18: 洗浄排水
19、20、21、22: 切換バルブ 23: 炭酸ガス貯槽 24: 電磁流量計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜処理された処理水に塩素剤を添加し、その後、活性炭を備えた脱塩素処理槽に通水することにより脱塩素処理する工程を備えた飲料用水の製造工程において、酸を添加した酸添加水で前記脱塩素処理槽を洗浄することにより、活性炭の脱塩素能力を回復させることを特徴とする、飲料用水の製造工程における活性炭の脱塩素能力回復方法。
【請求項2】
酸を添加した酸添加水で脱塩素処理槽を洗浄する処理を、少なくとも1週間に1回以上の頻度で実施することを特徴とする請求項1に記載の活性炭の脱塩素能力回復方法。
【請求項3】
添加する酸は、硫酸、塩酸又は炭酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性炭の脱塩素能力回復方法。
【請求項4】
原料水を逆浸透膜処理する脱塩工程と、逆浸透膜処理された処理水に塩素剤を添加する消毒工程と、消毒工程で得られた消毒水を、活性炭を備えた脱塩素処理槽に通水することにより脱塩素処理する脱塩素工程とを備えた飲料用水の製造方法において、
酸を添加した酸添加水で前記脱塩素処理槽を洗浄することにより、活性炭の脱塩素能力を回復させることを特徴とする飲料用水の製造方法。
【請求項5】
酸を添加した酸添加水で脱塩素処理槽を洗浄する処理を、少なくとも1週間に1回以上の頻度で実施することを特徴とする請求項4に記載の飲料用水の製造方法。
【請求項6】
添加する酸は、硫酸、塩酸又は炭酸であることを特徴とする請求項4又は5に記載の飲料用水の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−66161(P2012−66161A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210664(P2010−210664)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(591030651)水ing株式会社 (94)
【Fターム(参考)】