説明

飲料販売装置

【課題】希釈比率をその基準値に近づける方向に、必要な時いつでも自動的に調整可能な飲料販売装置を提供する。
【解決手段】モータの駆動力により原料を吐出する原料吐出部と、一定流量の希釈水を吐出する希釈水吐出部と、を有し、飲料販売釦が押下される期間、原料を希釈水で希釈して得られる飲料を連続的に販売する飲料販売装置において、飲料を販売する際の基準となる原料及び希釈水の希釈比率を示す情報が記憶される記憶部と、飲料販売釦が押下される期間における、原料吐出部が吐出する原料の量と、希釈水吐出部が吐出する希釈水の量と、を検出する検出部と、検出部の検出結果から、飲料を実販売した際の原料及び希釈水の実希釈比率を算出する第1算出部と、記憶部の情報と第1算出部の算出結果とから、希釈比率と実希釈比率との差異を算出する第2算出部と、第2算出部の算出結果に応じて、差異を小さくする方向に、モータの回転速度を調整する調整部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料販売装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動力により原料を吐出する原料吐出部と、一定流量の希釈水を吐出する希釈水吐出部とを有し、原料を希釈水で希釈して得られる一定量の飲料を販売する飲料販売装置が知られている。この飲料販売装置では、例えば利用者が飲料販売釦を一度押下すると、カップに対し原料が所定量吐出されるとともに、同カップに対し希釈水が所定量吐出される。希釈水の流量が一定であれば、その吐出量は、例えば当該流量を形成するためのポンプの駆動時間に対応する。一方、原料の吐出量は、モータの回転に同期して例えばパルス発生器が発生するパルスの数に対応する。そこで、所定の希釈比率をなす原料の吐出量と希釈水の吐出量とを達成するべく、原料吐出部は、例えばパルス数が所定値となるように動作するとともに、希釈水吐出部は、例えばポンプの駆動時間が所定時間となるように動作する。更に、原料吐出部及び希釈水吐出部の動作には、原料と希釈水との吐出開始のタイミングの整合、及び原料と希釈水との吐出終了のタイミングの整合も必要である。もしこれらのタイミングにずれがあると、でき上がりの飲料の濃さ(味)が、カップの上部と底部とで異なってしまい、結果的に飲料の風味が損なわれる虞があるからである。
【0003】
また、前述した原料吐出部及び希釈水吐出部を有し、飲料販売釦が押下される期間に原料を希釈水で希釈して得られる飲料を連続的に販売する飲料販売装置が知られている。この飲料販売装置では、例えば利用者が飲料販売釦を押下すると、押下した期間に相当する量の原料が吐出されるとともに、同カップに対し押下した期間に相当する量の希釈水が吐出される。この場合、所定の希釈比率で原料及び希釈水が吐出されるべく、例えば、原料吐出部からの原料の吐出レートが、希釈水吐出部からの希釈水の吐出レート(即ち、一定流量)と前記所定の希釈比率をなすように設定されている。
【0004】
以上、飲料販売装置が前述したタイミングの整合や所定の希釈比率等を維持して所定の品質の飲料を販売するためには、特に、原料吐出部のモータの回転速度の調整が重要であるとされている(例えば、特許文献1参照)。具体例として、飲料販売装置の設定時に、特許文献1に開示された所定の測定手段により、原料の吐出レートを測定し、この測定された吐出レートが所定値となるようにモータの回転速度を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−248863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば前述したように原料の吐出レートの測定結果に基づいて原料吐出部のモータの回転速度を調整したとしても、この測定以後の例えば構成部品等の経年劣化や使用劣化等によりモータの回転速度は徐々に変化する虞がある。
【0007】
特に、原料が例えばシロップ等である場合、前記測定以後の温度変化にともなう粘度の変化により、モータの回転速度は変化し得る。また特に、飲料販売装置の原料吐出部が例えば前述した特許文献1に開示されるチューブポンプを有する場合、前記測定以後のチューブ硬度の変化により、モータの回転速度は変化し得る。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、希釈比率をその基準値に近づける方向に、必要な時いつでも自動的に調整可能な飲料販売装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための発明は、モータの駆動力により原料を吐出する原料吐出部と、一定流量の希釈水を吐出する希釈水吐出部と、を有し、飲料販売釦が押下される期間、前記原料を前記希釈水で希釈して得られる飲料を連続的に販売する飲料販売装置であって、前記飲料を販売する際の基準となる前記原料及び前記希釈水の希釈比率を示す情報が記憶される記憶部と、前記飲料販売釦が押下される期間における、前記原料吐出部が吐出する前記原料の量と、前記希釈水吐出部が吐出する前記希釈水の量と、を検出する検出部と、前記検出部の検出結果から、前記飲料を実販売した際の前記原料及び前記希釈水の実希釈比率を算出する第1算出部と、前記記憶部の前記情報と前記第1算出部の算出結果とから、前記希釈比率と前記実希釈比率との差異を算出する第2算出部と、前記第2算出部の算出結果に応じて、前記差異を小さくする方向に、前記モータの回転速度を調整する調整部と、を備えてなる。
この飲料販売装置によれば、例えば原料吐出部と希釈水吐出部とが、記憶部に記憶された基準となる希釈比率からずれた希釈比率で吐出動作を終了した場合、調整部は、検出部、第1算出部、及び第2算出部により求められた前記差異を小さくする方向にモータの回転速度を調整できる。これにより、原料吐出部のモータの回転速度は希釈比率をその基準値に近づける方向に自動的に調整される上に、このような調整は必要な時いつでも可能となる。
【0010】
また、かかる飲料販売装置において、前記調整部は、前記第2算出部の算出結果に応じて、前記差異を小さくする方向に、前記モータの回転速度を段階的に調整する、こととしてもよい。
この飲料販売装置によれば、差異が算出される都度、例えば複数段階からなるモータの回転速度を、例えばΔm段階(Δmは1以上の整数)ずつ増加又は減少させることにより、この差異を徐々に小さくできる。例えばΔtがΔn段階(Δnは2以上の整数)の増加又は減少に相当する時間差であれば、これは、およそΔn/Δm回(但し、Δn/Δmは整数)の算出の後に略解消されることになる。以上から、モータの回転速度を単純な工程で調整できる。
【0011】
また、かかる飲料販売装置において、前記調整部は、前記第2算出部の算出結果に応じて、前記差異を小さくする方向に、前記モータの回転速度を前記差異に対応する分だけ調整する、こととしてもよい。
この飲料販売装置によれば、差異が算出されると、例えば複数段階からなるモータの回転速度を、例えば一度増加又は減少させることにより、この差異を小さくできる。例えばΔtがΔn段階(Δnは2以上の整数)の増加又は減少に相当する差異であれば、これは、モータの回転速度のΔn段階の増加又は減少により一度で略解消されることになる。また、差異に対応する分だけ回転速度を増減すれば、例えば差異の大きさとは関係ない一定刻みで増減を複数回繰り返すことに比べて、より少ない回数(例えば前記の1回)で前記差異を小さくできる。以上から、モータの回転速度を効率良く調整できる。
【0012】
また、かかる飲料販売装置において、前記第2算出部は、前記飲料を連続的に販売する都度、前記差異を算出し、前記調整部は、前記飲料を連続的に販売する都度、前記第2算出部の算出結果に応じて、前記差異を小さくする方向に、前記モータの回転速度を調整する、ことが好ましい。
これにより、飲料の実販売を行っていれば、原料吐出部のモータの回転速度は、希釈比率をその基準値に近づける方向に必要な時いつでも且つ自動的に調整されていることになる。
【発明の効果】
【0013】
希釈比率をその基準値に近づける方向に、必要な時いつでも自動的に調整可能な飲料販売装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態の飲料販売装置の全体構成例を示す正面図である。
【図2】本実施の形態の飲料販売装置のチューブポンプ及び希釈水ラインを備えた販売機構の一例を示す模式図である。
【図3】本実施の形態の飲料販売装置の制御を司る構成例を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態の飲料販売装置が一定量の飲料を販売する際のCPUの処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態のチューブポンプの吐出レート及びパルス信号の時間変化及び希釈水ラインの吐出レートの時間変化の一つの例を示す時間ダイアグラムである。
【図6】本実施の形態の飲料販売装置が販売ボタンの押下時間に応じた量の飲料を販売する際のCPUの処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態のチューブポンプの吐出レート及びパルス信号の時間変化及び希釈水ラインの吐出レートの時間変化のもう一つの例を示す時間ダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
===飲料販売装置の構成===
図1乃至図3を参照しつつ、本実施の形態の飲料販売装置1の構成例について説明する。尚、図1は、本実施の形態の飲料販売装置1の全体構成例を示す正面図である。図2は、本実施の形態の飲料販売装置1のチューブポンプ20及び希釈水ライン40を備えた販売機構の一例を示す模式図である。図3は、本実施の形態の飲料販売装置1の制御を司る構成例を示すブロック図である。
【0016】
<<<全体の構成>>>
図1に例示されるように、本実施の形態の飲料販売装置1は、前扉3が所定のヒンジ(不図示)を介して開閉可能な本体2の内部に、原料タンク10及びチューブポンプ20を備えて構成されている。尚、本実施の形態の飲料販売装置1は、カップに対し、シロップ等の原料を原料タンク10からチューブポンプ20を介して供給するとともに、冷水等の希釈水を希釈水タンク(不図示)から希釈水ライン40を介して供給することにより、例えばシロップを冷水で希釈したカップ飲料を販売する飲料ディスペンサである。
【0017】
本実施の形態では、原料タンク10は、本体2内の上部に設けられた冷蔵庫4に収納されており、この原料タンク10の下部にチューブポンプ20が設けられている。また、本体2内の底部はカップの載置台5をなしている。
【0018】
本実施の形態の飲料販売装置1は、利用者が、載置台5にカップを載置し、前扉3の前面に設けられた販売ボタン208(図3)を押下することにより、このカップ内に飲料を販売するようになっている。尚、後述するように、本実施の形態の飲料販売装置1は、所定のコントロールパネル(不図示)からの入力を通じて、販売ボタン208の一度の押下により一定量の飲料を販売するモードと、販売ボタン208が押下されている時間に連続して飲料を販売するモードとの切り替え設定ができるようになっている。
【0019】
<<<販売機構の構成>>>
図2に例示されるように、本実施の形態のチューブポンプ(原料吐出部)20は、例えば特開2006−69551号公報に開示されている周知の構成を備えている。同図に例示されるチューブポンプ20は、フレーム24上に略上下方向に延在するチューブ21と、フレーム24に回転可能に軸支されたロータ23と、フレーム24に固設されたチューブガイド22と、モータ30とを備えて構成されている。本実施の形態では、チューブ21は、原料タンク10の底部に接続されて当該原料タンク10内の原料を圧送するための可堯性を有する管である。ロータ23は、その円周に沿って複数個のローラ23aを等間隔で回転可能に備えている。チューブガイド22は、ロータ23に設けられたローラ23aとの間にチューブ21を挟持して、ロータ23の回転により、可堯性のチューブ21を押し潰すための形状をなしている。尚、チューブ21の吐出口26は、チューブ固定部25によりフレーム24に固設されている。
【0020】
以上の構成により、例えばモータ30が図2における時計方向に所定の回転数だけ回転すると、ギア(不図示)を介してロータ23が1回転し、チューブ21は、ローラ23aとチューブガイド22との間で当該ローラ23aの個数に等しい回数だけ所定の押圧力で順次しごかれることになる。これにより、原料タンク10内の原料はチューブ21内で下方に圧送される。尚、本実施の形態では、原料の圧送を停止する場合、チューブ21内の原料が下方に流出しないように、少なくとも1つのローラ23aがチューブガイド22に対しチューブ21を押圧する位置をとるべくモータ30を停止させるようになっている。
【0021】
図2に例示されるように、本実施の形態の希釈水ライン(希釈水吐出部)40は、希釈水タンク(不図示)からノズル41まで一定流量で希釈水を搬送するために、配管42、流量調節器43、電磁弁43、46、及びポンプ45を備えて構成されている。具体的には、配管42に対し、希釈水タンク(不図示)からノズル41にかけて、電磁弁46、ポンプ45、電磁弁44、及び流量調節器43が順に設けられている。尚、ノズル41は、チューブポンプ20とともにフレーム24に固設されている。
【0022】
以上の構成により、例えば電磁弁44、46を開放した状態でポンプ45を駆動することにより、希釈水タンク(不図示)内の希釈水はノズル41から吐出される。流量調節器43は、ポンプ45の性能に応じて希釈水の流量が所定値となるように予め調節されているものとする。
【0023】
<<<制御を司る構成>>>
図3に例示されるように、本実施の形態の飲料販売装置1は、その制御を司る構成として、CPU(検出部、調整部、算出部、第1算出部、第2算出部)200と、ROM202と、RAM(記憶部)203とを備えている。CPU200は、ROM202に記憶された所定のプログラムに基づいて、入出力部201を介して、モータ30、パルス発生器(検出部)204、ポンプ45、電磁弁44、46、第1タイマ(検出部、第1計時部)205、第2タイマ(第2計時部)206、カウンタ(検出部)207、販売ボタン(飲料販売釦)208等との間で制御信号や検出信号等を送受信する。ここで、パルス発生器204は、モータ30の回転数に応じた数のパルス信号を発生する周知の装置である。カウンタ207は、このパルス数を計数する。第1タイマ205は、チューブポンプ20の駆動時間、即ちモータ30の駆動時間を計時し、第2タイマ206は、希釈水ライン40の動作時間、即ちポンプ45の駆動時間又は電磁弁44、46の開放時間を計時する。
【0024】
RAM203は、後述する、チューブポンプ20の吐出時間(実測時間又は予め定められた時間、t1)、希釈水ライン40の予め定められた吐出時間(t2)、t1及びt2の時間差(Δt)、カウンタ207の計数値、原料及び希釈水の希釈比率の実測値及び基準値(予め定められた希釈比率)、モータ30の回転速度等のデータを予め記憶している。
【0025】
===飲料販売装置の動作===
図4乃至図7を参照しつつ、前述した構成を備えた飲料販売装置1が飲料を販売する動作について一例を挙げて説明する。
【0026】
尚、図4は、本実施の形態の飲料販売装置1が一定量の飲料を販売する際のCPU200の処理の手順の一例を示すフローチャートである。図5は、本実施の形態のチューブポンプ20の吐出レート及びパルス信号の時間変化及び希釈水ライン40の吐出レートの時間変化の一つの例を示す時間ダイアグラムである。図6は、本実施の形態の飲料販売装置1が販売ボタン208の押下時間に応じた量の飲料を販売する際のCPU200の処理の手順の一例を示すフローチャートである。図7は、本実施の形態のチューブポンプ20の吐出レート及びパルス信号の時間変化及び希釈水ライン40の吐出レートの時間変化のもう一つの例を示す時間ダイアグラムである。
【0027】
<<<一定量の飲料販売>>>
図4に例示されるように、本実施の形態の飲料販売装置1は、販売ボタン208が押下されたか否かを判別する(S100)。
販売ボタン208が押下されたと判別した場合(S100:YES)、飲料販売装置1は、チューブポンプ20のモータ30の駆動を開始するとともに、希釈水ライン40の電磁弁44、46を開けてポンプ45の駆動を開始する(S101)。これと同時に、飲料販売装置1は、カウンタ207をリセットして計数を開始させるとともに、第1タイマ205及び第2タイマ206をリセットして計時を開始させる(S102)。
尚、本実施の形態のモータ30は、後述するRAM203に記憶された所定の回転速度でもって駆動されるものとする。
【0028】
飲料販売装置1は、第2タイマ206が計時した時間(t2)が所定時間に達したか否かを判別する(S103)。この所定時間は、本実施の形態の飲料販売装置1が販売する1杯分の飲料に含まれる希釈水の量に対応する予め定められた時間である。即ち、希釈水ライン40における希釈水の吐出レートが流量調節器43等により予め所定値に設定されている場合、この所定時間は、前記希釈水の量を前記所定値で除算した値である。
t2が所定時間に達したと判別した場合(S103:YES)、飲料販売装置1は、電磁弁44、46を閉じるとともに、ポンプ45の駆動を停止する(S104)。
前述したステップS103及びS104の処理と平行して、飲料販売装置1は、以下述べるステップS105乃至S107の処理を実行する。
【0029】
飲料販売装置1は、カウンタ207が計数した計数値が所定数に達したか否かを判別する(S105)。この所定数は、本実施の形態の飲料販売装置1が販売する1杯分の飲料に含まれる原料の量に対応する予め定められたパルス数である。即ち、チューブポンプ20における例えば1パルス分の原料の吐出レートが予め所定値に設定されている場合、この所定数は、前記原料の量を前記所定値で除算した値である。尚、本実施の形態では、1杯の飲料の総量及びその希釈比率により、当該飲料を構成する原料及び希釈水それぞれの量が予め一義的に定まっているものとする。
【0030】
計数値が所定数に達したと判別した場合(S105:YES)、飲料販売装置1は、第1タイマ205が計時した時間(t1)を参照し、t1をRAM203に記憶させる(S106)。これと同時に、飲料販売装置1は、チューブポンプ20のモータ30の駆動を停止する(S107)。
【0031】
次に、飲料販売装置1は、前述した2つの時間t1及びt2をRAM203から読み出し、その時間差Δt(=t1−t2)を算出し(S108)、このΔt及び0の大小関係を判別する(S109)。
Δt>0と判別した場合(S109:Δt>0)、飲料販売装置1は、RAM203に記憶されたモータ30の回転速度を所定値増加させ(S110)、ステップS100の処理を再度実行する。
Δt=0を判別した場合(S109:Δt=0)、飲料販売装置1は、ステップS100の処理を再度実行する。
Δt<0と判別した場合(S109:Δt<0)、飲料販売装置1は、RAM203に記憶されたモータ30の回転速度を所定値減少させ(S111)、ステップS100の処理を再度実行する。
【0032】
前述したステップ110及びS111で増減する所定値とは、一定刻みの値であってもよいし、Δtの絶対値に応じた値であってもよい。以下、各場合について詳述する。
【0033】
図5に例示されるように、Δt=0では、所定パルス数に相当する原料の吐出時間t1は、希釈水の吐出時間t2と一致している。
図5に例示されるように、ステップS110(Δt>0)では、所定パルス数に相当する原料の吐出時間t1’は、希釈水の吐出時間t2よりも長い。これは、モータ30の回転速度が、Δt=0の場合よりも遅いことを意味している。つまり、Δt>0でのパルス信号の間隔は、Δt=0の場合に比べてモータ30の回転速度が遅い分だけ広くなっているため、所定パルス数に達するにはΔtだけ余計に時間がかかる。
【0034】
ステップS110で回転速度を(十分細かい)一定刻みの値だけ増加させた場合、新たな回転速度で行われる次販売では、Δtの絶対値がより小さくなるはずである。従って、ステップS100乃至S109及びS110の処理を繰り返し実行することにより、Δtは0に向かう。
ステップS110で回転速度をΔtの絶対値に応じた値だけ増加させる場合、例えば回転速度が(t2+Δt)/t2倍(但し、Δt>0)となるように増加させれば、この新たな回転速度で行われる次販売では、Δtは略0になるはずである。
【0035】
図5に例示されるように、ステップS111(Δt<0)では、所定パルス数に相当する原料の吐出時間t1”は、希釈水の吐出時間t2よりも短い。これは、モータ30の回転速度が、Δt=0の場合よりも速いことを意味している。つまり、Δt<0でのパルス信号の間隔は、Δt=0の場合に比べてモータ30の回転速度が速い分だけ狭くなっているため、Δtだけ早く所定のパルス数に達する。
【0036】
ステップS111で回転速度を(十分細かい)一定刻みの値だけ減少させた場合、新たな回転速度で行われる次販売では、Δtの絶対値がより小さくなるはずである。従って、ステップS100乃至S109及びS111の処理を繰り返し実行することにより、Δtは0に向かう。
ステップS111で回転速度をΔtの絶対値に応じた値だけ減少させる場合、例えば回転速度が(t2+Δt)/t2倍(但し、Δt<0)となるように減少させれば、この新たな回転速度で行われる次販売では、Δtは略0になるはずである。
【0037】
尚、RAM203に記憶されるモータ30の回転速度のデータとは、例えば、複数段階あるモータ30の回転レベルのうちのどの段階かを示すデータである。例えば全64段階の回転レベルを有するモータ30の場合、そのうちの第32段階目の回転レベルに相当する回転速度のデータは“32”である。この場合、前述した一定刻みとは、1段階分であってもよいし、或いはΔm段階分(Δmは2以上の整数)であってもよい。但し、Δmは、前述したように、一度の増減によりΔtの絶対値をより小さくすることが可能な程度に十分細かい値とする必要がある。以下、一例を挙げて具体的に説明する。或る販売でモータ30の回転レベルが第32段階目のときに、時間差Δtが検出されたとする。このΔtを最小とするために前記回転レベルを6段階分増加させて第38段階目にする必要がある場合、1段階分(又は2段階分、3段階分)増加させては次販売に臨み、最終的に回転レベルを第38段目に設定してもよいし、或いは一度に6段階分増加させて次販売に臨んでもよい。尚、Δtと回転レベル増加分との関係は、RAM203に予め記憶されたテーブルデータ等に基づいて求めてもよいし、RAM203に予め記憶されたモータ30に係るデータとΔtとに基づいて所定の演算により求めてもよい。
【0038】
本実施の形態の飲料販売装置1によれば、もし或る販売において原料の吐出と希釈水の吐出とが時間差Δtをもって終了した場合、次販売ではこのΔtを小さくする方向にモータ30の回転速度が自動的に調整される。これにより、モータ30の回転速度は原料及び希釈水の吐出タイミングを整合する方向に自動的に調整される上に、このような調整は販売の都度可能となる。原料及び希釈水の吐出タイミングが整合することにより、でき上がりの飲料の濃さ(味)が、カップの上部と底部とで均一となり、飲料の風味を保つことができる。
【0039】
尚、前述した実施の形態では、時間差Δtは、原料の吐出時間t1’、t1”と、希釈水の吐出時間t2とをそれぞれ計時した後その差分として求めたが、これに限定されるものではない。Δtは、例えば、t1’>t2の場合(図5)、希釈水の吐出を終了してから原料の吐出を終了するまでを直接検出した時間差であってもよいし、t1”<t2の場合(図5)、原料の吐出を終了してから希釈水の吐出を終了するまでを直接検出した時間差であってもよい。
【0040】
また、前述した実施の形態では、時間差Δtを一度又は複数回の販売で略0とするように、モータ30の回転速度を調整するものであったが、これに限定されるものではない。要するに、検出されたΔtの絶対値を小さくする方向にモータ30の回転速度を調整するものであればよい。
【0041】
また、前述した実施の形態では、或る販売時に時間差Δtを検出し、次の販売時にこのΔtがより小さくなるようにモータ30の回転速度が調整されるものであったが、これに限定されるものではない。Δtの検出は実販売時に限定されるものではなく、例えば利用者が少なくなる時間帯等にテスト販売としてΔtを自動的に検出してもよい。これにより、実販売される飲料全てに関して、Δtを略0とすることが可能となる。
【0042】
<<<販売ボタンの押下時間に応じた量の飲料販売>>>
図6に例示されるように、本実施の形態の飲料販売装置1は、販売ボタン208が押下されたか否かを判別する(S200)。
販売ボタン208が押下されたと判別した場合(S200:YES)、飲料販売装置1は、チューブポンプ20のモータ30の駆動を開始するとともに、希釈水ライン40の電磁弁44、46を開けてポンプ45の駆動を開始する(S201)。これと同時に、飲料販売装置1は、カウンタ207をリセットして計数を開始させるとともに、第1タイマ205をリセットして計時を開始させる(S202)。
尚、本実施の形態のモータ30は、後述するRAM203に記憶された所定の回転速度でもって駆動されるものとする。
【0043】
飲料販売装置1は、押下されていた販売ボタン208が開放されたか否かを判別する(S203)。
押下されていた販売ボタン208が開放されたと判別した場合(S203:YES)、飲料販売装置1は、第1タイマ205が計時した時間t1及びカウンタ207が計数した計数値をRAM203に記憶させるとともに、モータ30の駆動及びポンプ45の駆動を停止する(S204)。
【0044】
次に、飲料販売装置1は、RAM203からt1及び計数値を読み出し、予め設定された単位時間当たりの希釈水の吐出レートをt1に乗算することにより希釈水の吐出量を算出するとともに、予め設定された1パルス分の原料の吐出レートを計数値に乗算することにより原料の吐出量を算出して、例えば(希釈水の吐出量)/(原料の吐出量)なる希釈比率を求める(S205)。
【0045】
次に、飲料販売装置1は、ステップS205で求めた実希釈比率と、RAM203に記憶された基準となる希釈比率(基準値)との差異を算出する(S206)。この差異とは、例えば、基準値に対する実希釈比率の比である。この場合、基準値が例えば4であって、実希釈比率が例えば4.2であれば、差異は、1.05(=4.2/4)である。
【0046】
次に、飲料販売装置1は実希釈比率と基準値との大小関係を判別する(S207)。
実希釈比率が基準値よりも大きいと判別した場合(S207:(実希釈比率)>(所定比率))、飲料販売装置1は、RAM203に記憶されたモータ30の回転速度を所定値増加させ(S208)、ステップS200の処理を再度実行する。
【0047】
実希釈比率が基準値に等しいと判別した場合(S207:(実希釈比率)=(所定比率))、飲料販売装置1は、ステップS200の処理を再度実行する。
実希釈比率が基準値よりも小さいと判別した場合(S207:(実希釈比率)<(所定比率))、飲料販売装置1は、RAM203に記憶されたモータ30の回転速度を所定値減少させ(S209)、ステップS200の処理を再度実行する。
【0048】
前述したステップ208及びS209で増減する所定値とは、一定刻みの値であってもよいし、前記差異に応じた値であってもよい。以下、各場合について詳述する。
【0049】
図7に例示されるように、実希釈比率が基準値に等しい場合、当該実希釈比率を与える原料の吐出レートと希釈水の吐出レートとの比(r2/r1)も、原料及び希釈水の吐出時間(t1)中、基準値に保たれているはずである。
図7に例示されるように、ステップS208(実希釈比率が基準値より大きい)では、原料の吐出レートr1’は、前述した原料の吐出レートr1よりも小さい。これは、モータ30の回転速度が、実希釈比率と基準値とが等しい場合よりも遅いことを意味している。尚、実希釈比率が基準値より大きい場合のパルス信号の間隔は、実希釈比率が基準値に等しい場合に比べてモータ30の回転速度が遅い分だけ広くなっている。
【0050】
ステップS208で回転速度を(十分細かい)一定刻みの値だけ増加させた場合、新たな回転速度で行われる次販売では、前記差異がより小さくなるはずである。従って、ステップS200乃至S207及びS208の処理を繰り返し実行することにより、前記差異は解消される方向に向かう。
ステップS208で回転速度を前記差異に応じた値だけ増加させる場合、例えば回転速度がr1/r1’倍となるように増加させれば、この新たな回転速度で行われる次販売では、前記差異は略解消されるはずである。前記差異が、例えば、基準値に対する実希釈比率の比である場合、前記倍数(r1/r1’)は、当該比に等しい(基準値はr2/r1であり、実希釈比率はr2/r1’であるから、その比はr1/r1’である)。
【0051】
図7に例示されるように、ステップS209(実希釈比率が基準値より小さい)では、原料の吐出レートr1”は、前述した原料の吐出レートr1よりも大きい。これは、モータ30の回転速度が、実希釈比率と基準値とが等しい場合よりも速いことを意味している。尚、実希釈比率が基準値より小さい場合のパルス信号の間隔は、実希釈比率が基準値に等しい場合に比べてモータ30の回転速度が速い分だけ狭くなっている。
【0052】
ステップS209で回転速度を(十分細かい)一定刻みの値だけ減少させた場合、新たな回転速度で行われる次販売では、前記差異がより小さくなるはずである。従って、ステップS200乃至S207及びS209の処理を繰り返し実行することにより、前記差異は解消される方向に向かう。
ステップS209で回転速度を前記差異に応じた値だけ減少させる場合、例えば回転速度がr1/r1”倍となるように減少させれば、この新たな回転速度で行われる次販売では、前記差異は略解消されるはずである。前記差異が、例えば、基準値に対する実希釈比率の比である場合、前記倍数(r1/r1”)は、当該比に等しい(基準値はr2/r1であり、実希釈比率はr2/r1”であるから、その比はr1/r1”である)。
【0053】
尚、RAM203に記憶されるモータ30の回転速度のデータとは、例えば、複数段階あるモータ30の回転レベルのうちのどの段階かを示すデータである。例えば全64段階の回転レベルを有するモータ30の場合、そのうちの第32段階目の回転レベルに相当する回転速度のデータは“32”である。この場合、前述した一定刻みとは、1段階分であってもよいし、或いはΔm段階分(Δmは2以上の整数)であってもよい。但し、Δmは、前述したように、一度の増減によりΔtの絶対値をより小さくすることが可能な程度に十分細かい値とする必要がある。以下、一例を挙げて具体的に説明する。或る販売でモータ30の回転レベルが第32段階目のときに、前記差異が算出されたとする。この差異を略解消するために前記回転レベルを6段階分増加させて第38段階目にする必要がある場合、1段階分(又は2段階分、3段階分)増加させては次販売に臨み、最終的に回転レベルを第38段目に設定してもよいし、或いは一度に6段階分増加させて次販売に臨んでもよい。尚、前記差異と回転レベルの増加分との関係は、RAM203に予め記憶されたテーブルデータ等に基づいて求めてもよいし、RAM203に予め記憶されたモータ30に係るデータと前記差異とに基づいて所定の演算により求めてもよい。
【0054】
本実施の形態の飲料販売装置1によれば、もし或る販売において基準となる希釈比率(基準値)からずれた実希釈比率でもって原料の吐出及び飲料の吐出が終了した場合、次販売ではこの基準値と実希釈比率との差異を小さくする方向にモータ30の回転速度が自動的に調整される。これにより、モータ30の回転速度は基準となる希釈比率を実現する方向に自動的に調整される上に、このような調整は販売の都度可能となる。
【0055】
尚、前述した実施の形態では、基準値と実希釈比率との差異の一例として、基準値に対する実希釈比率の比を挙げたが、これに限定されるものではない。この差異は、例えば、実希釈比率と基準値との差分であってもよい。この差分の正負に応じて、前述したステップS208又はS209の何れかの処理が行われる。
【0056】
また、前述した実施の形態では、前記差異を一度又は複数回の販売で略解消するように、モータ30の回転速度を調整するものであったが、これに限定されるものではない。要するに、検出された差異を小さくする方向にモータ30の回転速度を調整するものであればよい。
【0057】
また、前述した実施の形態では、或る販売時に前記差異を算出し、次の販売時にこの差異がより小さくなるようにモータ30の回転速度が調整されるものであったが、これに限定されるものではない。差異の算出は実販売時に限定されるものではなく、例えば利用者が少なくなる時間帯等にテスト販売として差異を自動的に算出してもよい。これにより、実販売される飲料全てに関して、差異を略解消することが可能となる。
【0058】
===その他の実施の形態===
前述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0059】
前述した実施の形態の飲料販売装置1では、原料吐出部にチューブポンプ20を用いていたが、これに限定されるものではなく、要するに、モータ30の駆動力により原料を吐出するための手段であれば、いかなる手段であってもよい。
【0060】
また、前述したモータ30の回転速度を設定するためのデータは、複数段階からなる離散的な回転レベルであったが、これに限定されるものではない。回転速度を設定するためのデータは、連続的な値を示すものであってもよい。
【0061】
更に、前述したモータ30は、直流モータであったが、これに限定されるものではなく、例えばステッピングモータであってもよい。ステッピングモータを使用する場合、直流モータの回転数を計数するためのパルス発生器204は必須の構成とはならない。また、ステッピングモータの回転速度を設定するためにRAM203に記憶されるデータは、例えば入力パルス周波数である。
【符号の説明】
【0062】
1 飲料販売装置、2 本体、3 前扉、4 冷蔵庫、5 載置台、
10 原料タンク、20 チューブポンプ、21 チューブ、
22 チューブガイド、23 ロータ、23a ローラ、24 フレーム、
25 チューブ固定部、26 吐出口、30 モータ、40 希釈水ライン、
41 ノズル、42 配管、43 流量調節器、44,46 電磁弁、
45 ポンプ、200 CPU、201 入出力部、202 ROM、
203 RAM、204 パルス発生器、205 第1タイマ、
206 第2タイマ、207 カウンタ、208 販売ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動力により原料を吐出する原料吐出部と、一定流量の希釈水を吐出する希釈水吐出部と、を有し、飲料販売釦が押下される期間、前記原料を前記希釈水で希釈して得られる飲料を連続的に販売する飲料販売装置において、
前記飲料を販売する際の基準となる前記原料及び前記希釈水の希釈比率を示す情報が記憶される記憶部と、
前記飲料販売釦が押下される期間における、前記原料吐出部が吐出する前記原料の量と、前記希釈水吐出部が吐出する前記希釈水の量と、を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果から、前記飲料を実販売した際の前記原料及び前記希釈水の実希釈比率を算出する第1算出部と、
前記記憶部の前記情報と前記第1算出部の算出結果とから、前記希釈比率と前記実希釈比率との差異を算出する第2算出部と、
前記第2算出部の算出結果に応じて、前記差異を小さくする方向に、前記モータの回転速度を調整する調整部と、
を備えたことを特徴とする飲料販売装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記第2算出部の算出結果に応じて、前記差異を小さくする方向に、前記モータの回転速度を段階的に調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の飲料販売装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記第2算出部の算出結果に応じて、前記差異を小さくする方向に、前記モータの回転速度を前記差異に対応する分だけ調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の飲料販売装置。
【請求項4】
前記第2算出部は、前記飲料を連続的に販売する都度、前記差異を算出し、
前記調整部は、前記飲料を連続的に販売する都度、前記第2算出部の算出結果に応じて、前記差異を小さくする方向に、前記モータの回転速度を調整する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の飲料販売装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−194988(P2012−194988A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118577(P2012−118577)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【分割の表示】特願2007−18937(P2007−18937)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】