説明

飲料

本発明は、飲料であって、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を含有することを特徴とする飲料に関する。本発明はまた、飲料のpHを所定の値に維持することにおいてアンモニウム塩を用いる方法及び使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料であって、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を含有することを特徴とする飲料に関する。本発明はまた、飲料のpH値を維持するためのアンモニウム塩を用いる方法及び該アンモニウム塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに異なるアロマ(aroma)及び味(甘味、熟味、苦味、こく味、酸味など)を有する多くの種類の飲料(熱い飲料、冷たい飲料、アルコール飲料など)がある。たとえば、アロマ、テクスチャー(texture)及び味が互いに異なる、多くの種類のコーヒー(たとえば、グレードの低いロバスタからグレードの高いアラビカまで)や多くの種類の茶がある。典型的には、消費者は、アロマ、テクスチャー及び味に応じて、特定の飲料(又は特定の種類の飲料)を選択したり好んだりする。
【0003】
飲料のアロマ、テクスチャー及び味は飲料のpHに影響され、したがってpHは消費者が特定の飲料を好んだり味わったりすることに直接に影響を及ぼし得ることが知られている。これは重要なことである。というのは、たとえば、もし通常好まれる飲料が異常な又は変動するpHを有するならば、消費者は予期しない又は不快な味、テクスチャー及び/又はアロマを経験するかもしれないし、消費者の不満は将来におけるその飲料の選択を止めるかもしれないからである。
【0004】
缶入りの非炭酸飲料は、通常、4.60より小さいpHを有する「酸性飲料」(たとえば、果汁飲料、スポーツ飲料など)か、4.60から約7までの範囲のpHを有する「低酸性飲料」(たとえば、コーヒー、茶、スープ、及び植物抽出物を含有するその他の飲料)のどちらかに分類される。製造時に4.60以上のpHを有する飲料(たとえば、低酸性飲料)は、該飲料を製造するのに用いる原料成分から混入する微生物を破壊するために滅菌(sterilise)しなければならない。この滅菌は、典型的には、100℃以上の温度での加熱滅菌により行う。
【0005】
酸性飲料及び低酸性飲料は、通常、加熱滅菌中又は加熱状態での長時間の貯蔵中に(たとえば、40〜60℃で飲料を保存する自動販売機の中で)pHが減少する。pHの減少は、望ましくない酸味や飲料の味、テクスチャー及びアロマの質の低下をもたらす可能性がある。
【0006】
乳製品を含有する飲料(たとえば、ミルク入りのコーヒー又は茶)の加熱処理には、特有の問題がある。加熱すると、ミルク中に存在するラクトース化合物は、有機酸及び第三リン酸塩沈殿物を生成し、その後陽子(H+イオン)が放出され、飲料の酸性化をもたらす。
【0007】
コーヒー抽出物のような植物抽出物を含有する飲料の加熱処理にも、問題がある。コーヒーはエステル化合物を豊富に含んでいるが、これらの化合物は、加熱によって加水分解され、対応する有機酸の生成(たとえば、クロロゲン酸の加水分解によりケイ皮酸及びキニン酸が生成する)と飲料の酸性化とをもたらす。
【0008】
ミルク含有飲料の酸性化中にも、問題が生じる。飲料のpHが個々のミルク乳タンパク質の等電点に近づくにつれて、該乳タンパク質は通常、沈殿し、ミルクの分離、分解及び劣化をもたらし、その結果、飲料は不快な味、テクスチャー及びアロマを有し且つ視覚的にも消費者を惹きつけないものとなる。
【0009】
反対に、一定の飲料(たとえば、コーヒー系の飲料)の場合には、酸性度が極度に低いとフレーバープロファイル(flavour profile)が「平坦」なものになる可能性があることが知られており、これは消費者には望ましくない。
【0010】
したがって、不快な味、テクスチャー及び/又はアロマを避けるために、飲料は、製造中、滅菌中及び貯蔵中に適当なpH値を保つことが望ましい。
【0011】
上記の問題に対処するために、多くの試みがなされている。
【0012】
US6482456は、低酸性飲料を製造する方法に関する。この方法では、キトサン、キトサンオリゴ糖及び/又はグルコサミンを飲料に添加することにより、飲料のpHの減少及びそれに伴う飲料の質の劣化を最小限に抑えている。
【0013】
WO96/28038は、粉砕した形又はローストした形のコーヒーを家庭で又は工業的に抽出(brew)する前にコーヒーを処理して飲料を形成することにより、得られる飲料の酸性度を低下させる、という方法に関する。抽出前の処理は、粉砕した形またはローストした形のコーヒー中のコーヒー固形分の組成に大きな影響を及ぼし、後で飲料を抽出するときに、不快な味、テクスチャー及び/又はアロマを与えるさらなる化合物(キニン酸、フェノール酸など)が形成される。
【0014】
US6056989は、飲料におけるイオン性物質の研究に関する。この研究では、各種の飲料のための原料成分における無機イオン(ナトリウム、カリウム、カルシウム、炭酸塩、リン酸塩など)の存在を同定している。この研究では、飲料のpHの減少並びにそれに伴う飲料のアロマ及び味の低下を防止するために、飲料のpHをナトリウム塩又はカリウム塩を用いて調整している。
【0015】
しかし、pHの調整のためのナトリウム塩(重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなど)の使用は、飲料に塩味、ぬるぬる感(sliminess)及び悪い後味を引き起こし、飲料に特有のアロマ及び味の低下をもたらす可能性がある。カリウム塩は、ナトリウム塩に比べると悪い影響は少ないが、世界的に食品法令では許容可能な飲料添加物とは認められておらず、いくつかの主要な市場では使用が禁止されている。
【0016】
したがって、飲料の加熱滅菌時、飲料の再加熱時、及び/又は飲料の加熱状態での貯蔵中に飲料の味、テクスチャー及び/又はアロマの低下をもたらす酸性化合物が形成されるのを防止する方法及び飲料添加物が必要とされている。
【0017】
発明の概要
本発明は、上記の問題に対処する。
【0018】
第1の態様において、本発明は、飲料であって、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を含有することを特徴とする飲料を提供する。
【0019】
第2の態様において、本発明は、飲料であって、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに該飲料のpHを所定の値に調整することができる一定量のアンモニウム塩を含有することを特徴とする飲料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】重炭酸カリウム(サンプル01の場合;上側のパネル)又は重炭酸アンモニウム(サンプル02の場合;下側のパネル)を含有するコーヒー飲料の、レトルト滅菌による加熱処理の後のGC−MS(ガスクロマトグラフィー−質量分光)分析である。サンプルは、ヘッドスペース(headspace)SPME(固相ミクロ抽出)を用いてGC−MSによって分析した。これにより、液体又は固体のサンプルのヘッドスペースに存在する揮発性化合物及び半揮発性化合物のプロファイルが得られる。具体的には、5mlのサンプルを20mlのヘッドスペースバイアルに挿入して65℃に加熱し、その後揮発性化合物をSPMEファイバーに15分間吸着させ、その後ファイバーを質量分析検出(Agilent 7890 GC - 5975C MS)を用いてガスクロマトグラフに脱着させた。
【図2】図1におけるGC−MS分析(即ち、カリウム塩(サンプル01の場合;上側のパネル)又はアンモニウム塩(サンプル02の場合;下側のパネル)を含有するコーヒー飲料の、レトルト滅菌による加熱処理の後のGC−MS分析)によって得たGC−MSプロファイルに注釈を付けたものである。
【図3】図1におけるGC−MS分析(即ち、カリウム塩(サンプル01の場合;上側のパネル)又はアンモニウム塩(サンプル02の場合;下側のパネル)を含有するコーヒー飲料の、レトルト滅菌による加熱処理の後のGC−MS分析)によって得たGC−MSプロファイルに注釈を付けたものである。
【0021】
発明の詳細な説明
上記のように、飲料のpHを所望の所定のレベルに維持すること、及び/又は飲料のpHを所望の所定のレベルに調整することにより、(たとえば、飲料の加熱滅菌後又は飲料の加熱状態での貯蔵後の)飲料の味、テクスチャー及びアロマの低下が抑制される。しかし、上記のように、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に維持し及び/又は調整するという課題は、アルカリ性のpH調整剤が飲料の味、テクスチャー及び/又はアロマに悪い影響を及ぼすことがあることを考慮すると、達成が困難である。
【0022】
本願明細書に記すように、上記の問題は本発明によって対処することができる。第1の態様において、本発明は、飲料(たとえば、コーヒー)であって、該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を含有することを特徴とする飲料を提供する。したがって、第1の態様においては、アンモニウム塩は、該アンモニウム塩が添加される飲料のpHを所定の値に維持するために用いることができる。実施例において示すように、アンモニウム塩の添加により飲料のpHが所定の値に効果的に維持されるのであって、アンモニウム塩は植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料に添加されたときに新たなフレーバー化合物(flavour compound)の形成をもたらすものとは考えられず、したがって、アンモニウム塩は飲料のアロマ、テクスチャー及び/又は味を悪化させるものではない。
【0023】
第2の態様において、本発明は、飲料(たとえば、コーヒー)であって、該飲料のpHを所定の値に調整することができる一定量のアンモニウム塩を含有することを特徴とする飲料を提供する。したがって、第2の態様においては、アンモニウム塩は、該アンモニウム塩が添加される飲料のpHを所定の値に調整するために用いることができ、アンモニウム塩の添加により飲料のpHは所定の値に調整される。このような調整は、たとえば、飲料が製造時に望ましくないpHを有していてpHを好ましい所定の値に調整する必要がある場合に、好都合である。
【0024】
換言すれば、本発明は、飲料であって、該飲料のpHを所定の値に維持し及び/又は該飲料のpHを所定の値に調整するための活性成分としてアンモニウム塩を含有することを特徴とする飲料に関するものである。
【0025】
本発明者らの発見は、アンモニウム系化合物が通常は強いアロマを示すものとして周知であることを考えると、驚くべきものである。以前は、アンモニウム塩は、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料の中の化合物と反応して該飲料のアロマ、テクスチャー及び/又は味に悪い影響を及ぼすアンモニウム系化合物の形成をもたらす可能性が大きいと考えられていたのである。
【0026】
好ましくは、アンモニウム塩は、アルカリ対イオンを有するアンモニウム塩である。特に好ましくは、アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アルギン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。アンモニウム塩は、食用及び飲用として許容され得るもの(たとえば、許容され得る品質及び純度を有するもの)である必要があり、したがって人間による消費用として許容され得るものである必要がある。このようなアンモニウム塩は、当業者には知られている。
【0027】
1つの態様においては、本発明の第1又は第2の態様の飲料は、アンモニウム塩に加え、該飲料のpHを所定の値に維持し及び/又は調整することができる他の物質を含有している。たとえば、飲料は、アンモニウム塩に加え、ナトリウム塩(重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなど)、及び/又はカリウム塩(重炭酸カリウムなど)、及び/又はキトサン、キトサンオリゴ糖及び/又はグルコサミンを含有してよい。上記のように、このような物質も、飲料のpHを所定の値に維持し及び/又は調整することに寄与し、飲料のアロマ、味及び/又はテクスチャーの低下を抑制することができる。
【0028】
しかし、実施例において示すように、アンモニウム塩だけでも、飲料のpHを所定の値に維持し及び/又は調整することができる。したがって、別の態様においては、飲料は、アンモニウム塩以外には、飲料のpHを所定の値に維持することができる物質を含まない。たとえば、この態様においては、飲料は、該飲料のpHを所定の所望の値に維持することができる量のナトリウム塩(重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなど)、及び/又はカリウム塩(重炭酸カリウムなど)、及び/又はキトサン、キトサンオリゴ糖及び/又はグルコサミンを、含まない。
【0029】
「飲料」という表現には、人間の飲用による消費のために製造され、該消費に適する液体を含める。飲料は、熱い温度(たとえば、飲料の温度が約30〜60℃、又は60℃を越える温度である場合)及び/又は冷たい温度(たとえば、飲料の温度が約4〜29℃である場合)で消費することができる。
【0030】
特に好ましい1つの態様においては、飲料はそのまま飲める飲料(ready-to-drink beverage)である。そのまま飲める飲料とは、消費に適する既に調製された形態で供給され、消費の前にいかなる成分の添加をも必要としない飲料を意味する。
【0031】
特に好ましい1つの態様においては、飲料はそのまま飲めるミルクコーヒー飲料であってよい。(ミルクコーヒー飲料とは、ミルク又はミルク製品と、コーヒー又はコーヒー抽出物とを含有する飲料であって、その例としては後述のもの及び実施例に記載するものが挙げられる。)
【0032】
1つの態様においては、そのまま飲める飲料は、消費用の適切に冷たい温度で(たとえば、約4〜29℃で)供給してよい。
【0033】
別の1つの態様においては、そのまま飲める飲料は、消費用の適切に熱い温度で(たとえば、約30〜60℃、又は60℃を越える温度で)供給してよい。
【0034】
飲料(たとえば、そのまま飲める飲料)は、たとえば加熱処理により滅菌し、それにより該飲料中の微生物を破壊し及び/又は除去し、該飲料の微生物学的安定性を確保しておくことが好ましい。適当な加熱滅菌方法は後述するが、その例としてレトルト滅菌(retort sterilisation)及び低温殺菌(pasteurisation)が挙げられる。
【0035】
飲料(たとえば、そのまま飲める飲料)は、再加熱可能である飲料であることが好ましい。「再加熱可能」という表現には、熱い飲料が冷えた後、不快な味、テクスチャー及び/又はアロマを招くpHの減少をもたらすことなく熱い温度に戻す(即ち、再加熱する)ことができるという意味を含める。1つの好ましい態様においては、飲料は、再加熱可能で、そのまま飲める、滅菌してあるミルクコーヒー飲料である。
【0036】
本発明の飲料は、さらに好ましくは、滅菌してあるミルクコーヒー飲料(即ち、ミルク又はミルク製品と、コーヒー又はコーヒー抽出物とを含有する飲料)であり、最も好ましくは、冷たい飲料として(即ち、約4〜29℃の温度で)消費者に供給される、そのまま飲める、滅菌してあるミルクコーヒー飲料である。
【0037】
周知のように、飲料の知覚される味、アロマ及び/又はテクスチャー(テクスチャーは「口当たり」(mouthfeel)ともいう)は、飲料の与える快感に寄与する重要な特性である。これらの変数に悪い影響を与える、飲料成分及び/又は飲料製造工程又は貯蔵は、全く許容されない(又は、まずくさえある)飲料をもたらす可能性がある。
【0038】
飲料の味、アロマ及びテクスチャーを評価し及び/又は測定するための方法は、公知であり(たとえばUS6056989に記載された方法を参照)、該公知文献に記載された方法はこの言及によって本願明細書に組み込まれたものとする。
【0039】
本願実施例は、飲料の味、アロマ及び/又はテクスチャーを測定するための方法を記載する。これらの方法において、飲料テイスティング(beverage-tasting)の分野の当業者は、検査される飲料の味、テクスチャー(即ち、口当たり)及びアロマの評価を提供する。
【0040】
pHは、与えられた温度(典型的には22℃又は25℃)における溶液の酸性度又はアルカリ度を表すための対数スケールである。酸性度は、酸性を付与する溶液の水素イオン濃度の尺度である。水溶液においては、水素イオンは、水素原子が1個の電子の喪失により正電荷を帯びたもの(H+と表す)である。H+の濃度を測定するために、電極を水溶液に浸してpH単位の表示を見る。pHは、水素イオン濃度の逆数の(10を底とする)対数として定義される。
【0041】
7より小さいpHは、溶液が酸性であることを示す。7であるpHは、溶液が中性であることを示す。7より大きいpHは、溶液がアルカリ性であることを示す。pHの例を挙げると、塩化水素の0.36%溶液(強酸)についてはpHが1であり、水酸化ナトリウムの0.40%溶液(強塩基)についてはpHが13である。酢のpHは、約3である。ミルクのpHは、約6.65〜6.80である。純水のpHは、約7である。海水のpHは、約8.50〜10である。
【0042】
pHは指数関数であるから、小さな数値変化に見えるものが、水素イオンの濃度においては(水酸イオン(OH-)の場合と比べると)非常に大きな変化を表すかもしれない。特定の処理に起因する溶液の酸性度の変化は、未処理の溶液のpHに対する処理済の溶液のpHの百分率として表すことができる。
【0043】
好ましくは、本発明において用いる飲料は、通常、加熱滅菌中及び/又は加熱状態での長時間の貯蔵中にpHの減少(即ち、酸性度の増大)を経験し、pHの減少が飲料のアロマ、テクスチャー及び/又は味を変更して悪影響を及ぼす。上記のように、本発明の第1の態様においては、このような飲料は、該飲料のpHを所定の所望の値に維持する(たとえば、製造時の飲料のpHを維持する)ことができる一定量のアンモニウム塩を含有するように処理され、それにより、飲料のアロマ、テクスチャー及び/又は味の上記悪い変更を抑制し及び/又は防止する。また、本発明の第2の態様においては、このような飲料は、該飲料のpHを所定の所望の値に調整することができる一定量のアンモニウム塩を含有するように処理され(たとえば、滅菌及び/又は貯蔵の前に原飲料が示したpHに戻すことにより)、それにより、飲料のアロマ、テクスチャー及び/又は味の上記悪い変更を抑制し及び/又は防止する。
【0044】
上記のように、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に維持し及び/又は調整することは、特に重要である。
【0045】
全乳は、6.65〜6.80の範囲のpHを有し、pHの5.90以下への減少(即ち、ミルク中の個々の乳タンパク質の等電点への接近)は、ミルク成分(たとえば、個々の乳タンパク質及び不溶のリン酸カルシウム)の形成及び沈殿をもたらす可能性があり、これは得られる飲料の味、テクスチャー(即ち、口当たり)、アロマ及び外観に悪い影響を及ぼす。
【0046】
たとえば、全乳のpHは、さらなる飲料成分(たとえば、コーヒー抽出物などの植物抽出物、濃縮物及び/又は塩類)を添加すると変化し、pHはミルクの最高度の安定性を示す正常なpH(即ち、6.65〜6.80の範囲のpH)から変化する。このようなミルク含有飲料(たとえば、ミルクコーヒー)のその後の加熱中に、多数の重要な化学変化が起こり、可溶なリン酸カルシウムが不溶なリン酸カルシウムへ変化するとともにミルク及びコーヒー成分からのpH寄与(たとえば、コーヒー中に存在するエステルの加水分解)が減少する。これは、飲料の味、テクスチャー及びアロマに悪い影響を及ぼすが、飲料のpHを調整することによって対処できる。
【0047】
1つの好ましい態様においては、飲料は、ミルクコーヒー飲料(即ち、ミルク又はミルク製品と、コーヒー又はコーヒー抽出物とを含有する飲料)であり、製造時には6以上のpH(たとえば、6.40〜6.90のpH)を有する。典型的には、そのような飲料は、加熱滅菌中及び/又は加熱状態での長時間の貯蔵中にpHが5.90以下に減少する。しかし、本発明の飲料(該飲料のpHを所定の値に維持し又は該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を含有する)は、加熱滅菌中及び/又は加熱状態での長時間の貯蔵中にpHが5.90以下に減少することはなく、したがって、ミルク成分の沈殿を防止し、飲料の望ましい味、テクスチャー、アロマ及び外観を維持する。
【0048】
1つの好ましい態様においては、製造時の飲料は、たとえば、下記のpHを有する。
6以上、6.40以上、6.50以上、6.60以上、6.80以上、6.90以上若しくは7以上、
6、6.40、6.50、6.60、6.65、6.70、6.80、6.90、7、若しくは8、又は
6〜8、6〜7、6.65〜6.80若しくは6.90。
【0049】
典型的には、加熱滅菌中及び/又は加熱状態での長時間の貯蔵中に、そのような飲料のpHは、たとえば下記の値にまで減少する。
5.90以下、5.80以下、5.70以下、5.60以下、5.50以下、5以下、4以下若しくは3以下、
5.90、5.80、5.70、5.60、5.50、5、4若しくは3、又は
5.90〜3、5.80〜3、5.70〜3、5.60〜3、5.50〜3、5〜3若しくは4〜3。
【0050】
しかし、飲料であって該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を含有するような飲料は、加熱滅菌中及び/又は加熱状態での長時間の貯蔵中にpHが5.90以下に減少することはなく、したがって、本発明の飲料の味、テクスチャー、アロマ及び/又は外観の低下が防止される。
【0051】
1つの好ましい態様においては、飲料は製造時に6以上のpH(たとえば、6.40〜6.90のpH)を有する。このような飲料の1例として、ミルクコーヒー飲料(即ち、ミルク又はミルク製品と、コーヒー又はコーヒー抽出物とを含有する飲料)が挙げられる。このような飲料は、典型的には、加熱滅菌中及び/又は加熱状態での長時間の貯蔵中にpHが5.90以下に減少する。しかし、飲料であって該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を含有するような飲料は、加熱滅菌中及び/又は加熱状態での長時間の貯蔵中にpHが5.90以下に減少することがないことが好ましく、これにより、本発明の飲料の望ましい味、テクスチャー、アロマ及び/又は外観の低下が防止される。
【0052】
実施例で説明するように、本発明の飲料の1つの好ましい例(「製品1」と称す)においては、製造時にpHは6.90であり、加熱処理(たとえば、レトルト滅菌)の後にpHは所定の所望の値である6.40になる。一方、本発明の飲料の別の好ましい例(「製品3」と称す)においては、製造時にpHは6.90であり、加熱処理(たとえば、レトルト滅菌)の後にpHは6.55になる。
【0053】
特に断らない限り、本発明に用いる飲料のpHは、22℃の温度且つ大気圧の下で測定したものである。
【0054】
上記のように、本発明の第1の態様においては、アンモニウム塩は飲料のpHを所定の値に維持することができる。したがって、本発明の第1の態様においては、飲料は、該飲料のpHを所定の所望の値に維持するための緩衝剤として機能することができる一定量のアンモニウム塩を含有する。
【0055】
周知のように、緩衝剤は、弱酸の1種又は2種以上の塩の溶液であって、追加的な酸及び塩基を中和することができて溶液のpHを維持するために機能する。緩衝された溶液は弱酸とその共役の弱塩基とを含有し、該溶液に少量の酸又は塩基を添加した際のpHの変化は最小になる。
【0056】
本発明においては、緩衝剤を飲料に添加することにより、該飲料の加熱処理中又は加熱処理後に形成される追加的な酸を効果的に中和し、それにより、pHの増加又は減少を防止し及び/又は最小限に抑えることによって飲料のpHを維持する。
【0057】
「飲料のpHを所定の値に維持する」という表現には、アンモニウム塩が飲料のpHの所定の値からの増加又は減少を、たとえば該飲料の加熱処理中又は加熱処理後に形成される追加的な酸を中和することによって、防止し及び/又は最小限に抑えるという意味を含める。
【0058】
pHの所定の値は、飲料の種類によって異なってよく、望ましい又は最適の味、テクスチャー及び/又はアロマ(上記のように、これは当業者によって検査できる)と関連するpHの範囲又は値に基づいて当業者が選択することができる。
【0059】
たとえば、上記のように、飲料のpHの所定の値は、6以上、6.40以上、6.50以上、6.60以上、6.80以上、6.90以上又は7以上でよいし、6〜8、6〜7又は6.65〜6.80の範囲でもよい。ミルクコーヒー飲料(即ち、ミルク又はミルク製品と、コーヒー又はコーヒー抽出物とを含有する飲料)の場合には、pHの所定の値は6.40〜6.90の範囲でよい。
【0060】
したがって、「飲料のpHを所定の値に維持する」という表現は、飲料のpHが飲料の味、テクスチャー、アロマ及び/又は外観に悪い影響を及ぼすレベルになることをアンモニウム塩が防止するという意味を含む。たとえば、「飲料のpHを所定の値に維持する」という表現は、飲料のpHが5.90以下の値にまで減少することをアンモニウム塩が防止するという意味をも含む。
【0061】
「飲料のpHを所定の値に維持する」という表現には、アンモニウム塩が飲料のpHを所定の値から0.01だけ離れた値に、又は所定の値から0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80若しくは0.90だけ離れた値に維持するという意味をも含める。
【0062】
上記のように、加熱処理の後の飲料のpHを所望の所定のレベルに維持し及び/又は安定させることにより、滅菌後又は加熱状態での長時間の貯蔵後の飲料の味、テクスチャー及びアロマの低下が抑制され及び/又は防止される。
【0063】
実施例に示すように、アンモニウム塩は飲料のpHを所望の所定の値に維持することができる。この発見は、驚くべきものである。というのは、本発明の飲料(植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するような飲料)は一般にはアンモニウムイオンを含まないので、アンモニウム塩の添加は一般には飲料のpHを所定の値に維持することができる緩衝系を形成するとは思われないからである。
【0064】
理論に拘束されることを望まないものであるが、アンモニウム塩の飲料への添加の後、アンモニウム塩は飲料中でアンモニウムイオン(即ち、NH4+)と対応するアルカリ対イオンとに解離し、それにより飲料のpHを所定の値に維持することができる緩衝系を形成するものと考えられる。したがって、1つの態様においては、本発明は、飲料であって、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに該飲料のpHを所定の値に調整し及び/又は維持することができる一定量または一定濃度のアンモニウムイオンを含有する飲料を提供する。
【0065】
好ましくは、本発明は、飲料であって、該飲料のpHを所定の値に維持することが、該飲料の酸性化を防止し及び/又は抑制することによってなされることを特徴とする飲料を提供する。「飲料の酸性化」という表現には、飲料の酸性度の上昇(即ち、pHの減少)をもたらす、飲料中のH+濃度の増加を含める。したがって、本発明においては、飲料の酸性化を防止し及び/又は抑制することによって、飲料のpHが所定の値に維持される。
【0066】
飲料を加熱処理に付している間及び/又は付した後に飲料のpHが所定の値に維持されることが、好都合である。
【0067】
上記のように、特定の飲料(たとえば、低酸性飲料)は、該飲料を製造するのに用いる原料成分から混入する微生物を破壊し、除去し及び/又は減少させるために、典型的には加熱滅菌により、滅菌しなければならない。このような微生物は病原体及び/又は腐敗生物であることがあり、これらを除去し及び/又は減少させることによって安全で室温貯蔵しても安定な飲料(shelf-stable beverage)が得られる。
【0068】
破壊すべき微生物は、内在的な要因(たとえば、個々の飲料成分のそれぞれの中に存在する微生物の初期数)及び外在的な要因(たとえば、得られる製品中に存在する各種の微生物の量及び増殖の速さ)によって異なる。
【0069】
必要な滅菌処理は、微生物の初期数(即ち、個々の飲料成分の中に存在する微生物の量)、微生物の増殖の定義される最終レベル、及び微生物を不活性化するのに必要な滅菌速度を計算することによって決定できるということが、理解されるであろう。
【0070】
微生物の集団を変数である温度“T”の状態に暴露することによる致死効果を、該致死効果を時刻“t0”に対応する一定の温度“T0”で実施する仮想的な滅菌に関連付けることによって計算することができる。もし該一定の温度が121.11℃に等しいとすれば、“F0”という値は、変数である温度Tにおける現実の暴露と同等になるような121.11℃における暴露時間であり、仮想的な微生物について計算されるものであって、下記の式によって計算することができる。
【0071】
0=ΔtΣ10(T-121)/10
【0072】
したがって、たとえば滅菌を通常111℃において20分間行う場合には、121.11℃において必要な時間は、下記の計算に示すように、2分間となる。
【0073】
0=20×10(111-121)/10=20×10-10/10=20-1=2(分)
【0074】
好ましい態様においては、加熱滅菌を行うことにより、F0値は、3〜80の範囲の値、たとえば3、5、10、20、30、40、50、60、70又は80という値になる。
【0075】
異なる加熱滅菌条件が同一のF0値を与え得ることが、理解されるであろう。たとえば、80というF0値は、121℃での80分間の滅菌を行うことによっても、124℃での40分間の滅菌を行うことによっても、達成することができる。
【0076】
典型的には、加熱処理はレトルト滅菌若しくはそれを含む方法又は低温殺菌若しくはそれを含む方法である。
【0077】
レトルト滅菌は、食品、栄養製品及び医薬品の滅菌に用いる蒸気主体の滅菌方法である。いくつかの種類のレトルト滅菌が知られており、それらは蒸気を直接の加熱媒体(たとえば、飽和蒸気)または間接の加熱媒体(たとえば、水浸漬法に用いる蒸気加熱した水)として用いる。レトルト滅菌の例として、以下のものが挙げられる。
飽和蒸気型レトルト滅菌(直接の蒸気加熱を行う)
水浸漬型レトルト滅菌(回転加熱でも静止加熱でもよく、間接の蒸気加熱を行う)
水スプレー型レトルト滅菌(回転加熱でも静止加熱でもよく、間接の蒸気加熱を行う)
気体状蒸気型レトルト滅菌(回転加熱でも静止加熱でもよく、直接の蒸気加熱を行う)
【0078】
レトルト滅菌に用いる変数の正確な値は、処理すべき飲料及び滅菌を実施する国によって大きく異なる(異なる国でしばしば異なるレトルト条件を設定している)。たとえば、レトルト滅菌は、125℃で25分間行うこともできるし、121℃で20〜25分間行うこともできる。
【0079】
レトルト滅菌を行うのに適当な条件は、公知であり、たとえば、Campden and Chorleywood Food Research Association (CCFRA) Guideline no. 13 (1997;“Guidelines for Batch Retort Systems - full water immersion - raining spray water processing”)に記載されている。この言及によってこの文献の内容は本願明細書に組み込まれたものとする。したがって、当業者であれば、本発明の飲料のレトルト滅菌を行うのに適当な条件を選択することができるであろう。
【0080】
低温殺菌は、ミルクを滅菌するのに一般的に用いるように、典型的には沸点より低い温度で行う。沸点より高い温度で行うと、ミルク中のカゼインミセルが不可逆的に凝集する(即ち、「凝乳」する)。
【0081】
いくつかの種類の低温殺菌が知られており、本発明の飲料の滅菌に用いるのに適当である。
【0082】
高温/短時間(HTST)低温殺菌では、液体を、金属板に挟み、又は熱水によって外部から加熱した管を通じて、処理する。ここで、液体は71.7℃(華氏161度)で15〜20秒間加熱する。二重の低温殺菌では、現行の標準である30秒間の加熱を1回行う代わりに、72℃(華氏161度)での15秒間の加熱を2回、液体に対して行う。
【0083】
延長貯蔵期間(ESL)処理では、微生物濾過工程とHTSTの場合より低い温度での加熱とを行う。
【0084】
超高温(UHT又は超加熱処理)殺菌(ウルトラパスチャライゼーション(ultra-pasteurisation)ともいう)を用いることもできる。この方法では、138℃(華氏250度)での1秒の数分の1の時間の液体の加熱を行う。
【0085】
バッチ低温殺菌では、より低い温度での、典型的には63℃(華氏145度)での30分間のミルクの大きなバッチの加熱と、その後の4℃(華氏39度)への急速冷却とを行う。
【0086】
本発明の飲料のpHは、飲料を加熱状態での長時間の貯蔵に付しているときに維持されることが好都合である。本発明の飲料は、自動販売機に提供されているときにそのような状態に付してよい。周知のように、そのまま飲める熱い飲料(ready-to-drink hot beverage)を消費者に供給する自動販売機は、既に製造してある飲料の貯蔵庫を、消費用に要求される熱い温度に(たとえば、飲料の温度を約30〜60℃に)維持しているので、飲料は要求される熱い温度で消費者に速やかに分配することができ、消費者が所望すれば直ちに消費することができる。既に製造してある飲料の貯蔵庫は、飲料が分配されるまでのかなりの長さの期間(たとえば、数時間、数日又は数週)、該熱い温度で自動販売機中に保管することができるが、その期間中、飲料のpHを維持して、分配されたときに飲料の意図する味、テクスチャー、アロマ及び外観が保持されていることが重要である。
【0087】
飲料が自動販売機中に貯蔵される条件は、地理的な位置によって異なる。たとえば、ヨーロッパでは自動販売機は一般的に熱い飲料を30〜40℃の温度で保存するが、アジアでは自動販売機は一般的に熱い飲料を40〜50℃又は40〜60℃の温度で保存する。
【0088】
したがって、「加熱状態での長時間の貯蔵」という表現には、30℃以上の温度(たとえば、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃又はそれより高い温度、たとえば30〜40℃、30〜50℃、30〜60℃、40〜50℃、40〜60℃又は50〜60℃の温度)での1時間又はそれより長い時間(たとえば、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間又は3週間)の飲料の貯蔵という意味を含める。
【0089】
たとえば、飲料の貯蔵条件の例として、下記のものを挙げることができる。
30℃での1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間又は24時間の貯蔵、
40℃での1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間又は24時間の貯蔵、
50℃での1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間又は24時間の貯蔵、及び
60℃での1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間又は24時間の貯蔵。
【0090】
本発明の飲料のpHは、飲料を加熱状態での上記のような時間の貯蔵に付しているときに所定の値に維持することが好都合である。
【0091】
1つの好ましい態様においては、本発明は、植物抽出物が加熱滅菌又は加熱状態での長時間の貯蔵によりエステルの加水分解又はH+(水素イオン)の放出を介して酸を生成する抽出物であるような飲料を提供する。たとえば、植物抽出物は、コーヒー抽出物、ココア抽出物、茶抽出物、穀草抽出物、野菜抽出物、果実抽出物及び薬用植物(herb)抽出物、並び加熱滅菌又は加熱状態での長時間の貯蔵に付したときにエステルの加水分解又はH+の放出を介して酸を生成することができる抽出物からなる群より選ぶことができる。
【0092】
好ましくは、飲料は非炭酸飲料である。
【0093】
「植物抽出物」という表現には、植物の任意の部分(たとえば、葉、根、種、豆、果実又は花)から抽出した固体の、液体の又は水性の物質を含める。たとえば、「コーヒー抽出物」という表現には、コーヒー植物から抽出した物質、特にコーヒー植物の豆からの抽出物を含める。このような抽出物は、飲料に添加する前に処理を施してもよい(たとえば、コーヒー豆は飲料に添加する前にロースト(焙煎)してよい)。
【0094】
「乳製品」という表現には、ミルク(たとえば、雌牛から採ったミルク又は山羊、羊、水牛、ヤク、馬などの他の哺乳動物から採ったミルク)及びミルクから得られる製品を含める。1つの態様において、本発明は、乳製品がミルク、ミルク系タンパク質又はミルク単離物であるような飲料を提供する。そのようなものの例として、Advanced Dairy Chemistry (3rd Edition; edited by PF Fox, PLH McSweeney; Springer pub., 2003 ISBN 0306472716, 9780306472718)に記載されているものが挙げられる。この言及によってこの文献の内容は本願明細書に組み込まれたものとする。
【0095】
好ましくは、乳製品は、ミルク(全乳、半スキムミルク、スキムミルク、粉ミルク及び長期保存可能ミルクを含む)、クリーム(全脂肪クリーム、半脂肪クリーム、低脂肪クリーム、サワークリーム及び濃縮クリームを含む)並びにヨーグルトからなる群より選ばれる。
【0096】
本発明の飲料は、好ましくはコーヒー飲料、たとえば、ブラックコーヒー、ミルクコーヒー(ホワイトコーヒーとも言い、カプチーノなど、多くの種類が知られている)及びアイスコーヒーからなる群より選ばれるコーヒー飲料である。
【0097】
1つの態様においては、本発明の飲料は、茶飲料、たとえば、紅茶(black tea)、ミルクティー(ホワイトティーとも言う)、アイスティー、緑茶(green tea)、ウーロン茶及びブレンド茶からなる群より選ばれる茶飲料である。
【0098】
1つの態様においては、本発明の飲料は、ミルク飲料、たとえば、ミルク、クリーム及びミルクセーキからなる群より選ばれるミルク飲料である。
【0099】
1つの態様においては、本発明の飲料は、ココア飲料、たとえば、チョコレート飲料、ホットチョコレート、ココア及びチョコレート−コーヒー飲料(たとえば、チョコレート風味のコーヒーカプチーノ飲料)からなる群より選ばれるココア飲料である。
【0100】
飲料がコーヒー飲料である場合、好ましくは、飲料のpHの所定の値は、6以上(たとえば6.40〜6.90、たとえば6.55)である。
【0101】
1つの態様においては、アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムを含む物質である。本発明の飲料に添加するのに適当な炭酸アンモニウムの1例は、pHが9.0である炭酸アンモニウムの10%溶液である。
【0102】
1つの好ましい態様においては、本発明は、アンモニウム塩が重炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムを含む物質であるような飲料を提供する。本発明の飲料に添加するのに適当な重炭酸アンモニウムの1例は、pHが7.8である重炭酸アンモニウムの10%溶液である。
【0103】
好ましくは、本発明は、下記の成分を含有し又は下記の成分からなる飲料を提供する(合計容量2リットル当たりの重量(即ち、w/v)で表示する)。

ミルク 0.0〜1800g
コーヒー固形分 1.0〜100g
ココア固形分 0.0〜25g
重炭酸アンモニウム 0.2〜9.0g
クエン酸カリウム 0.0〜2.0g
リン酸カリウム 0.0〜3.0g
安定剤(セルロースガム/微結晶セルロース及びカラギーナンから得られるもの)
0.0〜60g
水 合計容量を2リットルとする量
【0104】
1つの特に好ましい態様においては、本発明は、下記の成分を含有し、下記の成分から実質的になり、又は下記の成分からなる飲料を提供する(容量に対する重量(即ち、w/v)の百分率で表示する)。

抽出物であるコーヒー固形分 1%
抽出物であるココア固形分 0.2%
ミルク 35%
重炭酸アンモニウム 0.095%
クエン酸カリウム 0.1%
リン酸カリウム 0.095%
砂糖 4.8%
水 合計を100容量%とする量

所望により、安定剤(セルロースガム/微結晶セルロース及びカラギーナンから得られるもの)を1リットル当たり0.0〜30gの量で添加してもよい。
【0105】
実施例に記載するように(該当する飲料は「製品1」と称す)、このような飲料は、加熱滅菌(即ち、レトルト滅菌)の前においてpHが約6.90であり、レトルト滅菌処理の後ではpHが約6.40になる。
【0106】
別の特に好ましい態様においては、本発明は、下記の成分を含有し、下記の成分から実質的になり、又は下記の成分からなる飲料を提供する(容量に対する重量の百分率で表示する)。

抽出物であるコーヒー固形分 1%
抽出物であるココア固形分 0.2%
ミルク 75%
重炭酸アンモニウム 0.3%
砂糖 3%
水 合計を100容量%とする量

所望により、安定剤(セルロースガム/微結晶セルロース及びカラギーナンから得られるもの)を1リットル当たり0.0〜30gの量で添加してもよい。
【0107】
実施例に記載するように(該当する飲料は「製品3」と称す)、このような飲料は、加熱滅菌(即ち、レトルト滅菌)の前においてpHが約6.90であり、レトルト滅菌処理の後ではpHが約6.55になる。
【0108】
第3の態様においては、本発明は、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に維持するための方法であって、該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を該飲料に添加する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0109】
第4の態様においては、本発明は、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを調整するための方法であって、該飲料のpHを所定の値に調整することができる一定量のアンモニウム塩を該飲料に添加する工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0110】
上記のように、飲料のpHを所望の所定のレベルに調整し及び/又は安定させることにより、(たとえば加熱滅菌後又は加熱状態での貯蔵後の)飲料の味、テクスチャー及びアロマの低下が抑制され及び/又は防止されることが、知られている。
【0111】
好ましくは、本発明の第3又は第4の態様における飲料は、(本発明の第1の態様に関連して上で説明したように)加熱滅菌中及び/又は加熱状態での長時間の貯蔵中にpHの減少(即ち、酸性度の増大)を通常経験するものである。たとえば、上記のように、飲料は「低酸性飲料」であってよい。
【0112】
1つの好ましい態様においては、アンモニウム塩は、飲料のpHを所定の値に維持することができる。したがって、1つの態様においては、アンモニウム塩は、飲料のpHを所定の所望の値に維持するために、緩衝剤として機能することができる量で、飲料に添加される。
【0113】
好ましくは、飲料のpHを所定の値に維持することを、飲料の酸性化を防止し及び/又は抑制することによって行う。
【0114】
好ましくは、本発明は、該飲料を加熱処理、たとえば上記のようにF0値を3〜80の範囲の値(たとえば3、5、10、20、30、40、50、60、70又は80という値)にするために行う加熱滅菌、に付すときに該飲料のpHを所定の値に維持するような方法を提供する。好ましくは、加熱処理は、上記のようにレトルト滅菌、低温殺菌又は加熱状態での長時間の貯蔵である。
【0115】
本発明の第1及び第2の態様に関連して上で説明したように、飲料の加熱処理の後又は加熱状態での長時間の貯蔵中に飲料のpHを所望の所定のレベルに安定させることは、飲料の味、テクスチャー及び/又はアロマの低下を抑制し及び/又は防止する。
【0116】
1つの態様においては、本発明の第3及び第4の態様におけるアンモニウム塩を飲料に添加する工程は、飲料の製造後であるが飲料の加熱処理(たとえば、上記のように、加熱滅菌又は加熱状態での長時間の貯蔵による加熱処理)を行う前に実施する。
【0117】
別の1つの態様においては、本発明の第3及び第4の態様におけるアンモニウム塩を飲料に添加する工程は、飲料の加熱処理(たとえば、上記のように、加熱滅菌又は加熱状態での長時間の貯蔵による加熱処理)中に実施する。
【0118】
1つの態様においては、本発明の第3及び第4の態様におけるアンモニウム塩を飲料に添加する工程は、飲料の製造後且つ飲料の加熱処理(たとえば、上記のように、加熱滅菌又は加熱状態での長時間の貯蔵による加熱処理)後に実施する。
【0119】
アンモニウム塩は、様々な形態、たとえば、アンモニウム塩の濃縮若しくは希釈溶液又はアンモニウム塩の固体顆粒、粉末若しくはカプセルの形態で、飲料に添加できることが、理解されるであろう。
【0120】
好ましくは、アンモニウム塩は、アルカリ性のpHを有するアンモニウム塩の溶液の形で提供される。この溶液を液体の飲料に単純に添加して分散させ、飲料のpHを速やかに且つ効果的に調整することができる。アンモニウム塩の濃縮溶液は危険である可能性があるので、アンモニウム塩の希釈溶液(たとえば、アルカリ性のpHを有するアンモニウム塩の10%溶液)を用いて、アンモニウム塩の飲料への添加に関わる人が傷害又は痛みを受ける危険を少なくすることが好ましい。1つの好ましい態様においては、アンモニウム塩は、pHが9.0である炭酸アンモニウム塩の10%溶液又はpHが7.8である重炭酸アンモニウム塩の10%溶液の形態で提供される。
【0121】
1つの好ましい態様において、本発明は、該飲料が本発明の第1又は第2の態様に関連して上で説明したものである場合の方法を提供する。
【0122】
第5の態様において、本発明は、本発明の第3又は第4の態様の方法によって得られる飲料を提供する。第6の態様において、本発明は、本発明の第3又は第4の態様の方法によって得られる滅菌飲料を提供する。
【0123】
第7の態様において、本発明は、本発明の滅菌飲料を含む滅菌容器を提供する。好ましくは、滅菌容器は、缶(can)、ブリキ缶(tin)、カートン、瓶及び小箱(packet)からなる群より選ばれる。このような容器は公知である。
【0124】
第8の態様において、本発明は、アンモニウム塩の、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に維持するための使用を提供する。第9の態様において、本発明は、アンモニウム塩の、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に調整するための使用を提供する。
【0125】
本発明の第8及び/又は第9の態様の使用においては、飲料は本発明の第1又は第2の態様に関連して上で説明したものであることが好ましい。
【0126】
本願明細書における本発明に先行して公開されたように見える文献についての提示又は議論は、該文献が本発明の先行技術又は技術常識であることを必ずしも認めるものではない。以下、本発明のいくつかの態様を具体化する実施例を添付の図面に参照して説明する。実施例は、本発明の好ましい態様であるが、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0127】
本発明の典型的な飲料
典型的なチョコレート風味のカプチーノ飲料を、次のように製造する。水性アルカリ溶液を、下記の物質(単位は重量)を容器中に添加することにより製造する。
【0128】
【表1】

【0129】
製造物は、スクロース(又は適当な甘味料)を用いて、所望の要求に合わせて甘みを与え、要求される味にしてもよい。
【0130】
製造物は、非ミルク飲料(即ち、ミルクの含有量が0.0gである)であってもよい。
【0131】
飲料に添加する重炭酸アンモニウムの正確な量は、飲料中のコーヒー濃縮物/植物材料及びミルクの量によって異なる。飲料のpHを(たとえば加熱処理後に)6より大きい値に調整し維持するために必要なアンモニウム塩の正確な量は、当業者が決めることができる。
【0132】
少なくとも0.2gの重炭酸アンモニウム以外に、クエン酸カリウム及び/又はリン酸カリウムを、飲料のpHを調整し又は維持するために添加することができる。
【0133】
【実施例2】
【0134】
飲料の製造と検査
飲料の製造
下記の4種類のチョコレート風味のカプチーノ飲料(「製品1」〜「製品4」)を、実施例1の場合と同様の方法で製造した(すべての量は、容量に対する重量の百分率で示される)。
【0135】
【表2】

【0136】
製品1は、チョコレート風味のカプチーノ飲料(35%のミルクを含む)であって、飲料のpHを(たとえば、加熱処理の後で)6より大きい値に調整し維持するために必要な量のアンモニウム塩を含有している。製品1はさらに、カリウム塩を含有している。製品1のpHは、製造時には6.90であったが、加熱処理(即ち、レトルト滅菌)の後には6.40になった。
【0137】
製品2は、チョコレート風味のカプチーノ飲料(35%のミルクを含む)であって、アンモニウム塩は含有していないが、飲料のpHを(たとえば、加熱処理の後で)6より大きい値に調整し維持するために必要な量の重炭酸ナトリウムを含有している。
【0138】
製品3は、チョコレート風味のカプチーノ飲料(75%のミルクを含む)であって、飲料のpHを(たとえば、加熱処理の後で)6より大きい値に調整し維持するために必要な量のアンモニウム塩を含有している。製品3のpHは、製造時には6.90であったが、加熱処理(即ち、レトルト滅菌)の後には6.55になった。
【0139】
製品4は、チョコレート風味のカプチーノ飲料(75%のミルクを含む)であって、アンモニウム塩は含有していないが、飲料のpHを(たとえば、加熱処理の後で)6より大きい値に調整し維持するために必要な量の重炭酸ナトリウムを含有している。
【0140】
飲料の官能検査
製品1〜4を味/粘性検査に付した。
【0141】
(a)製品1と製品2との官能比較
製品1は、新鮮でまろやかなミルクコーヒー風味及び強いコーヒーアロマを有していた。コーヒーとココアとの相乗効果は、快いチョコレート味及びそれに重なるコーヒー風味を有することにより認められた。製品2は、より軽く知覚され得るコーヒーアロマ並びに製品1において示されたチョコレート及びコーヒーの知覚を圧倒する鋭い金属的な後味を有していた。
【0142】
(b)製品3と製品4との官能比較
製品3は、新鮮でミルク風のコーヒーアロマを有していた。この味は、チョコレートとコーヒーとの相乗効果を明らかに示すものであった。製品4は、非常に軽いコーヒーアロマと非常に金属的で塩辛い後味とを有していた。
【0143】
(c)製品1又は製品3と重炭酸カリウムを含有する飲料との官能比較
製品1を、製品1と同量のコーヒー固形分、ココア固形分、ミルク及び砂糖を含有し且つ重炭酸カリウムをpH調整剤として含有している飲料と比較した。製品3を、製品3と同量のコーヒー固形分、ココア固形分、ミルク及び砂糖を含有し且つ重炭酸カリウムをpH調整剤として含有している飲料と比較した。製品1も製品3も、官能的観点からは、それぞれ対応する飲料と非常に類似した特徴を有していた。
【実施例3】
【0144】
重炭酸カリウム(サンプル01の場合)又は重炭酸アンモニウム(サンプル02の場合)を含有するコーヒー飲料の、レトルト滅菌による加熱処理の後のGC−MS分析
GC−MS(ガスクロマトグラフィー−質量分光)分析を、2つの飲料について行った。これら2つの飲料は同量のコーヒー固形分、ココア固形分、ミルク及び砂糖を含有しており、さらに、一方の飲料は重炭酸カリウム(サンプル01の場合)をpH調整剤として含有しており、他方の飲料は重炭酸アンモニウム(サンプル02の場合)をpH調整剤として含有していた。
【0145】
2つの飲料は、レトルト滅菌による加熱処理の後に、ヘッドスペースSPME(固相ミクロ抽出)を用いてGC−MSによって分析した。これにより、液体又は固体のサンプルのヘッドスペースに存在する揮発性化合物及び半揮発性化合物のプロファイルが得られる。具体的には、5mlのサンプルを20mlのヘッドスペースバイアルに挿入して65℃に加熱し、その後揮発性化合物をSPMEファイバーに15分間吸着させ、その後ファイバーを質量分析検出(Agilent 7890 GC - 5975C MS)を用いてガスクロマトグラフに脱着させた。
【0146】
2つのサンプルのGC−MSプロファイルは非常に類似しており、2つのサンプルのGC−MSのピークの高さ/面積においては有意の相違は見られなかった(図1において、サンプル01は上側のパネル、サンプル02は下側のパネル)。したがって、2つの飲料は、実質的に同量の揮発性化合物及び半揮発性化合物を含有していた。
【0147】
GC−MSプロファイル(図1を参照)で同定された生成物の大部分は、飲料のミルク成分の加熱によってもたらされた劣化生成物であった。これらのフレーバー化合物(たとえば、フルフリルアルコール、ピラジン、ピリジン並びにC3−、C5−、C7−、C9−及びC11−2−ケトン)は、サンプル01及びサンプル02の両方において同量存在していた(図2及び図3を参照)。
【0148】
したがって、重炭酸アンモニウムをpH調整剤として含有する飲料においては、新たな化合物は形成されなかった。このことは、重炭酸アンモニウムの存在は飲料の味、テクスチャー又はアロマに悪い影響を及ぼし得る化合物を生成しないということを示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料であって、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を含有することを特徴とする飲料。
【請求項2】
飲料であって、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに該飲料のpHを所定の値に調整することができる一定量のアンモニウム塩を含有することを特徴とする飲料。
【請求項3】
該飲料のpHを所定の値に維持することが、該飲料の酸性化を防止し及び/又は抑制することによってなされることを特徴とする、請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
該飲料が加熱処理に付されるときに該飲料のpHが所定の値に維持されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の飲料。
【請求項5】
該加熱処理が、F0値を3〜80の範囲の値、たとえば3、5、10、20、30、40、50、60、70又は80という値にするために行う加熱滅菌であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の飲料。
【請求項6】
該加熱処理がレトルト滅菌又は低温殺菌であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の飲料。
【請求項7】
該加熱処理が、125℃での25分間の加熱、121℃での20分間の加熱、71.7℃での15秒間の加熱、72℃での15秒間の加熱、72℃での30秒間の加熱、138℃での1秒の数分の1の時間の加熱、並びに63℃での30分間の加熱及びその後の4℃への急速冷却からなる群より選ばれる加熱処理であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の飲料。
【請求項8】
該加熱処理が、加熱状態での長時間の貯蔵であることを特徴とする、請求項4に記載の飲料。
【請求項9】
加熱状態での長時間の貯蔵が、
30℃での1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間若しくは24時間の貯蔵、
40℃での1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間若しくは24時間の貯蔵、
50℃での1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間若しくは24時間の貯蔵、又は
60℃での1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間若しくは24時間の貯蔵
であることを特徴とする、請求項8に記載の飲料。
【請求項10】
該植物抽出物が、コーヒー抽出物、ココア抽出物、茶抽出物、穀草抽出物、野菜抽出物、果実抽出物及び薬用植物抽出物からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の飲料。
【請求項11】
該乳製品が、全乳、半スキムミルク、スキムミルク、粉ミルク、長期保存可能ミルク、全脂肪クリーム、半脂肪クリーム、サワークリーム、濃縮クリーム及びヨーグルトからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の飲料。
【請求項12】
コーヒー飲料であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の飲料。
【請求項13】
該コーヒー飲料がブラックコーヒー、ミルクコーヒー、ホワイトコーヒー及びアイスコーヒーからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の飲料。
【請求項14】
所定のpHの値が、6以上、6.40以上、6.50以上、6.60以上、6.80以上、6.90以上、7以上、6〜8、6〜7、6.65〜6.80又は6.40〜6.90であることを特徴とする、請求項13に記載の飲料。
【請求項15】
該アンモニウム塩が、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アルギン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の飲料。
【請求項16】
下記の成分:
抽出物であるコーヒー固形分 1%w/v、
抽出物であるココア固形分 0.2%w/v、
ミルク 35%w/v、
重炭酸アンモニウム 0.095%w/v、
クエン酸カリウム 0.1%w/v、
リン酸カリウム 0.095%w/v、
砂糖 4.8%w/v、及び
水 合計を100容量%とする量
を含有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の飲料。
【請求項17】
下記の成分:
抽出物であるコーヒー固形分 1%w/v、
抽出物であるココア固形分 0.2%w/v、
ミルク 75%w/v、
重炭酸アンモニウム 0.3%w/v、
砂糖 3%w/v、及び
水 合計を100容量%とする量
を含有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の飲料。
【請求項18】
植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に維持するための方法であって、該飲料のpHを所定の値に維持することができる一定量のアンモニウム塩を該飲料に添加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを調整するための方法であって、該飲料のpHを所定の値に調整することができる一定量のアンモニウム塩を該飲料に添加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
該飲料のpHを所定の値に維持することを、該飲料の酸性化を防止し及び/又は抑制することによって行うことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
該飲料を加熱処理に付すときに該飲料のpHを所定の値に維持することを特徴とする、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
該加熱処理が、F0値を3〜80の範囲の値、たとえば3、5、10、20、30、40、50、60、70又は80という値にするために行う加熱滅菌であることを特徴とする、請求項18〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
該加熱処理がレトルト滅菌又は低温殺菌であることを特徴とする、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
該加熱処理が、125℃での25分間の加熱、121℃での20分間の加熱、71.7℃での15秒間の加熱、72℃での15秒間の加熱、72℃での30秒間の加熱、138℃での1秒の数分の1の時間の加熱、並びに63℃での30分間の加熱及びその後の4℃への急速冷却からなる群より選ばれる加熱処理であることを特徴とする、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
一定量のアンモニウム塩を該飲料に添加する工程を、飲料の加熱処理の前に行うことを特徴とする、請求項18〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
一定量のアンモニウム塩を該飲料に添加する工程を、飲料の加熱処理中に行うことを特徴とする、請求項18〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
一定量のアンモニウム塩を該飲料に添加する工程を、飲料の加熱処理の後に行うことを特徴とする、請求項18〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
該飲料が請求項1〜17のいずれかに記載の飲料であることを特徴とする、請求項18〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
アンモニウム塩の、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に維持するための使用。
【請求項30】
アンモニウム塩の、植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に調整するための使用。
【請求項31】
該飲料が請求項1〜16のいずれかに記載の飲料であることを特徴とする、請求項29又は30に記載の使用。
【請求項32】
請求項18〜28のいずれかに記載の方法によって得られる飲料。
【請求項33】
請求項18〜28のいずれかに記載の方法によって得られる滅菌飲料。
【請求項34】
請求項33に記載の飲料を含む滅菌容器。
【請求項35】
植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種並びにアンモニウム塩を含有する、上記飲料と実質的に同一の飲料。
【請求項36】
植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に維持するための、アンモニウム塩の、上記使用と実質的に同一の使用。
【請求項37】
植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを所定の値に調整するための、アンモニウム塩の、上記使用と実質的に同一の使用。
【請求項38】
植物抽出物及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する飲料のpHを安定化するための、上記方法と実質的に同一の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−523846(P2012−523846A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507259(P2012−507259)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/031013
【国際公開番号】WO2010/123727
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511252947)ザ コカ−コーラ カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】THE COCA−COLA COMPANY
【Fターム(参考)】