説明

飲用茶ゼリー

【課題】甘味料を使用しないで茶成分による苦味が抑制され、味が良好であり、好適なゲル硬さを有する飲用茶ゼリーを提供すること。
【解決手段】ポリγ−グルタミン酸と難消化性デキストリンとが配合されていることを特徴とする飲用茶ゼリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲用茶ゼリーに関する。さらに詳しくは、例えば、嚥下に支障がある高齢者などが飲用するのに好適な飲用茶ゼリーに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料の嚥下に支障がある高齢者などが容易に飲用することができるゼリー状の飲料として、茶粉、茶抽出液、ゲル化剤および水が混合されたゼリー飲料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、このゼリー飲料は、ただ単に、茶粉、茶抽出液、ゲル化剤および水を混合したものであるため、茶ポリフェノールによる苦味が口内に拡散するという欠点がある。
【0004】
そこで、苦味が抑制されたゼリー状食品として、茶ポリフェノール、ゲル化剤および甘味成分を含有するゼリー状食品が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、このゼリー状食品には、苦味を緩和するための必須成分として、甘味成分が用いられているため、糖尿病を患っている者やカロリー制限を受けている者などにこのゼリー状食品を適用することが適切でないことがある。
【0006】
【特許文献1】特開2001−299297号公報
【特許文献2】特開2006−115783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、甘味料を使用しないで茶成分による苦味が抑制され、味が良好であり、好適なゲル硬さを有する飲用茶ゼリーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリγ−グルタミン酸と難消化性デキストリンとが配合されていることを特徴とする飲用茶ゼリーに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の飲用茶ゼリーは、甘味料を使用しないで茶成分による苦味が抑制され、味が良好であり、好適なゲル硬さを有するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の飲用茶ゼリーは、ポリγ−グルタミン酸と難消化性デキストリンとが配合されていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、このようにポリγ−グルタミン酸と難消化性デキストリンとが併用されている点に、1つの大きな特徴がある。本発明では、ポリγ−グルタミン酸と難消化性デキストリンとが併用されているので、両者併用による相乗効果により、茶成分による苦味が顕著に低減される。
【0012】
ポリγ−グルタミン酸は、グルタミン酸のγ−位のカルボキシル基(−COOH)とα−位のアミノ基(−NH2)とがアミド結合した構造を有するアニオン性のアミノ酸高分子化合物であり、酸味や苦味を低減させる成分である。ポリγ−グルタミン酸は、老化に関与する酵素「ヒアルロニダーゼ」に対して、高い阻害能を有すると考えられている。
【0013】
ポリγ−グルタミン酸は、常温で水に容易に溶解する。ポリγ−グルタミン酸の数平均分子量は、苦味を抑制する観点から、好ましくは100万以上、より好ましくは150万以上であり、高粘度化することを回避する観点から、好ましくは350万以下、より好ましくは300万以下である。
【0014】
ポリγ−グルタミン酸の量は、水100質量部あたり、渋みを抑制する観点から、好ましくは0.003質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、ポリγ−グルタミン酸の溶解性を高める観点から、好ましくは0.025質量部以下、より好ましくは0.015質量部以下である。
【0015】
難消化性デキストリンは、茶成分による苦味やポリγ−グルタミン酸の酸味を低減させる成分である。難消化性デキストリンは、トウモロコシデンプンに微量の塩酸を加えて加熱し、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼで処理することによって得られた食物繊維画分を分取することにより、得ることができる。難消化性デキストリンは、整腸作用および食後に血糖値が上昇するのを抑制する作用を有すると考えられている。
【0016】
難消化性デキストリンの量は、水100質量部あたり、苦味を抑制し、食感を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、便通を考慮して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0017】
本発明の飲用茶ゼリーの代表例としては、ポリγ−グルタミン酸および難消化性デキストリン以外にも、寒天、ゲル化剤、茶成分および水が配合されている飲用茶ゼリーが挙げられる。
【0018】
寒天は、食感を向上させる成分である。寒天は、通常、水と混合し、加熱することによって溶解させた状態で用いることが好ましい。
【0019】
寒天の量(乾燥状態における量)は、水100質量部あたり、食感を向上させる観点から、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上であり、口蓋で分散するのを抑制する観点から、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.025質量部以下である。
【0020】
ゲル化剤は、ゼリー強度を調整するための成分である。ゲル化剤としては、例えば、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、タラガム、トラガントガム、カードラン、ナタデココ、ペクチン、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのゲル化剤のなかでは、ローカストビーンガムおよびカラギーナンは、室温で固まるとともに弾力性を有することから好ましく、ゲル強度を向上させる観点から、ローカストビーンガムとカラギーナンとを併用することがより好ましい。ローカストビーンガムとカラギーナンとを併用したものは、例えば、新田ゼラチン(株)製、商品名:EGクールアガーなどとして、商業的に容易に入手することができる。
【0021】
ゲル化剤の量は、水100質量部あたり、ゲル化を十分に行なう観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.15質量部以上であり、本発明の飲用茶ゼリーが硬くなりすぎないようにする観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下である。
【0022】
難消化性デキストリンは、茶成分による苦味やポリγ−グルタミン酸の酸味を低減させる成分である。難消化性デキストリンは、トウモロコシデンプンに微量の塩酸を加えて加熱し、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼで処理することによって得られた食物繊維画分を分取することにより、得ることができる。難消化性デキストリンは、整腸作用および食後に血糖値が上昇するのを抑制する作用を有すると考えられている。
【0023】
茶成分は、本発明の飲用茶ゼリーに茶の風味を与える成分である。茶成分に用いられる茶としては、例えば、緑茶、紅茶、ほうじ茶、麦茶、ウーロン茶などの通常飲用されている茶が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの茶成分のなかでは、緑茶が好ましい。茶成分としては、例えば、茶抽出液、茶粉、茶粉の分散液などが挙げられるが、これらのなかでは、茶抽出液が好ましく、緑茶の抽出液がより好ましい。
【0024】
茶粉の分散液および茶抽出液に用いられる溶媒の代表例としては、水が挙げられる。茶粉を用いる場合、茶粉は、水などの溶媒と混合し、分散液として用いることが好ましい。茶粉の分散液および茶抽出液における茶の濃度は、特にされず、本発明の飲用茶ゼリーの目的や用途などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0025】
なお、本発明の飲用茶ゼリーには、茶の風味をより一層高める観点から、茶成分として、抹茶を配合することが好ましい。
【0026】
茶成分の量は、茶の種類、茶粉、茶抽出液などの形態によって異なるので一概には決定することができない。茶成分の量は、茶成分に含まれているカテキンの量によって決定することができる。カテキンの量は、水100質量部あたり、飲用茶ゼリーに茶の風味を与える観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、本発明の飲用茶ゼリーの苦味を抑制する観点から、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。
【0027】
本発明の飲用茶ゼリーには、食感を向上させる観点から、さらにゼラチンを配合することが好ましい。
【0028】
ゼラチンのゼリー強度は、食感を向上させる観点から、好ましくは100N/m2以上、より好ましくは150N/m2以上、さらに好ましくは175N/m2以上であり、嚥下に支障がある高齢者などが容易に飲用することができるようにする観点から、好ましくは500N/m2以下、より好ましくは400N/m2以下、さらに好ましくは350N/m2以下である。
【0029】
なお、ゼリー強度は、JIS K6503に規定の方法によって測定したときの値である。さらに詳しくは、ゼリー強度は、6.67%ゼラチン水溶液を10℃で17時間冷却したゼラチンの表面に直径が2分の1インチ(約12.7mm)のプランジャーを4mmだけ押し下げるのに要する荷重である。
【0030】
ゼラチンの量は、水100質量部あたり、食感を向上させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、べたつきやタンパク臭を抑制する観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0031】
また、本発明の飲用茶ゼリーには、飲用茶ゼリーの食感を向上させる観点から、水溶性植物繊維を配合することが好ましい。水溶性植物繊維としては、例えば、グルコマンナンなどが挙げられる。
【0032】
水溶性植物繊維の量は、水100質量部あたり、食感を向上させる観点から、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、本発明の飲用茶ゼリーが硬くなりすぎないようにする観点から、好ましくは0.015質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下である。
【0033】
また、本発明の飲用茶ゼリーには、緑茶の旨みを向上させる観点から、テアニンを配合してもよい。テアニンは、例えば、太陽化学(株)製、商品名:サンテアニンなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0034】
テアニンの量は、水100質量部あたり、緑茶に近い旨みを付与する観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上であり、異味が生じないようにする観点から、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.05質量部以下である。
【0035】
また、本発明の飲用茶ゼリーには、変色を防止する観点から、L−アスコルビン酸(ビタミンC)を配合してもよい。
【0036】
L−アスコルビン酸(ビタミンC)の量は、水100質量部あたり、本発明の飲用茶ゼリーの変色を十分に抑制する観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは
0.2質量部以上であり、異味が生じないようにする観点から、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下である。
【0037】
本発明の飲用茶ゼリーには、必要に応じて、本発明の目的が阻害されない範囲内で、pH調整剤、果汁、野菜汁、香料、甘味料、食品用エキス、ミネラル成分、酸味料、栄養強化剤、保存料などを適量で添加することができる。
【0038】
pH調整剤は、飲用に適し、人体に悪影響を与えないものであればよい。その代表例としては、アルギニン、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0039】
pH調整剤の量は、ポリγ−グルタミン酸を十分に溶解させる観点から、本発明の飲用茶ゼリーのpHが好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上となるように調整することが望ましく、茶成分の褐変を防止する観点から、本発明の飲用茶ゼリーのpHが好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下となるように調整することが望ましい。
【0040】
本発明の飲用茶ゼリーは、寒天、ゲル化剤、ポリγ−グルタミン酸、難消化性デキストリン、茶成分、水および必要により配合される他の成分を配合することによって得られる。水は、本発明の飲用茶ゼリーを飲用することから、精製水であることが好ましい。水の量は、各成分が所望の量で配合されるように調整される。
【0041】
本発明の飲用茶ゼリーのゲル硬さは、厚生労働省による「高齢者用特別用途食品基準」に規定の「高齢者用食品群別許可基準」における「そしゃく・えん下困難者用食品」に該当するようにするために、1×104N/m2以下であることが好ましいが、食感を向上させる観点から、2.5×103N/m2以下であることがより好ましい。また、本発明の飲用茶ゼリーのゲル硬さの下限値は、本発明の飲用茶ゼリーを口に含んだときに容易に崩れることを防止する観点から、好ましくは1×102N/m2以上、より好ましくは3×102N/m2以上である。ゲル硬さに影響を与える因子として、ゲル化剤の種類、飲用茶ゼリーにおける各成分の使用量などが挙げられるが、これらを適宜調整することにより、飲用茶ゼリーが所望のゲル硬さを有するように調整することができる。
【0042】
なお、飲用茶ゼリーのゲル硬さは、厚生労働省(旧厚生省)「高齢者用食品の表示許可の取り扱いについて」(平成6年衛新第15号)別紙「高齢者用食品の試験方法2 硬さ(1)」に基づいて測定したときの値を示す。
【0043】
本発明の飲用茶ゼリーの付着性は、嚥下反射性を高める観点から、好ましくは10J/m3以上、より好ましくは12J/m3以上であり、口蓋に付着しがたくする観点から、好ましくは40J/m3以下、より好ましくは35J/m3以下である。なお、飲用茶ゼリーの付着性は、以下の実施例における方法に基づいて測定したときの値である。
【0044】
また、本発明の飲用茶ゼリーの凝集性は、口蓋で分散するのを抑制する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上であり、ゼリーの硬さの観点から、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下である。なお、飲用茶ゼリーの凝集性は、以下の実施例における方法に基づいて測定したときの値である。
【0045】
本発明の飲用茶ゼリーは、例えば、以下のようにして調製することができる。
まず、水を含有する茶成分に必要によりL−アスコルビン酸を分散させて加熱する。このとき、加熱温度は90〜100℃で、加熱時間は約5分間以内の短時間であることが好ましい。なお、短時間での加熱が好ましいのは、茶成分の褐変を防止するためである。このような短時間での加熱には、マイクロ波などによる加熱が好ましい。マイクロ波による加熱手段としては、例えば、電子レンジなどが挙げられる。
【0046】
次に、水を含有する茶成分に必要によりL−アスコルビン酸を分散させることによって得られた分散液の温度を90℃以上に調整し、この分散液に寒天、ゲル化剤および必要により水溶性植物繊維を添加し、混合することにより、混合物Aを調製する。
【0047】
得られた混合物Aを室温まで冷却し、混合物Aと、ポリγ−グルタミン酸、難消化性デキストリンおよび必要によりゼラチン、テアニン、pH調整剤などのその他の成分とを均一な組成となるように混合することにより、混合物Bを調製する。
【0048】
なお、混合物Aと、ポリγ−グルタミン酸、難消化性デキストリンおよび必要によりゼラチン、テアニン、pH調整剤などのその他の成分とを混合するときの温度は、各成分を均一に溶解させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、本発明の飲用茶ゼリーを固化させる観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。
【0049】
次に、ポリγ−グルタミン酸の変性を防止する観点から、混合物Bを40℃以下の温度に冷却することにより、飲用茶ゼリーが得られる。この冷却は、例えば、水冷によって行なうことができる。混合物Aと、ポリγ−グルタミン酸、難消化性デキストリンおよび必要によりゼラチン、テアニン、pH調整剤などのその他の成分とを混合した後、40℃以下の温度にまで冷却するまでの時間は、茶成分の褐変を防止する観点から、5分間以内であることが好ましい。
【0050】
以上の操作は、茶成分の褐変を防止するために、できるだけ短時間で行なうことが好ましい。
【0051】
本発明の飲用茶ゼリーは、空気中の酸素による酸化を防止するために、例えば、ガスバリア性を有するアルミニウムパック容器、樹脂製密閉容器などの容器に入れ、開口部を密閉し、空気との接触を遮断しておくことが好ましい。また、空気中の酸素による飲用茶ゼリーの酸化を防止する観点から、容器内の雰囲気を窒素ガスなどの不活性ガスと置換しておいてもよい。
【0052】
以上説明したように、本発明の飲用茶ゼリーは、甘味料を使用しないで茶成分による苦味が抑制され、味が良好であり、好適なゲル硬さを有するので、例えば、嚥下に支障がある高齢者などの飲用に好適に使用することができる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
水200mLに緑茶葉(宇治田原茶)5gを入れ、約40分間抽出し、得られた抽出液(カテキンの含有量:0.2g)にカテキン原末〔太陽化学(株)製、商品名:サンフェノン〕0.35gおよびL−アスコルビン酸〔武田薬品工業(株)製、商品名:ハイシー顆粒25%〕0.50gを入れ、攪拌し、電子レンジ(出力:600W)で3分間加熱し、約100℃の温度で、ローカストビーンガムおよびカラギーナンを主成分とするゲル化剤〔新田ゼラチン(株)製、商品名:EGクールアガー〕3g、寒天〔伊那食品工業(株)製、商品名:かんてんクック〕0.03gおよび水溶性植物繊維としてグルコマンナン0.01gを添加した。
【0055】
次に、得られた混合物を水冷しながら十分に攪拌し、40℃以下の温度となった時点で難消化性デキストリン〔(株)松谷化学工業製、商品名:パインファイバー〕5gおよびポリγ−グルタミン酸〔(株)ジェノラックBL製、商品名:バイオチャージKP、数平均分子量:200万〜250万〕0.02gを入れ、アルギニンでpHを約5に調整した後、冷蔵庫(庫内温度:約5℃)で3時間以上冷却することにより、飲用茶ゼリーを得た。
【0056】
比較例1
実施例1において、ポリγ−グルタミン酸を使用しなかったことを除き、実施例1と同様にして、飲用茶ゼリーを得た。
【0057】
比較例2
実施例1において、ポリγ−グルタミン酸を使用せずに、難消化性デキストリンの代わりにポリデキストロース5gを使用したことを除き、実施例1と同様にして、飲用茶ゼリーを得た。
【0058】
比較例3
実施例1において、ポリγ−グルタミン酸を使用せずに、難消化性デキストリンの代わりにシクロデキストリン5gを使用したことを除き、実施例1と同様にして、飲用茶ゼリーを得た。
【0059】
比較例4
実施例1において、難消化性デキストリンを使用しなかったことを除き、実施例1と同様にして、飲用茶ゼリーを得た。
【0060】
比較例5
実施例1において、難消化性デキストリンの量を2.5gに変更し、ポリγ−グルタミン酸の代わりにポリデキストロース2.5gを使用したことを除き、実施例1と同様にして、飲用茶ゼリーを得た。
【0061】
比較例6
実施例1において、難消化性デキストリンの代わりにポリデキストロース5gを使用したことを除き、実施例1と同様にして、飲用茶ゼリーを得た。
【0062】
比較例7
実施例1において、難消化性デキストリンの代わりにシクロデキストリン5gを使用したことを除き、実施例1と同様にして、飲用茶ゼリーを得た。
【0063】
対照用飲用茶ゼリーA
実施例1において、ポリγ−グルタミン酸および難消化性デキストリンを使用しなかったことを除き、実施例1と同様にして対照用飲用茶ゼリーAを得た。
【0064】
〔飲用茶ゼリーの官能試験〕
年齢が18〜45歳の37名の健常人(男性14名および女性23名)をパネラーとして採用した。各パネラーに、対照用飲用茶ゼリーAを小さじのスプーンで2回摂取してもらい、水で口を濯いだ後、実施例1または各比較例で得られた飲用茶ゼリーを食してもらい、苦味、苦味の好み、味、お茶らしさ、およびゼリーの硬さの好みを以下の方法にしたがって評価してもらった。その結果を表1に示す。
【0065】
(1)苦味
対照用飲用茶ゼリーAを基準とし、その基準の評価得点を0点として、対照用飲用茶ゼリーAと対比して苦味が強い場合を最大10点、対照用飲用茶ゼリーAと対比して苦味が弱い場合を最小−10点として、各パネラーに評価してもらい、パネラー全員の平均値を求めた。
【0066】
(2)苦味の好み
対照用飲用茶ゼリーAを基準とし、その基準の評価得点を0点として、対照用飲用茶ゼリーAと対比して苦味が好まれる場合を最大10点、対照用飲用茶ゼリーAと対比して苦味が好まれない場合を最小−10点として、各パネラーに評価してもらい、パネラー全員の平均値を求めた。
【0067】
(3)味
対照用飲用茶ゼリーAを基準とし、その基準の評価得点を0点として、対照用飲用茶ゼリーAと対比して味が良好である場合を最大10点、対照用飲用茶ゼリーAと対比して味が良好でない場合を最小−10点として、各パネラーに評価してもらい、パネラー全員の平均値を求めた。
【0068】
(4)お茶らしさ
対照用飲用茶ゼリーAを基準とし、その基準の評価得点を0点として、対照用飲用茶ゼリーAと対比して茶の香りが良好である場合を最大10点、対照用飲用茶ゼリーAと対比して茶の香りが良好でない場合を最小−10点として、各パネラーに評価してもらい、パネラー全員の平均値を求めた。
【0069】
(5)ゼリーの硬さの好み
対照用飲用茶ゼリーAを基準とし、その基準の評価得点を0点として、対照用飲用茶ゼリーAと対比してゼリーの硬さが好まれる場合を最大10点、対照用飲用茶ゼリーAと対比してゼリーの硬さが好まれない場合を最小−10点として、各パネラーに評価してもらい、パネラー全員の平均値を求めた。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示された結果から、以下のことがわかる。
「苦味」については、実施例1は、各比較例と対比して、苦味を顕著に低減しているという評価を受けていることがわかる。「苦味の好み」については、実施例1は、各比較例と対比して、もっとも飲用者にその苦味が好まれていることがわかる。「味」については、実施例1は、各比較例と対比して、その評価がもっとも高く、飲用者に優れた味を有するものとして評価されていることがわかる。「お茶らしさ」については、実施例1は、各比較例と対比して、もっとも飲用者にとってお茶らしいという評価を受けていることがわかる。「ゼリーの硬さの好み」については、実施例1は、各比較例と対比して、その評価がもっとも高く、飲用者にもっとも優れたゼリーの硬さを有するものとして評価されていることがわかる。
【0072】
これらのことから、実施例1で得られた飲用茶ゼリーは、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とが併用されているので、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用する代わりに、難消化性デキストリンを単独で使用した場合(比較例1)、ポリγ−グルタミン酸を使用せずにポリデキストロースのみを用いた場合(比較例2)、ポリγ−グルタミン酸を使用せずにシクロデキストリンのみを用いた場合(比較例3)、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用する代わりに、ポリγ−グルタミン酸を単独で使用した場合(比較例4)、難消化性デキストリンとポリデキストロースとを併用した場合(比較例5)、ポリデキストロースとポリγ−グルタミン酸とを併用した場合(比較例6)およびシクロデキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用した場合(比較例7)と対比して、「苦味」、「苦味の好み」、「味」、「お茶らしさ」および「ゼリーの硬さの好み」のいずれについても、優れていることがわかる。
【0073】
さらに詳しくは、実施例1に示された結果から、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用することにより、有意に苦味を低減させ、苦味の好みが有意に改善され、しかもお茶らしさ、味およびゼリーの食感も改善されることがわかる。また、難消化性デキストリンの単独使用でも苦味を低下させることができるが(比較例1)、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用することにより(実施例1)、苦味の低減効果を増強させることができ、他の組み合わせでは(比較例4〜7)、そのような効果が認められないことがわかる。また、ポリγ−グルタミン酸の単独使用では、お茶らしい風味が比較的よいが(比較例4)、苦味を低減させることができないのに対し、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用した場合には(実施例1)、苦味が低減し、苦味の好み、お茶らしさ、味およびゼリーの食感が改善されることがわかる。
【0074】
また、難消化性デキストリンの単独使用では(比較例1)、苦味の評価が「−0.41」で、苦味の好みの評価が「0.30」で、「味」の評価が「1.64」で、「お茶らしさ」の評価が「0.70」であり、ポリγ−グルタミン酸の単独使用では(比較例4)、苦味の評価が「0.16」で、苦味の好みの評価が「−1.08」で、「味」の評価が「−0.19」で、「お茶らしさ」の評価が「0.70」である。したがって、これらの比較例から難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用したときに期待される効果は、各評価の和より、苦味の評価が「−0.25」で、苦味の好みの評価が「−0.78」で、「味」の評価が「1.45」で、「お茶らしさ」の評価が「1.40」である。
【0075】
これに対して、実施例1の結果より、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを実際に併用した場合には、苦味の評価が「−2.00」であり、苦味の好みの評価が「2.41」で、「味」の評価が「2.22」で、「お茶らしさ」の評価が「2.05」であることから、比較例1および比較例4から難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用することによって期待される効果以上の効果、すなわち、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸との併用による相乗効果が発現されることがわかる。
【0076】
したがって、実施例1では、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とが併用されているので、有意に苦味を低減させ、苦味の好みが有意に改善さることがわかる。
【0077】
実施例2および比較例8〜14
実施例1および比較例1〜7において、水200mLに緑茶葉(宇治田原茶)5gを入れ、約40分間抽出することによって得られた抽出液(カテキンの推定含有量:0.1g)の代わりに、水200mLにほうじ葉〔(株)放香堂〕5gを入れ、約40分間抽出することによって得られた抽出液(カテキンの推定含有量:0.32g)を用いたことを除き、実施例1および比較例1〜7と同様にして、飲用茶ゼリーを調製した。
【0078】
なお、実施例2および比較例8〜14は、それぞれ順に、実施例1および比較例1〜7に対応している。
【0079】
対照用飲用茶ゼリーB
実施例2において、ポリγ−グルタミン酸および難消化性デキストリンを使用しなかったことを除き、実施例2と同様にして、対照用飲用茶ゼリーBを得た。
【0080】
次に、実施例2および比較例8〜14で得られた飲用茶ゼリーを用い、対照用飲用茶ゼリーAの代わりに対照用飲用茶ゼリーBを用いたことを除き、前記と同様にして、飲用茶ゼリーの官能試験として、対照用飲用茶ゼリーBを基準として苦味および苦味の好みを調べた。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示された結果から、以下のことがわかる。
「苦味」については、実施例2は、各比較例と対比して、苦味を顕著に低減しているという評価を受けていることがわかる。「苦味の好み」については、実施例2は、各比較例と対比して、もっとも飲用者にその苦味が好まれていることがわかる。
【0083】
したがって、実施例2で得られた飲用茶ゼリーは、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用する代わりに、難消化性デキストリンを単独で使用した場合(比較例8)、ポリγ−グルタミン酸を使用せずにポリデキストロースのみを用いた場合(比較例9)、ポリγ−グルタミン酸を使用せずにシクロデキストリンのみを用いた場合(比較例10)、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用する代わりに、ポリγ−グルタミン酸を単独で使用した場合(比較例11)、難消化性デキストリンとポリデキストロースとを併用した場合(比較例12)、ポリデキストロースとポリγ−グルタミン酸とを併用した場合(比較例13)およびシクロデキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用した場合(比較例14)と対比して、「苦味」および「苦味の好み」のいずれについても、優れていることがわかる。
【0084】
また、難消化性デキストリンの単独使用では(比較例8)、苦味の評価が「−0.73」で、苦味の好みの評価が「0.24」であり、ポリγ−グルタミン酸の単独使用では(比較例11)、苦味の評価が「1.22」で、苦味の好みの評価が「−1.43」であることから、これらの比較例から難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用したときに期待される効果は、各評価の和より、苦味の評価が「0.49」で、苦味の好みの評価が「−1.19」である。
【0085】
これに対して、実施例2の結果より、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを実際に併用した場合には、苦味の評価が「−2.22」であり、苦味の好みの評価が「0.51」であることから、比較例8および比較例11から難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とを併用することによって期待される効果以上の効果、すなわち、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸との併用による相乗効果が発現されることがわかる。
【0086】
したがって、実施例2では、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とが併用されているので、有意に苦味を低減させ、苦味の好みが有意に改善されることがわかる。
【0087】
実施例3〜5
ヘルシア(登録商標)緑茶〔花王(株)製、カテキンの含有量:540mg/350mL〕200mLおよび抹茶粉0.01gを500mL容のビーカー内に入れ、室温で混合した後(カテキンの含有量:0.308g)、電子レンジで3分間加熱した。得られた混合物の温度は、90〜100℃の範囲内にあった。
【0088】
得られた混合物の温度を90℃以上となるように調整しながら、このビーカー内に、寒天0.03gおよびローカストビーンガムおよびカラギーナンを主成分とするゲル化剤〔新田ゼラチン(株)製、商品名:EGクールアガー〕を表3に示す使用量で添加し、スターラーで攪拌した。
【0089】
次に、この混合物の温度を75〜80℃に調整しながら、ゼリーとしてゼラチン〔新田ゼラチン(株)製、商品名:ゼラチン21、ゼリー強度:275〜300N/m2〕0.25gおよび難消化性デキストリン〔(株)三和化学研究所製、商品名:パインファイバー〕2.5gを前記ビーカー内に添加し、スターラーで攪拌しながら、水で冷却し、ビーカー内の混合物の温度を40℃以下に低下させた後、この混合物に、テアニン〔太陽化学(株)製、商品名:サンテアニン〕0.05gおよびポリγ−グルタミン酸(数平均分子量:200万〜250万)0.01gを添加し、アルギニンでpHを6に調整することにより、飲用茶ゼリーを得た。
【0090】
得られた飲用茶ゼリーは、空気との接触を遮断するために、ポリエチレン製密閉容器内に入れた。
【0091】
得られた飲用茶ゼリーの物性として、ゲル硬さ、粘度、付着性および凝集性を以下の方法に基づいて測定した。その結果を表3に示す。
【0092】
(1)ゲル硬さ、付着性および凝集性
厚生労働省(旧厚生省)が示した「高齢者用食品の表示許可の取り扱いについて(平成6年衛新第15号)」の別紙「高齢者用食品の試験方法2」にしたがって測定した。より具体的には、飲用茶ゼリーを直径40mmの容器内に入れ、その高さが15mmとなるまで充填し、直線運動により物質の圧縮応力を測定することができる装置〔(株)山電製、クリープメータ、品番:RE33005S〕により、直径20mmのプランジャーを用いて圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mm、20±2℃の条件で測定に供した。
【0093】
1検体につき3個体について調べ、それぞれ1個体につき4つの測定試料を調製し、測定に供した。得られたテクスチャー記録曲線より、ゲル硬さ、付着性および凝集性を算出した。
【0094】
(2)粘度
B型粘度計(BM型)を用い、20℃の温度で、ローターNo.1、回転速度12r/minの条件で飲用茶ゼリーの粘度を測定した。
【0095】
【表3】

【0096】
表3に示された結果から、各実施例で得られた飲用茶ゼリーは、いずれも、ゲル硬さが100〜25000N/m2の範囲内にあり、付着性が10〜40J/m3の範囲内にあり、凝集性が0.1〜0.8の範囲内にあることから、嚥下に支障がある高齢者などの飲用に好適に使用することができるものであることがわかる。
【0097】
以上の結果から、本発明の飲用茶ゼリーは、難消化性デキストリンとポリγ−グルタミン酸とが併用されているので、その香りが改善されており、しかも茶ポリフェノールによる苦味が甘味成分を使用しないで抑制され、ゲル硬さおよび付着性が低く、凝集性に優れていることがわかる。
【0098】
したがって、本発明の飲用茶ゼリーは、例えば、嚥下に支障がある高齢者などの飲用に好適使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリγ−グルタミン酸と難消化性デキストリンとが配合されていることを特徴とする飲用茶ゼリー。
【請求項2】
ポリγ−グルタミン酸、難消化性デキストリン、寒天、ゲル化剤、茶成分および水が配合されてなる請求項1に記載の飲用茶ゼリー。
【請求項3】
ゲル化剤が、ローカストビーンガムおよびカラギーナンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の飲用茶ゼリー。
【請求項4】
さらに、ゼラチンが配合されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の飲用茶ゼリー。
【請求項5】
さらに、水溶性植物繊維が配合されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の飲用茶ゼリー。
【請求項6】
さらに、テアニンが配合されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の飲用茶ゼリー。
【請求項7】
さらに、L−アスコルビン酸が配合されてなる請求項1〜6のいずれかに記載の飲用茶ゼリー。

【公開番号】特開2010−35518(P2010−35518A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204665(P2008−204665)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(508240328)有限会社愛栄サポート (1)
【Fターム(参考)】