説明

駆動トランジスタの特性測定方法、電気光学装置、および電子機器

【課題】駆動トランジスタの特性を正確に測定する。
【解決手段】電流源434がデータ線15を介して駆動トランジスタT1に設定電流Imを供給すると設定電流Imに応じた大きさの電圧が保持容量素子Chに記憶される。この後、基準電圧Vrefをデータ線15の寄生容量CLに充電する。そして、スイッチ434をオン状態にして保持容量素子Chと測定用容量素子Cmを容量結合する。すると、保持容量素子Chの電荷が測定用容量素子Cmに移動する。オペアンプ435は、測定容量素子Cmに蓄積された電荷に応じた出力電圧Voutを生成して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(以下「OLED(Light Emitting Diode)」という)素子などの電気光学素子を駆動する駆動トランジスタの特性を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ(以下「駆動トランジスタ」という)のゲートの電圧に応じて電気光学素子を駆動する構成が従来から提案されている。例えば、OLED素子を利用した発光装置においては、各OLED素子に供給される電流の電流値が駆動トランジスタのゲートの電圧に応じて制御される。駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧とドレイン電流との関係は、製造プロセスによってばらつく。ドレイン電流はOLED素子に供給され、その電流値に応じた輝度でOLED素子が発光する。したがって、駆動トランジスタにばらつきがあると、画面を均一に発光させることができず、表示品質が劣化する。
【0003】
特許文献1には、駆動トランジスタの閾値電圧を測定し、測定された閾値電圧に基づいて画像データを補正する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−115144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成においては、駆動トランジスタの閾値電圧を表示パネルの外に設けられた電圧測定回路で測定している。駆動トランジスタのドレイン電圧は、スイッチングトランジスタ及びデータ線を介して電圧測定回路に供給される。このため、測定電圧はスイッチングトランジスタのオン抵抗やデータ線の配線抵抗の影響を受けてしまうので、駆動トランジスタの電気的特性を正確に測定することができず、さらに、補正が不正確になってしまうといった問題があった。
以上のような事情を背景として、本発明は、駆動トランジスタの電気的特性を正確に測定すること及び補正の精度を向上するといった課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る駆動トランジスタの特性測定方法は、複数のデータ線と、前記データ線に接続される複数の単位回路と、測定用容量素子とを備え、前記複数の単位回路の各々は、そのゲート電圧に応じた大きさの駆動電流を出力する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲートに設けられた保持容量素子と、前記駆動電流に応じた階調を表示する電気光学素子とを有する電気光学装置において、前記駆動トランジスタの特性を測定する方法であって、選択した前記単位回路の駆動トランジスタに前記データ線を介して設定電流を流して前記保持容量素子に前記設定電流の大きさに応じた電圧を保持させる第1ステップと、前記測定容量素子の電荷を放電させる第2ステップと、前記保持容量素子と前記測定用容量素子とを前記データ線を介して容量結合させる第3ステップと、前記測定容量素子の電圧を検出する第4ステップと、検出された電圧に基づいて前記駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧を取得する第5ステップとを備える。
【0006】
この発明によれば、外部から駆動トランジスタに設定電流を流し、この状態で保持容量素子にゲート電圧を保持する。この後、保持容量素子と測定容量素子とを容量結合する。すると、保持容量素子から測定容量素子へ電荷が移動し、測定容量素子の端子間電圧が変化する。ここで、移動する電荷量は、保持容量素子の容量値と測定用容量素子の容量値によって定まる。したがって、測定容量素子の電圧に基づいて、設定電流を流したときの駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧を検出することができる。データ線を介して保持容量素子の電圧を検出すると、データ線の配線抵抗の影響によって、正確にゲート・ソース間電圧を検出することができない。これに対して、本発明は、保持容量素子から測定容量素子に電荷を移動させ、その電荷量に基づいてゲート・ソース間電圧を検出したので、正確に駆動トランジスタの特性を測定することが可能となる。なお、保持容量素子は、駆動トランジスタのゲート・ソース間に設けられてもよいし、あるいは、駆動トランジスタのゲートと基準となる電位との間に設けられてもよい。
【0007】
本発明に係る他の駆動トランジスタの特性測定方法は、複数のデータ線と、前記データ線に接続される複数の単位回路と、測定用容量素子とを備え、前記複数の単位回路の各々は、そのゲート電圧に応じた大きさの駆動電流を出力する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲートに設けられた保持容量素子と、前記駆動電流に応じた階調を表示する電気光学素子とを有する電気光学装置において、前記駆動トランジスタの特性を測定する方法であって、選択した前記単位回路の駆動トランジスタに前記データ線を介して設定電流を流して前記保持容量素子に前記設定電流の大きさに応じた電圧を保持する第1ステップと、前記測定容量素子の電荷を放電させる第2ステップと、前記保持容量素子と前記測定用容量素子とを前記データ線を介して容量結合させる第3ステップと、前記測定容量素子の電圧を検出する第4ステップと、検出された電圧を記憶する第5ステップと、前記設定電流の大きさに応じた前記駆動トランジスタのゲート電圧を設定する第6ステップと、算出したゲート電圧を前記データ線を介して前記駆動トランジスタのゲートに印加する第7ステップと、前記第2ステップから前記第4ステップを実行して、前記測定容量素子の電圧を検出する第8ステップと、前記第5ステップで記憶した電圧と前記第8ステップで検出した電圧とを比較して、両者が一致するように前記駆動トランジスタのゲート電圧を決定する第9ステップとを備える。
【0008】
設定電流に応じて保持容量素子に保持された駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧を保持容量素子から測定用容量素子に電荷を移動させることによって検出する場合、駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧は、測定容量素子の電圧に基づいて、保持容量素子の容量値と測定用容量素子の容量値とをパラメータとして用いた演算によって算出される。このため、保持容量素子及び測定用容量素子の容量値に誤差が含まれると、正確にゲート・ソース間電圧を算出することはできない。この発明によれば、設定電流と同じ大きさの電流を駆動トランジスタに流すために必要なデータ線へ供給する電圧を、データ線に所定の電圧を供給して保持容量素子を充電し、保持容量素子から測定容量素子に電荷を移動して得られた測定容量素子の電圧と設定電流を流したときの測定容量素子の電圧が一致するように決定する。したがって、設定電流を供給したときに測定用容量素子に発生する電圧から、駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧を算出しなくてもよい。この結果、算出の処理負荷を軽減することができ、さらに、正確な電圧を得ることができる。なお、第6ステップは、検出された電圧に基づいて設定電流の大きさに応じた駆動トランジスタのゲート電圧を算出してもよい。
【0009】
また、上述した駆動トランジスタの特性測定方法において、前記第9ステップは、前記第5ステップで記憶した電圧と前記第8ステップで検出した電圧とが不一致の場合に、前記駆動トランジスタのゲート電圧を設定し直し、新たなゲート電圧を設定して、前記第5ステップで記憶した電圧と前記第8ステップで検出した電圧とが一致するまで前記第6ステップから前記第9ステップを繰り返して実行することが好ましい。この場合、複数回の測定を繰り返すことによって設定電流を得るために必要な電圧を取得することができる。
【0010】
また、上述した駆動トランジスタの特性測定方法において、前記第2ステップにおいて前記データ線を基準電圧に充電し、前記第4ステップにおいて、前記データ線と接続される前記測定用容量素子の一端の電圧を前記基準電圧に固定して、前記測定用容量素子の他端の電圧を検出することを特徴とする。この発明によれば、電荷の移動に先立ってデータ線に基準電圧を充電し、測定用容量素子の一端の電圧をデータ線の電圧と等しくするので、保持容量素子から測定用容量素子へ電荷を移動する過程でデータ線の寄生容量に電荷が充電されることがなく、保持容量素子の電荷を正確に測定用容量素子に移動させることができる。
【0011】
次に、本発明に係る電気光学装置は、複数のデータ線と、前記データ線に接続される複数の単位回路とを備え、前記複数の単位回路の各々は、そのゲート・ソース間電圧に応じた大きさの駆動電流を出力する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲートとソースとの間に設けられた保持容量素子と、前記駆動電流に応じた階調を表示する電気光学素子とを有するものであって、前記複数の単位回路が配置される領域の外に設けられた測定容量素子と、前記測定容量素子の電荷を放電させる放電部と、電流源と、電圧源と、前記電流源、前記電圧源、及び前記測定用容量素子のいずれかを選択して前記データ線と接続する選択手段と、前記測定容量素子の電圧を検出する検出部と、駆動期間において、前記電圧源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御する駆動処理を実行し、測定期間において、前記電流源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御するとともに前記データ線を介して設定電流を前記駆動トランジスタに流すように前記電流源を制御する電流設定処理と、前記放電部を制御して前記測定用容量素子の電荷を放電させ、前記データ線と前記測定用容量素子とを接続して前記保持容量素子と前記測定用容量素子とを容量結合させるように前記選択手段を制御する電圧測定処理を実行する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、外部から駆動トランジスタに設定電流を流し、この状態で保持容量素子にゲート・ソース間電圧を保持する。この後、保持容量素子と測定容量素子とを容量結合する。すると、保持容量素子から測定容量素子へ電荷が移動し、測定容量素子の端子間電圧が変化する。ここで、移動する電荷量は、保持容量素子の容量値と測定用容量素子の容量値によって定まる。したがって、測定容量素子の電圧に基づいて、設定電流を流したときの駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧を検出することができる。データ線を介して保持容量素子の電圧を検出すると、データ線の配線抵抗の影響によって、正確にゲート・ソース間電圧を検出することができない。これに対して、本発明は、保持容量素子から測定容量素子に電荷を移動させ、その電荷量に基づいてゲート・ソース間電圧を検出したので、正確に駆動トランジスタの特性を測定することが可能となる。
【0013】
また、前記制御手段は、前記測定期間において、前記電圧測定処理の後、前記検出部によって検出された電圧を記憶する記憶処理と、前記電圧源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御するとともに前記電圧源から前記駆動トランジスタのゲートに供給するゲート電圧を出力する電圧設定処理と、前記電圧測定処理とを再度実行し、記憶した前記測定容量素子の電圧と今回の電圧測定処理で得られた前記測定用容量素子の電圧とが一致するまで、前記電圧設定処理と前記電圧測定処理とを繰り返すことが好ましい。この発明によれば、設定電流と同じ大きさの電流を駆動トランジスタに流すために必要なデータ線へ供給する電圧を、データ線に所定の電圧を供給して保持容量素子を充電し、保持容量素子から測定容量素子に電荷を移動して得られた測定容量素子の電圧と設定電流を流したときの測定容量素子の電圧が一致するように決定する。したがって、設定電流を供給したときに測定用容量素子に発生する電圧から、駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧を算出しなくてもよい。この結果、算出の処理負荷を軽減することができ、さらに、正確な電圧を得ることができる。
【0014】
上述した電気光学装置の具体的な態様において、前記放電部は前記測定用容量素子に並列に設けられたスイッチング素子であり、前記検出部は、出力端子と負入力端子との間に前記測定用容量素子が設けられ、正入力端子に基準電圧が供給されるオペアンプであり、前記制御手段は、前記スイッチング素子をオン状態にして前記測定用容量素子の電荷を放電させるとともに前記データ線と前記測定用容量素子とを接続するように前記選択手段を制御することが好ましい。オペアンプの正入力端子と負入力端子とはイマジナリショートされるので、スイッチング素子をオン状態にすると、オペアンプはボルテージフォロアとして動作しデータ線に基準電圧が供給される。これにより、データ線の寄生容量に基準電圧を充電することができ、保持容量素子から測定用容量素子への電荷移動において寄生容量に電荷が移動するのを防止することができる。
【0015】
また、上述した電気光学装置において、前記電圧測定処理によって得られた前記測定用容量素子の電圧に基づいて、入力画像データを補正して、前記駆動期間において前記電圧源が出力する電圧を規定する出力画像データを生成する画像処理部とを備えることが好ましい。この場合には、駆動トランジスタの特性に応じて出力画像データを生成することができるので、駆動トランジスタの特性が各単位回路でばらついたとしても均一な輝度で画像を表示することができる。
【0016】
また、上述した電気光学装置は、前記電圧測定処理で得られた前記測定容量素子の電圧に基づいて生成したプリチャージ電圧を指定するプリチャージデータを記憶する記憶手段と、前記制御手段は、前記駆動期間において、前記駆動処理を実行する替わりに、前記プリチャージデータを前記電圧源に供給して前記プリチャージ電圧を生成するとともに前記電圧源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御して前記データ線に前記プリチャージ電圧を供給するプリチャージ処理と、前記電流源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御するとともに前記電流源から表示すべき階調に応じたデータ電流を出力させる書込処理とを実行することが好ましい。保持容量素子にデータ電流に応じた電圧を保持させるためには、データ線の寄生容量を充電する必要があるが、データ電流の大きさが小さいと充電に時間が掛かり、保持容量素子にデータ電流に応じた電圧を正確に書き込むことができなくなる。この発明によれば、駆動トランジスタの特性に応じてプリチャージ電圧を生成し、これをデータ電流の書き込みに先行してデータ線に充電するので、短時間でデータ電流を保持用流素子に書き込むことができる。
【0017】
また、上述した電気光学装置において、前記測定期間は、表示すべき画像データの垂直走査期間の一部に割り当てることが好ましい。この場合には、駆動トランジスタの特性の変化をリアルタイムで測定することができる。このため、測定結果に基づいて補正を行うことによって常に高品位の画像を表示することが可能となる。
【0018】
次に、本発明に係る電子機器は上述した電気光学装置を備えたことを特徴とする。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る電気光学装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)、液晶装置の背面側に配置されてこれを照明する装置(バックライト)、あるいは、スキャナなどの画像読取装置に搭載されて原稿を照明する装置など各種の照明装置など、多様な用途に本発明の電気光学装置を適用することができる。
【0019】
また、上述した発明において、電気光学素子とは、電気的な作用および光学的な作用の一方を他方に変換する要素であり、典型的には電気エネルギの供給(電流の供給や電圧の印加)によって輝度や透過率といった光学的な性状が変化する素子である。例えば、電流の供給によって輝度が変化する電流駆動型の発光素子(例えばOLED素子)など様々な素子が本発明の電気光学素子として採用される。すなわち、本発明に係る電気光学装置のひとつの形態は、電気光学素子として発光素子を利用した発光装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<1.第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。同図に例示された電気光学装置Aは、画像を表示する手段として各種の電子機器に利用される装置であり、複数の単位回路(画素回路)Uが面状に配列された素子アレイ部10と、各単位回路Uを駆動するための走査線駆動回路23およびデータ線駆動回路25とを含む。なお、走査線駆動回路23およびデータ線駆動回路25は、素子アレイ部10とともに基板上に形成された薄膜トランジスタによって構成されてもよいしICチップの形態で実装されてもよい。
【0021】
図1に示すように、素子アレイ部10には、X方向に延在するm本の走査線13と、X方向に直交するY方向に延在するn本のデータ線15とが形成される(mおよびnの各々は2以上の自然数)。各単位回路Uは、走査線13とデータ線15との交差に対応する各位置に配置される。したがって、素子アレイ部10には縦m行×横n列のマトリクス状に単位回路Uが配列する。各単位回路Uには、電源回路(図示略)から電源電位Vddと接地電位Gndとが供給される。
【0022】
走査線駆動回路23は、素子アレイ部10の各行(X方向に配列するn個の単位回路Uの集合)を選択するための手段である。データ線駆動回路25は、各単位回路Uの階調データに基づいてデータ信号X1〜Xnを生成する手段である。データ信号Xjは第j列目のデータ線15に出力される(jは1≦j≦nを満たす整数)。なお、データ線駆動回路25は、後述するように電荷の移動によって駆動トランジスタのゲート電位を測定する測定回路を含む。
【0023】
また、画像処理回路27は、入力画像データDinにガンマ補正を施して出力画像データDoutを生成するとともに、垂直同期信号及び水平同期信号をタイミング制御回路29に出力する。タイミング制御回路29は、垂直同期信号及び水平同期信号に基づいて、クロック信号などの各種の制御信号を生成し、走査線駆動回路23及びデータ線駆動回路25に供給する。
【0024】
図2は、各単位回路Uの構成を示す回路図である。同図においては、第i行の第j列目に位置するひとつの単位回路Uのみが図示されているが、これ以外の単位回路Uも同様の構成である。同図に示すように、単位回路Uは、電源線(電源電位Vdd)と接地線(接地電位Gnd)との間に介在する電気光学素子18を含む。電気光学素子18は、駆動電流Ielに応じた状態に駆動される要素である。本実施形態の電気光学素子18は、有機EL(ElectroLuminescence)材料からなる発光層を陽極と陰極との間に介在させたOLED素子(発光素子)であり、発光層に供給される駆動電流Ielの電流値に応じた輝度(階調)で発光する。電気光学素子11の陰極は接地(Gnd)される。
【0025】
図2に示すように、図1において便宜的に1本の配線として図示された走査線13は、実際には3本の配線(第1制御線131・第2制御線132・第3制御線133)を含む。各配線には走査線駆動回路23から所定の信号が供給される。より具体的には、第i行目の走査線13を構成する第1制御線131には第1制御信号GCUT[i]が供給される。同様に、第2制御線132には第2制御信号GWRT[i]が供給され、第3制御線133には第3制御信号GON[i]が供給される。なお、各信号の具体的な波形やこれに応じた単位回路Uの動作については後述する。
【0026】
単位回路Uは、pチャネル型の駆動トランジスタT1と、nチャネル型の4個のトランジスタ(発光制御トランジスタT4・選択トランジスタT3・スイッチングトランジスタT2及びT5)と、電圧を保持する保持容量素子Chと、電源の高位側の電位Vddが供給される電源線と低位側の電位Gndが供給される接地線との間に介挿されたOLED素子18とを含む。OLED素子18は駆動電流Ielの電流量に応じた階調(輝度)に発光する。
【0027】
駆動トランジスタT1は、駆動電流Ielの電流量を制御するための手段であり、電源の高位側の電位Vddが供給される電源線にソースが接続されるとともにドレインが発光制御トランジスタT4のドレインに接続される。この発光制御トランジスタT4は、駆動電流IelがOLED素子18に供給される期間を規定するためのスイッチング素子であり、ソースが電気光学素子OLED素子18の陽極に接続されるとともにゲートが第3制御線133に接続される。
【0028】
スイッチングトランジスタT2及び選択トランジスタT3は、駆動トランジスタT1のゲートとデータ線との間に直列に介挿されたスイッチング素子であり、それらのゲートは第2制御線132に接続される。また、スイッチングトランジスタT5は、スイッチングトランジスタT2のソースと駆動トランジスタT1のドレインとの間に設けられており、これらの間の導通および非導通を切り替えるスイッチング素子である。
【0029】
以上の構成において、第2制御信号GWRT[i]がハイレベルに遷移すると、データ線15と駆動トランジスタT1のゲートが接続され、データ信号Xjを保持容量素子Chに書き込むことが可能となる。さらに、この状態で第1制御信号GCUT[i]がハイレベルに遷移すると、スイッチングトランジスタT5がオン状態となり、駆動トランジスタT1のゲートとドレインとが接続される。このように駆動トランジスタT1がダイオード接続された状態で駆動トランジスタT1のゲートはデータ線15に接続される。
【0030】
一方、第2制御信号GWRT[i]がローレベルになると、スイッチングトランジスタT2及び選択トランジスタT3がオフ状態となる。したがって、駆動トランジスタT1のゲート・ソース間の電圧はその直前の水平走査期間で保持容量素子Chに蓄積された電荷に応じた電圧に維持される。この状態において第3制御信号GON[i]がハイレベルに遷移すると発光制御トランジスタT4がオン状態に遷移し、この結果として駆動トランジスタT1のゲート電位に応じた駆動電流(すなわちデータ信号Xjの電流量に応じた電流)Ielが電源線から駆動トランジスタT1および発光制御トランジスタT4を経由してOLED素子18に供給される。そして、OLED素子18は駆動電流Ielに比例した輝度に発光する。以上のようにOLED素子18の輝度が単位回路Uごとに制御されることによって表示部10には出力画像データDoutに応じた所望の画像が表示される。
【0031】
図3にデータ線駆動回路25の詳細な構成を示す。この図に示すようにデータ線駆動回路25は、データ信号生成部30と測定部40とを備える。データ信号生成部30において、電圧データ生成部31は、出力画像データDoutに基づいて各データ線15に供給する電位を指定する電圧データDv1〜Dvnを生成する。各電圧DAコンバータ32は電圧データDv1〜Dvnをデジタル信号をアナログ信号に変換してデータ信号X1〜Xnを生成する。また、各スイッチ32は制御信号C1によってオン・オフが制御され、後述する駆動期間Tdにおいてオン状態となり、測定期間Tmにおいてオフ状態となる。すなわち、データ信号生成部30は、駆動期間Tdにおいてデータ信号X1〜Xnを各データ線15に供給する手段として機能する。一方、測定部40は測定用セレクタ41と測定回路43とを備える。測定用セレクタ41は制御信号C2に従って複数のデータ線15から選択した1本のデータ線15と測定回路43を接続する。
【0032】
図4に測定回路43の回路図を示す。測定回路43は、駆動トランジスタT1の特性を測定するために用いられる。測定回路43は、スイッチ431〜433、電流源434、測定用容量素子Cm、オペアンプ435、サンプルホールド回路436、及びADコンバータ437を備える。オペアンプ435の正入力端子には基準電圧Vrefが供給されており、負入力端子と出力端子との間には測定用容量素子Cm及びスイッチ433が並列に接続されている。電流源434は出力電流の大きさを画像処理回路27から供給される電流指定データDiに従って調整する。また、スイッチ431〜434のオン・オフはタイミング制御回路29から供給される制御信号C3によって各々制御される。
【0033】
オぺアンプ435と測定用容量素子Cmとは、スイッチ433がオフ状態になると電荷増幅器として機能し、データ線15を介して供給される電荷を測定用容量素子Cmに蓄積し、電圧として出力する。一方、スイッチ433がオン状態になると、オぺアンプ435と測定用容量素子Cmとは、ボルテージフォロアとして機能する。サンプルホールド回路436はオペアンプ435の出力電圧Voutを所定のタイミングでサンプルホールドする。ADコンバータ437は出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して測定データDmを生成し、これを画像処理回路25に出力する。
【0034】
駆動トランジスタT1の特性は、(A)電流設定、(B)データ線の充電、(C)電荷移動といった3つのステップによって測定される。以下、図5を参照して測定手順を説明する。なお、同図に示す容量CLはデータ線15の寄生容量である。図5(A)に示す電流設定のステップでは、単位回路Uにおいて、スイッチングトランジスタT2、選択トランジスタT3、及びスイッチングトランジスタT5をオン状態にする一方、発光制御トランジスタT4をオフ状態にする。また、測定回路40において、スイッチ431をオン状態、スイッチ432及び433をオフ状態にする。この状態で、電流源434を用いて設定電流Imを流す。駆動トランジスタT1はダイオード接続されており、設定電流Imが駆動トランジスタT1のソースからトレインに向けて流れる。このとき、保持容量素子Chには設定電流Imの大きさに応じた電圧が印加される。
【0035】
次に、図5(B)に示すデータ線の充電のステップでは、単位回路Uにおいて、スイッチングトランジスタT2及びT5、選択トランジスタT3、並びにスイッチングトランジスタT5をオフ状態にする。また、測定回路40において、スイッチ432及び433をオン状態、スイッチ431をオフ状態にする。この状態では、オペアンプ435がボルテージフォロアとして機能するので、データ線15の寄生容量CLに対して基準電圧Vrefが充電される。また、測定用容量素子Cmに蓄積された電荷が放電される。
【0036】
次に、図5(C)に示す電荷移動のステップでは、単位回路Uにおいて、スイッチングトランジスタT2及び選択トランジスタT3をオン状態にする一方、発光制御トランジスタT4及びスイッチングトランジスタT5をオフ状態にする。また、測定回路40において、スイッチ432をオン状態、スイッチ431及び433をオフ状態にする。このとき、保持容量素子Chと測定用容量素子Cmとが容量カップリングして、保持容量素子Chに蓄積された電荷が測定用容量素子Cmに移動する。出力電圧Voutは以下のようになる。
【0037】
まず、駆動トランジスタT1のゲート・ソース間電圧をVgsmとし、保持容量素子Chの容量値をCh1、測定用容量素子Cmの容量値Cm1、及び寄生容量CLの容量値をCL1として、データ線15の寄生容量CLを基準電圧Vrefで充電したとき、保持容量素子Ch、測定用容量素子Cm及び寄生容量CLに蓄積される電荷の総和Q1は、以下に示す式(1)で与えられる。
Q1=−Ch1・Vgsm+CL1・Vref……(1)
次に、測定時における、保持容量素子Ch、測定用容量素子Cm及び寄生容量CLに蓄積される電荷の総和Q2は、以下に示す式(2)で与えられる。
Q2=−Ch1(Vdd−Vref)+CL1・Vref−Cm1(Vout−Vref)……(2)
電荷の漏れる経路はないのでQ1=Q2となる。したがって、出力電圧Voutは以下の式(3)で与えられる。
Vout=(Vgsm−Vdd+Vref)Ch1/Cm1+Vref……(3)
さらに式(3)を変形すると式(4)を導くことができる。
Vgsm=Cm1・Vout/Ch1−(Cm1+Ch1)・Vref/Ch1+Vdd……(4)
【0038】
式(4)において、Vout、Ch1、Cm1、Vref、及びVddは既知である。従って、出力電圧Voutの大きさを示す測定データを出力し、式(4)の演算を実行することによって、ゲート・ソース間電圧Vgsmを得ることができ、さらに、ゲート・ソース間電圧Vgsmと設定電流Imとの組を複数測定することによって、駆動トランジスタT1の電気的特性を得ることができる。例えば、4回の測定によって図6に示す電流・電圧特性Zを得る。この図において設定電流Imの大きさは平方根として表示してある。設定電流Imが「0」となるゲート・ソース間電圧Vgsmが閾値電圧Vthとなり、電流・電圧特性Zの傾きが増幅率βとなる。画像処理回路27は、式(4)に従って算出したゲート・ソース間電圧Vgsmと設定電流Imの関係から駆動トランジスタT1の電気的特性を得る。駆動トランジスタT1の電気的特性から、電圧プログラムを実行したときの階調特性を得ることができる。つまり、データ信号X1〜Xnとして指定する電圧とOLED素子18の輝度との関係を得ることができる。駆動トランジスタT1の電気的特性は各単位回路Uでばらつくが、画像処理回路27は、階調特性が均一になるように入力画像データDinを補正して出力画像データDoutを生成する。例えば、駆動トランジスタT1の電気的特性を特定する閾値電圧Vth及び増幅率βと補正パラメータとの関係を予め定めておき(例えば、メモリに対応付けて記憶)、補正パラメータを求め、補正パラメータに従って入力画像データDinを補正して出力画像データDoutを生成する。
【0039】
図7は、電気光学装置Aの全体動作を示すタイミングチャートである。この図に示すように1垂直走査期間1Vは、駆動期間Tdと測定期間Tmに分割される。駆動期間Tdにおいては、第2制御信号GWRT[1]〜GWRT[n]が順次アクティブとなり、各行の単位回路Uが順次選択される。第2制御信号GWRT[1]〜GWRT[n]の各々がアクティブとなる書込期間Td1において、データ線15を介してデータ信号X1〜Xnが選択された単位回路Uに供給され、階調に応じた電圧が保持容量素子Chに書き込まれる。また、書込期間Td1に続く発光期間Td2において、第3制御信号GON[1]〜GON[n]が順次アクティブとなり、保持容量素子Chに保持された電圧に応じた駆動電流IelがOLED素子18に供給され、OLED素子18が発光する。
【0040】
次に、測定期間Tmの期間Tm1及びTm4では図5(A)に示す電流設定が実行され、期間Tm2及びTm5では図5(B)に示すデータ線の充電が実行され、さらに期間Tm3及びTm6では図5(C)に示す電荷移動が実行される。この例では、測定期間Tmにおいて2回の測定を実行したが、3回以上の測定を実行してもよい。また、この例では、第1行の各単位回路Uに属する駆動トランジスタT1の特性を1垂直走査期間1Vに測定した。第2行の各単位回路Uに属する駆動トランジスタT1の特性は次の1垂直走査期間1Vで測定し、順次これを繰り返して第1行から第m行までの駆動トランジスタT1の特性を測定する。
そして、測定回路43は測定結果を測定データDmとして画像処理回路27に出力する。画像処理回路27は、測定データDmに基づいて、補正パラメータを算出して記憶する。そして、駆動期間Tdにおいて補正パラメータを読み出して、読み出した補正パラメータに従って入力画像データDinを補正して出力画像データDoutを生成する。この補正方法によれば、垂直走査期間1Vの一部に測定期間Tmを割り当てたので、駆動トランジスタT1の電気的特性が経時変化しても、これに追随して補正を行うことができる。この結果、リアルタイムの補正が可能となり、輝度のばらつきを大幅に低減することができる。
【0041】
<2.第2実施形態>
上述した第1実施形態において、駆動トランジスタT1のゲート・ソース間電圧Vgsmは式(4)に従って算出した。式(4)において、保持容量素子Chの容量値Ch1は各単位回路Uでばらつき、測定用容量素子Cmの容量値Cm1の誤差、電源電圧Vddの変化、あるいはリーク電流によって、ゲート・ソース間電圧Vgsmには誤差が発生する。第2実施形態では、より正確に駆動トランジスタT1の特性を取得する。
【0042】
第2実施形態の電気光学装置は、図1に示す第1実施形態の電気光学装置Aと同様に構成されている。但し、ゲート・ソース間電圧Vgsmの測定手順が相違する。
図8に、第2実施形態において第i行第j列の駆動トランジスタの特性を測定する手順を示す。まず、設定電流Imの大きさをI0に設定する(ステップS1)。次に、設定電流Imのプログラムを実行する(ステップS2)。具体的には、図9(A)に示すように設定電流Imを駆動トランジスタT1に流す。次に、出力電圧Vout1を検出する(ステップS3)。具体的には、図9(B)及び図10(A)に示すようにデータ線15を基準電圧Vrefに充電した後、保持容量素子Chに蓄積された電荷を測定用容量素子Cmに移動させて出力電圧Vout1を検出する。
【0043】
次に、出力電圧Vout1よりプログラム電圧Vdataを算出する(ステップS5)。具体的には、上述した式(4)に従ってゲート・ソース間電圧Vgsmを算出し、これをプログラム電圧Vdataとする。この後、算出したプログラム電圧Vdataのプログラムを実行する。具体的には、図10(B)に示すように電圧DAコンバータ32からプログラム電圧Vdataを出力し、これを保持容量素子Chに書き込む。
【0044】
次に、出力電圧Vout2を検出する(ステップS6)。この場合、ステップS3と同様に測定を実行する。この後、出力電圧Vout1と出力電圧Vout2とが一致するか否かを判定し(ステップS7)、両者が不一致である場合には、プログラム電圧Vdataの大きさを補正し(ステップS8)、ステップS5からステップS7まで処理を繰り返す。そして、出力電圧Vout1と出力電圧Vout2とが一致すると、設定電流Imのアップデートを実行する(ステップS9)。次に、測定対象となる設定電流Imの電流値のすべてについて測定が終了したか否かを判定し(ステップS10)、未終了の電流値があればその電流値となるように設定電流Imを設定して、処理をステップS1に戻す。一方、全ての電流値について測定が終了してい場合には、第i行第j列の処理を終了する。
【0045】
設定電流Imは、発光期間Td2において駆動トランジスタT1からOLED素子18に供給される駆動電流Ielであり、駆動電流Ielの大きさに応じてOLED素子18の輝度が定まる。そして、プログラム電圧Vdataは、書込期間Td1のおいて保持容量素子Chに書き込まれるデータ信号Xjの電圧である。したがって、出力電圧Vout1と出力電圧Vout2とが一致する場合に設定されたプログラム電圧Vdataを書込期間Td2において保持容量素子Chに書き込めば、所望の駆動電流IelをOLED素子18に流すことができる。設定電流Imは、入力画像データDinの指定する表示すべき階調に対応し、プログラム電圧Vdataは出力画像データDoutに対応する。このため、ステップS9における設定電流Imのアップデートにおいては、画像処理回路29において入力画像データDinの入力階調と出力画像データDoutの出力階調とを対応付けて記憶した補正テーブルの記憶内容を変更する。
【0046】
このように第2実施形態においては、実際の書き込み経路でプログラム電圧Vdataを書き込み、その値が所望の設定電流が得られるように調整したので、保持容量素子Chの容量値Ch1にばらつきがあったり、測定用容量素子Cm1の容量値Cm1に誤差が含まれていても、所望の設定電流Imが得られるように補正を施すことが可能となる。この結果、表示画像をより一層均一な輝度で表示することができる。
【0047】
<3.第3実施形態>
上述した第1実施形態及び第2実施形態は、データ信号X1〜Xnを電圧で与える電圧プログラム駆動方式を採用した。これに対して第3実施形態の電気光学装置はデータ信号X1〜Xnを電流で与える電流プログラム駆動方式を採用する。
電流プログラム駆動方式では、低階調のデータ信号を保持容量素子Chに書き込むときに、小さな電流でデータ線15の寄生容量CLを充電しなければならないため、書込期間Td1を長くする必要がある。書込期間Td1の長さは発光期間Td2の長さなどから決定されるので、その時間を長くするのには一定の限界がある。このため、低階調を正確に表現できないといった問題がある。
そこで、電流プログラムに先立ってデータ線15にプリチャージ電圧Vpreを供給して寄生容量CLを充電し、その後、電流プログラムを実行することによって書込期間Td1を短縮することができる。
【0048】
図11に第3実施形態に用いるデータ信号生成部30’の構成を示す。同図に示すようにデータ信号生成部30’は、スイッチ33及び36、電流データ生成回路34、電流DAコンバータ35、電圧DAコンバータ37、並びにプリチャージデータメモリ38を備える。プリチャージデータメモリ38にはプリチャージ電圧Vpreを指定するプリチャージデータDpが記憶されている。本実施形態においては、駆動トランジスタT1の電気的特性を第1実施形態と同様に測定する。そして、画像処理回路27において、閾値電圧Vthを特定し、特定した閾値電圧Vthに応じてプリチャージデータDpを生成し、これをプリチャージデータメモリ38に書き込む。ここで、プリチャージ電圧Vpreは、例えば、Vpre=Vdd−Vthに設定される。
【0049】
本実施形態においては、駆動期間Tdにおいて、書込期間Td1の前にプリチャージ期間Td0が設けられている。プリチャージ期間Td0では、電圧DAコンバータ37がプリチャージデータメモリ38から読み出されたプリチャージデータDpに基づいてプリチャージ電圧Vpreを生成する。また、プリチャージ期間Td0において、制御信号C4はスイッチ36をオン状態とるように制御する。これにより、プリチャージ電圧Vpreがデータ線15に供給される。
そして、書込期間Td1においては、電流データ生成回路34が出力画像データDoutに応じて電流データを生成し、電流DAコンバータ35において電流データがデジタル信号からアナログ信号に変換されデータ信号X1〜Xnが生成される。このとき、制御信号C1はスイッチ31がオン状態となるように制御する。これによって、データ信号X1〜Xnがデータ線15に供給される。
【0050】
本実施形態では、各駆動トランジスタT1の電気的特性を測定し、その測定結果に基づいてプリチャージ電圧Vpreの大きさを調整した。この結果、電流プログラムを実行する前にデータ線15の電圧を充電できるので、書込期間Td1を短縮し、低階調であってもプログラム電流に応じた電圧を保持容量素子Chに十分書き込むことが可能となる。
【0051】
<4.変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。
(1)上述した実施形態の単位回路Uとして図12に示す回路を用いてもよい。この回路は、図2示す回路からスイッチングトランジスタT2を省略している。また、単位回路Uとして図13に示すものを用いてもよい。この回路は、スイッチングトランジスタT5を駆動トランジスタT1と発光制御トランジスタT4との間に設けた点で、図2示す回路と相違する。これらの回路では、上述した実施形態と同様に、駆動トランジスタT1の特性を測定することができる。
【0052】
(2)上述した実施形態においては、駆動トランジスタT1の特性測定期間を1垂直走査期間1Vの一部に割り当てが、本発明はこれに限定されるものではなく、工場から出荷時に駆動トランジスタT1の特性を測定し、その測定結果に基づいて、入力画像データDinと出力画像データDoutとを対付けた補正テーブルを生成してもよい。また、電気光学装置Aに電源が投入された直後に駆動トランジスタT1の特性を測定して上述した補正テーブルを生成してもよい。さらに、工場の出荷時あるいは電源投入時に生成した補正テーブルの内容を、上述した実施形態のリアルタイムの測定結果に基づいて更新してもよい。
【0053】
(3)本発明における電気光学素子とは、電気的な作用および光学的な作用の一方を他方に変換する要素である。電気エネルギの付与によって光度や透過率といった光学的な特性が制御(駆動)される素子は本発明の電気光学素子として特に好適に採用される。この種の電気光学素子については、自身が光を放射する自発光型の素子と透過率に応じて外光を変調する非発光型の素子との区別や、電流の供給によって駆動される電流駆動型の素子と電圧の印加によって駆動される電圧駆動型の素子との区別を問わず本発明に適用される。例えば、以上の各形態にて例示したOLED素子に代えて、無機EL素子やフィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子、液晶素子、電気泳動素子、エレクトロクロミック素子など様々な電気光学素子を本発明に利用することができる。
【0054】
<5.応用例>
次に、本発明に係る電気光学装置を利用した電子機器について説明する。図14ないし図16には、以上に説明した何れかの形態に係る電気光学装置Aを表示装置として採用した電子機器の形態が図示されている。
【0055】
図14は、電気光学装置Aを採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する電気光学装置Aと、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。電気光学装置AはOLED素子を電気光学素子11として使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0056】
図15は、電気光学装置Aを適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する電気光学装置Aとを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置Aに表示される画面がスクロールされる。
【0057】
図16は、電気光学装置Aを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す斜視図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する電気光学装置Aとを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報が電気光学装置Aに表示される。
【0058】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図14から図16に示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る電気光学装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する光ヘッド(書込ヘッド)が使用されるが、この種の光ヘッドとしても本発明の電気光学装置は利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ひとつの単位回路の構成を示す回路図である。
【図3】データ線駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図4】測定回路の構成を示す回路図である。
【図5】測定期間における単位回路及び測定回路の様子を示す回路図である。
【図6】測定結果を示すグラフである。
【図7】電気光学装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】第2実施形態に係る測定回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】測定期間における単位回路及び測定回路の様子を示す回路図である。
【図10】測定期間における単位回路及び測定回路の様子を示す回路図である。
【図11】第3実施形態に係るデータ信号生成部のブロック図である。
【図12】変形例に係る単位回路の構成を示す回路図である。
【図13】変形例に係る単位回路の構成を示す回路図である。
【図14】本発明に係る電子機器の形態(パーソナルコンピュータ)を示す斜視図である。
【図15】本発明に係る電子機器の形態(携帯電話機)を示す斜視図である。
【図16】本発明に係る電子機器の形態(携帯情報端末)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
A……電気光学装置、U……単位回路、10……素子アレイ部、15……データ線、18……電気光学素子、29……タイミング制御回路、33,431,432……スイッチ(選択手段)、41……測定用セレクタ(選択手段)、43……測定回路、434……電流源、435……オペアンプ、131〜133……第1制御線〜第3制御線、T1……駆動トランジスタ、Ch……保持容量素子、Cm……測定用容量素子、Td……駆動期間、Tm……測定期間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータ線と、前記データ線に接続される複数の単位回路と、測定用容量素子とを備え、前記複数の単位回路の各々は、そのゲート電圧に応じた大きさの駆動電流を出力する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲートに設けられた保持容量素子と、前記駆動電流に応じた階調を表示する電気光学素子とを有する電気光学装置において、前記駆動トランジスタの特性を測定する駆動トランジスタの特性測定方法であって、
選択した前記単位回路の駆動トランジスタに前記データ線を介して設定電流を流して前記保持容量素子に前記設定電流の大きさに応じた電圧を保持させる第1ステップと、
前記測定容量素子の電荷を放電させる第2ステップと、
前記保持容量素子と前記測定用容量素子とを前記データ線を介して容量結合させる第3ステップと、
前記測定容量素子の電圧を検出する第4ステップと、
検出された電圧に基づいて前記駆動トランジスタのゲート・ソース間電圧を取得する第5ステップと、
を備えることを特徴とする駆動トランジスタの特性測定方法。
【請求項2】
複数のデータ線と、前記データ線に接続される複数の単位回路と、測定用容量素子とを備え、前記複数の単位回路の各々は、そのゲートに応じた大きさの駆動電流を出力する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲートに設けられた保持容量素子と、前記駆動電流に応じた階調を表示する電気光学素子とを有する電気光学装置において、前記駆動トランジスタの特性を測定する駆動トランジスタの特性測定方法であって、
選択した前記単位回路の駆動トランジスタに前記データ線を介して設定電流を流して前記保持容量素子に前記設定電流の大きさに応じた電圧を保持する第1ステップと、
前記測定容量素子の電荷を放電させる第2ステップと、
前記保持容量素子と前記測定用容量素子とを前記データ線を介して容量結合させる第3ステップと、
前記測定容量素子の電圧を検出する第4ステップと、
検出された電圧を記憶する第5ステップと、
前記設定電流の大きさに応じた前記駆動トランジスタのゲート電圧を設定する第6ステップと、
算出したゲート電圧を前記データ線を介して前記駆動トランジスタのゲートに印加する第7ステップと、
前記第2ステップから前記第4ステップを実行して、前記測定容量素子の電圧を検出する第8ステップと、
前記第5ステップで記憶した電圧と前記第8ステップで検出した電圧とを比較して、両者が一致するように前記駆動トランジスタのゲート電圧を決定する第9ステップと、
を備えることを特徴とする駆動トランジスタの特性測定方法。
【請求項3】
前記第9ステップは、前記第5ステップで記憶した電圧と前記第8ステップで検出した電圧とが不一致の場合に、前記駆動トランジスタのゲート電圧を設定し直し、新たなゲート電圧を設定して、前記第5ステップで記憶した電圧と前記第8ステップで検出した電圧とが一致するまで前記第6ステップから前記第9ステップを繰り返して実行することを特徴とする請求項2に記載の駆動トランジスタの特性測定方法。
【請求項4】
前記第2ステップにおいて前記データ線を基準電圧に充電し、
前記第4ステップにおいて、前記データ線と接続される前記測定用容量素子の一端の電圧を前記基準電圧に固定して、前記測定用容量素子の他端の電圧を検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の駆動トランジスタの特性測定方法。
【請求項5】
複数のデータ線と、前記データ線に接続される複数の単位回路とを備え、前記複数の単位回路の各々は、そのゲート・ソース間電圧に応じた大きさの駆動電流を出力する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲートとソースとの間に設けられた保持容量素子と、前記駆動電流に応じた階調を表示する電気光学素子とを有する電気光学装置において、
前記複数の単位回路が配置される領域の外に設けられた測定容量素子と、
前記測定容量素子の電荷を放電させる放電部と、
電流源と、
電圧源と、
前記電流源、前記電圧源、及び前記測定用容量素子のいずれかを選択して前記データ線と接続する選択手段と、
前記測定容量素子の電圧を検出する検出部と、
駆動期間において、前記電圧源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御する駆動処理を実行し、測定期間において、前記電流源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御するとともに前記データ線を介して設定電流を前記駆動トランジスタに流すように前記電流源を制御する電流設定処理と、前記放電部を制御して前記測定用容量素子の電荷を放電させ、前記データ線と前記測定用容量素子とを接続して前記保持容量素子と前記測定用容量素子とを容量結合させるように前記選択手段を制御する電圧測定処理を実行する制御手段と、
を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記測定期間において、前記電圧測定処理の後、前記検出部によって検出された電圧を記憶する記憶処理と、前記電圧源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御するとともに前記電圧源から前記駆動トランジスタのゲートに供給するゲート電圧を出力する電圧設定処理と、前記電圧測定処理とを再度実行し、記憶した前記測定容量素子の電圧と今回の電圧測定処理で得られた前記測定用容量素子の電圧とが一致するまで、前記電圧設定処理と前記電圧測定処理とを繰り返す、ことを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記放電部は前記測定用容量素子に並列に設けられたスイッチング素子であり、
前記検出部は、出力端子と負入力端子との間に前記測定用容量素子が設けられ、正入力端子に基準電圧が供給されるオペアンプであり、
前記制御手段は、前記スイッチング素子をオン状態にして前記測定用容量素子の電荷を放電させるとともに前記データ線と前記測定用容量素子とを接続するように前記選択手段を制御する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記電圧測定処理によって得られた前記測定用容量素子の電圧に基づいて、入力画像データを補正して、前記駆動期間において前記電圧源が出力する電圧を規定する出力画像データを生成する画像処理部とを備えることを特徴とする請求項5乃至7のうちいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記電圧測定処理で得られた前記測定容量素子の電圧に基づいて生成したプリチャージ電圧を指定するプリチャージデータを記憶する記憶手段と、
前記制御手段は、前記駆動期間において、前記駆動処理を実行する替わりに、前記プリチャージデータを前記電圧源に供給して前記プリチャージ電圧を生成するとともに前記電圧源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御して前記データ線に前記プリチャージ電圧を供給するプリチャージ処理と、前記電流源と前記データ線とを接続するように前記選択手段を制御するとともに前記電流源から表示すべき階調に応じたデータ電流を出力させる書込処理とを実行する、
ことを特徴とする請求項5乃至7のうちいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記測定期間は、表示すべき画像データの垂直走査期間の一部に割り当てられていることを特徴とする請求項5乃至9のうちいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項11】
請求項5乃至9のうちいずれか1項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−322133(P2007−322133A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149323(P2006−149323)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】